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Microsoft Word - JCOG0203総括報告書 doc

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JCOG0203 総括報告書

JCOG0203:未治療進行期低悪性度 B 細胞リンパ腫に対する抗 CD20 抗体療法 + 化学療法 [Rituximab + standard CHOP (R・S-CHOP) vs Rituximab + bi-weekly CHOP (R・ Bi-CHOP)] のランダム化比較第 II/III 相試験 2011 年 5 月 11 日 研究代表者: 飛内賢正 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 研究事務局: 渡辺隆 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 解析担当: 柴田大朗 JCOG データセンター 水澤純基 JCOG データセンター データマネージャー 渡部裕子 JCOG データセンター 甲木博美 JCOG データセンター

0. 試験概要

未治療進行期(Ann Arbor 臨床病期 III/IV 期)の CD20 抗原陽性低悪性度 B 細胞リンパ 腫患者を対象として、より有効性の高い標準的治療法を確立することを目的に、リツキシマブ と standard CHOP 療法の併用療法(R・S-CHOP)を対照群とし、化学療法の用量強度増強と G-CSF 併用による抗体療法の効果増強が期待される bi-weekly CHOP 療法とリツキシマブの 併用療法(R・Bi-CHOP)の有効性をランダム化比較第 II/III 相試験により評価する。 <エンドポイント> 第 II 相部分 primary endpoint:完全奏効(CR/CRu)割合、 secondary endpoints:奏効割合、無増悪生存期間、全生存期間、安全性 第 III 相部分 primary endpoint:無増悪生存期間、 secondary endpoints:全生存期間、安全性 第 II 相から第 III 相部分への移行の可否は中間解析結果の評価に基づいて決定する。 <対象> ① CD20 抗原陽性低悪性度 B 細胞リンパ腫と診断されている ② Ann Arbor 臨床病期(clinical stage; CS): III 期もしくは IV 期 ③ 末梢血液中腫瘍細胞≦10,000/mm3 ④ 年令 20 歳以上、69 歳以下 ⑤ PS:0-2 ⑥ 化学療法、放射線治療、インターフェロン、抗体療法の既往がない <治療> A 群:R・S-CHOP 3 週 1 コース B 群:R・Bi-CHOP、G-CSF6 日間 2 週 1 コース

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R・CHOP 療法

薬剤 投用量(投用法) 投与日 (day)

Rituximab

375 mg/m2(div)

1 Cyclophosphamide (CPA) 750 mg/m2 (div) 3 Doxorubicin(ADM) 50 mg/m2 (div)

3 Vincristine (VCR) 1.4 mg/m2 (iv) (Max. 2.0 mg) 3 Prednisolone (PSL) 100 mg (po) 3-7 <割付調整因子> 施設、Bulky mass、年齢:60 歳以下/61 歳以上 予定登録数:300 名、登録期間:4.5 年、追跡期間:登録終了より 3 年

1. 背景

CD20 抗原陽性低悪性度 B 細胞リンパ腫とは、ホジキンリンパ腫以外の悪性リンパ腫 [非 ホジキンリンパ腫] のうち、2001 年版 WHO 分類(第 3 版)による

①小リンパ球リンパ腫

(small lymphocytic lymphoma)、②リンパ形質細胞リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma)、 ③脾辺縁帯リンパ腫(splenic marginal zone lymphoma)、④節外性辺縁帯 B 細胞リンパ腫 (MALT リンパ腫)(extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALT- lymphoma))、⑤節性辺縁帯 B 細胞リンパ腫(nodal marginal zone B-cell lymphoma)、⑥濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)の 6 つの疾患を指す。 これらの、CD20 抗原陽性低悪性度 B 細胞リンパ腫(indolent B-NHL)は経過が緩慢であり、 進行期であっても生存期間中央値は 7-10 年と長いが、進行期のほとんどは組織学的進展 などによって最終的に死亡する難治性の疾患であり、長期予後は中・高悪性度リンパ腫よりも むしろ悪い。わが国の濾胞性リンパ腫の人口 10 万当りの発生率は 0.5 と報告されていたこ ともあり、これまで低悪性度 B 細胞リンパ腫を対象とした JCOG 臨床試験は行われてこなかっ た。

しかし、1994 年に REAL 分類(Revised European-American Classification of Lymphoid Neoplasms)が発表された後、わが国における低悪性度 B 細胞リンパ腫の発生頻度は従来の 認識より高い可能性が示唆された。

2. 試験経過

本試験は、2002 年 9 月 1 日に登録を開始した。登録期間を 4 年、追跡期間を登録終了後 3 年として、1 群あたり 100 名、両群で 200 名とし、52 施設で試験を開始した。当初の計画で は、第 1 回中間解析は、第 II 相部分の登録 82 名の効果判定が終了した時点で、各群で独 立に検定し、両群とも少なくとも CHOP 療法単独で得られる完全奏効(CR/CRu)割合が、閾 値 CR/CRu 割合 35%よりも優っていることを検定(有意水準 10%、検出力 90%)する予定であっ た。 しかし薬事法上の適応拡大に伴い保険診療下で投与可能な回数が増えたため、リツキシ マブの投与回数を 4 回から 6 回へ増加させるプロトコール改正を実施し(2003 年 10 月 21 日

