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桧 尾
邦 之
一 1 二八大阪犬学短時間非常勤職員雇止め事件
〔大阪地方裁判所平成19年、(ワ)第3059号
地位確認請求事件〕意見書
まえ,がき この意見書は,大阪地方裁判所平成19年,(ワ)第3059号地位確認請求事件に関して 原告加藤多恵子氏の要請にもとづき平成20年4月14日に大阪地方裁判所に対して筆者 の法的見解をまとめて提出したものである。 その要点,は,①被告犬阪大学が文科省の指示に反して他の大多数の国立大学とは異な り最長任用更新限度を設けていなかったこともあって,実態的には恒常的かつ不可欠な 図書館医学情報等業務を担当する『時間職員/事務袖佐,員,』(短,時間勤務の国家公務員 非常勤職員)としての原,告の任用は反復更新され平成16年3月30日まで実質24年・4 ヵ月余にわたっており,国家公務員法及び人事院規則の身分保障(常勤職の任期なし任 用の原則)の観点からすれば原告に対する任用更新の拒絶は著しく正義に反し社会通念 上見認し得ず,従前の任用が更新されたものと同様の法律関係に立つと判断すべきであ ること,②大阪大学は組織改編(法人化)の前後で指輝命令関係や基本的な雇用i・労慟 条件や福利厚生,など労働関係の実賀において同一雅を為しているから,原告と被告との 間において合理性のない更新拒絶が許されない労働契約関係に移行したものであるこ と,③『臨時的職員』等につき国家公務員法81条の2第3項が定年規定の適用除外を 定めていることとの関係もありもともと定年の定めが存在しなかった被告の『時間職 員』(佃時間勤務の国家公務員非常勤職員)につき,新たに就業規則で60歳の更新期限一 1 一 1 W ・ 七 規定を設けることは合理性のない労働条件の不利益変更に該当すること,として本件雇 止めの効力を否定したものである。 大阪地力裁判所は,本意見吉提出後の4月22日に結審し,平成20年7月11日に原 告が雇用上,の櫓利を有する地位にあることの確認及びこれにもとづく賃金支払い請求を 棄却するとの判決を下した。 同判決の要旨は,①平成16年3月30日まで(24年・4ヵ月余にわたる)の原告の任 用は国家公務員非常勤職員としての任用関係であって,任用期間の点に限るにせよ常勣 職員と同様に扱うべきとの原告の期待は定員や予斜の制度あるいは任用の行政行為とし ての性賃に照らレて合理,的なものとはいえ。ないこと,②国立,犬学法人化後の披告大阪大 学との原告の眉名押印のある雇用契約は平成17年・度及び18年渡の各々1年契約である から期間満了により終丁するが,法人化前の経緯も含めて原告の期待権の有無を判断す ること自体はあながち理由がないとはいえないとしつつも,③被告が法人化後に制定し た非常勤職員就業規則は過半撒代表者の意見聴取を経ており,また60歳とする非常勤 職員の更新限度条項は高齢者雇用安定法や国家公務員法の規定等からうかがわれる我が 国の社会通念に照らして合理的な内容であって満65歳年度末までの定年・後再雇用を可 能とレている常勤職員処遇との差異も平等原則に違反する公序良俗違反とも認められな いから原告の期待は合理的なものとはいえない,というものである。なお,原告はこの 判決を不服として控訴している。 本件大阪地裁判決は,他の同種事件と比べても極めて異,例とも言える24年・4ヵ月余 にわたる任用の反復更新継続にもかかわらず原告の任用更新の期待権を認めず,任用更 新拒絶を適法とする従前の判例多数派の流れに神をさすものとなった。国立犬学が法人 化(労慟関係の民間化)された後にも2年間更新継続された労働契約関係については契 約更新の期待権を認める余地があることを示した点は,有期労働契約の反復更新拒,絶に 関する最高裁判決(例えば日立メディコ事葬昭和61年・12月4日最高裁第一小法廷判 決)に照らして当然とはいえ評価できよう。