2
修士学位論文
論文題名
p
進体上の円分拡大の中間体の原始元
指導教員
内田 幸寛 准教授
平成
31
年
1
月
10
日提出
首都大学東京大学院
理工学研究科 数理情報科学専攻
学修番号
17878323
氏名 藤松 達也
目次
1 はじめに 3 2 有理数体上の円分体 (先行研究) 5 3 Galois群の一般論 6 3.1 合成体 . . . 6 3.2 p進体上の円分体 . . . 7 4 p進体上の円分体(n = pm) 8 4.1 Generalized period . . . 8 4.2 中間体の原始元 . . . 15 5 中間体の原始元の具体的な計算 20 5.1 仮定の十分条件 . . . 20 5.2 p = 2のとき . . . 22 5.3 p = 5のとき . . . 23 6 考察・まとめ 24 7 謝辞 241
はじめに
N で正の整数全体の集合を表し, m ∈ Z に対し, Z≥m で m 以上の整数全体の集合を表すものとす る. また, p を素数, Q, Qp でそれぞれ有理数体, p進体を表すとし, n ∈ N に対し, ζn で C もしくは Qp(=Qp の代数閉包)における 1の原始 n乗根を表すものとする. 本論文はp進体上の円分拡大Qp(ζns)/Qp(ζs)の中間にある拡大F/Qp(ζs)の原始元の明示的表示について の研究の成果である. 本節では研究の動機と本論文の構成について述べる. 有限次Galois拡大L/K に対し, その中間体とGal(L/K)の部分群に1対1対応の関係があるという事実 はGalois理論の基本定理としてよく知られている. 定理1.1 (Galois理論の基本定理). 1 F = {L/Kの中間体}, G = {Gal(L/K)の部分群}とおき,写像Φ :F → G, Ψ : G → Fを Φ(F ) = Gal(L/F ), Ψ(H) = LH で定めるとき, ΦとΨは互いに逆写像の関係にあり,包含関係を逆にする. H を Gal(L/K) の部分群とすると, LH/K は分離拡大なので単純拡大となる([1],定理 4.9). よって, LH = K(α)を満たすLの元α,つまり, LH/K の原始元αが存在するが,このαの表示についてGalois理 論の基本定理から具体的に分かることは少ない. 原始元に関する一般論としては次がある(cf. [2],定理3.35, 3.37). 定理1.2. 有限次Galois拡大L/K に対し,次が成立する. 1. L/Kには正規基底が存在する. すなわち,{σ(α) | σ ∈ Gal(L/K)}がL/Kの基底となるようなα∈ L が存在する. 2. F をL/K の中間体とすると, TrL/F(α)がF/K の原始元になる. このように, 有限次Galois拡大 L/K の中間体 F に対し, F/K の原始元を与える理論は存在するが, そ れで得られる原始元は抽象的なものであり, 明示的に表示するものではない. L = Q(ζp), K = Q のとき は{σ(ζp)| σ ∈ Gal(L/K)}がL/K の基底になるので, LH/K の原始元はTrL/LH(ζp) になる. この元はGaussの研究したGauss周期というものに等しく,次の主張はGaussによって, 1801年に実質的に示されて いた(cf. [3]). 定理1.3. pを素数とし, ζ∈ Cを1の原始 p乗根とする. e, f ∈ Nがp− 1 = ef を満たすとすると, Gf := p−1 ∑ x=1 ζxf に対し, [Q(Gf) :Q] = e
Evansによるperiod polynomialの研究([4])の中でGauss周期の一般化となるgeneralized periodが定 義され,定理1.3の一般化となる次が示された.
定理 1.4. n, s ∈ N は gcd(n, s) = 1 を満たすとする. また, G = (Z/nZ)× とおき, その部分群を H,
これは, L =Q(ζns), K =Q(ζs)で H が任意の部分群のとき(ただし, sは nと互いに素な正の整数)に, LH/K の原始元の1つとして, generalized periodという具体的なものが取れることを示している. したがっ て,有理数体上の円分拡大に関しては,中間体の原始元の明示的表示はEvansによって解決されているといえ る. 第2節では,定理1.4の証明に必要な部分の[4]の議論やgeneralized periodの定義についてごく簡単に 触れる. 本論文はこの先行結果における議論がGalois群に関するものが大部分であることに着目し, p進体上の円分 拡大にも通用するかを試みたものであり,部分的な証明を主結果として得ることができた. まず,先行結果であ る定理1.4と同様の議論を行うことにより, p 進体における類似を示すことができた. これが1つ目の主結果 であり,第4節の前半で説明する.
主結果
1
m, s∈ N とpはgcd(pm, s) = 1を満たすとし, Q p(ζpm)∩ Qp(ζs) =Qp が成立すると仮定する. また, G = (Z/pmZ)× とおき, その部分群をH, e = (G : H) とする. このとき, H に対応する generalized periodは0でなければ, Qp(ζs)上e次である. 主結果1の議論では, generalized periodが0とならないことがある準同型の条件として特徴づけられること に着目したことで, 先行研究での証明に比べてやや簡略化したものとなった. この準同型について詳しく調べ ると, generalized periodが0 の場合を含めたものに拡張できることが分かり, 当初のモチベーションであっ たF/Qp(ζs)の原始元の明示的表示が次のように分かった. これが2つ目の主結果であり,第4節の後半で説 明する.主結果
2
m, s ∈ N は gcd(pm, s) = 1 を 満 た す と し, Q p(ζpm)∩ Qp(ζs) = Qp が 成 立 す る と 仮 定 す る. Qp(ζpms)/Qp(ζs)の中間体F に対し, F ⊂ Qp(ζpls)を満たすl∈ N (ただし, 8| pmのときはl ≥ 2)の 中で最小のものをl とする. このとき, η = TrQp(ζpl s)/F ( ζpls ) とおくと, F =Qp(ζs)(η)である. また, 得られた主結果の具体的な計算方法を第5節で説明する. Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) =Qp の十分条件を以下 に示すように2つ提示し,それぞれに対し, F/Qp(ζs)の原始元の具体的な計算例を1つずつ与えた. 条件1. p≡ 1 mod sとなるp, s を取る. 条件2. p とt∈ Nを任意に選び, pと異なる奇素数qで, ( p q ) = 1, gcd ( p(p− 1),q t−1(q− 1) 2 ) = 1 を満たすものに対し, s = qtと取る. ただし, ( p q ) はLegendre記号である. 本論文の中心となる第4,5節の議論ではGalois群の議論が大部分となり, p 進体上の円分拡大のGalois群 などの一般論が必要となる. その一般論について,第3節で紹介している.2
有理数体上の円分体
(
先行研究
)
先行研究である[4]の中で得られた結果について,簡単に述べる. G = (Z/nZ)× とし,その部分群をH, e = (G : H)とする. gcd(n, s) = 1 を満たす s ∈ N をとるとき, a∈ Z[ζr ns]\ {0} を任意に1つ取って固定し, H に対応する generalized periodを η(H) = ∑ h∈H σh(aζn) で定める. ここで, σhはσh(ζn) = ζnh, σh(ζs) = ζsで定まるGal(Q(ζns)/Q(ζs))の元であり, r∈ Nは8̸ | n のときは nの相異なる素因数の積, 8 | nのときは n の相異なる素因数の積の2 倍で定められる. η(H)は σh(h∈ H)で不変であることを注意しておく. また, H に関する条件 ∀x∈ H \ {1}, x ̸≡ 1 mod r (2.1) を考える. まず, η(H) についての補題が示される. 補題2.1. ([4], Lemma 3) H が条件(2.1)を満たし, H = G であるとすると, η(H) =±a. (証明の概要) G = H からn = rが導かれ, a∈ Z[ζs]となることからGalois群の元で不変となり, η(H) = a∑ h∈H σh(ζn) となる. ∑ h∈H σh(ζn)がM¨obius関数µ(n)に等しいので, η(H) =±aとなる. 補題2.2. ([4], Lemma 4) H は条件(2.1)を満たすとする. t̸ | naとなる素数t を取るとき, G\ Hの任意の元cに対し, σc(η(H))̸≡ η(H) mod t. (証明の概要) n≤ 4の場合は成立していて, n > 4 の場合をnの相異なる素因数の個数に関する数学的帰納 法で示す. 次に, 2つの補題で示されたことから,条件(2.1)とη(H)の関係が示される. 定理2.3. ([4], Theorem 5) H が条件(2.1)を満たすのはη(H)̸= 0 のとき,かつそのときに限る. (証明の概要) 条件(2.1)を満たすとすると,補題2.1, 2.2から, η(H)̸= 0となる. 条件(2.1)を満たさないとすると, H のある部分群 K に対し, η(K) = 0となる. η(H)はη(K)の和の形に 変形できるので, 0となる. 最後に, η(H) のQ(ζs)上の次数が H の指数になることを示す. これは前節で定理1.4として触れた.定理2.4. ([4], Theorem 6) η(H)̸= 0 ならば, η(H)はQ(ζs)上e次である. (証明の概要) 定理2.3からH は条件(2.1)を満たすので, 補題2.2よりη(H) を固定するGalois群の元は H の元に一致する. これはGal(Q(ζns)/Q(ζs)(η(H)))の位数が #H に等しいことを示すので, [Q(ζs)(η(H)) :Q(ζs)] = [Q(ζns) :Q(ζs)] [Q(ζns) :Q(ζs)(η(H))] = #G #Gal(Q(ζ ns)/Q(ζs)(η(H))) = #G #H = (G : H) となる.
