経営活動の統制と管理会計報告書 浦 和 夫 ト はしがきⅠⅠ.経営管理過程と会封過程一報告青の基本原理 【・−【 ⅠⅠⅠ.会封担当者とコントローーラーーーー一報含蓄作成とその主体 −一山− ⅠⅤ.会封報告書作成の原則 ⅤⅠ.会計報告書作成の指針 1‡.むすび Ⅰ 近時の会計理論とその手法の発展は,まさに.鵬目にイ直するものがある。会計 の機能ほ,以前においては記録・分類・要料・分析・報告といわれ,最近にお いては.識別・測定・伝達といわれる。このような時期にあって,アメリカ会計学 会は示唆にとむ1つの報告書AmericanAccountingAssociation,ASiaiement クノ■βα5よb Accク〝〝才よ〝g乃β0㌢・γ,1966,(以下A5りβArという)を発表した。 A5−0βA71ほ「会計は,情報の利用者が事情に精通して判断や意思決定を行 なうことができるよう紅,経由的情報を識別し,測定し,伝達するプロセスで ある。」1)とまず定義し,「このような会封の定義ほ,他の会計理論の報告書に 見られるものより広い。会計情報が必らず取引資料にもとづかなければならな いということはない。」2)それのみならず,「取引に.は関係のない種々な型の資 料が会計情報の基準3)に適合することを証明することも可能である。」4)と主
1)AmeIican Acconuting Association,A Siaiement ofBasic Accounting Theory, 1966,(以下,AAA,ASOBATという。)p.1.飯野利夫訳,『基礎的会計理論』,1969年,
2ぺ−・汐。
2)J∂∠d,p.1.前掲訳,2ぺ一一汐。
3)この髄準として,後で目的適合性(Standardof Relevance),検証可能性(Stindard of Verifiability),不偏性(Standardof Freedomfrom Bias),計意可能性二(Standard
Of Quantifiability)の4種をあげている。
香川大学経済学部 研究年報10 上97ク ーー 2 − 張している。特に,A510βA71第4章「内部経営管理者のための会計情報」 において,「伝統的モデルからの会計情報」とは別個紅,「伝統的モデルから分 離して提供される会計情報」について取り上げ,「会計は範囲を拡大し,重要 性を増大しつづけるであろうことを認識したう.えで,」5)「この研究のなかで示 された基準紅合致する経済資料を収集し,処理することは会計の本質的部分で あると考えるべきであり,またこれらのアウトプットは,そ・の性質が目論まれ たものであれ,実際のものであれ,またそれが単一・評価によるものであれ,さ らに.それが貨幣単位に.よって表現されたものであれ,それ以外で表現されたも のであれ,それらはすべて会計職能の所産として考えるぺきである。」¢〉と提案 している。そて,A5−0βAr欝5章「会計理論の拡張」において,会計の基礎 的概念に閲し,つぎのような結論をあたえている。「会計ほ,本質的には一つの 情報システムである。もっと正確匿い.え.ば,会計は,情報の一般理論を効果的 な経済活動に関する問題に適用したものである。会討ほまた,量的に表現され た意思決定のための情報を提供する−・般情報システムのうちで大部分を占めて いる。このような情況のもとでは,会計は活動主体の一・般情報システムの1部 分であるとともに,情報概念と墳を接している基本的領域の1部分である。」7) このように.,A5−0βAr は活動主体(その内部の具体的1例として経営管理 者)軋対して,有用な会計情報を提供するという情報提供機能としての会計, ないし情報システムとしての会計の成立を主張し,この立場から,会計の目的 は,「1.限りある資源を利用することについて,意思決定を行なうこと。こ れはもっとも重要な意思決定の領域を確定し,また目的や目標を決することを 含む。2.組織内にある人的資源および物的資源を効率的把持揮統制するこ と。3.資源を保全し,その管理について報告すること。4‥社会的機能およ るが,この報告書では,この4種の基準のはかに経済的実行可能性(Standard of Eco− nomic Feasibilty)をあげている。AmeIican Accounting Association,“Report of
Committee on ManagerialDecision Models,,’the.4ccountirng Review,Supplement to Vol.XLIV,1969,(以下,AAA,“Report”というJ’。)pp.47−52.
