• 検索結果がありません。

社会と医療

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会と医療"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

松山赤十字病院 精神科・心療内科

永井美緒

精神疾患合併の頻度

コミュニティ 外来症例 総合病院入院症例 精神疾患全体 16% 21-26% 30-60% 大うつ病 2-6% 5-14% 15%以上 パニック障害 0.5% 11% 身体化障害 0.1-0.5% 2.8-5% 2-9% せん妄 15-30% 物質依存 2.8% 10-30% 20-50% 「新世紀の精神科治療4 リエゾン精神医学とその治療学」より一部改変

I. せん妄について

II. 「死にたい」気持ちを抱えた方への対応

①せん妄の診断と病態

②薬剤性せん妄

③せん妄の薬物療法

④アルコール離脱せん妄

①せん妄の診断と病態

「夜間不穏」=せん妄じゃない!!

せん妄の診断基準(DSM-5)

注意の障害(注意の方向付け、集中、維持、転換する能力の低下)および 意識の障害(環境に対する見当識の低下)。 その障害は短時間のうちに出現し(通常数時間~数日)、もととなる注意 および意識水準からの変化を示し、さらに1日の経過中で重症度が変動 する傾向がある さらに認知の障害を伴う 他の既存の、覚醒した、または進行中の神経認知障害ではうまく説明さ れないし、昏睡のような覚醒水準の著しい低下という状況下で起こるもの ではない 病歴、身体診察、臨床検査所見から、その障害が他の医学的疾患、物質 中毒または離脱(乱用薬物や医療品によるもの)、または毒物への曝露、 または複数の病因による直接的な生理学的結果により引き起こされたと いう証拠がある。

(2)

せん妄発症のメカニズム

神経伝達物質のアンバランス? 意識障害⇒中枢神経のメカニズムに何らかの変化 アセチルコリン活性の欠乏? ドパミン活性の亢進? 神経炎症? 全身の炎症⇒末梢のサイトカイン産生、血液脳関門の破綻 急性ストレス反応? 強い身体負荷⇒カテコラミン分泌⇒HPA系賦活 神経障害? 代謝異常や虚血性変化⇒ニューロン傷害 藤澤大輔、横尾実乃里 「高齢者のせん妄の機序」日老医誌 2014;51:417-421より

せん妄の分類

過活動型 (3項目以上満たす) ・過覚醒 ・落ち着かなさ ・早口または大声での会話 ・易怒性 ・好戦性 ・我慢できないこと ・暴言 ・放歌 ・笑い ・非協調性 ・多幸 ・怒り ・徘徊 ・驚きやすさ ・早い運動反応 ・転導性亢進 ・会話の脱線 ・悪夢 ・固執した思考 低活動型 (4項目以上満たす) ・注意力低下 ・清明度の低下 ・発語減少または遅滞 ・傾眠 ・動作緩慢 ・凝視 ・無気力 混合型 *過活動型と低活動型の両方を満たす

Liptzin B, Levkoff SE : An empirical study of delirium subtypes. Br J Psychiatry 161 : 843-845, 1992

暴れる=せん妄

うつ病と 紛らわしい

誘発因子

(薬剤・身体)

せん妄は「精神的な問題」ではない。 抗精神病薬は症状を緩和するが、 根本的な解決ではない。

準備因子

促進因子

せん妄に関わる因子

せん妄の準備因子

年齢 高齢 性別 男性 認知機能 認知症、せん妄の既往 ADLレベル 要介護状態、体動困難、転倒の既往 感覚障害 視覚障害、聴覚障害 経口摂取困難 脱水、低栄養 薬剤 向精神薬の多剤併用、アルコール依存 身体合併症 複数の疾患、肝・腎障害、脳卒中の既往、神経疾患、代謝異常、 骨折・外傷、終末期、HIV感染 和田健 「せん妄の臨床 リアルワールド・プラクティス」より一部改変

せん妄の誘発因子

薬剤

全身状態

感染症、膠原病、悪性新生物、脳血管障害、心不全、肝不全、

呼吸不全、腎不全、低血糖、外科手術、外傷、電解質異常(高

カルシウム血症、低ナトリウム血症)など

当院でよく見る原因薬剤 オピオイド、トラマドール(トラマール、トラムセット)、BZ系睡眠薬・抗不安 薬(ブロチゾラム・エチゾラム等)、H2ブロッカー(ファモチジン等)、抗ヒス タミン薬(アタラックスP等)、抗コリン薬など

せん妄の促進因子

環境変化 身体拘束 不快な症状は混乱を助長 疼痛 尿閉 宿便 発熱 口渇 など 不快な症状を和らげると せん妄も改善しやすい

(3)