3
Galois
群の一般論
以降では,単に準同型や同型といえば群の準同型や同型を表すものとする.3.1
合成体
体Kの有限次Galois拡大体L1, L2 があるとき,その合成体L1L2 に関する一般論を結果だけ述べる. 定義 3.1. Lを体とし, L1, L2 をLの部分体とする. このとき, L1, L2 を部分体に持つようなLの部分体の 中で,包含関係に関して最小のものをL1, L2の合成体といい, L1L2 で表す. [1]の命題5.4, 5.5より,次が分かる. 命題3.2. L を体とし, L1, L2, K をLの部分体とする. L1/K, L2/K を有限次Galois拡大とすると, 以下が成立する. (1) L1L2/K, (L1∩ L2)/K は有限次Galois拡大. (2) 写像Gal(L1L2/(L1∩ L2)) → Gal(L1/(L1∩ L2))× Gal(L2/(L1∩ L2))
σ 7→ (σ|L1, σ|L2) (3.1) Gal(L1L2/L2) → Gal(L1/(L1∩ L2)) σ 7→ σ|L1 (3.2) はともに同型写像になる. L1L2 L1 L2 L1∩ L2 K
3.2
p
進体上の円分体
pを素数, n∈ Nとする. Gal(Qp(ζn)/Qp)の構造について,一般論として知られていることを結果のみ述べ る. nがpのべきの場合は[5]の第II章命題7.13より以下のようになる. 命題3.3. m∈ Nとする. (1) [Qp(ζpm) :Qp] = pm−1(p− 1). (2) c∈ (Z/pmZ)×に対し,Qp(ζpm)のQp上自己同型σcをσc(ζpm) = ζpcm で定めると, (Z/pmZ)× ≃ Gal(Q p(ζpm)/Qp) c 7→ σc nとpが互いに素の場合は [5]の第II章命題7.12より以下のようになる. 命題3.4. p̸ | nとする. (1) f ∈ Nをpf ≡ 1 mod nを満たす最小のものとすると, [Qp(ζn) :Qp] = f. (2) Qp(ζn)のQp上自己同型φをφ(ζn) = ζnpで定めると, Gal(Qp(ζn)/Qp) = ⟨φ⟩ ≃ ⟨p + nZ⟩ ⊂ (Z/nZ)×. φ 7→ p + nZ 次に円分体の合成体について説明する. 補題3.5. n1, n2∈ Nを互いに素とする. このとき,Qp(ζn1),Qp(ζn2)の合成体L はQp(ζn1n2)に等しい. Proof. ζn1= ζ n2 n1n2 ∈ Qp(ζn1n2), ζn2 = ζ n1 n1n2 ∈ Qp(ζn1n2) であるから,Qp(ζn1),Qp(ζn2)⊂ Qp(ζn1n2)となり,合成体の最小性から, L⊂ Qp(ζn1n2). 一方, gcd(n1, n2) = 1より, un1+ vn2= 1を満たすu, v ∈ Zが存在するから, ζn1n2 = ζ un1 n1n2ζ vn2 n1n2= ζ u n2ζ v n1∈ L. よって,Qp(ζn1n2)⊂ L.したがって, L =Qp(ζn1n2)となる. 補題3.6. k, m, s∈ N, u, v ∈ Zとし, gcd(pm, s) = 1, us + vpm= 1を満たすとする. (1) [Qp(ζpms) :Qp(ζs)] = [Qp(ζpm) :Qp(ζpm)∩ Qp(ζs)]. (2) σ∈ Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))がσ(ζpm) = ζpcm を満たすとすると, σ(ζpkms) = ζpuckm ζsvk. (3.3) (3) Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) = Qp を仮定する. このとき, c ∈ (Z/pmZ)× に対し, σc(ζpm) = ζpcm を満たす σc∈ Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))が存在し,写像 (Z/pmZ)× → Gal(Q p(ζpms)/Qp(ζs)) c 7→ σc (3.4)が同型写像になる. Proof. (1) (3.2)と補題3.5より, Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs)) ≃ Gal(Qp(ζpm)/(Qp(ζpm)∩ Qp(ζs))) σ 7→ σ|Qp(ζpm) (3.5) だから, [Qp(ζpms) :Qp(ζs)] =#Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs)) =#Gal(Qp(ζpm)/(Qp(ζpm)∩ Qp(ζs))) = [Qp(ζpm) :Qp(ζpm)∩ Qp(ζs)]. (2) σ(ζpms) = σ(ζpumζsv) = ζpucmζsv であるから, σ(ζpkms) = σ(ζpms)k = (ζpucmζsv)k = ζpuckm ζsvk. (3) 命題3.3より, φ(ζpm) = ζpf (φ)m で定まる写像 f : Gal(Qp(ζpm)/Qp)→ (Z/pmZ)× は同型写像であり,仮定と(3.5)より, g(σ) = σ|Qp(ζpm)で定まる写像 g : Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))→ Gal(Qp(ζpm)/Qp) も同型写像である. そこで, σc= (g−1◦ f−1)(c)とおくと, σc ∈ Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))であり, σc(ζpm) = g(σc)(ζpm) = f−1(c)(ζpm) = ζf (f −1(c)) pm = ζpcm を満たす. また,写像 (Z/pmZ)× → Gal(Q p(ζpms)/Qp(ζs)) c 7→ σc はg−1◦ f−1 であるから,同型写像である.