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第 2 回プロトコール改正)、これに伴い、4 回投与で行われた 73 名での中間解析を、有意水 準 15%、検出力 85%で行うことに変更した。 第 1 回中間解析:第 II 相部分の登録達成後、各群の有効性と安全性を評価する 2005 年 8 月 3 日、第 II 相部分 73 名で実施された第 1 回の中間解析の結果、上記内容を 満たしていることから、JCOG 効果・安全性評価委員会によって、本試験の第 III 相への移行 が承認された。一方で、後述するように、本試験では当初の予定よりも患者登録ペースが速 かったことから、臨床仮説の再検討、及びそれに伴う必要登録数、試験期間の再設計を行っ た。本試験計画当初、試験治療である R・Bi-CHOP 療法が toxic new arm と考えられ、また、 わが国では欧米に比べ濾胞性リンパ腫をはじめとする indolent B-NHL の頻度が比較的低い とされており、第 II 相部分に登録された患者も第 III 相部分の解析に含める第 II/III 相試験と して本試験を開始した。JCOG リンパ腫グループとして初の indolent B-NHL に対する臨床試 験であったこともあり、当初の患者登録ペースの見積もりが困難であった。 第 1 回中間解析の結果、以下の 2 点が判明した。 1) 2005 年 5 月 6 日に JCOG データセンターより提出されたモニタリングレポート(追跡対 象:130 名)によると、第 II 相部分の毒性のうち懸念されていた JCOG9809 の bi-weekly CHOP 群で認められた間質性肺炎はむしろ A 群に出ているのみであり、B 群に多いわ けではなかった。 2) Grade 3 以上あるいは予期されない Grade 2 の非血液毒性は両群間に差はなく、 G-CSF 予防投与によると思われる好中球減少およびそれに伴う感染症については B 群の方が低率の傾向を示し、治療期間短縮が毒性の増加に結びついているわけで はなく、むしろ逆であった。 B 群に不利な点を改めて挙げると、連日通院あるいは入院に伴う負担と余分にかかる医療 費であり、リスク/ベネフィットバランスの観点からは、当初考えた 15%の両群間の差よりも小さ い差であっても「臨床的に意味のある」差と考えられた。 以上を踏まえ、A 群の 3 年無増悪生存割合を、B 群のそれが 12%以上上回るか否かを検出 する優越性試験デザインとした場合、登録 4.5 年、追跡 3 年、有意水準 =5% (片側) として、 1 群あたり 146 名あれば検出力を 80%以上に保つことが可能であり、若干の不適格を見込ん で、第 III 相として各群 150 名、両群計 300 名に予定登録数を変更、登録期間 4 年を 4.5 年 に延長した。(2005 年 9 月 20 日 第 5 回プロトコール改訂) 第 2 回中間解析:第 III 相部分の登録終了後、適切な追跡期間を設定する 2008 年 3 月 1 日、2 回目の中間解析 (第 III 相部分) 結果が JCOG 効果・安全性評価委 員会により審査・承認された。 最終解析: プロトコール改訂の際の予定どおり、最終患者が登録されてから 4 年半の後に最終解析が 行われ、JCOG データセンターより最終解析レポートが 2010 年 7 月 12 日に提出された。その 後、2010 年 12 月の米国血液学会年次総会での発表に向けて、2010 年 9 月 1 日の追跡調 査に基づいてアップ・デートされた追加解析レポートが 2010 年 10 月 27 日に提出された。試

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験最終結果を研究事務局が 2010 年 12 月 6 日に、米国血液学会年次総会において口演発 表した。 プロトコール改正・改訂の主な内容は以下のとおりである。 第 1 回改訂(v1.1) 2003 年 2 月 19 日承認: 登録前検査の実施期限の延長 第 2 回改正(v2.0) 2003 年 10 月 21 日承認:リツキシマブ投与回数を 4 回→6 回 第 3 回改訂(v2.1) 2004 年 1 月 7 日承認:効果判定、CRF の修正 第 4 回改訂(v2.2) 2005 年 6 月 24 日承認:第 1 回中間解析 統計学的記述の変更 第 5 回改訂(v2.3) 2005 年 9 月 20 日承認: 予定登録数 200→300 名 登録期間 4 年→4.5 年に延長 第 6 回改訂(v2.4) 2006 年 3 月 15 日承認:HB 抗体測定の追加、PET 追加 第 7 回改訂(v2.5) 2006 年 8 月 31 日承認:A 群に ST 合剤予防投与の追加 第 8 回改訂(v2.6) 2007 年 1 月 23 日承認:患者説明同意文書の追記

3. 登録状況

本試験は実際の患者登録ペースが予定登録ペースを上回り、登録開始から 1 年 9 か月を 経た 2004 年 5 月の登録数は既に予定登録数の半分に相当する 100 名を超え、2005 年 8 月 31 日までに、合計 192 名(A 群:97 名、B 群:95 名)が登録されており、登録期間を終える 前に予定登録数を達成することが見込まれた。 2005 年 9 月 20 日、登録期間を 4.5 年、登録数を 300 名とするプロトコール改訂を実施し たが、改訂後の登録ペースも順調であった。合計 44 施設から患者登録があり、そのうち上位 3 施設は国立がん研究センター中央病院 (52 名)、愛知県がんセンター中央病院 (25 名)、 埼玉県立がんセンター (19 名)であった。8 施設では患者登録はなく、そのうち 6 施設が協力 施設へと移行している。

4. 背景因子と病理中央診断

全登録例 300 名のうち、149 名が R・S-CHOP 群 (A 群) に 151 名が R・Bi-CHOP 群 (B 群) に割り付けられた。年齢中央値は A 群:54 歳 (27-69)、B 群:55 歳 (33-69) で、性別に 関して両群間で差はなかった。B 症状※を有する患者は比較的 A 群に多く、一方、濾胞性リ ンパ腫国際予後因子(FLIPI :Follicular Lymphoma International Prognostic Index )の 1 つで ある「貧血」や、国際予後因子(IPI:International Prognostic Index)の 1 つである「2 つ以上の 節外病変」をもつ患者は若干 B 群に多い傾向が認められたが、両群間で問題になる差は認 められなかった。

全登録例における FLIPI の low-risk group は 32.3%、intermediate-risk group が 41.7%、 high-risk group が 26.0%であり、若干 B 群に high-risk group が多い傾向を認めた。JCOG デ ータセンターと研究事務局の review によって判明した不適格は 1 名であり、登録後、施設診 断の再評価に基き、本来不適格と定義した組織学的進展(より悪性度の高いリンパ腫への進 展)を有する患者であった。

一方、病理中央診断においては登録した全 300 名の組織診断標本を各施設から回収し、 研究事務局の立会のもと血液病理医 3 人により中央診断作業を完遂した。プロトコールで規

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定された病理適格例は 2001 年版 World Health Organization (WHO) 分類 (第 3 版) に基 づいて判定し、2001 年版 WHO 分類において成熟 B 細胞腫瘍(mature B-cell neoplasms) の う ち 小 リ ン パ 球 リ ン パ 腫 ( small lymphocytic lymphoma ) , リ ン パ 形 質 細 胞 リ ン パ 腫 (lymphoplasmacytic lymphoma), 脾辺縁帯リンパ腫(splenic marginal zone lymphoma), 節外 性辺縁帯 B 細胞リンパ腫(MALT リンパ腫)(extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALT lymphoma)), 節性辺縁帯 B 細胞リンパ腫(nodal marginal zone B-cell lymphoma), 濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)の indolent NHL とさ れた。300 名のすべてで病理中央診断に必要な病理組織標本が回収された。病理中央診断 によって、不適格とされた 14 名の内訳は、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma) 4 名、 びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)6 名、形質細胞腫 (plasmacytoma) 1 名、その他 3 名であった。病理中央診断適格例はこれらを除いた 286 名 (95%)であり、濾胞性リンパ腫が 265 名 (A 群:133 名、B 群:132 名) で全適格患者数のうちの 88%を占めた。 ※B 症状:全身の倦怠、発熱、盗汗(ねあせ)、体重の減少などがみられる場合があり、これ らの全身症状を総称して B 症状と呼ぶ。

