ストックボイス
『バロンズ拾い読み』2017 年 5 月 8 日号
2017 年 5 月 9 日(火)午後 10 時 13 分ごろから(スタジオ/電話)
エグゼトラスト株式会社
『バロンズ拾い読み』編集人
川田重信
原稿要旨
注目ポイント *トランプ相場終了?ただし年初来の株価パフォーマンスは全体的に良好。 *4 月は年間で最も良好なパフォーマンスが期待できる時期、今年も結果的にそうなったが 5 月以降 は例年相場がダレる、今年はどうか? *トランプの政策もそれほど極端なものは期待できない、すなわ ち通常の相場環境が期待できる=企業業績と金利水準でぬるま湯 (ゴルディロックス)相場? *世界経済の回復基調を背景に米国のグローバル企業への資金流 入が続く? 『バロンズ拾い読み』5 月 8 日号4. The Trader 材料には反応薄だったものの史上最高値更
*小型株のラッセル2000 指数は 0.3%安の 1397.00。 *これほどS&P500 指数が動かない日が続いたのは過去に 4 回だけ。→不安?実際は上昇に向かうのが 一般的。 実際、7 日以上あった1カ月後の株式市場は、平均で 2.1%の値上がり。 *金曜日になって初めて市場が反応。 議会が連邦政府の閉鎖を回避するために予算案で合意 トランプ大統領が米国には「良い政府閉鎖が必要だ」とツイート *米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が市場の予想よりもタカ派的だと見られた。 8 日月曜日時点 相場の特徴 先週まで主要指数は 3 週続伸。 ナスダック総合は 4 月 25 日(火)に 6000 ポイント突破後、 以後もその水準を割らずに 6100 ポイントまで上伸。 四月月間 年初来で主要指数はナスダック総合が 13.37%とすごいパフォーマンス。もっといいのはナスダック 100 で 16.3%もアップ。少数の時価総額上位銘柄の寄与度が凄い ボラティリティ(変動率)が極端に少ないのも今回の相場の特徴 5 月 8 日終了時点
年初来:S&P500 指数の 11 業種のセクター別パフォーマンスではハイテクセクターがトップ(+ 16.47%)。2 番目が一般消費財・サービスで 3 番目がヘルスケアで共に 10%強。4 番目に素材セク ターが浮上。生活必要品は5 番目に。最下のエネルギーと電話・通信サービスはいずれも年初来の 下落率は2 桁台。 『バロンズ拾い読み』 5 月 8 日号 4 番 【米国株式市場】 ■ 個別セクターの動き *原油価格が6.3%下落して 1 バレル当たり 46.22 ドルに下落したことを受けて、エネルギーセクターは 大幅(0.7%安)ただし8 日月曜日は+1.62%で急反発。 *電気通信セクターは、合併を計画しているセンチュリーリンク(CTL)とレベル・スリー・コミュニケ ーションズ(LVLT)が利益の大幅な落ち込みを発表してそれぞれ株価が 8.1%と 5.1%安になったことな どから、セクターとしても 1.2%安となった。しかし、こうした下げも、金利上昇の恩恵を受ける銀行株 の上昇を背景とした金融株の 1.2%高や、さえない決算発表にもかかわらず 1.4%上昇したハイテク株に よって、全体に大きな影響は与えなかった。8 日月曜日+1.45% *木曜日にオバマケアの見直し法案が下院で可決。ヘルスケア株全体では0.6%上昇。 法案通過で支払い能力のない患者を診療しなければならなくなる病院運営企業銘柄も上昇。 →投資家が法案の結末よりも、コミュニティ・ヘルス・システム(CYH)やテネット・ヘルスケア(THC) が、保有している病院の再編に関して買い手を見つけたことに注目したから。 =ヘルスケア法案は下院を通過したが、賛否の差がわずかに4 票であり、上院を通過しても法案の内容に 大幅な修正が加わる可能性が高いからだ。
ダウ銘柄のパフォーマンス:
年初来の値上がり上位:アップルのトップ(年初来+32%)は変わらず、時価総額が 8000 億ドル
