発生的認識論研究
(3)コ
ミュニ ケー シ ョン
,言
語
,自
己
教育心理学教室 一局取
憲 一 郎
1
初 期 ピア ジ ェ に お け る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン,言
語,自
己 の 統 合 社会 ―個人問題 に多大な関心 を寄せていた頃の ピアジェ初期 の研究の一つである,『判 断 と推理 の 発達心理学』(ピアジェ,1969)は ,コ
ミュニケー ション(社会)と言語 と自己の三者 を一つの まと まりとして記述 している点で,き
わめて注 目に値す る。前稿 (高取,1993)で
も触れた ように,ピ
アジェによれば,個
人 の知能 において働 く操作 と個人 と個人 の間 (ピアジェの立場で は社会 に相当 する)に
おいて働 く操作 はいわぼコインの裏表 の関係 にあ り,そ
の両者の関係 において,前
操作期 と具体的操作期 との間で大 きな変化が生ず る。すなわち,前
操作期 を過 ぎて具体的操作期 に入 ると, 知能 の面で は群性体 といわれ るところの可逆性 とか,相
互性 を特徴 とす る操作の体系の形成へ向け て発達 してい くのだが,対
人関係 の面 において も他者 と協調,協
力 して均衡 のある人間関係 を確立 してい く方向へ と発達 してい く。 そして,つ
いには,11-12歳
頃 になると一応の完成 の段階へ と至 り,形
式的操作期 あるいは抽象的操作期 といわれ る段階 に到達する。 この とき,わ
れわれが注 目してお くべ きは,ピ
アジェが この前操作期か ら具体 的操作期 に移行す る原動力 として社会的要因を重視 していることである。 ピアジェ自身 は,そ
れを他人 による圧力で あるとか,あ
るいは他人の思考 との衝突 とい うことばで表現 しているわけであるが,い
ずれにして も,こ
の時期 の ピアジェの問題意識 においては社会が個人 の知能の質的転換 を促す とい う基本的思 想があったのは明白である。 さらに,■
-12歳
頃の転換点 において も,仲
間関係 の緊密化が一層の知能 の操作 の論理化,体
系 化 を促進するとい うような表現で もって,具
体的操作期か ら形式的操作期への移行 において も,社
会的要因が知能 の質的転換の原動力 となることを強調 している。 上 にも述べたように, 6-7歳
あるいは7-8歳
頃の具体的操作期への移行 に伴 って,社
会 に先 導 されるかたちで知能 と人間関係 の両方の均衡化が進んでい くわけであるが,こ
こで ピアジェが社 会 と呼んでいるものは,要
す るに個人 と個人 との間 に取 り結 ばれ るコ ミュニケーシ ョンの ことであ る。 ドフス (Doise,1985)はこれを個人間協調 は個人内協調 に先行 し,個
人内協調 を増進す ると言 ったわけだが,も
ともとはこの初期 ピアジェの見解 に依拠 しているもの と思われ る。ところで
,以
上 のような社会 と知能 とのパ ランルな発達 に加 えて,も
う一つ自覚 あるい は意識化 の発達 もまた,社
会 と知能の発達 に対応 してパ ラレルに進 んでい く。 ここで,自
覚あるい は意識化 とい うのは自分 の行動 とか考 えていることあるい は言っていることが,客
観的にわかっているか ど うか ということである。 ピアジェはしばしば,行
動 あるいは操作 とその自覚あるいは意識化 のズレ (デカラージュ)と
い うことを述べているわ けだが,そ
れ は,行
動 はで きて もその意識化 は遅れて 出現す るとい う意味である。 ピアジェは,こ
の自覚 あるいは意識化 は二つの要因 によって引 き起 こされると考 えている。すな わち,一
つはそれ まで自閉的に自己の内へ こもっていた子 どもが他人の思考 と衝突する中で,す
な わち他人か ら自分 の意見 に対する反対意見 を もらった り,ま
たそれに対す る自分 の反論 を述べた り す る中で (これ らをピアジェは社会の圧力 と呼んでいる),自
覚 とか意識化が生ず る。換言すれば, それ までの自己中心的思考の段階であれば,自
分 の思考 についてぶ り返 って反省す ることもな く, 自分 の思考 について は無意識であった子 どもが,他
人か ら反対 され るとい う経験 を通 じて 自分 の思 考 について初 めて考 えることがで きるようになる という見解である。 もう一つの要因 は,言
語の発 達 も伴 うことによって,操
作が行動の面で はな くて言語の平面上で行われ ることがで きる とい うこ と,す
なわち,操
作 をことばで表現で きるとい うことである。 自分の今行 っていることあるいは考 えていることを言語化で きるとい うことである。以上 のように,社
会 (コ ミュニケー シ ョン)と
言 語 とい う二つの要因 によって,自
覚 あるいは意識化が形成 され るとピアジェは考 えるのである。 ここまで述べて きたように,ピ
アジェは,社
会 (コ ミュニケー ション)と
言語 と自己認識 を三位 一体 の もの ととらえ,そ
のなかで もとくに社会 (コ ミュニケー ション)に
すべての原動力 を置 いて いるのである。図式的に言えば,前
操作期 の段階で は社会 はまだ介入 して こないが,前
操作期 と具 体的操作期 の境界 において社会が介入 して きて,そ
のために具体的操作期への移行が始 まるとい う ことになる。 ピアジェの四段階の発達段階がいわば垂直方向への発達の軸であるとするな らば,そ
れを取 り巻 くようにして社会 とい ういわば水平方向の発達の軸があ り,さ
らに個人 の内部 にお ける 言語機能の発達 とい う内部軸があるというモデルで考 えるとわか りやすい。 さて,本
稿で は,社
会(コ ミュニケーション),言
語,自
己 とい う三つの概念の関連が どのような 構造 になっているのか を検討 してい くわけだが,わ
れわれの実験 を紹介す る前 に,現
在 の ピアジェ 派の研究 において,
このような問題が どう探求 されているか をまず見てい くことにしよう。2
ジ ュネ ー プ学派 における言語 とコ ミュニケ ー シ ョンの発 生的認識 論 的研 究2-1
言語に関するもの(1)
ことイぎ (、vord) とは,丁か? (Papandropoulou ttt Sinclair,1974)4歳
5ヵ月か ら10歳10ヵ月の,ジ ュネーブの子 どもたち102人に対 して,以
下のような質問を行っ た。 まず, 12個
のことば (眠る,幸
福な,取
る,そ
の,椅
子,親
切,行
く,な
ぜなら,本
当の, 来 るだろう,い
つ,三
)の
それぞれを示 した後で,①
「それはことばですか?
なぜそうなのです か?」,②
12個すべてについて①の質問を終 えた後で,「ことばとは何でしょう?
