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監査意見の展開-香川大学学術情報リポジトリ

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監査意見の展開 森 Ⅰ.はじめ紅。ⅠⅠ… 企業実態の監査と情報表示の監査。 ⅠⅠⅠ.企業実態の 監査の展開。ⅠⅤ‖ 公認会釘土監査の展開。 Ⅴ.情報表示の監査の展開。 ⅠⅤ.営業報告書叱おける追加的情報の監査。 ⅤII.将来紅関する情報の監 査。 ⅤⅠ廿∴予算の監査。ⅠⅩい 経営業績情報の監査。Ⅹ.むすび。 Ⅰ 現在に.おいて,職業的専門家としての公認会計士把.よって行なわれている監 査ほ,一・般に財務諸表監査とよばれ,企業をめぐる諸利害関係者に対して財務 諸表によって行なわれる企業の情報公開の適正性についての第三者的批判を目 的とするものと理解されている。 しかし,企業に関する監査を,全体的かつ歴史的紅考えるならば,上紅のぺ たような監査ほ,企業監査の一・領域またほ−・段階を示すもの紅すぎないと考え られる。1)したがって,全体としての企業監査を把握するため紅は,企業に関す るあらゆる形態の監査をも含めて−全体的に考察するとともに.,これまでの監査 の発展ばかりでなく,その将来における発展の動向を見通すこ.とが必要であろ

う。2)このような意味から,本稿でほ,米国における最近の動向を紹介すると

ともに,その意義づけを行ないたい。 ⅠⅠ 理念的紅は.,企業監査ほ,企業実態すなわち企業の状態および行為の適正性 1)拙著『近代監査の理論と制度』第1部第1章「監査の本質の理解紅ついて」を参照さ れたい。 2)この監査の展開については,つぎのものを参照されたい。前掲拙著第3部算7章「 行為の裏付けとしての会計監査から情報表示としての会計監査へ」,第8章「証券投資家 保護監査の展開」,第9章「社会監査の構想とその問題点」。拙稿「EDPSと監査機能の展 開」,『屡業経理』,昭和43年9月号。拙稿「監査意見の過去・現在および将来」,『企業会 計』,昭和43年11月。以上の拙稿紅ついては以後題目のみを記す。

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監査意見の展開 −J∂β− の批判の監査と,そ・の企業実態に関する情報表示の適正性の批判の監査とに分 けることができる。 もとより,現実の企業において,このような全体としての企業監査が,意識 的に,単一・の主体またほ機関によって統括され,あるいは複数のものによって 分担されているということが認識されているというのではない。むしろ,現 実ほ,その道であって,企業に関する監査ほ,きわめて個別的にしか理解され ていない傾向がある。われわれが,ここで,企業監査を二つに分けたのほ.,企 業監査の全体的構造およびその発展の動向の理解を容易にするがために.他なら ない。 もっとも初期の企業監査ほ,米国の場合には,職業会計士に.よる従業員の誠 実性の監査であり,いわゆる不正および誤謬の摘発の監査としてしられてい る。このような監査ほ,別の機会に,「■行為の袈づけとしての会計監査」として とらえたように,従業員の誠実性を監査するのが主要な目的であり,その手段 として,会計による袈づけが行なわれたのである。$)したがって,企業実態の 監査は,不正の摘発に限定された内容をもつものであったが,この側面が強く 主張され,情報表示の監査の側面は,あまり強く主張されなかった。 もともと,企業実態とその情報とほ,表裏のように密接な関係をもつので, 企業監査ほ,本質的には,企業実態の監査と情報表示の監査に.よって構成され るのであるが,この最初の監査の形態においてほ.,従業員の誠実性という企業 実態の面が前に押しだされていたのである。 ところが,経済発展に伴う企業規模の拡大にしたがって−,利害関係者の範囲 がひろがり,経営管理が複雑化したために,企業実態の監査の側面は,主に内 部監査によって引き継がれ,(しかし,このことほ,内部監査が,情報表示の監 査の側面を,まったく引き継いでいないということを意味するのではなく,企 業実態の監査に必要な情報表示の監査は,当然紅,行なわれなければならな い)これに対して−,情報表示の監査としての特徴を,大きく拡張してきたもの は,公認会計士に.よる財務監査であった。 このような理解にしたがえ.ば,内部監査が,業務監査のような領域にその発 3)拙著『■近代監査の理論と制皮』第7茸「行為の裳付けとして−の会封監査から情報表示 としての会計監査へ・」を参照されたい。

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香川大学経済学部 研究年報 8 J.96β ーヱ54− 展の方向を求めることは,いたって自然なことであり,かつまた,公認会計士 監査が,情報表示の監査としての機能を,より一層拡張しようとしてきたこと も,同様に,当然の動向であるというこ.とができる。 とこ.ろが,−・般的な議論では,公認会計士監査の機能の展開については,情 報表示の適正性の監査機能の拡張として主張されることが多い0サーなわち,監 査意見の対象となる情報の範囲をひろげていくという主張である。たとえば, 会計情報に.おいて二,伝統的な歴史的な財務諸表の情報から将来の見積り財務諸 表の情報およぴ・その他の将来会計の情報へ・の拡張がすすめられ,さら紅は情報 自体に.おいて,会計情報から非会計情報への拡張がとかれる。 しかし,企業実態の適正性の監査の側面紅ついては,内部監査のような単に 経営管理的観点ばかりでなく,これを社会的あるいは公共的観点紅まで高め て,公認会計士の監査機能紅含ませようという議論は,あまりみられない。わ れわれも,ずっと以前に,こ.のような構想の系統に属するものとして了,社篭監 査を紹介したが,これは,企業の社会的責任の遂行に・関する企業実態の監査で はあるが,その監査主体は,公認会計士ではなく,むしろ各種の学識経験者を 集めた委員会組織であった。4) ⅠⅠⅠ 企業実態の批判としての監査ほ,−・般紅,経営管理の手段とし行なわれる内 部監査の主たる内容である業務監査として展開されていることが認識されてい るが,企業実態の監査は,単紅・,これらのものに・限られない。企業の特定利害 関係者による企業実態の監査もある。たとえば,株主の代表者として,監査役 が,経営者である取締役の業務執行の監査を行なう監査役制度は,ドイツ株式 法およびわが国の商法改正試案に.みられる通りである。これらは,監査思考と しては.,別段に,新しいものではない。 これ紅対して,社会監査は,理想論ではあるが,新しい観点に・立つものであ り,単に.特定利害関係者の保護に.とどまらないで,より社会的かつ公共的見地 に基づくものである。 4)前掲拙著算9章「社会監査の構想とその問題点」。

