小学校 にお ける保健教育 の現状 と問題性
一保健教育 に関する学生の認識調査 よリー
鳥取大学教育学部学校保健教室 鳥取大学教育学部保健体育科教育教室 大阪教育大学保健学教室 鳥取県赤十字血液センター健
克
龍
和
本
江
石
田
松
入
自
武
治* 己 料 生*** 衰嚢****The Situation and PrOblems Of]■ ealth Education in Prilnary Schools
――
A Survey of the l」niversity Students'Attitudes towards]肛 ealth Education一
Kenii MATSUMOTO・ ,Katsumi IRIE**,
Tatsuo SHIRAISHI***,Kazuyoshi「
ΓAKEDA****
1.は
じめ に 1989年に戦後6回
目の小学校,中学校,高等学校 の学習指導要領 D2Dの 改訂が今回初 めて同時に行 われた。改訂 のね らいを示す と次の4点
である。 ①豊かな心をもち,た
くましく生 きる人間の育成を図ること ② 自ら学ぶ意欲 と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成 を重視すること ③国民 として必要 とされる基礎的,基
本的な内容 を重視 し,個
性 を生かす教育の充実を図ること ④国際理解 を深め,わ
が国の文化 と伝統 を尊重する態度の育成 を重視すること 戦後の学校体育指導要綱か ら第4次
(1968∼ 70年)教
育課程改訂 までは,保
健教育 (小学校の体 育科「保健領域」,中
学校の保健体育科「保健分野」,高
等学校の保健体育科「科目保健」 と領域 は 異なるが,以
下「保健教育」 という)の
目標 として,生
活化に重点がおかれていたと考えられる。 ところが第5次
改訂か らは,健
康問題 に対する科学的認識の必要性が強調され,今
回の第6次
改訂 では,生
涯教育を見通 した目標の設定がなされるようになっている。 この点に関 して,平
成元年の 中学校指導書保健体育編つでは,次
のように述べている。 「健康・安全についての理解 とは,健
康の保持増進を図るために必要な基礎的 。基本的事項を理 解することであるが,理
解 とは,単
に知識 として,ま
た記憶 としてとどめることではな く,生
徒が,率 Department of School IIcalth,Faculty of Education,「 Γottori l」niversity
*キ Dep.of the h/1ethode of Health and Education,Faculty of Education,「 Fottori X」niversity ホホ* Department of Health Science,Osaka Kyouiku University
162
松本健治'入江克己・白石龍生・武田和義:小学校における保健教育の現状と問題性 現在 はもちろん将来 の生活 において健康 。安全 の問題 に直面 した場合 に,科
学的思考 と正 しい判断 の下 に意志決定 を行い,適
切 に対応で きるようにすることである。」 このような目標 の変遷 は,そ
の時代 の歴史的要請 をはじめ として社会変化 に伴 って生 じた もので あるが,こ
こに掲 げられている健康問題 に直面 した場合 に科学的思考 と正 しい判断の もとに意志決 定 を行 い,適
切 に対応で きるようにす るということは,第
4次
改訂以前 の生活化 も含 んだ ものであ ると考 えられ る。 こうした保健教育 の日標 の変遷 を把握 した上で,わ
れわれ は保健教育 の目標 として「健康 に関す る科学的認識 を深 めるとともに健康生活 に関す る行動および態度 の変容 をはか るものである」 こと と考 えている。 一方,内
容 について は,小
学校で は従前 と同様身近 な生活 にお ける健康・ 安全 について理解 させ ることとし,新
たに「′いの発達」が加 えられた。 また,「病気 の予防」で は,病
気 の発生要因を主体 要因,環
境要因の2要
因の考 え方に立 ち,中
学校の内容 と合致 させ系統性 をもたせている。なお, 1992年か ら小学校体育科 の保健領域で初 めて教科書が用い られ るようになった ことは,保
健 の授業 の実施状況 に広が りと,従
来 の「晴天体育雨天保健」 (rainy day lessons)0か らの脱却の可能性が 考 えられ る。2.分
