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カテキン摂取がラットのアルコール誘発性肝障害に及ぼす影響-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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カテキン摂取がラットのアルコール誘発性肝障害に及ぼす影響

松尾達博・横内千香

Effects of Dietary Catechin Intake on Alcohol-Induced Liver Injury in Rats

Tatsuhiro Matsuo and Chika Yokouchi

Abstract

 This study was designed to determine whether dietary catechin intake protects against alcohol-induced liver injury in rats. Forty-eight male Wistar rats (3 weeks old) were divided into 6 groups: dextrin (D), low-ethanol (LE), high-ethanol (HE), dextrin and catechin (DC), low-high-ethanol and catechin (LEC), high-high-ethanol and catechin (HEC). LE and LEC diets contained 6.5 % ethanol and HE and HEC diets contained 19.5 % ethanol. Catechin (2 %) was added into DC, LEC and HEC diets. Rats were fed experimental diets based on high-carbohydrate (dextrin) diet ad libitum for 8 weeks. Food intake and energy intake were higher in the high-ethanol groups, but body weight gain did not differ among six groups. Neither dietary ethanol nor catechin influenced serum triglyceride concentration, aspartate amino transferase (AST) and alanine amino transferase (ALT) activities. These results suggest that supplemental catechin has no effect of alcohol-induced liver injury in rats.

Key Words : catechin, ethanol, liver injury, rat

緒 言  わが国の男性を対象とした調査研究によると,純アル コールで約20 gを日常的に飲酒する場合,死亡率が最も 低くなると報告されている(1).一方で,過度の飲酒が死 亡率を大幅に上昇させることも明らかであり(2),全死亡 率と一日の飲酒量との関係をグラフ化するとJ型のカー ブを示す(Jカーブ効果).  戦後,日本人の飲酒者数は増加し,一人当たりの飲酒 量も著しく増大した.近年,一人当たりの飲酒量に大き な変動は見られないが,アルコールによる肝障害の比率 は依然として増加傾向にある.また女性の飲酒者も増加 しており,2009年度における20∼24歳女性の飲酒者の割 合は約90%に達し,同年代の男性飲酒者の割合を超えて いる(3)  多量にアルコールを摂取すると,代謝産物であるアセ トアルデヒドや,代謝される際に産生される活性酸素種 (ROS)によって肝機能の低下を引き起こす.これがア ルコール性肝障害であり,症状の程度によって脂肪肝, アルコール性肝炎,アルコール性肝線維症,肝硬変など に分類されるが,もっとも初期に起こる肝障害は脂肪肝 である.  一方,茶に含まれる苦味成分であるカテキンはポリ フェノールの一種である.茶カテキンには,遊離型カテ キンであるカテキン(C),ガロカテキン(GC),エピガ ロカテキン(EGC),エピカテキン(EC)と,ガレート基 をもつガレート型のエピガロカテキンガレート(EGCg), エピカテキンガレート(ECg),カテキンガレート(Cg), ガロカテキンガレート(GCg)がある(4).これまでにカ テキン類の抗酸化作用,殺菌作用,抗ガン作用,血圧低 下作用,コレステロール低下作用,血糖抑制作用など多 くの生理作用を有することが知られており(6),さらに近 年,抗肥満作用を有することが示唆されている(6).先行 研究では,カテキンの抗酸化作用が肝障害を予防する効 果があると報告されている(7)  しかし一方では,メカニズムは不明ながら茶カテキン が肝障害を誘発することが報告されている(8).カナダ保 健省は,緑茶抽出物製品の摂取との関連が疑われる肝毒 性の事例を公表している(8).公表された事例は,体重減 少目的で緑茶抽出物製品(カテキン600 mg/day)を半年

