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MCC

Technology

Report

CONTENTS

技術紹介 1:周辺環境を見据えて:『周辺環境を踏まえた道路構造の最適化(盛土から橋梁へ)』 2:自然災害を防ぐ :『道路アンダーパス部のポンプ更新対策』 3:自然再生を目指して:『神通川自然再生事業(サクラマス等の生息環境の再生)の効果検証』 4:トータル設計 :『自己完結型貯留浸透施設について』

2014

年 No.36-1

【 忘れない 】 あれから三年経ちました。 旅立ちの時、いつまでも忘れることなくMCCの技術は進みます。 三井共同建設コンサルタント株式会社 MITSUI CONSULTANTS Co.,Ltd.

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巻 頭 言

先日京都を訪れたおり、紅葉の南禅寺とその境内を通過する琵琶湖疎水にまつわる土木施設 (遺産)を見る機会がありました。そこには、現在とは比べものにならない貧弱な周辺技術の 中で、当時は未知の分野であったであろうトンネルや発電等最先端技術を理解し、限られた時 間で大規模構造物を完成させた土木技術の実績がありました。問題の本質を見抜き、的確に情 報を収集した上で技術的課題を解決したであろう、昔の土木技術者の感性と洞察力の深さに感 心させられました。 このことがあり、今我々が接する土木設計技術においても、社会の仕組みの変化や ICT 等の 技術革新の中で、忘れられた技術や、重要性に気付かず見過ごしている基本的なポイントがあ るのではないかと感じておりました。 そのような話題の一つとなりますが、今回の東日本大震災では、日本の近代化以降に経験し たことのない、強い地震動が広い範囲を襲い、多くの被災が報告されました。私の所属する設 計部門でも、経験ないほどの多くの河川堤防の被災に関する業務を担当しました。 これら堤防被災では、条件が悪く一帯が被災した区間もありましたが、一見変化の少ない平 野を流下する河川であるのに、限られた区間に被災が集中する事例も見られました。このとき、 なぜ一方は被災し、他方はしなかったのかは、その被災がどのように発生したか知る上で重要 なポイントとなります。この理由を解くには、被災箇所のみを対象とした直接的な調査だけで は説明できず、広く周辺の条件を見渡し手掛かりを探ることが必要となってきます。 この時まず用いるのが、”治水地形”と呼ぶ、古い時代の川を中心とする地形の履歴がどう なっていたかを示す分類です。キーとなる河道の変遷は、地形に残る痕跡(航空写真等から判 読する地盤高の分布)や古地図からの情報に頼るため、それほど古い時代までは溯れないこと が多いと考えます。ところが不思議なことに、なぜそこが被災したかの”理由”に行き当たる ことが多く、しかも最後の流路の変更による影響であるケースが多かったように感じました。 大半の場合、最後に流路を変えたのは人間であり、この人為的な地形の改変が、思いもよら ぬ被災として表れることがあるのは皮肉なことです。土木技術者の先人は、河川による微地形 を”治水地形”と名付けましたが、この言葉に人為的な事業を指す”治水”が用いられている ことは、的確な観察力と洞察によるものではないでしょうか。 ”MCC Technology Report”は、主に若手技術者の視点で、日常の業務や研究に懸命に取 り組んだ結果得られた、新たな気付きや目新しい事例を紹介するものとなっています。土木設 計分野の先人達の感性にはまだまだ及ばないと思いますが、書き手それぞれの技術的キャリア に応じた着眼点やポイントを読み取っていただけると幸いです。 (ジオ・エンジニアリング事業室長 森田 等)