4)AAA,ASOBAT,p.1.前掲訳,2ぺ・−iy。 5),6)′∂紘,p.59.前掲訳,59ぺ−ジ。
経営活動の統制と管理会計報告書 − ∂ − び統制を容易に.すること。」8)・のために・情報を提供することであるとした0 この思考は,会計の役立ちを,過去ないし現在の次元での取引結果を記録 し・ノ分類し・要約し・分析し・報告するという領域から,将来の次元でのそれ らを包含した領域で認識することを可能とした。すなわち,従来,括動主体外 部の利害関係者がその関心から会計に凛求するものと活動主体内部の経営管理 者がその関心から要求するものとの相違が余りに・も大きいと理解されてこきたた め,前者に対応して外部報告会計(財務会計)が,後者に対応して内部報告会計 (管理会計)が考えられてきた。外部報告会計は,株主・債権者・政府・消費 者等の利害関係者に.対して,決昇期どとに作成される財務諸表を中核として活 動主体の経営成績および財政状態を,それぞれの利害関係者の現実に・適合して 報告することを主要な任務とする。したがって,ここでの対象期間はすぐれて 過去期間となり,また評価にあたってはすぐれて取得原価主義が採用されるこ ととなる。これにたいして,内部報告会計は,活動主体が,その職能を遂行する ために必要とする資料9)を内部的に提供することを主要な任務とする。したが って−,ここでの対象期間は過去的期間であることもさることながらすぐれて未 来的期間となり,また評価に・あたってはすぐれて時価主義が採用されることに なる。この二つの会計の分類基準ほ,それが報告先の相違にもとづくという 形式的区分であるがゆえに,二つの会計は,ますます分化の傾向をもつ。例え ば,外部報蕾会計を其の会計と理解する人達からは,内部報告会計鱒.真の会計 の領域を逸脱したものという批判が,内部報告会計のなかで進められてきた資 料の収集や計算方法や分類手続や評価理論等そ・のことごとに,なされた。しか るに,A5りβA71の見解ほ,会計の実質的機能に・着目し規定したことから,ニ つの会計を統合する基盤をつくるという効果をもたらした。A5tOβArの見解 の意義を,ただたんに従来の会計の概念を打破したというだけでほなく,ま た,ただたんに従来の会計の概念を拡張したというだけではないものとわれわ 8)乃摘.,p.4小前掲訳,5ぺ一一汐。 9)経済的情報ほ,狭義の価値的係数のみと限定されず,広く実体的な数値,すなわち 原単位(physicalunit)にまで拡張されて一理解されなければならないし,またそのこと が必要である。なぜならば,原単位に評価を与えることによって,それは容易に価値的 係数となりうるし,また,満動統制のプロセス■では原単仲常.よるコントロ−−ルがより有 効であるからである。
香川大学経済学部 研究年報10 州・4 − J97() れは理解しておきたい0すなわち,会計を外部報留金討と内部報告会封辛いう 形式的分類湛もとづいて∴定義づけ体系づけるのではなくて,会計の機能は情報 提供機嘩であると理解することに・よって,まず,分化しがらであった外部報告 会計と内部報億会計との統合の基盤をつくることを可能とし,ついで統合され た会封は,意思決定のための情報を提供する会計と統制するための情報を提供 する会計と このように会計を定義し,この見解を経営計算の領域に.適用すれば,そこに 計画計算・予鈴統制・標準原価計算・短期簿記をはじめとするいくつかの具体 的な計算を体系づける管理会計諭の基礎を措定■することが可能となり,それは 経営活動主体の意思決定紅役立つ情報と統制紅役立っ情報とを提供する機能を 舟す■るものとしての理解が可能である。ノ本稿でとりあげる管理会計報告沓(堺 下,「金言1」報沓膏」とよぶ)は,管理会計にあって,第1図10)にみられるよう に・,管理会計担当者と経常活動主体との紐帯,径路(channel)をなすもので あって,「会計報告書」は会計的数値で表現されて\いることが必要である。経 営活動を遂行するに.あたって,客観性を保持するために,その要求紅適合した 第1図 伝達システムとしての会計レステ\ム 行 為 ・−−−−・− 川・叫・−−・−・−− −・=−−−■■−■−■ ̄■ ̄  ̄■ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄一 ̄■ ̄ ̄ ̄■ ̄ 「− ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄‘ ̄ ̄ ̄ l l l _」 ;情報源泉 伝達者 手段径路 受領者 届先 憲憲;経営管理者 会計報告昏 L_ 経済的事象 会計担当者 会計制度ないし特別調査が必須であり,「会討報告書」によって提供される会計 情報が必要∴である。極言すれば,「会封報告番」の情報の適否が,経営活動の効 果を左右するといっても過言でほないのであり,この意味で「会計報告書」は 重要な意義を有し七いるものといわなけれはならない。 ⅠⅠ 前節において,「会計報告苗」を経雷管理と管理会計とP紐帯・径路を形成す 10)H”BieIman,Jr。and AR。Drebin,ManageYialAccoL‘7Tting,1968,pL,275
