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香川県海域で確認されたオノミチキサンゴDendrophyllia cribrosa-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香川県海域で確認されたオノミチキサンゴ加〃励甲砂JJよαCr路和ぶα

明 石 英 幹・藤 原 宗 弘・吉 松 定 昭

〒761−0111香川県高松市屋島東町75−5 香川県水産試験場

Somenotesontheahermatypiccoral,Dendrq,々ylliacribrosa,

丘omKagawaPreftcture

HidekiAkashi,Ml)nehiroFttiiwaraandSadaakiYoshimatsu, ぬg‘lWα乃七重c加〝・αJダi5ゐer・よes且坪e′∼用例fαJ5rαJわ鱒,7ヲー・51匂5ん音別α−〟亘gα5ゐちrbたα∽αJ川ノ乃ノーOJJJノ呼α〃 た分布状況など,香川県下における本種に関

する知見を集約し,まとめることとした。な

お,地名表記は2005年10月末現在の行政区分 に従った。 方 法 1“香川県水産試験場に寄せられた試料の同 定 香川県水産試験場に持ち込まれたイシサン ゴ額試料について−,小川・高橋(i995)およ

びOgawaandTakahashi(2000)の記載に基づ

いて同定作業を行った。文献記載のオノミチ キサンゴに関する同定指標として,生時にお ける共肉部が橙色ないし赤昧を帯びているこ

と,英が突出していないこと,セブタ(隔

壁)が5系4回を示していることが挙げられ

ているので,こ.れに従って精査した。 2.奉納品や所蔵品等の形で残っている事例 の調査

香川県下の沿岸部や島峡部にある集落で

は,漁業の豊漁や操業中の安全を祈願するた

め,龍神や龍宮を祀っている所が多い。それ

らの一い部において,御神体・御本尊としてで はなく,奉納品として,オノミチキサンゴの オノミチヰサンゴかe乃dr・呼々γ〃ね‘勇♭05α は,キサンゴ科キサンゴ属に分類される非造 礁性イシサンゴ類の一・種である(小川・高 橋,1995)。我が国ではもっとも古くから知ら れていたものの1つであり,広島県向島産の

標本に基づいて和名の新称記載がなされた

(江口,1935;西村・鈴木,1971)。その後も 各地で新産地が発見されており,インタ一一 ネット等による情報収集の結果,日本沿岸に おける分布は,北緯35∼40度,束経130∼140 度と,広範なものになって−いることが分かっ た。 瀬戸内海もこの地理的分布域に含まれてい るものの,これまでの報告は,和名の由来で もある,広島湾沿岸を中心とした西部海域が ほとんどである(例えば:藤岡,1984;蒲刈

町,1998;中国新聞社,2001;今村,未発

表)。束部海域に、ついては,神戸㌧市須磨海岸で 本種の骨格片を採取した(田端,2005)との 記述がみられるのみであり,香川県沿岸海域 における学術的報告は見当たらない。 そこで今回,これまでに香川県水産試験場 に寄せられた試料標本,奉納品等の形で各地 に現存している事例,目撃情報等から得られ

(2)

納められていることが確認された。また,民

家の庭先などに置かれていた事例もあったこ とから,本種個体が現存している事例に閲す− る所在地情報を収集した。 3.過去の分布状況等についての聞き取り調 査 漁業関係者等に対し,本種個体の目撃情報 や混獲経験に関する聞き取り調査を行い,過

去における県下の分布状況等について調べ

た。 結 果 1.香川県水産試験場に寄せられた試料 香川県水産試験場に持ち込まれた2個体の イシサンゴ類試料は,いずれもオノミチキサ ンゴと同定された。それらの産地について, 図1Aに示す。 1−1“丸亀市本島産個体(図2A・B) 200王年3月22日,丸亀市本島の北側海域(図