5. 治療経過

プロトコールで規定した治療を完了したのは、A 群で 149 名中 147 名 (98.7%)、B 群で 151 名中 144 名 (95.4%) であった。プロトコール治療中止理由として、有害事象による治療中止 例は A 群で 1 名 (0.7%) (肺臓炎)、B 群で 4 名 (2.6%) (右膝窩動脈血栓症、急性胆のう炎、 白血球減少遷延、出血性膀胱炎、各 1 名) で、有害事象に伴う患者拒否による治療中止は A 群で 1 名 (0.7%) (コース毎の反復性発熱)、B 群で 2 名 (1.3%) (嘔吐 1 名、疲労・うつ状態 1 名)、その他 B 群で 1 名(自殺による)であった。 治療のコンプライアンスについては、プロトコール治療が行われた全 300 名を対象に解析 された。主に 1) 予定治療期間達成割合:両群間で、実治療総期間を予定治療総期間で割 った数値 (%) とその累積割合との関係を比較すること、2) % planned dose:リツキシマブと CHOP 療法の併用療法に用いられたすべての抗がん剤の割合 (実際の総投与量を予定さ れた総投与量で割った数値) を両群間で比較することで検討した。 1)予定治療期間達成割合の分布については両群間で差はなかった。B 群の治療間隔が A 群のそれに近づく (2 週毎の治療間隔が 3 週間隔へと延びる) 傾向は認められなかった。 2) % planned dose について、各抗がん剤の% planned dose とそれに伴う累積割合も群間で問 題となる差はみられなかったが、ビンクリスチン(VCR:vincristine) に関しては B 群で少ない傾 向が認められた。

6. 安全性

1) 血液毒性および非血液毒性 プロトコール治療が 1 コースでも行われた全 300 名が評価の対象とされた。Grade 4 の好中 球減少は A 群で 84.6%、B 群で 37.1%、Grade 3 の感染症は A 群で 50 名 (33.6%)、B 群で 23 名 (15.2%) と、いずれも R・Bi-CHOP 群の方が低かった。これは B 群において計画的にコー

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ス間での G-CSF 予防的投与が行われたことに起因するものと考えられる。なお、Grade 4 の 感染症、Grade 4 の血小板減少は、両群とも認められなかった。

なお、Aggressive lymphoma (中悪性度リンパ腫) を対象として行われた standard CHOP 療 法と bi-weekly CHOP (Bi-CHOP) 療法を比較する JCOG9809「進行期 aggressive lymphoma に対する standard CHOP と dose-intensified CHOP との無作為化比較試験」では、Grade 4 の好中球減少の発生頻度が、CHOP 療法群では 83.6%と本試験の R・S-CHOP 療法群とほぼ 同等であったのに対し、Bi-CHOP 群では 52.2%と本試験の R・Bi-CHOP 群よりも高頻度に認 められた。

Grade 3 の末梢神経障害は、A 群で 3 名 (2.0%)、B 群で 11 名 (7.3%) みられており、この ために VCR の累積割合が B 群で低くなったものと推定される。その他、若干 B 群に多く認め られたのは、Grade 3 の食欲不振・便秘で、それぞれ、A 群に 4.0%、B 群に 7.3%、A 群に 4.0%、 B 群に 6.6% 認められた。後者も、前述した VCR による末梢神経障害の影響が考えられた。 同じ理由によると思われる Grade 3 のイレウスは A 群で 1%、B 群で 3%に認められた。一方、 Grade 3 の AST、ALT 上昇は両群とも、それぞれ 3%、5%の頻度で生じていたが、腎毒性は認 められなかった。他の頻度の低かった非血液毒性は、いずれも両群間で差はなかった。いず れの群においても治療関連死は認められなかった。B 群での自殺した 1 名については 2 サイ クル目の出来事であった。特記すべき既応歴や家族歴はなく、また、プレドニゾロン内服中・ 内服後とも明らかに異常な精神症状は認められず、担当医は、治療と自殺との因果関係は 否定的と判断しており、班会議でも検討し治療と自殺との因果関係は否定的と判断してい る。 JCOG9809 の経験より、Bi-CHOP 療法施行例におけるニューモシスティス肺炎併発の危険 性に注意を喚起し、B 群においては試験開始当初より、ST 合剤(抗菌薬)の予防投与を推奨 していた。しかし、2006 年 5 月 24 日に A 群での間質性肺炎の有害事象報告があった。2006 年度前期モニタリングでは、A 群の 7 名に間質性肺炎が発症し、うち 6 名はニューモシスティ ス肺炎であることが判明した。一方、B 群では間質性肺炎の発症はなく、ST 合剤の予防投与 実施による効果と考えられた。このため、以後 A 群においても ST 合剤の予防投与を実施す ることとした。(2006 年 8 月 31 日 第 7 回プロトコール改訂) 2) リツキシマブの輸注関連毒性(悪寒、発熱、掻痒感、発疹、咽頭部違和感など) B 群ではリツキシマブ投与による輸注関連毒性が G-CSF 併用により増強される可能性を考 慮し、2 回目までは入院で投与することとした。しかし、実際に初回投与で Grade 3 以上の有 害事象を認めたのは A 群 6 名、B 群 4 名であった。これらはアレルギー反応以外に胸痛、低 酸素血症、低血圧、失神、発熱、徐脈があり、いずれも予期し得るものであった。 この件に関し、モニタリング・レポートからリツキシマブ投与による Grade 3 の輸注関連毒性 を抽出し、今後の輸注関連毒性に対する予防策を講じるために、2006 年 11 月 18 日の班会 議で検討した。しかし、病変の分布を含め、輸注関連毒性の重症化を予測しうる明らかな因 子を見出すことはできなかった。胸水貯留例で輸注関連毒性が重症となった例が 2 名あった。 その後も、通常報告の対象として検討した。 3) B 型肝炎 一方、リツキシマブを併用した化学療法では B 型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎が劇 症化して死亡することが散発的に報告されていた。さらに 2005 年、医学誌「Leukemia」に