4
p
進体上の円分体
(n = p
m)
先行研究で得られている定理においてQをQpにしたときの特殊な場合の定理が,同様の議論を行うことで 成立することが分かった. また,その定理を元にして原始元を具体的に求めることができた. これらの議論の 詳細について説明する.4.1
Generalized period
先行研究でのn, sはgcd(n, s) = 1という条件のみだったが, n = pm(m∈ N), gcd(pm, s) = 1と条件を付 けて議論する. また,有理数体のときは gcd(n, s) = 1の下では常に成立していた条件がp進体のときには成 立しない場合があるので,その条件を以下のように仮定する.仮定
Q
p(ζ
pm)
∩ Q
p(ζ
s) =
Q
p gcd(pm, s) = 1なので, us + vpm= 1を満たすu, v∈ Zが存在する. すると,補題3.6より, (Z/pmZ)× → Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs)) c 7→ σc が同型写像となる. そこで, G = (Z/pmZ)× とし,その部分群をH とする. a∈ Z p[ζprms]\ {0}を任意に1つ取って固定し, H に対応するgeneralized periodを η(H) = ∑ h∈H σh(aζpms) で定める. ここで, r∈ Nは r = { 4 : p = 2, m≥ 3 p : otherwise で定められる. また, H に関する条件 ∀x∈ H \ {1}, x ̸≡ 1 mod r (4.1) を考える. まず,以降の議論で利用する補題を示す. 補題4.1. k≤ mとなるk∈ Nに対し,写像fk を (Z/pmZ)× → (Z/pkZ)× x + pmZ 7→ x + pkZ で定める. このとき, fk は全射準同型であり, #ker fk = pm−k. Proof. gcd(x, pm) = 1⇔ gcd(x, pk) = 1であるから, x + pmZ ∈ (Z/pmZ)×⇔ x + pkZ ∈ (Z/pkZ)× となり, fk はwell-definedかつ全射である. また, x1, x2∈ Zに対し, fk((x1+pmZ)(x2+pmZ)) = fk(x1x2+pmZ) = x1x2+pkZ = (x1+pkZ)(x2+pkZ) = fk(x1+pmZ)fk(x2+pmZ) となるから,準同型である. 準同型定理より, (Z/pmZ)×/ ker fk ≃ (Z/pkZ)× だから, #ker f k = #(Z/pmZ)× #(Z/pkZ)× = pm−1(p− 1) pk−1(p− 1) = p m−k. 補題4.2. ([4], Lemma 1) x, k∈ Zとし,素数pはkを割り切らないとする. pB∥(x − 1)となる B∈ NはB ≥ 1 (p = 2のときはB > 1)を満たすとする. このとき, A∈ Z ≥0 に対し, pA+B∥(xkpA− 1) が成立する. ただし, n∈ N, m ∈ Zに対し, pn∥mはpn| mかつpn+1̸ | mであることを表すものとする. Proof. Aに関する数学的帰納法で示す.
・A = 0のときは, pB∥(x − 1) より, p̸ | l1となる l1∈ Zを用いて, x− 1 = pBl1 と表せる. l2= k−1 ∑ i=0 xi とおくと, l2≡ k−1 ∑ i=0 1i ≡ k ̸≡ 0 mod pだから, p̸ | l2.よって, xk− 1 = (x − 1) k−1 ∑ i=0 xi= pBl1l2と表せ, p̸ | l1l2 より, pB∥(xk− 1).したがって, pA+B∥(xkp A − 1) が成立する. ・A = n (n∈ Z≥0)のとき, pA+B∥(xkpA − 1)が成立すると仮定する. このとき, p̸ | lとなるl∈ Zを用 いて, xkpn− 1 = pn+Blと表せる. p = 2のときは, xk2n+1− 1 = (1 + 2n+Bl)2− 1 = 1 + 2n+1+Bl + 22(n+B)l2− 1 = 2n+1+B(l + 2n+B−1l2) であり, n + B− 1 ≥ n + 1 ≥ 1より, l + 2n+B−1l2≡ l ̸≡ 0 mod 2だから, 2n+1+B∥(xk2n+1− 1). また, p̸= 2のとき, xkpn+1− 1 = (1 + pn+Bl)p− 1 = p ∑ i=0 ( p i ) (pn+Bl)i− 1 = pn+1+Bl + p−1 ∑ i=2 ( p i ) pi(n+B)li+ pp(n+B)lp = pn+1+B ( l + p (p−1 ∑ i=2 (p i ) p p i(n+B)−(n+1+B)li+ pp(n+B)−(n+2+B)lp )) (4.2) となる. ここで, 2≤ i ≤ p − 1のとき, p|(pi)であり,また, i(n + B)− (n + 1 + B) ≥ 2(n + B) − (n + 1 + B) = n − 1 + B ≥ n ≥ 0 p(n + B)− (n + 2 + B) ≥ 3(n + B) − (n + 2 + B) = 2(n − 1 + B) ≥ n ≥ 0 であるから, p−1 ∑ i=2 (p i ) p p i(n+B)−(n+1+B)li+ pp(n+B)−(n+2+B)lp∈ Z となり, l + p (p−1 ∑ i=2 (p i ) p p i(n+B)−(n+1+B)li+ pp(n+B)−(n+2+B)lp ) ≡ l ̸≡ 0 mod p. (4.3) (4.2),(4.3)より, pn+1+B∥(xkpn+1− 1)となり, A = n + 1のときもpA+B∥(xkpA− 1)が成立する. 以上より,任意の A∈ Z≥0 に対して, pA+B∥(xkpA− 1)が成立する. 次に特別な場合のη(H)を求める. 補題4.3. H が条件(4.1)を満たし, H = Gであるとすると, 1のs乗根ξが存在して, η(H) =−ξa. Proof. 次で定まる全射準同型f を考える. G = (Z/pmZ)× → (Z/rZ)× x + pmZ 7→ x + rZ
このとき, ker f ={x + pmZ ∈ G | x ≡ 1 mod r} であるから, H = Gが条件(4.1)を満たすことより, ker f ={1}.よって, f は単射でもあるので,全単射とな り, pm−1(p− 1) =#G =#(Z/rZ)×= φ(r). r = 4と仮定すると, p = 2, m≥ 3になるが, 2m−1̸ | 2 = φ(r)なので,矛盾する. よって, r = p であり, pm−1(p− 1) = φ(r) = p − 1より, m = 1.したがって, H = (Z/pZ)× となるから, a∈ Z p[ζpsr] =Zp[ζs]に 注意すると, η(H) = p−1 ∑ i=1 σi(aζps) = p−1 ∑ i=1 aζpuiζ v s = aζ v s (p−1 ∑ i=0 ζpui− 1 ) = aζsv (p−1 ∑ i=0 ζpi− 1 ) =−ζsva. ゆえに, ξ = ζsv とおけば, ξは1のs乗根であって, η(H) =−ξa. 次の命題はη(H)を固定しないようなGalois群の元についての命題である. 定理4.4. H が条件(4.1)を満たすとすると,以下が成り立つ. ∀c∈ G \ H, σ c(η(H))̸= η(H). (4.4) Proof. H の相異なる全ての元をx1, . . . , xk(ただし,x1= 1)とし, c∈ Gとする. ri, r′i, si, s′i∈ Z≥0 を { xi= rsi+ ri cxi= rs′i+ r′i で定める. ただし, 0 < ri, r′i< rとする. 全射準同型 f : G → (Z/rZ)× x + pmZ 7→ x + rZ