1A−1)において,漁業者が固定式刺し網

(いわゆる建網)操業中に混獲し,当水産試 験場へ持ち込まれた。群体の−・部が白化して

いたものの,生体標本であった。高松市屋島

東町にある屋島山上水族館へ展示のために貸 出して−いたが,白化が全体に及んだため,骨 格標本として当水産試験場に保管している。

群体は,高さ16.Ocm,幅15.Ocmであった。30

個の爽を測定した結果は,長径平均値6.4mm

(5.2∼8.2mm),短径平均値5.7mm(4.9∼

7.2∬lm)であった。

1−2.坂出市標石島産個体(国2C・D)

2003年9月4日,坂出市極右島の西側海域

(図1A−2)において,漁業者が固定式刺し 網操業中に混獲し,当水産試験場へ持ち込ま

れた。群体にほとんど損傷のない,生体標本

であった。場内で継続飼育していたが,白化

が全体に及んだため,骨格標本として保管し

ている。群体は,高さ11いOcm,幅15.Ocmで

あった。30個の英を測定した結果は,長径平

均億6.7mm(5.4∼8.2mm),短径平均値5.9mm

(5.0∼軋7mm)であった。 2.奉納品や所蔵品等の形で残っている事例 奉納品や所蔵品など,何らかの形で本種個 体を確認することのできる場所について,図 1Bに示す。ただし,いずれも奉納者,奉納 時期などは確認できなかった。 2−1..土庄町豊島 同島に祀られている殉(図1B−1)に,白 化した本種個体の奉納されていることが確認 された。何を祀っているかについては確認で きなかった。また,個体デ1−・夕は得られな かった。 2−2.丸亀市本島

同島小坂(図1B−2)および福田(図1

B−3)に祀られている弼に,白化した本種個 体の奉納されていることが確認された。何を 祀っているかについては確認できなかった。 また,個体データは得られなかった.。 2−3.丸亀市広島

同島青木(図1B−4)に祀られている弼

に,白化した本種個体の奉納されていること が確認された。何を祀っているかに、ついては 確認できなかった.。また,個体デー・夕は得ら れなかった。 2−4.多度津町佐柳島 同島の八幡神社(図1B−5)境内にある龍 神礼殉に,白化した本種個体の奉納されてい ることが確認された(図3A)。個体データは 得られなかったが,大型個体であった。ま た,同島の,今は廃屋となっている民家(図 1B−6)屋敷神弼に,白化した本種個体の奉 納されていることが確認された(図3B)。個 体データは得られなかった.。さらに,同島に ある佐柳漁業協同組合(図1B−7)横に示巳ら れている頑に,白化した本種個体の奉納され ていることが確認された。何を祀っているか に、ついては確認できなかった。また,個体

(3)

一 一

A

C

図1.オノミチキサンゴβ部ゐ・甲々γJJヱαC′・仏和5α各事例の所在地・

A:香川県水産試験場へ持ち込まれた試料標本の採取地,

B:奉納品や所蔵品等の形で残っている場所,

C:聞き取り調査により確認された産地等.

(4)

2−6.詫間町皇浜

荘内半島同所(図1B−10)に祀られてい

る詞に,白化した本種個体の奉納されている ことが確認された。何を祀っているかについ

ては確認できなかった。また,個体データは

得られなかった。 3.聞き取り調査により得られた情報

現存しているかどうかは不明であるもの

データは得られなかった。 2−5.詫間町粟島 同島上新田(図1B−8)にある恵比寿神社 詞に,白化した本種個体の奉納されているこ とが確認された。高さ58.Ocm,幅43.5c皿と大 型のものであった。また,同じく上新田(図 1B−9)にある民宿または人家の玄関前に, 白化した本種個体の置かれていることが確認 された。個体データは得られなかった。 l 図2.香川県水産試験場へ持ち込まれたオノミチキサンゴ加〃オ呼砂〃ねcrfムro∫α試料標本. A・B:丸亀市本島産個体,C・D:坂出市極右島産個体. A・Cは生時,B・Dは骨格標本とセブタ(隔壁)の拡大図.

