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仮想通貨とFinTechを巡る最新の規制動向

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Academic year: 2021

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(1)

【経営

Topic

④】

仮想通貨と

FinTech

を巡る最新の規制動向

Vol.

28

(2)

仮想通貨と

FinTech

を巡る最新の規制動向

KPMG

ジャパン フィンテック推進支援室 副室長 シニアマネジャー 保木 健次 金融ビジネスの基盤となる法規制が大きく転換しつつあります。

2017

11

16

日に開催された金融審議会では、金融担当大臣の諮問を受けて、

IT

(情報技術)の進展等を踏まえた検討を行う「金融制度スタディ・グループ」を設置す ることが決議されました。 今後、同スタディ・グループにおいて銀行法、資金決済法および貸金業法といった現 行の業態別の金融規制について、機能別・横断的な法体系へのシフトを検討すると ともに、「金銭」といった金融ビジネスの根幹にかかわる金融規制の定義の横断化に ついても検討を進めることになります。 本稿では、執筆時点(

2017

11

30

日)の情報に基づいて、こうした抜本的な金融規 制の改正が検討される背景について確認するとともに、このような改正が実施され ることによる金融ビジネスへの影響について解説します。 なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめ お断りいたします。 【ポイント】

IT

の進展による顧客の変化と金融サービスの高度化がもたらした金融ビ ジネスの「アンバンドリング」と「リバンドリング」の拡大は、業態別の規 制から機能別・横断的な法体系へのシフトの検討に繋がった。 -

ビットコインをはじめとする仮想通貨の台頭は、「金銭」といった金融ビジ ネスの根幹となる基本的概念を大きく転換するだけでなく、金融機関に対 して法定通貨をベースとしたビジネスモデルとは異なるモデルへの転換 を促している。 -

金融機関は、「アンバンドリング」される機能ごとに競争力とビジネスの将 来性について見直すとともに、顧客ニーズを基点に異業種と連携するオー プン・イノベーションへの取組みを進めていくことが重要である。

保木 健次

ほき けんじ

(3)

I. FinTech

の進展と新たな

法改正の動き

1

.

業態別から機能別・横断的な金融規制へ

2017

11

16

日に開催された第

39

回金融審議会総会・第

27

回金 融分科会合同会合において、機能別・横断的な金融規制の整備等、 情報技術の進展その他のわが国の金融を取り巻く環境変化を踏ま えた金融制度のあり方について検討を行うことが決議されました。 その後、「金融制度スタディ・グループ」(以下「金融制度

SG

」とい う)が立ち上げられ、同年

11

29

日に第

1

回会合が開かれました。今 後は、金融制度

SG

の議論を取りまとめた報告書の公表やワーキン グ・グループ等への改組、同グループとしての議論および最終報告 書のとりまとめ等を経て

2020

年かそれ以降の関連法制の改正に向 けた動きが進められていくものと考えます。 これまで、いわゆる

FinTech

の進展に対応して、

2016

6

月の銀行 法等や資金決済法、

2017

6

月の銀行法等と

2

年続けて法改正され てきました。

2016

6

月の銀行法等の改正では、銀行等の子会社の業務範囲 に係る制限を緩和して、銀行によるフィンテック企業への出資を可 能にするとともに、資金決済法の改正により仮想通貨交換業者に 対する登録制が導入されました。

2017

6

月の銀行法等の改正では、家計簿アプリやクラウド会計 ソフトを念頭に電子決済等代行業者に対する登録制が導入される とともに銀行等に対してオープン

API

の導入に係る努力義務等が課 せられました。 金融制度

SG

における検討は、これらに続く第

3

弾の法改正に繋 がるものですが、業態別から機能別・横断的な法体系へのシフトや 「金銭」といった金融の基本的概念が変わる可能性があるなど、こ れまでの

2

回とは異なる抜本的な改正になると考えられます。 銀行法 第2条 この法律において「銀行」とは、第四条第一項の内閣総 理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいう。 2 この法律において「銀行業」とは、次に掲げる行為のいずれ かを行う営業をいう。 (1) 預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形 の割引とを併せ行うこと。 (2) 為替取引を行うこと。 こうした立て続けの法改正や抜本的な規制アプローチの変更は、 金融ビジネスを巡る競争環境に従来の延長線上ではなく、非連 続的な変化が起きていることを示しています。

2

.