しかしながら,被告大阪大学において60 歳以降の継続更新事例を見出すのが困難であったにせよ,国家公務員法81条の2第3 項が「臨時職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び億時勤務を要しな い官職を占める職員」に対して定年・年齢規定の適用除外していることの趣旨(短期間あ るいは短時間の勣務であれば定年年齢を超えても勤務可能であり行政機関にとっても人 材の有効活用につながるなど)を・ことさら眉過したうえ(原告は少なくとも「常時勤務 を要しない官職を占める職員」に準ずる者というべきであろう),法人化時の就業規則 制定を契機に正規職員を定年後に非常勤職員とレて原則65歳年度末まで再,雇用する途 を開きながら他方で原告ら非常勤職員には「新たに」60歳年度末雇用更新期限規定を 28−3・・4−491(香法2009) 一 64 −
設けたことを平等原則に反しない合理的な内容であるとした判断は妥・登│生を欠くものと いわざるを得ない。控訴審ではこれらの点にっき再検討がなされ,雇用の継続が認めら れることを期待したい。 平成19年・(ワ)第3059号 地位、確認等請求事件 原 被 告 告 加藤多恵子 国立大学法人大阪大学 意 大阪地力裁判所 第5民事部単2係 御中
見 書
2008年4月14日 香川大学法学部教授 松 尾 邦 之 はじめに 国立,大学法人大阪大学事件(平成19年づワ)第3059号 地位確認,等請求事件)に方 かわって,労働法研究者としての見解を求められたので,以下私見を述べる。 1.事件の概要と争点 (1)事件の概要 原告加藤多恵子氏(以下原告とする)は,被告大阪大学(以下披告とする)の附属図 書館医学情報課に勤務する「非常勤職員」(事務袖佐,員と呼称され・,法人化までは任期 を約1年・(年授末の3月31日を除く)とする期限付任用頬時間勤務一般職国家公務員) であった。最初に採用された1979年11月19日から2004年4月1日の国立大学法人化 までの間24回繰り返し任用更新され24年4ヵ月余継続的に勤務レていたとこ。ろ,被告 が国立大学から国立犬学法人化へと移行したことに伴って,一般職国家公務員任用関係 から労慟契約関係(雇用期間1年づ所定労働時間6時間とする時間給の非常勤職員)ヘ と変更された。原告と被告の間の労働契約は,2005年度も更新され契約関係は継続さ れたが,更新時の契約書に前年度まで表記されていなかった「本契約は期間満丁により 終丁し,更新はしない」との文徊が記載されていた。披告は,2006年の法人化に際し, 新たに作成した原告ら「非常勤職員」に適用される『国立大学法人犬阪大学非常勤職員 (短,時間勤務職員)就業規則丿第2条4項において「職員の年齢が満60歳に達した日 一 ● - ● − − _ L 、 ノ ヘ← 1 1 1 一 五 以後に到来する最初の3月31日を超えて,労働契約を締結又は更新することはない。 ただし,大学が特に認めたときは,この限りでない。」と年齢による更新期限規定を定 めており,これを根拠とレて2005年渡末で原告を雇止めとした。他力で,被告は,正, 規常勤職員の場合には『国立大学法人犬阪大学教職員就業規則』第20条で「定年退職 した者については,期間を定めてこれを再雇用することができる」と定め,これを受け て『国立大学法人犬阪大学非常勤職員(短時間勤務職員)就業規則』附則3項μΓ職員 の年齢が満65歳に達した日以後に到来する最初の3月31日を超えて,労働契約を締結 又は更新することはない。ただし,大学が特に認めたときは,この限りでない。」と規 定した。 (2)争点について ①原,告は,前記任用関係が遅くとも2003年・4月1日に(再)採用された時点で期限 の定めのない任用に「転化」レており,これを引き継いだ後者の労働契約も期限の定め のない労働契約となっていたこと,②(ア)原告又は原告所属の労慟組合が同意していない こと,あるいは(イト応の意見聴取手翁(労基法90条1項)は実施したもののいわゆる パー・卜労働法7条の佃時間労働者の過半数代表者の意見聴取努力義務に反して公序良俗 に違反するものであったこと,さらに(ウ)高年齢者雇用安定法の65歳継続雇用を義務伺 ける改正(2004年6月改正)が論じられている社会的状況の下で直前の2006年4月に 正規職員のみを対象とする65歳再雇用条項を定め一部とはいえ正規瞰員退瞰者だけを 再雇用することで著しい格差を設ける結果となっていることからすれば既存の労働条件・ を合理盤を欠く就業規則の条項によって実質的には一力的に不利益変更するものであっ て前記就業規則の年齢による更新期限規定は原告には効力が及ばない,などと主張して いる。 