経営活動の統制と管理会言†報告審 ・− 5 − るものと理解したが,そもそも両者ほギのような交渉をもつものであろうか0
これをその基本に・立ちか.え.って,過程(p工−oCeSS)申観点から考察しょう○
管理過程は,計画設定過程と統制過程と把大別することができる。もとよ り,統制過程における管理も広い意味の意思決定であるが,ここでほ意思決定 を計画設定での行為と狭義紅理解し,統制に対応させる。計画設定過程におけ る意思決定とは,特殊原価調査にみられるような課題別計画における意決息定 である。ここにし、う課題別計画とは,設備投資計画あるいは新製品開発計画等 のい申ゆる個別計画とその各々の個別計画を特定の数期間に集約して調整総合 される長期計鱒とを意味している。これに対して,琴虚別計画特に長如画を 短期計画に調優し,編成したものを統制過程での対象とする。もとより,論理 的紅は,課題別計画の統制も、統制の領域として考えられないこともないが,課 題別計画の対象は非定型的活動11)であるので,・−・般隼いう統制は不可能である と思われる? 計画設定過程における意思決定と統制過程における活動統制との差異は,前 者が課題中心思考に立脚するのに対して,後者は活動中心ノ翠考に立脚してい る。この両者は前者に.おいて課題別ごとの代替案を選択した決定を,後者にお いで組織の単位に.割り当てて決定を実施に結びつけるという関係をもつ。この 意味で,前者においては計算的思考に重点がおかれ,後者に・おいて−は責任的思 考に.重点がおかれることとなる。 これらの過程に対応して,会計過程が考えられる。すなわち,計画設定過程 に対応して計画設定のための情報作成過程が存在しまた統制過程に対応して統 制活動遂行のための情報作成過程が存在する。しかもこの4者の相互蘭に飢、 てほ,「−・貫性」(cて)nSistency)を保持する必要がある。「一骨陸」を保持し得な ければ,その4者相互間の緊密性を維持することができず,緊密性を維持し得 なければ,その意思決定とその実施,意思決定のための情報提供と業績統制の ための情報提供,そしてまた,意思決定のための情報提供とこれ紅もとづく意 思決定,統制のための情報提供とこれにもとづく統制甲有効性がそこなわれる こととなる嘉、らである。これを図示すれば,算2図12)のどとくである。 ︶ ︶ 1 2 1 1 AAA,ASOBAT,p.44.,i汀掲訳,64ぺ,ジ。 AAA,“Report,”p.3香川大学経済学部 研究年報10 第2図 経営管理過程と会計過礎 ーー 6 一一 J.97♂ 経営瞥粗過程 会 言†過 程 第2図において,3者相互間に.矢印がつけられ,統制過程と統制のための情 報作成過程の間は直線のみで表示されている。この差についてAAA管理会計 委員会報告は何等の説明もしてはし、ないが,これほ単なるミスプリントでほな くて,この間の関係は密接不可分であり,統制のための情報が統制機能そ・のも のをほたすことを意味しているものと考えられる。これ紅対して,計画設定過 程と計画設定のための情報作成過程の間でほつねに試行錯誤的作業がくり返さ れ,計画設定過程と統制過程,また,計画設定のための情報作成過程と統制画 のための情報作成過程の間把あってほつねにフィードバックの 必要性があろか らであろう。そうでなけれは,原因分析とその改善結露が適切に行なわれ難い からであると理解しておきたい。 ⅠⅠⅠ 前節において,管理と会計との関連をその過程の面から考察し,そこに.おい て,情報を提供するものと情報を受け取る者との間紅,そ・してまた,意思決定 と統制との間に,(課題別討画仙・すぐれて非定型的活動である叫における 意思決定と統制との間紅フィードバック的交渉はあるとしても,いかにして実 際のコントロ−ルが可能であるかについて,われわれは現在の時点で疑問をも つことを指摘した)「一層性」の意義を見出したのであるが,それでは管理会 計の担当者・主体ほ何であろうか。 管理会計の専門的遂行は,実にコントロ−ラー部門の責任である。第1図に 示されたスタッフ職眉(staffpersonnel)は,多くの場合コントロ1−ラ−と呼 ばれる。コントロラL−は活動主体のトップ・マネジメントのスタッフとして管理 会計の専門的担当を通して機能されるものでなければならない。このコント
経営湾動の統制と管理会封報告薯 −・グ ー ローラー部門の組織的編成は,本部コントロ−ラが管理会計の内容を構成する 各経営計算の統轄者として存在する。その部門編成ほほすそれぞれの経営計算の 有する会計機蘭化したがってこ考え.られるのが−・般であり,管理会計を構成する 機能内容がすべて包括されている。すなわち,予算・原価計算・叫1般会計・エ 場会計・内部監査がコントローラーのもとに統轄されており,管理会討として の各種の経営計算の機能の相互関係が維持されている。たゞビァマンとドレビ
