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土壌水分の簡易迅速測定法の比較検討-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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土壌水分の簡易迅速測定法の比較検討

  池田宏樹゛・豊岡哲二‘・山田宜良

C01VIPARATIVE

RESEARCH

ON

SEVERAL

IVIETHODS

FOR

SINIPLE

     AND QUICK

MEASUREMENT

OF SOIL MOISTURE

Hiroki IKEDA, Tets1!jiTOYooKA and Noriyoshi YAMADA

Abstract

 At present,a large nulilber of methods are put into practical measurement of soil moisture.Among them, from view points of agricultural,engineering and environmentaLfield survey,three methods are selected to compare respective avajlability for simple and quick measurement of soil moisturQ.They are microwave (jven dry method,inf¥ared drying method and glycerin extraction method.

 8 specimens diffeii哺in physical ptoperties are taken to the research,and analysis of time-moisture curves, estinlated from experimental points of 6ach drying process,shows the fbllowing results.

1.As microwave ovendry method is proven practically most convenient and inexpensive, the method is most  suitable ik〕rsimple 皿d quick measurement of soil moisture.

2. :Under the power source is unavailable condition, only glycerin extraction method is able to put to practical  USe.

3. 1nfrared dtying method can be measured soil moisture with the moit high accuracy among them.

Key words : Soil moisture, Microwave oven dry method, Glycerin extraction method, lnfrared drying method

         緒     言  一般に土壌は含有する水分量によってその性質が著し く変化することが知られている.たとえば生物生産の分 野において,作物は圃場容水量からしおれ点までの土壌 水分を利用することができるとされており,また物理的 性質として土壌は乾燥するにしたがって液体→塑性体→ 半固体→固体と状態を変化させ,それぞれの変異点を液 性限界,塑性限界,収縮限界と称している.したがって 土壌の水分量の測定は農学,工学,環境学などの応用科 学分野において,古くから多くの研究者,実務者によっ てその重要性が認められ,多くの測定法が提案され,実 用されてきた.  土壌水分測定法の歴史的考察は1960年,小林によって 集大成された‘1).小林の論文は土壌水分の測定法23種類, 引用文献83編におよぶ総説的なもので,それらのうち約 半数は現在でも実用されている測定法である.その後土 壌水分の測定法はいくつかの消長を経て,現在に至って いる. *香川県立石田高等学校 796-2321 さぬき市寒川町  現在土壌水分はJISA1203の規定に準拠して,土壌試 料を110℃で24時間(恒量になるまで)炉乾燥し,乾燥 による質量滅少量を含水比によって表示している.この 方法には大型の恒温乾燥炉を必要どすること,結果を得 るのに長時間を要すること等の問題点があり,土木工事 や渥漑の現場などにおいては必ずしも適切な方法ではな い.そこで現場において土壌水分を簡易かつ迅速に測定 する方法について検討を加えた.       主な土壌水分の迅速測定法  現在実施されている土壌水分の迅速測定法のうち主な ものは表−1に示すとおりである.これらのうち1,3 4は小林論文以降に発展した測定法である.  1の電子レンジ法は1970年,徳永ら(2)によってその可 能性が示されて以来,主として1980年代に実用性が実証 された.土壌試料にマイクロ波を照射して,誘電体発熱 理論にもとづいて内部加熱する方法(3)である.  電子レンジは現在一般家庭においても食品の調理等に

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1 2 3 4 5 6 7 8 ︱ 2 3 4 5 6 測定法 電子レンジ法 赤外線乾燥法 グリセリン抽出法 TDR法 中性子法 その他 試料名 カオリン ペントナイト フライアッシュ 豊浦標準砂 由良山土 五色台土 石高土 門入土 表−1 主な土壌水分迅速測定法とその特色         特   色    JISC9250 で電子レンジ規定,地盤工学会が測定の目安提示    土壌や骨材の水分の迅速測定法として古くから普及している    土壌水分をグリセリンで柚出,屈折率の変化を水分に換算    土壌の誘電率を測定し水分に換算,現在急速に普及している   1中性子線のエネルギ滅衰量を水分に換算,器械が高価    電気抵抗法,ヒートプロープ法など,間接的土壌水分測定法 土粒子の密度   2.69   (2.55)   2.16   2.64   2.642 7566 . 2︲ 2 66 表−2 -砂分 OOLQOQ        On/i        l 48 72 76 供試試料の基本的物理性  シルト分 粘土分    22    78    (9) (91)    93     2  づ    0     0    43    28    36    16    18 ご  10    10    14 広く使用されており,器械が比較的安価で一般小売店か ら容易に入手できるのが特長といえる.