ことばか ことば でないかはどう区男Jするのですか?」,③
さらに,「長い (短い,難
しい,自
分でつ くった)こ
とば を言って ください」「なぜ,そ れが長い(短い,難
しい,自 分でつ くった)こ とばだと思 うのですか?」 結果 は,こ
とばに関する自覚の 4つ の水準 としてまとめられている。 第一段階(4歳
児∼5歳
児):こ
とばとモノの区別をしない。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 具体的な例 をあげる と,「イチゴはことばです,な
ぜな ら庭 にで きるか ら」(4;9)「
鉛筆 はこと ばだ,な
ぜなら書 くか ら」(4;8)。
同様 の答 えは,「長 い ことば とは何か?」の問いに対する答 え にも見いだされ る。「椅子です。長 い脚 をもっているか ら」(4,9)「
汽車です。た くさん車両があ るか ら」(4;9)「
子 どもが一生懸命走 ってる,走
ってる,走
ってる」(4;4)「
汽車です。多 く の人 を乗せて,
どん どん どん どん行 ってい ます」(6;0)。
「短 い ことば とは何 か?」Vこ対 して も同 様の答 えが見 られ る。「 さ くらそうです。小 さいか ら」(4;6)「
木 は倒れる」(5,3)。
「難 しい ことばとは?」に対す る答 えも同様 である。「歯です。抜 けるか ら」(4,7)「
ラジオです。誰 も私 に説明 して くれないか ら」(4;7)「
鍵穴か ら鍵 を抜 く人。難 しいか ら」(4,1)「
お もちゃを片 付 けること」(5,■
)。 また,「自分でつ くった ことぼ」として は,あ
りえない ような想像上の場面 を言 うことが多い。「水 のない水槽 の中のさかな」(5,4)「
泳 ぐ自動車,飛
ぶ 自動車」(5,3)
「葉があるのに葉がない。 コップになにもないのにジュースがある」(5,3)j
第二段階(5歳
∼7歳
児):こ
とば と現実の融合 はな くなるが,し
か しまだ,こ
とば と現実が対応 していな くてはな らない。すなわち, ことばは何かについて何事かを言 っているものであ り,何
か をラベル として名付 けてい るものであるとみなされている。「そのはことぼで はない。他の何かが必 要だ。その トラックはことばだ」(5,4)。
長 いことば,短
い ことばに対 して も,文
節の数が二つ か一つかによって区別 す る。長い ことばの例 :「 彼 は出かけてい き,自
動車 に乗 る」(5,11),短
いことぼの例:「彼 は出か ける」(前と同 じ子 ども),「家 に帰 って,靴
を脱 ぐ。 これ は長い,な
ぜな ら同時 に二つの ことを言 つているか ら。私 はそこに行 く。 これ は短 い,な
ぜ な ら一つのことばしか ないか ら。いや,一
つの ことしかないか ら」(6;9)。
ことば とは何か と問われて,名
詞 をあげる 例 :「 自動車,家
,警
官,教
会,ワ
ニ。なぜなら,そ
れ は本当の名前 だか ら」(6;2)。
長い こと ばの例 :「散歩 しているネコ」(6:10)「
森 に住 んでい るヘ ビ」(6,10)。 また,「機関車」とか「黒 板」をあげる者や,「タイプライター,文
字がた くさんあるか ら」「新聞,文
字がた くさんあるか ら」 とい う例 もある。難 しい ことばの例 :「黒板,そ の上 に難 しい ことを書 くか ら」,易 しい ことばの例 : 「ネコ,言
いやすいか ら,あ
るいは文字が易 しいか ら」。 また「 ことばをつ くれ」とい う問題 に対 し ては,子
どもは物語 をつ くれ,あ
るいは想像上 のあ りえない ような場面 について話せ ということと 誤解する。 第二段階(6歳
6ヵ 月∼8歳
児):こ
とばは現実か ら分離 し,意
味の文脈上 に置かれ る。長い こと ば,短
い ことばも文字数で考 えるようになる。 第四段階(8歳
∼10歳児):こ
とばは明瞭な自立性 を獲得 し,意
味のある単位 とな り,能
記 (シエ フィアン)の
システムヘ と統合 されてい く。(2)言
語の自覚 (Sinclair,1980) オラングの3歳
か ら8歳
の児童 (幼稚園児お よび小学生)25人
を対象 に,一
人 当 り約1時
間のイ ンタビュー調査 を行 った ものである。インタビューの内容 は大 き く5つに分かれ る。①言語 の産出 (「人 はいかにして話すか?」),②
言語の機能(「人 はなぜ話すのか?」「人 は話すのが好 きか?
も しそうだ とした らなぜか?」「話す ことと笑 うこと,走ることはどこが似ていて,どこが違 うか?」 ), ③言語の特徴 (「動物 は話すことがで きるか?」 「 もしで きない としたらなぜか?
どうしてそれ がわかるか?」「もしで きるとしたらなぜか?
どうしてそれがわかるか?」「イヌ (ネコ,ハ
エ, ヘビ)は
話す ことがで きるか?」「車 は話すことができるか?」),④
言語の獲得 (「だれで も話すこ とができるか?」「赤ちゃんは話す ことができるか?」「あなたは今話すことがで きるか?」「その間(赤ちゃんの時か ら現在 までの間
)に
何が起 ったのか?」「あなたは話す ことを学習 したか?」「赤 ちゃんにどのように して話す ことを教 えるか?」),⑤
非理解(「あなたはいつで も他人 の言 うことが わかるか?」「他人 はいつで もあなたの言 うことがわか るか?」「 なぜ,そ
う思 うのか?」)で
ある。 サ ンクレール は結果 を三点 にまとめている。 ①言語の特徴:幼稚園児(3, 4, 5, 6歳
児)は
二つのタイプに分かれ る。タイプ1は,動
物 も人間 と同様 に言語 を持 ち互いに伝達 し合 うと考 えるグループである。タイプ2は
,動
物 は話 さな い し互いに理解で きない と考 えるグループである。小学生(7, 8歳
児)になると,言
語の特徴(語, 音節,複
雑なメ ッセー ジ)と
伝達機能 を含 む もの として言語 をとらえるようにな り,人
間 と異な り 動物の場合 はいずれの機能 をも持たない と考 える。 ②言語の獲得:3, 4歳
児 は言語 の獲得 は成長することと関係が あ り,歯
や 日の発達 と関係があ ると考 える。5, 6歳
児 は,言
語 を大人 (普通の場合 は両親)か
ら学 んだ と考 える。7, 8歳
児 は 言語 は一般的な他の人々か ら学んだ と考 えるようになる。要す るに,言
語 は学習 され るという事実 をしだいに自覚 してい くと言 える。 ③非理解:3歳
か ら6歳
で は,非
理解 とい うことがそ もそ も自覚で きない場合 と,実
際的理由(た とえば遠 くに住んでいる,そ
こに行 くことがで きない,他
の国 に属 している,別
の言語 コー ドを持 つている,な
ど)に
よ り理解不能 の二つに分かれ る。7, 8歳
児で は,こ
とばの水準 における非理 解 (単語がわか らない,発
音が不正確・ 不明瞭な ど)と
話 の内容やテーマその ものがわか らないた めの非理解の二つのグループに分かれ る。 以上 の結果か ら,第
一 に,子
どもはしだいに言語 あるいは言語行為 を他の種類 の行動か ら概念的 に分離 してい き,第
二 に,し
だいに話 し相手の果たす役割 の理解,さ
らには言語 の伝達機能 につい ての理解が深 まり,第
二 に,小
学生で は学校教育 の強い影響 を受 けているとい うことが明 らかにな った。(3)会
話の再構成 (Berthoud_Papandropoulou,et al.1989)4歳
か ら9歳
の48人のジュネープ在住 の子 ども (フランス語 を話す)を
対象 にして,二
つの人形 を使 った会話 をギ リシャ語で行 い,子
どもにはこの人形が何 を話 しているのか を言わせる。すべて の子供達 にとって は,ギ
リシャ語 は未知 の言語である。 三つの会話場面 を設定す る。 〈場面1)人
形1が
話 し,次
に人形2が
話す。 その直後 に,人
形2は
テーブルの方へ行 き,テ
ー ブルの上の三冊 の本 の うちの一冊 を取 り,人
形1のところに行 ってそれ を渡す。 (場面2〉 二つの人形 は同時 に行動 を開始する。人形1は トランクにい ろい ろな ものを詰 めてい る。人形2はレンジの上 の鍋 をか きまぜている。 (場面3〉 二つの人形 は一緒 に絵 を見ている。その絵 には,二
つの家,二
本 の木,湖
,ボ
ー ト, 漁師が描かれている。 結果 は5段