ン(H.Bierman,Jr’lr and AR.,Drebin)に.おいて:は,13)内部監査はコントローー ラ一に対応して考えられている。これは従来の説とは著しく異なっており,この 問題は他の機会に改めて論ずることとし,ここでは指摘しておくにとどめたい。 このような管理会計機能にしたがって編成される集権的コントロ・−ラー・部門 組織に.たいして,部門別ないし工場別に・編成されるコントロ−ラ一部門組織 は,それ白身は,いまだ必らずしも分権的組織を意味しているものではなく, それはむしろ集権的部門組織の一・形態を意味しているものであるが,それは分 権的管理組織への展開の可能性を有しているものと.考えることができる。 このコントローラー部門組織の特徴は,会計機能にもとづくそれに比べる と,各工場単位ごとに・,その主任のコントロ−ラ−がおかれている。それは各 工場ごとに,各会封機能の遂行を担当する工場コントロ,ラー(plant con・ t工・01leI)があり,・それが本部コントローラーに所属させられているためである。 それゆえに.,このコントロ−ラー部門組織では,本部に・おいてトップ・マネジ メゾ一に.直属するコントローラ、−の統轄する会計機能としてほ.,直接的に.ほ, 叫・般会計と予算と内部監査のそれぞれであって,エ場において遂行されるエ場 会計と原価計算はエ場コントロ−ラーを通して統轄される。それが本部のそれ ぞれの部門主任コントロ−ラL一に所属されることになる。 このように,このコYトローラ岬部門組織は,エ場コントロL−ラー一によっ て,現場の会計機能の遂行が直接的に統轄され,そ・れがさら紅,本部匿おける それぞれの部門主任コントロL−ラ一に間接的に統轄されつつ,活動主体全体と しては本部コントロ−ラL一に所属している。その点紅おいて,各経営計算機能 の構成は,前述のコントロ−ラ一部門組織の場合のそれと異なっているとして 13)H.Bierman,Jr.and A.R.Drebin,Ob・Cit,p,5
J970 香川大学経済学部 研究年報10 _ ∂ _ も,なお,本部コントローラ一に.よる集権的管理組織の組織形態をなしている ということができるであろう。 たゞ、,このコントローラ−一部門組織匿おいては,各コントローラー主任は, 必らずしも単一・の計算機能の専門的責任者ではない。工場コントローラ−を統 轄している各部門ラントローラーほ,エ場単位どとにその特殊性にしたがっ て,数種の計算機能を包括して遂行する着任を与えられている。各工場として は,それぞれ異なる生産方法や異なる生産物にしたがって原価計算の方法を異 にし,また予算編成の方法にも相違をきたすことになるから,それにふさわし い管理会計の遂行が要求されなければならない。このための管理会計の専門化 は,それぞれ異なるエ場コントロ⊥ラーを必要とする占 したがっで工場単位ご とに,それ砿たいす・る包括的管理会封の遂行のためのコントロL−ラ一部門の編 成がなされなければならない。 このエ場別または各部門別にしたがってなされるコン辛口ーラL」部門の編成 は,単】・会計機能の専門化による組織的編成とほ,その基本原理において相違 しこいる。それほ活動主体の各執行現場の実情に相応して・それぞれの管理会計 機能を統轄するエ場コントロ−ラー・を中心に・して編成されることになるから, それ白身として分権的なコントロ−うー部門組織湛・発展すべき基本原理にもと づいていると考えることができる。しかも経営管理組織は,経営規模の拡大匿 伴なっ・て,各執行現場に.おいて機動性と創造性との十分な効果の発揮を期待し て逐次分権管理組織湛移行することが考えられ,現実にまた,その傾向にある といえる。これに対応して,コントローラー部門も分権管理組織編成のもとに, その管理会計を遂行することが要求されるものと考えられなければならない0 管理会計の実践主体としてのコントローラ一部門は,管理会計の遂行過程にお いては,分権的管理組織の展開紅相応して,それ自身もまた分権的組織庭編成 されつつ,活動主体全体としての実情に有効紅役立つように考慮されることと なる。 ⅠⅤ ゲッツ(B.E.Goetz)は,すでに以前「管理の問題ほ,より復姓になり,ま
__ 9 __ 経営腐動の統制と麿理会剖報告沓 たより困難となってきつつあるのであり,このために,より敏速に報告され, 管理上の問題および目的に関して,より正しい指向とそ・して企業の状況に関し て1より十分紅有効な資料を必要としてきている」14)と述べて,管理のための 有効な情報の提供の必要性を指摘した。 でほ,この管理のための有効な情報を提供する「会計報告書」作成の原則は 何であろうか。これについて,ピァマンとドレビンほ,「まず第1に,その報告 を受け取り,利用する者ほ誰かということであり,算2ほ,その会討報告書を いかに.して作成するかということである。」15)と指摘している。またデピッtFソ
ンとツル−ブラッド(H.J.Davidson andR.M.