 3のグリセリン拍出法は1995年にWada and Kakuto“)

が開発した比較的新しい方法であり,グリセリンの光屈 折率が土壌から柚出・吸収した水分量によって変化する ことを利用している.現在では未だ普及した測定法とは いいがたいが,電源を必要としないという特長があるの で,現場における簡易測定に際して比較的制約が少ない ものと考えられる.  また4のTDR法は1980年にTopp gfα£(5)によって開発 された誘電率法の一種である.誘電率法は1930年代から その可能性が提唱されており,その意昧では原理的には 新しい方法とはいえないが,その後大幅に改良が進み小 型化されたことにより,最近とくに農業土木の分野にお いて急速に普及している測定法である.  表−1に示した各測定法にはそれぞれ長所と短所があ るが,ここでは現場において簡易かつ迅速に測定ができ るものという本来の目的に照らし,任意に採取された秤 量瓶に入る程度の少量の試料に対しても測定が可能な, 1.電子レンジ法,2.赤外線乾燥法.3.グリセリン 抽出法の3方法を比較検肘の対象として選定した.        試料の選定  実験に供試した試料は8種類であり,それぞれの物理 性は表−2に示すとおりである.  試料の選定にあたっては,その物理性ができるだけ広 い範囲に分布するようとくに配盧を行った.すなわち粒  LL -56.7 340.0 (34.4)  − 35.8 64.4 42.0 32.7 PL ︲4.8 4045 n乙 りJ ぐ -3 ) nj774  a S s lりJ︵8yn乙4 n/Qnjりaり乙 IP cQ Cxl  I I 一り41Qり   n乙 (2.1) − ra7  I ICxl Lr︶ ln乙 り J り ` り   a   l Q ︵ X ︶ 径としては砂から粘土までの範囲を,コンシステンシー としては可塑性が大きいものから小さいものまでを選定 した.  一般の土壌は物理性が中庸なものが多いので,表−2 に示しな試料のうち1∼4は市販の材料であり,1.カ オリンで,2.ベントナイトは粘土,3.フライ.アッシュ はシルト,4.豊浦標準砂は砂を代表する標準試料とし て供試した.他の4種の試料は香川県内で採取したもの で,採取地を名称としている.土壌分類上5.由良山土 と8.門入土は褐色森林土に,6.五色台土は赤色土に, 7.石高土は灰色低地土に属する土壌である.  諸物理性の測定にあたっては風乾後2mmふるいを通 過した試料を対象として,土粒子の密度試験(JISA1202), 土の粒度試験(JIS A 1204),土の液性眼界・塑性限界試 験(JIS A 1205)を実施した.それらのうちでベントナ イトは粒子が水を含むと著しい膨潤性を示すことから密 度と粒度の測定値に信頼性が乏しく,またフライアッ シュは可塑性が極端に小さくコンシステンシー測定催に 信頼性が乏しいので,表中の数値は(カッコ)で示した. また豊浦標準砂には425μm以下の粒子が含まれておら ず,コンシステンシーの測定が不能であった.          実 験 方 法  表−1の1∼3の方法を比軟するにあたり,現場にお ける白然含水比の一般性に配盧して,供試試料の初期水 分はあらかじめ遠心法によりpF2,3,3.7に定めた. また秤量瓶によるサンプリング量の実際から判断して,