階に分かれ る。 段階1(4歳
児で は普通 に見 られ, 5, 6歳
児ではまれに見 られ る。7歳
児以上で はまった く見 られない。):ギ
リシャ語 の会話 をフランス語で言 えない。人形 の動作 を説明するか,人
形が何 を考 えているかを説明す るか,人
形 の話 したギ リシャ語 を反復 するかである。例 :「本 を見たがってい る/行
って本 を取 る」(4:9,場
面1)「中をか きまぜている」(4,6,場
面2)「行 って本 を取 って こな くて はな らない」(4;6,場
面1)「全部詰 めた/か
きまぜた」(5,0,場
面2)。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号 (1994) 177
段階2(4歳
∼6歳
児):フ
ランス語 に置 き換 えるが,そ
れ はギ リシャ語の音声か ら連想 した り, 人形の動作の一部 に含 まれ るモノの名前な どの名詞が中心である。例 :「羊 とトラック/骨
」(5;
4,場
面1)「石 けん/野
菜」(4,1,場
面2)「煙突/木
」(5,7,場
面3)。 段階3(5, 6歳
児):人
形 の代 りに話す ことがで きるようにな り,進
行中の行為 と話 しとを結び つけようと努力す る。例 :「 私 は石 けんを使 つている/ご
はんがで きた」(5,4,場
面2)「家が ある/ボ
ー トがある」(6;8,場
面3)「置いておいた/ト
ラックの絵 のある本 を取 って くる」(4:
7,場
面1)「本 を探 そ う/絵
をみてみよう」(5,9,場
面1)。 段階4:対
話 のユニ ッ トをつ くれるようになる。 しか し,場
面2の
場合 は,人
形 の行為 と会話 と の間に関連がないために,う
ま くで きない。例 :「 トラックの描 いてある本 をもってる?/う
ん, もっていってあげよう」(7:3,場
面 1)「 誰が この絵 を描 いたの?/私
よ,君
にあげるよ」(7;
3,場
面3)。 段階5:発
話 と発話 の間の結 ぴつ きは言語外の文脈か ら独立 して くる。例 :「本が好 きだよ/あ
, そう」(場面1)「もうで きた?/も
う少 し」(場面2)「海 の上 のボー トを見 てごらん/見
てるよ」 (場面3,以
上いずれ も8;1)「
学校で は何 を読 んだの?/こ
れだよ」(9:■
,場
面1)。(4)バ
イ リンギズム (Berthoud―Papandropoulou,1991)4歳
から9歳
までの72人のジュネーブ在住の子 どもを対象にして,次
の二つの質問をした。①「二 つの国のことば (deux langues)を 話す ことはできるだろうか?」 あるいは「二つの国の言葉を話 す人がいるだろうか?」もし「Vゝる」と答えれば,「二つの国のことばを話すことはできるだろうか?」 ②「二つの国のことばを話す ことは何の役に立つだろうか?」 ①の結果は表1にまとめてある。4-5歳
児のうちの3人
が,二
か国語 を話す ことを認めなかっ たが,そ
の理由は,「二つのことばをもつことはできない。なぜなら回はとっても大 きいけれどもこ とばは多 くの場所 を取 るか ら」(4:5)な
どがある。逆に,肯
定 している例 は,「(二か国語を話す 人 はいますか?)ぼ
くの両親 は話すよ,(三
か国語は?)ヤ
ゝない,多
すぎる」(5,2)。
表1
年齢別のパイ リンギズムおよび トゥリリンギズムに関する 反応タイプ別人数分布 (BerthOud・Papandropoulou,1991ょ り) 年齢4-5歳
児6-7歳
児8-9歳
児計 (n三
18) (n=22) (n=23) (n三
63) バ イ リンギズム/トゥ リリンギズム ーー
3 0
+ - 6 2
+ + 9 20 0 3 1 9 22 51 (注 )十は肯定,―は否定 ②の結果は5つ のタイプに分けられる。 タイプ1(4歳
):バ
イ リンギズムは役に立つ とはみなされない。例 :「私 はスウェーデン語を話 します,(二
か国語を話すのは役に立ちますか?)わ
か らない」(4;1)。
タイプ2(5歳
):バ
イ リンギズムはことばを学習するのに役だつ。例:「(二か国語を話す人 は 何ができるだろう?)も
う一つ別の言葉を学習できる」(4;■
)。 タイプ3(5-6歳
):バ
イ リンギズムは話す (parler)のに役だつ。例:「何かを話すのに役だつ」
(6;1)「
他 の ことぼを話す人がいるときに役だつ」(6i5)。
タイプ4(6歳
∼8歳
):バ
イ リンギズムは,外
国へ行 きそ この人々 と話すのに役 だつ。 このタイ プ4は ,さ
らに二つの下位 タイプに分かれ る。a)外
国に行 って外国語 を話す ときに役だつ。例 :「ある国に行 って,話
すのに役立 ちます」(7;
3)。b)外
国に行 って,そ
この人々 と話すのに役 だつ。前の段階aとの違い は,外
国語 を話すその国 の人々 という概念が出て くることである。例 :「 もし外国に行 った とした ら,そ
の国の人々 と話す ことがで きる」(8;3)。
タイプ5(7歳
∼9歳
):バ
イ リンギズムはフランス語 を話せない人々 と話すのに役 だつ。 この段 階で は,フ
ランス語 を話せない人々 とい う概念が出て くること,お
よび,二
か国語 を話す ことで利 益 を得 るのは本人 ばか りで はな く,そ
の人 と話 している他人 (例えば外国人)も
利益 を得 ると考 え るようになる。 以上 の5つのタイプ別人数分布 は表2にまとめてある。 表2
パイ リンギズムに関する反応 タイプ別人数分布 (BerthOud・Papandropoulou,1991ょ り) 年齢4歳
児5歳
児6歳
児7歳
児8歳
児9歳
児(n=12)(n=12)(n=12)(n=12)(n=12)(n=12)
(n=72)
計0
バ イ リンギズムの拒否I
役 に立 たないH
ことばの学習 に役立 つ Ⅲ 話 すのに役立 つ Ⅳa外
国に行 って外 国語 を話す と きに役立 つ Ⅳb外
国 に行 ってその国の人 と話 す ときに役立 つV
フランス語 を話せない人 々 と い う概念 の出現 1 9 1 0 1 2 0 2 6 2 0 1 0 6 3 0 0 0 0 5 0 0 0 0 3 0 0 0 0 1 3 10 3 12 15 13 16 このバイ リンギズムに関す る調査か ら,バ
イ リンギズム とい うもの力゛単 なる個人 の機能 に限定 さ れていた段階か ら,外
国 とか外国人 とい う社会的概念 を含む もの として理解 され はじめ,さ
らにコ ミュニケーションがで きることによ り自分 ばか りで はな く他人 も不J益を得 るようになるというよう な本目互′陛もとらえることがで きるようになることがわか る。2-2
コミュニケーシ ョンに関するもの(1)羊
飼い と大工 (Berthoud‐PapandrOpoulou&Kilcher,1987)
3歳
か ら8歳
のジュネーブ在住 の子 ども40人を対象 に,次
のような実験 を行 った。実験者1は山 で羊の番 をしている羊飼 いの役,実
験者2は
冬 に使用 され る羊小屋 を作 る大工 の役 をす る。実験者 1の前 には緑 の小 さな板 の うえに20個の小 さな羊が置いてある。実験者2は
,実
験者1から10メー トル離れた ところに,厚
板,ボ
ール紙,は
さみを持 って座 っている。実験者 1と 実験者2の間には 21個のメッセージがや りとりされ るが,こ
どもは両者 のメ ッセ ンジャー として行動す る。取 り交わ され るメ ッセージは次のような ものである。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
1号
(1994) 「家畜小屋 を四つ作 るように彼 に言いなさい」(命令) 「皆同 じ大 きさにして もいいか どうか彼 に聞いて きなさい」(質問) 「そうじゃない,
とい うのは雌羊 はた くさんいるけど雄羊 はそんなにた くさんい ないか ら」(答え) 「雌羊の隣には何が住 むのか?」 (質問) 「小牛」(答え) 「雄羊 とヤギを一緒 に入 れた らどうか と彼 に言 ってお くれ」(提案) 「だめだ,ヤ
ギ はヤギだけで入れたいんだ」(拒否 と逆提案) この実験が終わつた後で,次
のような質問 をす る。「私 は羊 の番人 をしていた。彼女 (実験者2 のこと)は
小屋 を建 てた。で は,君
は(子どもに向かって)何
の役 をしていたんだ ろうか?
