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ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係 : ヴォルフの<エオリアン・ハープに寄せて>を例に-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

    ドイツ詩における音楽的要素と

  ドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係

ヴォルフの〈エオリアン・ハープに寄せて〉を例に

はじめに

稲 田 隆 之

 本論は、ドイツ詩における音楽的要素がリートLied(ドイツ語の芸衛歌曲)の歌唱旋律において どのように活かされ、ことば(詩)と音楽(歌唱旋律)にはどのような矛盾が生じているのかを分析 することにより、リートのみならず、ドイツ語の声楽作晶における歌唱旋律と詩の関係を明らかに する分析法への試論である。  詩の表現にとって重要なのは、そこで書かれる内容もさることながら、その内容が「いかに」書 かれるのか、ということである。その「いかに」に当たるものとして、ことばの選択にはじまり、 語順、響き、リズムの変化、間(ま)zasurの挿入などが挙げられる。そしてドイツ詩の場合には、 基本となる表現手段として、韻律Metrumが存在する。詩人たちは、韻律法におけるHebung(揚格) とSenkung(抑格)の規則的な反復リズムと、脚韻による構造的枠組を用いながら、詩的表現を駆使 する1。その詩的表現こそ上述の要素であり、言い換えれば、詩における音楽的要素とみなせよう。 書かれる内容がこれらの音楽的要素と結びつくことで、詩的な効果が生まれるわけである。  しかし、詩におけるそのような音楽的要素は、リートとして作曲される際に、作曲家によってど のように活かされているのか。本論は両者の関係を分析する試論として、ドイツ・リート史におい て「朗唱リートの完成者」2とされるドイツの作曲家、フーゴ・ヴォルフHugo WOlf (1860 −1903)の 作品を取り上げることとした。というのも、詩の朗唱を歌唱旋律に活かしたとされるヴォルフであ るにも関わらず、詩の韻律とリズムを分析し、それらと歌唱旋律の関係を詳絹に分析した音楽的研 究は極めて少ないからである。 1 詩の韻律法と音楽の拍節法の関係 1.1 ドイツ詩の韻律におけるHebungと3種のアクセント

 ドイツの音楽学者ディーター・デ・ラ・モッテは、著書『詩は音楽Gedichte sind Musik』のなかで、

ドイツ詩におけるさまざまな音楽的要素を抽出している3。韻律はその重要な要素のひとつだが、 彼は詩の韻律を示す際、従来の記号ではなく音符で記した。本論でも彼の方法を取り入れたい。と いうのも、音符で記された韻律のリズムは、音楽の拍節法との関連を分析するのに適していると考 えられるからである。  韻律に関連して注目したいのが「軽強音1eichte Hebung」の存在である。軽強音とは、「語としては        −25−

(2)

稲田隆之

本来強音をもたぬ音節が韻律上軽い強音をもつこと」4である。そのような弱いアクセントは、韻

律において中立的なシラブルで生じる。すなわち、ひとつのシラブルしかもたないことば一例え

ぱ「in」、「und」や1音節のsein動詞など のいずれかのシラブルにおいて、である。 認めているが、本論でも同じ立場をとる。 において、または、3つ以上のシラブルをもつことば 山□は軽強音を詩的な表現手段のひとつとして積極的に  この軽強音の存在と関連して、「実行されるHebung(er狛11te Hebung)」と「実行されないHebung (nicht ermllteHebung)」について触れておきたい。 ドイツの音楽学者カール・ダールハウスは、 ヴォルフのリートにおける朗唱性の問題を論じるなかで、「実行されるHebung」と「実行されない Hebung」を区別すべきだとする5。「実行される」とは、そのHebungがもつ韻律上のアクセントが言 語上でもアクセントをもつこと、逆に「実行されない」とは、そのHebungは韻律上のアクセントは もつものの、言語上のアクセントはもたないことを意昧している。リートの歌唱旋律においてテク ストのHebungが実行されるか否かは、作曲家がその詩をどのように読んだのか、その解釈の立場 や姿勢を反映していると考えられる。なお、ダールハウスは軽強音の存在については触れていな い。中立的なHebungを「軽強音」とみなすのか、「実行されないHebung」とするのか、あるいは他の Hebungと同様に強く発音して「実行されるHebung」とするのかについては、解釈者の解釈に委ねら れる。  とはいえ、この問題はもうひとつのアクセントの存在が重要であろう。それは「意味上のアクセ ント」である。詩の表現にとって韻律の存在が非常に重要だとはいえ、各詩行には内容を伝える上 で重要なことばが存在する。その重要なことばに認められるのが、意昧上のアクセントである。詩 人が重要となることばやキーワードをどのような語順で用いているのか。そのことばは韻律とリズ ムの関係においてどのような効果が目論まれているのか。こうした問題を明らかにするためには、 意味上のアクセントをもつことばを見抜くことが必要となる。問違いなく意昧上のアクセントをも’ つことばとして、脚韻をとることばが挙げられよう。同じ音をもつことば同士は、文章のシンタッ クス上のつながりを越えた意昧上の関係をもつ。詩人がそうしたことばの選択に注意を払ったこと は間違いない。脚韻のもつ効果とそのことばのもつ意味が結び合ったとき、そこに詩的効果が生ま れる。意昧上のアクセントに関巡して、ドイツの音楽学者ヴァルター・ヴィオーラは、韻律上のア クセントと意昧上のアクセントが一致しないことによって、詩のリズムが豊かになることを指摘し ている6。ともあれ、こうした詩における意昧上のアクセントを読み解くのは、解釈者である。だ とすれば、詩の解釈者となった作曲家は、詩における3種のアクセントをどのように読み取り、解 釈したのであろうか。 1.2リズムとことばの響き  詩の表現にとって重要な要素として、顔律と並びリズムの存在が挙げられる。ダールハウスは次 のように書く。「ドイツ詩には、シラブルを多く積み重ねることによって際立たされる長い音と高 い音が存在しているが、それが韻律に影響を及ぼすことはない。とはいえ、韻律から除外される特 徴は、他方、韻律の対抗者であるリズムにとっては本質的なものである。[…]ドイツ詩において、 シラブルの長さと音の高さは、韻律の面で構成的であることは非常に少ないのだが、その一方で、 韻律とのさまざまな関係のなかで、詩の生命を生むリズムにとって非常に意義深いものなのであ る」7。規則的に反復するHebungとSenkungのなかで、シラブルの長いHebungが繰り返された場合、 その詩全体に生じたリズムの効果は、明らかに詩人によって意図されたものといえよう。高い音に ついても同様である。  またデ・ラ・モッテは詩におけるリズム的な要素として、スタッカートと付点リズムの存在を指        −26−

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ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係