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間摂取した42歳女性が肝障害を引き起こし,肝移植を受 けたというものである.カテキン摂取により肝障害が誘 発されるのであれば,アルコールとカテキンを同時に摂 取することで肝障害をさらに悪化さることも懸念され る.そこで本研究では,許容量(1)および許容量の3倍程 度の慢性的なアルコール摂取下におけるカテキン摂取 が,肝障害に及ぼす影響についてラットを用いて検討し た. 2 . 実 験 方 法  実験動物には,3週齢のWistar系雄ラット48匹を使用 した(開始時平均体重53.5 g).3日間を予備飼育期間と し,温度22±2℃,湿度55±5℃,明期を8:00∼20:00 とする12時間の明暗サイクルの環境下で市販粉末飼料 (CE 2,日本クレア株式会社)および水を自由摂取さ せた.その後,ラットを各8匹ずつデキストリン群(D 群),低エタノール群(LE群),高エタノール群(HE群), デキストリン−カテキン群(DC群),低エタノール−カ テキン群(LEC群),高エタノール−カテキン群(HEC 群)の6群に分け,同様の環境下で実験食および水を自 由摂取させて8週間飼育した.実験食の組成をTable 1 に示した.カテキンは試薬(+)−カテキン(ナカライ テクス株式会社,京都)を用いた.またアルコール摂取 には粉末エタノール(粉末酒清酒CKタイプ,佐藤食品 工業株式会社,愛知)を使用した.粉末エタノールの組 成(g/100)は次の通りである(水分/タンパク質/脂 質/炭水化物/エタノール=2.5/0.2/0/66.5/30.5). 飼育期間中の体重および食餌摂取量については毎日記録 した.  アルコールおよびカテキンの摂取による薬物代謝の影 響を調べるために,飼育7週目に薬物代謝試験(9)を行っ た.試験日の前日,全群に実験食Dを与え,試験日当 日,各群のラットに 麻酔薬であるペントバルビタール ナトリウム100 mg/kgを腹腔内投与し 睡眠時間を測定し た.  飼育終了日に4時間絶食後,断頭屠殺し,血液を採取 後,心臓,肝臓,脾臓,肝臓,副睾丸脂肪組織,腎周囲 脂肪組織,腸間膜脂肪,腓腹筋,ヒラメ筋および足底筋 を摘出,秤量した.肝臓については分析まで 80 ℃で保 存した.血清については生化学検査を株式会社福山臨床 検査センターに依託した.  肝臓中の脂質の抽出にはFolch法(10)を用いた.肝臓サ ンプル約0.1 gを一晩凍結乾燥した後,メタノール0.5 ml を加えホモジナイズし,クロロホルム1.0 mlを加え撹拌 し,冷蔵庫で一晩放置した.放置した混合液の上清0.8 mlを別のチューブに移し,生理食塩水0.2 mlを加え撹拌 し,15,000 rpmで5分間遠心分離し,2層に分かれた下 層を検体とした.  肝臓中性脂肪含量については,アセチルアセトン法(11) 用いて測定した.肝臓総コレステロール含量については, 脂質抽出検体を窒素ガスで溶媒除去し,脂質溶解液(ブタ ノール:メタノール:トリトンX 100=2:1:1V /V )に溶解後, 市販キット(コレステロールE テストワコー,和光純 薬工業株式会社,大阪)を用いてコレステロールオキシ ダーゼ・DASO法(12)で測定した.  屠体分析については,オートクレーブで121 ℃,90分間 水蒸気加圧した後,フードプロセッサー(MK K57W ス ピードカッター,ナショナル)でホモジナイズした.ホ モジナイズしたサンプルから骨を除去した後,105 ℃で 10時間乾燥させ,ソックステック抽出器(SoxtecTM2055, フォス・ジャパン株式会社)を用いて粗脂肪を抽出した. 抽出前後の重量差をサンプルの粗脂肪量とした.体脂肪 量はPaikら(13)の推定式により算出した.

Table 1 Composition of the experimental diets (g/kg).