https://eresearch.fidelity.com/eresearch/markets_sectors/sectors/si_performance.jhtml?tab=siper formance
決算発表
1Q 決算発表関連
*第一四半期の決算は現時点で前年同期比+14.7%(前週時点では+XX%) 。エネルギーを除けば+ 10.5%(同+XXX%)。 *現時点でS&P500 指数構成銘柄中 412 社が発表済み。ちなみに今週は 42 社が発表予定。75.2% がアナリスト予想を上回る。長期平均の64%、過去の 4 四半期は 71%を上回る。 *今後4四半期の予想利益で計測(2Q17 – 1Q18) P/E は 17.7 倍。 *ただし2Q のガイダンスは若干保守的になっている 先週の決算発表 *アップル」2日に公表の1─3月期決算は、売上高が2四半期連続で増加。「iPhone(ア イフォーン)7プラス」などのスマートフォンがけん引する。通常慎重な予想を示す4─6月期の 見通しにも注目。自社株買いの拡大や増配予想。 *フェイスブック:3日に第1・四半期決算を公表。売上高が大幅増。過去数四半期にわたってモ バイル広告の伸びが業績を押し上げ。 *マスターカード、ファイザー、バークシャー・ハザウェイ、タイム・ワーナー、テスラ、スプリ ント等。5 月相場入りと「セル・イン・メイ」
過去を振り返ると3 月、4 月のパフォーマンスが良好。例えばダウは過去 20 年では平均 2.64%
上昇し、その上昇確率は80%と 12 か月では上昇率も上昇確率も 1 年で 1 番高い。
5 月相場がスタート。5 月と 6 月は過去 100 年、50 年、20 年のどの時間軸でもパフォーマンスは
5 月から 10 月は本当に「どこかに行け」が正しい? 株価パフォーマンス:11 月~翌年 4 月>5 月~10 月 これまでの記録を見る限り正しい!! た だし資産運用の観点で言えば、夏場も持ち続けるのが正しい? 結果的に上がらないかもしれな いが、それほど下がっているわけでもない!100 ドルの投資で比較すると 1928 年から(約 90 年):4270 ドル:257 ドル 過去50 年:2136 ドル:139 ドル 過去20 年:343 ドル:98.5 ドル(IT バブル、金融危機での下落は夏場がきつかった!)
近年、VIX 指数は基本的に 13 から 19 の間で推移、=米国債市場や為替市場のボラティリティとも一致。 この1 年間で 20 を超えたのは、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票と 米大統領選挙の前後だけ。
10. Preview 今週の予定
【経済関連スケジュール】
VIX 指数が株式市場に警告
1979 年 8 月 13 日号=ニューズウイーク「株式の死」は究極の逆張り指標!=実際に株式の上昇基調は 3VIX 指数は 1993 年に公表開始、S&P500 指数のオプション取引を基に算出される。 *5 月 1 日、VIX 指数は 10.11 で 2007 年 2 月以来。先週は 10 を割り込み、長期平均の 19.6 の半分以 下。実際にその前にここまで低水準になったのは2007 年 2 月。その後 1 年未満で株価は急落した。 *VIX 指数が過去に低水準を付けた後の S&P500 指数のリターンは、1~3 カ月の期間でみるとプラス。 しかし1 年間で見ると、平均値と中央値のどちらもリターンはマイナス。 *2007 年の例では、年間リターンはマイナス 7.33%で、VIX 指数の終値が 5 月 1 日の水準を下回った 全14 例の中で最低だった。14 例の年間リターンの平均はマイナス 1.38%で、S&P500 指数の 1990 年 以降の年率リターンである7%を大きく下回った。 下記の記事の要点:恐怖指数が相場の先行きの指標となるか?ならない!!