被告は,前記①について,最高裁判例(後掲大阪大学図書館事件鍛一小判)等によれ ば期限の定めのない任用に「転化」することはありえず「1年間の期間の定めのある契 約である」。②については,本件就業規則の作成は新規作成であり不利益「変更レでは ありえないこと,新規作成においては少なくとも一定の合理性を有すれば有効であり 『国立大学法人大阪大学非常勣職員(短時間動務職員)就業規則』第2条4項は法人化 以前からの確定した取扱いを明文化したものにすぎず何ら不利益性はないこと,また労 慟基準法は短時間労働者の過半数代表者の意見聴取までは義務付けていないから手・続に 瑕疵はないこと,を主張している。 28−3・・4−489(香法2009) 一 66 −
2.争点の検討 (1)雇止めの適法判断に関する判例理論の動向,その意義と問題点 次に,争点,検討の前提として,期限付任用非常動公務員の雇止,めに関する従来の判例 理論の動向を示し,その意義と問題点について整理する。 定年判のない時代の勧奨退職敦員を退職後1年・任期任用の更新拒否という特殊性にも かかわらず,「先例」として事件・の多くの判決によって引用されてきたのが東郷小学校 事件最三。小判(昭和38年・4月2日 民集17巻3号ドである。同判決は,職員の任用を 無期限のものとするのが法の建前であり,期限付き任用が許されるかどうかについて法 律(地方公務員法)には別段の規定はないが…………①それを必要とする特段の事情が存し, 且,つ,②それが職員の身分を保障し職務専念を保障するという趣旨に反しない場合にお いては,特に法律にこれを認める旨の明文がなくても,期限何任用は許されると判示し ていた。 その後,国家公務員につき最高裁の判断が示された。大飯犬学図害館事件最一小判(平 成6年7月14日 判例タイムズ871号ドである。同判決は,人事院規則にのみ規定が あり国家公務員法本則各条に明文規定のない「非常勤職員(日々雇用職員)」という形 態の期限付き任用制度を設けること自体が適法であるか否かについては特に示さず,① 事務量が正,規任用の常勤職員のみでは処理,できずまた正,規職員定員の増加が実際上困難 であること,②特別の習熟,知識,技能または経験を必要としない代替的事務であって 「非正,規」職員によっても適正に処理,できる場合であること,③当該職員に任期甜きで あることを明示していること,との各要件を満たしていれば,「期限封任用に係る非常 勤の国家公務員である日々雇用職員」については,四年六ケ月継続勤務しても職員の任 用を原則とレて無期限とした国家公務員法の趣旨に反しないと判示した。 ところで人事院規則にのみ規定があり国家公務員法本則各条に明文規定のない「非常 勣職員」という期限付任用制度を設けることの適法性については,福井郵便局事件名古 屋高裁金沢支部判決(昭和63年・10月19日 判例時報1289号)がより詳絹に判示レて いる。まず①「一般職に属する国家公務員につき,国公法六〇条に定める臨時的任用以 外に,期限付任用を行うことは,同法が,国民に対し,公務の民主的かつ能率的な運営 を保障することを目的とし,職員の身分保障規定等を定めていることからすれば,公務 の能率的巡営を阻害し,身分保障の趣旨に反する場合には許されない」との原則を明ら かにしたうえで,②F同法が職員の期限付任用を禁じていないこと,同法附則一三条が 同法の特例を設けることを許レており,人事院規則八−一コづ職員の任免)は,恒常的 におく必要がある官職に充てるべき常勤の職員を任期を定めて任用してはならないとす コー四