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図一1 電子レンジ法の測定手順 図一2 赤外線乾燥法の測定手順 図一3 グリセリン拍出法の測定手順 一湿潤質量を10,20,30gに定め,それぞれの組み合わせ  である3×399個を実験試料として使用した.   水分測定の実際は,電子レンジ法では地盤工学会の目  安(6Jおよぴ過去の試行(?)を参考にした.すなわち市販 ,の電子レンジの加熱中における試料の質量が5分間以上  一定となったときを乾燥の終了と判定して,含水比の算  定を行った.また同時に水分の時間的変化率をもとにし  て,次式により含水比の誤差を求め,誤差率5%以上は  実用不可,1∼5%は条件付き可,1%以下は実用可と  判定した.      E=(a−b)×100/a       (%)   ここでEは含水比の誤差,aは炉乾燥法(JIS A1203)b  は電子レンジ法によって測定された含水比である.   赤外線乾燥法ならぴにグリセリン抽出法はすでに土壌  水分の測定を目的として市販されているものであるので,  測定手順はメーカーのマニュアルに準拠したが,比較検  討のため乾燥の終了や誤差の判定などの測定条件は電子  レンジ法と同等になるようとくに配盧した.それらの手  順のうち主要操作を簡略に示すと図一1∼3のフロー  チャートのとおりである.  測定データは原則として3個の平均値を採用したが, バラツキが大きい場合には順次試料数を増加した.          結果および考察   犬  前章に示した9種類の測定条件のうちで,代表例とし て現場における測定において頻度が高く,かつ比較的多 水分量で乾燥過程の検証に適している条件と思われる, pF2, 20gの結果を図示した.その他の8種類の組み合 わせ結果もこれとほぼ同じ傾向を得ている. ベントナイト 150 1 0 0

√’フフ゛

(%) (min) 10  20  30  40  50 図一4 粘土の時間一乾燥曲線 160% カオリン フ0%  0 500W  ●200W  ●赤外綸  ●屈折率 6 0

(4)

40 0 肖 j 20 1 0 (%) − − − フライアッシュ − − 37% 標準砂 18% o 500W ●200W @赤外線 ゜麹折率 (min) 10   2.0.  . 30   1 40   図一5.砂・シルトの時間一乾燥曲線  それらのうち粘土の乾燥曲線は図一4に示すとおりで あるj図の縦軸は試料の含水比(%),横軸は乾燥の経 過時聞(min)を表している∠ 図一4からわかるように,カオリンめ場合には,いず れの方法において・も正確な設定水分値(pF2)710%が 得られ,平衡時間はグリセリン抽出法(屈折率)が約10 分で最短,赤外線乾燥法が約40分で最長であった.また 電子レンジ法では出力が大きいほど平行時間が短縮され た.  ベントナイトの場合には電子レンジ法が水分をやや過 大評価し,∇グリセリン抽出法は極端な過小評価で表示不 能となった.赤外線乾燥法は正確な水分値が得られたが, 40 0 n j 0 ク ﹄ 10 (%)

由良山土 35% (min)10   20   30   40   図一6 由良山土の時間一乾燥曲線 0500W ●200W e赤外線 ゜屈折率 .平衡に約60分の長時間を要した.この結果から,ベント ナイトのような活性粘土を多量に含む土瑞の場合には, 現場測定法の選定にあたづて各測定法の特性に配盧する 必要があるものと考える.  つぎに砂・シルトの乾燥曲線を図一5に示す.この図 からわかるように,標準砂の場合にはいずれめ方法にお いても正確な測定催が得られ,平衡時間はグリセリン柚 出法が約5分で最短,200W電子レンジ法が約25分で最 長であった.赤外線乾燥法においても10分あまりで平衡 が得られ,同測定法の中では最も短時間で測定が可能で あった.  フライアッシュの場合には電子レンジ法が水分をやや 過大評価し,グリセリン抽出法ほ々や過小評価であった. 赤外線乾燥法は,平衡時間は前2者め中間程度となった が,測定値は最も正確であった. 以上の標準試料に対する測定結果から,それぞれの土 壌水分測定法と平衡時間との関達性を見ると,赤外線乾 燥法の場合には水分量が多いほど乾燥に長時間を要する 傾向が認められたが,最も正確な測定結果が得られると 同時に恒率乾燥→減率乾燥のプロセス‘s'が正確に把揃 でき,土壌の乾燥過程そのものを研究する場合には最適 の方法と考える.       /  その他の方法では測定法と平衡時間との間に一定の関 係が認められず,測定原理の違いが反映されているもの とみられる.すなわち赤外線乾燥法が白然乾燥または JIS A1203の炉乾燥に最も近い方法であると考える.  つぎに一般土壌の例として,由良山土と五色台土の乾 燥曲線を図一6と7に√また石高土と門入土の場合をそ れぞれ図一8,9に示した.それらのうち石高土・と門入

