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Microsoft Word - 量子物理講義資料2016.docx

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(1)

量子物理 講義資料

§1 波動 微分方程式 単位

0.複素数の取扱に関する注意 ・この講義では、「虚数単位」として i を用いる。ここで i2 = 1 になる。 ・「複素数」は実数と虚数の和よりなる。a と b を実数として、複素数は a + ib

と表現される。ここで a は「実部(Real part)」、 b は「虚部(Imaginary part)」と呼ばれる。

・「複素共役(ふくそきょうやく)」 (または「共役複素数」) ある複素数 C = a + ib に対して、C* = a ib を C の複素共役と呼ぶ。例えば、 5 + i3 の複素共役は 5  i3 である。逆に 5  i3 の複素共役は 5 + i3 である。 ある複素数 C とその複素共役 C* の積は必ず正の実数になる。 C = a + ib と C* = a ib の積は CC* = (a + ib)(a – ib) = a2 – iab +iab +b2 = a2 + b2 この量の平方根を複素数 C の絶対値 |C| と呼ぶ。つまり、 2 2

*

C

CC

a

b

例えば、複素数 5 + i3 を考える。これの複素共役は 5  i3で、これの絶対値は

5

i

3

(

5

i

3 5

)(

i

3

)

25 9

 

34

となる。 1. 波動: 進行波 x軸方向に進む波は一般に次のように書ける。

cos(

)

cos cos(

)

sin sin(

)

cos(

)

sin(

)

y A

kx

t

A

kx

t

A

kx

t

a

kx

t

b

kx

t

 

ここで k:(角)波数(単位 1/m)

k

2

: 波長 :角周波数(単位 1/s )

2

f

f: 周波数(振動数)、記号は(ニュー)の場合もある A:(最大)振幅 周波数 f と波長を使って

y A

cos(

2

x

2

ft

)

と書くこともできる。 以下簡単のため  = 0 の場合、つまり

y A

cos(

kx

t

)

を考える。 ・周波数及び角周波数について 「周波数」とは1秒間に振動する回数 =

1秒

1回の振動に要する時間

0

x 

における振動を考える。

(2)

1m

波の1周期

t t

0

y

0

A

cos(

t

0

)

次に再び振動が

y

0にやってくる時刻は、

y

0

A

cos(

t

0

2

)

A

cos{ (

t

0

2

)}

よって

t t

0

2

 

y

0に戻ってくる。したがって「1回の振動に要する時間」

2

また、周波数は

1

2

2

/

2

f

 

 

f

・波数と波長の関係 「波数」とは単位長さ(1m)の中に波の一周期が何個入っているかを示す。 つまり、 波数 =

1 m

波長

例: 右の図の場合 この場合、波数 = 3 =

1

, 角波数 = 2 x 波数 =

2

・次に

y

A

cos(

kx

t

)

は進行波であることを示す。

t t

0において

y

A

cos(

kx

t

0

)

A

cos

k x

t

0

k

−(1-1)

t t

  

0

t

において 0 0

cos(

)

cos

y

A

kx

t

t

t

t

A

k x

k

k

 

−(1-2) 一般に

y

f x

( )

という関数に対して、

y

f x x

(

0

)

y

f x

( )

のグラフを+x方向にx0だけ平 行移動したグラフになる。したがって(2)は(1)を+x方向へ

t

k

だけずらしたグラフになる。

(1)

(2)

t

k

x

y

(3)

x

y

これは

y

A

cos(

kx

t

)

x軸正方向へ進む波であることを示している。 更に時間

t

の間に距離

t

k

だけ進んでいるので波の速度は

f

k

 

である。したがって波の速 度をcとおくと、

c

f

の関係が成立する。同様に考えれば、

y

A

cos(

kx

t

)

x軸負方向へ 進む波を表している。 2. 波動: 定在波 同じ

k

, ,

A

を持つ2つの進行波が左右からやってきた場合を考える。2つの波の重ね合わせにより

cos(

)

cos(

)

2 cos( ) cos( )

y

A

kx

t

A

kx

t

A

kx

t

3.複素数表示 オイラーの公式

cos

sin

i

e

i

ここで i は虚数単位であり、

i

2

 

1

になる。オイラーの公式は左辺・右辺をそれぞれテーラー展 開してみれば等しいことがわかる。これを使って波動を次のように書く場合がある。

y

Ae

i kx( t)

A

exp

i kx

t

A

cos(

kx

t

)

iA

sin(

kx

t

)

複素数表現を使う理由 ①電磁気学・電気回路の場合: 微分・積分等の計算が簡単になる。 ( )

cos(

)

i kx t

y A

kx

t

 

y Ae

 と書き、計算後、その実部だけを残す。 例:微分

A

cos(

kx

t

)

A

sin(

kx

t

)

t

−(1-3) 一方

( ) ( )

cos(

)

sin(

)

sin(

)

cos(

) --(1-4)

i kx t i kx t

Ae

i Ae

t

i

A

kx

t

iA

kx

t

A

kx

t

i A

kx

t

 

 

 

