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まとめとして 図 1 のように 第 21 回の感染の過程 第 22 回で触れました感染全体に関する3つの要因をここでは 3つのポイントとして大きな円で括りまとめました このようにいつかの過程も 大きく分けると以下の 3つのポイントになります 感染のしくみにおける3つのポイント Ⅰ. 病原体 : 感染

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感染のしくみ 4 感染が成立するまでの過程 2 感染と感染性廃棄物のABC 第 24 回 感染の基礎 その 4 感染からみた食中毒について 第1回 サルモネラ菌による食中毒 p6 感染とは として、感染のしくみ について解説をしております。 今回は、 「感染が成立するまでの過程 2」として感染の過程として、感染の成立まで の過程と感染が成立し感染症が発症するという、感染の成立した後の過程についても解 説を加えます。今までの説明と一部重複もしますが、感染が成立した後の感染症の発症 までを含めて、重要な2点を考えてみました。 1点は、感染のしくみは、大きく分けて3つのポイントからなっているということで す。これは今までに説明を加えてきましたものをまとめた形で図示しました。 今までの説明では、感染まで至れば必ず感染症を発症するという仮定でお話を進めて きました。しかし実際は、感染し病原体が増殖して感染が成立しても、必ずしも症状が 出ないという話です。 実際には、 症状が出ない方が多いといえます。 これが2点目です。 これは感染性廃棄物を扱う上で重要な点です。感染した本人は症状がないので、感染 したという意識がありません。しかしウイルスなり、細菌なりの病原体は体内にあるの で、感染源として他の生体に感染を引き起こします。 症状があれば、本人も周囲の人も感染を意識しますが、症状がないということは感染 という観点からは、本人が知らない間に感染してしまっているのと同じ状態であり、他 の人に感染させてしまう大変危険な状態にあるにもかかわらず気がつかないといえます。 このように感染の成立に関連したいくつかの点について解説を加えます。 感染のしくみに続き、感染からみた食中毒について p6 より解説しました。 2.感染とは-感染のしくみ-(続き) 2-4.感染が成立するまでの過程 2 第 23 回では、感染が成立するまでの過程を感染のサイクルと関連して解説しました。 そこでは病原体によって、排出口、感染経路、侵入口が異なっており、また宿主から、 新たな宿主に至るまでの感染経路もいくつかの種類があり、 特定部位に付着して増殖し、 感染が成立することが分かりました。 今回は、この感染の成立までの過程については、大きく3つのポイントに分けること ができることを再確認していただきたいと思います。そして、この3つのポイントとと もに感染が成立した後についてもみてみます。 接触即、感染にはならないとしましたが、感染が成立しても、症状が出ない場合もあ ります。実際の感染をみるとこの場合の方が多いといわれています。 これを「不顕性感染」といいますが、これらの解説もいたします。 (1)感染のしくみ ― 感染のポイント 1)感染が成立するまでの過程と3つのポイント 感染のしくみについては、排出口から病原体が排出され、その病原体毎に決まる感染 経路によって、新たな生体、すなわち、感受性ある宿主の侵入口に近づき、接触して、 侵入を図るなど、いつかの過程があります。

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まとめとして、図1 のように、第21回の感染の過程、第22回で触れました感染全体に 関する3つの要因をここでは、3つのポイントとして大きな円で括りまとめました。 このようにいつかの過程も、大きく分けると以下の3つのポイントになります。 感染のしくみにおける3つのポイント Ⅰ.病原体:感染源となる生体の排出口から、その宿主が持つ病原体を排出する。 Ⅱ.感染経路:病原体が伝播する経路は、接触・空気・飛沫・経口などの経路がある。 Ⅲ.生体防御:新たな生体の侵入口への接触で、侵入・付着・増殖と感染が起こる。 この病原体を出す、感染源とそれが伝播していく途中と、次の感染源となる新たな生 体とこの3点となります。病原体によって、排出口、感染経路、そして侵入口、付着・ 増殖の感染部位等は決まっています。 今回は、この3つの大きなポイントを再認識していただければと思います。 図1 感染のしくみ:感染のポイント 2)感染の成立と感染症発症までの過程 感染成立までの過程は、 感染の過程と感染のサイクルといくつかの図で説明しました。 今回は、 図2 に示しましたように、 感染が成立するとその後の過程はどの様になるか についても触れておきます。 その過程では病原体と接触が、即感染に繋がらないと解説しました。そこでは、生体 で防御が働くとし、その過程では、接触・侵入・付着・増殖・炎症性変化という経緯を たどり、正確には、炎症性の変化は、感染の成立で感染症が発症することです。 ところが、実際の生体では、病原体が増殖して感染が成立しても、感染症が必ずしも 起きるということではありません。症状が出ないことの方が多いということです。 感染源 感染源 感受性宿主 感受性宿主 (宿主;ホスト) (宿主;ホスト) (体表面他 (体表面他 ・免疫) ・免疫) 病原体 病原体 (病原微生物) (病原微生物)