を考えると, H∩ ker f = {x ∈ H | x ≡ 1 mod r}なので, H が条件(4.1)を満たすことと, H∩ ker f = {1}
は同値になる. ここで, ι : H → Gを包含写像とすれば, ker(f◦ ι) = {1}であるから, f◦ ι : H → (Z/rZ)× xi 7→ ri+ rZ は単射,すなわち, i̸= jに対し, ri̸≡ rjmod rとなる. よって, ri̸= rj(i̸= j)であり,さらに, gcd(c, r) = 1 より, ri′ ̸= r′j (i̸= j)となる. 以上のことを元にして, σc(η(H)) = η(H)⇒ c ∈ H (4.5) を示す. これが示されれば命題が示されたことになる. ・r = 2の場合 p = 2, m≤ 2 となる. m = 1 のときは, G ={1}より, H ={1} となるので, (4.5)は成り立つ. m = 2のと きは,条件(4.1)が∀x∈ H \ {1}, x ̸≡ 1 mod 2となるので, H ={1}である. G ={±1}であるから, (4.5) を示すには, σ−1(η(H))̸= η(H)を示せばいい. 実際, ζ2 4s= (ζ4uζsv)2 = ζ2uζs2v = (−1)uζs2v より, a∈ Z2[ζs] に注意すると
σ−1(η(H)) = σ−1(aζ4s) = aζ4−uζ
v s ̸= aζ u 4ζ v s = aζ4s= η(H)
となる. ・r̸= 2の場合 まず,命題3.3,補題3.6より, [Qp(ζpms) :Qp(ζprms)] = rとなる. 実際, r = pk (k∈ N)とおくと, [Qp(ζpms) :Qp(ζprms)] = [Qp(ζpms) :Qp(ζs)] [Qp(ζprms) :Qp(ζs)] = [Qp(ζpms) :Qp(ζs)] [Qp(ζpm−ks) :Qp(ζs)] = [Qp(ζpm) :Qp] [Qp(ζpm−k) :Qp] = p m−1(p− 1) pm−k−1(p− 1) = p k = r となる. さらに, Qp(ζpms) = (p−1)p∑m−1−1 i=0 Qp· ζpims= r−1 ∑ k=0 (p−1)p∑m−1−k−1 j=0 Qp· ζ rj+k pms = (p−1)p∑m−1−k−1 j=0 (r−1 ∑ k=0 Qp· ζ rj+k pms ) = r−1 ∑ k=0 (p−1)p m−1−k−1 ∑ j=0 Qp· ζ rj pms · ζk pms = r−1 ∑ k=0 Qp(ζprms)· ζpkms であるから, 1, ζpms, . . . , ζprm−1s はQp(ζpms)/Qp(ζprms) の基底である. この基底に関する成分の明示的表示を 求めるために, η(H), σc(η(H))をそれぞれ変形していくと, η(H) = ∑ h∈H σh(aζpms) = k ∑ i=1 σxi(a)ζ uxi pmζsv = k ∑ i=1 σxi(a)ζ v(1−xi) s ζ uxi pmζsvxi = k ∑ i=1 σxi(a)ζ v(1−xi) s ζ xi pms = k ∑ i=1 ( σxi(a)ζ v(1−xi) s ζ rsi pms ) ζri pms σc(η(H)) = ∑ h∈H σch(aζpms) = k ∑ i=1 σcxi(a)ζ ucxi pm ζsv = k ∑ i=1 σcxi(a)ζ v(1−cxi) s ζ ucxi pm ζsvcxi = k ∑ i=1 σcxi(a)ζ v(1−cxi) s ζ cxi pms = k ∑ i=1 ( σcxi(a)ζ v(1−cxi) s ζ rs′i pms ) ζr′i pms
となる. ri̸= rj(i̸= j), x1= 1, r1= 1, s1= 0に注意すると, (η(H)のζpmsの係数) = σx1(a)ζsv(1−x1)ζprsm1s= a̸= 0 であるから, η(H) = σc(η(H))とすると, σc(η(H))のζpms の係数も0 でない. r′i̸= r′j(i̸= j)より, r′i= 1 となるiがただ1つ存在するから, η(H), σc(η(H))のζpms の係数を比較して, a = σcxi(a)ζ v(1−cxi) s ζ rs′i pms (4.6) となる. ここで, d := cxi= rs′i+ 1 とおくと, (4.6)より,
σd(a) = aζsv(d−1)ζp1m−ds= aζsv(d−1)ζ
u(1−d) pm ζsv(1−d)= aζ u(1−d) pm . (4.7) B ∈ N を pB∥(d − 1) で定めると, r | (d − 1) より, B ≥ 1 であり, p = 2 のときは B > 1 である. d̸≡ 1 mod pmと仮定すると, B < mであり, A = m− 1 − B とおけば,補題4.2より, pm−1∥(dpA− 1). す ると, σdpA(ζ p pms) = σdpA(ζpm−1s) = ζud pA pm−1ζ v s = ζ u pm−1ζ v s = ζpm−1s= ζ p pms だから, a∈ Zp[ζprms]⊂ Zp[ζ p pms]に注意すると, σdpA(a) = a. 一方, (4.7)を繰り返し適用すると,
σdpA(a) = σdpA−1(σd(a)) = σdpA−1(aζ
u(1−d) pm ) = σdpA−2(σd(aζ u(1−d) pm )) = σdpA−2(aζ u(1−d)+ud(1−d) pm ) =· · ·
= aζpu(1m−d)+ud(1−d)+···+udpA−1(1−d)
= aζpu(1m−d)(1+d+···+dpA−1)
= aζpu(1m−dpA) だから, a = aζpu(1m−dpA)となり, ζ u(1−dpA) pm = 1である. よって, pm| u(1 − dp A )であり, gcd(u, pm) = 1よ り, pm| (1 − dpA)となるが,これは pm−1∥(dpA− 1)と矛盾する. したがって, d ≡ 1 mod pm であるから, c = dx−1i = x−1i ∈ H となり,題意は示された. これまでの命題から,条件(4.1)とη(H)は次のような関係にあることが分かる. 定理4.5. H が条件(4.1)を満たすのはη(H)̸= 0のとき,かつそのときに限る. Proof. H が条件(4.1)を満たすとする. G = H なら, 補題4.3より, η(H) ̸= 0 となる. G ̸= H なら, c∈ G \ H が取れるが,定理4.4より, σc(η(H))̸= η(H)なので, η(H)̸= 0. H が条件(4.1)を満たさないとする. つまり, x ∈ H \ {1} で, x ≡ 1 mod r となるものが存在する. m = 1 と仮定すると, G = (Z/pZ)×, r = p となり, そのような x が存在しないので, m > 1 となる.