ニンヴ

20 (%) (min) 0 1 図一7 20 五色台土 − − − 53% ○ 500W ●200W 9赤外線 ゜屈折率 五色台土の時間一乾燥曲線

(5)

20 15 10 5 (%) 石高土 -20% 15

〇700W

e赤外線

゜屈折率

(min)10   20   30  図一8 石高土の時間一乾燥曲線   測定法 電子レンジ法 赤外線乾燥法 グリセリン拍出法 精度 ○○△ 10 5 (%) 門入土 − - − 13%

〇700W

°赤外線

(min)10   20   30   図一9 門入土の時間一乾燥曲線 表−3 各測定法の総合的評価  迅速性  経済性 総合的評価    O    O  最も安価,簡便,やや水分過大評価    △    ○  最も正確,水分多量時測定に長時間    ○    ○  最も迅速,一部特殊土壌には不適当 土の電子レンジ法は700W加熱による測定結果である. これらの図に示された傾向は主として図一4−5の標準 試料によって得られた結果,すなわぢ測定法と平衡時間, 精度との関係と同等であり,いずれも標準試料による測 定結果に対して内挿データとなった.このように今回採 用した土壌水分測定法が標準試料と同様に一般の土壌の 現場における簡易迅速測定に対しても適用できることが 判明した.          ま  と  め  以上の結果をまとめてみると表−3のようになる.今 回供試した各測定法にはそれぞれ長短があり,測定精度 は赤外線乾燥法が,また迅速性はグリセリン抽出法が最 も優れている.ただし総合的にみると電子レンジ法が簡 便かつ安価であり,最も普及している器械であることか ら,現場での土壌水分の簡易迅速測定法として最も適し @ 屈折率 ている.そして電源が得られない場合はグリセリン抽出 法,乾燥過程等学術利用上の高精度が要求される場合は 赤外線乾燥法が適当と考える. 要  農学,工学,環境科学の現場において土壌水分を簡易 かつ迅速に測定する方法として,電子レンジ法,赤外線 乾燥法,グリセリン抽出法の3種の方法の適合性を検討 した.8種類の供試試料に対する乾燥過程の時間一水分 曲線から判断した結果,総合的にみると電子レンジ法が 最適であり,電源が得られない条件ではグリセリン抽出 法が,また高精度が要求される場合には赤外線乾燥法が 適していることが判明した.  なお,本研究は池田の内地留学中の成果を中心とし, 豊岡と山田が討論に参加して取りまとめたものである. 引 用 文 献 〔1〕小林 一:土地改良の動向,pp.252-281.畑地かん   がい研究会,東京(1960). (2)徳永他:土と基礎,18-5,11-19(1970). (3)たとえぱ内藤善之:マイクロ波・   185-187.コロナ社,東京(1986) ミリ波工学,pp

(4)WADA and KAKuTo : Commun.Soil Sci. Plant Anal. ,

fりり 亦夕

(6)

(5)

(6)

(7)

Toi・gfα1.:Water Resource Res. 16,574-582

安川他:土質試験,p.19.地盤工学会,束京 山田他:香大農学報,39-1,95-99(1987). (1980) (2001) (8)塩沢・束:農業土木棚準用語事典,p.146.農業土   木学会,東京(2003).        (2003年9月30日受理)

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