実部 (1-3)は(1-4)の実部に等しい。 ②量子力学 複素数の波動があらわれる (この講義の後半で実際に必要になる) 例:真空中の外力の作用していない電子の波動関数

( , )

x t

Ce

i kx( t)

(4)

m

K

x

4.微分方程式 例0. 最も簡単な例:質量mの物体の自由落下 力:

F mg

(g: 重力加速度) このときニュートンの運動方程式は 2 2

d x

m

mg

dt

 

初期条件:t = 0で

0

0

x

v x

  

この解は 2

1

2

x

 

gt

c

加速度 例1. 調和振動子 バネ定数Kのバネに質量mの物体がついている。 力:

F

 

Kx

運動方程式: 2 2

d x

m

Kx

dt

 

但し初期条件として t = 0 で x = A, v = 0。これを満たす関数 x(t) を求める。

cos( )

x A

t

とおいてみる。 2

sin( )

2

cos( )

x

A

t

x

A

t

x

 

 

 



mx



 

m x

2

 

Kx

であり、

K

m

とすれば微分方程式を満たす。 またx(0) = A, v=

x

(0)

= 0であり、初期条件を満たす。 もし

x A

sin( )

t

とした場合を考えてみると 2

cos( )

2

sin( )

x

A

t

x

A

t

x

 

 

 



よってこの場合も

K

m

とおけば、微分方程式は満たされる。しかし

(0) 0

(0)

x

x

A

であり、初期条件が満たされない。 微分方程式の解は1つには決まらない。初期条件を与えて初めて解が1つに定まる。 例2. 偏微分方程式 2 2 2 2 2

1

( , )

x t

( , ) (

x t

c

0)

x

c

t

この解は

( , )

x t

Ae

i kx( t) これを確かめるためには、左辺・右辺に入れて計算すれば

(5)

左辺: 2 2 ( ) 2

( , )

i kx t

x t

k Ae

x

 

右辺: 2 2 ( ) 2 2 2

1

( , )

i kx t

x t

Ae

c

t

c

 

したがって、 2 2 2

k

k

c

c

または

とおけば、微分方程式は成立する。したがって解は

( , )

x t

Ae

i kx( t)

A

cos(

kx

t

)

iA

sin(

kx

t

)

これは速度cで+x方向へ進む波を表す。なお、x方向へ進む波

( , )

x t

Ae

i kx( t)も解である。 (この偏微分方程式は電磁波を表している) 5.物理量の単位 物理量を計算する際には使用している単位に十分に注意する必要がある。現在工学で使われる 単位は国際的に標準化されており、SI単位系(またはMKSA単位系)と呼ばれている。 この単位系で基本となるのは長さ・メートル (m), 質量・キログラム (kg), 時間・秒 (s), 電流・ア ンペア(A) の4つで、他の単位はすべてこれらの組合わせで表現される。 例1 ニュートンの運動の法則では、 力=質量×加速度 で与えられる。左辺の「力」はSI単位系ではN (ニュートン)を単位として測る。一方右辺では、 質量の単位はkg 速度の単位はms-1 加速度は速度を微分した量

d

v

dt

なので、その単位はms -2 まとめると右辺の単位はkg m s-2となる。 従って、

[N] =

kg m

2

s

となり、力の単位 Nは基本となるkg, m, sの組み合わせで書ける。 例2 一定の力Fを作用させて物体を距離 l 移動させた場合に、 この物体にした仕事Wは W = Fl である。Wはエネルギーであり、その単位はJ (ジュール)である。右辺の単位は

[N] [m]

である からJ(ジュール)は 2 2

kg m

[J] = [N] [m] =

s

という基本単位の組み合わせで与えられる。 等号で結ばれた数式の左辺と右辺は同じ単位でなければいけない。 重要

(6)

例3 運動エネルギーは

1

2

2

v

T

m

で与えられる。右辺の単位は 2 2 2 2

m

kg m

[kg]

s

s

であ り、これは例2によって[J]に一致することがわかる。仕事も運動エネルギーもエネルギーであり、同 じ単位 2 2

kg m

[J] =

s

を持つ。 ・電子ボルト[eV] エレクトロニクス、半導体工学などで、電子あるいは光子(この後の講義で説明される)のエネル ギー単位として、J に代わって例外的に SI 単位系に含まれない、電子ボルト[eV] という単位が 使われる。1 eV は素電荷 (電子)を 1V(ボルト)の電位差で加速したときに得るエネルギー で -19

1 eV = 1.602 10 J

である。計算に用いる数値、定数などがeV単位で与えられている場合は、J単位に変換してから 計算する必要がある。 ・ 指数関数、及び三角関数における注意事項

y e

という関数において、は無次元(単位の無い)量でなければならない。なぜなら、もし が単位を持つ量であれば問題が生じる。指数関数はテイラー展開により

1

1

2

2

y

  

   