r = 2,すなわち, p = m = 2のときは G ={±1}であるので, x =−1 となり, H = {±1}と決まるから,
a∈ Z2[ζ4s2] =Z2[ζ2s] =Z2[ζs], gcd(u, 4) = 1に注意すると,
η(H) = aζ4s+ σ−1(aζ4s) = a(ζ4uζ
v s + ζ4−uζ v s) = aζ4−uζ v s(ζ 2u 4 + 1) = aζ4−uζ v s((−1) u+ 1) = 0. (4.8) したがって, r̸= 2 の場合を示せばいい. そこで, pB∥(x − 1)となるB ∈ Nを取ると, x̸≡ 1 mod pm, x≡ 1 mod rより, 1≤ B < mで, p = 2のときは2≤ B だから,補題4.2より, pm−1∥(xpm−B−1− 1), pm∥(xpm−B− 1). (4.9) K ={h ∈ H | h ≡ 1 mod pm−1} とおき, H =∪ ν xνK を剰余分解とする. h = xpm−B−1 とおくと, (4.9)より, h∈ K \ {1}で, hp= xpm−B ≡ 1 mod pm.よって, h の位数はpとなり, h, h2, . . . , hp は相異なる K の元. このとき, K ={hi | i = 1, 2, . . . , p}となる. 実際,全 射準同型 fm−1: G → (Z/pm−1Z)× k + pmZ 7→ k + pm−1Z
を考えると, K = H∩ ker f ≺ ker f だから,#K|#ker f
m−1 = pとなり, #K = p. そこで, i = 1, 2, . . . , p に対し, hi= 1 + w
ipm−1 でwi∈ Zを定めると,
hi≡ hj mod pm⇔ wipm−1 ≡ wjpm−1mod pm⇔ wi≡ wjmod p となるから,{wi| 1 ≤ i ≤ p}はZ/pZの完全代表系であり, gcd(u, pm) = 1に注意すると, p ∑ i=1 ζuwi p = p ∑ i=1 ζwi p = p ∑ i=1 ζpi = 0. したがって, σhi(ζprms) = ζuh ir pm ζsvr = ζpurmζ uwipm−1r pm ζsvr= ζpurmζsvr= ζprmsに注意すると, η(H) =∑ ν ( p ∑ i=1 σxνσhi(aζpms) ) =∑ ν σxν ( p ∑ i=1 aζpuhmiζsv ) =∑ ν σxν ( p ∑ i=1 aζpumζ uwipm−1 pm ζsv ) =∑ ν σxν ( aζpms p ∑ i=1 ζuwi p ) = 0. これらの命題を用いて, η(H)の次数について先行研究と同様の結果が得られることを示す. まず, η(H)̸= 0 とすると,定理4.5より, H は条件(4.1)を満たす. よって,定理4.4より,任意のc∈ G \ H に対し, σc(η(H))̸= η(H).すると, Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs)(η(H))) ={σ ∈ Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))|∀α∈ Qp(ζs)(η(H)), σ(α) = α} ={σ ∈ Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs))| σ(η(H)) = η(H)} ={σc| c ∈ G, σc(η(H)) = η(H)} ={σc| c ∈ H} (4.10) ≃ H
となる. したがって, [Qp(ζs)(η(H)) :Qp(ζs)] = [Qp(ζpms) :Qp(ζs)] [Qp(ζpms) :Qp(ζs)(η(H))] = #Gal(Q p(ζpms)/Qp(ζs)) #Gal(Q p(ζpms)/Qp(ζs)(η(H))) = #G #H = (G : H). ゆえに, 1つめの主結果として次が得られた.
主結果
1
(G : H) = eとすると, η(H)̸= 0のとき, η(H)はQp(ζs)上e次である. すなわち, [Qp(ζs)(η(H)) :Qp(ζs)] = e が成立する.4.2
中間体の原始元
L =Qp(ζpms), K =Qp(ζs)とおく. H に対応するL/K の中間体をF とすると, (4.10)より, Gal(L/F ) ={σc| c ∈ H} = Gal(L/K(η(H))) だから, F = K(η(H)) となり, F のK上の原始元はη(H) であることが分かる. 主結果1から直ちに F/K の原始元が求められるのはη(H)̸= 0 となる場合だが,適当な円分拡大での議論 に帰着させることで, η(H) = 0の場合も求められることが分かったので, その議論について説明する. 基本 的なアイデアとしては円分拡大 Qp(ζpms)/Qp(ζs)の中間にある円分拡大Qp(ζpls)/Qp(ζs)で, F に対応する Gal(Qp(ζpls)/Qp(ζs))の部分群 H′ がη(H′)̸= 0 となるようなものを見つける. まず, 定理4.4の証明でも 述べたように, H が条件(4.1)を満たすこととH∩ ker f = {1}が同値になるので, 定理4.5より, η(H) = 0⇔ H ∩ ker f ̸= {1}. H∩ ker f = ker(f ◦ ι)だから,準同型定理より, H/(H∩ ker f) → (Z/rZ)× x(H∩ ker f) 7→ x + rZ (4.11) は単射準同型となる. ところで,前節の冒頭で述べたように S : G = (Z/pmZ)× → Gal(Qp(ζpms)/Qp(ζs)) c 7→ σc (4.12) は同型写像である. そこで,準同型 H → S(H) → S(H)/S(H ∩ ker f) x 7→ σx 7→ σxS(H∩ ker f) (4.13) を考えれば全射であり,核がS−1(S(H∩ ker f)) = H ∩ ker f となるので, 次の群同型が得られる. H/(H∩ ker f) ≃ S(H)/S(H ∩ ker f) x(H∩ ker f) 7→ σxS(H∩ ker f) (4.14) ここで, J = H∩ ker f とおき, LS(H)をLH と略記することにすると, Galois理論の基本定理より, S(H) = Gal(L/LH), S(J ) = Gal(L/LJ) (4.15)となるから,
H/J ≃ Gal(L/LH)/Gal(L/LJ)
xJ 7→ σxGal(L/LJ)
(4.16)
一方, [1]の定理5.2より,
Gal(L/LH)/Gal(L/LJ) → Gal(LJ/LH)
σGal(L/LJ) 7→ σ| LJ (4.17) は同型写像なので, これらを合成すれば H/J → Gal(LJ/LH) xJ 7→ σx|LJ (4.18) は同型写像となる. 実はLJ は円分体になる. その詳細を述べるためにいくつか補題を用意する. 補題4.6. k≤ mとなるk∈ Nに対し, Lker fk=Q p(ζpks)である.
Proof. Galois 理 論 の 基 本 定 理 よ り, L/K の 中 間 体 と, Gal(L/K) の 部 分 群 は 1 対 1 対 応 す る か ら, Gal(L/Lker fk) = Gal(L/Q
p(ζpks))を示せばいい. まず, #Gal(L/Lker fk) =#S(ker f
k) =#ker fk= pm−k #Gal(L/Q p(ζpks)) = [L :Qp(ζpks)] = [Qp(ζpm) :Qp] [Qp(ζpk) :Qp] =p m−1(p− 1) pk−1(p− 1) = p m−k
だから, 位数は等しい. 次に, Gal(L/Lker fk) = S(ker f
k)の元を任意に取ると, x∈ ker fk を用いて, σxと表 せる. su′+ pkv′= 1を満たすu′, v′∈ Zを取ると, x∈ ker f k より, x≡ 1 mod pk を満たすから, σx(ζpks) = ζu ′x pk ζ v′ s = ζ u′ pkζ v′ s = ζpks.
