砂の液状化に関する基礎的研究
坂元 圭輔*・山田 宣良BASICRESEARCHONLIQUEFACTIONOFSATURATEDSAND
* KeisukeSAKAMOTO andNoriyoshiYAMADA
Inthispaper,theauthorsstudytherelationshipbetweenadegreeof1iquefactionandparticlesizeofsatu− Tatedsand,undertheseveralconditionsofamplitudeandfrequencyofshakingtabletest,uSlngamOdelof l/100scaleSixkindsofsamplesdifferingintheirparticlesize(16to300FLm)aIeeXperimentedatlto4cmof
amplitudeand50to200cpmoffrequencyofshaking,andfb110wingresultsareachieved
(1)Thoughtypicalliquefactionoccursinsaturatedsandhavingover75FLmindiameter,partial liquefhctionmayoccurinsaturatedsilthaving40to75FLmindiameteI,undercertaincondi− tions (2)meliquefactionoccursoverlOOgalofaccelerationoftransversalvibr’ation,however,itiscapa− bletooccurover50galofaccelerationincaseoflongitudinalvibration (3)undertheconditionofequalacceleIation,f士equencyoftransversalvibrationhasmoreinfluence onliquefactionthanamplitudeofit,buttheinfluenceisratherreversedincaseoflongitudinalYi− bration (4)Afterliquefaction,thedensityofsamplesincIeaSeby4to7%oftheiroriginalvalue nerefbre,aSaPreVentionmeasureofliquefactionduringearthquake,itiseffectivepreviouslytocom− pactsandygroundbyvibrationor・COmpaCtion,inthesamemanneraSdIainageofexcesssoilwater キーワード:砂の液状化模型実験,横振動,縦振動,振動の加速度 緒砂地盤の液状化については,1964年の新潟,アラスカ地震以来,四半世紀にわたって広範な調査
・研究が進められ,多くの設計基準や実務にも取り入れられて−きた.とくに1995年1月17日の兵
庫県南部地震(阪神大震災)のマスコミ報道によって,液状化という言葉が一般にもなじみのある
ものとなってきた.また,この分野の既往の研究成果をまとめた成昏も,わが国です■でに多数出版
され,関連する室内試験法も基準化された.しかしながら,これほど完成されたかのように見られる液状化の研究ではあるが,いまだ明らか
にされていない問題も数多く残されて−いる.たとえば,土を粒径によって分類すると大きな方から
礫,砂,シルト,粘土となる.このうち礫と粘土とは液状化を起こさないといわれ,また砂は液状
化を超こしうるとされているが,液状化を起こす最小粒径については結論が得られていない. ■岡山県庁」700 岡山市内【1j下2の4の6 0k甲m相成脚血0用∝ 2−4−6Uchisange・Okay∽−aノ700香川大学農学部学術報告 第47巻第2号(1995) 144 そこで本研究においては,この「どこから液状化するか」という問題にスポットをあて,液状化 を起こす最小粒径をもとめるとともに,振動数と振幅とが液状化に及ぼす影響についても検討を加 える. 実験の概要 (1)液状化の理論 液状化とは,地下水で飽和した緩い砂が,地震動などの外的要因により.土腰子のかみ合いがず れ,−・時的に懸濁状態となって有効応力がゼロとなるためにせん断抵抗を央う状態をいう.これ を模式的に表すと図−1のとおりである. 液状化後 液状化中 図−1 液状化の模式図 液状化前 粒径との関係では,粘性土では粘着力により土粒子の分離が妨げられるため,砂質土のような 液状化は生じにくく,また密な砂や礫,透水性のよい礫地盤などでも液状化は生じにくい. 液状化を連こす外的要因としては,地盤に加わるせん断力と水圧とが考えられる.現在わが国 で最も注目されているのは,地震力や波浪などにより繰り返し加わるせん断力による緩い砂地盤 の液状化である.−・回のせん断では十分強度を保っている砂でも,交番的に加わる繰り返しせん 断により過剰間隙水圧が徐々に上昇し,ついには有効応力がゼロとなってひずみが急増し,液状 化に至る, 礫地盤などで透水性がよい場合には,繰り返しせん断の途中で過剰間隙水圧の逸散が生じ,液 状化は起こりにくくなる.−・方,透水性の低い地盤では,−・定深度の緩い砂層で液状化が生じた 場合,その過剰間隙水による上向き浸透流が起き,それによって上層部が限界動水勾配以上と なって液状化する現象が起きる.これをこ次液状化と呼ぶ. 密な砂地盤でも地震力などの外力が大きければ,過剰間隙水圧は高まり,有効応力がほぼゼロ となりうる.しかし,この状態で静的せん断力が加わっても,緩い砂のように際限なく変形が進
むことはなく,ある変形量を越えると強度が急速に回復する現象を示すので,緩い砂地盤の液状
化のような不安定現象とは区別して考えたほうがよいとされている(1).