接触したからといって即感染ではない。

接触したからといって即感染ではない。

図1

図1

感染経路 感染経路 伝 伝 播 播 排 出 排 出 侵 侵 入 入 侵入口 侵入口 増殖 増殖 付着 付着 排出口 排出口 感染部位 感染部位

.

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病原体

病原体

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感染経路

感染経路

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生体

生体

防御

防御

( (自然免疫・自然免疫・ 体表面他・ 体表面他・獲得獲得 免疫) 免疫) ( (細菌・ウイルス他 細菌・ウイルス他) ) ( (接触・空気・飛沫等接触・空気・飛沫等 ) ) 接触 接触 病原体 病原体 生体生体 防御 防御

感 染 の し く み : 感 染 の ポ イ ン ト

感 染 の し く み : 感 染 の ポ イ ン ト

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この点は、感染性廃棄物を扱う上からは重要な点の1つです。

今回はこれらの感染の成立、そして発症までの過程はどのようになっており、そこで はどのようなことが起きているかについて解説いたします。

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以下の説明の ① から ⑫ までの解説は、図2 の数字に沿っています。 ① 感染源:Ⅰ.のポイントは、感染源です。ここに病原体が存在します。この病原体に より決まった排出口より、病原体が体外に排出されます。 ② 感染経路:Ⅱ.のポイントは、伝播の方法で、病原体によって決まっている感染経路 を通り、新たな生体への接触の機会を持ちます。 ③ 新たな生体:Ⅲ.のポイントは、感受性を持った宿主です。ここでは無条件に病原体 からの接触・侵入を受け入れるわけではありません。生体には生体防御 機構が存在して感染を阻止しています。 ④ 限定侵入口:感染経路を経て、病原体が接触します。接触し生体内に侵入しようとす る病原体は、まず、皮膚表面、粘膜他の先の自然免疫という生体防御に より抵抗を受けます。もし、病原体に生体の防御が負けてしまえば、こ の病原体によって決まった侵入口より病原体が生体内に入ってきます。 その結果、接触、侵入へと進みます。 ⑤ 感染部位(付着):皮膚・粘膜などの自然免疫に打ち勝ち、新たな生体への接触・侵 入に成功した病原体は、 その病原体によって決まっている感染部位という、 増殖のための特定の部位に付着をしようとします。 ここでも自然免疫の種 類で白血球の仲間である好中球・マクロファージやNK(ナチュラルキラ ー)細胞などの攻撃を受けます。 ここで病原体が生体防御に負けてしまえば、接触・侵入は起きても、付 着はできません。そのまま病原体は排除されてしまいます。 このためその後の付着・増殖には至りません。 ⑥ 感染部位(増殖):感染部位に付着して自然免疫に打ち勝てば、免疫の攻撃を退けな がら一定量増殖し炎症性変化が現れれば、ここに感染が成立する訳です。 (図2 参照) ⑦ 感染の成立:先の過程では、 炎症性変化が現れて感染が成立し、 感染症が発症します。 このように症状が出ている感染を顕性感染と呼びます(⑧)。 ところが実際には、感染しても炎症性の変化がない場合もあります。 このような感染を不顕性感染と呼びます(⑨)。 ⑧ 顕性感染:病原体が増殖の結果、一定量を超えて発熱なり、下痢なりの臨床的な症状 が出てくると感染が成立して、感染症が発症したといえます。このように 感染した状態を症状が出たということで「顕性感染」といいます。 B型肝炎は治癒しても、生体には通常免疫が残り、次にまた接触があれ ば早い段階で免疫が働き、侵入、付着には至らず、したがってB型肝炎に は二度は罹りません。なお治癒した場合でもB型肝炎ウイルスは、健康に