摘する。彼はそれについて具体例を挙げていないが、前者のスタッカートは、Hebungがとるシラ

ブルとSenkungがとるシラブルの間に詰まった音の子音が重ねられた場合一例えば、「mitten」や

「schrecken」のようなことば・

に生じる。一方、後者の付点リズムは、Hebungがとるシラブルが

長母音で、Senkungがとるシラブルが短く軽い音をとる場合 ことぼ 例えば「Liebe」や「Sehnen」などの に生じる。ただし、スタッカートのリズムや付点リズムがもつ詩的効果は、詩全体にお ける諸要素との関係のなかで生じることはいうまでもない。こうした音楽的要素が明らかに統一的 に用いられているとすれば、そこに意昧上のアクセントを認めることができよう。  似たような効果を生むものとして、ことばの響きが挙げられる。ひとつの詩において、何らか の「音」が続一的に用いられているとき、そこには詩的な意味が生じる。通常はHebungのみに認め られるが、Senkungにも認める場合もある。また、子音を統一的に用いる手法は、韻律法のひとつ である「頭韻」として知られる。これらの音をもつことばがどのように発音されるのかについても、 解釈者の解釈に委ねられるが、その詩的な効果や意昧を積極的に認めれば、何らかの強調がなされ てしかるべきであろう。  そのほか、詩におけるリズムに関わる音楽的要素としては、 あとに挿人される「間(ま)]の設定が挙げられる。 Γ︲ (コンマ)」の挿人や短い詩行の 1.3音楽による3種のアクセント  ドイツ詩がリートに作曲される際に ドイツ詩における3種のアクセント ト、言語上のアクセント、意昧上のアクセント 韻律上のアクセン は、歌唱旋律において何らかの音楽的アクセン 卜が加えられる。そのアクセントとは、音強アクセント、音長アクセント、音高アクセントであ る。それぞれの手法について確認しておく。  音強アクセントは、音楽の拍節法のなかで加わる。西洋音楽の拍節法では、その音楽が何拍子 であれ、各小節の甘白目には音強アクセントが加わる。この1拍目を「拍の重点」と呼ぶことにす る.Hebungが1拍目に置かれ、すなわち拍の重点をとるとき、そのHebungは実行されたとみなせ る。また、拍子ごとに各拍には異なるアクセントが生じる。4拍子の場合は「強(重)・弱(軽)・中・ 弱(軽)」、3拍子の場合は「強(重)・弱(軽)・弱(軽)」、2拍子の場合は「強(重)・弱(軽)]となる。 Hebungが各拍に置かれた場合、それぞれのHebungに加えられる音強アクセントは上記の通りとな る。そして、音楽の拍節法に内包されるこれらの音強アクセントの諸段階を利用することで、詩の ことばのもつアクセントに段階付けが可能になるわけである。1拍目に置かれたHebungは例外な く実行されたとみなせるが、1拍目を除いた各拍に置かれたHebungが実行されたか否かは、小節 内でのシラブルの関係によって決定される。またこうした音楽の拍節法における音強アクセントの 段階付けを利用することによって、上述の軽強音の効果を活かすことが可能となる。なお、中程度 のアクセントが生じる4拍子の3拍目を「副次重点」と呼ぶことにする。  音長アクセントは、文字通り、Hebungに長い音価を与えることによってアクセントを加えるも のである。音の長さによってアクセントの段階付けが可能であることはいうまでもない。一方、音 高アクセントは、音の高さによってアクセントを加えるものである。作曲家たちはこれら3種のア クセントを組み合わせながら、各Hebungにアクセントを与えていく。  だが、作曲家たちはどのようにこれらの音楽的アクセントを組み合わせながら、ドイツ詩のテク ストに付曲し、歌唱旋律を生み出すのであろうか。その際、 旋律においてどのように活かされるのであろうか。 −27一 ドイツ詩における音楽的要素は、歌唱

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稲 田 隆 之

〈エオリアン・ハープに寄せて〉の分析

2.1メーリケの詩とヴォルフのリートの概要

 本論では、ヅォルフの歌曲集《独唱とピアノのためのエドゥアルト・メーリケによる詩集

Gedichte von Eduard M6rike 伯reine Singstimme und Klavier》(1888年、全53曲、以下《メーリケ詩 集》)から、第n曲くエオリアン・ハープに寄せてAn eineAolsharfe〉を取り上げる。ヅォルフにとっ てメーリケ8の詩は特別な意昧をもっていた。ヅォルフがメーリケの詩と出会ったのは1878年ご

ろ。その後約10年もの問、その詩集を片時も離さず愛唱したという。そして1888年、ヴォルフの インスピレーションが花開き、一気に《メーリケ詩集》全53曲を作曲する9。それどころか、その後

も立て続けに歌曲集を作曲していく。すなわち、《アイヒェンドルフ詩集Gedichte vonJoseph von Eichendor汀》(1887 − 88年、全17曲)の13曲、《ゲーテ詩集GedichtevonJohann xVolfgang von Goethe》 (1888 − 89年、全51曲)、《スペインの歌の本Spanisches Liederbuch》(1889-90年、全44曲)、《イタリ アの歌の本ltalienisches Liederbuch》第1部(1891年、全22曲)、同第2部(1896年、全24曲)などで ある。ヴォルフは生涯に314曲のリートを作曲したが、そのうちの約半数を1888年から92年のうち に一気に作曲している。つまり《メーリケ詩集》は、ヅォルフがリート創作のインスピレーション を掻き立てられるきっかけとなった作晶であり、また自身のリート創作理念とその手法を確立する きっかけとなった作品ということができるのである1o。  ヴォルフがメーリケの詩に惹かれた理由はさまざまだが、大きな要因はその多様性にあろう≒ 多楡匪は内容でもそうだが、詩の形式においてもそうである。「エオリアン・ハープに寄せて」の 特徴は自由韻律によることだが、《メーリケ詩集》に選ばれた詩としても、唯一の自由韻律による ものとなっている。その意昧で、《メーリケ詩集》の多楡匪を象徴する作品ともいえよう。民謡詩 であれば韻律上、規則正しいリズムが刻まれ、かつ脚韻をとることによって整った構造が形成され る。逆に自由韻律による詩では、民謡詩とは逆の効果が狙われている。自由韻律はまず規則的な韻 律をとらない。「エオリアン・ハープに寄せて」の詩の場合では、トロヘーウス(強弱格)ないしヤ ンブス(弱強格)のaltemierendな韻律12とダクテュルス(強弱弱格)ないしアナペースト(弱弱強格) による韻律が混合している。また自由韻律では脚韻もとらず、詩行の長さも不統一である。全体は 26行からなる。それが3つの詩節に分かれており、それぞれ7行、11行、7行からなる。  詩の内容について、全体的な観察をしておこう。詩の表現には、意図的に繰り返し用いられるこ とばがあり、それをその詩におけるキーワードとみなすことができる。「エオリアン・ハープに寄 せて」の場合、「wieder」「Saiten」「Wind(e)」「sUB」がそれに当たる。ブラームスと他の作曲家 シューマンやヴォルフら によるリートの詳細な比較研究を行ったヤーコプゼンは、この詩のモ

ティーフを「エオリアン・ハープ(死の嘆き、回想、藻れ、喪失)」13としているが、上のキーワード

がそれを示している。すなわち、過去の象徴である「wieder」、弦と風の関係、そこで生まれる「甘

美な」香りと感情である。実際よく知られているように、この詩は、若くして亡くなったメーリ。ケ

の弟と関連している。そして、そもそも過去への追憶の象徴であるエオリアン・ハープの調べが、

亡くなった弟の存在と関連付けられているのである。なお、本論における

寄せて」の対訳は、森孝明氏のものを使用させていただいた。

「エオリアン・ハープに 2.2第1節  以下、可能な限り、メーリケの詩における音楽的要素を抽出し、それとヅォルフの歌唱旋律の 関係を分析していきたい。第1節の対訳は「この古いテラスの/常春藤(きずた)絡まる壁にもたれ /微風より生まれし詩神(ミューズ)の/神秘の楽器よ/始めよ/今一度始めよ/汝が嘆きの調ベ

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       ー28-ドイツ詩における音楽的要素とドイツ

資料1:メーリケ「エオリアン

Angelehnt an die Efeuwand Dieser alten Terrasse, Du,einer luftgebomen Muse Geheimnisvolles Saitenspiel, Fang an,

Fange wieder an

Deine melodische Klage!