図−1をもとにして,液状化を数量的に取り扱う.
①液状化前の状態砂粒子が均一澱径の球であると仮定すると,液状化前の最粗充項(正列)の間隙畳は,粒径
dの場合d3−(汀d3/6)=0.4764d3
となり,間隙率は約48%となる.
これに対・して液状化後の最密充嘆(斜列)のときは,平行斜方六面体の体積
d3(1−COS600)1+2cos600=0.7071d3
から球の体積0.5236d3を引いた0.1835d3が間隙畳であり,間隙率は
(0.183d3/0.7071d3)×100=25.95%(約26%)となる.
②液状化中の状態砂粗子・の密度が2.5g/。m3とすると,砂粒子の100%が浮遊状態になった場合には,砂を含ん
だ水の密度は瞬間的に(2.5×0.52)+0.48=1.8g/cm3まで上昇し,この圧力を完全伝達す
るパイピング現象が生じれば水位は1.8倍となる.したがって理想的な液状化が生じた場合,
高さHの飽和砂は0.7Hまで沈下し,その間に外水位は1.8Hに上昇する. ③液状化彼の状態最租充填のとき100mgあった飽和砂は,振動によって最密充填になり,このとき間隙率は
48%から26%に減少するので,飽和砂の体積は(100−48)×100/(100−26)=70.3mゼまで減
少し,そ・の上に29.7mゼの水の層ができる.ただし実際の体積変化の程度は,振動前後の砂の
相対密度DI・=×100(%)
によって決まる. (2)実験の計画 ①地震による振動に対■する近似現在,わが国において地震の規模(マグニチエ・−ド)は,次式で表されている・
M=10gA十1.73log△−0.83
ここでAは最大振幅,△は震央距離である.近似的には,震央から100kmの距離にある倍率100倍の地震計の振幅を〃mで表し,その対
数をマグニチエ・−ドとすることができる.したがって実際の地震の振幅が1cmのとき,地震計
では106〃mの記録となり,マグニチエ・・−ドは6となる・
このように振動は地震の規模を決定する上で重要な因子であるが,これが砂の液状化のよう
な災害に結びつく場合には,地盤の固有振動数に基づいた共振現象が関連してくる.固有振動
数は,砂の場合には1∼2Hz程度といわれている.
つぎに,実験的に振動を起こした場合を考えてみよう∴一億に単振動または円運動における
力の釣合いはF=ma=mrw2=mv2/r
で表される.ただしm=質量,α=加速度,r・=半径,山=角速度,V=速度である..
地震のときの振動が単振動で近似できるとすると,加速度α=l餌2=vソr・は〔LT ̄2〕の次元
香川大学農学部学術報告 第47巻第2号(1995) をもち,その単位はgal=Cm/s2で表される. 振漁器を用いて実験を行う場合,器械の発した加速度がそのまま試料に伝達されたとすれば, 振動数ならびに振幅と加速度とこの関係は表−1のようになる. 表−1振幅・振動数と加速度との関係 146 また,地震の震度とそれに対応した加速度との関係は,気象庁震度階級(2)に定められており, それを抜粋すると表−2のようになる.したがって,市販の振造器を利用して震度Ⅲ∼Ⅶの範 囲における実験が可能になることがわかる. 表−2 気象庁震度階級 震 度 0 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ 分 類 無感 微震 軽震 弱震 中震 強震 烈震 激震 加速度 0、 0..8− 2い5、 8へ 25へ 80∼ 250、 400 (g血) 0り8 2.5 8 25 80 250 400 以上 ②模型実験について 砂の液状化に関する実験を室内で行った場合,それは「模型実験」といえる.−・般に模型実 験が成立するためには,相似別に基づいた相似条件を満足する必要があり,その主なものは (a)間隙率に関する条件 (b)単位体積重量の相似比 (c)応力に関する相似比 (d)透水係数に関する相似比 である.(足立の論文(3)参照) 液状化に関する室内実験においては(a),(b),(d)は容易に現地の状態に対応させる ことができるが,(c)は一・般に相似比が成立しない。なぜなら,現地ではたかだか20cm程度 の厚さの砂層では液状化は問題にならないからである. たとえば20mの砂層を対■象とした模型実験では,探さ20cmの砂容器(相似比100:1)に は100Gの遠心力をかけて1/100模型を完成させる必要があるが,(古賀の論文(4)参照)その 場合砂の粒径も100倍相当に評価されるので,その意味では粒径も1/100にする必要がある. その結果(d)の透水係数も1/100になると仮定すると,(a),(b)はほとんど変わらな いものと考えられるので,相似則が成立する. しかしながら,砂の液状化に関する模型実験を行う際,短径1〝mの粘土を用いて飽和させ, そ・れに100Gの遠心力を加えて相似則を成立させるというのは現実的とはいえない.すなわち, 実際には上記(a)∼(d)のうちのどれかを無視して実験が行われることが多い‥JISに規 定されている三軸圧縮試験や庄密試験などの土質試験もそのような実験の・一つである. したがって,今回の実験は,柴田らの論文(5)の表一1を実用上の参考として,上記4条件の うちで(c)を無視して実施することにした.