と展開される。たとえばが長さ[m]の単位を持つ量である場合、右辺は1(無次元), [m], [m2]・・・と異なる単位を持つ量の和になってしまう。これはおかしい。従って、指数関数

e

で、 は 無 次 元 ( 単 位 の な い ) 量 で な け れ ば な ら な い 。 こ れ は 三 角 関 数 の 場 合 も 同 様 で ,

cos , sin , tan

等のは必ず無次元量である。

なお、角度に「角」(°)や、ラジアン(rad)という単位をつけて呼ぶが、これらは物理量を表す 単位ではなく、ある角度の1周に対する比である。例えば「度」は1周を360゜として、ある角度が 360に対して、いくつあるかで角度を表現している。これはちょうど、全体を100として、その割合 を「パーセント」(%)で表すのと同様である。 例. 進行波

y

A

cos(

kx

t

)

の場合 xは長さ[m], kは角波数でその単位は

1

m

 

 

 

。したがって kx は無次元。 一方tは時間[s], は角周波数で単位は

[Hz] =

1

s

 

 

 

。 従ってtもやはり無次元になる。 ・ 物理量を表す数式が正しいかどうかを確認するためには、その数式の単位が物理量の単位に 一致することを確かめてみるのが一つの方法である。 例 ボーアの水素原子モデル(詳細は教科書に!)において、n番目の準位にある電子のエネル ギーは

(7)

4 2 2 2 0

1

8

n

me

E

h n

 

で与えられる。エネルギーの表式であるから右辺も全体でエネルギーの単位 [J] になっている はずである。一見してはわからないが、次のように詳しく検討してみると[J]単位であることがわか る。この式のように素電荷 e を含む式ではクーロンの法則を思いだして、素電荷間に働く力は 2 2 0

1

(

)

4

e

F

r



クーロン力

2 4 2 2 2 0 1 (4 )

(

)

e

F r

これにより 4 2 0

e

は(力×距離2 )2

2

J m

 

の単位を持つことがわかる。一方

 

2 2 2

m

mc

h

hc

cは光速度) とおくと、mc2の単位は 2 2

kg m

s

であり、例2にあるように、これはエネルギーの単位[J]である。 一方、hcの単位は

[J s][m/s] = [J m]

である。従って初めに示した式(a), 4 4 4 2 2 2 2 2 2 2 0 0 0

1

1

8

8

8

( )

me

e

m

e

mc

h

h

hc

 

 

の単位は, (整数nは単位を持たないので、考慮する必要がない。) 2 2 -2 -2

[J m ][J][J m ] = [J]

となり、確かに 4 2 2 2 0

1

8

me

h n

の単位はエネルギーの単位[J]になることがわかる。 6.数式の記法に関する補足 ・指数関数を

e

x

exp( )

x

と書くことがある。 ・自然対数を

log

x

log

e

x

ln

x

と表記する。 — (a) 但しn は正の整数

(8)

§2 量子力学:基本方程式・・・シュレーディンガー方程式

(Schrödinger equation)

ボーアの水素原子モデルにおいて電子の定常軌道は電子を波(電子波、ドブロイ波)として取り扱う ことにより導くことが出来た。これからわかるように、微視的な世界の現象を取り扱う量子力学におい ては、波動としての電子の取り扱いが基本になる。電子の波を表す関数を(r, t)と書くことにする。 (ギリシア文字プサイの大文字を使う) 以後この関数を「波動関数」と呼ぶことにする。波動関数 は位置座標r = (x, y, z) と時間 t の関数である。古典力学においては「ニュートンの運動方程式」と 呼ばれる微分方程式が粒子の運動を決める。量子力学においても波動関数(r, t)は何らかの微 分方程式により決められる。波動関数(r, t)が従うこの微分方程式を求めることから始める。 物理の法則は実験事実から導かれる。つまり、実験事実をうまく説明できる数学の式、微分方 程式が「・・・の法則」あるいは「・・・方程式」という形で一般的な法則、方程式になる。ここでは次の 方針で波動関数(r, t)が従う微分方程式を見つけ出す。 「これまでわかっている電子波の特徴を導き出すことが出来る(r, t)に対する最も単純 な微分方程式を探す」 それがいろいろな実験事実を矛盾なく説明できればOK。もし実験事実に合わない点があれば、ま た別の方程式を探すことにする。 (以下しばらくの間は簡単のため空間座標は x 軸だけを考えることにする) 「ドブロイ波」を思い出すと、外力を受けていない電子では・・・

E

2pm2

粒子として(自由粒子): エネルギー E 運動量 p   波動として(平面波): 振動数

Eh 波長

hp (角振動数を使うと)

2

2 E h

E



より

E

または

E

 

(角波数を使うと)

k

2

2h

p

pより

k

p

または

p

 

k

(ここで

2h (エイチバーと読む)はディラック定数 あるいはこれも プランク定数と呼ばれる。) 従って、力が作用していない電子の波動関数は次の形にとることが出来る。 ( ) ( )

( , )

x t

Ae

i kxt

Ae

i pxEt

   これは複素数表示、A も複素数 (理由はあとで) (2-1) これが解となるようなもっとも単純な偏微分方程式(波動方程式)を探す。 [試行1] 時間 t と座標 x に対して 1 階の偏微分方程式

