韓国の通関制度
関税法第 2 条の定義では、通関に対して“通関とは、同法の規定による手続を履 行して物品を輸出・輸入又は搬送することを意味する”としており、通関には輸入・ 輸出また搬送を含むということが分かる。1) 意義
関税法及びその他関連法令では、無分別な通関を防ぐために、一定の要件を具 備するように規定している。このような内容を関税法第 226 条では、一般物品に対す る許可・承認・その他条件の具備を必要とする物品については税関長にその内容 を証憑しなければならず、税関長は内容確認後、必要に応じて義務の履行を要求 することができると規定されている。 また、特定物品に対しては関税法また対外貿易法に通関の制限を置いている。2) 通関の要件
関税法では、輸出入において法令で定めるところにより、許可・承認・表示その他 条件の具備を必要とする物品に対しては、税関長にその許可・承認・表示その他条 件を具備していることを証明しなければならず、税関長はこのような要件を備えてい るかどうかに対して確認を行い、特定部分である場合には義務を賦課して履行を要 求することができる。Ⅰ
統合公告とは、輸出入会社の便宜のために対外貿易法以外の他法令で規定し た輸出入に関連する要件及び確認手続、事後管理に対して統合して規定したもの で、輸出入会社は通関過程でこのような統合公告に抵触する物品であるかどうかを 確認しなければならず、要件具備を必要とする物品に対してはその要件を満たさな ければならない。 以下のような物品を輸入する者は、税関長が通関表示の添付を命ずる場合、そ の命令に従って通関表示を行わなければならない。 ① 法により関税の減免又は用途税率の適用を受ける物品 ② 関税の分割納付承認を受けている物品 ③ 不正輸入物品と区別するために関税庁長が指定する物品
1) 条件無し輸出入制限品目
関税法では輸出入禁止品目を規定しているが、このような物品に対してはいかな る場合でも輸出入できない。そのような物品は以下の通りである。 (1) 憲法秩序を乱すか、或いは公共の安寧、秩序又は風俗を害する書籍・刊行 物・図画・映画・レコード・ビデオ物・彫刻物その他これに準ずる物品 (2) 政府の機密を漏らすか、或いは諜報活動に使用される物品 (3) 貨幣・債権その他有価証券の偽造品・変造品又は模造品2) 相対的制限品目
相対的輸出入禁止品目とは、関税法で規定したもの以外に対外貿易法などのそ の他関連法令で輸出入に対してそれぞれの法の実効性を達成するために一定の 制限を置いているが、このような制限に合致する物品を意味する。例えば、原産地証明書の要求、知的財産権規定、麻薬、銃砲類などは、関税に 関連する法令上の要件を備えなければ通関が不可能である。
3) 特定物品に対する通関手続の制限
関税法第 236 条では特定物品、即ち、関税庁長又は税関長が監視上必要であると 認める場合は、通関駅及び通関場又は特定の税関で通関できる物品を制限できると 規定している。 仮に、漢方薬材の場合はソウル、釜山、龍塘及び漢方薬材の保管に適切な区域と して指定を受けた低温・冷蔵倉庫がある税関でのみ通関を行わなければならない。1) 意義
輸出とは、内国物品を外国に搬出することを意味し、輸出しようとする物品が対外 貿易法及び関係法令などにより輸出が可能な物品であるかどうかを先に確認しなけ ればならず、代金領収方法に対しても外国為替取引法の関係規定に基づいた制 約があるかどうかを事前に確認する必要がある。2) 輸出申告手続
物品を輸出しようとする者は、物品の品名、数量、価格その他税関長が定める事 項に対して管轄地税関長に申告を行わなければならない。この際、輸出申告は当 該物品を積載する前までに行われなければならず、管轄地税関長はこれに対して 瑕疵がない場合、これを受理しなければならない。現在は、EDI(Electronic Data Interchange)方式の輸出通関手続を導入して施行することにより、輸出物品を簡単 かつ迅速に通関しており、新聞などの報道用品やカタログなどはより簡単な方法で 輸出通関ができる。 輸出物品に対しては検査省略を原則としているものの、電算による抜粋検査又 は必要に応じて例外的に検査を実施する場合もある。この際、不正輸出又は原産 地表示の違反、知的財産権の違反などが摘発される場合、関税法などの関係法規に基づき処罰を受けるため、このようなことが発生しないように特別に留意しなけれ ばならない。 輸出申告が受理された物品は、輸出申告日から 30 日以内に韓国と外国を往来す る運送手段に積載しなければならない。ただし、積載スケジュールの変更などのや むを得ない事由がある場合は、通関地税関長に積載期間の延長承認を受けることが できる。また、積載期間内に積載されていない場合は輸出申告受理が取り消される 可能性があり、関税の還付も不可能であるため、その点に留意しなければならない。 輸出申告可能(30日以内) 出 港 積載スケジュールの確定 輸 出 契 約 締 結 信 用 状 到 着 輸 出 物 品 確 保 積 載 港 運 送 積 載