法改正を検討する背景と現行法制の課題 金融審議会および金融制度

SG

においては、今回の法改正の背景 として次のような金融システムを取り巻く環境に関する

4

つの変化 を提示しています。 【金融システム取り巻く環境の変化】 ◦ 金融サービスを個別の機能に分解し提供するアンバンドリン グおよび複数のサービスを組合せて提供するリバンドリング の動きの拡大 ◦ 銀行に類似した金融仲介(シャドー・バンキング)の拡大 ◦ 金融機関のビジネスモデル再構築 ◦ デジタル通貨の出現等 また、現行法制の特徴と課題として、業態別の法体系に伴う業態 間の規制差異、「金銭」といった金融に関する統一的な基本的概念の 欠如および環境変化に対応していない規制の存在を挙げ、それぞ れの課題に対して、機能別・横断的法体系、金融規制における基本 的概念の横断化および変化に対応した規制の見直しといった検討 の方向性が示されています。 これらの論点のなかで金融機関にとって押さえておくべき重要 なポイントは、金融サービスのアンバンドリング・リバンドリング とそれに対応するための規制の機能別・横断的体系への変更、およ びデジタル通貨の台頭と「金銭」等の金融の基本的概念の横断化の

2

つだと考えます。

II. FinTech

の進展への対応

1

.

アンバンドリングされた銀行業務の競争相手 今回の法改正の検討における

1

つ目のポイントは、アンバンドリ ング・リバンドリングの拡大と業態別から機能別・横断的な法体系 への変更です。 銀行法上、銀行は免許を取得することによって「預金」、「貸付け」 および「為替取引」といった銀行業を営むことが認められます。言 | 図表

1

銀行固有業務と類似の金融サービスの比較 銀行固有業務 預金・為替取引 為替取引 貸付 類似業務 前払式支払手段 資金移動業 貸金業 根拠法 資金決済法 資金決済法 貸金業法 規制水準 第三者型:登録制自家型:届出制 登録制 登録制 制約 原則払い戻し禁止 少額(以下)に限る100万円 預金を受け入れない

(4)

い換えると、たとえば、「為替取引」に係る業務だけを行いたい企業 があっても、免許という厳格な規制に服する必要がありました。 しかしながら、これらの銀行業務は一定の制約の下で、下記のよ うに銀行免許を取得することなく類似の金融サービスを提供する ことが可能となっています。これがいわゆるアンバンドリングされ る金融サービスの典型例となります(図表

1

参照)。 アンバンドリングされた金融サービスは、顧客ニーズに合わせ て他のサービスとリバンドリングして提供されることが多くなり ます。たとえば、オンラインショッピングモールを運営する商流プ ラットフォーマーなどは、電子商取引だけでなく、資金移動業者と して送金サービスを提供したり、貸金業者として後述する出店者に 対するトランザクション・レンディングを提供したりすることがあ ります。 海外では、商流プラットフォーマーが、電子商取引を核にしつ つ、預金・融資・為替取引に類するサービスを組み合わせる、つま りアンバンドリングした銀行業務のすべてをリバンドリングするこ とで実態として銀行と同等の業務を行っている例も存在します。 金融機関が留意すべきなのは、リバンドリングする業務は金融 サービスとは限らないということです。このことは金融ビジネスに とって

2

つの変化を与えます。

1

つ目の変化は、これまでよりも格段に顧客接点を持つ企業の数 は減ることになり、その競争は金融・非金融の垣根を越えて行われ ることです。たとえば、顧客ニーズが商品選択、価格比較、購入決 定、資金決済、商品の受領に至る一連のフロー全体の利便性向上で ある場合、リバンドリングして顧客との接点を持つ企業は

1

つとな ります。 もう

1

つの変化は、

2

つの観点からオープン・イノベーションの 必要性が高まることです。

1

つは、顧客との接点を持つために金融 サービス以外の機能を提供する異業種との連携です。もう

1

つは、リ バンドリングされる金融サービスの分野で自社サービスが選ばれ るよう競争力を高めるためにベンチャー企業等と協働するオープ ン・イノベーションです。

2

.