(、、ド軽強音、♪エ長母音) J−トにおける歌唱旋律の関係 ハープに寄せて」韻律分析、第1節

尽「J

汀 ̄J 口︰ `♪ ♪ぷ Jコ Jコ n   _皿・ 月 J ̄□ J ̄] Jコ Jコ ♪︶

J︶ ♪ 月 ̄]

を!](資斜1)。7行全体がひとつの文章になっている。従って、各行でアンジャンブマンが生じ ている。「アンジャンブマンEn」anbement]とは、その詩行では文章が完結せず、次の詩行、あるい は次の詩節に文章がまたがっていることを指す。  1行目で特徴的なのは、4つのHebungのうち2つのHebungで軽強音をとっていること、その一 方で、強いアクセントをもつHebungがいずれも子音をもたないことであろう。2行全体でも、子 音をもたない母音の響きが多く、「a」が多いことに気付く。 1、2行目では、エオリアン・ハープ が古いテラスの壁にもたれて存在している。確かに存在しているのだが、この文章の主語である 「SaitensPie1」はまだ現れない。従って、何かがもたれかかっているのだが、その存在は士、2行目 では明らかではないのである。はっきり見えているのだが、それが何かまだはっきりしない。それ が、子音をもたない母音と、軽強音によるHebungによって表現されているわけである。鄙びた壁 にハープが立てかけてある光景が、あたかも遠景から眺められているような効果をもっていよう。  3行目で重要なのは語順である。「du」という強い呼びかけののち用いられることばは、本来、 4行目に続くべき2格のことばである。しかしそのことば「微風より生まれし詩神」が先取りされ たのは、その重要性をメーリケが意図したからであろう。また、「du」を含め、[u]の響きがこの行 のHebungだけで3つも現れることは特徴的である。さらに「du」と「Mu(-se)」は長母音をとる。こ うした響きが、あたかも、詩神が吹く風を喚起するような効果をもっている。そして4行目は、2 つの軽強音と、「ei」と「ai」の響きが共通する。エオリアン・ハープが発する調べは、決して強いも のではなく柔らかい。またその響きは心地よく調和するのであろう。  続く5行目にメーリケは極端に短い詩行を置いた。詩行末に「聞」を想定していることは間違い

ない。本来この詩行は「fange an」だが、メーリケはシラブルを1つ削除した。「fange an」の場合、

韻律上2脚のトロヘーウスで、リズムは下行的となる。ただしSenkungが1つ少なく脚足らずと なっているため、あるべきSenkungの空白に余韻が残る。一方「fang’ an」の場合は1脚のヤンブス で、リズムは上昇的である。韻律は足り脚で完結しているため、決然とした意思が感じられる。こ うして、5、6行目では、[an]の響きの連続が統一的な響きを作る。さらに付け加えれば、この 詩が自由顔律であるということは脚韻をとらないということを意昧しているが、唯一行末で同じ音 をとる行が、この5、6行目であることは重要である。また5∼7行目にかけて、上記の「an」の 響きが、長母音の連続とコントラストを形成していることも見逃せない。「an」の響きは第1節全 体の基調でもある。   一 〇 J ︵ Z   一

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稲田隆・之 譜例1:ヴォルフ〈エオリアン・ハープに寄せて〉、第1節

Sehr gehaJten.

jjHI, タ  , ,       . 』 - 〃 │ ・ ・ f -       -   ●       ・     l   l       』   ゝ       J     f t     ●   ● i       ● ¥ 1 /       i     y   -     一   漣 ゛ l   l .   1 1   j .   l     乙   . _ L L k J j − _ J _   量 y   − - .   l 邨   I       ゛’‘φ‥φ・   -‘1’ 尨 W ge−lelult  ‰ノー W 翼ls− vol −  V − W l e s W - W B一 e   W 一e−饗&zla  V − aie一騎r − W Kla  − texl W ″Xir − gel  W -−=Hebung v=Senkung W al&!1. 1  1       j? 〃 - ・ A ・ ● -   覆       k     t 八 1     −   r x   r ・ -     ㎜     t       ● -   ● l l 〃   匹   ・   ・     ・ - /   1 3 1 r −   ● ・   ● l   l l   - ● ㎜ ミ       ・     ・      -ー 四   T l i °   l i   l ゝ -     - ・ -   l   p ’ ‥   一 ・ -   -   - I       ●     -     1   ● ● X ゝ I Z         − s l l l l ● ・ l     l   ● 皿   W       l l f ・ ●       l     ゛         j f 竜j   ’『    ?−s忿・ l    l all_  −        y  y   ”

el−ler luft−ge。 bor・nez1 Mu − s●      ge ,  ̄X ̄こ ̄丁ごこて ̄こ ̄i 拍の重点の先取りによる 音強アクセント増強 i   でらご 〃 〃 ● ● ¶ ・ -       l     l         ●   l   ●       ● ゝ   量     -       l     l   -       1 ・     J   J   ● m ̄・ ̄  ̄  ̄  ̄ ’  ・  ’ ’I         I ゝ ●   l ゝ     I N   j     j l 喝 1   _ J _ ● 皿 ’ W i ・  ̄   I ’       ● I   I         ● l ●   l l     j j j . J i y   j   j -       _ j y T 7  ̄  ̄  ̄ ’  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄ ’ j ●       j l , ● ・ ●     冨 - ‥ I 置 置 J … _ _ _ y   ・ ゛   -       w       一 一奄/    heizl