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キーワード:山間部、周辺環境、湧水、道路構造、盛土、BOX カルバート、橋梁 1.はじめに 近年、広域道路ネットワークの形成、災害 時の緊急輸送路の確保、産業や観光などの地 域活性化を目指して高速自動車道の整備が推 進されている。 一方、地震や台風などの災害に強い国土づ くりが求められており、特に山間部を通過す る道路においては代替路が無いので、災害時 における安全性の確保が求められている。 このような山間部における道路計画におい ては、自然環境や地形・地質状況を踏まえて、 土工、橋梁などの道路構造を適切に決定する ことが重要である。 以下に、計画位置の条件を踏まえて道路構 造の最適化を実施した事例を紹介する。 ●既往計画概要 下記の図-1 に示すように、計画位置は山間 部に計画された道路のうち、砂防指定されて いる急流河川を河川 BOX で横断させる盛土 区間である。 また、尾根部は急峻な斜面地形であり、遺 跡が広がっている。 2.存在した課題 現地状況を踏まえて、盛土構造および代替 案の橋梁構造における課題を以下に述べる。 【課題①】斜面からの湧水 (盛土の課題) 計画位置には多孔質な岩盤が広く分布し、 斜面からは湧水が確認された。したがって、 盛土内に湧水が滞水し、盛土の弱体化および BOX の安定性の低下の恐れがあった(図-2 参照)。 また、最近の豪雨時の事例でもわかるよう に、谷地形の盛土は崩壊しやすい欠点がある。 【課題②】遺跡への影響 (橋梁の課題) 尾根部は急峻な斜面地形であり、橋脚を設 置する場合は、掘削規模(地形改変)が大き くなるので、遺跡への影響が懸念された。(図 -3 参照)。 【課題③】施工の実現性 計画位置の斜面は地下水を多く含む多孔質 な岩盤から形成されるので、斜面部の基礎形 式として一般的な深礎杭では、地下水の影響 を受けて施工が困難となる恐れがあった。

技術紹介 1

周辺環境を踏まえた道路構造の最適化

(盛土から橋梁へ)

西岡 秀祐 NISHIOKA Shuusuke 道路・橋梁事業部 第二グループ 電話 03-3205-5888 FAX 03-3205-5862 日本の国土は全体の約 70%が山間部であり、地域間の物流や災害時の輸送路を確保するうえで、山間部に道路を計画せざ るを得ない特徴がある。山間部は多様な地形・地質や周辺環境(自然・生活)などが存在し、これらの特徴を踏まえ、安全 かつ経済性に優れた合理的な道路構造を選定することが重要である。この実施例では、周辺環境などを整理し、既往設計の 課題を明確化したうえで、道路構造の最適化を図ったものである。 図-1 対象位置概要図(平面図) 図-3 尾根部斜面の掘削 図-2 湧水による影響 盛土内に湧水が滞水 ⇒盛土の弱体化 ⇒BOX の安定性低下 盛 土 現地盤

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3.解決する技術 (1)盛土構造を橋梁へ変更 湧水の影響を回避する観点より、各種構造 検討を行い、構造形式の最適化を図った。① BOX+盛土構造に排水対策を施した案と② 橋梁形式案における比較検討の結果、経済性 のみならず、構造性、施工性、周辺環境への 影響等を考慮して、総合的に優れる橋梁形式 を提案した(図-4 参照)。 橋梁形式とすることにより、斜面からの湧 水は直接河川へ放流されるので、湧水の問題 は解消された。また、①コスト縮減(約 1.0 億円)、②工期短縮(約 22 ヶ月)、③河川の改 修が不要というメリットも得られた。 (2)地形改変の抑制 1)橋梁区間の分割化:橋梁区間 122m に対 して、地形や河川の影響を考慮して、2径間 とする場合は、尾根部に規模の大きい橋脚を 設置することになるので、掘削時の地形改変 の影響が大きく、さらに支間長が長く上部構 造のコストが増加するという問題点があった。 したがって、単純桁2橋として橋梁区間の 最適化を図り、2径間と比較して安価な上部 構造形式の採用を可能とした(図-5 参照)。 2)橋台規模の縮小化:①橋台背面に軽量盛 土を設置して橋台規模を小さくすること、② 橋台の斜角を斜面の方向と極力合わせること により、掘削規模(地形改変)を小さくした。 これらにより、遺跡への影響および湧水によ る施工時の影響を低減した。 (3)実現可能な施工計画を立案 橋台の基礎形式は搬入路として構築する仮 橋を利用し、機械(全周回転式)による施工 方法を採用することで、地下水の影響を受け ない杭施工計画を立案した。 この方法によって、工期短縮や地形改変を 最小限に抑制し、円滑な施工計画を実現した (図-6 参照)(別途、3D 施工ステップで検証を 実施)。 4.まとめ この実施例では、既設計および現地状況を 踏まえて、構造形式の最適化を行った。また、 現地特有の条件である湧水や急峻な斜面を念 頭に置いたうえで、最適な橋梁計画や施工計 画を立案した。今後も、現地状況を把握し、 その場所にあった道路および橋梁の計画・設 計に取り組んでいきたい。 図-4 構造形式比較検討結果 図-6 実現可能な施工計画 図-5 橋梁区間の最適化 盛 土 現地盤 踏掛版 集水管 集水管 現況流水部 に設置 湧水部(斜面近傍) に設置 BOX 地下排水工 掘削端部に設置 砕石層 砕石層 集水管 集水管 砕石層上面に設置 2