析 の 視 点 実際問題 として小学校 における保健教育 の評価 はどのようになされているのだ ろうか。児童の学 習状況の評価 はなされていて も保健教育 その ものの評価 について は全 くなされていないのが現状で あ り,評
価 はわが国の教育 の中で遅れ をとっている領域で もあるの。 そこで今回 は,大
学生 を対象 として小学校時代 の保健教育 に関す るアンケー ト調査 を行 い,河 ヽ学 校 の保健教育 の評価 を試 み,今
日の保健教育がかかえる問題点 を明 らかにしようとした。3.対
象 と方 法1)調
査の時期 平成4年
12月2)調
査対象 調査対象 として,平
成4年
度 に鳥取大学教養部で開講 された保健体育科 目の うちの保健学A∼
H
を受講 した学生960名 (男子749名,女
子211名)を
選んだ。3)調
査方法 と調査項 目 それぞれの保健学の第1回目の時間の冒頭 を利用 し,記
名 によるアンケー ト調査 を実施 した。調 査項 目は表1に示 した1)か
ら7)の
とお りである。今回の解析 は1)か
ら3)の
項 目に限定 した。 有効 回答 は930名 (男子720名,女
子210名)か
ら得た (回収率96.9%)。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 163
表1
保健学授業前調査アンケー ト保健学授業前調査
この調査 は保健学 の授業前 に受講生 の皆 さんの実態 を把握す るために行 うものです。 成績 とは無 関係 です ので 自由 に記述 して くだ さい。 性別 (男・ 女)
出身 県( )
氏名( )
1)小
学校時代 に保健 の授業 を受 け ましたか? はいいい え はい と答 えた人 どの ような内容 で したか?
2)小
学校 で毎年行 われ ていた健康診 断 の検 査項 目を覚 えてい る限 り記入 して くだ さい。3)小
学校 で毎年行 われていた体力測定 の項 目を覚 えてい る限 り記入 して くだ さい。4)小
学校 で毎年健康診 断や体力検査 を行 う理 由について あなたの考 えを記入 して くだ さい。5)ツ
ベ ル ク リン反応 を教育現場 で行 うことの意義 について自由に記述 して ください。6)中
学校 で印象 に残 ってい る保健体育科保健分野 の授業 内容 を記入 して くだ さい。7)高
等学校 で印象 に残 ってい る科 目保健 の授業 内容 を記入 して ください。 あ りが とうございました。授業の参考 にさせていただ きます。164 松本健治・入江克己・ 白石龍生・ 武田和義 :小学校 における保健教育の現状 と問題性
4.結
果 と考 察1)小
学校時代 の保健 の授業 の実施状況 学生 の目を通 して,小
学校で保健 の授業があったか どうかをみたのが表2で
ある。全体 の35.2%
が「保健 の授業 を受 けた」 と回答 していた。10年程前の ことを想 い出すので,当
然 の ことなが らバ イアスが入 っているもの と思われ るが,全
体 の3.3%が
「忘れた」または「億 えてない」 と回答 して いた。男女で比較す ると,「保健 の授業 を受 けた」 と回答 した ものの割合 に有意差(P<0.001)が
み られた。すなわち,女
子の方が保健 の授業の印象が強 く残 っていると考 えられた。2)保
健学習の内容 「保健 の授業 を受 けた」 と回答 した もの327名の うち,授
業内容 を「想 い出せない」や「忘れた」 と回答 して,印
象 に残 った授業のない ものは119名(36.4%)で
あった。 これを男女別 にみると,男
子 は233名中96名,41.2%で
あ り,女
子 は94名中23名,24.5%で
あった。男女間 に有意差(P<0.01)
がみ られた。 表2
小学校時代に保健の授業 を受けましたか? 諭 諭 諭 敗 差 は い いい え 忘 れ た 327(35.2) 572(61.5)31(3.3)
233 (32.4) 94 462 (64.2) 110 25 ( 3 5) 6(44.8) ***
(52.4) **
(2.9) 930(100.0) 720(100.0) 210(100.0)**P<0.01,***P<0001
授業 の内容 を回答 した208名全体 の内訳 を頻度 の高い順 にみたのが表3で
ある。自由記述 のため に明確 に単元別 の教育 内容の とお りには集計で きなかった。「性教育」または「性 について」が最 も 高率で42.3%の
ものが回答 していた。 これ は,保
健学習 (教科体育・ 保健体育 にお ける「保健」及 び他教科の学習)と