− 111s −vol − les S&i.ten,sliel、  f畠丿噴i aa、____  f&a−geSai.ten,s?le17  −  V  − W ‰ / sche  この曲の人きな枠組から指摘しておこう。白由韻律の詩であることから、リート形式の基本であ る有節形式をとらない。そこでヴォルフは、オペラにおけるレチタティーヅォ(第1節)とアリア (第2、3節)にも似た構成をとった。ハープの響きはピアノ声部の分散和音が担う。リートにお けるピアノ声部が果たす役割は極めて大きいが、本論では歌唱旋律のみに焦点を絞って考察するこ とにしたい。  まずヴォルフは、第1節の音楽に4分の4拍子を選択した。ヴォルフが4拍子の特性を活かそう としていることは間違いない。すでに述べたように、4拍子の特性とは、3拍目に中度の音強アク セント(副次重点)が生じていることである。最も強い意昧上のアクセントをもったことばを1拍 目に置き、次に強いアクセントをもったことばを3拍目に置くことで、アクセントの段階付けが可 能となるわけである。もちろん、2、4拍目にHebungを置くことも可能であり、それによって音 強アクセントは3つに段階付けできる。  旋律線は、4度の跳躍下行のあと順次進行をとる。そして、ヴォルフは軽強音をいずれも拍の副 次重点に置いている。注目されるのは、冒頭の「an(-gelehnt)」に当てられた最高音である。このこ とばそのものに、とりたてて強い意昧上のアクセントは認められまい。だとすれば、ヴォルフがこ のシラブルに音強と音高アクセントを与えたのは、別の理由からである。それは、「E(-feuwand)」 ということばと対応したものであり、第1節の響きの基調である「an」を強謨したものに違いない。  詩の朗唱を歌唱旋律に活かすのであれば、1行目と2行目の問をつなげるのが自然だが、ヴォ ルフはそれをせず、4分休符を置いた。その理由は音楽の拍節法との関係による。2行目冒頭 「dieser」は強いアクセントをもつことばではない。それにも関わらずそれを1行目が終わってすぐ、 次の小節の1拍目に置くと、そこに音強アクセントが生じてしまう。それを避けるために「dieser」 を2拍目に置いたのである。そのおかげで、2行目の行末のことばにTerasse」が確実に拍の重点に くる。もうひとつ重要なのは、「(le-)rasse」の部分を8分音符2つで作曲し、音長アクセントを加え なかったことである。これは、このことばのスタッカートの響きを重視したからにほかならない。        一30−

(7)

ドイツ詩における音楽的要素とドイツ 卜一卜における歌唱旋律の関係  メーリケが3行目で「u」の響きを連続させたことは、ヴォルフによっても重視されている。まず、 ヴォルフは「du」の呼びかけを、前の小節の4拍目に先行させて強調する。こうした手法は、ヴォ ルフに特徴的なものである14。「du」のシンコペーションのリズムと拍の先取りによる音強と音長ア クセントの強化、拍の重点上の「Muse」がそれである。さらに「Muse」は第1節における最高音をと る。一方、副次重点上の「1uft」はほかの2つよりもアクセントは弱い。言い換えれば、ヴォルフは 「風」よりも、風を呼び起こす「詩神」の方に強い意味上のアクセントを認めたのであろう。順次上 行する旋律において、軽強音をもつことば「lu≒eworden」の2つのHebungは3、4拍目に置かれて いる。当然ここでも、音強アクセントの段階付けが意図されている。  4行目の特徴は増2度音程が生じていることで、文字通り「神秘のgeheimnisvones」というわけで ある。ただしこの行の音高アクセントは弱い。この4行目は、自由韻律の詩行のなかで、純粋なヤ ンブスをとっているのが特徴である。そしてすでに触れたように、「ei」と「ai」の響きの統一が重要 なのだが、ヅォルフは付点4分音符を当てることで、音長アクセントを加えていることが分かる。 「geheimnisvolles」な響きは、決して強い響きではないため音高アクセントは弱く、だが、ことばそ のものは重要なため、音長アクセントを加えたとみなせる。  問題は5行目である。ヴォルフはメーリケが意図した「問」を反映させていない。そうではなく、 「an」に音強と音長アクセントを加えた。詩の分析でみたように、5、6行目では「an」の響きが統 一的に用いられている。この響きの統一をヴォルフは重視した。歌唱旋律の朗唱をたたみ掛けるよ うにすることで、この響きを強調していると考えられる。また、「an」の響きの延長は、極端に長 い「間」の代用であるともいえよう。  さらに、メーリケの詩で特徴的なのは5行目行末と6行目冒頭のHebungの衝突である。ここで は、1、2行目とは異なり、そうしたHebungの衝突をヴォルフ白身が強調しているのではないか。 主人公のせきたてられるような感情は、メーリケが求めた実際の「間」を必要としなかったのであ る。また6行目では、行末のことばではない「wieder」が拍の重点をとっている。また、このことば には音高アクセントも加えられている。ヴォルフがこのキーワードを重視したことは間違いない。  そして、最終行が第1節のクライマックスとなっている。ここでのリズムは、アウフタクトをも つダクテュルスである。ヴォルフが音長アクセントによってこの詩行を強調したのは、このことば のもつリズミカルな音楽的効果と強い意昧上のアクセントを読み取ったからであろう。軽やかさと 長母音のHebungが織り成す音楽性が重要で、ヴォルフがそれを歌唱旋律に活かしている。

2.3第2節

 第2節は3つの文章からなっている。それぞれ第1文、第2文、第3文としておく。対訳は「吹

き寄せる風よノ私のこよなく愛した/あの少年の眠る/新緑の丘から吹く風よ/道すがら春の花に

触れ/芳香に満ちあふれ来て/この胸をなんと甘くしめつけることか!/そして美しい哀愁の音色

に魅せられ/弦の中へさやぎ入り/匿れとともに高まり/また静かに消えてゆく」。

−31−

(8)

稲 田 隆 之

資料2:メーリケ「エオリアン・ハープに寄せて」韻律分析、第2節 lhr kommet, Winde,fbm !leraber,

Ach,von des Knaben, Der mir so lieb war, Flisch granendem Hagel.

UndFtahlingsbRlten unterweges streifbnd, 0befsattigt mit WohlgerUchen,

Wie snB bedrangt ihf dies Herz! Und siuselther in die Saiten,

Angezogen von wohllautender Wehmut, Wachsend im Zug meiner Sehnsucht, Und hinsterbend wieder.

♪ ♪`♪ ♪

JコJコ月D

f月月

JコJ♪ m月 一    一

♪J ̄リ ̄LrU ̄IJ ̄1

nJT汀 ̄hrJ

♪ ♪

J ̄LrJ ̄J♪

瓦□ ̄□

月J ̄丁]♪   W    − mm ♪J ̄フコ月 J ̄ ̄J 汀コ 月

 第1文1行目の冒頭は、指示代名詞の「ihr」である。それが指すことばはすぐに現れる。すなわ

ち「Winde」である。おそらくその風は、はっきりと風だと気づかれるようなものではなく、静かに

やわらかく吹く風なのであろう。いつの問にか吹いていた風、それがメーリケの表現である。そし

てこの詩の主人公は、風の存在に気付いた瞬間、思わず「ach」と嘆息する。こうした心の動揺を表

すように、2∼4行目ではシンタックス上のつながりが乱れている。すなわち、シンタックス上は

文章の最後にくるべき2格のことば[des Knaben]と、そこに続く関係代名詞句が先行して現れてい

る。主人公にとってこのことばが重要であることは問違いない。すでに指摘したように、それは主

人公が亡くした弟の存在を指す。そしてその風と、風が奏でるエオリアン・ハープの調べは、主人

公=詩の語り手のなかで、少年のイメージと直結しているわけである。

 続く3行目でも特徴的なことが起きている。3行目において意昧上のアクセントをもつことばは

「1ieb」である。だが、詩行最後のことばが「war」というsein動詞の過去形であることは注目に値す

る。自由韻律の詩が脚韻をとらないとはいえ、詩行末のことばに詩人が注意を払ったことは間違い

ないであろう。すなわち、メーリケは「こよなく愛した」という事実が過去のことであることを強

調している。少年の死は決して明言されず、こうして暗示されるのみである。

 4行目では、「u」という響きが強調され、続く詩行でも統一されている。これについてヤーコプ

ゼンは「やわらかな強調」15としている。「U」はドイツ語の母音のなかでも、特に暗い響きをもつ。

これについては、第2節第2文のところで触れたい。また、これは第2節全体にいえることだが、

行末に選ばれたことばが特殊であることは見逃せない。女性格(強弱)で終わる行末のことばは、

その多くが脚韻をとりえないものが多いことは特徴的であろう(「HUge1」「Sehnsucht」「Wehmut」な

ど)。

ヴォルフが第2節以降の音楽に選択した拍子は、2分の4柏子である。4拍子という ことからす

れば、第1節の音楽がそうであったように、音強アクセントの段階付けを利用することが目論まれ

ていると考えられる。もうひとつの理由としては、ゆったりとしたテンポに設定することで、1小

節内に置けることばの数を増やしたのであろう。それによって、拍の重点をとることばの数が限定

される。

 具体的にヅォルフの歌唱旋律を検討しよう(譜例2)。譜例にはないが、第2節の音楽は、ハー

プを模したピアノ伴奏で始まる。そして歌唱旋律の冒頭で、アクセント転置が起きている。本来

32

(9)

ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係 譜例2 ヴォルフ〈エオリアン・ハープに寄せて〉、第2節第1文 aj↓41. 夕,  , 〃 - l l 1 1 1 1 j       j - ‥ l l - 一       一 ● 皿 ・       l − 匹 ¶ ¶ l s - │     一   -・ ゝ I J       i j w       l │ ゛ ’ lhr komz;let7 \ アクセント転置 11ふ11     1   - _   x   l      .  --心 心J    ベニ 〃 s l m l         l       へ     j   i   i     l       l       - _ L £ J     麗 迦 ・     r J     I F r   l l f       l t       . _ _ . 」 _ F ’ 晋  ̄ T T  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄ r  ̄ 「  ̄ ¬ ■ f ¶ - ¶ ¶ l   i     l t f J     I         -   ・ j l   l   〃 ¶     ●       〃 ¶     〃   I   重 l       l l   l     ●       讐   ・     ・ X I J       ●     V l       l         l     ¶     I       J l       l   l   l l       ●   ・   I     l       l   l     l t1   4垣-・deg krn二 her−ii

−ier, &dl!ぷoa des Kla ’1;azl,der 鰐山゜so

Jヽズデー ---−----一一 力1&t ?      /'7`−こ ̄i       . 〃 ・ a l j ¶ ・ -   -     皿       〃 J     皿 皿     ’   l         曾       l m   ・       I   ●     l     l   l l 町   -   l -       量       l ー ● 9 ・ ¶ ¶ ●   ●       l   j i     l     l   1   1   1   1 t ¶     J ¶       ・ ● き 1 J       ●       ・   ・     1     ●   l 」   ●   ● ●       量 tl  nib war,fiis&−g一4e皿-ae羞Hii − gel, 均衡強會

Senkungである「ihr」がHebungとして3拍目=副次重点をとっているのである。上で述べたように

本来主語をとるべき「Winde」が遅れて登場するのだが、この「Winde」を拍の重点に置き、それを先

行する「lhr」の主語を強調すべく、副次重点に置いたのであろう。もちろん、ピアノ伴奏の回始に

対するコメントとして、歌唱旋律が機能しているともいえる。

 次に拍の重点をとるのは、行末のことば「(her-)uber」である。このことばは、遠くからかすかに

吹いてくる風という内容を表現するため、言語上のアクセントは強くない。従ってヴォルフは、高

い音高を与えていない。そして、その風がやってくる方角が、亡くなった少年のいた丘からであ

ることを主人公が悟る。主人公の間投詞「Ach!」は副次重点で、音高アクセントもそれほど強くな

い。それは、続く「Knaben」に最も強いアクセントを加えるためであろう。この部分での最高音は

「1ieb」、最も音価が長いのは「Knaben」であり、メーリケが詩に意図した意昧上のアクセントをもつ

ことばは、ヴォルフの歌唱旋律においてもアクセントが加えられている。とりわけ「1ieb」には、楽

譜上でもアクセントが加えられていることは重要である。  また「帽の響きをもつ行末のことばは着実に拍の重点をとる。「frisch grunendem」の部分、ここで の「U」の響きは、シンコペーションのリズムをとって強調されている。そもそもこの部分は、韻律 的には「弱強弱弱」となるべきだが、ヴォルフはこれを一語として扱っている。そのため、「fiisch」 と「gru(-nendem)」のシラブルでは、Hebungが衝突するかたちになっており、言語上は、均衡強音と して朗唱されるであろう。ヴォルフの歌唱旋律の処理でもそのようになっている。  メーリケの詩、第2節第2文の文章をみてみる。第1文にすでに登場した陥」の響きの連統は、 この2つ目の文章でも引き継がれる。Hebungの[ti]の響きの連続の終わりが「s皿」であることから、 「sUB」のことばに最も強い意昧上のアクセントが生じているであろう。メーリケの詩でのリズム上 の特徴は、この「u」の響きやそのほかのHebungのシラブルが長母音をとることである。そのため、 付点リズムの効果が現れている。もうひとつ重要なのが「w」の頭韻の存在である。この子音の響き は、ハープの弦の振動を象徴していると解釈できる。また、軽強音をとることばが頻出することも 特徴的である。  第2節第1文から第2文で描かれているのは、風の通ってくる道筋である。すなわち、少年、 丘、春の花、芳香を経て、弦を鳴らし、弦の音色と芳香が交じり合って、主人公の胸に届く。そ の甘美さと切なさが、「u」の長母音の連続による暗い響きと軽やかなリズム、および「w」の子音の   一 9 a g a   一

(10)

稲 田 隆 之 譜例3:ヴォルフ〈エオリアン・ハープに寄せて〉、第2節第2文 ・ ノ ag朴, ͡∂       ・   S        11  _.    1  1    1 書 J 〃 t 1 7 1 〃   f J     r J       I         〃       I   ●   I       I   I     I         ●   ● - ・ ゜ ¶ 1 1   1     1 1   1       1   1 J s   - - - -   -     U l   l ●   |       ● L I   ● 1 I         I    ̄ 1 ● 四 ● ¶ 看   I     ●     〃 ゛ -       ●   l -   〃 〃 ●   -   〃       ・ l f J t x J         l     l     l     f         ・ ・   l l   j   l   l   l     ・       ¶ ・     I M f     - ’ 】   Ψ ¶ tl    Frth

− 11;lgs4Hi − i;n ;ln-jezJw; −!1es s1rei − feadl ’に ber−s&t − tigt算lt         皿  V   ’  V  − V − り  ’  V   −    V  =  り  り Frth −   −  長母音 短2度下行=ため息の音型 長母音