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HBs 抗原陰性の慢性リンパ性白血病患者のリツキシマブ治療後の劇症 B 型肝炎の報告があ ったことから、2006 年 2 月 28 日までに 230 名 (76.7%) が既に登録されていたが、その時点 で取り得る最善の手段として既報告を参考にし、HBs 抗原、抗 HBs 抗体に加えて、治療開始 前に抗 HBc・HBe 抗体の測定も義務づけ、抗 HBc 抗体高力価の場合は抗 HBV ウイルス剤 を予防投与することとした(2006 年 3 月 15 日 第 6 回プロトコール改訂)。しかし、早期に本 試験に登録され A 群に割付られた治療前抗 HBs 抗体陽性の 1 名が、プロトコール治療完了 後の増悪時に、本プロトコール治療終了後の一般診療としてリツキシマブ単独投与を受けた 後、B 型肝炎を併発し非代償性肝硬変に至り、腹水貯留などの症状が悪化し、腎不全を合 併して死亡に至った。(この 1 名を除いて、他にはプロトコール治療中・後を通して B 型肝炎 発症は認めていない。) このような B 型肝炎の既往については、現在、厚生労働省科学研究費による班研究として、 治療開始前抗 HBs 抗体あるいは抗 HBc 抗体陽性の場合は B 型肝炎ウイルス量を経時的に 測定し、肝炎発症前にウイルス再活性化をもって抗 HBV ウイルス剤を投与することにより肝 炎発症を予防する「リツキシマブ+ステロイド併用悪性リンパ腫治療中の B 型肝炎ウイルス再 活性化への対策に関する研究」の多施設共同臨床試験が施行中である。 4) 二次がんの可能性 A 群では骨髄異形成症候群(MDS)、胃がん、急性骨髄性白血病(AML)各 1 名の計 3 名、 B 群では直腸がん、大腸がん、膀胱がん、胃がん、急性リンパ性白血病各 1 名の計 5 名であ った。JCOG9809 では二次がん (A: CHOP 群 8 名, B: Bi-CHOP 群 21 名) うち MDS/AML (A 群 0, B 群 5 名) が Bi-CHOP 群に多かった。この違いは、本試験での観察期間中央値が 5.2 年 (最終患者の登録から 3 年 6 か月) に対し JCOG9809 試験では最終患者登録から 7 年と 長く、観察期間の違いによる可能性も考えられる。よって、本試験実施患者においても今後 のさらなる慎重な経過観察の必要性が示唆される。

7. 有効性

1) 完全奏効 (CR/CRu) 割合 プロトコール治療完了 7〜8 週後に最終的な効果判定が行われた。その結果、第 II 相部分 のプライマリー・エンドポイントである完全奏効(CR/CRu)割合は、施設判定では A 群:59.5% (22/37)、B 群:69.4%(25/36)、中央判定では、A 群:48.6%(18/37)、B 群:50.0%(18/36) であ った。この結果から、いずれの群も閾値とした CHOP 療法単独の治療成績から期待される完 全奏効割合 35%を超えており、本試験が第 III 相に移行可能と第 1 回中間解析で判断された。 またセカンダリー・エンドポイントである奏効割合は A 群が 97.3%、B 群が 97.2%と差を認めな かった。 なお、本試験の第 II 相部分においては、施設判定による完全奏効(CR/CRu)47 名につい てのみ 5 回にわたり効果の中央判定が施行された。効果の中央判定とは研究事務局の立会 のもと参加施設とは独立した 2 人の放射線診断医からなる CT 効果判定委員による判定会で ある。そのため、施設判定による部分奏効(PR)が効果の中央判定で CR あるいは CRu と判定 される可能性があるが、PR については効果の中央判定を施行していないために低めの値と なるが、第 II 相部分の完全奏効(CR/CRu)割合は、前述の通り、閾値を超えるものであった。 ちなみに、全適格例 299 名中、施設診断による完全奏効(CR/CRu)割合は A 群:148 名中

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116 名 (78.4%)、B 群:151 名中 115 名(76.2%)であった。また病理中央診断適格例 286 名で は A 群:142 名中 112 名 (78.9%)、B 群:144 名中 110 名 (76.4%) であった。これらの結果に 比べ、第 II 相部分での完全奏効割合が低かったのは、第 II 相部分ではリツキシマブが 4 回 しか投与されなかったことが一因となっている可能性が考えられる。 2) 無増悪生存期間 Progression-free Survival (PFS) 全適格例 299 名を対象にして行われた最終解析の結果、無増悪生存期間中央値は A 群 で 3.70 年 (95%CI, 2.96-5.11 年)、B 群では 4.67 年 (95%CI, 3.07 年-推定不能) であった。 5 年および 6 年無増悪生存割合は、A 群でそれぞれ 42.5% (95%CI, 34.1-50.6%)、41.1% (95%CI, 32.6-49.4%)、B 群でそれぞれ 47.9% (95%CI, 39.3-56.0%)、42.8% (95%CI, 33.4-51.8%) であった。B 群の A 群に対するハザード比は 0.919 (95%CI, 0.676-1.249)、層別 log-rank 検 定による両側 P 値は 0.5911 であり、両群間の無増悪生存期間に差は認められなかった。病 理中央診断適格例 286 名を対象とした解析でも、5 年および 6 年無増悪生存割合は、A 群で それぞれ 42.9% (95%CI, 34.3-51.2%)、41.4% (95%CI, 32.7-49.9%)、B 群でそれぞれ 47.3% (95%CI, 38.4-55.6%)、43.6% (95%CI, 34.2-52.7%) であり、同様の結果であった。また、病理中 央診断による indolent B-NHL の代表的疾患である濾胞性リンパ腫 265 名 (A 群:133 名、B 群:132 名) の結果は、無増悪生存期間の中央値は A 群:3.98 年 (95%CI, 3.12-6.34 年)、B 群:4.67 年 (95%CI, 2.94 年-推定不能) で、5 年および 6 年無増悪生存割合は、A 群でそれ ぞれ 44.2% (95%CI, 35.2-52.8%), 42.6% (95%CI, 33.5-51.5%)、B 群でそれぞれ 47.3% (95%CI, 38.0-56.0%), 43.3% (33.4-52.8%) であった。