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監査意見の展開 −・ヱ55− 社会監査といっても,論者によりその内容が異なるが,ポ−エソおよびゴイ ダーは,いずれも,経営者の社会的責任論をその主要な根拠に.している。ポ− エソは,経営者は,大企業の経営者の意思決定が,社会の各方面に.重大な影響 をおよぼす事実を認識し,そ・の意思決定にさいしては,それに.関する社会的責 任を自覚しなければならないとする。社会監査は,このような経営者の自主的 に.引き受ける社会的責任が,合理的に遂行されているか否かが,多くの学識経 験者からなる委員会に.よって評価され,その結果に.ついては.,経営者のための 資料として提供される制度とされている。5) これに.対して,ゴイダーの見解は,ポーエソよりも積極的であり,ポーエソ のような社会的責任の自主的な引き受けにとどまるものではなく,社会の各利 害関係者の主張を,株喜の主張と同等に・権利としてとり入れ,こ.れに対する社 会的責任を経営者の義務として一課し,社会監査ほ,各利害関係者のために,経 営者の諸経営政策および意思決定において,このような社会的責任が果されて いるかどうかを監査し,その結果を社会に.公表する制度とする。ゴイダーの場 令の社会監査の担当者も,同じように・学識経験者があてられている06) ここにのぺた社会監査は,経営者のとった価格,賃金,研究開発,広告,公 共関係,人間関係,地域社会関係および雇傭などに㈲する諸経営政策および意 思決定に対する第三者的批判を意図するものであり,まさ紅,企業実態の監査 の系統に属す・るものである。こ.こ.に.は,企業実態の監査が,単に,株主に対す る経営者の誠実性の監査から,社会の諸利害関係者に.対する経営者の誠実性の 監査への,監査思考の展開がみられる。こ.の背後には,経済の発展に伴う企業 観の変化があることほ.,もちろん忘れてはならない。 ところが,公認会計士ほ,こ.れまで,主として,企業に関する情報表示の監 査として発展してきたのであるが,企業の情報表示と企業実態とは,表裏のよ うに密接に関連しているので,公認会計士の監査機能に・おいてこも,このような 動向を無視することはできない。これに関連して,ケアリ−の経営業績情報の 監査の考え方を,のちに.とりあげるが,これは,社会的観点における企業の業 5)H.R.Bowen,飢融−αJ点〃1Sか沼扇∂オJ査f.γ扉■〃ねj勤制乃βぶ5∽α〝1 6)George Goyder,The Resbonsi’ble Com?an.ylr

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香川大学経済学部 研究年報 8 ヱ96∂ ーヱβ6− 績を測定する情報の監査を意図するものである。7) ⅠⅤ 公認会討士の監査ほ,英国に.おいて種子をまかれ,そして米国に.移植されて はなやかに開花したということもできるように,米国での発展は,監査理論の 動向を大きく左右サーるものであるということができる。 英国における初期の監査に.みられるように,会計士監査のほじめほ,経営者 および従業員の誠実性を確かめるために,その裏づけである会計帳簿の精細な 照合が,主要な手段として行なわれたのである占 このような会計士監査が,英国から米国へ伝えられたときも,もっぱら経営 者のため紅,従業員の不正および誤謬の摘発のために利用されていたが,やが て,企業に閲す−る会計情報の監査として大きく発展した。これは信用監査およ び$ECの証券投資家保護監査の歴史にみられるところである。・そこでは,貸借 対照表あるいは財務諸表が,企業について−の情報を適正に.表示しているかどう かを監査するという基本目的の観点から,監査方法を展開したため紅,分析的 な方法が重視され,また椅査によらず試査紅よって,意見の証拠固めを行なう ように発展してきた。8) このような監査思考の展開の結果として,通常の財務諸表監査は.,不正の摘 発を基本目的としないとして,財務諸表が企業の情報を適正紅表示しているこ とを確かめることができれば,それ以上紅精細な監査を行なう必要ほ.ないとい う考え方が,1951年のコジフイケージヨンおよび1960年の「財務諸表監査に.お ける独立監査人の責任と職能」によって明確にされた。9) ケチリ−も,公認会計士監査の現在の前提とされているものが,環境の変化 によって陳腐化することを指摘し,その例として,経営者および従業員の不正

7)J.L Carey,The CPA EVans foY.the Future,pp.201−212. 8)前掲拙著971−211ぺ−ジ。

9)AICPA,ResZ,OnSibilities and Functions qf.Zndebendent Audirtoritnihe Examinaii−on qf’FinancialStatements.AICPA,Codificaiion(げStaiements on A郎d査f査〝g Pγ〃Cβ♂祝γ♂.拙稿「監査意見の論理について」,『r会計.』,昭和43年9月号,423

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監査意見の展開 ーJβ7− の摘発が,従来の会計士監査の主たる動機であったけれども,現在では,その と.とは考え直されなけばならないとしている。10) このように,公認会計士監査ほ,環境の変化に応じて展開を準備しなければ ならないのであるが,現状は十分とはいえない。たとえば,ケアヅ−は,現在 のきまりきった標準的文言に.よる簡潔な短文式監査報告書の様式には.,公認会 計士監査の展開という観点からは,多くの欠点が指摘できるという。 すなわち,そ・れは読者によって十分に理解されていないこと,公認会計士毎 の監査業務の差異を判断する手段を提供して≠、ないこと,完全性と正確性の幻 想を与えること,また,監査人にほ,責任の防衛として最低の基準で満足する 傾向を与えること,および伝統的な標準的意見の範囲をこえて,読者に有用な説 明および注釈を提供しようという気持を起させないことなどをあげている。11) このよ.うなケアリ、−・の個々の指摘にほ異論はあるにしても,ケアリーーが,公 認会計士監査が,伝統的な範囲にとどまらないで,創造的役割を果すように展 開すべきでほないかという疑問を提起している事紅ついては同意できるであろ う。 こ.こ.で,ケアリ−は,公認会計士監査の環境の重大な変化の一つとして,コ ンピュータ−の問題をとりあげている。コンビ.ユータ、−の利用の急速な増大に よって,監査手続は大きな影響をうける。すなわち,会封記録は,紙から磁気 デー・プおよびドラムに.移されるために,これまでのような監査証跡ほ.消滅して しまう。このような場合の新しい監査方法について,ケアリーは,つぎのよう に観察している。 すなわち,コンビ,ユ∴一夕ー自体が,多くの内部統制組織を含む。したがって, 監査人は,確認および実査のような外部証拠を求める監査手続を継続する一 方,コンビ.ユ.−ターが作成した情報の信頼性を確かめるために,試査および分 析的方法に.依存するように.なるという。12)こ.れと同じような見解を,われわれ も,別の機会紅表明した。13) 10).丁、LいCaIey,0♪cれ,pp.189−190 11)乃摘..pp.191−193 12)乃∠d.,p.194 13)拙稿「監査意見の論理について」,『会封』,昭和43年9月号,431−432ぺ−汐。

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J96β 香川大学経済学部 研究年報 8 −ヱ5β− また,コンピュータ一自体の利用は,監査に新しい道具を与えるので,統計 的サンプリングの適用とともに,従来の監査業務の労働および時間を減少させ る。このような事情を根拠として,ケアリーは,新しい監査方法は,従来のよ うなきまりきった仕事の大部分から監査人を解放するので,監査人は,依頼人 および監査報告書の読者に.,有用な創造的貢献を与え.ることができるとする0 さらに.,ケアリ−は,分析的監査方法および会計のコンビ.ユ∴一夕ー化が,継 続的監査への移行を促進させる可能性があるという。もしも,十分な統制が存 在し,抜き打ち的照合および試査紅よってそれが支持される場合に・は,従来の ような監査手続をくりかえさないで,公認会計士が,財務諸表について意見を 表明することができる。また,このような継続監査に.よって,投資家および信 用供与者が強く希望する四半期毎あるいはより短期の財務諸表について監査意 見を表明することができるように.なるとしている。14) ケアリー腰,以上のような環境の変化の下に.,公認会計士監査は,情報の信 頼性を与えるために.,その範囲の拡張を予測するのである。 Ⅴ 情報監査の展開について,ケアリーは,まず,監査報告書あるいは監査意見 の拡張として.あらわれると考える。すなわち,監査目的の変化は,読者に・有用 な注釈,説明および解釈を多く含むように,監査意見および監査報告書の範囲 を拡張させる。もちろん,このような情報の提供は,経営者の基本的責任であ るが,この事実は,必ずしも,監査人が,財務諸表を読者に・とって十分に情報 的にするためにのぺる必要がある事項を記載することを禁ずるものではないと する。15)監査報告書の情報的機能の展開は,その意味が必ずしも明確ではない が,情報監査の展開と無関係ではないであろう。16) 14)J∴L Carey,0?。Cit.,pp…194−195りコンビ.コ.−ターと継統監査の関係について は,レイモンドもとりあげており,つぎの拙稿を参照さ.れたい。拙稿「EDPSと監査機 能の展開」,『虜業経理.』,昭和43年9月,35ぺ−ジ。R.HlRaymond,“Thelmpactof