( , )

x t

( , )

x t

a

b

x

t





a, b はこの後で決める定数) (2-2) この両辺に

( , )

x t

Ae

i kx( t)

Ae

i(pxEt)を代入すると、 左辺:

ikaAe

i kx( t) 右辺:

i bAe

i kx( t)

(9)

これらが等しくなる条件は、

ka

 

b

、したがって p

a

 

E

b

。しかし

E

2pm2 であるから、a, b をどのように選んでもこの条件は満たされない。したがって、この偏微分方程式は不採用。 [試行2] 時間 t に 1 階、座標 x に対して2階の偏微分方程式 2 2

( , )

x t

( , )

x t

a

b

t

x

 



a, b はこの後で決める定数) (2-3) この両辺に

( , )

( ) ( ) p E i x t i kx t

x t

Ae



Ae

  を代入すると、 左辺:

k aAe

2 i kx( t) 右辺:

i bAe

i kx( t) これらが等しくなる条件は、

k a i b

2

、したがって p22

a i b

E  となる。 2 2 p m

E

を左辺に代入し てE を消去すると、 p22

a i

2pm2

b

 となり、 2

2

a

m

b i

  



とすれば両辺は等しくなる。したがって 電子波に対する「波動方程式」の候補として次の偏微分方程式を採用する。 2 2 2

( , )

( , )

2

x t

x t

i

m

x

t

 



(2-4) これが正しい量子力学の基本方程式なのかを決めるのは実験である。 ---以下補足--- なお電子の波動関数として式(2-1)ではなく実数の波動

( , )

x t

A

cos(

kx

t

)

をとると、これを式(2-3)に代入してみると、 左辺:

k aA

2

cos(

kx

t

)

右辺:

bA

sin(

kx

t

)

となり、この2 式を等しくすることは出来ない。したがって実数型の波動関数は使えない。 一方初めに試した時間t と座標 x に対して 1 階の偏微分方程式(式(2-2))では、実数の波動を代入 すると

( , )

x t

( , )

x t

a

b

x

t





 pa = Eb となるので、a = 1/p, b = 1/E とすれば左辺と右辺が等しくなる。この場合に方程式は

1

( , )

x t

1

( , )

x t

p

x

E

t



 



となり、微分方程式が運動量p とエネルギーE を含む。p と E は微分方程式を解いた結果としてそ の値が得られるのだが、この微分方程式を解くためにはp と E があらかじめ判っている必要がある。 これではだめ。 ---補足 終わり---

(10)

式(2-4)に示した微分方程式を電子波に対する「波動方程式」の候補として採用することとし、更に ポテンシャルV(x,t)で表される外力の中を運動する電子の方程式は次の形を採用しておく。 2 2 2

( , )

( , )

( , ) ( , )

2

x t

x t

V x t

x t

i

m

x

t

 



または 2 2 2

( , )

( , )

( , )

2

x t

V x t

x t

i

m

x

t



(2-5) これを1 次元での(時間を含む)シュレーディンガー方程式と呼ぶ。提案されて 90 年近くが経過し たが実験事実を説明することが出来ており、「量子力学の基本方程式」であるとみなされている。 3 次元の場合には(ここで r = (x, y, z)である) 2 2 2 2 2 2 2

( , )

( , )

( , )

( , )

( , ) ( , )

2

t

t

t

t

V

t

t

i

m

x

y

z

t

 

 

 



r

r

r

r

r

r

(2-6) ここで次のような微分演算子(ナブラと読む)を導入する。(微分演算子については電磁気学1の教 科書を参照せよ) 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

,

,

( , )

( , )

( , )

( , , , )

,

x

y

z

x

y

z

t

t

t

x y z t

x

y

z

  

 

 

  

 

 

 

 

r

r

r

これを使って上記式(2-6)は 2 2

( , )

( , )

( , )

2

t

V

t

t

i

m

t



 

r

r

r

(2-7) この形でシュレーディンガー方程式が記述されている教科書が多い。

(11)

§3 波動関数

(r, t) の意味: 確率解釈

電子波(ドブロイ波)を表す波動関数(r, t)の物理的意味を考えておく必要がある。 電子が観測される確率を表す。厳密には 言い方を変えると、 簡単のため1 次元の場合を考える。シュ レーディンガー方程式を解いた結果|(x, t)|2 は左図のようになった場合に、x から x+x の微小領域において電子が観測され る確率は|(x, t)|2x であり、これは図の斜線 の領域の面積になる。 また、電子は  < x < の範囲に必ず 存在しているので、この範囲内で観測される 確率は1になる。したがって 2

( , )

x t

dx

1

 

(3-1) とならなければならない。(波動関数がこの条件を満たすようにすることを「規格化」と呼ぶ。) なお3 次元では

( , )

t

2

dxdydz

( , )

t

2

dV

1

     