3) 全生存期間 Overall Survival (OS)

全適格例における 5 年および 6 年全生存割合は、A 群でそれぞれ 92.8% (95%CI, 87.0-96.1%)、87.0% (95%CI, 78.3-92.4%)、B 群でそれぞれ 92.2% (95%CI, 86.3-95.6%)、88.0% (95%CI, 79.8-93.0%) であり、両群間で全生存期間に差を認めなかった。 死因は原疾患によるものが 20 名 (登録例の 6.7%) (A 群:10 名、B 群:10 名)、後治療によ る治療関連死 5 名 (1.7%) (A 群 2 名、うち 1 名は同種移植後、B 群 3 名、いずれも同種移植 後)、他病死 6 名 (2.0%) (A 群 3 名、B 群 3 名、A 群に 1 例、B 群に 2 例二次がんを含む)、 自殺 1 名 (B 群) と、死因別にみても両群間に差は認められなかった。 4) サブグループ解析

FLIPI のリスク・グループに従ったサブグループ解析では、全適格例での low-risk group 97 名における 5 年および 6 年無増悪生存割合は、A 群でそれぞれ 46.0% (95%CI, 31.6-59.2%)、 42.7% (95%CI, 28.2-56.5%)、B 群でそれぞれ 53.1% (95%CI, 35.3-68.0%)、47.8% (95%CI, 29.3-64.1%)、intermediate-risk group 125 名の 5 年および 6 年無増悪生存割合は A 群でと もに 42.0% (95%CI, 28.9-54.4%) で変わらず、B 群でそれぞれ 50.6% (95%CI, 37.5-62.3%)、 43.6% (95%CI, 29.4-56.9%)、high-risk group 77 名の 5 年および 6 年無増悪生存割合は A 群 でそれぞれともに 38.4% (95%CI, 22.1%-54.6%)、B 群でともに 37.6% (95%CI, 23.1-52.0%)であっ た。したがって、いずれのリスク・グループにおいても、A 群、B 群間での差は無増悪生存期 間、全生存期間とも認められなかった。

また、IPI のリスク・グループに従ったサブグループ解析を low/low-intermediate-risk group と high/high-intermediate-risk group 別に行ったが、いずれのサブグループにおいても無増 悪生存期間、全生存期間とも両群間に差を認めなかった。さらに年齢による (60 歳以下と 61

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歳以上) サブグループ解析においても、いずれの年齢層においても無増悪生存期間、全生 存 期 間 と も 両 群 間 で 差 を 認 め な か っ た 。 IPI の low/low-intermediate ま た は high/high-intermediate-risk group 別、FLIP の low と intermediate と high-risk group 別、性、 bulky 病変の有無、あるいは IPI、FLIPI にそれぞれ採用された因子を用いたサブグループ別 に、無増悪生存期間、全生存期間それぞれにつきフォレストプロットを作成したが、いずれの サブグループの点推定値の 95%CI も 1 をまたぐ結果となった。このような多変量の Cox 回帰 の結果、検定に用いたリスク因子によりハザード比の点推定値が変らず、R・Bi-CHOP 群の 治療を受けた方が明らかにハザード比が低くなる因子は認められず、両群間で無増悪生存 期間、全生存期間の差が認められない結果への群間における予後因子の偏りによる影響は 否定的と判断された。ちなみに、第 II 相部分でのセカンダリー・エンドポイントの一つであった 無増悪生存期間を第 II 相部分登録 73 名に限ってみてみると、A 群の無増悪生存期間中央 値は 3.12 年 (95%CI, 1.99 年-推定不能)、B 群の中央値は 2.34 年 (95%CI, 1.50 年-3.64 年) で、5 年および 6 年無増悪生存割合は A 群でそれぞれ 40.5% (95%CI, 24.9-55.7%), 37.8% (95%CI, 22.6-53.0%)、B 群でそれぞれ 27.8% (95%CI, 14.5%-42.8%), 22.2% (10.5%-36.7%) であ った。 第 II 相部分のもう 1 つのセカンダリー・エンドポイントである全生存期間を同じく第 II 相部分 登録例に限って解析すると、A 群、B 群とも中央値は推定不能で、5 年および 6 年全生存割 合は、A 群でそれぞれ 97.3% (95%CI, 82.3-99.6%), 89.0% (95%CI, 73.2-95.7%)、B 群でそれぞ れ 97.2% (95%CI, 81.9-99.6%), 94.4% (95%CI, 79.3-98.6%) であった。

Cox 回帰による多変量解析を治療群 (A 群 vs. B 群), 年齢 (60 才以下 vs. 61 才以上), 性別 (女 vs. 男), bulky 病変 (長径 ≥ 10 cm) (なし vs. あり), LDH 値 (施設基準値上限以 下 vs. 超える), Ann Arbor 病期 (III 期 vs. IV 期), PS (0 or 1 vs. 2), 節外病変数 (0 or 1 個 vs. 2 個以上), ヘモグロビン値 (≥ 12 g/dL vs. < 12 g/dL), 浸潤リンパ節区域数 (4 個以下 vs. 5 個以上) で行った。無増悪生存期間では男性 (ハザード比 1.647; 95%CI, 1.181-2.297; 両側 P=0.0033) だけが、全生存期間では男性 (ハザード比 2.257; 95%CI, 1.029-4.950; 両 側 P=0.0423) と LDH 施設正常上限値より上昇 (ハザード比 4.289; 95%CI, 1.935-9.507; 両 側 P=0.0003) が、統計学的に有意な予後不良因子として挙げられた。女性は、リツキシマブ 登場以前からも報告されてきた濾胞性リンパ腫の予後良好因子であるが、今回の試験でリツ キシマブの登場によってもそれが世界に先駆けて確認された形となった。また、来院しなくな ったなどの理由により追跡が途中で不能となった 5 名を除いた 295 名については、2010 年 9 月 1 日まで追跡調査が行われている。