Ingredients D LE HE DC LEC HEC

Casein DL-Methionine Dextrin Powdered ethanol Soybean oil Mineral mixture Vitamin mixture Cellulose Catechin Cholin chloride Butilhydroxy toluene 200.0 3.0 649.9 0.0 50.0 35.0 10.0 50.0 0.0 2.0 0.1 200.0 3.0 433.3 216.6 50.0 35.0 10.0 50.0 0.0 2.0 0.1 200.0 3.0 0.0 649.9 50.0 35.0 10.0 50.0 0.0 2.0 0.1 200.0 3.0 649.9 0.0 50.0 35.0 10.0 50.0 2.0 2.0 0.1 200.0 3.0 433.3 216.6 50.0 35.0 10.0 50.0 2.0 2.0 0.1 200.0 3.0 0.0 649.9 50.0 35.0 10.0 50.0 2.0 2.0 0.1 Energy (kcal/g) 7.02 7.02 7.02 7.03 7.03 7.03 D, Dextr

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 得られた測定値を平均値±標準偏差で表した.統計処 理には統計ソフト(エクセル統計 2008,社会情報サー ビス,東京)を用い,二元分散分析を行った後,各群間 の有意差検定にはFisherの最小有意差法を用いた.p< 0.05にて有意差ありと判定した. 3.結果および考察  薬物代謝試験による睡眠時間は,D群:116±34,LE 群:111±42,HE群:141±47,DC群:108±49,LEC群: 97±34,HEC群:120±22(分)であり,各群間に有意 差は認められなかった.体重増加量,肝臓重量,腹腔内 脂肪組織重量,体脂肪率には各群間に有意差は認められ なかったが,食餌および摂取エネルギー量はいずれもア ルコール摂取群で有意に高値を示した(Table 2).  血清グルコース,インスリン,中性脂肪濃度には各群 間に有意差は見られなかったが,血清総コレステロール 濃度はカテキン摂取群で高値を示した.肝障害の指標で あるAST値とALT値には各群間に有意差を認めなかった (Table 3).  肝臓中性脂肪含量(D群:41±16,LE群:42±26,HE 群:44±18,DC群:45±12,LEC群:37±15,HEC群: 52±24 mg/g)および肝臓コレステロール含量(D群: 27±3,LE群:27±4,HE群:30±6,DC群:27±3, LEC群:27±2,HEC群:29±4 mg/g)には,各群間に 有意差を認めなかった.  アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH) によってアセトアルデヒドに分解されるが,チトクロー ムP450(CYP)にもエタノールを分解する働きがあるこ とが知られている(15).アルコールを多量摂取することで CYPによる代謝が活性化する.CYPは麻酔薬などの薬物 を代謝する酵素であるため,CYPが活性化すると,薬物 代謝が亢進し,薬物の効き目が悪くなると考えられる. したがって日常的なアルコール摂取によりCYPが活性化 されれば,ペントバルビタールナトリウムによる麻酔作 用が低下し,ラットの睡眠時間が短縮すると予想され た.しかし本試験の薬物代謝試験における睡眠時間には 各群間に有意差はなく,本試験で使用したレベルのアル コール(許容量(9)および許容量の3倍程度)では薬物代 謝への影響がないことが示された.  また,食餌摂取量およびエネルギー摂取量がアルコー ル摂取群で有意に高くなったが,体重変化や組織重量, 内臓脂肪重量は有意差が見られなかったことから,許容 量の3倍程度のアルコールを毎日摂取しても体重増加に 影響を及ぼさないことが示された.  本試験では,カテキンの抗酸化作用がアルコール誘発 性肝障害に及ぼす影響について検討したが,肝障害の指 標であるAST値およびALT値には各群間に有意差が見ら Table2 Body weight gain, tissue weights and body fat in the each group of rats.