よって, σx∈ Gal(L/Qp(ζpks))となるから, Gal(L/Lker fk)⊂ Gal(L/Qp(ζpks)). したがって, Gal(L/Lker fk), Gal(L/Q
p(ζpks))は位数の等しい有限集合で包含関係にあるから,一致する. 補題4.7. (1) ker f は巡回群である. (2) H∩ ker f = ker flとなる l∈ Nが存在する. (3) l = min{n ∈ Z≥r/p| LH ⊂ Q p(ζpns)}. Proof. k∈ Nを用いて, r = pk と表すことにする. (1)・m = 1またはr = 2のとき (Z/pmZ)× が巡回群なので,その部分群であるker f も巡回群である. ・m≥ 2かつr̸= 2のとき 補題4.1より,#ker f = pm−k だから, 位数pm−k の元がker f に存在することを示せばいい. g = r + 1とおくと, g≡ 1 mod rより, g∈ ker f である. pk∥(g − 1)だから,補題4.2より, pm∥(gpm−k− 1) (4.19) となる. つまり, gpm−k≡ 1 mod pm.
ここで, gpm−k−i ≡ 1 mod pmを満たすi∈ Nが存在すると仮定とすると, pB∥(gpm−k−i− 1)を満たすB∈ N はB≥ m ≥ 2である. すると,再び補題4.2より, pB+i∥(gpm−k−ipi− 1) (4.20) となるが, B + i̸= mなので, (4.19)に矛盾する. したがって, g の位数はpm−k となり, ker f は巡回群である. (2)
ker f1⊃ · · · ⊃ ker f = ker fk⊃ ker fk+1⊃ · · · ⊃ ker fm−1⊃ ker fm={1} (4.21) という部分群の列が存在し, 0≤ i ≤ m − k に対し, 補題4.1より,
(ker f : ker fk+i) =
pm−k
pm−k−i = p
i. (4.22)
H∩ ker f はker f の部分群だから,あるj ∈ Nに対して, (ker f : H∩ ker f) = pj となる. 巡回群の部分群
は指数で一意に定まるから, l = k + j とおけば, H∩ ker f = ker fl.
(3) N = min{n ∈ N | LH ⊂ Q
p(ζpns)}, N′ = min{n ∈ Z≥2 | LH ⊂ Qp(ζpns)} とおく. n∈ Nが LH ⊂
Qp(ζpns) = Lker fn を満たすとすると, Gal(L/LH) ⊃ Gal(L/Lker fn). よって, H = S−1(Gal(L/LH))⊃
S−1(Gal(L/Lker fn)) = ker f
n となり,
ker fl= H∩ ker f ⊃ ker fn∩ ker f (4.23) 一方, H∩ ker fl= H∩ (H ∩ ker f) = H ∩ ker f = ker flだから, H⊃ ker fl. すると, Gal(L/LH) = S(H)⊃
S(ker fl) = Gal(L/Lker fl)となり, LH ⊂ Lker fl=Qp(ζpls)だから, N の最小性より, l≥ N となる.
・r = pのとき
ker fN∩ ker f = ker fN ∩ ker f1= ker fN となるから, (4.23)より, ker fl⊃ ker fN となり, l≤ N.したがっ て, l = N である.
・r = 4のとき
l = 1とすると, ker f1= ker fl= H∩ ker f2⊂ ker f2 となり,矛盾するので, l≥ 2である. これと l≥ N よ
り, l≥ N′.また, ker fN′∩ ker f = ker fN′∩ ker f2 = ker fN′ となるから, (4.23)より, ker fl⊃ ker fN′ と なり, l≤ N′.したがって, l = N′ である. min{n ∈ Z≥r/p | LH ⊂ Qp(ζpns)} = { N : r = p N′ : r = 4 だから,題意は示された. 命題4.8. LH⊂ Q p(ζpls)を満たす最小のr/p以上の自然数l に対し, LJ=Qp(ζpls).
Proof. 補題4.7より, J = H∩ ker f = ker fl であるから,補題4.6より, LJ =Qp(ζpls).
LJ が円分体であることが分かったので, η(H) = 0の場合でもLH/Qp(ζs)の原始元が求められるように, 節の前半の議論を円分拡大Qp(ζpls)/Qp(ζs)で行う. M = LJ =Qp(ζpls)とおくと, 全射準同型
G ≃ S(G) = Gal(L/K) → Gal(L/K)/Gal(L/M) ≃ Gal(M/K)
c 7→ σc 7→ σcGal(L/M ) 7→ σc|M
の核はS−1(Gal(L/M )) = S−1(Gal(L/LJ)) = J だから, S′: G/J → Gal(M/K) cJ 7→ σc|M (4.25) は同型写像となる. 一方, J = ker flだから,準同型定理より, ˜ fl: G/J → (Z/plZ)× cJ 7→ c + plZ (4.26) は同型写像となり, S′◦ ˜fl −1 で定まる T : (Z/plZ)× → Gal(M/K) c + plZ 7→ σ c|M (4.27) は同型写像となる. τc= σc|M とおくと, τc(ζpl) = σc|M(ζpl) = σc(ζpl) = σc(ζ pm−l pm ) = ζ pm−lc pm = ζpcl だから, τc は補題3.6(3)でm = l と したときのσc に等しい. そこで, G′= (Z/plZ)×, H′= ˜f l(H/J )≺ G′ とおき, η′(H′) = ∑ h∈H′ τh(a′ζpls) と定める. ただし, r′ = { 4 : p = 2, l≥ 3 p : otherwise , a ′∈ Z p[ζr ′ pls]\ {0} (4.28) である. ここで, T (H′) = S′(H/J ) = Gal(M/LH)であることとT が全単射であることから, η′(H′) = ∑ τ∈Gal(M/LH) τ (a′ζpls) = TrM/LH ( a′ζpls ) . (4.29) G′ をこの節の冒頭の Gとみなすと, H′ は r = r′ のときは条件(4.1)を満たす. 実際, π : G→ G/J; x 7→ xJ, f′ : G′→ (Z/r′Z)×; x7→ x + r′Zとすると,可換図式 G′ f ′ // (Z/r′Z)× G/J ˜ fl EE G OO f // π oo ⟲ ⟲ (Z/rZ)× ∼ があるので, H′∩ ker f′= ˜fl(H/J )∩ ( ˜fl◦ π)(( ˜fl◦ π)−1(ker f′)) = ( ˜fl◦ π)(H) ∩ ( ˜fl◦ π)(ker(f′◦ ˜fl◦ π)) = ( ˜fl◦ π)(H ∩ ker f) = ( ˜fl◦ π)(J) = {1}
となり, {x ∈ H′| x ≡ 1 mod r′} = H′∩ ker f′={1}. これに注意し, LH の原始元が η′(H′)であることを示す. 命題4.9. (1) [Qp(ζs)(η′(H′)) :Qp(ζs)] = (G′: H′). (2) LH=Q p(ζs)(η′(H′)). Proof. (1)・r = r′ のとき, H′ は条件(4.1)を満たす. 定理4.4を m = l の場合に適用すると, 任意の c∈ G′\ H′ に対し, τc(η′(H′))̸= η′(H′).すると, Gal(Qp(ζpls)/Qp(ζs)(η′(H′))) ={τ ∈ Gal(Qp(ζpls)/Qp(ζs))|∀α∈ Qp(ζs)(η′(H′)), τ (α) = α} ={τ ∈ Gal(Qp(ζpls)/Qp(ζs))| τ(η′(H′)) = η′(H′)} ={τc | c ∈ G′, τc(η′(H′)) = η′(H′)} ={τc | c ∈ H′} = T (H′)≃ H′ となる. したがって, [Qp(ζs)(η′(H′)) :Qp(ζs)] = [Qp(ζpls) :Qp(ζs)] [Qp(ζpls) :Qp(ζs)(η′(H′))] = #Gal(Q p(ζpls)/Qp(ζs)) #Gal(Q p(ζpls)/Qp(ζs)(η′(H′))) = #G′ #H′ = (G ′: H′). ・r̸= r′ のとき, r = 4, r′ = 2のときであり, p = l = 2となるので, H′ ={±1}, {1}である. u′s + 4v′ = 1を満たすu′, v′∈ Z を取ると, η′({±1}) = aζ4s+ τ−1(aζ4s) = a(ζ4u′ζsv′+ ζ4−u′ζsv′) = aζ4−u′ζsv′(ζ42u′+ 1) = aζ4−u′ζsv′((−1)u′+ 1) = 0 であるから, [Qp(ζs)(η′({±1})) : Qp(ζs)] = [Qp(ζs) :Qp(ζs)] = 1 = (G′ :{±1}). また, [Qp(ζs)(η′({1})) : Qp(ζs)] = [Qp(ζs)(aζ4s) :Qp(ζs)] = [Qp(ζ4s) :Qp(ζs)] =#Gal(Qp(ζ4s)/Qp(ζs)) =#G′= (G′:{1}). 以上より, r = r′ のときもr̸= r′ のときも[Qp(ζs)(η′(H′)) :Qp(ζs)] = (G′: H′)が成立する. (2)まず, G′/H′= ˜fl(G/J )/ ˜fl(H/J )≃ (G/J)/(H/J) ≃ G/H であるから, (G′ : H′) = (G : H).