台頭する新しい資金調達手段 預金・貸付け・為替取引をフルラインでサービス提供しているこ とはかつてほど顧客に訴求する効果を持たなくなり、アンバンドリ ングされた個々の金融サービスの競争力が問われることになりま す。つまり、金融機関は、

IT

を駆使して利便性の高い金融サービス を提供する企業とその金融サービス単体の競争力で立ち向かって いくことになります。 たとえば、近年「貸付け」の分野で金融機関と競合するのは従来 の貸金業者ではなく、豊富なデータと

AI

(人工知能)等を駆使した 低コストかつ迅速な融資判断が特徴のトランザクション・レンディ ングになります(図表

2

参照)。 日々の売り上げデータや顧客の評判など企業の返済能力を判 断するための正確かつ膨大なデータを有する商流プラットフォー マーは、

AI

等を駆使して迅速かつ精度の高い融資判断をするだけ でなく、資金ニーズさえも容易に把握できます。 もう

1

つ、「貸付け」の競合として急速に台頭してきているのが、仮 想通貨による資金調達である

ICO

(イニシャル・コイン・オファリン グ)です。 黎明期である

ICO

については、利用者保護に係る制度整備等いく つもの課題があるものの、利用が出店者や会計ソフト利用者に限定 されるトランザクション・レンディングと異なり、あらゆる企業の 資金調達ニーズに対応する潜在性を有しています。 こうした顧客利便性の高い金融機関を通じない資金調達手段が 拡大している環境変化のなかで、金融機関は、金融サービスをフル ラインで提供できることではなく、貸付けといった個々の金融サー ビスの競争力を磨くことで、新たな金融サービスと競争していかな ければなりません。

III.

仮想通貨の台頭への対応

1

.

「金銭」の概念が変わる 今回の法改正の検討におけるもう

1

つのポイントは、デジタル通 貨の台頭と「金銭」等の金融の基本的概念の横断化です。 デジタル通貨には、ビットコインに代表されるいわゆる仮想通貨 のほか、世界の中央銀行が盛んに研究している法定デジタル通貨、 民間銀行が発行を計画しているデジタル通貨まで多様な種類が含 まれます。 これらデジタル通貨の台頭や発行に向けた検討の拡大により、 現在「金銭」の概念が大きく揺らいでいます。たとえば、金融商品取 引法のいわゆる集団投資スキームの定義では金銭で出資または拠 出したものが同スキームに該当しますが、「金銭」に仮想通貨が含ま れないと

ICO

は集団投資スキームに該当しないということになり得 ます。また、貸金業法も「金銭の貸付け」となっており、法定通貨に よる貸付けは規制対象となる一方で仮想通貨の貸付けは規制の枠 外という事態が生じ得ることになります。 | 図表

2

トランザクション・レンディングと銀行融資の比較 トランザクション レンディング 銀行融資 売上げ・ CFの把握 日々の売上げ・決済データ 多数の提出書類決算書を含む 担保・保証 原則不要 原則必要 審査機関 短い 長い

(5)

今回の法改正の検討では、この「金銭」といった金融の基本的概 念が変更される可能性があります。銀行が金銭的価値の移転や保 存に関与できない仮想通貨が法的にも「金銭」や「売買」の資金決済 手段として認められる場合、銀行は、ビジネスモデルを大きく転換 せざるを得なくなると考えます。

2

.

仮想通貨の普及と

ICO

の台頭が変えるビジネス環境 仮想通貨の普及は、銀行固有業務の

1

つである為替取引のビジネ ス環境を一変させます。これまで為替取引は、前述の資金決済法で 認められるアンバンドリング業務を除いて、規制によって銀行が独 占的に提供してきました。 他方、仮想通貨は、エンドユーザー同士で直接金銭的価値の移転 が可能であるため、銀行は為替取引を独占することはできなくなり ます。仮想通貨による価値移転が法的に認められると銀行は、代替 手段を有する顧客に対して為替取引を営業することになりビジネ スの前提が大きく変わります。 また、「金銭」や「売買」の概念に仮想通貨が含まれ、

ICO

に係る法 規制が整備されると、前述のようにトランザクション・レンディン グの拡大も含めた企業の資金調達手段の選択肢は大きく広がり、 利便性の向上を図るなど競争力を高める施策を講じない限り、銀 行融資の競争力は大きく低下する可能性があります。

IV.