保健指導 (特別活動 な どにお ける健康 に関す る指導)と
を混同 してい ることも 十分考 えられ る。ちなみに「授業 とい うので はな く,放
課後,男
女別々に保健室 に集 め られて『思 春期』についてやそれに ともなう男女の体 の し くみのちがいについて教 えられた」と記述 した女子, および「修学旅行前 の性教育」 と記述 した男子な どがいた。いずれにしても「性教育」力`最 も印象 に残 っていることになる。男女別 にみて も,
この項 目が ともに最 も高率であって,男
女間 に有意差 はみ られなかった。 ところで,性
教育 に関連 して,「お しべ とめ しべ と,女
の子 だけが よびだされて 話 していた」 と記述 した男子がいた。 これ は当時の性教育 の実態 をある程度言い表 してい るもの と 考 えられ る。 次 に「体 のつ くり,し
くみ等」が24.0%で , 2番
目に高率であったが,こ
れ は他教科主 に理科の 学習内容 との混同が考 えられた。男子の方が女子 よ り有意(P<0.05)に
高率であった。 さらに「体 の発育」の単元の中の基本的な構造 である「思春期 に起 こる体の変化」や「発育の男鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 165
女差,男
女の体 つ き」が続 いていた。 これ らと同 じ単元 の中の「人 の一生 における体 の変化」 を合 わせ ると30%を
超 えていた。 これ を男女別 にみる と「思春期 に起 こる体 の変化」すなわち「二次性 徴」の項 目で男女間 に有意差(P<0.001)が
み られた。 これ は女子の方が初経指導や月経 の際の処 置方法 についての指導 との関連で印象が深いため と思われた。 一方,他
の単元 の「 けがの防止」,「病気の予防」お よび「健康 な生活」の中の基本的な構造 につ いての項 目は非常 に低率であった。 学習指導要領 の第5次
改訂 の小学校 の体育科の保健 は,教
科 目標 で「∼,身
近 な生活 における健 康,安
全 について理解 させ,∼
」 とし,保
健学習 は「理解」 に目標 をお くことにな り,一
つの内容 項 目を一定の時期 に集中 して毎週継続 して とり扱 うことがで きるようなったので はあるが,そ
の利 点が当時 は活か されていなかったのか もしれない。 以上の結果か ら学生 は小学生 当時,自
分の体 の発育 について は興味 を持 っていた ことや,保
健 の 授業があって も「雨降 り保健」のように低調で,必
ず しもすべての単元 について学習 したわけでは ない ことを示 してい るもの と思われ る。 ちなみに「雨の 日の体育 の ときにや る ぐらい」,「体育が雨 の時 に,病
院の ビデオ をみた」 と回答 した学生 もいた。 これ らに反 して「歯 の話,具
体的にはどの ようにム シ歯 になるとか,そ
してそうな らない為 にどうすればいいか とか,乾
布摩擦 をす ると風邪 をひ きに くくなるとか とい うことか ら性 に関することに至 るまで 日々の生活 に関す る身近 な事象 に ついての授業であった」 との回答 もあ り,教
師によって差があ り,あ
らためて教員養成 の重要性 を 痛感 した。すでに森0が述べているように,保
健科 を担当す る教師 は,自
らが健康 を獲得 し,探
求す るとい う過程 を重視 す ることによ り子 どもたちを感化す る側面 も有 している。 このことは小学校教 員 にも十分 あて はまることである。 表3
授業の内容 (複数回答) 男 子 女 子 項 目 性教育,性
について 体 の講造,組
織,つ
くり,し
くみ 思春期 にお こる体 の変化,二
次性徴 発育 の男女差,男
女 の体 つ き 健康,健
康 管理,運
動 と健康 生命 の誕 生,出
生,赤
ちゃんの生 まれ方 歯 につ いて,虫
歯,歯
磨 き 人 の一生 にお ける体 の変化 ケガの応 急処置 の仕方,救
急 方法 イ ンフルエ ンザ,か
ぜ たば この影響,薬
物乱用 その他 88 42.3 50 24.0 31 14.9 28 13.5 15 7.29 4.3
6 2.9
6 2.9
5 2.4
4 1.9
3 1.4
11 5.3 30 42.3 11 15.5 21 29.6 10 14.14 5.6
2 2.8
2 2.8
3 4.2
1 1.4
1 1.4
0 0.0
0 0.0
42.3 28.5 7.3 13.1 8.051