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-キーワード:冠水対策、更新計画、既存施設の評価 1.はじめに 近年、局地的な異常豪雨(ゲリラ豪雨)が 多発し、アンダーパスでは冠水による通行止 めや自動車の立ち往生・水没等の事故が発生 している。この対策として、排水機能の強化 等の策が講じられているが、排水先となる水 路の流下能力や交通量の多い幹線道路では長 期間に及ぶ交通規制の回避などの制限を受け る場合がある。 本稿では、上記の制限の中での排水施設更 新の考え方を紹介する。 2.存在した課題 対象区間には、St.A∼St.E の 5 箇所のアン ダーパスが存在し、各地点の排水ポンプはい ずれも設置後約 25 年が経過していた。これら の排水ポンプ更新に際し、ゲリラ豪雨に伴う 冠水対策も考慮することとなった。ここで、 アンダーパス部の排水は図−1 に示す通りで あり、排水先の側水路は道路管理者の施設で はなく、圧送管の改修は多大なコストと施工 に長期間を要す。このため、側水路と圧送管 は改修せず、現状の流下能力を考慮する必要 があった。 3.解決する技術 ゲリラ豪雨は、シミュレーションにより、 1/30 確率の降雨に相当するものと判断され、 この降雨規模を対策の目標降雨とした。 ポンプ排水能力の設定は、目標降雨量に対 して、既存施設の能力、コスト、施工性、周 辺への影響等を総合的に考慮して設定した。 (1)既存施設を考慮した排水能力の設定 排水能力の設定は、次の既存施設の排水量 を考慮し、図−2 に示すフローに従って設定 した。 ①側水路(道路排水の放流先) ②ポンプ ③放流先までの圧送管 (2)コスト・施工性を考慮したポンプ排水能 力の提案 図−2 のフローでポンプ排水量を設定する と、高圧受電の仕様が必要となる箇所が生じ た。しかしながら、現場調査により、既存の

技術紹介 2

道路アンダーパス部のポンプ更新対策

周 宇 SYUU U 都市基盤事業部 基盤設計グループ 電話 03-3205-5778 FAX 03-3205-5862 近年、多発するゲリラ豪雨に起因して、国道を初めとするアンダーパスでは事故・通行規制が発生している。このため、 アンダーパス等では、排水施設の能力増強などの対策が講じられているが、排水能力の設定に際しては、放流先の水路の流 下能力などにより排水施設の能力に制限を受ける場合がある。本稿では既存施設を最大限活かした中で冠水対策を検討し、 排水ポンプの規模設定、ポンプ更新計画を立案した事例を紹介する。 図-1 アンダーパス部排水模式図 図-2 ポンプ排水量の設定フロー 圧送管