ナスダック総合
6000 ポイントの大台(4 月 25 日に 6025 ポイント)
――WSJ の人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 *ハイテク各社が27 日引け後に相次いで決算発表 アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、インテル、そしてグーグルの親会社アルファベットが 1-3 月期決算を発表した。4 社の合計売上高は約 974 億ドルで、S&P500 種指数構成企業の予想累 計売上高の約4%に相当。 *4 社の合計時価総額は S&P500 構成企業の総額の約 8%。これに来週決算発表を予定しているア ップルと フェイスブック を加えた 6 社で S&P500 の時価総額の約 13%。 *10 年前:当時、アップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、インテルが S&P500 構成企 業の時価総額に占める割合は5%、フェイスブックはまだ上場していなかった。わずか約1%。→成長余地が大きい。
プルは単独でS&P500 指数のリターンの 10 分の 1 以上に貢献。
Facebook Inc. Cl A (FB) Amazon.com Inc. (AMZN) Netflix Inc. (NFLX)
『バロンズ拾い読み』5 月 1 日 ハイテクの寄与度が突出
7. UP AND DOWN WALL STREET 今年の米株式市場の主役は FAANG 銘柄 【コラム】
アクティブ運用マネジャーたちがハイテク勝ち組に集中投資、バブルの形成を招く恐れも
■ 5 銘柄の不釣り合いな貢献 FAANG 銘柄――フェイスブック(FB)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、米動画配信大手ネットフ リックス(NFLX)、グーグルの親会社であるアルファベット(GOOG、GOOGL)の 4 銘柄にアップル (AAPL)を加えた 5 銘柄 先週、ナスダック総合指数が終値ベースで初めて6000 を突破。この 5 銘柄が S&P500 指数の今年の上 昇分に占める割合は不釣り合いに大きい。 好調な第1 四半期決算を受けてアマゾン株とアルファベット株は先週の終わりに急騰。それ以前でさえ、 2017 年の米株式市場の上昇に対する FAANG 銘柄の貢献度の高い。S&P500 指数の時価総額には年初か ら4 月 24 日までに 1.19 兆ドル(131 兆円)が上乗せされた。そのうちの FAANG 銘柄の増加分は 3920 億ドル(=43 兆円、32%)で、アップルの増加分だけで 1400 億ドル(15 兆円)。 *S&P500 指数の年初来トータルリターンは 6.72%、FAANG 銘柄はそのうちの 3 分の 1 近い 2.2%に貢 献。時価総額で最大のアップルは単独でS&P500 指数のリターンの 10 分の 1 以上に貢献。 ナスダック総合 年初来+12.3% https://screener.fidelity.com/ftgw/etf/goto/snapshot/snapshot.jhtml?symbols=ONEQアルファベット(GOOGL)などは連日のように史上最高値を更新している。 ハイテク株からは成長と利益という魅惑的な香りが漂っている。10 周年を記念した新型 iPhone(アイ フォーン)や他社の新型スマートフォンへの期待から、半導体メーカーや半導体製造装置メーカーも大 幅な増益が見込まれる。 しかし、ハイテク株の上昇は投資家の不安感の表れでもあり、最近の不安要素は経済成長の行方である。 4 月の自動車販売台数は前年割れとなり、クレジットカード会社では貸倒償却率が上昇しており、第 1 四半期の個人消費の伸びは 2009 年以来の低水準となった。ビスポーク・インベストメント・グループ の調査によると、直近 50 日間に発表された経済指標で市場予想を上回った件数が減少傾向にあり、高 まる期待に実体経済が応えられていないことを示唆している。投資家が不安感にかられた時、大手ハイ テク株が安心な投資先として好まれる。