金融機関が直面する課題

1

.

ユーザーインターフェイスと顧客データの喪失 日常生活がデジタル化され、顧客のニーズを把握するために有 用な情報が増加する中、マス市場も含めて顧客ニーズを満たす商品 やサービスでなければ売れない傾向が強まっています。 そして、顧客データを集めるために必要な顧客との接点(イン ターフェイス)を巡る競争も激化しています。金融ビジネスの領域 では、台頭する家計簿アプリやクラウド会計システム等の顧客と 金融サービス提供者の間に立ってビジネスを行う電子決済等代行 業者に対して登録制が導入

2017

6

月に導入されました。 電子決済等代行業者の場合、最終的な金融サービスは金融機 関が提供するという点が特定の領域に特化したノンバンクプレー ヤーによる金融サービスの提供や仮想通貨による金融機能の代替 と異なりますが、顧客インターフェイスを金融機関から奪うという 点においては変わりありません(図表

3

参照)。 前述のように顧客と接点を持つ企業は今後絞られていく傾向が 強まります。そのなかで、企業の競争力を左右する顧客データは当 該顧客接点を有する企業に集中していくことになります。 金融機関は、特定分野に特化したノンバンクプレーヤー、電子決 済等代行業者のような中間的業者や商流プラットフォーマー、さら に銀行にとっては仮想通貨の台頭といった環境変化から生じる顧 客とのインターフェイスとそこから得られる顧客データの喪失と いう課題に直面しています。

2

.

フルライン(自前主義)からオープン・イノベーションへ 金融機関だけでなくあらゆる企業にとって、個々のサービス単位 でもリバンドリングしたパッケージであっても顧客ニーズを満た すことが最優先事項となっています。 個々のサービス単位では、単体で顧客に選ばれる、または、リバ ンドリングされる際に組み合わせの

1

つとして選ばれるサービスと なるよう他社との連携を含めたオープン・イノベーションを通じた 競争力強化が必要になると考えられます。 また、リバンドリングしたパッケージを販売する場合は、自社 サービスにこだわることなく、自社の競争力が弱いサービスや持っ ていないサービスに顧客ニーズがある場合は、積極的に異業種を 含めた他社のサービスと連携していくオープン・イノベーションが 求められます。 フィンテックコンテンツ 金融とIT技術を融合させ新たな価値を生み出すフィンテック (Fintech)が今、金融界に大きなうねりをもたらしています。 ウェブサイトでは、フィンテックに関する情報を発信しています。 kpmg.com/jp/fintech 本稿に関するご質問等は、以下の担当者までお願いいたします。     KPMGジャパン フィンテック推進支援室 シニアマネジャー 保木 健次 03-3548-5125(代表番号) kenji.hoki@jp.kpmg.com | 図表

3

電子決済代行業者の台頭による顧客接点の変化

顧客

銀行 証券

顧客

電子決済等代行業者 カード FX 投信 銀行 証券 カード FX 投信

(6)

KPMG

ジャパン marketing@jp.kpmg.com www.kpmg.com/jp 本書の全部または一部の複写・複製・転訳載および磁気または光記録媒体への入力等を禁じます。 ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり、特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません。私たちは、 的確な情報をタイムリーに提供するよう努めておりますが、情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありま せん。何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、プロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する 適切なアドバイスをもとにご判断ください。

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【特集】

進化し続ける監査法人

~ 企業の持続的成長をサポートするために

kpmg.com/ jp

KPMG

Insight

KPMG Newsletter

Vol.

28

January 2018

Focus

破壊的イノベーション

~破壊から破壊的創造へ、企業が生き残るための戦略とは V o l.28 J an ua ry 2 01 8

参照

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