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受電室では高圧受電に対応できず、建て替え が必要となることが確認された。受電室の建 て替えは、工事費がかさむうえ、工事による 道路交通への影響も大きいことから、ポンプ の排水能力は低圧受電を前提とすることを提 案した。 (3)検討結果 以上の検討により設定した各地点の排水能 力は下表に示すとおりである。 表−1(1) 排水能力設定結果(既存施設能力による) 表−1(2) 排水能力設定結果(電圧仕様による) (4)更新後の冠水深検討 設定したポンプ能力は、シミュレーション によって作成した「1/30 降雨時における各地 下道の冠水深(冠水の程度)およびポンプ吐 出量の関係図」を用いて、冠水深を確認するこ とにより検証した。 その結果、ポンプの更新による冠水深の低 減量が最小 0.6cm∼最大 5.3cm となり、3 箇所 では目標とした冠水深 10cm 以下を満足した。 (5)更新計画 既設排水ポンプは、各施設とも 1988∼1989 年とほぼ同時期に設置されている。今回の排 水ポンプ更新は、既設能力では冠水が発生す ることがあるため、施設の能力増強を最優先 の目的としている。よって、既設と更新後の ポンプ能力差が大きい施設から更新を行うよ う更新計画を立案した。また、冠水深が 10cm を超える 2 箇所については、交通規制を合せ て検討することとした。 表−2 排水ポンプ更新計画 箇所 設置年 ポンプ流量 (m3/min) 優先 順位 更新後 1/30 降雨の 冠水深(cm) 既設 更新 増加量 St.A 1989 5.82 8.83 3.01 2 9.7 St.B 1989 8.15 8.15 0.00 5 0.0 St.C 1989 5.22 8.83 3.61 1 18.4 St.D 1989 12.55 13.50 0.95 4 19.0 St.E 1988 8.94 10.50 1.56 3 3.2 4.まとめ 地球温暖化の進展により、ゲリラ豪雨が頻 発し、道路アンダーパス部の浸水被害が増加 している。今回のようにハード対策は既存施 設及び周辺環境等の制約から対応可能な限界 がある。また、近年のゲリラ豪雨の発生状況 からみてもハード対策における対応降雨強度 の予測もますます困難である。 今後の対策方向性としては、アンダー部の 冠水対策としてポンプの更新に合わせてポン プの能力を増強する一方で、冠水が発生した 場合でも事故が発生しないよう交通規制等の ソフト対策と組み合わせた対策が必要である。 また、最新の雨量観測システムを用いて降雨 量・雨の動向を予測し、交通規制と合わせた 総合的な冠水対策を策定することが重要であ る。 4