Apple Inc. (AAPL) Facebook Inc. Cl A (FB) Amazon.com Inc. (AMZN)
Netflix Inc. (NFLX) Alphabet Inc. Cl A (GOOGL) Wal-Mart Stores Inc. (WMT)
チャートは3 年
By KOPIN TAN (Source: Dow Jones) 5 月 8 日号
7. Tech Stocks: Winners and Losers in a Dangerous Season 四半期決算【ハイテク】
モメンタムが株価を支配する危険な決算発表シーズンの勝者と敗者
ハイテク銘柄の株価は乱高下した。 =いわゆるモメンタムで株が買われた。 *例えばアップル(AAPL)が 2 日(火)午後に発表した 1-3 月期決算では売上高が市場予想を下回っ た。予想未達となった過去3 回の決算では株価が平均 5%下落したのに対し、今回は発表当日の値下が りは約2%。 翌日にはほぼ決算発表前の水準に値を戻し、先週末は148.96 ドルの最高値で引けた。 これはウォール街が、今秋に予想される次期iPhone(アイフォーン)の発売に向けたモメンタム株とし てアップルを買っており、目下の事業にはあまり関心がないことを示している。 *業績とは無関係に投資テーマで株を買うという同様なセンチメント。 リストバンド型活動量計メーカー大手のフィットビット(FIT)の決算は過去 2 四半期連続で市場予想 を下回ったが、今回は売上高が市場予想を7%上回り、翌日の株価は約 13%上昇。同社の株は空売り比 率が比較的高く、良いニュースがあると空売り派がショートカバーの買い戻しを行うため、それが株価 上昇の原因。 フィットビットをさらに特徴付けているのは投資テーマだ。決算発表の翌日、株価が上昇する中で一部 のアナリストは業績を気に懸けていないと述べた。確かに、2017 年の売上高が 25%減と予想されるな ど、事業は依然として精彩を欠いている。アナリストが注目しているのは、同社がスマートウオッチの 発売を計画していることだ。発売時期は今年下半期と予想され、発売によって同社はアップルのより直 接的な競争相手となる。アップルへの果敢な挑戦者であることは、もう一つの魅力的な投資テーマと言 えそうだ。 ■ 主要な投資テーマはクラウドと次期iPhone 投資テーマが企業の株価の命運を分けることがある。その好例が光ファイバー部品メーカーだ。先週の 決算発表では、この分野の企業が中国の光ファイバー支出の減速によって引き続き苦戦していることが 示された。ツーシックス(IIVI)、インファイ(IPHI)の株価は、期待外れとなった決算発表の直後に それぞれ 16%、11%下落した。一方、オクラロ(OCLR)も決算発表の直後に株価は 10%下落したも のの、翌日には値下がり分を全て取り戻した。 奇妙なことに、業績がわずかに予想を上回っただけなのに株価が上昇した光ファイバー部品メーカーも ある。先週にかけて空売り残高が大きく積み上がっていたアプライド・オプトエレクトロニクス(AAOI) の株価は、今四半期のガイダンスが予想を上回ったことを受け、20%高と急騰した。 こうした株価上昇の大部分は、オプトエレクトロニクスそのものではなく、アマゾン・ドット・コム
ようだ。アップルへの潜在的なサプライヤーも魅力的な投資テーマである。 ディスプレー材料メーカーであるユニバーサル・ディスプレー(OLED)の株価は、5 日の決算発表で 通期の業績見通しを上方修正したことを受け、24%上昇した。ウォール街では、サムスン電子(005930. 韓国)が次期iPhone 向けのディスプレーにユニバーサルの材料を採用すると予想している。 ■ 誰もが信じている投資テーマを選ぶことが重要 とはいえ、投資テーマは誰もが信じているものでないと裏目に出ることになる。例えばマイクロプロセ ッサー・メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)。本誌は一貫して同社を強気に見てき た。同社はインテル(INTC)から市場シェアを取り戻そうとしており、その努力は軌道に乗ったかに 見える。だが、4-6 月期のガイダンスで粗利益率が前四半期比 1%ポイント低下するとの見通しが示され た結果、株価はその翌日24%下落した。懐疑的な見方は もっともだが、株価の急落は行き過ぎである。新製品の 中で既に市場に投入されているのは一部にすぎず、それ も投入からまだ数カ月しか経っていない。 来週は、写真共有アプリのスナップチャットを運営する スナップ(SNAP)が上場後初めての四半期決算を 10 日 に発表する。何らかの形でユーザー数の成長を示すこと ができれば、投資家は大きな安堵(あんど)の息をつく かもしれない。