(5)

ば頃まで,同市沖合の塩飽諸島周辺海域で操 業中,本種とみられる個体がしばしば,網に 掛かってきたとのことであった。 考 察 今軋 得られた情報から,オノミチキサン ゴの香川県下における分布は,庵治町∼土庄 町にかけての海域と,坂出・丸亀市境∼詫間 町にかけての海域に大別することができた (図1A∼C)。両海域に共通する点として, 大小の島々が点在し複雑で速い潮流が生じて いること,水深30汀1以深と香川県海域では深 い場所のあること,水深5汀l以浅の浅瀬が混 在して複雑な海底地形を形成していること, が挙げられる。このことは,潮通しが良く, 水深のある所という,本種の分布条件(江 口,1965;今村,∧私信)と一致している。ま た,そのことが,学術調査を困難にするとと もに,漁業の影響を受けることが少なかった

理由であると推察された。【一方,インター

ネット上に公開されている情報によれば,近 年の我が国における新産地発見は,水深10m に満たない沿岸浅所が多く,マリンレジャ岬

の,漁業関係者等への聞き取り調査を通し

て,過去に確認された産地等の情報をまとめ た。情報の所在地について,図1Cに示す。 3−1.香川県庵治町における事例 庵治町鎧島(通称:大兜島,図1C−1), 同稲毛島(図1C−2),同白石(通称:カマ ノ岩,図1C剛3)において,いずれも潜水作 業中に,本種とみられる群体を目撃したとの

報告が寄せられた。ただし,記録は残されて

おらず,目撃時期や群体数は分からなかっ

た。 漁業者への聞き取り調査では,1960年代半

ば頃まで,同町沖合の島々周辺海域で操業

中,本種とみられる個体がしばしば,網に掛 かってきたとのことであった。 3−2.香川県丸亀市における事例 1950年代半ば頃,丸亀市本島地先の向笠島 (図1C−4)に祀られていた示那こ,白化した 本種個体が奉納されていたとの情報が寄せら ゎた。ただし,現地調査ができなかったの で,詞自体が現存しているかについては不明 である。 漁業者への聞き取り調査では,1960年代半

図3.奉納品としてオノミチキサンゴ伽〃d′・呼如才J∼αCrよあro∫αが納められていた示司の例

A:多度津町佐柳島の八幡神社龍神社痢,B:多度津町佐柳島の廃屋民家屋敷神頑.

(6)

の盛んな所で,ダイビングスポット開拓など の際に見つかっているという。香川県沿岸に おいても,これまでほとんど調査対象となっ ていない海域があるため,今後の調査で,新 しい発見につながる可能性がある。 稲葉(1963)は,瀬戸内海の生物相目録を 作成し,オノミチキサンゴを含め,イシサン ゴ目4科4種を記載収録した。さらに再調査 した結果,イシサンゴ目5科6種が記載収録 された(稲葉,1988)。その後も,神戸簡須磨 海岸(小川・佐名川,1997),岡山県牛窓町 (小川・太田,2000),広島湾周辺(鳥越ほ か,2002)におけるムツサンゴ月ゐヱz呼5α椚椚ヱ〟 肌ヱ〃〟ね肌〟ね以e〝5j5 産地の発見 神戸㌧市須磨海 岸におけるニホンアワサンゴAルe甲0′αノ甲0〃一 言cα 骨格片の採取(田端,2005)など,これ までに知られていなかった種類の報告がなさ れて−いる。香川県下でも近年,吉松はか(未 発表)により,備讃瀬戸海域から持ち込まれ た海砂の中に,未同定の小型イシサンゴ骨格 の含まれていたことが確認されており,オノ ミチキサンゴ以外にも,イシサンゴ類の分布 している可能性が示唆された。 今後も,潜水調査や聞き取り調査などを通 して−,オノミチキサンゴの分布状況および現 存状況に関する情報収集を行うとともに,他 の種類について−も調査し,香川県下における イシサンゴ類の知見を蓄積して−いくことが望 まれる。 謝 辞