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影響ない程度微量に残ります。症状が出ても出なくても保菌状態となり、 この状態のヒトをキャリアー (保菌者) と呼びます。 このヒトの血液等が、 針刺しなどで新たなヒトの生体内に入れば感染の可能性は高くなります。 ⑨ 不顕性感染:増殖し、感染は成立しますが、症状は出てこない場合があります。これ を「不顕性感染」といいます。病原体によっても異なりますが、通常は、 不顕性感染の方が多いぐらいです。 ここで重要な点の1つは、 症状が出な いでも感染はしていますので、本人も周りも感染しているとは気がつき ません。ところが、病原体は増殖して感染しています。治癒してウイル スなどが完全に排除されれば良いですが、体内に残って臓器などに隠れ ており、増殖など活動はしない状態でいる場合が多いです。この状態を 「潜伏感染」といいます。 症状は出ないでも感染はしておりますので、他のヒトに感染はします。 したがって本人が感染源で病原体を持っているという自覚がないので、 感染を広げることにもなりますし、大変危険な状態ともいえます。 潜伏感染では、 もし生体の免疫が衰えたりすると再び増殖を始めるなど 活動を再開し、症状も出てくる場合もあります。これを「回帰感染」と呼 んでおり、これを繰り返す場合もあります。なお顕性感染の場合でも、そ の後に潜伏感染の形で体内に留まる場合もあります。 不顕性感染の場合でも、感染したヒトはその後免疫ができ、顕性感染と 同じように同一の疾患には罹りません。 たとえばヘルペスウイルスなどは 体表面に感染し増殖した後は、神経節に入り増殖などせずに潜伏します。 この場合はまさに隠れている状態であり、 抗ウイルス薬なども効きません。 B型肝炎に一過性に感染した場合でもほとんど症状は出ないので (70から 80%)、感染した本人は全く気がつかない場合も多々あります。以前まで はウイルスは完全に排除されるといわれていましたが、 体内にはわずかで すがウイルスは残っていることが判ってきました。 日本脳炎ウイルスの場合、 不顕性感染 2,000に対して顕性感染が1の割 合であるといわれています。またポリオウイルス ※ はその感染で90%以上 が無症状です。これらに対して水痘は70%が顕性感染です。この他、ヘル ペスウイルスの類は、不顕性感染が多いです。 ※ ポリオ;Polio は、急性灰白髄炎;poliomyelitis のことで、脊髄性 小児麻痺(略して小児麻痺)と呼ばれています ⑩ 治癒・死亡:もし感染症が発症すると、非特異的免疫(自然免疫)ばかりでなく、特 異的免疫も働き、病原体は排除され感染症は治癒に向かいます。もし生体 全体が感染症に負けてしまえば、生体の細胞は壊され、死を迎えます。 治癒した場合は、 生体には免疫が生まれ、 二度と同じ疾患には罹りません。 ⑪ キャリアー:保菌者ともいいますが、感染が成立すると、生体にはその病原体に対す