8. プロトコール遵守

プロトコール違反による治療中止はなかった。増悪前に後治療が開始されたのは、A 群で 1 名、B 群で 2 名であった。A 群の 1 名は CRu で腹部に 40Gy の放射線治療が増悪の判定 前に施行された。B 群の 1 名はリツキシマブの薬事承認範囲が 4 回の時のプロトコール治療 後の効果判定で PR であったが、その後追跡 CT、PET で残存病変が認められたため、リツキ シマブが単独で追加投与された。B 群のもう 1 名は、有害事象 (嘔吐) に伴う患者拒否により 2 コースでプロトコール治療中止後の効果判定が PR であったため、増悪判定前に 6 コースま で R・S-CHOP 療法で治療された患者であった。本試験においては無増悪生存期間がプライ

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マリー・エンドポイントであり、プロトコール治療完了後の効果判定で CR、CRu、PR のいずれ かと判定された患者については無治療で経過観察することになっていたが、保険適用外で 維持療法としてリツキシマブが追加投与された患者はいなかった。 これまでの CHOP 療法を用いた JCOG リンパ腫グループの臨床試験で最も多いプロトコー ル不遵守は投与量変更規準に関する逸脱であるが、A 群で 43 名、B 群で 55 名、うち A 群の 1 名、B 群の 3 名はグループ検討結果により臨床的に妥当と判断された。本試験においては、 Grade 2 の神経毒性の出現時に VCR の減量が行われなかった事例である。NCI-CTC の神 経障害 Grade 3 に記載されている「日常生活に支障を来す」例を挙げて試験開始当初より具 体的に予めプロトコールに定義した。しかし、Grade 2 の定義があいまいなためか、CRF には Grade 2 の神経障害と判定されていながら、50%の VCR 減量が行われていない事例が A 群で 9 名、B 群で 10 名に認められた。現行の JCOG0601「未治療の CD20 陽性びまん性大細胞 型 B リンパ腫に対する R-CHOP 療法における Rituximab の投与スケジュールの検討を目 的としたランダム化第 II/III 相試験」では疼痛を加味した神経障害の評価による減量規準を 導入したプロトコール改訂を行っている。JCOG0203 では従来の試験と異なり、便秘ではなく、 イレウス (神経性便秘) のみで VCR の減量を規定したが、便秘で減量している事例がなおあ った。 体重減少による減量規準不遵守が目立ち、本プロトコールでは「治療前の体重に比して± 5 kg 以内の体重の場合は投与量の補正は行わない」と規定していたが、カルテの電子化に 伴い体重の変動を入力する毎に自動的に減量されている事例が多くあった。特にリツキシマ ブは体重の変動にかかわらず減量をしない規定にしていたため、この点が問題となった。一 方、「体重が±5 kg を超えた場合にのみ、体表面積を再計算して投与量を再度決定する。」 と規定していた。しかし、治療開始前の体重が電子カルテ上に記録されていないことや、日 常診療では、多少の体重変動では実際には投与量を変更しないなど、日常診療とそぐわな い面があった。また、同時期に実施されていた JCOG0112「多発性骨髄腫に対する寛解導入 療法有効患者を対象とした interferon-α,prednisolone による維持療法の第Ⅲ相ランダム化 比較試験」では±10 kg で再計算を規定していたため、同時期に異なった規準のプロトコー ルが同じグループ内で行われることにより混乱を招いていた可能性も考えられた。今後の臨 床試験に課題を残した。 リツキシマブの投与回数を当時規定の 4 回より (第 II 相部分)多く投与された患者が 4 名 (5 回、6 回各 2 名)、プロトコール改正により 4 回から 6 回へと変更したものの、その後も改正 内容の周知が徹底されず、6 回投与されなかった患者が 9 名に認められた (1 名が 5 回、他 はプロトコール改訂前通り 4 回)。 B 群において G-CSF の投与が 6 日間規定どおり行われていなかったが、規定の 6 日より 多く投与されたのは 15 名、6 日に満たないのは 35 名であった。これ以外に、最終 6 コースに おいて投与されなかったのは 6 名であった。 また、リツキシマブは検査値にかかわらず投与でき、CHOP 療法に開始規準として、プロト コールでは「各 CHOP 療法開始予定日前日または当日の検査」を義務づけていたが、リツキ シマブ投与日は day 1、CHOP 療法開始日は day 3 と定めていたことから混乱を招き、CHOP 療法開始前の検査が規定通り行われていなかった事例が多く発生した。CHOP 開始 2 日前 のリツキシマブ投与日に検査を施行していた施設があったが、CHOP 2 日前の値で開始規準

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を満していれば、リツキシマブ投与で検査値異常が加わることは少ないと考えられ、2005 年 度後期グループ検討結果では「CHOP 開始 2 日前まで」を許容とした。

さらに、プロトコールで定めた最終コースのリツキシマブ投与日から起算して第 8〜9 週 (49-62 日後) に行うべき効果判定のための re-staging 時期の不遵守が目立った。この理由と して、本試験で初めて 1999 年に Dr. Cheson らによって発表された非ホジキンリンパ腫に対す る抗腫瘍効果判定規準「International Workshop Response Criteria (IWC)」 を採用したことが 考えられる。また、ベースライン評価で骨髄や消化管浸潤を認めた場合には、CR または CRu の可能性が出たときにのみ、はじめてこれら部位の検査が必要となるため、CT 以外に骨髄 や内視鏡検査の不履行あるいは本来プロトコールで定められた効果判定のタイミングからの 遅延が目立った。班会議などの機会を利用してプロトコール遵守を呼びかけた。8 名の内視 鏡検査未施行についてはプロトコール改訂に従い、評価不能(NE)→PR 扱いとした。

9. 考察

本試験は JCOG リンパ腫グループが標準治療の確立のため indolent B-NHL に対して初 めて施行した臨床試験である。当初、従来欧米に比してその頻度が低いことから患者登録に 不安を抱きながら試験を開始したが、リツキシマブが本邦の薬事法で承認され、保険が適用 されるようになってから丁度 1 年後の比較的早期に試験を開始できたこともあって、順調な患 者登録が行われた。 また Dr. Cheson らによる効果判定規準(IWC)を適用した最初の試験であり、第 II 相試部 分のプライマリー・エンドポイントが完全奏効割合であったため、臨床試験を遂行しながらこの 効果判定規準の feasibility を確認する形になったこともあって、JCOG リンパ腫グループでは 初めての試みである効果の中央判定を導入した。施設診断の CR、CRu 例のみを対象とした とはいえ、頸部や鼠径部など効果判定に必要な病変部位が撮影 CT スライスに含まれていな かったり、集塊をなした腫大リンパ節病変の二方向積和に必要な長径と短径の計測方法に 統一性が欠けたり、二方向積和の縮小率を過不足なく評価するうえで、原典の標的病変の 選び方に問題があることを発見したりする機会となった。効果の中央判定の結果を施設にフ ィードバックしたり、班会議を利用して複数のリンパ節が癒合して成る病変の長径計測方法や 標的病変の選び方の統一を図った。 一方、病理中央診断による不適格例は 5%にとどまった。