②薬剤性せん妄

薬物療法を開始する前にちょっと考えてください。

薬剤

オピオイド

薬剤性せん妄に占める割合(%)

54

ベンゾジアゼピン

24

コルチコステロイド

21

H

2

受容体拮抗薬

19

抗けいれん薬

6

抗コリン薬

6

抗ヒスタミン薬

4

その他

9

Arch Neurol 57:1727−1731, 2000

薬剤性せん妄の原因薬剤

認知機能障害の頻度

服用群(26/530) 4.9% プラセボ群(4/481)0.8%

OR4.78 (P<0.019)

ω1受容体選択性薬剤(ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロ

ン)でもBZと認知機能障害頻度に差はなかった。

高齢者には原則BZ系薬剤は投与しない。

どうしても投与する場合は、できるだけ短時間型を少量

BZ系以外の睡眠薬(ロゼレム®、ベルソムラ®)

BZ系薬剤と認知機能

Glass, J.et al. : Sedative hypnotics in older people with insomnia : meta-analysis of risks and benefits. BMJ, 331 ; 1169-1176, 2005

③せん妄の薬物療法

発症契機の薬剤や身体症状への介入が一番大切!!

・・・でも、「それだけじゃムリ!!」なときの薬物療法

せん妄に対する薬物療法

内服できる 内服できない 興奮あり 興奮なし ①抗精神病薬 リスパダール、セロクエル、 セレネース、オランザピン等 ②気分安定薬の併用 デパケン/セレニカ、テグレトール 抗うつ薬 レスリン、テトラミド ①セレネース点滴投与 ②やむをえず鎮静 *セレネース静脈内投与では、不整脈に注意が必要 *セロクエル・オランザピンは糖尿病禁忌 日本総合病院精神医学会治療指針2005より一部改変

せん妄に対する抗精神病薬①

内服できる 興奮あり ①抗精神病薬 リスパダール、セロクエル、 セレネース、オランザピン等 ②気分安定薬の併用 デパケン/セレニカ、テグレトール Step 1 抗精神病薬の頓用 処方例① リスパダール内用液(0.5)1包 1時間以上あけて1日3~4回程度まで 処方例② セロクエル(25)1T 1時間以上あけて1日3~4回程度まで Step 2 抗精神病薬の定期内服 処方例① 2日間リスパダールを1包使用 リスパダール内用液(0.5)1包分1夕食後 頓用は継続⇒使用量によって定期量を漸増 処方例② 昨夜はセロクエル1錠使用で良 く眠れた セロクエル(25)1T分1眠前 頓用は継続⇒使用量によって定期量を漸増

(4)

せん妄に対する抗精神病薬②

Step 1 セレネースの静脈投与 処方例① セレネース1A程度を持続点滴中に混ぜて投与 処方例② セレネース0.5~1A+生食を夕方~寝る前に点滴 Step 2 やむをえずベンゾジアゼピン系薬剤併用 ミダゾラムやサイレースを生食 で希釈して入眠まで投与 せん妄増悪遷延化を避けるため最小限に。 呼吸抑制に要注意。 内服できない ①セレネース点滴投与 ②やむをえず鎮静

抗精神病薬

中枢のドパミン神経の情報伝達を遮断 ⇒抗幻覚妄想作用:本来は統合失調症治療薬(つまり、適応外使用) 使用上のポイント 大興奮をし始めてから薬を使っても効果は得られにくい。投薬時の拒否 も強くなり、危険が伴う。 不穏が予測される場合は早めの投与が有効 毎日同じくらいの時間に不穏になる場合は、定期投与する 抗精神病薬使用時の注意 2005年FDA勧告「非定型抗精神病薬を認知症患者に用いた場合に致死 率が1.4-1.6倍増加する」 心臓病患者への投与 錐体外路症状 高血糖 ★セレネース注使用時★ 初回使用時など、必要に応じて 心電図モニターを使用しよう

抑肝散

効能効果 虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症状:神経症、不眠症、 小児夜なき、小児疳症 せん妄・認知症患者への治療応用 イライラ、不安、不眠、易怒性、興奮、幻覚、妄想などの症状を緩和 使用上の注意・工夫 低K血症(甘草による) 漢方薬を飲むのが苦手な方:水で溶かしたものをリンゴジュースで割 ると飲みやすい