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る免疫ができます。 これは症状が出ない場合でも同じです。 またこの場合、 B型肝炎などでは、その生体にはHBS(B型肝炎ウイルス)が治癒した 後にも残ってしまいます。 この生体をキャリアーまたは保菌者といいます。 これは不顕性感染の場合でも同じで、 このキャリアーの血液が他の生体 に入れば、感染の可能性が高まります。 ⑫ 回帰感染:先のように潜伏感染していたものが、 生体の免疫が低下してきた時などに、 活動を再開し、増殖を始め、症状を伴ったりする場合をいいます。潜伏感 染と顕性感染を繰り返す場合もあります。 ヘルペスウイルスが代表的です。 感染のしくみとして、感染の過程を大きく分けて3つのポイントでみました。そして 感染の成立までの過程と感染の後の過程として感染症の発症などについて解説しました。 次回以降は、 先の3つのポイントについて、 Ⅰ.病原体より順に解説を加える予定です。 感染からみた食中毒について 第1回 サルモネラ菌による食中毒 感染に関連して、第 23 回はノロウイルスと結核について若干の説明をしました。 感染を理解する上で、身近なものを時々加えて解説していきたいと思います。 今回は食中毒です。今までは、食中毒は夏がピークといわれました。 最近は、暖房の完備、冷蔵庫の過信などからか1年中通して起こっています。 その上、先ごろテレビ、新聞を賑わした焼肉屋のユッケ事件のように、O-111に より死者まで出る事件が起きましたが、これも食中毒の範疇です。 昔は、日本人の食生活の中心は海産物であったため、腸炎ビブリオなどが多くありま したが、近年は食生活も変わり、今ではサルモネラ、カンピロバクター、ウエルシュ菌 などの家畜や鶏に由来する食中毒も増えています。 食中毒については類書も多く、またテレビ、新聞でも話題になりますが、感染という 観点から食中毒予防も含めて解説を加えたいと思います。 食中毒のイメージは? 食中毒というとどの様なイメージがあるでしょうか? 食あたりだとか、 古い魚や貝を食べて当たっただとか、 傷んでいる食品を食べてなるというイメージが強いです。 良く主婦が臭いを嗅いで、傷んでいるとかいいます。 あるいは酸っぱくなったから腐りかけているなどもそ の類です。 腐ったとはどのような状態でしょうか? では、腐ったものを食べたら、食中毒になるでしょう か? これは、末尾に答えを用意しました。 実際には、いかや帆立貝などの特に貝類の生ものをパーティや結婚式で食べて集団発 生した、卵使用のケーキの集団発生なども良くニュースになっております。

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食中毒も感染を知る上からも、正しい知識を身につけ、感染と感染予防の応用として 考えてみたいと思います。 食中毒の原因は? 食中毒とは、その原因は8割から9割は細菌によるもので、残りはウイルスが付着し た食品、あるいは有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被 害といえます。 このように、感染とは外れますが、食中毒には、ふぐやキノコによる自然毒によるも のや化学物質などによるものも含まれます。 症状としては、多くの場合、嘔吐、腹痛、下痢などの急性の胃腸障害を起こします。 ほとんどは症状が軽くてすみますが、なかにはO-157やふぐ毒、そして先般の O-111のように死に至ることもあります。特に、体の抵抗力の弱い子どもやお年寄り では重症化する傾向がありますので、油断は禁物です。 食中毒では何が多いか? その発生時期は? 食中毒が発生するのは、8月を中心に7月から9月にかけての3ヶ月間が最も多く、 年間発生件数の半数以上がこの期間に集中しています。図1 は8月のみでみました。 この集中は、温度や湿度が細菌の増殖に適しているためと考えられています。 図1 主な病原体別 食中毒患者の割合 平成22年8月 夏場だけでみれば、細菌性が主で、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌が主な食中毒とい えます。冬には最も多いといわれているノロウイルスが、年間を通せば半数近くを占め ており、増加傾向にあります。 サルモネラ属菌 43% その他病原大腸菌 17% 腸炎ビブリオ 19% カンピロ バクター 7% ぶどう球菌 7% 出血性大腸菌 3% ウェルシュ菌 1% ノロウイルス 1% セレウス菌 2%

主な病原体別

主な病原体別

食中毒患者割合

食中毒患者割合

22.8

22.8

図1

図1

〔 〔出典:厚生労働省出典:厚生労働省 〕 〕 注 注1 1;病原体は、ノロウイルス以外は、細菌性である。 ;病原体は、ノロウイルス以外は、細菌性である。 注 注2 2;不明が全体の内、;不明が全体の内、 507507 名(名( 24 24%)あり、除外してグラフとした。 %)あり、除外してグラフとした。 注 注3 3;不明を含む全体の患者数は、;不明を含む全体の患者数は、 2,632 2,632名 名 である。 である。