なぜ, こち らか らあち らへ と行 き来 していたんだ ろうか?」 結果 は,ま
ず上 に触れたメッセージのタイプ別 の成功率 を表3に示 してある。 この表か らは,委
任的・ 依頼的表現 を含むメ ッセージ(1, 2a, 4a)の
ほうがそれ を含 まない もの よ り成功率が 高い こと,質
問のほうが答 えよ り難 しい こと(3aと
3b),実
践的な行為 と直接結 びつ くメ ッセー ジ(1, 4a, 4b)は
,質
問 と答 えのメ ッセージで実践的行為 と直接結びつ くことのないメッセ ージ(2a/2b, 3a/3b)よ
りも成功率が高い ことな どがわかる。答 えよりも質問のほうが 難 しいのは,実
験者 の質問に子 ども自身が直接答 えて しまう例が多かったためである。 表3
年齢別,項
目別の成功 した子 どもの人数分布 (BerthOud.Papandropoulou & K‖ cher,1987よ り)1
羊飼 い2a
大工 :2b
羊飼い3a
大工 :3b
羊飼 い4a
大工:4b
羊飼い 計 4b 4a 3b 3a 2b 2a 項 3 5 6 7 5 10 10 10 35 0 10 10 10 30 0 1 3 7 11 0∼4 0∼5 0∼6 0∼7 11(n三10) 11(n=10) 11(n=10) 11(n=10) 年齢 計 6 10 9* 10 35 14 50 56 65 185 (注)・この項 目に関しては一人の被験児に関 しては実験 していない 次 に質 的 な分析 をす る と,メ
ッセ ンジ ャー の役割 に は4段
階 あ る こ とがわ か った。 そ の人 数分布 は表4にま とめて あ るが,詳
し く見 てみ よ う。 表4
年齢別のメッセ ンジ ャーの役割に関する水準 ごとの人数分布(BerthOud・Papandropoulou & Kilcher,1987よ り)
役 割 話 し本目手 命令 を渡す人 委任されたメッセンジャー
自立したメッセンジャー 計 年 齢 3 5 6 7 3 0 0 0 3 7 0 0 0 7 0 9 7 3 19 0 1 3 7 11 10 10 10 10 40 0∼ 4 0∼5 0∼6 0∼7 11(n ll(n ll(n ll(n =10) =10) =10) =10) 計
水準
1(話
し相手):3∼
4歳
児の一部 に見 られ るもので,メ
ッセンジャーの役割 を果 たさずに, もう一方の ところに行 ってただ対話 をす るだけである。 その場合 も,発
信者か ら命令 された場合の み (「言 って きなさい」 とか「頼 んで きなさい」)受
信者 の ところに移動で きる。 しか し,受
信者 の ところに行 って も黙 っているだけである。 だが,そ
の ときも,受
信者か ら促 されれば重要 なポイン トは答 えることがで きる。例 :クレム(3;7)[メ
ッセージ1]ク
レム は羊飼 いの ところか ら大工 の ところへ行 くが黙 っている。大工「彼 は何 て言 つたの?」 クレム「沈黙」大工 「家 を建 てな くて はな らないんだけど,い
くつかな?」 クレム「四つ」。 水準2(命令 を渡す人):受
信者が実行せねばな らない命令 のみを伝 えることがで きる。例 :ノエ(3;2)[メ
ッセージ 1]「 家 を四つ」[メ ッセージ4a]「
雄羊 とヤギを一緒 に入れたいって」[メ ッセージ4b]「
別 に入れたいって」。スム(3;7)[メ
ッセージ1]「家 を四つ作 るように彼女が 言 った」[メ ッセージ4a]「
雄羊 とヤギを一緒 にす るように彼女が言った」[メ ッセージ4b]「
ヤ ギは別 にしたいって彼女が言った」。 また,命
令以外 のメ ッセージも命令 のようにして伝 えることもある。例 :メル(4:2)[メ
ッセ ージ2a]「
家 は同 じ大 きさにしなさい」。 さらに,発
信者が命令形 にして発信す ると,そ
れ まで は 伝 えようとしなかった子 どもが伝 えることがで きるようになる。例 :ジ ェール(4,0)[メ
ッセー ジ2b]ジ
ェールが移動 しないので,羊
飼 いは2bの
メッセー ジを言い換 える。「同 じ大 きさにして はいけない」。 ジェール は大工の ところに行 って,「みんな同 じ大 きさにしてはいけない」。 水準3(委任 されたメ ッセンジャー):命
令 だけでな くあ らゆる種類 のメッセージを,命
令,質
問, 答 えの区別 をして伝 えることがで きる。ただ,メ ッセンジャー としての役割 を自覚 させ るためには, 言語的な委任 あるいは依頼が必要 となる。例 :ダン(6;2)[メ
ッセージ2a]「
みんな同 じ大 き さにしな くてはな らない?」 [メ ッセージ2b]「
みんな同 じ大 きさにす る必要 はない」[メッセージ3a]ダ
ン「雄羊」大工「聞いて きなさい」ダンは羊飼いの ところに行 く。「何が生活す るの,え
っ と,何
が雌羊の隣 に住 むの?」 [メ ッセージ3b]「
小牛」。 水準 4(自 立 したメッセンジャー):こ
の段階 になると無駄 なメ ッセージを交 えないで伝 えること がで きる。例:[い
ずれ もメッセージ3a]マ
ル(7:5)「
何が雌羊の隣に住むの?」。ハ ブ(7;
11)「ぼ くが行 って,雄
羊かヤギか どち らか聞いて くるよ」羊飼いの ところに行 って,「雌羊の隣 に は何が住むの?」。アン(7;2)「
私が聞いて くるわ」羊飼いの ところに行 って,「ところで,雌
羊 の隣には何が住むの?」。 最後 に,子
どもは自分 の行 ったメッセンジャーの役割 をどの ように理解 していたか とい うことを みてみ よう。 このメ ッセンジャーの概念化 あるいは自覚 に関 しては,行
動のレベルでで きるとい う ことと,そ
れ を自覚化で きることのレベルにズ ンが見 られた。 まず, 3-4歳
児お よび5歳
児 の一 部 においては,す
でに見たように命令 された ときにのみメッセ ンジャーの役割 を果たす ことがで き たが,自
分の行動 を言語化 させ ると,「遊 んでいた」とか「見ていた」な どと答 える。 また,自
分が 羊飼 い と大工 の間 を移動 していたことを認 めない ことさえある。次の, 5-6歳
児の段階 は行動 の 面で はメ ッセ ンジャーの役割 をほぼ果たす ことがで きるのだが,言
語化 され ると,「しな くて はな ら ない ことを言 つた」 とか「家畜小屋 を何個作 らない といけないかを言った」 とか ぐらい しか言えな い。最後 に,7-8歳
児の段階では,行
動 した こととそれ を言語化することとのズ ンが小 さ くな り, 「彼女が言った ことを言 う」ために,あ
るい は「 もう一人 の人 に言 うようにと頼 まれた ことを言 う」 ために,移
動 しな くてはならなかったな どと言 えるようになる。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 181
(2)通
訳の概念 (Berthoud_PaOandrOpoulou,1987) ジュネープ在住 の4歳
か ら9歳
の子 ども78人に三つの人形 を用いて質問す る。人形 は,フ
ランス 語 しか話せない女性 の人形(F)と
イタ リア語 しか話せない道化 の人形(I),お
よびフランス語 と イタ リア語の両方 を話す通訳 の人形(T)で
ある。質問 は,「彼(T)は
何がで きるか?」「Tは
F
とIがお互いに理解す るのを手助 けで きるか?」「それ はどのようにしてで きるのか?」 である。 結果 は,ま
ず大 き く二つの段階 に分かれる。 段階1は,異