EDPonAuditing,,,TheInieY・nalAuditor,Jan./Feb.1968,pp.25−26・

15).丁..L.CaI・ey,掛 CZf..,pp.194−195. 16)前掲拙著第6章「短文式監査報告書の本質」を参照されたい。

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監査意見の展開 −J59− このような情報監査の展開におけるどのような場合に.も適する監査報告嘗の 様式として、つぎのような監査報告書の凛準的文章を示している。17) 「われわれほ,(報告書名)における資料を,正当な監査注意によって監査 し,それらが(報告書の目的を)適正に表示して言いることを認めた。」18) ケアリー聴,このようなすべての基準が満足されたという保証を与える文章 につづけて,公認会計士ほ,その時の事情紅おいて適当と思われる解説注釈を 提供するこ.とができるとする。さらに,このような方向への展開に対する制限 的要素は,法的責任に対する考慮であることを指摘して:いるが,19)われわれも, 別の機会に,この問題を論じたところである。20) こ.のような情報監査の思考の発展ほ,最近さかんにとりあげられてきている 情報理論および情報システム論の動向と結びついて,公認会計士監査が,企業 の情報組織の監査をも行なうよう紅展開する可能性がでてくる。すなわち,ケ アリ一服,従来の公認会計士監査ほ.,外部報曽目的の財務諸表の適正性につい て専門的意見を表明することを目的としてきたが,さらに,企業内部の経営者 目的の報告書のために.も,計画,統制および意思決定のための情報親織の有効 性を監査する目的を含むように発展するかどうかという問題をとりあげてい る。21) これまでの公認会計士監査では,監査報告書とは別の,「マネージメント・レ ター・」が,−・諸に提出されるのが慣行的になっているが,ここには,保険金額 から売上,利益および諸営業比率の業界平均数値との比較に・までおよぶとこ.ろ の,監査人が気づいた種々の問題紅ついての注釈および提案が記載されてい る。しかし,企業の経営者のための情報組織の有効性の組織的かつ計画的検討 および分析が記載されることはあまりない。 17),小L.Carey,OP。Cit.,p.,196.

18)“We have examir)ed with dueauditcare the data foundin(name of state− ment or statements)and find that they present,fairly(the puI−pOSe Of the statement)小 これは,マクツおよぴジャラフによるものである。R。K.Mautz and H. A.ShaIaf.rカβタゐよね5∂少如0/−A紬封蕗勘㌢p.203..

19).丁.L.CaI・ey,〃クいC紘,p..196. 20)前掲拙著185−186ぺ一汐。

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上汐6β 香川大学経済学部 研究年報 8 ーJ60M ところが,ケアリーは,このような現状からの展開をといている。すなわ ち,公認会計士は,財務諸表に対する意見の表明においてさえ,情報組織のな か紅入っていかなければならないのであるから,公認会計士が,注釈の範囲を 次第に.拡張し,質問を提起し,情報の必要性および有効性について,経営者と 議論することによって,全般的な情報組織の監査の方向へ動くことができ,や がては,今日の財務諸表監査の基準に相当するような基準をもつこ.とができる よう紅なるであろうとする。22) ケアリL−は,この問題ほ,別に.,コンビ.ユーター・が,情報組織の中心におか れていようといまいとあまり問題にほならないとしているが,われわれとして ほ,コンビ.ユーターの導入によって,企業の基本的資料の多角的利用が促進さ れ,個々の情報組織が,コンビ.コ.一夕ー・に.よって−総合的組織に結合されるので あるから,個々の情報組織の監査から総合的情報組織の監査への展開は,コン ビーコ.−ダーの導入を大きな動因の一つとすることを否定できないと考える。23) 以上のような情報組織監査への展開ほ,監査すべき情報の範囲が,外部の利 害関係者に.報告されるものから,内部の経営管理者に報告・されるものにまで拡 張しようというところに.特徴がある。さらに,このような考え方を展開すれ ば,企業の情報組織を,抽象的かつ技術的な意味において理解するとき,そ・の 情報組織ほ,種々の利用目的に対して中立的性質のものしとてあらわれ,どの 利用目的に対しても等しい関係にあると考えることができる。したがって,企 業の情報組織は,社会的情報組織につながることも容易になるので,こ・のよう な情報紙織監査が,社会的意義を与えられる契機になることほ,別の機会にふ れたところである。叫 ⅤⅠ 監査意見拡張に関する議論のなかにほ,きわめて長期の展望に属するものか ら,より現実的な見解に属するものまで,種々のものがある。後者の議論に属 22)∫∂紹.,pp小198−199.. 23)R.IL Raymond,OP.cit.,pp.27−28” 24)拙稿「監査意見の過去・現在および将来」,83ページ。

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監査意見の展開 ーJ6J−− するものとして:,クレーーサの企業の営業報告書紅おける追加的情報の監査への 展開の主張をあげることができる。25) クレ−サは,公認会計士の監査が,主に.利用されるのは,企業の年次営業報 告書中に含まれる伝統的な財務諸表であるので,年次営業報告書が,監査意見 を拡張する場合の論理的な出発点と考えられるとする。そして,これが現実的 な動向であることを示す事例として,最近,多くの企業では,「資金運用表」を 年次営業報告書紅含めるようになり,また,そのうちの相当多くのものが,公 認会計士の監査意見の対象に含まれるようになってきているこ.とをあげてい る。26) 年次営業報告書申の財務諸表以外の追加的情報の監査の重要であることは, それらの情報が,現在および将来の投資家およぴその代表者である財務分析家 および投資相談業などの投資決定に必要な情報として,企業の状態,成長および 将来の展望にとって重要であるからであるとしている。27)このように.,監査意 見の展開に.対する利害関係者の動向として,機関投資家および投資相談業の出 現が,大きな要素であることは,マクツおよびジャラフとともに.,われわれ も,すで紅指摘したところである。28) そ・こで,年次営業報告書中に含まれる情報で,投資決定に重要なものとし て,つぎのようなものがあげられる。 製品別あるいは製品種類別の売上高および利益。取引を行なう顧客,産業お よび席場別の売上高。四半期毎の売上高および利益。販売価格指数。手持受注

25)R.W.ClaIke,“Extension of the CPA,s AttestFunctioninCorporate Annual Repo【tS”、TJl(A{(OtLlttil)g Rぐl,iett・,Oct.1968. 昭和43年にだされた法務省民事局参事室試案では,営業報告書の監査を構想してい る。すなわち,同試案第八「監査役の報告書の記載事項.」の鱒として「営業報告書の内 容が真実であるか香か.」を記執するものとし,かつ第11「大会社の特例」の中の七2の (3)は,会計監査人は,「営業報告書中会計に関する記載が真実であるか香か」を監査報 薯書紅記載しなければならないとしている。これは,ドイツの株式法に.よる監査役制度 の考え方を導入したものであるが,ドイツの場合,営業報告書の記載事項が明確に記定 されている点で,事情を異に.している。 26)R。W.Clarke,0♪。Ciih,p.770. 27)J∂摘.,p.、770‖ 28)拙稿「監査意見の過去・現在および将来」,79−80ぺ一−ジ。前掲拙著第8章「証券投 資家保護監査の展開」。R.K.Mautz and H.A”Sharaf,OP.cii.,pp.171−200.