の情報を提供して,受け取り利用する人を圧倒させてしまう報告惟,効果的な報 告書として認めることができない。」ユ8)と述べ,ついで「余りに僅かな情報を提 供して,受け取り利用する人が推測しなければならないような報告はこれまた, 効果的な報告書として認めるこ.とができないであろう。」1「)と述べている。「会 計報告書」を作成するにあたって会計担当者ほすべての事項に.ついて規則 (Ⅰ血e)に準拠しなければならないということを意識しすぎる必要はない。∵しか し当然のことではあるが,会計担当者として保持すべきいくつかの指針(guides) が存在する。情報を受け取る管理者の能力には多くの差異が認められ,またそ の会計情報を要求する管理の形態濫も多くの差異が存在するゆえ紅,規則はす べてのケ・−スについて有効ではないのである。 Ⅴ ビァマンとドレビンほ,「会計報告書」作成には,誰がこの報奮を必要として J4)BりE.Goetz,肋7才〃g♂朋♂〝JタJβ′グ〝メ〝g‘才′クd C♂”如才,1949,p.9..今井忍・矢野宏 共訳,『経首斜面と統制』,昭38,10ぺ−ジ。 15)H.Bierman,Jr.and A.R.Drebin,OP.c紘,p.23516)H.J.,Davidsonand R.M.Trueblood,“Accounting for Decision・making,,,tAe Accounting Revieu,,Vol・XXXVINo.4,October,1961,p.579.「情報の過剰
(0VeIinf0Imation)」として詳しく論じられている。
17)Ibid,pp.579M60”「情報の不足(uTlderinformation)」として詳しく諭しられてい
香川大学経済学部 研究年報10 J97(フ −J∂ − いるかという点に作成原則の焦点を合わせた後に.,次の5項目紅わたる−・般的 な指針を示している。18) 欝1は詳細にして長文の報告書を要約して報告すること。近時,不適切にして 余りに多くの詳細な報告をトップ・マネジメント軋提出し,トップ・マネジメ ントを圧倒する傾向が存在する。トップ・マネジメソ†に∴提供される詳細な報 告書は,必要に.して最小限度軋とどめられるぺきであり,もしその詳細な「会 計報告書」が提出される場合には,要約したものを添付すべきである0この要 約された「会計報告書」は,トップ・マネジメントがその詳細なr‘会計報告 書」を不必要とする場合湛代用されることに・なり,きわめて効果的である0ロ ヮ・−。マネジメントにおいては,より詳細な報告に・関心を有しており,その詳 細な報告を基礎にして作業を実施することは当然である。 欝2ほ,詳細事項を報告する代りに,(ある場合ほ.,これに・加えて)例外事項 は,必らず報告すること。すべての報告書に詳細な事項を示す必要はない0 し かし,例外の原理にもとづく管理の方法は−・般に認められており,この方法を 効果あらしめるために, に関する「会計報告書」を必要とする。この困難な事項紅ついてのは,特に詳 細に注意して.一報告されなければならない。 第3は,管理可能費と管理不能費とを俊別して報告すること。′管理可能費と 管理不能費とを区別する原理は,すでに以前から,その必要を力説されている 原理である。これは,ある経営管理者が報告されたコストについてコントロ」− ルし得ない地位にあるのであれば,その経営管理者はコスト情報で責任を負わ されるべきでないという事実に.もとづいている。能率測定は,その経営管理者 が管理しうるコストについてのみ考慮されるべきであって,すくなくとも,報 告は管理可能費と管理不能費とを指摘し,区分して報告されるぺきである。 第4は,報告にあたっての技術的立場(technicalaspect)を説明し報告す ること。 欝5ほ,標題を付することなしに文書機械(di?tributemachine)を使用し てはならないこと。 18)H.BieImanJr・,and A.RりDrebin,OP.cほ,pp.235−7
経営活動の統制と管理会計報告書 Jユ ー 以上の5項目を,ピァマンとドレビンほ,「会計報告督」作成のための一−・般的 な指針としあげているのである。 ビァマンとドレビンは,5項目を指摘した後,月次製造原価報告書の例を第 Ⅰ表としてあげ,「この第Ⅰ表に示した形式の報告書ほ,期間中,出庫された 寛Ⅰ表 月次製造原価報告番 19一年1月31日 期首仕掛品 製造原価 $ 20,000 喧接労務費・ r・$60,000 材 料 管 30,000 製造間接費 70,000 総製造原価 月間完成品 期末仕掛品 160,000 ー’ $ 180,000 165,000 $15,000