四 1 ← ・ 一 -一 一 1 るが,一定の要件・の下で常勤職員についても任期を定めた任用を許容しト玉条のコ,), 日々雇い入れられる職員の任用の更新及び任期満丁による当然退瞰(七四条一項三,号, ニ,項)について定め,人事院規則ハー一・四(非常動職員等の任用に関する特例),同− 五,−−ニづ非常勤職員の勤務時間及び休暇)等において期限付任用を前提とする規定が 設けられていること等からすれば,右のような弊害がない場合には,期限付任用も一般 的には禁止されていないものと解される」として,③「郵政省において,任用規程によ り任用される臨時雇は,適法な任用と認められる」と結論づけている(本件大阪大学事 件に則せば,この「任用規程」は1961年2月28日『常動化防止摺議決定,』及び同決定 に基づく『文人任第54号』と置,き換え可能ということになろ引。 つまるところ,こ。れら先行判決は,条件付採用や臨時的任用以外の期限付任用を特に 禁止する規定が存在せず,他方で国公法も地公法も本則条文に明確にその存在を定める 規定がなくとも“手普かり”になる法律の規定(国公法附則13条や地公法22条・・25 条)とそれを具体化する下位,規定(国では人事院規則以下の規則・・規程,地力において は条例・・規則・要綱など)が存在すれば適法な任用削度として許容できると判断してい るのである。もっともこれだけで適法と認めるというのではなく,多くの判決が,適法 要件として①「それを必要とする特段の孚情」が存在すること,②当該職員の雇用およ び勤務条件の十分な保障がなされること,そして③国民の付託に応えるべく民主的かつ 能率的巡営が制度的に保障されているこ。と,の必要性に言及している。しかし,これら の適法要件の具体的適用判断においては,大阪大学事件最高裁に典型的に見られるよう に形式的表面的なレベルに止,まっている。職員の雇用上,および勤務条件上の十分な保障 がなされているかという点については,期限什であることが明示されあるいは労働者が 認識できたか等を検剖する程度の表面的・・形式的なものに止,まるだけでなく,「任命権 者」が期間満丁後も継続を「確約ないし保障する」など任用継続の期待が無理からぬよ うな行為をしたと認められる場合においてすら任用継続を認めず,期待侵害による国家 賠償(金銭補價)の司能性を示すにすぎない。これでは,非常勤職員の担当している職 務が常勤職員の業務内容と重なり,また長期化しているなど質的・量的な違いは相対化 している状況,あるいは恒常的,継続的な定員不足を補うための再採用・・任用更新の常 態化と勤続の長期化については任命権者側に大きな制度運用上,の責任(権利濫用や信義 則違反)があるにもかかわらずこれを具体的に問うこ。ともなく,その結果として事実上 の「常勤化」によって非常勤緻員に認められるべき任用更新の合理的期待(「身分保障」) を軽視あるいは無視することになる。当該職員の雇用および勤務条件の十分な保障がな されることをより重,視し判断しなければならない。 この点につき,公法上,の任用関係であることを前提としつつより踏み込んで具体的な 28−3・・4−487(香法20㈲ 一 68
解決力向を提起した判決として岡山中央郵便局事件岡山地裁判決(平・成14年10月15 日 労慟法律旬報1552号)を・あげることができる。同判決は,①その任用形態が任期 1日・・予定雇用期間約2ヶ月(当初は約1ヶ月)・動務時間1日6時間であり,郵使物 の大口先配達等業務に平成9年,10月27日から約2年9ヶ月継続任用され,更新にあ たっては予定雇用期間および期間満了により職員を免ずる旨が明示された「辞令簿」に 原告が押印し予定雇用期間が明示された「採用通知書」を・受け取っており,非常勤職員 と常勤職員はそれぞれ約500名とほぼ同数で「非常勤職員の中には動続10年を超えて いる者もおり,予定雇用期間満丁後も再採用されることが常態化して」おり,業務に関 して郵便物区,分や配達道順組み立/てなど「非常勤職員の業務と常勤職員の業務内容には 重なり合う点が多く業務内容の違いは相対化してjいたという事例において,②公務の 民主的かつ能率的な巡営(国公法1条)を阻害することなく,職員の身分保障を妨げな い限りは,③本件の期限付任用である日々雇用職員としての採用が違法であるとまでは にわかに認定し難い上。