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香川大学経済学部 研究年報 8 ユタ6β ーJ62− 還。広告費。取締役および役員に関する資料。人件費。所有天然資源の規模。 資本的支出予算。従業員関係資料(たとえば,従業員数,勤続年数,移動率)。

研究開発費。受取特許権料。会社の獲得した政府契約の性質。組立生産。株主

関係情報(株主種類,株主種類別の人数および持株数)。29) このような追加的情報を,投資家が,その意思決定の資料として利用するか もしれないという可能性がある場合に.は,経営者が,これらの追加的情報に.つ いて公認会計士の監査を受けることを考慮することが,経営者の社会的責任紅 なると考える。なぜかといえば,監査されていない情報の意思決定に対する有 用性は,腰間であるからである。 さらにリクレノーサほ,この問題を,財務諸表の適正表示の基準の拡張とし て:,つぎのようにのぺている。すなわち,もしも,投資決定に重要な情報が, 監査した財務諸表以外に記載されている場合に.ほ,その企業の財政状態および 経営成績の表示の適正性を,公認会計士ほ,おそらく承認しないであろう。し たがって,公認会討士は ,こ.れらの追加的情報が,適正表示のために必要であ るかどうかを,注意深く考慮し,もしも必要であれば,監査意見の対象に含め るべきである。(30 このようなクレ−ケの考え方は,これまでの伝統的財務諸表監査の展開のう ちでほ,監査報告書の補足的説明事項あるいは決算日後の事項および未確定事 項の記載という考え方のなかに,部分的にあらわれているということができ る。 われわれほ,これらの事項の記載の意味を,公認会計士の監査機能が,「財務 諸表の適正性の監査」から,「財務諸表およびその理解に必要な情報の適正性の 監査」への展開として説明した。31)このような監査思考が,さらに展開され, それは,「投資家の意思決定に必要な情報の適正性の監査」として主張されよう としているように.みることができる。 これに関して,マクツおよびジャラフも,企業に関する情報の公開およびそ の監査において,単に.,一腰投資家のために必要な企業の情報の公開を考慮す 29)R K。ClaI■ke,〃ク“c払,p..770. 卸)∫∂紹.,pp‖770−771. 31)前掲拙著第5章「監査報告書粧おける決静日後の事項の意義」。

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−J6β− 監査意見の展開 るという立場でほなく,より専門的な投資家である機関投資家およぴ,かれら および−・般投資家に奉仕する財務分析家および投資相談業の必要を考慮しで情 報を公開すべきであり,そして,公認会計士も,それらの情報を含むように・, その監査機能を拡張するようにすべきであるという主張を行なって小る。和す なわち,ここでも,伝統的財務諸表監査の範囲をこえて,「投資決定に必要な情 報の適正性の監査」の思考が示されている。クレーケも,このような思考に立 つものであるが,かれほ,一応,営業報告書の範囲の情報から,監査意見の拡 張の問題を考察するのである○ このように,クレL−ケは,当初から,より現実的な観点から問題を検討しよ うとしているの・で,そ・の議論の内容も,より技術的な処理の問題を中心に・し て,監査意見の拡張を論じている。これは,また,公認会計士の費任の範囲 を,い かに.して明確に示すかという現実的に.重要な問題に・関連する○ まず,財務諸表以外の情報に監査意見を拡張する場合に問題になるのは,公 認会計士に.監査の能力があるかどうかというこ.とである。検証とは,本質的に・ ほ.,他人による陳述の信敵性を判断する合理的な基礎を形成サーるのに十分な証 拠固めをすることであると考えられる。そうであるとすれば,財務諸表が経営 者の陳述であるように,営業報儀書も,同じように経営者の陳述であるので, その陳述の種類ほ,基本的には異ならないのであるから,同じ検証手続が用い られ,したがって,用いられる証拠も同じであるとして,監査機能の拡張の可 能性がとかれる。33) さらに,問題を進めて,クレーケほ,年次営業報告書における追加的情報の 監査意見の拡張に関する報告の問題を,つぎの三つに分けている。その第一・ は,複数期間の追加的情報に対して\監査意見を表明する場合に.,問題がないか どうかということであり,第二は,監査意見の対象として含まれる追加的情報 を,どのように区別して明示することができるかという問題であり,第三は, 財務諸表以外の追加的情報に対する監査意見の性質はなにかという問題であ る。34)

32)R。K。Mautz and H.A.Sharaf,0?.cit,pp.171−200。 33)RいK、ClaIke,p、771

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香川大学経済学部 研究年報 8 Jタββ ー∫朗− 第一・の,復数年度の追加的情報に対する監査意見の表明の問題であるが,公 認会計士ほ,すでに二期間あるいほそれ以上の期間の財務諸表の監査に.ついて の経験をもっているので,別段,困難な問題ほない。すなわち,前年度の情報 を監査してt、なければ,それ紅ついては監査意見を表明することはできないと いうこ.とにとどまる。 この場合に,営業報告書砿.,独特な内容として,多くの場合に,「■ハイライ ト」とよばれる通常2年間の総括と,「サマリー・」とよぼれる通常10年間の長期 間におよぷ歴史的概要が含まれる。クレーサほ,こ.れらは基本的財務諸表に密 接な関連をもつ蚤要な情報を提供するもので,営業報告書中では,まず最初に 監査機能を拡張すべき重要な領域であるとする。36)このように,クレ−・ケほ, 監査意見を拡張すべき範囲としては,一\応営業報告書の範囲に.追加的情報を限 定したのであるが,そこでも,まず,基本的財務諸表に関連する情報から拡張 しようという思考がみられる。 第二の監査意見の対象に含まれた追加的情報の明示方法の問題紅ついてほ, 実際上種々の困難があるので,きわめて具体的なアイデアを提示している。87) まず,監査意見の対象である情報を含む表示が,比較的に少数である場合に・ は,監査報告審の申で,それらに言及することが容易である。 しかし,追加的情報は,営業報告書のなかでも,社長のあいさつ,財務的検 討,ハイライトおよぴサマリーおよびその他の部分に.分散しているし,表示の 形式も,また,計昇竜,要約,図表,明細表,グラフおよび本文などいろいろ の形式がある。この場合に.は,監査意見の対象となる情報が記載されている表 示の名前およぴぺ−・ジ数把.ついて,監査報告書で言及する方法がとられる。し かし,この方法でも,言及される事項の数が多くなると監査報告書がかさばる ので,索引が作成される。なお,この場合に.は,監査報告書で,索引に言及し ておかなければならない。 さらに,より困難な問題は,全体としては監査怠見の対象ではない文章的表 35)Jみ昆.,p.772‖ 36)Ibid.,ppり772−773,.H.W.Bevis,Corboraie FinancialRebortinginaCom・ か漬ガ掴㌧軌源別間.γ,p.178.、pp.188−189.. 37)R.X.Cl釘・ke,♂♪′.ぐ紘,pp.773−774.