製品の製造原佑を示しうるものである。しかし,この会計報告書ほ,情報とし
て効果的なものであろうか,はなはだ疑問のあるところである。会計情報を効
果的ならしめるコストの表示は,いくつかの関連あ′る制度(someframeof
reference)の申で取り扱われるのでなければ,そLの効果は減殺されることと
なろう。もしも,予算あるいほ標準原価が認識されており,また,前期のコ
ストが認識されているならば,それはより効果的な表示となり,政策決定の
1手段となるはずである。」19)と批判し,「この意味で,効果的な報告書を示せば
算Ⅱ表のごとくである。」2のと述べ,(1)製造間接費を変動費と固定費とに分解し
て表示すること,(2)有利差異ないし不利差異を明示し年表をあげている0政策
決定のための「会封報奇書」としてこのことはもとより重要であるがここで問題となる1点は?この例示では,費目の分類としては,直接労務費・材料費・
製造間接費(英米において∵一般的分類である)の形で示されており,直接経費
は分類されていないということである。ここでは直接経費(direct expenses, Sondereinzelkosten)は製造間接費申に含まれ,区分されていない。ドイツ 19)Jみ∠d,p.238. 20)乃∠d,pn239.−∫2一 香川大学経済学部 研究年報10 J.97() においては,すでに・以前から,Sonder9inzelkostenの概念がみられて一いたかが, 鵠笹表 月次避退原価報告書19一年1月31El 箕際原価と標準原価との比較 差異;(有利差 異)不利差異 実 際 標 準 癖 接 労 務 費 $60,000 $62,000 ($2,000) 材 料 哲 30,000 36,000 (6,000) 製造間接費・変動費 50,000 45,000 5,000 製造間接費・固定費 20,000 19,000 1,000 $160タロOO $162,000 」 一 英米の文献ではみられなかった。しかし,近時英米の文献に.おいてもdiI∝t
expensesの用語がみられるようになってきたことを,特に指摘しておきた
い021)経費とは,材料乱労務費以外の原価要素をいい,減価償却費,たな卸減耗 費および福利施設負担額,賃胤 修繕料,電力料,旅費交通費等の諸支払経 費をいうが,これらの経費のうち製品との関連において,製品に対する原価発 生の態様すなわち原価の発生が一億単位の生成に関連して直接的に認識できる ものを殖接経費という。英米において,これが区別されるようになった理由と しては,第1に・外注加工費,特定製造指図育紅関連した特殊な設計費・特許権 使用料・試作費・検査料等紅考えられる費用の発生が多く,金額的にみても大 きくなってせたためであろう。その理由の第2ほ,直接経費ほ値接材料費や直 接労務費と同様紅はぼ変動費であり,直接経費を新らしく区分することによっ て,製造間接費はまさ紅間接費そのものとなり,それははぼ固定費(もとより 直接経費であっても固定性を示す費目むある。例えば,月間ないし年間で一雇 金額を支払うよう契約された特定品のみに使用される特許権使用料)となり見 積り・予定と統制とを容易にするためであろう。この第Ⅱ表の月次製造慮価報 告書で問題となる欝2点は,製造間接費を変動費と固定費とに分解していると21)HJ・Wheldon,COmpletely revised byL.w.,りOwlerandJ.L.Brown, C∂5′A“の用戯乃gα〝dC♂・蝕物g几蝕純血・ゞ,1960,pl.7.このことは 拙稿,「直接経貿」,
太田哲三・黒沢清・佐藤考−…・・山下勝治・番場嘉一郎監修『原価計静辞典.』,昭43,567 ぺ一汐紅絹介している。