2.9 2.2 2.9 2.2 2.2 8.0 回答者数 男女差:*P<0.05, SP<0.001
166
松本健治・入江克己・白石龍生・武田和義:小学校における保健教育の現状と問題性3)健
康診断の検査項 目1
定期健康診断 については,学
校保健法施行規則第4条
に定 め られているが,学
生の目を通 して, 小学生当時の健康診断の検査項 目が どのようなものだったのか をみたのが表4で
ある。 身体計測 は身長,体
重,胸
囲および座高の四計測 をい うが,身
体計測 または個々の項 目の うちど れか1つで も回答 した場合 は,身
体計測 として集計 した。全体 の70.4%が
回答 してお り,検
査項 目 の中で最 も高率であった。 これ を男女で比較すると,有
意差(P<0.001)が
み られ,女
子の方が身 体計測 の印象が強い ことが明 らかになった。 身体計測の個々の項 目をみると,体
重,身
長,胸
囲,座
高の順 に低下 していた。 これ ら四計測 を 男女で比較す ると,す
べてに有意差がみ られ,女
子の方が常 に高率であった。 栄養状態 は視診 によって栄養不良 または肥満傾 向がチェックされ るが, 1名
も回答 していなかっ た。 脊柱 は視診,圧
診,打
診で側わん症や異常わん曲がチェックされ るが,全
体 の4.8%が
回答 してい た。 これを男女で比較す ると,有
意差(P<0.05)が
み られた。なお,視
診 に代わ る客観的なスク リーエ ング法 として,背
中の等高線写真 を写すモアレ法 を2名
が回答 していた。 視力 は視力表 を用いて裸眼視力がチェックされ るが,全
体 の68.0%が
回答 してお り,身
体計測 に 次いで高率であった。男女間 には有意差 はみ られなかった。 色覚 は小学1年
と4年
次 に仮性同色表 を用いて色覚異常がチェックされ るが,全
体 の22.0%が
回 答 していた。 これ を男女間で比較す ると,有
意差(P<0.001)が
み られ,女
子の方が高率であった。 聴力 は小学1年
,3年 ,5年
次 にオー ジオメーターを用いて聴力がチェックされ るが,全
体 の44.1%が
回答 していた。 これを男女間で比較す ると,有
意差(P<0.01)が
み られ,女
子 の方が高率で あった。 眼 は眼科校医によ り,伝
来性眼疾や眼位 の異常がチェックされ るが,全
体 の16.4%が
回答 してい た。男女間に有意差 はみ られなかった。 耳鼻咽喉 は耳鼻科校医によ り,中
耳炎,耳
垢栓塞,鼻
炎,扁
桃炎等がチェックされ るが,全
体 の18.3%が
回答 していた。男女間に有意差 はみ られなかった。 皮膚 は視診 で伝染性皮膚疾患,湿
疹がチェックされ るが, 1名
のみ回答 していた。 歯 は視診で う歯,不
正咬合がチェックされるが,全
体 の48.8%が
回答 してお り,視
力 に次いで高 率であった。男女間 に有意差 はみ られなかった。 結核 は小学1年
次 にツベル ク リン反応検査 とX線
間接撮影 (結核 と心臓 の検査 を併せ行 う,平
成4年
4月 1日 より実施義務解除)によ リチェックされるが,低
率で全体 の1.9%が
回答 していた。男 女間に有意差 はみ られなかった。 心臓 は毎学年臨床医学的検査やその他の検査および小学1年
次 にX線
間接撮影でチェックされ る が,全
体 の9。1%が
回答 していた。男女間に有意差 はみ られなかった。なお,学
校保健会の平成3年
度発育健康診断に関す る研究班報告書 によると,現
在 の ところ学校保健法施行規則 に定 め られた検 査項 目で はないが,小
学校での心電図検査,心
音図検査 の実施率 は50%を
上回 る勢いである。今回 の集計 はこの心電図,心
音図 と回答 した学生がほ とん どを占めていた。 尿 は試験紙法で蛋 白がチェックされるが,全
体 の12.2%が
回答 していた。男女間 に有意差 はみ ら れなかった。 寄生虫卵 は直接塗沫法で十二指腸虫卵や燒虫卵がチェックされ るが,全
体 の10.1%が
回答 してい た。男女間に有意差 はみ られなかった。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第35巻 第
1号
(1993) 内科 は学校医によ り視診,圧
診,打
診で種々の検査項 目に関連す るが,法
令 による検査項 目とし ては正式 の呼び方で はないが,学
生 は内科 を全体 の41.5%の
ものが回答 していた。男女間に有意差 はみ られなかった。X線