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-自然再生施設(大きな淵2009年MCC設計) キーワード:自然再生事業、サクラマス、環境調査 1.はじめに 神通川は、富山県中央部を流れ富山湾に注ぐ、流 路延長 120km の一級河川で、電源開発のためのダム 湖が連続する。神通川自然再生事業は「サクラマス を指標種として魚類全般の生息環境の再生」を目標 に平成 18 年度に事業が開始され、整備の短期目標と して①サクラマスの越夏環境の再生、②サクラマス の越冬環境の再生、③連続性の確保、中・長期目標 として④産卵場所の改善が掲げられている。 本稿では、①サクラマスの越夏環境の再生につい ての課題やその解決策について紹介する。 2.存在した課題 サクラマスは、北海道、東北地方、本州日本海側 分布し、河川と海を往来する回遊魚である。サケ科 魚類の中で、最も河川上流へ遡上して産卵し、河川 生活が長いことが特徴である。 サクラマスの越夏環境では、大きな淵が重要な役 割を果たすが、その環境を再生する上で以下の 2 つ の課題が存在した。 課題①:既設の自然再生施設(大きな淵)の物理諸量 は把握したが、サクラマスの利用状況を画像データ として得られていなかった。 ダイバーによる水中撮影などで利用状況の調査は 行われていたが、その撮影には至っていなかった。 課題②:自然再生施設(大きな淵)を設計する上で必 要となるサクラマスの生息条件(流速、水深等)につ いて不明な点が多い。 サクラマスの遡上や産卵生態については詳しく調 査・研究が行われているが、越夏場所の生息条件に ついては不明な点が多く、設計に必要なデータはほ とんど存在しない状態であった。 3.解決する技術 (1)課題への対応 サクラマスの越夏環境を設計する上での 2 つの課 題の解決策は以下のとおりである。 解決策①:自然再生施設のサクラマスの利用状況を 把握するための調査方法(ウェアラブルカメラによ る撮影)の提案 既存調査はダイバーによる 水中ビデオと CCD カメラ(固 定カメラ)による調査であっ た。ダイバーによる水中ビデ オでは、人影に敏感なサクラ マスを撮影することは困難である。また CCD カメ ラは画素数が少なく鮮明な画像が得にくいこと、画 角が狭く広範囲を撮影できないこと、有線で設置箇 所に制限があることなどから、サクラマスの撮影が 困難である。提案したウェアラブルカメラは、高解 像度、広画角、無線で、CCD カメラの欠点をほとん ど解消できる製品であった。また安価なため、同じ 予算で複数台の準備が可能で、サクラマスの利用状 況を撮影する機会を増やすことができる。 本業務では、事前に潜水観察を実施し、越夏場所 の生息条件に該当する水中カバーを確認し、ウェア ラブルカメラを複数箇所に設置した。その結果、自 然再生施設でのサクラマスの利用状況の撮影に成功 し(図-1)、越夏場所の生息状況を把握し、施設を評 価することができた。

技術紹介 3

神通川自然再生事業

(サクラマス等の生息環境の再生)の効果検証

森川 裕之 MORIKAWA Hiroyuki 環境・港湾事業部 環境グループ 電 話 06-6599-6036 FAX 06-6599-6050 平成 14 年 12 月に「自然再生推進法」が成立し、自然再生を「過去に損なわれた自然を積極的に取り戻すことを目的とし て、関係行政機関、関係地方公共団体、NPO、専門家等の地域の多様な主体が参加して、自然環境を保全し、再生し、創出 し、またはその状態を維持管理すること。」と定義している。国土交通省では、河川事業などの所管事業を通じて、蛇行河川 の復元など様々な自然再生に関する取組を進めている。本稿では、神通川自然再生事業のサクラマス等の生息環境の再生に ついて紹介する。 ウェアラブルカメラ 図-1 サクラマス確認位置 サクラマス

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解決策②:サクラマスの生息条件(流速、水深、水 温等)の閾値を把握できる調査の提案 神通川では神三ダム下流に大きな淵が形成されて おり(図-2)、サクラマス成魚が越夏場所として利用 しているとの情報を得ていたことから、越夏場所の 生息条件の閾値を把握するために、ADCP、水温連 続観測、精密魚群探知機による調査を行い、サクラ マスの生息条件を把握した(表-1)。 図-2 神三ダム下流のイメージ図 表-1 サクラマス成魚の越夏場所における生息条件 (2)課題への対応を踏まえた自然再生施設(大きな淵) の改良設計の提案 神通川自然再生事業では、時々刻々と変化する自 然環境への順応的管理の ため、施工後の適切な対 応が重要である(図-3)。 前述の既設の自然再生 施設を評価した結果を踏 まえ、施設をより効果的 なものとするため以下の改良設計を提案した。 ステップ 1:整備済みの箇所で物理環境調査を実施 整備箇所で水深、流速、水温などサクラマスの生息 条件の物理環境について調査を実施した。 ステップ 2:既設の施設を解決策②で把握した閾値毎に評価 調査箇所の評価の結果、「生息条件②水深」を改 善すれば全条件を満たすと評価された。 表-2 越夏場所施工区の評価 ステップ 3:評価に基づき、改良工事を提案、設計 急傾斜護岸部に強い流れを導き深い淵を創出する ため、改良工事として、①現況の流れ込みの閉塞と ②導水路を拡幅して神通川の本流からの水量を増加 することを提案・設計した。 ステップ 4:改良工事の実施 改良工事により、急傾斜護岸部に深い淵を創出す ることができた。 4.まとめ 今後の神通川の自然再生においては「サクラマス 等の生息環境の再生」として、今まで行ってきた「リ ーチスケールの調査・検討」に加え、サクラマスの 生活史に着目した神通川水系全体の「流域スケール の視点での調査・検討」が必要である。また、神通 川下流域では治水上の安全性確保のため低水路護岸 が設置され、低水路の流れが固定化することで淵が できにくくなっている。 このような状況を踏まえ、神通川自然再生計画の 見直しを行う必要がある。 図-3 順応的管理 図-5 提案した改良工事 図-4 越夏場所施工区の淵の水深の経年変化 設計 改良工事 提案・設計 調査 評価 改良工事 <順応的管理> 導水路の拡幅 淵が創出 導水部 導水路 下流部 2013 年 2 月 15 日 2013 年 2 月 15 日 設計 調査 6