なる言語 と言語 の間で はコミュニケー ションがで きない とい うことが まだわか らな い段階である。例 :「 (彼らは互いに話す ことも理解す ることもで きる)なぜな ら,彼
らは日と耳 を 持 っているか ら」(4:8)「
なぜな ら二人いるんだ もん」(4,7)。
段階2は ,異
なる言語間で は直接的 コ ミュニケー ションは不可能 と考 える段階 に入 る。すなわち, 通訳 という第二者 の存在 の必要性 に言及するようになるのだが,そ
の場合 に年齢段階 に応 じて五種 類の通訳の役割が現われ る。1)話
し相手:Tは
Fお
よび Iと 個別 に話 を交わ し,Fと
Iの両者 の間 を仲介するとい う考 えは 存在 しない。例:(Tは
FとIが
互いに理解するのを手助 けす ることがで きますか?)「で きません。 もしIが
Fと話す とす ると,互
いに理解で きません。Iが
イタ リア語 を話す ときはTと
話 します。Tは
Fと フランス語 を話 します。」(4;7)「
で きません。なぜな ら,Tが
スイス語 を話す ときFは
理解で きる。Tが
Iにイタ リア語 を話す とき, Iは
理解で きます。」(4,10)
2)教
える人 :一方の言語 を他方に教 える人 とい う役割 を与 える。すなわち,Fか
Iの うちの一 方が他方の言語 を習得すればコ ミュニケーションが可能だ と考 える。例:(Tは
FとIが
互いに理 解す るのを手助 けす ることがで きますか ?)「 で きます。Tは
彼 らに教 えます。Tは
イタ リア語 を話 します。Tは
イタ リア語 を Iに 話 して,イ タ リア語 をFに
教 えます。」(5,8)「
で きます。Tは
教 えるで しょう。(誰に?)二
人の うちの一人 に, ことばを,単
語 を」(5,2)「
で きます。Tは
フラ ンス語 を Iに 教 えて,イ
タ リア語 をFに
教 えます。」(6:5)
3)プ
ロンプター(さ さや く人):Tは
IとFに
対 して会話 に必要な単語や語旬 を教 えるだけで十 分 だ と考 える。 この段階で初 めて翻訳(traducdon=他
の言語 に移 し換 えること)という概念が現わ れる。すなわち,一
つの言語 において述べ られた ものは,他
の言語 の中にも等価 な対応物 を持つ と い う意味 において,一
つの言語 ともう一つの言語 は相互移 し換 えが可能 とい う意味 における翻訳で ある。例 :「Tは
二か国語が話せ るので, IとFに
単語 をささやいてあげる」(6;8)「
Tは
Iが
Fに
言 うことを Iに 教 えてあげる。Tが
言って,Iが
それを繰 り返す。」(7i3)「
Tは
Fに
イタ リ ア語で Iに 対 して どのように言 うのか を教 えてあげる。」(7:9)
4)説
明す る人:Tは
二つの言語間の相互交換 を媒介す るとい う役割 を果 たす。 しか し,こ
の段 階で は,次
の段階 とは異 な り,一
方の人が言った ことあるいは言いたい ことを他方 に説明するとい う水準 に とどまる。例 :「 もしIが
理解 で きなかった ら,Tは
単語 を言 ってあげた り, Iの
代わ り に答 えてあげる。Tは
もう一人 のほうが言いたい ことを言 つてあげる。」(7:8)「
Iが話 して もF
が理解で きなかった ら,Tが
それ を言 ってあげる。Tは
Iが
言 うことをFに
説明 してあげる。」(8:
8)5)通
訳する人 :一方の言語で言 った ことを他方の言語 に置 き換 えるとい う媒介の役割 をす る人 という概念であ り,普
通二般 に理解 されている通訳 の概念である。6歳
児で も見 られ るが, 8-9
歳児 において大勢 を占めるようになる。例 :「Tは
Iが
イタ リア語で言 った ことを聞いていて,そ
れを全部 フランス語でFに
話す。」(8,10)「 Iが Fに
イタ リア語で話 した とき,Tは
それを聞いていてIが言った ことをフランス語で話す。」
(9;3)
2-3
最近のジュネープ学派の研究か らわかること 以上 に紹介 した最近 のジュネープ学派の研究結果か らわか ることを簡潔 にまとめてみよう。まず, 前提 として,前
操作期か ら具体的操作期への移行期 において,社
会(他者 の存在)の介入 によって, 大 きな変化が生 じる とい うことを確認 しておかねばな らない。 その変化 とは,第
一 に言語 に関 しては,こ
とば とモノの間が未分化の状態か ら,こ
とば とモノが 分化 された状態への移行である。 この とき,モ
ノの代わ りに現実 とか言語的行動以外の他の行動, と言い換 えて も同 じことである。 あるいは,こ
とば と動作 とか場面 (言語外 の文脈)の
未分化の状 態か ら,そ
れ らが分化 された状態への転換,す
なわち,言
語学的水準 (意味的平面)に
おける言語 の理解への転換 と言い換 えて も同 じである。 また,自
己の内部 に閉 じられた ことばの水準か ら,他
者 とのコミュニケー シ ョンの手段 (伝達手段)と
しての ことぼへの転換であるとも言える。 これ は 換言すれば,自
己中心性 を脱 して,話
し相手 の役割 を理解 し,相
手 の立場 に立 つ ことがで きるとい う相互性 の獲得で もある。 それ とあい まって,そ
れ まで は言 語の獲得 は身体 の成長 と関連があると 考 えていた段階か ら,言
語 は他者か ら学習 した ものであるとい う理解が現われて くる。 第二 に,コ
ミュニケーシ ョンに関 しては,前
操作期 と具体的操作期 を分 けるものは,自
己の立場 と他者 の立場 を区別 して他者 の代 りに話す ことがで きるか どうか,お
よび,発
話 と発話者の区別が で きるか どうか とい うことである。 そこか ら,通
訳実験 に見 られるように,コ
ミュニケーションの 相互性 を理解 してその媒介者 として機能で きるか どうか とい うことが生 じる。 また,こ
のような言語お よびコ ミュニケーションにお ける大 きな変化が,前
操作期か ら具体的操 作期 にかけての自己中心性か ら社会中心性への変化,す
なわち自他が未分化で 自己に関する意識が 無であるような自閉的状態か ら,社
会の圧力,す
なわち他者 とのコ ミュニケー ションによって引 き 起 こされるところの自己に関す る意識 あるいは操作 についての意識化が獲得 されている状態への変 化が生ずる。 以上 をまとめて言 えば,前
操作期か ら具体的操作期への移行期 を境 目にして,社
会の介入 によ り 自己認識 (自己の自覚),言
語 とコ ミュニケーションの認識 (自覚)に
おいて,共
通 に大 きな変革が 生 じているとい うことである。3
実験I(実
験 者:福
田真 由美) [目的]言
語に関する概念化 (自覚),コ
ミュニケーションに関する概念化 (自覚),自
己概念 (自 己意識),他
者概念の四つの関連を検討する。 [方法]被
験児 は鳥取市およびその周辺の年少児19人 (男10人女9人 , 3歳
Oヵ月∼4歳
7ヵ月, 平均4歳
lヵ月),年
中児28人 (男14人女14人, 4歳
8ヵ月∼5歳
6ヵ月,平
均4歳
12ヵ月),年
長 児41人 (男23人女18人, 5歳
5ヵ月∼6歳
6ヵ月,平
均5歳
12ヵ月),小
学校1年
生34人 (男18人女 16人, 7歳
lヵ月∼7歳
6ヵ 月,平
均7歳
2ヵ 月)の
計122人である。 目的に対応させて次のような7項
目の質問を臨床法により行い,テ
ープに録音する。すなわち, ①動物 (あるいはイヌ)は
話すことがで きるか?