も内科 と同様,項
目として は正式でな く,検
査方法 の 1つ であるが,全
体 の8.7%の
ものが回 答 していた。男女間に有意差 はみ られなか った。 以上 の結果か ら,保
健学習の内容 の ところで も述べたが,学
生 は小学生当時,直
接 自分 に関係す る発育 には興味 をもっていた ことになる。 また,学
校 における定期健康診断で疾病・異常被患率の 高率なう歯 と裸眼視力1.0未満の者 に関係する歯 と視力 についてもよく記憶 に残 っていることになる。 聴力 もオージオメーターで測定 され ることで印象深い もの と思われ る。一方,低
率であつた項 目が 多い ことは,健
康診断が保健学習や保健指導にあま り活用 されていない ことを示 しているもの と思 われる。 表4
小学校で毎年行われていた健康診断の検査項 目を覚えている限 り言己入 して くだ さい。 全 体 男子女子 男女差
N % N %
N %
身体計測 身 長 体 重 胸 囲 座 高 栄養状態 脊 柱 視 力 色 力 聴 力 眼 耳鼻咽喉 皮 膚 歯 結 核 心 臓 尿 寄生虫卵 内 科X
線 655 70.4 579 62 2 583 62.6 431 46.3 417 44.80 0.0
45 4.8 633 68.0 205 22.0 411 44.1 153 16.4 171 18.31 0.1
454 48.8 18 1.9 85 9.1 114 12.2 94 10.1 386 41.5 81 8.7 487 67.6 426 59,1 430 59,7 319 44.3 305 42.30 0.0
29 4.0 483 67.0 140 19.4 300 41.6 110 15.2 129 17.90 0.0
348 48.3 15 2.1 61 8.5 89 12.3 75 10.4 289 40.1 61 8.5168 80,0 ***
153 72.8 ***
153 72.8 ***
112 53.3 *
112 533 **
0 0,0
16 7.6 *
150 71.465 30.9 ***
111 52.8 **
43 20 4 42 20.01 0.5
106 50.43 1.4
24 11.4 25 11.9 19 9,0 97 46.1 20 9.5 対 象者数*P<0,05,**P<0.01, ***PO.001
元来,教
育 には適時性が重視 され る。子 どもたちの発達段階に応 じて,子
どもたちが身近 な問題 として関心の もてる題材 を選 んでい くことが原則である。学校 における保健管理 お よび安全管理 に168
松本健治・入江克己・白石龍生 。武田和義:小学校における保健教育の現状と問題性:
関 して必要な事項 を定め,子
どもたちの健康 の保持増進 を図 り,学
校教育 の円滑な実施 とその成果I
の確保 に資す ることを目的 とした「学校保健法」の もとで強制的に健康診断 を実施 す ることの意義,│
つまり身体計測 の領域 における人権問題 をも含 め,健
康診断実施 の前 に,なぜ健康診断 をす るのか, 検査項 目の何か をとらえ,子
どもたち と話 し合 うことがで きれば,保
健管理活動 としての健康診断 が保健教育 に活か されると考 える。4)体
力測定 学生 の目を通 して,小
学生当時の体力・ 運動能力調査・ テス ト種 目が どのような ものだったのか をみたのが表5で
ある。 もともとこの質問の意図は,学
生が体力診断テス ト(運動 の基本的な要因 である敏捷性,瞬
発力,筋
力,持
久性,柔
軟性 についてのテス ト)と
運動能カ テス ト (走・跳・投・ 懸垂 な どの基本的な運動 によって,ス
ポーツの基礎的能力 を測定)と
を明確 に区別で きているか否 かをみることにあったが,ほ
とん どの ものが区別で きていなかった。 まず,体
力診断テス ト種 目をみると, 背筋力 は,全
体 の26.9%が
回答 してお り,男
女間で回答率 に有意差 はみ られなか った。 握力 は,全
体 の32.5%が
回答 していた。男女間で回答率 に有意差(P<0.01)が
み られ,男
子 の 方が高率で,よ
く覚 えていた。 垂直 とびは,全
体 の37.6%の
ものが回答 してお り,男
女間で回答率 に有意差 はみ られなかった。 踏み台昇降運動 は,全
体 の14.8%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなか った。 反復横 とびは,全