/hi11  乙ヽ    _、   六      六        F−

            ・   ・       −   ・       -皿   ● − ・ -   1       1   ●     -   -皿       − J I   ●   ■       -皿 − ゛ ●   -皿 ・       ㎜       1 ・ 皿   四 l   l       I   I     I   薯     四   j l ● 皿   ●       i ●     I       ●

tj   Wohl − ge −;`a! canl wie saB,      wie siiB,       wle      l”  I V  =  り  V “         V  “       り 曹ehl −   − L___._  ・   農母音 短2度下朽=ため息の音型    ¬     〃● alあIE       ,       , 〃・l  a   べF`ヽ J ●         l   ● ー   ●   − ●     l - ● ・ l -I   ー ● 〃 I ■ 「 J - ●         l     ● ● 四   ¶ ・ l -   - J d ・ ・       - -   ● I           -● S l f - -     − - -       l ・       一     一       − J . i ゛  s卵  belrilgt ill。dles蔓ぷr二二ー 1;leふiB b。。drillかUu・&s    =     り ∼  V  V  “        V  4    り ≒  り  V 統一的な響きによって表現されていよう。だとすれば、「wie suB」の響きは、この第2節第1文か ら第2文を象徴する響きだといえるのではないか。そして最後、2つ目の文章を閉じるシラブル 「Herz!」によって、引き締まった印象を与える。  それに対するヴォルフの歌唱旋律をみてみよう(譜例3)。一目見て分かる膳徴は、軽強音によ るHebungのシラブルが、拍の重点を避けられていることである。また長母音のシラブルは、そう ではないシラブルに対して、明確に音価の違いによって表現されている。なお長母音であっても軽 強音をとるHebungの場合は、音価も短めにされているのが分かる。何よりも重要なのは、ヅォル フが「wie siiB」および、それをとる文章を反復していることである。ヴォルフのリート創作上の立 場では、有節形式によるリートを否定し、音楽表現のためのことばの反復もよほどのことがなけれ ば認めなかった。それにも関わらず、ここでは詩行の反復が見られる。これはヴォルフの手法と しては極めて異例である。こうしたことからも、ヴォルフがこの詩行を重視したことは明らかだ。 だが、なぜ重視したのかを分析するならば、詩行最後の「!」に対する強調もさることながら、や はり「wie s佃」の響きの統一性を重視したからであろう。その重要性は、すでに触れた通りである。 それを重視したとき、一度の朗唱では足りないとヴォルフは判断したのだ。この響きの統一性は、 短2度の下行音程による「ため息の音型」で強調される(1箇所例外あり)。なお、メーリケの詩の 表現意図がやや減じられてしまった箇所があるとすれば、「streifend」の扱いであろう。行末に置か れたことばだが、拍の重点をとらず、副次重点をとっている。そのため、音強アクセントは弱まっ てしまった。

 では、メーリケの詩の第2節第3文から、音楽的要素を拍出しておく。ことばの響きの面では、

「u」の響き、長母音や二重母音、「w」の子音の響きが多用されていることが挙げられよう。またリ

ズムの面では、ダクテュルスが多用されていることが分かる。先に、第1節最終行のところで触れ

       −34−

(11)

ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係 たように、Hebungの長母音とダクテュルスの韻律がもつ「弱弱」のリズムは、軽やかさと響きのよ さが際立つ。それはとりわけ「wohllautender」のことばに象徴されていよう。このことばは「woh1」 の副詞と「lantender」の動詞の現在分詞の形容詞化が結びついたものである。従って、この2つのこ とばが分離し、「wohl lautender」となっていれば、韻律上「woh1」がとるのはSenkungである。しか しこの2つを接続することで、[woh1]は韻律上Hebungとなり、結果的にHebungが2つ衝突するこ ととなった。当然ながら、それがメーリケの意図した詩的な効果なわけである。顔律の規則性を反 してまで「woh1」を強調することにより、「十分に鳴りひびく哀愁」(直訳)という皮肉な効果が生ま れている。  もうひとつ、第2節最後に用いられた「wieder」は、この詩のキーワードのひとつである。この キーワードが、「w」の子音をもったことばの連なりの中に置かれていることが重要である。よく親 察すると、「w」がとる母音がすべて異なっていることに気付く。響きの統一性と多楡匪は、楽器の 音色と関達していよう。そのほかに指摘すべき特徴としては、この第2節第3文には主語がないこ とが挙げられる。その主語とは「ihr」であり、具体的には「風」である。  最終行で用いられた特殊なことばについても触れておきたい。それは「hinsterb。d」である。この ことばの韻律は、外面的には「強弱弱」のダクテュルスをとるであろうが、「sterbend」の意昧を重視 するならば、どちらにも言語上のアクセントを認めるべきである。そこで言語上のアクセントを均 衡強音と解釈するとよい。韻律上特殊なことばであることから、意味上のアクセントの強いことば といえるであろう。  続いてヅォルフの歌唱旋律を検討しよう(譜例4)。冒頭は順次下行の旋律線。音高および音長 アクセントでは「siiuselt」に、音強アクセントでは「Saiten」に強いアクセントが加わっている。この 下行旋律は、「さやぎいる」を文字通り表現したものであろう。2、3行目の旋律は、e音を中心に 動く。そして、長母音の響きを活かしながら、「Sehnsucht」に向かってクライマックスを築いてい く。なおこのことばのgis音がこの曲の最高音となる(ただし第3節にも用いられる)。その一方で、 音長アクセント上、最も強いアクセントをもっていることばが[hinsterbend]である。このことばの もつネガティブな意昧は、音高アクセントによって表現すべきものではない。そこでヴォルフは、 音長アクセントによってこのことばを強調したのである。  だが、問題は最後の「wieder」の扱いであろう。詩の朗唱に際しては挿入されない「問」が、ヅォ ルフの歌唱旋律では挿入されている。楽譜上、2分休符が書かれているが、もしそれがなければ、 譜例4 ヴォルフくエオリアン Uxll S羞U− ハープに寄せて〉、第2節第3文 ごー∼タ     9 1  、 ..___. ミ lelt h●r ‰/  − i重a1● Sあi.te・, W W  −  W 拍の重点の先取り 剔1‘ ge / J M ゛ ゛ ミ 雁 い ″ ' ″ / レ ゛ S 4 7 6赫t てマ〒iニ〒    ͡ ぶ . .、 z-ヽ、 /-`へ、

r J       ・ r J - i ' ¶ I -   ●     l   -   皿   l i   F ゛ ●   l l     l       ●   ・ i       l l l   l ・ ¶ l         l   l     ● 蔓 f y − ¶ ¶ ●   I     碁   1   1   j ●   ●   l   l l     l       ●   - i       l ● t l J       I     ●   ●   l   l l   l   l   l       l       l   s |       l l I   ●   l         l   I     I

tj   zo − gez14onwohl-l皿−ten-der Weh−mutl_

   −  、.い7二7 .。 − 。  −wa&−  − send im Zug mel-ner 均衡強音

均衡強音 −35−

休符の挿入

(12)