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監査意見の展開 ・−J6∂− 示のなかに,監査意見の対象となる追加的情報が含まれている場合でるあ9こ のような場合には,索引を作成する場合でも,対象となる行数を示すよりも, もっと実際的な方法を考えなければならない○これについて,クレーケは,つ ぎの三つの方法を提示している0 1 監査意見の対象となる情報は,監査意見の対象とならない情報とほ別の色 の紙に記載する。 2 監査意見の対象となる情報は,監査意見の対象とならない情報とは別の色 の文字で記載する。 3 監査意見の対象となる情報にアンダーラインする0 また,監査人の意見の対象となる要約表,チャー・ト,明細表のように文章で はない情報を明確に.する方法として,同じように,色を使用することができ る。 なお,この問題に.ついて,つぎのような注意をつけ加えている0 その一一・つ は,監査意見の対象となる情報には,監査報告書への言及,たとえば,「監査報 告書の××ぺ」−ジを参照せよ」というような脚注をつけることがのぞましいと いうことである○ つぎに,追加的情報を他の情報と結合したり,あるいは特定領域の追加的情 報を集合する方法も考えられる○たとえば,前者の例としては,主要製品グル ーーープ別またほ部門別の売上高,利益および人件費などの追加的情報を,財務諸 表付属明細表に記載する場合があげられる。また,後者の例としては,従業員 に.関する追加的情報を,「従業員関係資料報告書」のような報告書に・まとめる場 合があげられる。なお,監査意見の対象となる追加的情報は・,可能であれば, できるだけ監査報告書の近くに・おくことがのぞましい○ つぎに.重要な問題ほ,追加的情報についての監査意見の性質である。通常の 財務諸表監査の場合ほ,その目的ほ,財務諸表が会社の財政状態および経営成 績を適正に表示しているかどうかについて意見を表明すること紅ある○そのた めに.,監査人ほ,財務諸表の適正表示の構成要件として,会計原則の準拠性, 継続性の遵守および情報公開の十分性を確かめなければならない。 これに対して,クレ、−ケは,伝統的な財務諸表以外のところで表示された追 加的情報に対する監査意見も,財務諸表に対する監査意見と,同じ論理の方式

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香川大学経済学部 研究年報 8 J96β −J6β− によって形成されると考えているよ.うである。すなわち,公認会計士は,追加 的情報の表示目的を,個別的に確定し,そしてこの日的に対する情報表示の適 正性紅ついて監査意見を形成するものとする。そして,クレーサほ,その適正 性の構成要件として,情報がその作成基踏に基づいていること,作成基礎の継 続的適用および情報公開の十分性の三つをあげて/いる。38) このように.,クレーケほ.,追加的情報は,特定領域紅おける特定情報の表示 という個別目的をもつものであるが,情報の任意的選択が,ミスリ−デングを 結果すると思われる場合紅は,特定領域に関するすべての情事臥 すなわち有利 な情報および不利な情報の双方の情報の十分な公開を,主張しなければならな いとしていることほ重要である。鍋) この監査の実施に関して,クレい・・・・・ケほ,年次営業報告書における追加的情報 についての監査意見の表明ほ,公認会計士紅とっては,未経験の領域であるか ら,注意しながら進めなけれはならないとする。そのためには,このような監 査意見の表明に関して適当な基準が作成される必要がある。しかし,予測およ び予算のような将来の見積り紅ついてほ,十分な指針が作成できるかどうか疑 問である。もし,その作成が可能であるとして:も,困難な問題があり,公認会 計士の監査機能全体に対する信頗をそこなうおそれがあるとして,この方向へ の監査意見の拡張を否定している。40〉これほ,のちに.とりあげるスタットラ −,ケアリL−,イジリなどの見解と対立するものである。41) 最後に,クレ−サほ,このような年次営業報告書における追加的情報に対す る監査意見の拡張についての,公認会計士の側に.ついてほ,つぎのように観測 している。すなわち,公認会計士ほ.,監査意見の拡張に.関連する責任の性質お よび程度についての不確実のために,訴訟などの問題が予想されるので,これ 38)J∂よdい,pp.774−775 39)J∂摘.,p.775、決算日後の事項についても,同じような問題がある。すなわち,決 算日後の事項についても,有利な情報も不利な情報も同じようにとりあつかわなければ ならない。 40)乃よd.,ppハ775−−776 41)H,F.,StettleI,“CPAs/Auditing/2000±”,TheJouY’nalqf’Accounianc.y, May1968.J,.L。Carey,0?.cit”,YいIjiri,“On BudgetingPrir)CipZesandBudget Auditing Standards”,The Accounting Revieu},Oct。1968

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監査意見の展開 −J67一一 に対しては,むしろ消極的な態度をとるであろう。また,その監査の拡張に要 する時間および経費の側からの実行可能性によって,そ・の拡張の範囲ほ制限さ れるであろう。亜) これまで紹介してきたクレ・−ケの見解は,広範囲の投資家の意思決定紅有用 な情報の公開およびその監査の必要性を認識し,この観点から,監査意見の拡 張をといている。しかも,かれの特徴ほ,現実的な観点であり,監査意見の拡 張を,まず実行し易い領域からはじめる目的で,営業報告書をとりあげ,非常 に具体的な問題を考察していること紅ある。 営業報告書に.おける追加的情報ということで,一応,情報の範囲が限定され るわけであるが,監査意見の対象となる追加的情報としてほ,基本的財務諸表 に密接に.関連する「ハイライト」およぴ「サマ.リ・−.」のような情報を,まずと りあげるぺきであるとしている。しかし,そこでは,単に,会計情報ばかりで なく,その他の非会計情報にまで拡張されていく傾向をもつものに・なってい る。 しかしながら,投資家に.対して.有用な情報を公開するといっても,それは体 系的な情報の公開という意味のものではなく,むしろ個別的な情報の任意な公 開という形のものであるので,営業報告・苔の追加的情報について,個別的に・そ の信頼性を与えられるので,それらの総体が,必ずしも体系的情報の公開とい う形に.ならないので,合理的な結果をもたらさず,むしろミスリーザングな結 果になる場合を注意しなければならない○ したがって,むしろ,年次営業報告書の,全体としての情報公開の原則を明 確にし,その構成要素として個別的情報を位置づけることが必要であり,つい で,個別的情報の作成および表示の原則を明らかにすることが,監査意見の拡 張にとって重要であろう0

VII

企業の利害関係者,とくに,株主および現在および将来の投資家ほ,企業に 関する過去,現在および将来の情報を必要とする○ところが,公認会計士の行 42)R.K.Clarke,OP。Cit。,pp.775−776l