経営酒動の統制と管理会計報嘗讃 ーJβ − して−もなお全部原価引算で表示されていることである。ビアマンが別の論文で 述べているところであるが,22)全部原価計静を導入している会計にあって表示 される利益は製造と販売両者の影響を受けて示されており,それは両者の影響 が混合表示され,区分されないまま示されるという曖昧なものとなる。それゆ え,それを販売の函数によってのみ表示することのカが,かえって純粋にしたが って正確に示しうるものと考え.,全部原価計算を導入した会計よりも変動原価 計算を導入した会討の方がより適切であることを緒摘し,全部原価計算ほ変動 原価の容認を欠くものであって「神許」であると述べている。この場合の処理 手続に/ついては,製造上の固定費を製品に配賦しないで(個別対応しないで) (販売上のまた管理上の固軍費ほ全部原価計算にあっても儲品に配威しない), 製品固定費のすべては直接に期間に賦課されることとなる。 以上の指針に.もとづいて作成される「会計報告書」は統制されなければなら ない。大規模企業にあっては,コスト・セイビングを可能ならしめる最も大き な領域の1つとして,「会計報告書」作成費用,特にコスト・マントロールに 関連した「会計報告書」作成費用の問題を指摘しうるであろう。粗野にして多 種におよぶコスト・コントロールの報告書と,その機能をさして効果あらしめ ることのない「追加的報告書」が,しばしば作成されているのであり,この傾 向はつねに見られるところである。「会計報告書」作成のためには,相対的な, また絶対的な金額で多額の費用を必要とする。たしかに,経営管理は「会計報 告書」による情報の提供を必要としているのであるが,しかしそれはあくま で,情報の損供が選択されたものであり,また,AAA管理会封委員会報告は, 「その情報提供に必要な費用ほその効果を考慮して経済的庵ペL−スで見合うも のでなければならない。」ことを指摘している。23)・一方で咋,資本費の統制と広 範囲に投下された資金の安全性のために精密な計画を樹立し,また労働と原材 料についても非常な注意をもってコントロL−ルするにもかかわらず,他方で は,・そ−の「会計報告昏」の受領者に無視されるかもしれない作成貿用について
22)H.Bierman,Jr”,“Myths and Accountants,けihc Accounting Review,Vol,ⅩL No.3,Tuly,1965,pp..541−6.ビアマンは,この論文の申で,この全部原価計界の例 を10種の神話のうちの1つとレて取り上げている。
香川大学経済学部 研究年報10 − ブイ 一 J970 は,さして一往患を払わない傾向がある。 また,適時性を欠いた「会計報告書」の作成も問題がある。デビッドソンと ツルーブラッド略,「適時性を欠いた情報としては2種類のものがあげられる。 1つは,余りにも遅きに失する情報があり,ある場合にほ必要とされる頻度よ りも少なく捉供される情報である。もう1つほ,日常用意されているゆえに., 余りに考えなしに提供される情報である。すなわち,経済的あるいほ規則的に 提供することの必要がない悟報で,それは不規則に散発的な間隔でのみ必要と される情報の場合にみられる。」と述べている。弼 またしばしば,重複する「会計報告書」が作成される。−・般的に.,情報の重 複は,同じ情報を要求するいくつかの部門が存在することから生ずる。この重 複の例として−,ビァマンとドレビンは,つぎのものをあげている。26) (1)財務部門と労務部門の両者が,それぞれ週次職員平均賃金報告書(weekly
report of the average wage of personnel)を作成している場合 (2)生産管理部門と製造部門の両者が,それぞれ製造工程における職務状況報
告書(status report of jobsin process)を作成している場合
(3)原価計算部門とインダストリアル・エンジニアリング部門の両者が,とも に直接労務費に関する資料を蒐集し,それぞれコントロ−ル・.リボ−トを提 出して1いる場合 このような重複をは.じめとするさまざまな浪費をいか紅して防止するべきで あろうか。 そしてまた,適正な「会計報告苔」がつね紅作成されていることを,いかに して確信しうるであろうか。 この問題紅ついて,ピァマンとドレビンほ,「この解答の基準となるものは, 経営管理者が自分白身,今いかなる会計情報を必要としているか,またいかな 24)軋J.Davidsonand R.M.Trueblood,OP.citい,Pp.579−6O.「適時性を欠いた情 報(untimelyinformation)」として詳しく論じている。ボスr・ツクもまた,会計数値の 有効性判断の基準として「適時性」をあげている。C・Bostock,肋乃αgβ椚β乃≠, A“肋腑離堀α感夕物理加招一考γ,1960.この文献に.ついては,拙稿「管理会討報告書 紅おける数億の性格紅ついて」香川大学経済論鼓舞35巻鰭4号1962年10月47−62ぺ− ジにおいて紹介している。 25)H.Bierman,Jr.and A,R.Drebin,OP・Citr,p・237.