体 の41.9%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなかった。 伏臥上体 そ らしは,全
体 の17.6%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなか った。 立位体前屈 は,全
体 の23.7%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなかった。 次 に,運
動能カテス ト種 目をみると,50m走
は,全
体 の64.9%の
ものが回答 してお り,テ
ス ト種 目の中で最 も高率であった。男女間で 回答率 に有意差 はみ られなかった。 幅 とびは小学校低 。中学年で は立ち幅 とびで,小
学校高学年では走 り幅跳びでの型で実施 されて いるものである。全体 の39.5%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなかった。 ソフ トボール投 げは,全
体 の52.2%の
ものが回答 してお り,50m走
に次いで高率であった。男女 間で回答率 に有意差 はみ られなかった。 斜懸垂腕届伸 は,全
体 の41.6%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなかっ た。 とび越 し くぐりは全体 の3.4%の
ものが回答 していた。男女間で有意差(P<0.001)が
み られ, 女子の方が高率であった。 持 ち運 び走 は1名 も回答 しなかった。 とび越 し くぐりは昭和57年以降に,持
ち運 び走 は昭和58年 以降 に新 し く小学校低 。中学年の運動能カ テス トの種 目に加 えられた もので,学
生 の年齢 を考慮す るとこの2種
目の回答が低率であつた ことは理解で きる。 ジグザグ ドリブル は全体 の16.1%の
ものが回答 していた。男女間で有意差(P<0.001)が
み られ, 女子 の方が高率であった。 連続 さか上が りは全体 の2,9%の
ものが回答 していた。男女間で有意差(P<0.01)が
み られ,女
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 35巻 第
1号
(1993) 169
子の方が高率であつた。 持久走 は全体 の17.0%の
ものが回答 していた。男女間で回答率 に有意差 はみ られなかった。持久 走 は中学生以上の年齢での選択種 目であ り,一
般的 に実施 されているものである。小学生 には原則 的には実施 されていない はずであるが,か
な りの学生が回答 していることは,中
学校 の頃の言己憶 と 混同 したのか,距
離 を短 くして小学校で も実施 されていたのか どち らかであろう。 以上の結果か ら,運
動能カテス トの項 目の方が,体
力診断テス トの項 目よりも回答率が高い こと が明 らかになった。 この ことは小学校現場での教材 としての取 り上 げ られ方 を反映 しているもの と 考 えられた。 表5
小学校で毎年行われていた体力測定の項 目を覚えている限 り記入 して く ださい。全笙
=__.呈
二万
__1生
三万
_
男女差
N % N % N %
体 力 背筋力251 26.9 196 27.2 55 26.1
握 力303 32.5 254 35.2 49 23.3 **
垂直 とび350 37.6 277 38.4 73 34,7
踏 み台昇降運動138 14.8 102 14.1 36 43.3
反復横 とび390 41,9 299 41.5 91 43.3
伏 臥上体 そ らし164 17.6 130 18.0 34 16.1
立位体 前屈221 23.7 168 23.3 43 25。
2 運動能力 50111ЯL 604 64.9 467 64.8 137 65.2 幅 とび368 39.5 279 38.7 89 42.3
ソフ トボール投 げ486 52.2 378 52.5 108 51.4
斜懸垂腕屈伸387 41.6 303 42.0 84 40.0
とび越 し くぐり32 3.4 16 2.2 16 7.6 ***
持 ち運 び走0 0.0 0 0.0 0 0.0
ジグザ グ ドリブル150 16.1 88 12.2 62 29.5 ***
連続 さか_Lが り27 2.9 14 1.9 13 6.2 **
持久走159 17.0 129 17.9 30 14.2
対象者数930 720 210
**P<0.01,***P<0.001
6.