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香川大学経済学部 研究年報 8 −ヱ6β−− J96β なう財務諸表監査は,一・般的に,過去の事象に関する監査として理解されてい る。情報表示の監査としての展開においても,財務諸表の範囲をこえた会計情 報あるいは非会計情報への拡張がとりあげられて−きたが,それは,いずれも過 去および財務諸表作成日および監査報告書作成白までに判明した事象に関する ものであった。また,クレーサが,年次営業報毎酋における追加的情報に.監査 意見を拡張した場合に.も,将来に関する事象についての表示に.監査意見を拡張 することに.ほ,消極的態度をとらざるをえなかった。 クレ・−ケが,将来に関する情報に㌧監査意見の拡張を否定したのほ,それが, 将来に対する予測に大きく依存するので,監査意見が,将来に対する予測にお よばなければならないからである。これに.対して:,将来についての情報に,監 査意見を,積極的に.拡張しようという論者があらわれている。たとえば,ケア リ帆,スタットラL−−およぴイジりなどである。 この場合,ケアリ−は,将来に関する情報−・般紅対して監査意見を拡張し, ステ・ソトラ−・ほ,それをより限定した将来会計に対して.監査意見を拡張し,さ らにイ㌢りほ,将来会計のうちより限定された領域である予算の監査の具体化 を試みている。4S) ケアリー・ほ,技準家および社会の人々が関心をもつ将来に・関する情報とし て,大規模の新設廟投資および調査研究費の基礎にある経営者の見込み,すな わち業界におけるその会社の地位およびマーケット・シェアの予測,在庫投資 および労働力の増強および改番の基礎にある予測,営業予界および資本予算な どを,その例としてあげている044) これに対して,スタシトラーは,将来会計に対する監査意見の拡張をとき, 当該財務諸表の被監査年度の少なくとも次の年度の見積り資金運用表,貸侶対 照表および損益計算書を監査の対象とすべきであるとしている。45) このような将来に関する情報の監査の内容ほ,将来の諸事象に対する予測に ついての監査である。すなわち,ケアリ−・によれば,予測の基礎とされた資料 および予測の方法の健全性に.ついての監査であり,それについての結論として 43)H.F。StettleI,0?.cii。,,.L.Carey,OPlCit.,Y‖Ijiri.OP.Cit,,, 44)J.LいCarey,0?.cii..p小201 45)HJF.Stettler,0?cれ,pp。55−60

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監査意見の展開 一一J69−− の意見表明である。46)このような監査思考は,最近,予測の技術が,かなり高 度の進歩をとげ,予測が,ある程度まで客観的に行なえるようになったことを 背景にしていると思われる。 また,スチッナラーーも,将来会計について監査が可能であるとして,つぎの ようにのべてし、る。すなわち,将来会計ほ.,評価しがたい多くの事項を含んで いるけれども,それらほ基本的にほ,鼠的な問題であって,有効に監査するこ とができるという。それは,必要な予測を行なうシステムほ,内部統制組織と 同じよう軋,その有効性を換討することができるからである。たとえば,将来 の事象に.関する数字ほ,その実現以前に.は,実際と照合することほ.できないけ れども,将来の経済状態の−・般的予測,過去の経験,材料費,労務費および経 費の見積りおよび見積り数字相互間の合理性などから確かめることができると する。47) グアリーおよびスチットラー・が,このような将来に関する情報への監査意見 の拡張の可能性を主張する根拠ほ,大体同じような内容であり,つぎの二つの ものがあげられている。そ・の−・つほ,将来に関する情報に.対する利害関係者の 要請であり,こ.のような利害関係者の要請に積極的に応えるのが,社会に対す る奉仕をその存在意義とする公認会計士の義務であるということである。もう 一つは,伝統的財務諸表監査において,すでに.将来に関する予測を監査してき たということである。 第1の利害関係者の要請紅ついてほ.,ケアリーは,従来の監査人の報告書 ほ,検尿的分析とよばれることがあるように,株主の関心ほ,過去よりも将来 に.向けられ,したがって:,経営者に.よる資金の運用の結果よりも,むしろ,将来 の収益の動向に.,より大なる関心を示すことを明らかに.している。このような 株主甲要請は,株主が,従来のように企業の永続的な所有者でほなくなり,むし ろ流動的な株主に変化したこ.とによるのであり,近代の証券投資家の性質を認 識した見解といえる。48) これに対し,スチットラー・ほ,将来会計の情報が,単に投資家だけでなく, 46).丁いL.Carey,0?.cit.,p。200 47)H。F.Stettler,OPlCtt,,拙稿「監査意見の過去・現在および将来」,81ぺ・一汐。 48)J.L。Carey,OP‖ Cit,pp。199−200

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香川大学経済学部 研究年報 8 J96β ー∫7♂− 債権者に.とっても重要であることを示すために.,つぎのような例をあげている。 たとえば,債権者ほ,企業の短期の債務弁済能力を判定するため紅貸借対照表 を利用するが,そのさいに,流動比率が,債務弁済能力の最良の指標であると 一・般に考えられている。ところが,会計上で流動性を区分する方法は,現金の 流入および流出の正常な予測に基づくものであるが,流動比率は,動態的な資 金状態に.ついての静態的な構造を示すにすぎない。むしろ,財務諸表の利用者 がしりたいのほ.,債務の期限が到来したときに,利用できる資金が十分にある かどうかということである。d9) したがって,このような利害関係者の要請庭.応えるためには,公認会計士 は,利害関係者が必要とする情報を利用できるように.援助しなければならない のであり,監査意見は,単に.過去の年度に実現された結果紅対してばかりでは なく,将来の年度の見積り貸借対腰表,損益計算書および資金運用表にまでお よ.ぶこ.とが考えられる。 第2の根拠として,将来会釘の監査が,伝統的な財務諸表監査でとりあつか うものとまったく異質のものをとりあつかうものではなく,これまでの財務諸 表監査ですで紀行なっていたこ.との拡張にすぎないことがあげられる。たとえ ば,ケアリーーほ,固定資産の減価償却計算に.おける耐用年数の見積りとか,収 益に㌧対する費用の対応が,往々紅して将来の事象の評価を要するので,今日の 公認会計士ほ,すでに,将来の事象にその見破りの正当性が依存して作成され る資料に意見を表明しているとして,将来会計に対する意見の拡張の可能性を 主張している。50) 同様に,スタットラーも,貸借対照表における資産および負債の流動性の区 分ほ,実現および資金の流入および流出についての将来の予測紅基づいている し,有形および無形資産の経済的耐用年数,棚卸資産の市価および製品保証に 伴う将来の費用の引き当てなども,やほり,将来の予測を含んでいるとしてい る。51) このような伝統的な財務諸表監査における将来の事象紅関する予測の監査お 49)H。F.Stettler,Ob.cit.拙稿「監査意見の過去・現在およ、び将来」,81ぺ・−ジ。 50).−,L.Cafey,〃クぐれ,p199 51)H.F.Stettler,0?”Cit..