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-施設の機能 浸透施設 対象降雨(降雨モデル) 1/10確率(24時間中央集中型) 24時間雨量 168.2mm/day 流域面積 118千m2 調整池面積 21千m2 表-1:貯留浸透施設の主な諸元 キーワード:自己完結型浸透貯留、調整池、維持管理 1.はじめに 開発を行う場合、下流側治水施設に負担が 増大しないように、開発区域内で調整池を設 けることが望まれる。調整池は、限られた開 発空間に設ける必要があり、機能維持、安全 対策の徹底が求められ、調整池管理者の負担 も増大してきている。このような背景からも、 開発空間を有効に活用し、貯留とともに浸透 という機能を充実させた調整池の小型化が望 まれる。 本稿では、基本的に超過洪水時以下では下 流側に排水をさせない自己完結型の貯留浸透 施設として、実際に計画・設計を行った施設の 概要を示すとともに、浸透施設の効果・機能を 最大限に発揮させるための方策とその課題と 解決策について紹介する。 2.存在した課題《施設の概要》 今回紹介する貯留浸透施設の機能諸元は、 表-1 に示すとおりである。 当該施設は、約 118 千 m2の流域に降った 雨水を速やかに貯留浸透させる必要があり、 貯留浸透施設が非常に大規模となることから 図-1、2 に示す概念の砕石貯留施設を 5 箇所 設けることとした。 当該地区は、埋立地に設ける公園施設であ り直接海へ排水することが可能ではあるが、 工場跡地に設けるため、漁業への悪影響を懸 念し、超過洪水以下の降雨に対しては基本的 に海への排水を避ける必要があった。 このため、通常開発に伴う一般的な貯留排 水施設は図-3 に示すように一旦調整池に雨 水を貯留し、オリフィス等により放流を抑制 するが、当該施設に求められる機能を勘案す ると、図-4 に示す「自己完結型貯留浸透施設」 とせざるを得なかった。

技術紹介 4

自己完結型貯留浸透施設について

伊藤 正博 ITO Masahiro 河川・砂防事業部 第四グループ 電話 06-6599-6055 FAX 06-6599-6050 面整備事業など、地表面の雨水浸透能力が変化(減少)する整備においては、開発に伴う雨水流出の増加を 抑制する調整池の設置が求められる。この度、埋立地での整備において、超過洪水以下の雨水排水は基本的に 流出させない「自己完結型貯留施設」という非常に希で事例も少ないタイプの調整池を採用する機会を得た。 本稿では、この施設の概要とその貯留浸透機能を維持するための設計における対応を紹介する。 図-2:砕石貯留概略断面図 浸透管 砕石 砂フィルター 透水シート ▽GL 配水管 単粒度砕石(4 号) (φ800mm) 約1 .0 m 約0 .5 m 図-1:砕石貯留概略平面図 マンホール枡 沈砂池 集水桝 配水管 浸透管