  

r



r

全空間 また、波動関数(r, t)に対して数学的にいくつかの条件が要求される。 (1) (r, t)は一般には複素数である。(実数値をとる場合もある) (2) (r, t)は1価の有界な関数である。 (3) (r, t)は連続で滑らかな関数である。(次の例外を除く) (4) ポテンシャルが不連続に変化する点では(r, t)は連続であるが滑らかではない。 固体中には膨大が数の電子が存在している。(1 cm3中に1022個以上) このように多数の電子 を取り扱う場合には、電子密度n は|(r, t)|2 に比例しているとみなすことが出来る。したがって電子 による負電荷の密度はe|(r, t)|2に比例している。 1 個の電子を取り扱う場合に、その波動関数の絶対値の 2 乗 |(r, t)|2 は時刻t に、ある点 r = (x, y, z)に電子が観測される確率密度を与える 時刻t に、ある点 r = (x, y, z)の周りの微小体積V = xyz の中で電子が観測される確率は (確率密度) (体積) = |(r, t)|2V である x |(x, t)|2 x x+x

(12)

§4 定常状態: 時間を含まないシュレーディンガー方程式

電子に作用しているポテンシャル(あるいは外力)が時間に依存していない場合を考える。つまり V(r, t) = V(r)である。この場合には波動関数(r, t)は空間座標 r = (x, y, z)の関数と時間 t にのみ 依存する関数の積の形になる。具体的には次のような形になる。

( , , , )

x y z t

( , , )

x y z e

i tE

(4-1) ここで

( , , )

x y z

(小文字のプサイ)は空間座標のみに依存する関数で、

e

i tEは時間のみの関 数である。(このように関数をある変数に依存する関数と別の変数に依存する関数の積に分解する ことを変数分離と呼ぶ。) ここで空間部分の波動関数

( , , )

x y z

は下記の微分方程式に従う。 2 2

( )

( ) ( )

( )

2

m

V

E

r

r

r

r

(4-2) または、 2 2 2 2 2 2 2

( , , )

( , , ) ( , , )

( , , )

2

m

x

y

z

x y z

V x y z

x y z

E

x y z

この式は時間を含まない(時間に依存しない)シュレーディンガー方程式と呼ばれる。 (証明) ここで式(4-1)のように変数分離されることを証明しておく。

( , , , )

x y z t

( , , ) ( )

x y z T t

という形を仮定して、元の(時間を含む)シュレーディンガー方程式 (2-6)に代入する。但しポテンシャルは時間に依存しないので V(r, t) = V(r)である。 2 2 2 2 2 2 2

( )

( )

( )

( )

( )

( ) ( ) ( )

( )

2

T t

T t

V

T t

i

m

x

y

z

t

r

r

r

r

r

r

この式の両辺を

( ) ( )

r

T t

で割ると 2 2 2 2 2 2 2

1

( )

( )

( )

1

( )

( ) ( )

( )

2

( )

T t

V

i

m

x

y

z

T t

t

r

r

r

r

r

r

この式の左辺は空間座標r = (x, y, z)のみの関数であり、右辺は時間 t のみの関数である。任意の x, y, z および t に対してこの等式が恒等的に成り立つためにはこの式の値はある定数でなければな らない。この定数をE と置くと、 左辺: 2 2 2 2 2 2 2

1

( )

( )

( )

( ) ( )

( )

2

m

x

y

z

V

E

r

r

r

r

r

r

(4-3) 右辺:

1

( )

( )

dT t

i

E

T t

dt

または

i

dT t

( )

ET t

( )

dt

(4-4) 右辺の微分方程式(4-4)はすぐに解けて

T t

( )

e

i tEが得られる。ここに現れる定数E が電子のエ ネルギーに等しいことはこの後「1 次元自由粒子」の節で説明する。更に式(4-3)の両辺に(r)をか

(13)

けて、 2 2 2 2 2 2 2

( )

( )

( )

( ) ( )

( )

2

m

x

y

z

V

E

r

r

r

r

r

r

時間を含まない(時間に依存しない)シュレーディンガー方程式が得られる。 (証明終わり) この講義では時間に依存しないポテンシャルのみを取り扱うので、電子の波動関数は、まず時 間を含まないシュレーディンガー方程式を解いて(r)を求めて、これに

e

i tEを掛ければ得られる ことになる。以下では、いくつかの場合における時間を含まないシュレーディンガー方程式の解法 を見ていく。 §4-1 1 次元自由粒子 質量m、エネルギーE で外力を受けずに運動している電子の波動関数を求めてみる。簡単のため1 次元(x 軸方向)の運動を考える。この場合には電子の波動関数はドブロイ波(電子波)になる はずなので、進行波を表す関数になることが予想される。 力を受けていないのでV(x) = 0 で、しかも時間に依存しない。前節でみたように波動関数は次 式のように変数分離される。

( , )

x t

( )

x e

i tE

(4-5) (x)に対する時間を含まないシュレーディンガー方程式は式(4-2)より、変数 x のみを含む常微分 方程式になる。 2 2 2

( )

( )

2

d

x

E

x

m dx

(4-6) 一般の微分方程式の解法は数学の講義で学習するが、ここでは式(4-6)の一般解が、

( )

x

A e

ikx

A e

ikx

 (4-7) という形になることがわかればよい。式(4-7)を式(4-6)の両辺に代入してみると、定数 k (正の実数) が

k

2mE であれば式(4-6)が成り立つことがわかる。 一般解(4-7)を式(4-5)に代入すると、時間を含む波動関数は、 ( / ) ( / )