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ノロウイルスは、統計上のルールを変えたことによっても集計値が変わりました。 平成9年からノロウイルスによる食中毒については、小型球形ウイルス食中毒として 集計してきましたが、最近の学会等の動向を踏まえ、平成 15 年に食品衛生法施行規則を 改正し、現在はノロウイルス食中毒として統一し集計しています。 また平成 11 年の感染症法改正では、従来感染症として取扱われていた赤痢菌、コレラ 菌、パラチフス菌などが食中毒の病因物質に追加されました。このため、病因物質の種 別にかかわらず飲食に起因する健康障害は食中毒として取扱われることとなりました。 食中毒の場合、通常ヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、腸管出血性大 腸菌であるO-157、ノロウイルス、赤痢菌などは感染力が強く、ヒトからヒトへ感染 することがあります。 感染という観点から食中毒をみれば、微生物によって起こるものはすべて含まれます が、細菌性食中毒とウイルス性食中毒の2つが感染性といえます。他にはクリプトスポ リジウムなどの原虫と呼ばれるものもあります。食中毒にはこの他、ふぐやキノコによ る自然毒によるものや化学物質などによるものも含まれますが、これは感染性という概 念からは外れます。 今年起きた 1,500 名を越える集団発生の食中毒は? 今回は、一般的な話はこの程度として、8月にピークを迎える細菌性食中毒の中でも 最も多いサルモネラ菌の概要についてまず解説いたします。 東京ではニュースとしても余り記憶にないかもしれませんが、北海道岩見沢市で2月 9日に学校給食を原因食材とするサルモネラ菌による集団食中毒が発生しました。 小中学校9校の児童生徒・教職員の発症者数 1,541 人、二次感染者数 25 人を数える大 規模な食中毒です。幸いに、入院は 25 名程度で、死者は 0 名でした。 原因食材は、ブロッコリーサラダ(Aコース給食)で、共同調理所は、小学校 12 校、 中学校7校で平成 22 年5月1日現在 6,557 人に提供していたとのことです。 この食中毒は、何が原因で、どのようにして集団 発生したか? この原因は、ブロッコリーサラダに菌が付着し ていたとのことですが、ブロッコリーサラダは、ゆ でたブロッコリーとニンジンを粗塩ドレッシング であえたもので、市の調査では、サラダの具材をあ えるときに使った調理器具からもサルモネラ菌が 検出されているとのことです。 器具に付着していた菌がサラダを汚染したとみら れ、器具の洗浄、消毒が不十分だった可能性が指摘されております。 サラダを調理した回転釜。中央の羽根を装着したシャフトからサルモネラ菌が検出され、 かき回す作業でサラダに入り、汚染したとされた

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同じ日に、サラダをあえている近くで生の鶏肉の調理もしており、この鶏肉からの2 次感染の可能性が高いと思われます。 最終的には、サラダを作る際、ブロッコリーとニンジン、ドレッシングを交ぜるため に使った回転釜の金属製の棒(アームシャフト)からも同じ菌が検出されました。 (写真参照) サルモネラ菌は、63℃で 20 分間加熱すると死滅するとされており、厚生労働省の大量 調理施設衛生管理マニュアルは、 調理所と同型の釜と付属アームについて 80℃で5分 間以上の熱湯消毒 を求めています。 しかし、調理所では 52~53℃のぬるま湯でアームの洗浄消毒を行っており、消毒が不 十分だった可能性があるとし、調理員がマニュアルを守らないという人為ミスと断定し ています。 内閣府食品安全委員会事務局評価課専門官の白銀(しろがね)政利氏は「サルモネラ 菌による食中毒は以前に比べて減ってきているとはいえ、年間約 2,000 人以上の患者が 報告されている。家庭で多いのは、食材を触った手から別の食品に2次感染し、それを 食べた人が食中毒となるケース。まな板や包丁などは洗浄しても手洗いが不十分な人は 多く、それが感染原因となっている」と指摘しています。 食中毒の予防は? 食中毒予防のためには、肉や卵などを取り扱うときは取り扱う前と後に必ず手指を洗 うという、感染予防の基本と全く同じです。 インフルエンザ予防のための手洗い同様、せっけんを使って洗った後は流水で十分に 洗い流すことが大切です。 そして何よりは、日本人は何でも生に近いものを食べる習慣が強いです。食中毒から みれば、これほど危険極まりないものはありません。 食品は、火を通すというのが原則です。この点については、まとめて後述します。 器具を使い分けは? 面倒なようですが、ポイントは、生肉を切った後の包丁やまな板は、洗った後に熱湯 をかけてから使います。また、包丁やまな板は肉用と野菜用を 別々に用意して使い分けるのが原則で、より安全といえます。 この場合でも、 必ず野菜を先にすることを身につけるとより安 全です。1つのまな板や包丁を使い回すのは、極力避けるべきで しょう。 この際に特に注意することは、生肉などの調理の後に、器具ばかりを洗浄しても、手 指を洗うということを忘れていて、手指により感染するということが起きますので、こ のポイントも重要です。 またそこまでといわれるでしょうが、器具を洗う際にもいくつかのポイントがあるよ うです。改めてまとめて解説したいと思いますが、例えば包丁は付け根や柄の部分も良 く洗うだとか、まな板は、できれば日光などで乾燥させるなどが重要です。