④アルコール離脱せん妄

リスクを評価して、適切に予防・対応しよう

アルコール離脱せん妄

 アルコールもBZも共にGABA受容体に作用することを用いて、敢えてBZ系を用 いて偽飲酒状態を作りアルコール離脱症状を軽減させ、BZ系を漸減中止する。  精神運動興奮が激しい場合には抗精神病薬を併用。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 (時間) 小離脱 大離脱 振戦 軽い発汗 一過性幻覚 けいれん発作 軽い見当識障害 精神運動興奮 振戦 自律神経症状 激しい発汗 幻覚 著しい見当識障害 内服可能な場合 処方例① ジアゼパム(セルシン) 15㎎分3から開始して漸減中止 処方例② ロラゼパム(ワイパックス) 1.5~3㎎分3から開始して漸減中止 *肝機能が悪くても比較的使いやすい 内服不能の場合 処方例 ジアゼパム(セルシン)0.5~1Aを1日2~3回静脈注射あるいは筋肉注射

自殺企図後や自殺念慮のある患者への基本的な対応ができるよう

になりましょう

(5)

自殺企図後の対応

自殺しようという意図があった

YES

自殺しない約束ができる

YES

YES

精神科受診を促す

精神科入院を勧める

NO

今も死にたい気持ちがある

NO

注意深く経過観察

直後は落ち着い て見えることも

どのように話すか?

話しやすい雰囲気作り 「理解されている」「安心して話せる」と感じられる いきなり核心をつくのではなく、少しずつ話していく 具体的に尋ねる 「生きる価値がないと感じますか?」「自殺をしようと考えていました か?」など 具体的な計画があり、用意周到な自殺企図であったかどうか 自殺企図してしまったことをどう思っているか 今後自殺しないことを約束できるか(自殺したいと思うことと、実際に 自殺しようとすることは別のこと) 自殺について尋ねることで自殺を促すことはありません 否定的な態度ではなく、「自殺を考えるくらいツライ」気持ちに理解を示そう

自殺危険因子

自殺未遂歴 ★最も重要な危険因子 精神疾患の既往 気分障害、統合失調症、物質関連障害、パーソナリティ障害 サポートの不足 未婚、離婚、配偶者との死別、職場での孤立 性別 自殺既遂は男性が多く、自殺未遂は女性が多い 喪失体験 経済的損失、地位の失墜、病気やけが、業績不振、予想外の失敗 性格 未熟・依存的、衝動的、完全主義、孤立・抑うつ的、反社会的 他者の死の影響 精神的に重要なつながりのあった人が突然不幸な形で死亡 事故傾性 自殺が前触れなしに起きるというよりも、それに先立つ自己の安全 や健康を守れない状況がしばしば生じている 例)慢性疾患への予防や医学的助言を無視するようになる等 児童虐待 小児期の心理的・身体的・性的虐待 「精神科専門医のためのプラクティカル精神医学」より一部改変

自殺予防の観点で、危険性の評価と対応

サポートできる体制は整っているか 死ぬことや自殺についてどのように考えているか 自殺についてどのような準備をしているか 漠然と考えている 自殺方法について調べている 自殺する道具を用意している 深 刻 危険性 考え 行動 予防的介入 比較的低い 死を意識 ・本人の気持ちを支える、問題の整理と助言 ・必要に応じて専門家への紹介 中等度 自殺することを考えている 実行計画は立てていない ・死にたい気持ちの裏にある「生きたい気持ち」に 働きかける ・精神科医療への導入 高い 自殺の方法を 具体的に考え ている 自殺の準備を 始めている ・自殺手段を取り除く、付き添いをおく ・医療等での保護

希死念慮のある人への対応

死にたい気持ちがある

YES

自殺しない約束ができる

YES

YES

精神科入院を勧める

NO

精神科受診を促す

自殺を計画し始めている

NO

注意深く経過観察

最後に

精神疾患の罹患頻度は、身体疾患治療中の患者では高く

なります。身体科の治療を実施するにあたっても、患者の

精神状態について十分に注意を払うことが重要です。

本日は、せん妄と自殺に関する基本的対応について紹介

しました。その他にも不安や抑うつ状態になる方もたくさん

おられます。身体疾患だけでなく、全人的視点で治療に取

り組んでいただければと思います。

参照

関連したドキュメント

 神経内科の臨床医として10年以上あちこちの病院を まわり,次もどこか関連病院に赴任することになるだろ

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

 ところで、 2016年の相模原市障害者殺傷事件をきっかけに、 政府

7.自助グループ

ア  入居者の身体状況・精神状況・社会環境を把握し、本人や家族のニーズに

岩沼市の救急医療対策委員長として采配を振るい、ご自宅での診療をい

 日本一自殺死亡率の高い秋田県で、さきがけとして2002年から自殺防

となってしまうが故に︑