稲 田 隆 之

「wieder」が拍の重点をとることになる。おそらくそれを避けた処置であろう。「wieder」のもつ意昧

上のアクセントが、言語上、それほど強いアクセントを必要としないのは、それがネガティブなイ

メージと結びついているからである。「wieder」のことばが向かう「過去」は、主人公が愛した弟の

死と直結している。そのとき「wieder」はためらいがちに発せられるわけだ。こうしてヴォルフは第

2節で、ハープの音色を介して過去への憧れを強く抱く主人公の姿をはっきりと表現している。

2.4第3節  最後に第3節をみよう(資料3)。対訳は「だが突然/一際強く風が吹きつけるや/竪琴は優しい 叫びをあげ/甘美な慄きで私を提え/またしても魂を不意に勤かす/そしてここでは 一 満開の 薔薇が激しく揺すられ/花弁を残らず足もとに撒き散らす!」。  全体はひとつの文章だけでできている。まず1行目の特徴は、子音のない母音の響きである。こ れは第1節との共通性が意図されていよう。この続一的な響きの突然さに続いて、2行目では韻律 上の問題が生じている。冒頭の「wie der」をトロヘーウス(強弱)ととるか、アナペースト(弱弱強格) の最初の「弱弱」ととるかは解釈者に任されるが、そのあとの[Wind]が「強」であることは問違いな い。そして続く「heftiger」は「強弱弱」をとるため、必然的に2つのHebungが衝突することになる。 ドイツ詩において本来衝突することのない2つのHebungがここで衝突ことによって、突然吹いた 風の強さが表現されているのである。またここにも「w」の子音による頭韻が絡んでいる。ここで再 度、2つのキーワードが登場する。すなわち「wieder」と「sUB」である。この詩の主人公は、風が吹 きハープが鳴る度に、過去への追憶に浸る。そして過去への追億は、常に普薇の甘美な香りと結び ついている。  それに加えて特徴的なのは、「Erschrecken且p16tzliche」「Bほter」「geschUttelt」ということばの響き である。これらのことばには、詰まった響きの子音が重ねられたことによって、スタッカートのよ うな鋭いリズムが生じている。メーリケがこうした音を意図的に用いたことは問違いない。という のも、第1節でこうした響きをもったことばはまったく表れず、第2節では1つ(「ubersattigt」)し か現れないのに対して、第3節では4つも現れるからである。これについては、のちほど触れるこ とにしたい。  第3節もことばの語順が重要な意昧をもっているが、とりわけ際立つのが5行目である。「ま

たしても魂を不意に動かす」の原語「Meiner Seele pl6tzlicheRegung」は、語順が入れ替わっている。 メーリケがこの詩行全体を重視したことは疑いない。

 6行目[und hier]のあとに、ハイフンによって「間」が設定される。目に映る光景は、足元に撒き

散らされる一面の薔薇の花弁である。「薔薇」が「はかない命」の象徴であることは疑いない。その 薔薇の花弁が何色なのかは書かれていないが、想起される色は赤であろう。命の象徴である薔薇の

資料3:メーリケ「エオリアン・ハープに寄せて」韻律分析、第3節 Aber auf einmal

Wie der Wind heniger herst6Bt, Ein holder Schrei der Har狗

Wiederholt,mir zu suBem Erschrecken, Meiner Seele pl6tzliche Regung;

Und hier−die volle Rose streut, geschuttelt, A11 ihre Blatter vor meine FuBe!

       −36−

瓦「J

月♪

♪月

J ̄ ̄J

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瓦「J

m月

月匹Nコ

♪ ♪ ♪♪月月JコJコ ーフ    ー

月尽□Jコ月

(13)

− ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係 花弁の赤い色は、血のイメージと結びつく。従って、主人公の弟の死の姿は、血のイメージと結び ついているのではないか。そしてそれは、上述のことばがもつスタッカートのリズムと関わってい ると解釈できる。すなわちそれは、鋭利な刃のようなイメージを想起させよう。その鋭さは、主人 公の心までも傷つけるのだ。  なお、最終行の韻律の解釈では、前置詞の「vor」をHebungとみなすのかSenkungとするのかで解 釈が分かれるであろう。というのも、「meine」の指示代名詞のアクセントもまた弱いものであるた め、「vor meine」の部分が「強弱弱」または「弱強弱」となりうるからである。本論では、前置詞を中 立的なアクセントとみなしておく。  この第3節に対するヴォルフの解釈を分析しよう(譜例5)。まず冒頭である。メーリケは、子 音のない母音の響きで突風を表現した。この突風の表現を、ヴォルフは歌唱旋律ではなく、それ に先行するピアノ声部で行っている。 1行目は2脚でいずれも拍の重点をとらない。 1行目から 2行目にかけて、歌唱旋律は順次上行し、「heftiger」でクライマックスになる。「Wind heftiger」の Hebungの衝突に対してヅォルフは、「Wind」を副次重点に置き、「hef(-tiger)」のシラブルを、4拍目 を先取りするシンコペーションのリズムに置く。重要なことばをこうして強調するのは、ヴォルフ に特徴的な書法である。  続く3、4行目で、メーリケの詩はシンタックス上のつながりが分断されている。そのためヅォ ルフは、3行目の詩行末「Harfe」を拍の重点ではなく4拍目に置き、「Harfe」がとる動詞「wiederholt」 を拍の重点に置いている。これはシンタックス上のつながりを明催にする手法であり、当然なが 譜例5:ヴォルフ〈エオリアン・ハープに寄せて〉、第3節 aあ口t,      ,  ∂ 1         1      j͡ J − J 一 鮒 1 n ・ -       ● ゝ   l   l   ●   I       I I S J 5       -   め   - 一 皿   F ’  ̄ 1 f 1 1 T I 瀞       -       l ●   l   ●   l   l z     r J       I ● 員 r       r r   ド   F F l   l     l ・ 四 ¶ ¶ ●       ● -   j   』 −   j - -     l       i - ● l       l     ●   I   I   ●   l   ・ W ・ /       l w   w         l     l       l     ・       ●     l   l   l   l         i e      こ ber顛fkin− ;鴎】,  wie aerwind'hef-ti−ger       −   りり `  V     −  V −  s V V

aerWild llef- ti.  W ㎜  皿 ‰j   L..._ |  ☆H幽Jngの衝突 aat ,J,      J  ..J     I      ,1

,心

l     l       l   l 皿 -       ` ¶ l ・       J I J m 皿 -       l ・ - - ・ ・ ・   一   ミ   i −     a r   l     ● ●   l     ・ ゛   ●   皿 ● ・       l s   wie

− aer-11olt,   mlr iu sii−lie瓜ir − scllreekex11    薫einer      −  V −      皿 り − り V    s り       − V See −  ,  − − le l16tz schUt uild Mi  − W lh,r e   W −elle 一 ︲ . d:1 ・ −・nlg; e vol ・ W   一 7 n j   一 e︶ マor_識el − s e   W ne  W -拍の重点の先取り streuts  ge &l『 W ハイフンを活かしたr関」          幽嚇srisiiaj 、

(14)