Apple Inc. (AAPL) Fitbit Inc. (FIT) II-VI Inc. (IIVI)
Lumentum Holdings Inc. (LITE) Universal Display Corp. (OLED) Samsung Electronics Co. Ltd. (KR:005930)
Advanced Micro Devices Inc. (AMD) Intel Corp. (INTC) Snap Inc. (SNAP)
チャートは3 年(FIT, LITE は 2 年、SNAP は 3 カ月)
By TIERNAN RAY (Source: Dow Jones) 『バロンズ拾い読み』5 月 8 日号
2. Amazon’s Profits Are Soaring 利益が急増中
【アマゾン】
株価に悪影響を及ぼしかねない理由
■ 上場以来約20 年の成長
アマゾン・ドット・コム(AMZN)は 1997 年 5 月 15 日に新規株式公開し、それ以 降株価は2 ドルから 934 ドルに上昇し(株式分割調整後)、現在の時価総額は約 4500
ているが、過去の例に鑑み、今後の売上高の加速につながると見込む投資家は、支出増は良い兆候とみ なし、株価は上昇するとみている。数値よりは、無限の可能性や市場での圧倒的地位といった言葉の方 が興奮を誘う。次にアマゾンの株価下落を誘うのは、予想未達よりも利益が分かりやすくなってしまっ た時だろう。 ■ 豊かな事業構成 20 年前なら、アマゾンはオンライン書籍販売の会社で、音楽やビデオの販売も視野に入れている程度の 説明で済んだ。株主への最初の手紙では、オンライン販売のシステムやインフラへの投資は不可欠だと 述べられていた。今日のアマゾンは、依然として増収率が20%を超える小売店で、若くて裕福な層を多 く含む 8000 万人ものプライム会員を擁する買物クラブでもある。クラウドサービスもある。また、エ ンターテイメント会社でもあり、今年のアマゾンのコンテンツへの投資額は、エンターテインメントが 主要事業である三大ネットワークの一つNBC やケーブルテレビ会社の HBO を上回ると予想される。デ ジタル端末のキンドルリーダー、ネット動画をテレビで視聴できるファイアテレビスティック、音声ア シスタントのエコーなどの機器も製造する。最近はオンライン広告にも参入した。検索の魅力的な部分 である商品検索の3 分の 2 はアマゾンで開始される。 アマゾンはバークシャー・ハサウェイ(BRK.A)に似ている点もある。バークシャーは保険加入者の保 険料を受け取り、保険金を支払うまでの間にその資金を運用している。アマゾンは納入業者への支払い よりも顧客からの代金回収の方が早く、その時差の間無料でキャッシュを利用できる。 先月、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は株主への手紙の最新版で、人工知能(AI)や機械学習 を含めた投資を引き続き重視すると述べた。その投資で、商品選択を改善し、エコーの声をもっと人間 に近付けることができる。また、AI の技術はクラウドの顧客に販売することもできる。このように発明 は2 倍活用されるため、投資回収の見通しが高まる。クラウドサービスは、自らのビデオ配信事業にも 活用でき、一方ライバルの動画配信会社、ネットフリックス(NFLX)はサービス料金をアマゾンに支 払う側になっている。失敗の見切りまでの迅速さもリスクをさらに引き下げている。2014 年夏に発売し たファイアフォンはわずか1 年で中止された。 ■ 研究開発への豊かな投資が成 長を生む 昨年の設備投資は前年比 47%増の 67 億ドルで、今年も増加する見通 しだ。今年の利益は約40%増の 33 億ドルに達すると予想されている。 しかし、昨年秋の投資家の利益予想 は53 億ドルだった。それでも、投 資家は懸念していない。「アマゾン