( , )

( )

i tE i kx Et i kx Et

x t

x e

A e

A e

     

   x 軸負方向に進む進行波 x 軸正方向に進む進行波 右辺2 行目は進行波

e

i kx( t)の形を持っている。先に定義した

k

2mE は波数に対応しており、 一方E/ħは角周波数に対応している。「ドブロイ波」を思い出すと、外力を受けていない電子では

(14)

粒子として 対応関係 波動として エネルギー E   = E/ħ  角周波数  運動量 p k = p/ ħ  波数 k この対応関係より変数分離の際に出てきた定数E はエネルギーE (= ħ) に等しいことが判明する。 以上より外力を受けない電子の波動関数(x, t)は平面波であり、 正方向に進む進行波

e

i kx( t) と 負方向に進む進行波

e

i kx( t) の線形結合で表される。但しここで 波数

k

2mE

pk は電子の運動量 p と直結している) 角周波数

E (は電子のエネルギーE と直結している) §4-2 力とポテンシャル ここで「ポテンシャル」と「力」について説明を加える。平行板電極が作る電界が電子に及ぼす力を 考える。(以下ではエネルギーE, ポテンシャル V と区別するために電界を Ԑ、電圧を

v

と書く) 極板間隔a の平行板電極に電圧

v

が印加されている。(左側の極板は電子が通り抜けることが 出来るようにたくさん孔が空いている。) 電界は右向きでその大きさは Ԑ =

v

/a (一定)である。e の 電荷を持つ電子が極板の中に入ると左向きに一定 の大きさ F = e Ԑ の力を受ける。この力 F に対応したポテンシャル V

dV

F

dx

 

で定義されるので、下の図に示したように0 < x < a の区間で x に比例して増加するポテンシャル V(x) になる。(傾き eԐ) このように定義したポテンシャル はエネルギーの単位を持つ。 注意:電磁気学で取り扱う電位

v

も静電ポテンシャ ルと呼ぶ場合がある。こちらの場合は電界 Ԑ との関 係で定義される。Ԑ = d

v

/dx 粒子に力が作用している場合に、古典力学(ニュー トンの運動方程式)ではこの力 F が方程式に直接現 れる。

v

a Ԑ e Ԑ x a 0 F -e Ԑ 電子の受ける力(左向き) x a 0 V 電子に対するポテンシャルV(x) V0 = eԐa V0

(15)

2 2

d x

m

F

dt

それに対して量子力学(シュレーディンガー方程 式)では粒子に働く力はポテンシャル V(x)の形で 方程式の中に現れる。(式(4-2)) 左図に示すように極板間隔 a を小さくするとポ テンシャルの傾きが急になる。更に印加電圧を大 きくすると、ポテンシャル障壁が高くなる。a  0 か つ電圧  の極限を考えると、電子に対して無 限に高く急峻なポテンシャル障壁が出来る。古典 力学で考えると左側からやってきた電子は x = 0 の壁で左向きに跳ね返される。 x a 0 V 電子に対するポテンシャルV(x) a を小さく x a 0 V 電子に対するポテンシャルV(x) a を小さく、電圧を大きく x 0 V a  0、電圧  の極限 無限に高いポテンシャルV(x)

(16)

§4-3 無限障壁 1 次元井戸型ポテンシャル 左図のように井戸部分の幅がd である無限障壁 1 次 元井戸型ポテンシャルの中を運動する質量m でエネ ルギーE を持つ電子を考える。ポテンシャルは次式 で表される。 井戸内部:

V x

( ) 0

  

d2

x

d2

障壁部分:

V x

( )

 

x

 

2d

,

d2

x

ポテンシャルは時間に依存しないので、波動関数は 空間座標に依存する部分と時間に依存する部分に 変数分離される。空間座標に依存する部分(x)は時 間に依存しないシュレーディンガー方程式に従う。 初めに障壁内(斜線の領域, x < d/2, d/2 < x)での波動関数を考える。ポテンシャル障壁の高さ が無限大の場合には電子は障壁内に入り込むことが出来ない。波動関数の絶対値の 2 乗 |(x)|2 は位置x に電子が存在する確率密度を表しているので、障壁内部では |(x)|2 = 0、したがって (x) = 0

x

 

d2

,

d2

x

である。(ということで障壁内部の波動関数はシュレーディンガー方程式を解くまでもなく得られる) 次に井戸内部(d/2 < x < d/2)での波動関数を求める。1 次元(x 軸方向)での時間に依存しない シュレーディンガー方程式は 2 2 2

( )

( ) ( )

( )

2

d

x

V x

x

E

x

m dx

井戸内ではV(x) = 0 なので、結局のところ 2 2 2

( )

( )

2

d

x

E

x

m dx

これより 2 2 2

( )

2

( )

d

x

mE

x

dx

 