本試験開始後、FLIPI によるリスク・グループ群 (low, intermediate, high-risk group) が発 表され (Solal-Céligny P et al. Blood 104, 1258-1265, 2004)、試験開始当初予想していなか った IPI 以外のリスク・グループ別サブグループ解析が最終解析時に必要になることが予想さ れた。しかし、過去の JCOG リンパ腫グループ試験の経験を生かした緻密な CRF を試験開始 当初から用意していたことから、新たに CRF 改訂を必要とすることなく、FLIPI に必要な“浸潤 リンパ節区域数”についてデータセンターのデータマネージャーと研究事務局間でその数え 方の統一ルールを作成し、これらをはじめとするリスク・グループ分類に必要なすべての因子 を 1 例たりとも欠失値なく拾うことができた。その結果、本試験において重要と考えられた無増 悪生存期間・全生存期間の FLIPI リスク・グループ別サブセット解析を全適格例で行うことが できた。 本試験施行中の 2005 年に、抗 CD20 キメラ型モノクローナル抗体であるリツキシマブと

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CHOP 療法を併用した R-CHOP 療法群 (n = 223) と、CHOP 療法単独群 (n = 205) との大 規模比較試験がドイツの低悪性度リンパ腫研究グループ (GLSG) によって施行され、その 結果が報告された。この試験では観察期間が短いながらも、R-CHOP 群が CHOP 群に比べ 60%治療不成功 treatment failure を減らし、有意に (P < 0.001) 治療不成功までの期間 time to treatment failure (TTF) を延長したと報告された。2 年生存割合は R-CHOP 群の 95%に対 して CHOP 群は 90%であり、有意に R-CHOP 群が優っていた (P = 0.016) (Hiddemann W et al. Blood106, 3725-3732, 2005)。

ヨーロッパで行われた第 III 相試験では、未治療進行期濾胞性リンパ腫患者を CVP 療法群 (n = 159) あるいは R-CVP 療法群 (n = 162) にランダムに割付け、R-CVP 群にプライマリー・ エンドポイントである time to treatment failure (TTF)の有意な延長が認められ (P < 0.0001)、 4 年 OS でも 83% vs. 77%と有意に改善した (P = 0.029) (Marcus R et al. J Clin Oncol 26, 4579-4586, 2008)。 また、本試験における R・S-CHOP 療法群の成績は、用いられた効果判定規準が若干異 なることから正確なことはいえないが、GLSG の試験における R-CHOP 療法群の成績と同等 あるいはそれに勝る結果であったこと、GLSG による試験に比べ R-CHOP 療法群の Grade 3/4 の好中球減少 (97% vs. 63%) および Grade 3 の感染症 (34% vs. 5%) に関しては本試験 (R・S-CHOP 群) で多発する傾向が認められたが、Grade 4 の感染症や治療関連死はなかっ たことから、現段階では R-CHOP 療法は比較的安全に施行可能といえる。 また特記すべきこととして、従来わが国では比較的頻度が低いとされた疾患群で上記 2 つ の臨床試験に匹敵する患者数を登録し、観察期間ならびにイベント数から、リツキシマブの 登場以降濾胞性リンパ腫を対象として行われてきた第 III 相試験の中では、生存期間解析に ついて世界で最も成熟した臨床試験結果を日本から発信できたといえる。 ただし、GLSG の試験では、適格規準の一つである治療介入の必要性について、具体的 に 1) B 症状あり 2) bulky 病変 (縦隔 > 7.5 cm、 他 > 5 cm)、3) 正常造血の障害、4) 急速 な病勢進行のいずれかを有するものとしており、これに対し JCOG0203 ではこのような具体的 記載がなかったことが主因と考えられる、両試験間で患者背景に大きな相違が認められた。 具体的には、R-CHOP 群 FLIPI、high-risk group (26% vs. 45%)、B 症状あり (9% vs. 40%)、 LDH 高値 (19% vs. 29%)、年齢 > 60 才 (25% vs. 38%)、浸潤リンパ区域数 > 4 (35% vs. 64%) と、いずれも予後不良因子をもった患者の占める割合が R・S-CHOP あるいは R・Bi-CHOP 療法を受けた JCOG0203 の対象患者に比較すると、GLSG 試験の R-CHOP 療法群を受けた 患者の方に明らかに多かった。これに対し男性 (48% vs. 43%)、臨床病期 IV 期 (66% vs. 70%)、 Hb < 12 g/dL (21% vs. 23%) はほぼ同じ割合であった (前者の値がすべて JCOG0203)。 リツキシマブが B 細胞 NHL に頻用される時代において dose-dense therapy の有用性は不 明である。リツキシマブが登場する以前は、aggressive NHL において JCOG9809 試験総括報 告書で示されたように、ドイツと JCOG リンパ腫グループの試験結果からは controversial であ り、ましてや indolent B 細胞 NHL においては不明である。さらに、本試験においては化学療 法の dose-dense strategy のみならず、リツキシマブの抗体治療効果を、G-CSF 併用により、 リツキシマブの主たる作用発現機序である antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity 増 強をも狙った、世界でも初めての第 III 相試験であったが、本試験で仮説を証明するには至ら

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なかった。 本試験は、用いられたいずれの抗がん剤の% planned dose ならびに患者背景に群間で偏 りはなく、最終解析における結果は妥当なものと判断できる。加えて、R・Bi-CHOP 群または R・S-CHOP 群の二次性 MDS/急性白血病発症は現在のところ合わせて 300 名中 3 名で、そ の頻度は 1%であり、通常量の化学療法による NHL の治療後、同程度の観察期間における頻 度はこれまで 1.3〜1.5%と報告されており、両治療とも初期治療として比較的安全に施行可能 な治療法といえる。R・Bi-CHOP 群では、G-CSF を必須とすることで通院が煩雑になること、 薬剤費が増すことなどの患者負担増がある。B 細胞 NHL 治療にとってリツキシマブは必須の 薬剤であり、indolent B-NHL、主に濾胞性リンパ腫に対する治療成績向上のための戦略とし て、R・Bi-CHOP 療法による dose-dense therapy は有用でないと判断した。