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監査意見の展開 一J7J− よび意見表明の経験ほ,将来会計に対する監査への展開を可能にするよ.う紅思 われる。 ところが,現在ゐ通説は,将来に関する数字に.ついてほ,公認会計士は,監 査意見を表明しないものとされて1、る。こ.れほ,公認会計士協会の職業倫理規 程のつぎの規則2・04に基づくからである。 「公認会計士ほ,公認会計士が予測の正確性を保証していると思わせるよ.う な方法で,将来の取引の結果の予測に.関連して,自己の名前を使用してほなら ない。」 との規痙は,公認会計士の監査意見に.対する社会的信頼性を阻害するような おそれを排除することを意図している。すなわち,歴史的情報は,事実的であ り,これに対して監査意見を形成することにほ,それはどの困難ほない。ま た,将来の事象が,監査した事象を変更することもない。とこ.ろが,予測ほ.将 来実現しないかもしれない。したがって,もしも,公認会計士が,予測につい て監査意見を表明して−,あとで実際と違っていたことが判明したような場合に. ほ.,単に,予測ばかりでほなく,事実的情報に・ついてまで,公認会計士の監査 意見に対する信頼性を失なうかもしれないからである○ しかしながら,ケアリ−も指摘するように,伝統的な財務諸表監査紅おいて も,このようなことほおこ.りうるのであって,たとえば,会社の設備またほ機 械の突然の陳腐化,見積り以上の貸倒損失,急激な需要の変化に・よって満足な 価格で在庫を処分することができないような場合などは,損益計算書をミスリ −デングなものにする。52)今日の継続企業を前提紅する期間損益計算ほ,本質 的に将来に関する予測を必要とする。したがって−,公認会計士に,将来の予測 に対して監査意見を表明すべきではないとするのほ,正当であるとはいえな い。 それ故に,将来会計の監査が可能であるかどうかほ,こ.の予測に関して,理 論および方法が,明確化されているかどうかということにある○この問題を, 特定の領域に.ついて,より具体化して論じたのが,イ汐りの予算原則および監 査基準についての提案である。 52)JLCarey,OP.Cii,p201

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香川大学経済学部 研究年報 8 J96β −・J72− Ⅷ イジリは,米国における予算公開,予算監査および予鈴組織匿ついてのニー ルセン,べ−ビス,パーンバー・グおよびドパッチおよびその他の多くのものの 見解を紹介することによって,米国では,予算の公開が,企業の利害関係者に. 有用な情報を提供するものとして注目されつつあること,したがっで公認会計 士の監査意見の範囲を予算紅まで拡張することの必要性を認め,この予算監査 の実施への一・歩を進めるために,予算監査の性質を分析し,一・般に認められた 予簸編成の原則および手続,−・般に.認められた予算監査基準および手続の重要 な要素および監査報告書の内容を示すことを試みている。瑚 まず,イジリほ.,予算監査の性質を明らか紅するために,予算監査と「監査 の監査(audit on audit)」との類似性を指摘する。両方とも合理的な推定が行 なわれているかどうかを調べることでは共通している。換言すれば,監査ほ, 監査証拠の収集およびそれに基づく推定であるから,監査人の仕事を評価する ということほ,監査人のこのような推定の合理性を判断することであり,これ ほ監査調書によって行なうことができる○ この場合に注意しなければならない のほ,「監査の監査」とは,最初の監査人の推定を監査するのであって,監査 人が自分で推定することではないという。54) そこで,イジリによれば,予算監査ほ,「監査の監査」とまったく同じであり, 経営者が,計画時に利用できる資料に基づいて合理的な予測が行なわれ,予静 が作成されているかどうかを調べることであり,この合感性についての社会的 基準として,予鈴監査基準および手続はもちろん,予算原則および手続が設定 されることが必要紅なるのである。 まず,イジリは,予算原則および手続の作成を試み,これを事象の予測に関 する部分と予測された事象の記録に関する部分との二つに分ける。後者の記録

53)Y..Ijiri,OPりCitハ,Pp・663l0い Nielsen,“New Challengesin Accounting,,,

The Accouniing Review.Oct.1960.H.W..Bevis,“The CPA,s AttestFunction in Modern Society,’,TheJow7ialqf’Accou7itanC.y,Febハ1962ハ].G.Blrnberg

andN”Dopuch・”AConceptualApproach to the Framework forDisclosure=,

T如/〃〝γ〝αJo/■AcC∂α乃′α〝C.γ,Feb.1963 54)YuIjiri,0?.cit,pp.663−664

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監査意見の展開 −J7β− については,−−・般に認められた会討原則および手続によって行なわれればよい として,別に.新しい問題は示されない。明 これに対して,より重要な問題は,事象の予測を支配する基本原則は何かと いうことであるが,イ汐りほ,二つの原則をあげている。均 その第1原則は,推定のプロセスを明確にするこ.とであり,監査人が,推定 のプロセスの立証のための文書として監査調書を作成するように.,経営者は, 見積り財務諸表の作成プロセスを明確紅するために,「予算詞書(budget wor・ king paper)」を作成しなければならない。59) その筋2原則を,一層■性(COnSistency)とし,これを内部的−・B一性(internal COnSistency)と外部的−・貫性(externalconsistency)とに.分ける。内部的一・貫 性ほ,売上高とか生産能力のような予算編成に.利用する企業内部の資料に関す るもので,歴史的一・貫性(histoIicalconsistency)と現在的一層■性(Current COnSistency)とに分かれる。歴史的一層性とは,現在の見積りと過去に行なっ た見廣りとの間の一層■性であり,現在的一層■性とほノ,現在の見積り相互間の−・ 賞性である。 これ紅対して,外部的−・賞性ほ,内部的な予算上の見積りと需要の動向とか 価格の動向とかのように,企業にとってこは外部的要素である−・般経済要素との 間の−・賞性である。 こ.のような見積り相互間の−・貰性に,予測の合理性の判断の基準としての予 算原則を作成しようというところに.,イジリの特徴のある見解が魂られる。こ こ.に予測のプロセスの合理性を立証するものとして,予算調書の作成が,予算 監査にとって重要であるととが指摘される。 さらに.,イ汐りほ,予算監査基準および手続および監査報告書の重要な問題 に/ついて,つぎのように論じている。57)すなわち,予算監査の目的は,予算編 成のプロセスが,予算原則および手続にしたがって行なわれたことを確かめる ことにあり,そのため紅は,監査範囲を決定し,予算調音および関係証拠を監 査する方法を定める予算監査基準および手続が設定されなければならない。 55)ル材.,p.664り 56)∫∂好.,p..665. 57)J∂∼d.,p.665−666.

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ユタ6β 香川大学経済学部 研究年報 8 →j74− 予算監査報告書ほ.,読者に誤解を与えないように,その性質を明確に示さな ければならないが,基本的に.は,通常の監査報告書と異ならないものとされて いる。 すなわち,監査の概要についてほ,予算監査基準および手続に準拠して行な われたかどうか,もし準拠していなかった場合には,その理由およびそこでと られた代替的手続を記載しなければならない。つぎに,監査意見は,予算原則 お・よび手続の準拠性を柱にして形成され,その重大な逸脱,とくにさきに示さ れたような種々の−・貫性の欠除,および予測の記録のさいの会計原則および手 続の重大な逸脱を記載しなけれほならない。 また,イジリの説明のなかで,とくに重要と思われるのは,見積りの一男性 に.巾のあることを認めており,その巾の枠内で,とくに楽観的あるいほ.非観的 な見積りである場合は.,監査人は,監査報告書に,そのことおよび監査人自身 の見積りとの差違を記載しなければならないとして.いるこ.とである○また,こ のような見積り軋巾があることを読者にも理解させるために,過去の見積りと 実際の数字とを並べて記載することが有用な方法であるとしている。(58 さらに,イジリは,予算上の不確実要素の問題もとりあげている。すなわ ち,予算上,見積りほ,不確実要素常.大きく依存することが多いが,それは, 監査報告書で指摘されなければならない。とくに,こ.のような不確実要素が, 楽観的にあつかわれて1、るか非観的に.あつかわれているかということ,および 見込みどおりにならなかった場合にほ,どのように修正されなければならない かも明らか紅されなければならない。瑚 監査報告書の種類紅ついては.,別に新しいものも提案されず,通常の財務諸 表監査の場合と同じよう紅,無限定,限定,意見差控の種類および短文式およ び長文式の種腰が,そのまま使用できるとしている。 最後に,イ汐りほ,監査人の責任の問題をとりあげているが,通常の財務諸 表監査の場合と基本的に.異なるところはない。すなわち,監査人の責任は,予 算監査基準および手続の準拠性および正当な専門的注意という観点から判断さ 58)∫∂∠■d,,pい666. 59)J∂∠−d.,p.666.