稲 田 隆 之 ら、詩の朗唱を活かした歌唱旋律であるといえる。そして、「wiederholt」がとる目的語の前に挿人 句が入るが、その前後の「、(コンマ)」を休符で活かす。その挿入句の「Erschrecken」のスタッカー トの響きは、4分音符2つで活かされている。「Seele」は、ヴォルフではシンコペーションにより、 拍の重点を先取りすることで強調される。また、音長アクセントが際立つのは「p16tzliche」であろ う。そのため、このことばのもつスタッカートのリズムは、むしろ活かされていない。ただしそれ は、このことばが行末のことばではないことと関係があろう。  最後の2行でいくつかの問題が生じている。「und hier」のあとのハイフンの「間」が休符で活かさ れたのち、意昧上のアクセントをもったことば「Rose」が拍の重点に置かれていることは問題ない。 ただし、「Rose」のHebungの長母音は活かされておらず、逆に「volle」のHebungに音長アクセント が加わっている。とはいえ、「Rose」のことばで旋律は突如短調に変化することは重要である。と いうのも、ここにヴォルフがネガティヅな意昧を込めたことが明らかだからである。  また、「geschUttelt」と「Bほter」というスタッカートのリズムをもったことばが、ここでは活かさ れず、長い音価が加えられている。とりわけ前者は詩行末のことばであるため、そのリズムが活か されるべきものであろう。とすれば、ここに詩にとば)と音楽のせめぎあいをみてとれよう。お そらくヅォルフはことばのリズムより、そのことばのあと「間」を挿入することで、鋭いリズムで 分断された効果を狙ったのであろう。また、「Blatter」につく「a11」がシンコペーションのリズムで 音長的に強調されたことで、「anihre」の韻律は、本来の「弱強弱」から「強弱弱」に転換されている。 同様に、「vor meine」の韻律も「弱強弱」から「強弱弱ムこ転換されている。いずれも指示代名詞の意 昧が弱く解釈されたことが分かる。こうした解釈は詩そのものが内包しているものであり、けっし て誤りというわけではない。重要なのは、ヴォルフがそのような積極的な解釈をみせたことであ る。すなわち、[すべて]の花弁が主人公の足もと、すぐ目の「前に」広がっているイメージを強調 したかったのである。  この第3節の3種のアクセントを整理しよう。鍛も強い音強アクセントをもつことばは「Seele」 (拍の重点を前の小節に先取りする手法)、最も強い音高アクセントをもつことばは「H 「e」、最も 強い音長アクセントをもつことばは「pl6tz(-1iche)」ということになる。「Seele」は上で指摘したよう に、メーリケが文法上の語順を入れ替えた箇所である。文法上の順番を入れ替えてまで先に用い た「Seele」のことばを、ヴォルフは文字通り拍の重点を先取りするように作曲している。「Harfe」に ついても上で述べたとおりである。これは行末をとることばであることから意昧上のアクセントを もっていると見なせるが、このことばは続く行の動詞に続いている。シンタックス上のつながりを 明確にするため、ヴォルフは、「Harte」がとる4拍目と続く動詞「wiederholt」がとる1拍目の旋律の 接続を重視した。だが、意昧上のアクセントをもつ「Harfe」を強調するため、音高アクセントを加 えた。そこには、ハープが叫びをあげた事象に対する表現も関与していよう。そのため短7度の跳 躍が生じている。最後に「PI6tzliche」の形容詞である。このことばのもつスタッカートのリズムの 重要性についてはすでに触れた通りである。ただしその表現は、スタッカートのリズムをそのまま 音楽的に活かすのではなく、音長アクセントを加えることで強調している。 3.まとめと今後の課題

 以上、ヴォルフの〈エオリアン・ハープに寄せて〉の歌唱旋律を、メーリケの詩と照らし合わせ

ながら分析してきた。その結果、メーリケが意図した詩的表現、とりわけ母音と子音による統一的

な響きとリズム、シンタックス上の語順の入れ替え、規則的な韻律リズムにおける変化は、歌唱旋

律のなかで音楽的アクセントを加えられて活かされていた。

(15)

       -38-ドイツ詩における音楽的要素とドイツ・リートにおける歌唱旋律の関係  問題はここからである。古今東西のあらゆる歌において、ことばと音楽は、程度の差や質の違い こそあれ、必ず結びついている。したがって、歌の分析的研究において、両者がいかに結び合って いるのかを検討することは必要だが、それ以上に、両者がそれぞれの表現を求めていかにせめぎあ い、矛盾を起こしているのかを明らかにすることが極めて重要である≒というのも、むしろそう した矛盾にこそ、作曲家の創作理念や、各時代・各地域の歌の特徴が現れているからだ。  本論の分析によって、メーリケの詩の表現意図が犠牲になった箇所も抽出できた。そのひとつと (コンマ)]を含めた「間(ま)]が歌唱旋律に挿入し切れていない箇所があることが挙げら

れる。これは旋律線の流れを作る際に、必然的に生じる矛盾といえよう。そして鍛も重要な矛盾と

して、第2節にみられたテクストの反復と、メーリケの詩にはない「間」の挿入を拍出できた。ヴォ

ルフの歌唱旋律は、音楽の拍節法に詩の韻律を乗せることを主眼として展開していく。その意昧

で、音楽は拍節法の枠組を崩すことはなく、詩の韻律はそれに屈服する。その一方で、詩の韻律に

おけるHebungに強い意昧上のアクセントが認められる場合、そのHebungは確実に拍の重点をとら

なければならず、場合によっては、前の小節に拍の重点を先取りしてシンコペーションのリズムを

用い、さらに強いアクセントを取りにいく場合がある。このとき、詩は音楽の拍節法に対抗したと

みなせよう。そして、詩と音楽が相互に自らの表現を通そうとし、その上で両者が相手の表現を受

け入れあったとき、詩は本来想定していなかった「間」を作るのであった。そこに、ヅォルフのリー

ト創作理念が映し出されていると考えられる。

 しかしながら、リートにおいて歌唱旋律とピアノ声部の関係が重要であることは言うまでもな

い。そして、ピアノ声部もまた、歌われるテクストに対して何らかのアクセントを加えている。

従って、リートの分析的研究では、両者の関係を明らかにすることも必要不可欠である。当然のこ

とながら、詩と音楽のせめぎあいは、歌われるテクストとピアノ声部の間でも生じているのだが、

この問題については槙を改めなければならない。       ・

汪 1 ドイツ詩における韻律とリズムについては、一ノ瀬1967、Storz 1970 (邦訳:シュトルツ1978)および山目  1982を参考にした。 2「朗唱リートの完成者」としてのヴォルフについては梅林2002を参照。 3 詩における音楽的要素について、詳しくはDe la Motte 2002を参照。 4 山□1982:184。 5 Dahlhaus 1989 :448 −9。 6 Wiora 1971:148、邦訳:178。 7 Dahlhaus 1989:445. 8 エドゥアルト・メーリケ(1804−75)はシュヴァーペン出身の詩人。生涯を通じて故郷を離れることがなかっ  た。生前に出版された詩集は4販を数えるのみで、最後の第4版およびその再版である第5版には226の詩が  所収されている。 9 より詳しくみると、1888年2月から5月に作曲された43曲と、同年10月から11月に作曲された10曲に分け  られる。先に書かれた作品と遅れて書かれた作晶の関係については、別途論文を執筆・役稿中。 10 この問題についても別途論文を執筆・投稿中。 11 メーリケの詩の多様性については宮下1981を参照。 12 altemierendとは、強音節と弱音節、すなわちHebungとSenkungが規則的に反復すること。韻律でいえば、  トロヘーウスかヤンブスを指す。 13 Jakobsen 1975:644。       −39−

(16)

14 15 16       稲 田 隆 之 ヴォルフの歌唱旋律におけるリズムについてはEgger 1963を参照。 Jakobsen 1975:646。 リートにおける詩と音楽のせめぎあいについては三宅2004を参照。 参考文献

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使用楽譜

Gedichlg,,on Edua㎡M5rikgμΓ eine Singstim?ne and Klavier.Hugo Wolf Slimtliche Werke, Band 1.1nternationalen Hugo  WolfGesselschaft.Wien: Musikwissenschaftlicher verlag,1963/1994,

参照

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