10. 結論と今後の方針

本試験は、R・Bi-CHOP 群が無増悪生存期間、全生存期間のいずれにおいても R・ S-CHOP 群を上回らなかった。このことから indolent B-NHL に対する治療成績改善のための 戦略として化学療法の用量強度増強と G-CSF 併用による抗体療法の効果増強が期待され る R・Bi-CHOP 療法は有用ではないと結論する。 一方、本試験においてプロトコール治療後の初回後治療を解析したところ、疾患の特性よ り、増悪が認められても無治療で経過観察されることもあり、A 群では増悪した 82 名中 12 名 (14.6%)、B 群では 78 名中 15 名 (19.2%) が追跡調査期間中後治療を受けず経過観察された ことになる。再発・再燃患者の後治療の内訳を次に示す。後治療施行 135 名中、抗体療法 + 化学療法 50 名 (A 群:31 名、B 群:19 名 (37.0%)、化学療法単独 25 名 (A 群:11 名、B 群: 14 名) (18.5%)、抗体療法単独 21 名 (A 群:9 名、B 群:12 名) (15.6%)、放射線療法 6 名 (A 群:5 名、B 群:1 名) (4.4%) の順であった。その他が 33 名 (A 群:14 名、B 群:19 名) (24.4%) あり、その中で最も多かったのが化学療法 (±抗体療法) 後に大量化学療法 + 自家移植 12 名 (A 群:4 名、B 群:8 名) (8.9%)、次が治験薬であった放射性同位元素標識抗体療法 90Y-イブリツモマブ・チウキセタン 8 名(A 群:3 名、B 群:5 名) (5.9%)、同じく治験薬である化学 療法剤抱合型抗体療法 CMC-544 5 名 (A 群:3 名、B 群:2 名) (3.7%) の順であった。治験 施行可能施設は限られており、当時治験薬としてしか施行できなかった 90Y-イブリツモマブ・ チウキセタンは現在ではわが国でも薬事承認され保険診療下で使用できるため、その後日 常診療における初回治療後の最初の再発・再燃時の後治療の頻度は定かではない。 これらの状況を踏まえて、未治療あるいは再発時の indolent B-NHL に対する標準治療確 立のための次期第 III 相試験を目下検討中である。 なお、本試験に関する最終結果報告は 2010 年 12 月に開催された米国血液学会にて発 表し、論文は現在投稿中である。さらに、R-CHOP 療法後の治療効果を維持あるいは増強 する方法としては、これまでに報告されたものでは 2 つの試験結果が参考になる。

1 つは最近報告された PRIMA 試験(Primary RItuximab and MAintenance )結果である (Salles G et al. Lancet 377, 42-51, 2011)。1) 7 cm を超える bulky 病変、2) 長径 3 cm 以上 の別々の 3 リンパ節、3) 症候性の脾腫、4) 腫瘍による臓器圧迫、5) 胸水または腹水貯留、

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6) 血清 LDH または2-マイクログロブリンの上昇、7) B 症状のいずれか 1 つを有することで 定義された、高腫瘍量をもつ濾胞性リンパ腫患者を対象に、少なくとも R-CHOP 4 コース、 R-CVP 6 コース、または R-FCM (フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン) 4 コース (いずれもリツキシマブは最低 6 回投与) による初期治療で CR、CRu または PR を得た患者 に対して、リツキシマブを 8 週ごと 12 回 (2 年間) 維持療法を行う群と無治療経過観察群とに ランダム化し、リツキシマブ維持療法が 3 年無増悪生存割合を 74.9% vs. 57.6% (ハザード比 0.55, 95%CI 0.44-0.68, p < 0.0001) と統計学的有意に延長した。ただし、全生存期間では差 が認められなかった。わが国でも同じ対象に対してリツキシマブ維持療法の治験が現在進行 中である。本試験での各群の 3 年無増悪生存割合は A 群 57.2%、B 群 58.3%で、PRIMA 試験 のコントロール群の成績と同等であった。しかし、本試験と PRIMA 試験での試験対象は上記 のように若干異なった。

もう 1 つは FIT 試験(First-line Indolent Trial) と呼ばれるもので、クロラムブシル単剤、 CVP 療法、CHOP 療法、CHOP 様療法、フルダラビン併用治療またはこれらのリツキシマブ 併用療法で“寛解導入”療法を受けた後、CR、CRu、PR 例をランダム化して90Y-イブリツモマ ブ・チウキセタンによる地固め療法のあるなしで比較した第 III 相試験である。全体で 414 名が 登録され、90Y-イブリツモマブ・チウキセタン投与群が有意に無増悪生存期間を延長した (中 央値 36.5 か月vs. 13.3 か月, ハザード比 0.465, P < 0.001)。ただし全生存期間においては 両群に差は認められなかった。無増悪生存期間中央値はセカンダリー・エンドポイントである、 すべての FLIPI リスク・グループにおいて延長された。最も高頻度に認められた90Y-イブリツ モマブ・チウキセタンの毒性は血液毒性で、Grade3-4 の感染症が 8%に認められた。 (Morschhauser F et al. JCO 26, 5156-5164, 2008)。しかし、わが国では90Y-イブリツモマブ・ チウキセタンは再発・再燃・難治例には薬事承認され保険適用となっているが、奏効例への 地固め療法としての保険適用はなく、JCOG リンパ腫グループで保険診療の範囲内で臨床 試験を計画するとしたら、再発・再燃を待って投与する試験しか計画できない。

さらに、初期治療として濾胞性リンパ腫, indolent B-NHL, マントル細胞リンパ腫を対象とし た R-CHOP 療法と R-ベンダムスチン療法の比較試験がドイツの StiL (Study Group Indolent Lymphomas) グループによって行われ、2009 年米国血液学会で発表され (Rummel MJ et al. Blood 2009; 114; 168-169 [abstract 405])、CR 割合 (40% vs. 31%, P = 0.0323)、無増悪生存 期間(55 か月vs. 35 か月, P = 0.0002) と R-ベンダムスチン群が有意に勝っていた。

これらの状況を踏まえて、未治療あるいは再発時の indolent B-NHL に対する標準治療確 立のための次期第 III 相試験を目下検討中である。

参照

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