また, [LH :Qp(ζs)] = [L :Qp(ζs)] [L : LH] = #Gal(L/Q p(ζs)) #Gal(L/LH) = #G #S(H) = #G #H = (G : H) であり, η′(H′) ∈ Qp(ζpls) だから, c ∈ H に対し, σc(η′(H′)) = τ (η′(H′)) = η′(H′) を満たす. よって, Qp(ζs)(η′(H′))⊂ LH であり,さらに [Qp(ζs)(η′(H′)) :Qp(ζs)] = (G′: H′) = (G : H) = [LH:Qp(ζs)] を満たすので, LH =Q p(ζs)(η′(H′)). 以上の命題4.8, (4.29),命題4.9(2)より, 2つ目の主結果として次が得られた.
主結果
2
m, s ∈ N は gcd(pm, s) = 1 を 満 た す と し, Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) = Qp が 成 立 す る と 仮 定 す る. Qp(ζpms)/Qp(ζs) の中間体 F に対し, F ⊂ Qp(ζpls) を満たす l ∈ Z≥r/p の中で最小のものを l と する. このとき, (4.28)のa′ に対し, η = TrQp(ζpl s)/F ( a′ζpls ) とおくと, F =Qp(ζs)(η)である. 補題4.7より, lの条件はH に関する条件として表せるので,この主結果は次のように表すこともできる.主結果
2’
m, s ∈ N は gcd(pm, s) = 1 を満たすとし, Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) = Qp が成立すると仮定する. G = (Z/pmZ)×とし, H をGの部分群, F をH に対応するQp(ζpms)/Qp(ζs)の中間体とする. H∩ ker f = ker flを満たすl∈ Nを取り, (4.26)のf˜lと(4.28)のa′ に対し, η = ∑ h∈ ˜fl(H) τh(a′ζpls) とおくと, F =Qp(ζs)(η)である.5
中間体の原始元の具体的な計算
前節の結果を具体的なp, m, sに適用する.5.1
仮定の十分条件
gcd(pm, s) = 1のもとで, Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) =Qp (5.1)という条件の十分条件について考える. Qp(ζpm) Qp(ζpms) Qp(ζs) Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) Qp まず,Qp(ζs) =Qp,つまり, [Qp(ζs) :Qp] = 1が(5.1)の十分条件であることは直ちに分かる. ord(p + sZ) をp + sZの位数とすると,命題3.4より,これは ord(p + sZ) = 1,つまり, p≡ 1 mod s (5.2) と同値になる. しかし,この条件はp = 2のときはs = 1 となり,自明なものしか出てこない. そこで, 他の十 分条件を検討する. (5.1)は [Qp(ζpm)∩ Qp(ζs) :Qp] = 1 (5.3) と 同 値 で あ り, Qp(ζpm) ∩ Qp(ζs) は Qp(ζpm),Qp(ζs) の 部 分 体 だ か ら, [Qp(ζpm) ∩ Qp(ζs) : Qp] は gcd([Qp(ζpm) :Qp], [Qp(ζs) :Qp])を割り切る. よって, (5.1)の十分条件として gcd([Qp(ζpm) :Qp], [Qp(ζs) :Qp]) = 1 が考えられ,命題3.3, 3.4より,これは次と同値である. gcd(pm−1(p− 1), ord(p + sZ)) = 1 (5.4) 命題5.1. t∈ Nとする. q をpと異なる奇素数で, ( p q ) = 1, gcd ( p(p− 1),q t−1(q− 1) 2 ) = 1 を満たすとき, s = qtとおくと, p, sは(5.4)を満たす. ただし, ( p q ) はLegendre記号である. Proof. ( p q ) = 1 であるから, [6]の命題14.2より, x2 ≡ p mod s となる x ∈ Z が存在する. よって, g を (Z/sZ)× の生成元とすると, p ≡ g2dmod s となる d ∈ N が存在する. ord(g) = qt−1(q − 1) より, 2| gcd(2d, ord(g))となるから, ord(p + sZ) = ord(g) gcd(2d, ord(g)) | qt−1(q− 1) 2 ただし,等号成立は [6]の補題8.13による. すると, gcd (p(p− 1), ord(p + sZ)) | gcd ( p(p− 1),q t−1(q− 1) 2 ) = 1 となるから, gcd(p(p− 1), ord(p + sZ)) = 1であり, gcd(pm−1(p− 1), ord(p + sZ)) | gcd(p(p − 1), ord(p + sZ)) であるから, gcd(pm−1(p− 1), ord(p + sZ)) = 1.
5.2
p = 2
のとき
命題5.1でt = 1としたときの条件は ( 2 q ) = 1 (5.5) gcd ( 2,q− 1 2 ) = 1 (5.6)となるが, (5.5)はq≡ 1, 7 mod 8と同値で, (5.6)は q≡ 3 mod 4と同値だから, q ≡ 7 mod 8.よって, 例 えば, q = 7 が取れる. a = a′ = 1, m = 4 とし, L = Q2(ζ112), K = Q2(ζ7), G = (Z/16Z)× とおくと, G≃ Gal(L/K)の部分群とGalois理論の基本定理によって対応する L/K の中間体は次のようになる. G =⟨−1, 5⟩ H1=⟨3⟩ H2=⟨5⟩ H3=⟨7, 9⟩ H4=⟨9⟩ H5=⟨7⟩ H6=⟨−1⟩ {1} K LH1 LH2 LH3 LH4 LH5 LH6 L
まず, H2= ker f = ker f2, H4= ker f3 となるから, LH2 =Q2(ζ28), LH4 =Q2(ζ56)である.
・Hi∩ ker f = ker f となるi(̸= 2, 4) は存在しない.
・Hi∩ ker f = ker f3 となるのはi = 1, 3 のときであり,これらは小さい円分拡大Q2(ζ56)/K で考える
ことになる. H1/ ker f3={ker f3, 3 ker f3}であるから, H1′ ={1, 3}となり,
η′(H1′) = ∑
h∈H1′
τh(ζ56) = ζ56+ τ3(ζ56) = ζ8−1ζ7+ ζ8−3ζ7= ζ7(ζ8−1+ ζ8−3).