(3)実験の方法 ①供試試料
実験に使用した試料は,山口県豊浦産標準砂,市販のガラス粉,香川県牟礼町産八乗土であ
り,そのうち八乗土は音波ふるい器(6)によって16∼250〃mの4段階にふるい分けて合計6種
類とした.それらの試料の粒径範囲は表−3に示すとおりである.
表−3 供試試料の粒径 番 号 試 料 名 粒径範囲 土性区分 ート■ 、卜 砂砂砂砂 ル ル シ シ Ⅰ 標準砂 Ⅱ ガラス粉 Ⅲ 八乗土A Ⅳ 八乗土B V 八栗土C Ⅵ 八栗土D 200、300/‘m lO5∼125〃m lO5∼250〃m 75、rlO5/∠m 40∼75′〃m 16∼40−um ②実験方法 砂の液状化に関する今回の模型実験の概要をフローーチヤ−卜で示すと図⊥2のとおりである・ 図一2 実験の概要香川大学農学部学術報告 第47巻第2号(1995) 図−2に対して−若干の説明を加えると, ① 供試試料は500mgのガラス容器に漏斗を用いて自然落下によって租充填した.
② 振温帯はタイテック製NR−10型を使用し,振動の条件は振動数50∼200cpm,振幅1∼
4cmの範囲で行った.(表−1参照) ③ 液状化の程度は間隙水圧(挿入したチューブ内の水位)の上昇と,密度の増加とによっ て判定した.図−2のうちで典型的な液状化はA+Cで表されるが,B+DやB+Eも液状化の−・種とし
て取り扱った. この他に,振動を加えても試料の状態が変化しなかった場合は×で,外水位の上昇が5mm以 下の場合は,(ダッシュ.)を付けて表示した.またシルト粒径の試料でゲル状化がみられた場 合には−で示した. 148 実験の結果と考察 (1)横振動の場合 横振動を加えた場合の振動数・振幅と液状化との関係のうちで,最も重要と考えられる部分の データを抜粋すると表−4に示すとおりである. 表−4 横振動による液状化 試料Ⅱ(ガラス粉) 試料Ⅰ(標準砂) 試料Ⅳ(八乗土B) 試料Ⅲ(八乗土A) 試料Ⅵ(八粟土D) 試料Ⅴ(八乗土C)この表からは,次のことがわかる. ① 試料の粒径が小さくなるほど,液状化が起こりにくくなる傾向がある. ② 75〃m以下の試料(シルト粒径)においては,たとえ液状化が生じても砂の場合とは質的 に異なり,発生および収束に長時間を要する. ③ 40/ノm以下の粒径では,多くの場合試料のゲル化が認められ,ほとんど液状化は起こらな いと考えられる. ④ ガラス粉(球状粒子うでは液状化が極めて顕著に認められ,粒子・の形状の影響が示唆される. ⑤ 表−1と対■比してみると,液状化の危険性が生じる加速度は100gal前後である. これらの結果を考察すると,液状化と粒径との関係においては,粒子間の粘着力の影響が壊れて いる可瀧性が高い.すなわち,今回の実験において加えられた振動の加速度は,粒径40∼75/∠m の粗子・相互間の粘着力と平衡状態にあり,加速度が大きくなるほどより小さな粒子まで分離・・液状 化する結果となったものと考える.これを従来の研究上に位置づけると,「シルト粒径においても 振動の加速度が大きければ液状化するが,その限界は40/∠mである」とすることができる. (2)縦振動の場合 縦振動を加えた場合の振動数い振幅と液状化との関係のうちで,最も重要と考えられる部分の デー・夕を抜粋すると表−5に示すとおりである. 表−5 縦撮動による液状化 試料Ⅰ(標準砂) 試料Ⅱ(ガラス粉) 試料Ⅲ(八乗土A) 試料Ⅳ(八乗土B) 試料V(八栗土C) 試料Ⅵ(八乗土D)