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- このため、大規模な浸透施設となり、以下 の課題を解決する必要があった。 (1)貯留浸透方法の選定(課題) 当該施設は、自己完結型の浸透施設を設け る必要があり、広い敷地の中に有効、かつ効 果的に浸透施設を設ける必要があった。 (2)目詰まり対策(課題) 比較的規模の大きい浸透施設であるため、 浸透箇所に細砂が集まり、浸透能力を低下さ せることが懸念された。 (3)貯留施設への配水浸透方法(課題) 砕石貯留空間に速やかに且つ、幅広く均等 に雨水を貯留させ浸透させる必要があった。 砕石貯留はそれ自体剛体ではなく、屈とう性 の構造体の集まりともいえ、不足の応力等で 破損しない材質を選定する必要があった。 また、速やかに浸透させるため、浸透能力 の優れた浸透管が望まれた。 3.解決する技術 (1)貯留浸透方法の選定(解決策) 貯留浸透方法は、一般に「調整池」、「地下貯 留」に分類され、地下貯留は空間貯留、砕石貯 留に分類される。当該施設は、広い敷地の中 に有効、かつ効果的に浸透施設を設ける必要 があったため、砕石貯留をグラウンドの地下 部に幅広く砕石を約 1m 厚で布設し浸透させ る砕石貯留を選定した(図-2 参照)。 これにより、浸透面積が多く確保でき、浸 透時間も短縮できるというメリットを最大限 に発揮させることが可能となった。 (2)目詰まり対策(解決策) 目詰まり対策は、浸透施設へ流入する前に 沈砂池を設け、対応した。沈砂池は施設の安 全運用上、明かり空間に設けることが出来な い。このため、地下空間に BOX カルバート を布設し、沈砂池を設けることとした。 (3) 貯留施設への配水浸透方法(解決策) 浸透配水管は、その規模からも長い延長を 布設する必要があった。このため、速やかな 配水が出来るよう、図-1に示すように、沈砂 池からの雨水を全て流下し得る配水管を砕石 貯留中心部に布設し、そこから浸透管を砕石 貯留地全体に行き渡るよう配置した。 また、屈とう性のある砕石の中でもフレキ シブルに耐えられるよう「たわみ性」のある 排水管を布設した。 4.まとめ 今回紹介した事例は公園施設であり、ほと んどがグラウンドの整備であり、その地下空 間を浸透施設として有効に使えたという恵ま れた条件を有していた。 しかし、この事例は、いかに下流への負担 を小さくし、管理者への負担をいかに軽減さ せるかの良い事例になったかと思われる。 このためにも自己完結型の浸透施設は非常 に希であり、今後とも浸透機能が継続できる か、モニタリングを行い、その機能維持も踏 まえデータを蓄積することが望まれる。 このような自己完結型の貯留施設を設ける ことは超過洪水等の様々な事象を想定し確実 且つ安全な施設としなければならない。筆者 は、属する総合コンサルタントとしての強み を生かし他分野の技術者との協議を積み重ね るとともに、発注者の方々との技術協議を積 み重ねたうえで達成した設計であることを十 分認識する次第である。 改めて、筆者は本業務に携わっていただい た関係各位の方々に、この場を借りて感謝の 意を表するものである。 図-3:一般的な貯留排水概念図 調整池 集水施設 河川等へ放流※ ※一般的にオリフィス等で放流量を抑制 採用 図-4:自己完結型貯留浸透施設概念図 貯留浸透施設 集水施設 浸 透 8

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MCC

Technology Report

2014年 No.36-1 2 0 1 4 年 3 月 1 日 発 行 三井共同建設コンサルタント株式会社 MCC研究所 〒 169-0075 東 京 都 新 宿 区 高 田 馬 場 一 丁目 4 番 1 5 号 TEL 03-3207-0231( 代 ) FAX 03-3205-5734 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.mccnet.co.jp

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