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監査意見の展開 ー・J75・− れる。また,通常の財務諸表監査の場合と,同じように,経営者が,予算に.対し て一基本的貴任を負うのであって,監査人の責任ほ,第二次的であるという関係 は変らない。したがって,会社が,重大な要素を不当に無視したり,あるいは かくしたりすれば,それほ会社の責任であり,監査人が,自己の過失に・よっ て,−・貫性の明白かつ重大な欠除を発見できなかったとすれば,それは監査人 の責任である。60) これまで,イ汐りの予算監査の考え方を紹介してきたが,結局,予算監査の 成立のためにほ,予算編成原則および手続の設定および予算監査基準および手 続の設定が必要であるということである。こ.れほ.,予算情報の公開が,株主お よびその他の投資家紅必要であることを認識し,予算情報に,社会的に−・般に・ 認められた基準を課そうとサーるものである。 このような考え方は,公的機関の予算紅ついて−ほ,ある程度妥当するにして も,私企業の予算についてほ,困難が予想されるるのでほなかろうか0たとえ ば,企業予算は,経営者の主観的な表明を基礎とするので,どこまで社会的に・ 有用な客観的情報に高めることができるかという疑問がだされるであろう◇ これに対して,イジりは,その可能性を,予測に.おける論理の合理性に求め ているが,企業予算ほ,常にそうあることが可能であろうか○静態的な経済状 態では,このようなことが可能であるとしても,動態的な経済状態において ほ,個別企業における論理の飛躍という形で,革新がおこされることがあろ う。また,経営者の努力も,このような形で行なわれる。これは,単に,楽観 的か非観的かの巾の問題だけとしてほ.説明できないであろう。予算碇・対する批 判としての意見表明が,経営者の意欲を抑圧する機能をもつおそれがある0 つぎに,種々の科学的予測技術の発展とコンピューターの高度の利用を考慮 したとき,予算僧報の客観的合理性が,相当程度まで可能に・なるとも考えられ る。その場合に.でも,予測と実際との間にありうる食い違いの巾を,読者に判 断させるということほ適当であろうか。とくに,−・般投資家を読者と考えた場 合に.,その情報の有用性と危険性とを比較して,この問題を,根本的に考察す る必要性もあるよう紅思われる○ 60)J∂寝.,p一667..

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ヱ96∂ 香川大学経済学部 研究年報 8 ーJ76− イジリも,スタットラーのように,予算監査の可能性の根拠を,予測の合理性 が,予算編成のプロセスにおいて確かめることができることにおいているよう に.思われるが,これは,通常の財務諸表監査が,内部統制組織に依存して監査 を行なう方式に.類似しているように.思われる。すなわち,財務諸表の信頼性 は,内部統制組織の有効性の側から立証することもできる。ところが,近代監 査ほ,この立証を,他の側面から支持する方式をもっても、る。いわゆる残高ア プローチといわれるもので,−・定時点の事実との照合に.よる立証である。61〉こ れに.対して,予算監査では,その結果ほ,将来の時点に.生起するので,論理の 合理性による立証という一・方の魂の立証で満足しなければならないという,大 きな相違点をもっている。 また,将来会計−・般に対する監査意見の拡張の根拠にみられたように,歴史 的と思われる通常の財務諸表に.も,将来に対する予測が含まれる箇所があるこ とは確かであるが,そ・こに予測が含まれるに.しても,基礎に.なる数字は過去の 事実に・基づいており,また,期間損益計算の構造に.おいて予測計算と事実計算 との相違が,期間損益計算の誤謬として−あらわれ,修正される仕組みを備えて いる点が異なる。 しかしながら,観点を変えて−,情報という点を強調する場合にほ,歴史的財 務諸表も見積り財務諸表も,きわめて類イ以した性質のものとしてあらわれる○ つまり,会計を,利害関係者への利益分配という事実関係の処理として考える 場合と,利害関係者への情報と考える場合とでは,それにかかってくる重さが 違ってくるであろう。なるはど,会計情報の社会的意義を否定することはでき ないにしても,情報として−の観点からは,確実性は多少犠牲に.されても,有用 性の方が重視されるであろう。このような考え方に.たてば,情報の有用性のた めに.,予測に巾があることは承認されることになる。 情報監査の思考は,歴史的財務諸表の監査のなかからうまれたものである が,次算に,その枠をこ.え.て,大きく展開していこうとする動向が,ここに載 られる○将来会計の監査への展開に.は,なおなされるぺき多くのととがあるよ うに思われる。この点に・おいて,イジリの見解ほ,非常に・ユニ・−クなものであ 61)拙稿「監査方法論について」,『香川大学研究年報6′』,拙稿「監査意見の論理につい て」『会計』,昭和43年9月号。

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ーJ77− 監査意見の展開 り,かれが試みたような一・般紅認められた予算原則海よび手続隠よび予算監査 基準および手続の形成および・その⊥・般的承認の可能性に,監査意見の拡張がが かって−いるといえるであろう。 ⅠⅩ さきにとりあげた社会監査は,企業の実態に対して,社.会的観点か るものであった。すなあち,企業の経営者の価格,賃金,研究開発,広告,公 共関係,人間関係,地域社会関係,雇傭などの諸経営政策を,社会の利害関係 者の観点から監査するものであった。そして,この社会監査の担当者に・ほ,各 種の学識経験をもつ専門家の委員会が考えられていた。 しかしながら,かれらの必要とする情報およびその監査についてはとりあげ られていなかった。この問題を,ケアリ−は,経営業績会計およぴその監査と して考察している。すなわち,かれほ.,企業経営の業績を,社会的利益の観点 から判断する基礎となる資料を,公認会計士が監査することが可能かどうかと いうことを問題にする。 これまでの情報監査の思考の展開ほ,利害関係者に眉用な情報をできるだけ 多く公開するという形で,追加的情報の公開およぴ・そ・の監査が主張されてきた のであるが,こ.こにおいては,社会の利害関係者のためにり企業の目的に・対し て経営業績を測定するための情報の公開およびその監査というよぅに,情報に 対して明確な方向づけが与えられている○ まず,ケアリーは.,大企業が社会の各方面に対して重大な影響力をおよ慮し て.、いる現状に.おいて,企業は,社会に対する説明責任を認識しなければならな いとする。しかし,よく考えてみると企業の目的は,必ずしも明確ではない○ すなわち,こ.れまでは,企業の目的は利益の増大にあるとされてきたが,最近 では;企業は社会の利害関係者に.対する責任を引きうけるので,利益ほ.,目的 に対する手段に.すぎないとされるようになり,企業の目的は不明確になっ七し まったとする。62) そこでほ企業の目的として,一・般的経済成長,生産性向上,技術革新,社会 62).丁..L.CaI・ey,¢♪.ぐれ,p.202.

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