香川大学農学部学術報告 第47巻第2号(1995) 150 表−5からは次のことがわかる. ① 試料の粒度と液状化とこの関係は,縦振動の場合も横振動の結果と非常によく似た傾向を示 し,砂とシルトとで質的に異なる結果となった. ② 試料に加えた加速度と液状化との関係では,縦振動の場合は横振動よりもはるかに小さい 加速度でも液状化が生じており,場合によ・つては50gal以下でも液状化が起こりうることが わかる. 縦振動の場合,小さい加速度でも液状化が生じた原因の−・つとして,−・種の衝撃作用が働いた 町能性がある. すなわち,縦振動の場合には振動の結果生じた下向きの慣性力に重力が加わり,振動が最下端 に達したときに衝撃となる.この衝撃は振幅が小さいとき(1cm以下)にはほとんど認められな いが,振幅が2cm以上になると発現し,振幅が大きくなるほど顕著になることが実験中に確かめ られた. (3)振動数と振幅とが液状化に及ぼす影響 既に論述したように,振動によって生じる加速度の大きさは振動数の成分と振幅の成分とに分 けられる. −・般には地震によって生じる液状化現象は,震度≒加速度と密接な関係を持つものとされてい るが,加速度の成分のうち振動数と振幅とがどの程度の畳みをもっているのかについては必ずし も明らかではない.そこで,今回行った実験結果を振幅と振動数の成分に分け,横振動と縦振動 それぞれについて表すと図−3,4のとおりである. 100gal 50 lOOgal ︶2 振幅Cm .し 50 100 150 200 振動数(cpm) 50 100 150 200 振動数(cpm) 図一3 振幅と振動数との関係(横振動) 図−4 振幅と振動数との関係(縦振動) 図中に示した同一加速度を示す曲線と対比させてみると,次のことがわかる. ① 横振動の場合,液状化の境界線の勾配は阿一加速度曲線の勾配より大きく,振幅より振動 数の影響が大きい結果となっている.その意味では,液状化限界として振動数90∼100cpm が目安にできる. (参 縦振動の場合,液状化の境界線の勾配は振幅2cm以下では同一加速度曲線の勾配よりはる かに小さく,振動数より振幅のほうが影響が大きい.とくに振幅が2cm以上の場合には非常 に液状化が起こりやすい.
この原因は,振動数と振幅とが液状化に及ぼす影響において,横振動の場合には粗子・の移動し やすさが振動数と関連性が高く,縦振動の場合には衝撃力のかかりやすさが振幅と関連性が高い ためと考えられる. (4)振動の加速度と試料の密度との関係 砂の液状化を判定する指標としては,これまでに論述したきた「液状化中の間隙水圧の上昇」 とともに,「液状化彼の試料の密度の増加」も考えられる.そこで今回の実験において加えられ た加速度と,実験終了時の密度との関係を示すと図−5のとおりである. Ⅰ標準砂 Ⅱカラス粉 Ⅲ八粟土A Ⅳ八乗土B Ⅴ八粟士C Ⅵ八乗土D 50 100 150 200 加速度(gal) 図−5 加速度と密度とこの関係 この固からは次のことがわかる. ① 液状化が生じた試料では50∼150galの閤において智彦が5∼7%程度,急速に増加している. ② 液状化が生じなかった試料でも多少の密度の増加が認められるが,増加の程度は小さい. これらの結果は,間隙水圧の上昇から判定される結果と良好な対応をみせており,密度の測定 による液状化の判定方法が有力であることを示している.また,別の側面からみると,砂地盤に 対してあらかじめ振動や締固め作用を加え,密度を高めておくことが液状化の予防につながる可 能性がある.
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