②人間の赤ちゃんは話すことができるか?
③ あなたは話す ことがで きるか?
④あなたは話 し相手の話すことがわかるか?
⑤あなたは話 し相 手に自分の話す ことがわかってもらえるか?
⑥あなたの友だちはどんな子 どもか?
⑦あなたは鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 183
どんな子 どもか?
である。 [結果]7つ
の質問項 目を, 5つ
の視点か ら分析 した。5つの視点 とは, 1)言
語 の特徴, 2)言
語の獲得, 3)コ
ミュニケーシ ョン, 4)他
者像, 5)自
己像である。以下 に各視点 ごとに述べて みよう。1)言
語 の特徴:質問① の「動物 は話す ことがで きるか?」 を分析す ることによって,人
間の言 語 とい うものが どのように概念化 されてい くか とい うことを見てみよう。表5に見 られ るように, 動物が吠 えた り,鳴
いた りす ることと話す ことが未分化 の状態か ら,そ
れ らが分化 され,さ
らに人 間 と動物 は異なるか ら動物 は話せ ないのだ とい う理解 にな り,最
終的には人間 と動物 はことばが異 なるか らお互 いに理解不能 とか,人
間 は動物 の言 うことの意味が理解で きないか ら動物 は話 さない のだ とい う段階 に至 る。 ここで注 目すべ きは,小
1になると,動
物が話せない とい う説明 として人 間 と動物 の間で はコミュニケーシ ョン不能 とい う考 え方が初 めて現われ るとい う点である。 その一 つ下の段階 まで は,「人間だか ら話せ る」「動物 だか ら話せない」 と人間 と動物 を別々に とらえてい たのが,こ
の小1段
階で は人間 と動物 の相互性,す
なわちコミュニケーションとい う観点か らとら えるようになるのに注 目すべ きである。 表5
言語の特徴 に関する反応パ ター ン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢 年少児年中児
年長児 /Jヽ 1 反応 パ ター ン
0
理 由な し,あ
るい は文脈外 の反応I
鳴 く,吠
えるな どと話 すが未分化H
鳴 く,吠
えるな どと話 すが分化m
人 間 と動物 は異 な るので,人
間 は話 せ るが動 物 は話 せない Ⅳ 人間 と動物 はコ ミュニ ケー シ ョンがで きない 13(68) 2(11) 4(21) 0 0 17(61) 2(7) 8(29) 1(4) 0 3(9)25(61) 20(59)
3(7)1(3)
6(15) 5(15)
7(17) 5(15)
計 具体例 を引用すれば,年
少児で は,「ウサギはピョンピョンとお話 しす る」(4,1,女
)か
ら話 せるとか,逆
に「イヌはワンフンしか言 えん」(4:3,女
)か
ら話せない,あ
るいは「動物 は上手 に声が言 えれんけ―(言えないか ら)」(4;1,女
)話
せないな どがある。年中児で は,「ぼ くたち の声 はで きん (どうい うこと?)あ
い うえお とか言 えれん」(5;5,男
)。 年長児 になると,段
階 Ⅲの例 として,「人間 じゃないけ― (ないか ら)」(6:1,男
),「動物だか ら」(6;2,男
),「人 間 とことばが違 う」(5,6,女
),「人間のようなのはで きん」(6;1,男
)と
い うような理由で 動物 は話せないがある。 また段階Ⅳ の例 として,「イヌはワンワン言って,人
間 はわか らんか らよ」(5,■
,女
),「イヌはワンフンは言 うけど,人
間の ことばはわか らない と思 う」(6;0,女
)。 小1の段階Ⅳ の例では,「(動物 と人間 は話 しで きる?)で
きない (どうして?)意
味がわか らん, なに言っ とるかわか らん」(7:4,男
),「(イヌ と人間 はお話で きる?)で
きない (どうしてで き ないの?)こ
とイゴがわか らない」(7,0,男
)。2)言
語の獲得 :質 問② と③ を分析 して,表
6の
ように段階区分を行った。 この表か ら,年
長児 以降になると,そ
れまでは自分の身体的成長 と言語の獲得が関係あると考えられていた段階から, 言語は自分の周囲の他者,と
りわけ両親か ら教 えられた り学習 した りすることによって獲得 した と する者が増加することが注 目点である。すなわち,自
己の内部の問題 として言語獲得 をとらえている段階か ら
,周
囲の大人や友達 とのコ ミュニケー ションの結果 として学習 される という段階への移 行である。 表6
言語の獲得に関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年少児
年中児
年長児
小1 反応パ ターン
0
理 由なし,あ
るいは文LFR外の反応I
成長 と関係 (自己内在的)H
他者か ら学習 8(42) 8(42) 3(16) 10(36) 15(54) 3(11)13(32) 8(24)
17(41) 18(53)
11(27) 8(24)
計 具体例 を見 ると,年
少児で は,段
階Iの例 として「(どうして話せ るようになったの?)3歳
にな つたけ―(なったか ら)」(3,8,男
),「大 き くなったか ら」(4,3,女
),段
階Hの
例 として「お 父 さんに教 えて もらったけ― (もらったか ら)」(4,2,女
),「お母 さんの言 うことをよ く聞いた か ら」(4,0,女
)な
どがある。 年中児で は,段
階Iの例で は,「(どうして話せ るようになったの?)ひ
まわ り (組の名前)に
な つたけ―(なったか ら)(ひ
まわ りになった らどうしてで きるの ?)ち ゅうりっぶ もで きるよ」(4;
9,男
),「お兄 さんになったけ (なったか ら)で
きるようになった」(5,4,男
),「(大きくなっ た らどうして話せ るようになったの?)幼
稚園に行 けるけ―だが」(5,3,男
),「(大きくなった らどうして話せ るようになったの?)学
校 に来 だした らお話で きるもの」(5,1,女
),段
階 ■の 例で は,「だって大 きくなって練習やっ とった もん,お
母 さん と」(5;5,男
)な
どが る。 年長児 の例 で は,段
階Iでは,「大人 になったか ら(大人 になった らどうして話せ るようになった の?)大
人 になったらいろんな字が読 めるようになったか ら」(6;0,男
),段
階Hで
は,「みんな としゃべ るか ら」(5,5,男
),「お母 さんが しゃべ りょうるとき,そ
れを見て しゃべった」(6;
5,男
),「ことばをおぼえたけ―(おぼえたか ら)(ど
うやっておぼえた?)お
母 さんに教 えて もら つたけ―」(6:6,男
)。 小1は,年
長児 とほぼ同 じである。 3)コ ミュニケーション:質問④ と⑤ を分析す ることによって,表
7のように段階区分 を行 った。 段階0は ,コ
ミュニケーションとい う概念が理解で きないか,あ
るいが理 由づ けがないかの どち ら かである。年少児 はすべて ここに分類 される。段階Iは,コ
ミュニケーションとい うことを,自
分 の欲求 を聞 き入れて くれるか否か とか,親
か らお こられ ることとか,親
か ら命令 され ることと混同 している段階である。た とえば,年
中児 の例で は,「(お母 さんは真 由美ちゃんの言 うことどうして わか らないって言 うの?)あ
のね,お
母 さんが もって きてって言ってね,こ
れ捨 てて きてって言 っ てね,だ
か らわか らない」(5,3,女