本稿をまとめるにあたり,貴重な文献資

料,産地情報を提供して頂いた,広島県在住 の今村賢太郎氏ならびに中井研究室の小川数 也博士,香川県下における情報収集に多大な ご協力を頂いた,瀬戸内海歴史民俗資料館の 田井静明氏ならびに渡邁茂智氏,元香川県水 産試験場の小野知足博士,尾野久氏ならびに 竹本昭二氏,香川県水産課の龍満直起氏,聞

き取り調査でお世話になった漁業関係者の

方々の各位に深謝する。標本個体を提供して 頂いた,本島漁業協同組合の山村春治氏なら びに与島漁業協同組合の細谷柳太氏に感謝申 し上げる。

引用文献

中国新聞社 2001.広島県大柿町でオノミチ キサンゴ採取中国新聞:2001年5月8日. 江口元起.1935い 束京濁及附近に採れる石珊 瑚類.植物及動物4(2):66−68 江口元起1965,石珊瑚日.岡田要・内田清 之助・内田亨(監修),新日本動物園鑑上 巻:270−296.北隆館,束京. 藤岡義三い1984り 内湾美人一瀬戸内海の動物た ち採集と飼育46(9):370−373 稲葉明彦.1963、腔腸動物門小 瀬戸内海の生 物相:24ト251.広島大学理学部付属向島臨

海実験所,広島

稲葉明彦1988.刺胞動物門。増補改訂瀬戸 内海の生物相Ⅱ:246−280.広島大学理学部 付属臨海実験所,広島 蒲刈町‖1998.特記すべきもの.蒲刈町誌, 自然編:308蒲刈町,広島. 西村三郎・鈴木克美.1971腔腸動物門花虫 楓内海富士夫(監修),標準原色動物図鑑 全集16,海岸動物:4−11.保育社,大阪. 小川数也・太田日出明.2000.ムツサンゴ牛 窓に産す−.南紀生物42(1):32. 小川数也・佐名川洋之.1997.ムツサンゴ大 阪湾に産す.南紀生物39(l):52. 小川数也・高橋軟之介.1995.日本産非造礁 性イシサンゴ類の再検討と同定の手引−Ⅱ, キサンゴ属.南紀生物37(1):15−33. Ogawa,Kazunariand Kounosuke Takahashi・

2000・Noteson.JaPaneSeahermatyplCCOrals−II, NewspeciesofDend,・qP々γllia。Publ”SetoMar

Biol.bb.39(1):9−16

(7)

漂着生物.うみと水ぞく24(1):1−2. 鳥越兼治・久保田信・小川数也石 2002,ムツ サンゴ広島湾周辺海域(瀬戸内海)に産 す.南紀生物44(1):53 付象 オノミチヰサンゴか朗ゐ甲々γJJgαCr・∫あr05αが奉納品や所蔵品等の形で残っている場所 挿図番号 所 在 地 備 考

図1B−1 香川県小豆郡土庄町豊島

図1B−2 香川県丸亀市本島小坂

図1B−3 香川県丸亀市本島福田

図1B−4 香川県丸亀市広島青木

図1B−5 香川県仲多度郡多度津町佐柳島

図1B−6 香川県仲多度郡多度津町佐柳島

図1B−7 香川県仲多度郡多度津町佐柳島

図1B−8 香川県三豊郡詫間町粟島上新田

図1B−9 香川県三豊郡詫間町粟島上新田

図1B−10 香川県三豊郡詫間町室浜 殉に奉納 両に奉納 示那こ奉納 弼に奉納 八幡神社境内龍神社飼に奉納(図3A) 廃屋民家屋敷神に奉納(図3B) 佐柳漁業協同組合横網に奉納 恵比寿神社に奉納 人家または民宿玄関前に置かれる 殉に奉納

参照

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