1) 輸入通関
輸入通関とは、物品を輸入しようとする者が当該物品を税関に申告し、税関長が 関税法及びその他法律に規定された規制事項を確認する一連の手続を意味する。 物品を輸入しようとする場合は、まず、該当物品が関連法令による輸入要件(検 査、検疫、許可、推薦など)を備えなければならないかを確認した上で、輸入契約を 締結した方がよい。要件具備対象に該当する物品は、要件確認機関(検査、検疫、 推薦機関など)の確認を受け、該当具備書類を備えなければ税関の通関が不可能 であるためである。すべての輸入物品は税関に輸入申告を行わなければならず、 税関で輸入申告を受理しなければ物品を国内に搬入することができない。輸入申 告は韓国に物品が到着する前でも可能である。このような申告を出港前輸入申告、 入港前輸入申告という。2) 輸入通関フロー
埠頭 自家通関 通関依頼 輸 出 入 業 者 税金納付 入 港 保 税 倉 庫 審査 減 免 検 査 輸入申告 (添付書類) -送品状 -船荷証券 -包装明細書 -その他書類 搬出 埠 頭 直 通 関 税関 関 税 士 等 申告 受理 情報 担 保 事 前 納 付 領収済通知 銀 行3) 輸入申告の時期及び要件
輸入申告は韓国に物品が到着する前だけでなく、船舶(航空機)が到着した後、 保税区域への到着前、保税区域に蔵置後、如何なる時点でも申告が可能である。 物品をどこに置いて申告するかにより、税関では便宜上、出港前申告、入港前申 告、保税区域到着前申告、保税区域蔵置後申告に区分し、出港前申告及び入港 前申告は当該物品を積載した船舶などが韓国に入港する 5 日前(航空機による場 合は 1 日前)から申告ができる。 出港前申告は、輸入しようとする物品を積載した航空機又は船舶が当該物品を 積載した空港或いは港を出発する前に輸入申告を行うことを意味するが、航空機で 輸入される物品又は日本、中国、台湾、香港から船舶で輸入される物品は、出港前 申告が可能で、輸入物品を積載した船舶が到着する入港予定地の税関長に輸入 申告を行わなければならない。 入港前申告は、輸入しようとする物品を積載した航空機又は船舶が船積地の空 港又は港を出港した後、韓国の港(空港)に入港する前に輸入申告を行うことを意 味するが、出港前申告と同様に輸入物品を積載した船舶(航空機)が到着する入港 予定地の税関長に輸入申告を行わなければならない。 保税区域到着前申告は、輸入しようとする物品が韓国の港又は空港に到着した 後、保税蔵置場への入庫前に輸入申告することを意味するが、この際の保税区域 とは、保税倉庫はもちろん、埠頭外のコンテナ保税倉庫及びコンテナ内陸通関基 地、船上も含める。 保税区域蔵置後申告は、輸入しようとする物品を保税区域に入庫した後に輸入 申告することを意味する。4) 輸入通関手続
① 輸入申告書の作成 輸入申告はどのような物品が輸入されるか、或いは物品価格及び納付税額はい くらかを税関に申告する行為で、輸入申告日が法令適用時点の基準となるのはも ちろん、課税為替レート適用の基準となる。 ② 輸入申告時の提出書類 (i) 税関に物品を輸入申告する際には、輸入申告書と共に申告書を正 確に記載したかどうか及び通関許容如何を判断する資料の提出が必 要であるが、これらの書類を“輸入申告時の提出書類”という。 (ii) 申告時に提出書類を提出しない場合、税関ではこれを補完するよう に要求し、それに応じない場合は通関が保留される可能性もある。 (iii) 提出書類目録及び提出が必要な場合 - 送品状(インボイスともいう) - 価格申告書(税関又は関税士事務所に備置している) - 船荷証券(B/L)副本又は航空貨物運送状(AWB)副本 - 包装明細書(税関長が必要ではないと認める場合は提出しないこ とができる) - 原産地証明書(関税率の恩恵を受けることができる該当国で生産 された物品であるかどうかを確認する場合などにのみ提出し、輸 出国の商工会議所などで発給する。 - 関税法第226条の規定により税関長が確認する輸入要件の対象 物品及び輸入要件の確認書類(輸入要件の内訳を電算で確認で きる場合は提出しなくてもよい) - 関税減免(分納)/用途税率適用申請書(該当物品に限る)※申告時の提出書類は、輸入荷主が原本対照済写本(ファックス、コピー) を提出することができ、税関長が提出書類の原本を確認しようとする場 合は、該当書類の原本を提出するように要求することができる。また、提 出書類のうち、申告受理前までに提出することができない、やむを得な い事由がある書類に対しては、税関長が期限を定めて申告受理後に提 出させることができる。 ① 物品検査 税関職員が輸入申告書及び提出書類だけでは各種の表示、用途、機能などを 確認することができないか、或いは申告された物品以外の物品の隠匿如何、輸入 申告事項と現品の一致如何の確認が必要とされる場合は輸入物品を直接確認す ることがあるが、これを物品検査という。 ② 物品検査対象 物品検査の対象は、書類審査だけで申告事項を確認することが困難な物品及び 輸入申告事項を不誠実に申告した会社などに対する情報を収集して電算管理し、 電算に登録された基準により輸入物品選別検査(C/S)システムにより自動選別さ れている。 ① 輸入申告受理 輸入申告受理とは、輸入者が申告した内訳に対し、税関がこれを適法かつ正当 に行われたと認めて通関を許容する行為で、実際に申告人が申告済証の交付を受 けることで申告受理が行われたとみなされる。 (i) 税関長は、納付すべき関税に相当する担保の提供を受けた後又は 納付すべき関税を納付したことを確認した場合に申告受理を行って いる。
(ii) 申告受理が行われていない物品は、まだ外国物品の状態であるため、 保税倉庫から物品を搬出することができない。 ② 申告済証の交付 (i) 税関長は輸入申告を受理した場合、輸入申告書に“輸入申告受理 印”及び申告書処理担当者の印章を捺印した上で交付している。 (ii) この際、交付した申告済証と通関システムに保管された申告資料が 相違する場合は、通関システムに保管された電子文書の内容を原本 としている。 (iii) 申告済証は申告後5年間、保管しなければならない。申告済証は自 身が申告した物品が何か、税金はいくら納付したかを把握できる資料 であるだけではなく、物品を倉庫から搬出する時にも申告が受理され たことを倉庫に知らせる証書でもあるため、物品を譲渡しない限り、第 三者に譲渡しない方がよい。 原則的に輸入物品は、申告が受理されないと保税区域から搬出することができ ず、無断搬出する場合は関税法により処罰を受ける。ただし、事前税額審査対象物 品として税額決定に長時間が所要される場合、完成品の HS コードで輸入申告され る物品が組み立てられていない状態で分割船積された場合、調達事業に関する法 律による備蓄物資として申告された物品で、実需要者が決定されていない場合、又 は新製品で品目分類及び税率決定に長時間が所要される場合には、輸入申告受 理前に搬出承認申請書を税関長に提出すると、輸入申告受理前でも関税相当額 の担保を提供するようにし、税関長の承認を受ければ物品を保税区域から搬出す ることができる。
参考資料 - 埠頭直通関制度の紹介 輸出入貨物は空港又は港湾で、荷役と同時に生産工場まで直搬出する方式により適時輸送 (Just-in-time)することが最も効率的である。 これは、輸出入貨物の移動経路が複雑で、荷役後に様々なところを経由すると、運送料、荷役料 などの企業の直接経費の負担が増加するだけでなく、道路破損、騒音公害などにより社会的費用 が増加するためである。 米国、ヨーロッパ、日本、シンガポールなどの大部分の国家は、このような側面から、入港した貨 物が荷役と同時に埠頭内で直通関処理されるように物流システムを先進化して運営している。 韓国は釜山港などの主要港湾が荷役機能を中心に運営され、通関を埠頭外で行う古い慣行が 維持されている。そのため、現在、大部分の貨物が埠頭外の ODCY(Off Dock Container Yard)に 移送され、その一部は再度一般保税倉庫に運ばれて通関されることにより、時間及び費用の浪費 につながるだけでなく、全般的な通関遅滞及び物流費用増加の原因の一つとなっている。 従って、関税庁ではこのような問題点を解決し、輸出入物流体系を根本的に革新するために、釜 山港などの韓国の主要港湾で荷主が埠頭直搬出(直通関及び保税運送)を希望する物品の下船 場所を埠頭内に制限し、直ちに処理する埠頭通関制度を導入の上、施行している。 このために、まず、埠頭直通関制度の施行のための検査施設を備えて税関職員を配置し、荷役・ 運送などの操業手続及び通関手続を制度化するなどの港湾運営体系を整備した。現在、釜山港、 仁川港、光陽港、平沢港に搬入されるコンテナ貨物に対して同制度を施行し、その他港湾に対して は港湾別の与件を勘案して次第に拡大施行する計画である。 なお、これは通関所要時間の短縮及び企業物流費の画期的な節減である。 埠頭直通関制度の実施による期待効果は、入港後、国内市場の流通段階までの所要時間が従 来の 15 日から 3 日に短縮され、金融費用を含めて年間約 5 千億ウォン相当の物流費用の節減が 予想される。 *申請方法及び手続 埠頭直搬出を希望する荷主又は関税士(保税運送業者)は、埠頭下船要請書を作成して下船申 告受理前までに税関(貨物担当部署)及び船社に提出すればよい。