経営活動の統制と管理会計報告書 ーー∫う 一−
る会計情報が今の自分にとって必要であるか,の判断にその基準をもとめるこ
とができる。」(Aβ0βArに.いう「目的適合性」とそ・の内容を同じぐするもの
と考えられる。)とし「■この目標を完全に達成するために,今まで多くの失敗を
経験してきたのであるが,その失敗の経験の結果;この問題に・対処する具体的
方法」と.して−,「滞1に.,新らしく要求される会計報告書については,その要求
が妥当なものであるか否かを検討し,第2に,従前よりなされている会計報告書
については,その形式が今なを有効なものか否か,および,その報告書がどの
程度利用されているかという利用状況を検討する権限を与えられキジポー・ト・ グル−プの必要」26)を指摘している。ここで本稿の課題とほ直接の関連をもつものではないが,特別報告書につい
てふれておかなければならない。日常の経営活動統制のための「会討報告書」ほ,
すべての必要∴目的に答えるべく期待し得ないものであり,また取得すべきも
のでもないということを確認しておきたいためである。特別な会計情報を必要
とする場合には,特別な方法に.もとづいて得られる資料から報告書が作成せら
れるぺきでぁる。例えば,課題別計画設定のための「会討報告書」にほ差額原
価分析ないし特殊原価調査による「会計報告書」が作成されるべきである0特別な意思決定のためには,それに.適応した特別な会計情報を必要とすることを
意味しているのであって,ここに特別報告書の意義が存許するのである0 この
意味において,特別報告書を規格化することほ,危険性を有しているのであ
り,ある場合にあっては,これほ特別報告書の機髄を無意味なものとしてしま
うこととなる。すなわち,もしも製造設備の売却を考慮するのであれば,その
製造・販売の望ましさは,獲得しうる収益から製造すれば生ずるであろう追加
的原価を控除した差額原価分析によって決定されるであろう。また,どのよう
な場合でも生ずるであろう埋没原価は問題解決にあたって除外されなければならない。しかし,もしも製造設備を売却しうるのであれば,その確定した固定
費は設備の売却に.よって回避可能費と考えうるから,埋没原価として考慮する
ことはできない。このことは,特別な意思決定のためにほ,経常的かつ帳偉か
ら資料が得られる「会計報告書」(予算報告書は,経常的ではあるが帳簿外の資
26)乃摘・,p.247.香川大学経済学部 研究年報10 J97(フ −▼Jβ − 料から作成される)ではなくて,非経常的かつ帳簿外からの資料で作成される 特別報告等が必要であることを意味しているのである。 ⅤⅠ 会計ほ,情報の受領者が事情に.精通して判断や患恩決定を行なうことができ るように,経済的情報を識別し,測定し,伝達するプロセスである。「会封報告 番」ほ,第1図紅示したように,会計担当者と情報の受領者・利用者とを結びつ ける径路(channel)である。これを管理会討の局面で考えれば,「会計報告書」 ほ,前記会計担当者と活動主体とを結びつける径路であると言い換えることが できる。管理会計と活動主体とは,欝2図に示したように,それぞれの意思決 定と統制の側面でフィードバックが行なわれるし,また括動主体と会計との側 面で結びつけられる。「会計報告番」は意思決定と業績統制のための情報提供の 紐帯の役割をはたすものであるから,そこでの基本原理は,適切さという目的 適合性であろう。この原理に成り立、つ「会計報告書」の作成原則は,目的適合 性を充足するための4者相互間(前述第2図参照)の「一層性」の保持であろう。 そうでなけれは,「会計報告書」の効果を期待することがセきない。でほ現実の 多患の「会計報告書」がほたして−,すべて有効な「会計報告書」であろうか。 有効な情報を得るための努力が払われなけれほならないことは当然である。し かし反面,このことがしばしば,望ましくない副産物として不必要な報告書の 発生を助けることになる。「会計報告書」が5年前と同様の方法で作成されてお り,またその時紅もっとも有効であったということの理由で咋,現在もなお有 効に利用されている理由とは必らずしもならない。 「会計報告書」の質と豊ほ,厳重に統制されなければならない。こめため紅 ほ,「会計報告書」作成の指針にもとづいて,新らしく作成されようとする「会 計報告書」についてほ∴その要求がはたして翼当か否かを検討し,また従来か ら継続して作成されている「会引率艮告苔」に1っいてはっ その形式と利用状況の適 否を検討する権限をもつリボーート・グル十プの組織化が必要である。ごれは同 時紅また,情報の受領者・利用者である活動主体がその報告を要求するにあた って「今,自分はいかなる情報を求めているのか」という正確な認識が是非と も必要であることを意味している。