仮に任用行為の瑕疵に当たるとしても,その瑕疵が任用行為自 体の不存在と同視しなければならないような重大なものとして無効事・由に当たるものと はいえず,しかも,同事件原告主張のように,本件採用が私法上の労慟契約としての効 力を有するとすれば,かえって,国公法1(ママ)条6項〈2条6項〉の趣旨に抵触す ることとなるし,また,附款としての期限の付与部分を無効として期限の定めのない任 用になるとすると,試験又は選考という正,規任用の手裂も採られていないのに,日々雇 用の非常勤職員として採用された者に常勤職員と異ならない地位を認める結果になり, 採用過程の公正‥公平を損ない,国公法に反することなると指摘しながらも,④原告の 地位が一殼職国家公務員でありその採用がF公法上,の任用jであってもF本件期限付任 用は身分保障を妨げないものでなければならないから,信義則や,櫓利濫用が許されな い旨の民法1条所定の法規整が及ぶものというべきであって,本件雇止めにも解雇権濫 用法理の類推適用の余地がある」,と判断した。侶義則および権利濫用という民法上,の 一般原則を公法上,の任用‥採用にも適用できると結論づけた。以前から有力な行政法学 説(例えば,室井力『特別権力関係論』勁草書房・・1968年,381頁以下)は公務員の勤 務(=労働)関係は公法的特殊性づ=規律や規制)を・翁するものの対等当事者間の(契 約)関係であることを承認してきた。このような考え力に立てば任命権者側もその任用・・ 採用権限を濫用することは許されないということになり民間と殊更異なる法理や法原則 を立てる場合にはその特殊性を認めるべき根拠と範囲を明確にすべきということになろ う。この岡山地裁判決はこのような学説の考え方を考慮して判断しているものと考える。 また,その後,情翁レシステム研究機構(国情研)事件東京地裁判決(平成18年・3 月24日 判例タイムズ1207号)は,次のように岡山地裁判決と同様な判断を下してい ← ⇒ 一 I 一 ¥ 一 ← 1
- 1 1 1 1 1 1 1 る。国立,研究所における任期付非常勤職員の勤務関係は公法上,の任用関係であることを 前提に,任用更新を拒絶できない特段の事情が認められる場合として,①任命櫓者が, 非常勤職員に対レて,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するな ど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと見られる行為 をしたというような特別な事情があるにもかかわらず,任用更新をしない理由に合理性 を欠く場合,②任命権者が不当・違法な目的をもって任用更新を拒絶するなど,その裁 量権の範囲をこえまたはその濫用があった場合,③その他任期付きで任用された公務員 に対する任用更新の拒絶が著しく正義に反し社会通念上,是認しえない場合を指摘した上 で,恒常的に必要業務に任期1年・合計13回にわたる更新を受けた非常勤職員が,組織 改編(非公務員型独立行政法人化)に伴い任用更新上限を3年とした力針を伝えられず, 期間満丁後の再就職に配慮もされないまま任用更新を拒絶された事例につき任用更新の 拒絶は著しく正義に反し社令通念上是認しえず信義則に反し許されないとして従前の任 用が更新されたものと同様の法律関係に立クつと判断された。さらに組織改編後の法人と の間において労働契約関係に移行したものとして労慟契約上,の地位の確認請求が認容さ れている。 さらにその後の同事件控訴審(東京高等裁判所 平成18年,12月13日)判決は,公 法上,の任用関係であることを荊提に,従来の判例動向に則して解雇権濫用法理,の類推適 用も期待権侵害の不法行為の成立も認められないと判示している。 (2)本件雇止めの適法性について ここでは,まず一般的な雇止め事由が認められるべきかを検肘し,次いで本件の中心 的争点である年齢による更新期限規定に基づく雇止,めの適法性について検削する。 (ア)一般的な雇止め事由が認められるべきか ① 原告は1979年11月19日に4時間勤務の事務袖佐員として彼告附属図書館に 採用され同年,度末の3月30日まで,翌1980年度は4時問勤務の事務補佐員とし て,さらに1981年度からは6時間勤務の事・務袖佐員として法人化まで24回繰り 返し任用更新され24年,4ヵ月余継続的に長期勤務してきた。また,その職務内 容は図古館医学情報の整理や提供という大学の敦育研究に不司欠かつ恒常的なも のである。そして任命権者である彼告大阪大学は,日々雇用非常勤職員と異なり 短,時間勤務非常勤職員については法人化以前においては更新回数限度を定めずか つ実際的にも更新を限定してこなかった(なお,蝉時間勤務非常勤瞰員に対して 更新回数や年数限度を設けていなかったのは,被告と束京大学などごく一部の国 28−3・・4−485(香法2009) 一 70 −
立大学であったと推測される)。 2006年,5月1日現在全敦職員9,917名中2,753 名i・約28%を非常勤職員が占めている。 ② 原告は,上記岡山中央郵便局の事例や情聡レシステム研究機構(国情研)の事 例と比べてもはるかに長い期間不司欠かつ恒常的業務に従事・し,他方被告は 1961年2月28日r常勣化防止個議決定』及び同決定に基づく『文人任第54号』 にもかかわらず空白の1日を置くだけで任用期間の周期到来後引き続いて採用 (任用更新)していた。任命権者側に大きな制度運用上,の責任(権利濫用や信義 則違反)があると言わざるを得ない。 ③ 法人化以前は年齢による更新期限規定が存在しなかったことは,臨時的職員や 法律に基づく任期付職員,その他非常勤職員につき定年岸齢規定の適用を排除す る国家公務員法81条の2第3項,の規定の存在からすれば,確たる法律上の根拠 のない佃時間非常勤職員であったとしても抵触のおそれを避けるためには当然で あったであろうし,本来的な臨時的な軽微な職務の場合には年齢による限定はそ の必要性も職務遂行能力上の合理性,もなかったであろうからでもある。 ④ 以上④④③を総合的に考慮するならば,本件原告に対する任用更新の拒絶は著 しく正義に反し社会通念上,是認し得ず,従荊の任用が更新されたものと同様の法 律関係に立つと判断すべきと徊えよう。ただし,年齢による限定の社会的必要性, や職務遂行能力上の合理,性が存在する場合には雇止,めできると考えるべきであろ う。たとえば,2004年6月改正以前の高年齢者雇用安定法も65歳までの継続雇 用を努力義務の基準としていたことが想起できよう。 (イ)年齢による更新期限規定に基づく本件雇止めの適法性について ① 本件原告に対する任用更新の拒絶は著しく正,義に反し社会通念上是認し得ず, 従前の任用が更新されたものと同様の法律関係に立つと判断すべきものであると すれば,情縁 システム研究機構(国情研)事件・東京地裁判決と同じく,組織改 編(法人化)の荊後で指揮命令関係や基本的な雇用・労働条件・や福利厚生,など労 働関係の実質において同一性が存在する以上,被告との間において労働契約関係 に移行したものとして労働契約上の地位の確認請求が認容されると解すべきであ る。 ② したがって,就業規則が適法・適式に作成,周知されたとしても原告の有利な 労働契約・・労働条件・内容は変更され。ず,一力的不利益変更を可能とする高度の合 理性・・経営上,の必要性,を有する就業規則の作成と適切な窟見聴取と周知手続でな ければならないということになろう。 一二〇
一 1 一九 ③ しかしながら,本件就業規則(『国立,大学法人大阪大学非常勤職員(短時間勤 務職員)就業規則』)第2条4項,の60歳更新期限設定規定は,原告が指樅するよ うに,すでに65歳継統雇用を努力義務とされ高年齢者雇用安定法の65歳継続雇 用を義務づける改正づ2004年,6月改正,)が論じられている杜会的状況の下で敢 えて設けられていること,加えて同就業規則附則3項を設けて正規職員のみを対 象とする65歳再・雇用条項,を定め,両者の間に著しい格差を設けたこと,から判 断すれば一方的不利益変更を可能とする高度の合理性・・経営上の必要t生は存在し ない,というべきであろう。 3.結