ま とめ 学習指導要領の第5次
改訂のもとで,教
科書のなかった時代に小学校で保健の授業を受けた大学 生の側か ら小学校 における保健教育の評価を試みようと,平
成4年
度 に鳥取大学教養部で開講 され た保健体育科 目のうちの保健学A∼
Hを
受講 した学生960名 (男子749名,女
子211名)を 対象に記名170
松本健治・入江克己・白石龍生・武田和義:小学校における保健教育の現状と問題性 によるアンケー ト調査 を実施 した。有効 回答 は930名 (男子720名,女
子210名)から得た(回収率96。 9%)。 解析 の結果,以
下の知見が得 られた。1)全
体 の35.2%が
「保健 の授業 を受 けた」 と回答 していた。女子の方が保健 の授業の印象が強 く 残 っている可能性が示唆 された。 2)「保健 の授業 を受 けた」と回答 した もの327名のうち,印
象 に残 った授業 のない ものは119名(36.4%)で
あった。3)授
業内容 は「性教育」 または「性 について」が最 も高率で42.3%の
ものが回答 していた。 4)「体 のつ くり,し
くみ等」が24.0%で , 2番
目に高率であったが,こ
れ は他教科主に理科の学習 内容 との混同が考 えられた。 5)「体 の発育」の単元 の授業が30%を
超 えていた。6)他
の単元 の「 けがの防止」,「病気 の予防」および「健康 な生活」の中の基本的な構造 について の項 目は非常 に低率であった。7)学
生 は小学生 当時,自
分 の体 の発育 について は興味 を持 っていた ことや,保
健 の授業があって も「雨降 り保健」 のように低調で,必
ず しもすべての単元 について学習 したわ けではない ことが示 唆 された。8)健
康診断の検査項 目で は,身
体計測 を全体の70.4%が
回答 してお り,検
査項 目の中で最 も高率 であった。女子の方が身体計測 の印象が強い ことが明 らかになった。9)学
生 は小学生 当時,直
接 自分 に関係する発育や健康診断項 目についての記憶が残 っていること が明 らか になった。10)健
康診断が保健学習や保健指導 にあまり活用 されていない ことが示唆 された。11)50m走
を全体 の64.9%の
ものが回答 してお り,テ
ス ト種 目の中で最 も高率であった。 12)ソ フ トボール投 げを全体 の52.2%の
ものが回答 してお り,50m走
に次いで高率であった。 結論的 には,小
学校 における保健教育 はあまり印象には残 っていない ことが明 らかになった。 ま た,「性 に関す る指導」や「か らだの変化」についての授業 内容が印象 に残 っていると考 えられ る結 果 も得た。 これ らの ことか ら河ヽ学校 における保健教育 は子 どもたちの身近 な ことを教材 として行 う 必要があることや保健管理活動 を保健教育の中に活かす必要性があると考 えられた。 この ことは, 保健教育 に教科構造 の問題 をはらんでいるいることを暗示 しているもの と考 え られ る。果 たして現 在のように「保健」が「体育」 に従属 した形態が妥当な ものか,教
師教育 にお けるカ リキュラムの 改革の必要性 はないのか等,今
後 の検討課題 と考 える。 終わ りに臨んで,ア
ンケー トに回答 して くれた学生諸君お よび本調査 に協力いただいた教養部 の 清水克哉教授 と加藤敏明助教授 に感謝いたします。注および引用文献
1)文
部省 :小学校学習指導要領,大蔵省印刷局 (1989)2)文
部省:中学校学習指導要領,大蔵省印刷局 (1989)3)文
部省 :高等学校学習指導要領,大蔵省印刷局 (1989)鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第35巻 第