)。 年長児の例で は,「(雄一 くんの言 うことをお母 さんや先 生 はどんな ときにわかって くれない?)プ
ールやあに行 くとき」(6;2,男
),「(わか って くれな い ときはどんな とき?)お
こった とき」(6,1,女
),「(どんな ときにわかって もらえない?)ヤ
ゝ じわるす るとき(どっちが?)マ
マが (どうしてかな?)だ
ってね,あ
れ して これ してって」(5:
8,女
)。 河ヽ1で
は,「(どんな ときわかって くれない?)お
こっ とるとき(だれが?)お
母 さんやお 姉 さん」(6;10,男
)。 段階Hと
Ⅲ は,コ
ミュニケー ションとい う概念 はとらえることがで きはじめるのだが,段
階Hは
物理的水準 (たとえば話 し相手 との距離が遠 い とか,早
口で話す とかの理由によって コ ミュニケー鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 表7
コ ミュニケーシ ョンに関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年少児 年中児
年長児
小1 反応パター ン
0
コミュニケーションという概念が理解不能, あるい は理 由なしおよび文脈外の反応I
コミュニケーションと他の概念を混同H
物理的理 由によるコミュニケーシ ョン不能 Ⅲ 言語学的理由によるコミュニケーション不能 19(llXl) 25(89)0 2(7)
0 1(4)
0 029(71) 19(56)
7(17) 4(12)
2(5) 5(15)
3(7) 6(18)
計 ション不能 とす るものである),段
階Ⅲ は言語学的水準(たとえば意味がわか らない とか,単
語 を知 らない とい うような理 由で コ ミュニケーション不能 とす るもの)に
おいてコ ミュニケーションを と らえているとい う違いがある。 段階■の例 は,年
中児で は,「 (先生やお母 さんはりょう子ちゃんの言 うことわかって くれ る?) わかって くれん (どうして?)聞
こえん とわかんない」(5,2,女
),年
長児で は「(わか らないの はどうい うとき?)聞
こえに くいの」(5,8,男
),小
1で
は「(先生の話 され るときどんな ときが わか らない?)金
曜 日(金曜 日になにがあるの?)6校
時だけ―(だか ら)(6校
時だ とどうして?) 長いけ疲れる」(7:4,男
),「(先生やお母 さんの言われ ることわか る?)わ
か らん(どうして?) だってな遠 いか ら (近くにいる ときは?)聞
こえる」(7:0,男
),「(一郎君の言 うことは先生や お母 さんにわかって もらえる?)わ
かって もらえません,お
母 さんには。 なに言っ とるかわか らん って。(どうしてかな?)早
口で言 うか ら」(7;5,男
),「(お母 さんの言われ ることよ くわか る?) あまりわか らない (どうして?
どんな ときわか らないの?)早
回の とき」(6,11,女
)。 段階Ⅲの例で は,年
長児で は「(先生やお母 さんの言われ ることよ くわか る?)あ
んまりわか らん (どうして?
どんな とき?)難
し く言 うとき」(6;2,男
),だ ヽ1の例 で は「(どんな ときわか ら ないの?)ま
ちが えるとき」(7;3,女
),「(先生やお母 さんに恵子ちゃんの言 うことわかつて も らえる?)わ
か って もらえない ときもあるけど (どんな とき?)も
し意味が反対 になった ときやち が うときや」(6;9,女
)。4)他
者像 :質問⑥ の結果 を,表
8のように7段
階 に区分 した。次の表 9と 同様 に,一
人 の被験 児の答 えが二つ以上の段階 に分類 されている場合がい くつかあるので,合
計人数が被験児 の合計人 数 よ りも多い年齢 もある。全般的な傾向 として,段
階I(氏
名),段
階H(居
住地域,所
属 クラス) のような個人 その ものの現在の行動特性 には関わ りな く貼 り付 けられているラベルに類す るものか ら,段
階Ⅲ (行動),段
階IV(身
体的イメージ,月艮装)の
ような現在 の個人 の行動特徴や外的イメー ジに関す るものへ,さ
らに段階V(′L4g.),段階Ⅵ (能力)の
ような個人 の内面的特徴 とか他人 と比 較 しての個人 の特性 な どに関す るものへ と変化 していつていることがわか る。 とりわけ,段
階V,
段階Ⅵ は小1で
の増加が顕著である。 段階Iの例 :「(仲良 しの友達 お しえて?)た
あ くん (たあ くんって どんな子?)の
だたつの りく ん」(4:0,男
)。 段階Hの
例 :「(のだのたあ くんって どんな子?)若
桜 (地名)の
子」(4:4,男
),「(たあ くん って どんな子?)え
つとな,た
あ くんは遠 い,あ
そこ,と
もちゃんね (と もちゃんの家)を
まが っ てでない と行 けん」(4,2,男
),「(り えこちゃんって どんな子?)海
の組」(3;10,女
)。表
8
他者像に関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年少児
年中児
年長児 句打 反応パ ター ン
0
無反応,そ
の他I
氏名H
居住地 あ るい はクラス名 Ⅲ 行 動特性 Ⅳ 身体 的特徴 あ るい は服装V
性格 Ⅵ 能力 3(14) 4(18) 5(23) 5(23) 4(18) 1( 5) 0 8(25) 2(6) 4(13) 8(25) 10(31) 0 011(24) 4(11)
3(7) 0
8(17) 1(3)
8(17) 2(6)
12(26) 7(19)
2(4) 13(30
2(4) 9(25)
百+ 22 32 46 36 (注)複
数回答 も含むので合計人数が被験児数 よりも多 くなっている 段階Ⅲの例 :「(ゆたか くんはどんな子?)男
の子でな,泣
かす人 (よ しかちゃんはどんな子?) えっ とな,よ
したげるとか,よ
したげん とか言 う人,お
もちゃ とった ら怒 る」(4,1,女
),「(あ きちゃんはどんな子?)あ
のな,ち
よちゃん と一緒 に遊ぶ (り ょうこちゃんは?)り
ょうこちゃん は私 げ (私の家)に
来た り,私
が りょうこちゃんげに行 った り」(5i3,女
),「(たくゆき くん は どんな子?)な
んかなあ,ぼ
くに首 しめた りやった (じゅんいち くんはどんな子?)意
地悪 した人 に注意 して くれ る」(4:9,男
),「(あきら くん はどんな子?)幼
稚園で まだ一回 も泣いた ことが ないしなあ,け
んか も強い」(6;2,男
)。 段階IVの例 :「(はなえちゃんはどんな子?)髪
が こんなん」(4, 3,女
),「(みきこちゃんはど んな子?)女
の子で,み
きちゃんち ょっと髪が短 いけどち ょんまげで きる人でな,そ
れか らち ょっ とかわいい服着 とって,色
の白い人」(5;2,女
),「 (れい こちゃんはどんな子?)髪
が長い (そ れか ら?)顔
がかわいい」(5,3,女
),「(田口 くんはどんな子?)背
が大 きい人 (それか ら?) これ くらい,立
った らこれ くらい」(6:5,男
),「(さ とこちゃんはどんな子?)メ
ガネね,か
け てたけどね,ず
っ と前やめちゃった」(6:0,女
)。 段階Vの
例 :「(まゆみちゃんはどんな子?)や
さしい子」(4;7,女
),「(ちなつちゃんはどん な子?)や
さしそうな子」(6,2,女
)。 段階Ⅵの例 :「(ゆみちゃんはどんな子?)あ
のね,な
わ とびで もね,二
重 とびで もね,す
ぐで き る」(6,3,女