D LE HE DC LEC HEC

Body weight gain Food intake Energy intake Liver weight Abdominal fat weight Body fat (g) (g/day) (kcal/day) (g) (g) (%) 218±10 15.8±1.1b 60.1±4.2c 10.0±0.7 19.6±3.1 14.5±2.1 218±14 16.5±1.3b 65.6±5.0b 9.5±0.8 21.0±4.7 15.5±2.5 209±13 19.2±0.8a 83.3±3.4a 9.7±1.1 18.4±2.0 14.6±1.9 215±18 16.0±0.9b 61.1±3.3bc 10.4±0.7 20.1±2.0 15.2±1.6 214±9 16.5±0.9b 65.6±3.4b 9.8±0.8 21.2±2.1 16.3±1.9 211±21 19.4±2.0a 83.9±8.6a 10.4±1.4 19.3±3.4 15.0±1.5 Values are menas ± SD for 8 rats.

Meand with different superscripts within a row are significantly different(p<0.05, ANOVA and Fisher s PLSD tests). D, Dext

Table 3 Concentration of serum components in the each group of rats.

D LE HE DC LEC HEC Glucose Insulin Triglyceride Total cholesterol AST ALT (mg/dl) (ng/ml) (mg/dl) (mg/dl) (IU/l) (IU/l) 133±12 4.5±2.7 87±26 116±12ab 304±60 78±12 139±11 5.6±2.6 125±61 116±10b 291±92 70±15 140±9 5.9±2.7 133±80 113±8b 313±47 87±35 143±6 5.0±1.8 117±33 128±11a 309±38 75±8 142±14 3.9±0.9 151±74 121±9ab 300±57 75±10 136±4 4.6±2.0 161±55 121±16ab 320±112 81±27 Values are menas ± SD for 8 rats.

Meand with different superscripts within a row are significantly different (p<0.05, ANOVA and Fisher s PLSD tests). D, Dextr

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れず,薬物代謝試験においても有意差を認めなかった. これらの結果から,本試験の条件においてラットはアル コール誘発性肝障害を引き起こしていないと推察され, カテキン摂取によるアルコール誘発性肝障害への影響を 確認することができなかった.アルコール誘発性肝障害 を引き起こす試験系については再考する必要がある.  一方で,茶カテキンには体脂肪・体重低減作用,コレ ステロール低下作用があると報告されている(5)が,本研 究では,体脂肪,体重増加量,肝臓コレステロール含量 にカテキン摂取による影響は見られず,一方で血清総コ レステロールはカテキン摂取群で有意に高値を示した. 以上のことから,カテキン摂取では,体脂肪・体重低減 作用,コレステロール低下作用を確認することができな かった.  本試験では実験食としてデキストリンをベースにした 高炭水化物食を用いた.これは,アルコール源として用 いた粉末エタノールにデキストリンが多量に含まれてい たためである.しかし,この食餌では脂肪やコレステ ロールの摂取量が少なく,本試験で用いた程度のアル コールを摂取しても脂質代謝に対して影響を及ぼさず, 肝臓における脂肪蓄積が起こらなかったと推測される. そこで,食餌を高脂肪・高コレステロールにすることに よって,アルコール摂取下での脂肪代謝が過剰に亢進さ れ,脂肪肝を誘発しやすくなる可能性が考えられる.こ れまでに報告されている先行研究(14−16)によると,高脂肪 食によるアルコール誘発性肝障害が示されている.  また,カテキンとして試薬の(+)−カテキンを用い たが,抗酸化力が比較的弱いため,その効果が見られな かったと推測された.先行研究(17−19)によると,緑茶に含 まれる茶カテキン類の約1/2を占めるエピガロカテキ ンガレートは,茶カテキン類の中で最も抗酸化力が高い と報告されている.このことから,緑茶を飲用する場合 に期待される作用に対するエピガロカテキンガレートの 寄与は大きいものと推測される.したがって,エピガロ カテキンガレートを用いて再度検討すべきかも知れな い. 引 用 文 献

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Table 1 Composition of the experimental diets  (g/kg).
Table 3 Concentration of serum components in the each group of rats.

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