述べている。 ニューヨーク大学のバルーク・レブ会計学教授は、株式のリターンと利益の上振れサプライズや増益と の関連性が長期的に弱くなってきていると著書で示しており、研究開発などへの投資がその後の成長の 原動力となることが従来型の会計方法では捉えきれていないと述べている。投資家は、報告書などに掲 載されていないヒントを探している。その一つとしてレブ教授は、アマゾンの特許は、数こそアルファ ベットより少ないが、他社の特許申請に引用される回数は上回るため、価値が高いことが分かると述べ ている。 同じくニューヨーク大学のスコット・ギャロウェイ教授は、アマゾンは利益ではなく成長とビジョンで 投資家にアピールし、企業と投資家の関係を変えたとし、「損失は新しい黒字」と述べている。 アマゾンは、小売店の閉鎖や破産に示されるように小売業を解体しているだけでなく、一流ブランドに も長期的な脅威となっている。ブランドは、高価格を高品質のラベル代わりとし、広告で高品質の認識 を強化してきたが、アマゾンは革新的なカスタマーレビューで品質に対する指標を出すことができ、従 来のブランドの価値が弱まってきている。 皮肉なことに、アマゾンは投資家に利益は重要でないと納得させておきながら、今や利益が急増する気 配がある。5 年以内にフリーキャッシュフローは年間 360 億ドルに達すると予想されており、現在の時 価総額は2021 年予想フリーキャッシュフローの 13 倍で、割安に見える。しかし、一度フリーキャッシ ュフローが豊かになると、投資家は見返りを要求し、翌年の増益率などの面倒な質問をし始める。アマ ゾンがこのような移行期をどう乗り切るかは不透明だが、株価は今後もまだ若い企業としての上昇が見 込まれる。 ■ 小売業を「アマゾンする」とは? 「アマゾンする」は、今や動詞として、「他を圧倒する、絶滅させる」という定義がオンライン辞書のウ ィクショナリーに書かれている。絶滅させられた例として、書籍店チェーンのボーダーズ、家電量販店 のサーキット・シティーなどがある。市場統計調査会社ビスポーク・インベストメント・グループは、 アマゾンに押される小売店を組み込んだ「アマゾン被害者指数」を提供している。しかし、被害者とな りそうな企業が恩恵を受けることもある。被害者指数に組み込まれているスポーツ用品販売のディック ス・スポーティング・グッズ(DKS)の昨年の既存店増収率は素晴らしかったが、競合他社の破たんが 関連していると考えられている。 服飾品の購入もアマゾンを利用する回数が増え、デパートや量販店が犠牲になっている。しかし、衣服 販売のTJX(TJX)、ロス・ストアーズ(ROST)、 バーリントン・ストアーズ(BURL)の 3 社 の株価は過去3 年間で S&P500 指数をアウト
しかし、安売り店も慢心してはいられない。アマゾンは衣料品のプライベート・ブランドも手掛けてお り、少なくとも8 ブランドを有する他、オンデマンドの衣服製造システムの特許を確保したところだ。 バフェット氏「失敗した」 アマゾン投資機会逃し後悔 86 歳、今年も質疑応答6時間 2017/5/7 11:27 日本経済新聞 電子版 IBM:「間違っていた」。 アップル:「消費者向け企業」。 アマゾン・ドット・コムの経営を評価。 アップルは「消費者の企業」で、顧客の定着性が高く、コカ・コーラのような企業に育つ。 アマゾン・ドット・コム:ジェフ・ベゾス氏を称賛し、投資してこなかったことを悔やんだ。 チャーリー・マンガー副会長もアルファベットへの投資をしていないことに悔しさも。
Amazon.com Inc. (AMZN) Apple Inc. (AAPL) Alphabet Inc. Cl A (GOOGL)
Microsoft Corp. (MSFT) Berkshire Hathaway Inc. Cl A
(BRK.A)
Netflix Inc. (NFLX)
J.C. Penney Co. Inc. (JCP)
チャートは3 年
By JACK HOUGH (Source: Dow Jones)