),さ
らに小1になると,「体育で走 るとないつ も一番 になる」(7:4,男
),「か ず くんは勉強ち ょっ とす る,ま
あ くんはす ご く頭がいい」(7:0,男
),「悪い子(どんな ところが 悪いの?)勉
強」(7,3,男
)な
どに見 られ るように,他
人 と比較 して勉強や運動がで きるとかで きない とかの能力 の評価が現われて くる。5)自
己像 :質問⑦ に基づいて段階区分 を行 った ものが表9で
ある。他者像 に比べて段階0の人 数が多いけれ ども,全
般的な傾向 は他者像 の発達 に類似 している。具体例 は,他
者像 の場合 と同 じ なので省略す る。 [考察]結
果 をながめると,年
長児 と小1の間で大 きく変化 していることがわか る。むしろ,ピ
ア ジェの ことばを用いれば前操作期 と具体的操作期の間で大 きく変化 していると言ったほうが妥当で あろう。 それ は,知
能操作 における相対性 とか相互性 の形成 であ り,社
会 との関連では他者 の視点 の介入あるい はコ ミュニケー ション的視点の導入である。逆 に,そ
れ は他者像 および自己像 の側面鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
1号
(1994) 187
表9
自己像に関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年少児
年 中児
年長児 /j、1 反応パター ン
0
無反応,そ
の他I
氏名 II 居住地 あるいはクラス名 Ⅲ 行動特性 Ⅳ 身体的特徴あるいはE艮装V
性格 Ⅵ 台Z力25(57) 11(31)
1(2) 0
2(5) 0
6(14) 2(6)
5(11) 3(9)
4(9) 15(43)
1(2) 4(11)
11(58) 3(16) 2(11) 1( 5) 1( 5) 1( 5) 0 15(54) 4(14) 2(7) 3(11) 2(7) 1( 4) 1( 4) 言+ 19 28 44 35 (注)複
数回答 も含むので合計人数が被験児数 よ りも多 くなっている で は性格 とか能力 な どの記述 の増カロになってい る。 これ らの点 は,初
期 ピア ジ ェの諸研 究 か らは当然 の こ ととして予測 され る こ とで はあ るが,前
操 作期 の 自己 中心性 とい うのが 自他 の未分化 の ことで あ り,他
者 (社会)の
介入 を経 て 自己が他者 か ら分化 され 自我 が成立 してい き,自
己 内面 の形成 が行 われてい く様 子が よ く現 われ てい るように思 われ る。4
実 験2(実
験 者:小
林 美 穂) [目的]実
験1で
,前
操作期 か ら具体的操作期への移行期 にお ける変化 に注 目す ると,自
己像,他
者像 と言語およびコ ミュニケー シ ョンの間 に関連があることがわかったが,実
験2で
はそれ をさら に確かめることにする。 そのために,自
己像,他
者像 に加 えて,パ
パ ン ドロップルーの行 った人形 を用いた通訳実験お よび会話 の再構成実験 を課す ことによって,そ
れ らの間の関連 を検討す ること にす る。 [方法]被
験児 は,鳥
取市内お よびその周辺の年中児13人 (男6人
女7人 , 4歳
7ヵ 月∼5歳
6ヵ 月,平
均5歳
Oヵ月),年
長児11人 (男4人
女7人 , 5歳
10ヵ月∼6歳
6ヵ 月,平
均6歳
2ヵ月), 小学校1年
生11人(男5人
女6人 , 6歳
8ヵ月∼7歳
3ヵ月,平
均7歳
lヵ 月),小
学校2年
生12人 (男7人
女5人, 7歳
8ヵ 月∼8歳
7ヵ 月,平
均8歳
3ヵ 月),小
学校3年
生12人 (男5人
女7人
,8歳
8ヵ 月∼9歳
6ヵ月,平
均9歳
2ヵ月)の
計59人である。 臨床法 によって,①
他者像,②
自己像 を調べ,次
にパパ ン ドロップルー にな らって以下の二つの 実験 を行 う。 まず通訳 の役割 をどう理解 してい るか を,日本語 しか話せない人形Aと
英語 しか話せない人形B,
日本語 も英語 も話せ る人形Cの
三つの人形 を用いて調べ る。具体的には,「この人 (人形C)は
何が で きますか?」,「この人 (人形C)は
,こ
の人 (人形A)と
この人 (人形B)が
お話 しす るのを助 けてあげることがで きますか?」 とい う質問をする。 次 に会話 の再構成 の問題 は,場
面 を3つ設定す る。 場面1は,人
形Aと
人形Bが
話 しをしていて,Bが
Aに
近づいて きて新間 を手渡す。すなわち,Aと
Bの
接触がある。次のような英語の対話 を与 える。A:I、
vant tO read a ne、vspaper. B:Here it is.場 面
2は
,人
形Aは
ソフ ァー に座 って新 聞 を読 んでいて,人
形Bは
ほ うきを持 って掃除 を してい る。す なわ ち,Aと
Bの
間 に は接触 が ない状 態で対話 が交わ され る。次 の ような英語 の対 話 を与 え る。A:I'd like to take a trip this year. B I Where do you、 vant to go?
場 面
3は
,人
形Aと
人 形Bが
ソフ ァー に座 って花 の絵 を見 なが ら話 しを して い る。 A :It's very beautiful,isn't it PB:I think sO.
[結果
]他
者 像 (表10)と 自己像 (表11)は
,実
験1と同様 の段 階 区分 を した もので あ る。性格 お よび能力 に言及す る者 の割合 は,他
者像 で は小1か
ら,自
己像 で は小2か
ら増加 してい る こ とがわ か る。 表10
他者像に関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年中児
年長児
小
1
小2 /Jヽ3 反応パターン0
無反応,そ
の他I
氏名H
居住地あるいはクラス名 Ⅲ 行動特性 Ⅳ 身体的特徴あるいは月艮装V
性格 Ⅵ 能力 1(5) 1(5) 3(16) 5(26) 7(37) 1(5) 1(5) 1( 8) 0 1( 8) 5(38) 5(38) 1( 8) 0 1(6) 0 1( 6) 3(19) 5(31) 4(25) 2(13)0 1(7)
0 0 1( 6) 0 6(33) 2(14) 3(17) 3(21) 3(17) 6(43) 5(28) 2(14) 表11
自己像に関する反応パターン別の人数分布 (カッコ内はパーセン ト) 年齢年中児
年長児
小1 /Jヽ2 /」ヽ3 反応パ ター ン
0
無反応,そ
の他I
氏名H
居住地 あるい はクラス名 Ⅲ 行動特性 Ⅳ 身体 的特徴 あ るい は服 装V
齢 Ⅵ 能力 5(38) 0 2(15) 3(23) 1( 8) 2(15) 0 4(36) 0 0 3(27) 2(18) 1(9) 1( 9) 6(55) 0 0 3(27) 1( 9) 0 1(9)5(38) 6(50)
0 0 0 0 4(31) 0 1( 8) 2(17) 0 3(25) 3(23) 1( 8) 次 に通訳実験 の結果であるが,表
12にあるように四段階に分かれ る。教 える人 とい うのは,媒
介 者 としての通訳 ということで はな く,一
方あるいは両方の人 にその人 の知 らない外国語 を教 えてや れば,後
は二人 の人同士で会話がで きると考 える場合である。相互性なしの通訳 というのは,こ
と鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第