となる。変数が x のみであるので簡単な常微分方程式になる。式(4-7)付近で定義したように 2mE

k

を使うと、この微分方程式(2 階常微分方程式)は次の形になる。 2 2 2

( )

( )

d

x

k

x

dx

 

2

2

d

d

x

  

(4-8) この方程式の一般解は三角関数あるいは虚数を使った指数関数で書くことが出来るが、ここでは 3 角関数を使って、

( )

x

A

sin( )

kx

B

cos( )

kx

(4-9) を一般解とする。ここでA, B は後で決める係数(複素数)である。式(4-9)を式(4-8)の両辺に代入して みると解であることはすぐにわかる。 微分方程式の解は「境界条件」が決まらないと一つに確定しない。この場合の境界条件は井戸 内部の波動関数(式(4-9))と障壁部分の波動関数が連続になることである。(§3に示した波動関 x d/2 o V ポテンシャルV(x)  d/2

(17)

数に要求される条件を参照せよ。ここでは井戸と障壁の境界でポテンシャルは不連続に変化する ので、(4)が適用されて、波動関数は境界で連続であればよい。滑らかである必要はない。) 障壁 部分では(x) = 0 なので、井戸内部の波動関数式(4-9)は x = d/2 においてゼロになる。従って

sin

cos

0

2

2

2

d

kd

kd

A

B

 

 

 

(4-10)

sin

cos

0

2

2

2

d

kd

kd

A

B

 

(4-11) という条件を満たす必要がある。A = B = 0 以外の解を探す。(A = B = 0 では波動関数は全域でゼ ロになってしまい、電子は存在しないことになる。) Case (1) 一つ目の可能性として、「A = 0 かつ

cos(

kd

/ 2) 0

という場合」がある。

cos(

kd

/ 2) 0

が 成立するためには

2

2

kd

n

従って

k

n

d

n = 1, 3, 5, ・・・) (4-12) この場合の波動関数は

( )

x

B

cos

n

x

d

n = 1, 3, 5, ・・・) (4-13) Case (2) もう一つの可能性として「B = 0 かつ

sin(

kd

/ 2) 0

という場合」がある。

sin(

kd

/ 2) 0

が成 り立つには

2

2

kd

n

従って

k

n

d

n = 2, 4, 6, ・・・) (4.14) こちらの場合には波動関数は

( )

x

A

sin

n

x

d

n = 2, 4, 6, ・・・) (4-15) になる。 係数A, B は波動関数の規格化から決まる。電子は井戸内部(d/2 < x < d/2)に必ず存在する (確率は1になる)ので、(式(3-1)を参照) /2 2 /2

( )

1

d d

x

dx

となる。従ってそれぞれの場合に Case(1) 2 /2 2 /2

cos

1

d d

n

B

x dx

d

, Case(2) 2 /2 2 /2

sin

1

d d

n

A

x dx

d

となる。ここで三角関数の積分は部分積分を使って、

(18)

/2 2 /2 2 /2

sin

/2

cos

2

d d d d

n

n

d

x dx

x dx

d

d

 

となる。 (各自計算して確認せよ) 積分の値は n によらない。したがって 2 2

2

A

B

d

A, B として正の実数をとると、

A B

 

2 /

d

となる。 以上より波動関数は整数n により番号が付けられて、

2

( )

cos

n

x

d

n

d

x

n = 1, 3, 5, ・・・) (4-16)

2

( )

sin

n

x

d

n

d

x

n = 2, 4, 6, ・・・) (4-17) また、それぞれの波動関数で表される状態における電子エネルギーE は

k

2mE が式(4-12)と 式(4-14)により整数 n と関係しているので、 n が奇数(n = 1, 3, 5, ・・・):

k

2mE

n

d

より 2 2 2 2

2

n

E

n

md

n が偶数(n = 2, 4, 6, ・・・):

k

2mE

n

d

より 2 2 2 2

2

n

E

n

md

(n が奇数でも偶数でもエネルギーEnを与える式は同じ形になる) ・最もエネルギーが低い状態(基底状態)は n = 1 の場合で、 エネルギー 2 2 1 2

2

E

md

、 波動関数 1

( )

x

2

cos

x

d

d

(4-18) ・2 番目の状態は n = 2 の場合で、 エネルギー 2 2 2 2 2

2

2

E

md

、 波動関数 2

( )

x

2

sin

2

x

d

d

(4-19) ・3 番目の状態は n = 3 の場合で、 エネルギー 2 2 2 3 2

3

2

E

md

、 波動関数 3

( )

x

2

cos

3

x

d

d

(4-20) ・4 番目の状態は n = 4 の場合で、 エネルギー 2 2 2 4 2

4

2

E

md

、 波動関数 4

( )

x

2

sin

4

x

d

d

(4-21) ・ ・ ・ ・ ・ ・ (以下同様に n  まで続く) エネルギーは基底状態のE1に対してEn = E1n2で増大し、波動関数はcos 型と sin 型が交互に現 れる。

(19)