よって, LH1 = K(ζ
7(ζ8−1+ ζ8−3)) = K(ζ8−1 + ζ8−3). H3/ ker f3 = {ker f3, 7 ker f3} であるから,
H3′ ={1, 7}となり, η′(H3′) = ∑ h∈H3′ τh(ζ56) = ζ56+ τ7(ζ56) = ζ8−1ζ7+ ζ8−7ζ7= ζ7(ζ8−1+ ζ8−7) = ζ7(ζ8+ ζ8−1). よって, LH3 = K(ζ 7(ζ8+ ζ8−1)) = K(ζ8+ ζ8−1). ・Hi∩ ker f = ker f4={1}となるのはi = 5, 6のときであり,これらは元々の円分拡大Q2(ζ112)/K で 考える. η(H5) = ∑ h∈H5 τh(ζ112) = ζ112+ σ7(ζ112) = ζ167 ζ7−3+ ζ 49 16ζ7−3= ζ7−3(ζ16+ ζ167 ) であるから, LH5= K(ζ−3 7 (ζ16+ ζ167 )) = K(ζ16+ ζ167 ). η(H6) = ∑ h∈H6 τh(ζ112) = ζ112+ σ−1(ζ112) = ζ167 ζ7−3+ ζ16−7ζ7−3= ζ7−3(ζ 7 16+ ζ16−7) であるから, LH6= K(ζ−3 7 (ζ 7 16+ ζ16−7)) = K(ζ 7 16+ ζ16−7).
したがって, L/K の中間体は次のように決定される. K K(ζ8−1+ ζ8−3) Q2(ζ28) K(ζ8+ ζ8−1) Q2(ζ56) K(ζ16+ ζ167 ) K(ζ 7 16+ ζ16−7) L
5.3
p = 5
のとき
条件(5.2)を満たすsとして, s = 4が取れる. a = a′ = 1, m = 2とし, L =Q5(ζ100), K =Q5(ζ4), G = (Z/25Z)× とおくと, G≃ Gal(L/K)の部分群とGalois理論の基本定理によって対応するL/K の中間体は 次のようになる. G =⟨2⟩ H1=⟨4⟩ H2=⟨7⟩ H3=⟨16⟩ H4=⟨−1⟩ {1} K LH1 LH2 LH3 LH4 L まず, H3= ker f = ker f1となるから, LH3=Q5(ζ20)である. ・Hi∩ ker f = ker f となる i(̸= 3)はi = 1のときであり,これは小さい円分拡大Q5(ζ20)/K で考えることになる. H1/ ker f ={ker f, 4 ker f}であるから, H1′ ={1, 4}となり,
η′(H1′) = ∑ h∈H1′ τh(ζ20) = ζ20+ τ4(ζ20) = ζ5−1ζ4+ ζ5−4ζ4= ζ4(ζ5+ ζ5−1). よって, LH1 = K(ζ 4(ζ5+ ζ5−1)) = K(ζ5+ ζ5−1). ・Hi∩ ker f = ker f2={1}となるのはi = 2, 4のときであり,これらは元々の円分拡大Q5(ζ100)/K で 考える. η(H2) = ∑ h∈H2 τh(ζ100) = ζ100+ σ7(ζ100) + σ−1(ζ100) + σ−7(ζ100) = ζ25−6ζ4+ ζ258 ζ4+ ζ256ζ4+ ζ25−8ζ4 = ζ4(ζ256 + ζ25−6+ ζ258 + ζ25−8) であるから, LH2= K(ζ 4(ζ256 + ζ25−6+ ζ258 + ζ25−8)) = K(ζ256 + ζ25−6+ ζ258 + ζ25−8). η(H4) = ∑ h∈H4 τh(ζ100) = ζ100+ σ−1(ζ100) = ζ25−6ζ4+ ζ 6 25ζ4= ζ4(ζ 6 25+ ζ25−6)
であるから, LH4= K(ζ 4(ζ256 + ζ25−6)) = K(ζ256 + ζ25−6). したがって, L/K の中間体は次のように決定される. K K(ζ5+ ζ5−1) K(ζ6 25+ ζ25−6+ ζ258 + ζ25−8) Q5(ζ20) K(ζ256 + ζ25−6) L
6
考察・まとめ
Evansによるperiod polynomialの研究の中で, 有理数体上の円分拡大に対して,中間体の原始元が明示的 に表示できることが証明された. 本論文ではこの先行研究における議論が, p進体上の円分拡大にも通用する かを試みた結果, 部分的な証明を得ることができた. 本論文で得られる原始元は正規基底定理を用いた議論 から得られる原始元以外も含んでいる. 例えば, L = Q3(ζ9), F =Q3(ζ9+ ζ9−1), K =Q3 とすると, ζ9 の Gal(L/K)による像はζ9, ζ92, ζ94, ζ95, ζ97, ζ98であるが, ζ92+ ζ95+ ζ98= ζ92(1 + ζ93+ ζ96) = 0 となり, 基底にならないから, 正規基底定理を用いた議論からTrL/F(ζ9) = ζ9+ ζ9−1 が F/K の原始元で あるとは言えない. しかし, 本論文の主結果2からはTrL/F(ζ9) = ζ9+ ζ9−1 が F/K の原始元であること が導かれる. したがって,本論文の結果は一般論に含まれるものではないといえる. しかしながら, 円分拡大 Qp(ζns)/Qp(ζs)のうち, nがpのべき乗であり, かつQp(ζn)∩ Qp(ζs) =Qp を満たすという特殊な場合に ついてしか示すことができなかった. 今後の課題としてはnがpのべき乗でない場合や仮定Qp(ζn)∩ Qp(ζs) =Qp を外した場合を検討し,より 一般的な主張を導くことが考えられる. また,主結果2におけるl の条件は第4節での議論の通り,群の条件 から得られたものだが,これを体の条件に言い換えたのは[7]で触れられていた導手の概念に着想を得ている. lの条件について,導手に関連する理論,例えば類体論の観点から考察することも今後の課題として考えられる.
7
謝辞
本研究は,著者が首都大学東京大学院理工学研究科数理情報科学専攻博士前期課程在学中に,同大学院理学 研究科数理科学専攻の内田幸寛准教授の指導の下に行ったものである. 適切な助言を賜り,熱心に指導してく ださった内田幸寛准教授に深く感謝いたします. また,ご多忙の中,本論文の副査を快諾していただきました内 山成憲教授と津村博文教授に感謝いたします. さらに, 学部4年次より3年間,同じ研究室の仲間として苦楽 を共にした唐澤諒氏,武田嵩史氏にも感謝いたします.参考文献
[1] 森田康夫,代数概論,裳華房, 1987
[2] 藤崎源二郎,体とGalois理論2,岩波書店, 1977
[3] David A. Cox(著),梶原健(訳),ガロワ理論(下),日本評論社, 2010
[4] Ronald J. Evans, Period Polynomials for General Cyclotomic Periods, manuscripta math. 40, 217 –243(1982)
[5] J. Neukirch(著),梅垣敦紀(訳),代数的整数論,シュプリンガ―ジャパン, 2009 [6] 木田雅成,数理・情報系のための整数論講義,サイエンス社, 2007