以上をまとめると、井戸幅がd である無限障壁井戸型ポテンシャル中の電子状態は エネルギーは 2 2 2 2

2

n

E

n

md

n = 1, 2, 3, 4, 5, ・・・) (4-22) それぞれの状態での波動関数はn が奇数、偶数により

2

( )

cos

n

x

n

x

d

d

n = 1, 3, 5, ・・・) (4-23)

2

( )

sin

n

x

n

x

d

d

n = 2, 4, 6, ・・・) (4-24) 古典力学で取り扱うと電子のエネルギーはゼロから無限大まで連続的に変化する。量子力学では エネルギーは離散的な値を持つようになる。これをエネルギー準位の離散化あるいは量子化と呼 ぶ。(エネルギー準位が量子化されることが量子力学の語源である) 波動関数の形をグラフ化すると x d/2 o 1 n = 1 の波動関数1:式(4-18) d/2 2 d 2 d

x d/2 o ||2 n = 1 の電子の存在 確率密度|1|2 d/2 2 d x d/2 o 2 n = 2 の波動関数2:式(4-19) d/2 2 d 2 d

x d/2 o ||2 n = 2 の電子の存在 確率密度|2|2 d/2 2 d

(20)

[演習問題] 井戸幅L の無限障壁井戸型ポテンシャル中の電子のエネルギーは 2 2 2 2

2

n

E

n

mL

で与えられる。井戸幅5 nm の場合の基底状態(n = 1)の電子のエネルギーを求めよ。 34 2 2 21 31 9 2

(1.05457 10

)

2.41 10

15.0

2 9.109382 10

(5 10

)

J s

J

meV

kg

m

   

 

また、波動関数の概略を描け。 x d/2 o 3 n = 3 の波動関数3:式(4-20) d/2 2 d 2 d

x d/2 o ||2 n = 3 の電子の存在 確率密度|3|2 d/2 2 d x d/2 o 4 n = 4 の波動関数4:式(4-21) d/2 2 d 2 d

x d/2 o ||2 n = 4 の電子の存在 確率密度|4|2 d/2 2 d

(21)

§4-4 有限障壁 1 次元井戸型ポテンシャル 次に左図のように井戸部分の幅がd で障壁の高さが V0である 1 次元井戸型ポテンシャルの中を運動する 質量m でエネルギーE を持つ電子を考える。 但しV0 > E とする。ポテンシャルは次式で表される。 (障壁の高さが有限なので「有限障壁」と呼ぶ。) 井戸内部:

V x

( ) 0

  

d2

x

d2

障壁部分:

V x

( )

V

0

x

 

d2

,

d2

x

この場合も§4-3 と同じようにポテンシャルは時間に 依存しないので、波動関数は空間座標に依存する 部分と時間に依存する部分に変数分離され、空間座 標に依存する部分(x)は時間に依存しないシュレーディンガー方程式に従う。 しかし、障壁の高さが有限なので電子波は障壁内に入り込むことが出来る。このため障壁部分 と井戸内のそれぞれの領域でシュレーディンガー方程式を解く必要がある。障壁(barrier)部分での 波動関数をB(x)、井戸(well)内部での波動関数をW(x)とすると、 2 2 0 2

( )

( )

( )

2

B B B

d

x

V

x

E

x

m

dx

障壁部分 (x < d/2, d/2 < x) 2 2 2

( )

( )

2

W W

d

x

E

x

m

dx

井戸内部 (d/2 < x < d/2) また、境界(x = d/2)において波動関数が連続かつ滑らかにつがなるようにする。 x = d/2 において(x)が連続

2

2

B

d

W

d

かつ B

2

W

2

d

d

 

 

 

 

 

 

x = d/2 において(x)が滑らか 2 2 d d B W

d

d

dx

dx

 

かつ 2 2 d d B W

d

d

dx

dx

計算の詳細は参考文献を参照せよ。この場合には(無限障壁とは異なり)エネルギーE と波動関数 を求めるためには数値計算が必要となる。ここでは定性的な特徴を述べるにとどめる。 (1)エネルギー エネルギー準位は離散化される。井戸の幅が同じ場合に基底状態エネルギー、励起エネルギー 共に無限障壁の対応する準位に比べて小さくなる。また無限障壁では準位は無限にあるが、有限 障壁の場合には有限の個数になる。(最低でも1 個はある) (2)波動関数 次の図に示すような形になる。無限障壁に場合と比べて大きな違いは、波動関数が(ということは電 子の存在確率密度が)障壁領域(x < d/2, d/2 < x)でもゼロにはならない点である。これは障壁部分 x d/2 o V ポテンシャルV(x) d/2 V0

(22)

で電子が観測される確率がゼロではないことを意味している。古典力学で取り扱った場合には障 壁の高さV0は有限でもE < V0であれば、これにあたった粒子は壁の表面で跳ね返されることになり、 障壁内部に入り込むことはない。電子が障壁内に入り込む現象は量子力学に特有である。(この現 象は講義の最後に取り扱う「トンネリング」と密接に関係した現象である) x d/2 o1 n = 1 の波動関数1 d/2 x d/2 o2 n = 2 の波動関数2d/2 障壁中でも0 にならない

参照

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