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サルモネラ菌の食中毒予防は? 食中毒に共通していえることは、熱を通すということです。 黄色ブドウ球菌により産生されるエンドトキシンという毒素などは例外です。 今回の集団発生では、あくまで推定ですが、鶏肉に原因菌のサルモネラ菌が付着して いて、これが野菜の調理の際に、手洗い不十分、または調理器具などから感染したと考 えられます。 ではなぜ鶏肉では感染しなかったのでしょう。 これは鶏肉の方は、 生で食べることはないので、 加熱調理をしたからと考えられます。 サルモネラ菌は、熱に弱く、加熱を伴う調理過程でほとんど死滅します。ただ、加熱 が不十分だと生き残ったサルモネラ菌が増殖してしまうので、確実な加熱が必要です。 食品の加熱 は食中毒について共通している重要なポイントです。 目安は、75℃で1分間以上というのが、共通していえます。しかしこれでは食品とし ての味を損ねるなどありますが、実際には中の方まで、75℃で確実に加熱するというこ とが重要です。 事実、鶏肉のミンチの3割で菌が確認されていることもあり、ハンバーグやつくねな どは、中まで火が通りにくいので、しっかり火を通し焼くことが大切です。 目玉焼きなどの卵料理は黄身が半熟のことも多いので、時間をおくと菌が増えるので 調理後はなるべく早い時間に食べた方が良いといえます。 先の白銀氏は 「食中毒は、 乳幼児や高齢者の場合は重篤になりやすいので注意が必要。 また、サルモネラ菌は食品だけでなく、ペットからも感染し、ペットの亀から感染した 子どもが死亡した例もある。ペットを飼っている場合、口移しで餌をやらないのはもち ろん、触ったら手を洗うことを習慣づけてほしい」と話しています。 この他、食べものとしては、原則、生肉は避けるということです。牛肉のたたき、レ バ刺、食肉調理品(特に鶏肉)、うなぎやスッポン等、また、ネズミやペット動物、ゴキ ブリ等を介して食品を汚染する場合があります。 前述のように、サルモネラ・エンテリティディスに汚染された鶏卵による食中毒が増 加しており、生たまご入りとろろ汁、オムレツ、玉子焼き、自家製マヨネーズなど、鶏 卵を原料とし、十分な加熱工程のない食品が原因となっています。 サルモネラはどんな菌? サルモネラ菌は、ヒトや鶏、牛、豚、爬虫類(へび・ とかげ・かめなど)のペット、スッポンやうなぎなど ほとんどの動物の腸管に常在菌として存在している細 菌です。その糞便が川水や土を汚染して、その土壌の 農作物まで汚染されます。 サルモネラ菌が付着した卵や肉などを原材料として 使用したときに調理済みの食品を汚染する、時 には調理者がサルモネラの保菌者となり、その 人が食品を汚染し、食中毒を引き起こします。 サルモネラ菌(Salmonella enterica) 〔出典:フリー百科事典 ウィキペディア 日本語版〕

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良くニワトリの卵から食中毒が感染するといわれたのは、 実は原因菌はサルモネラで、 最近の卵の殻はこれらの殺菌処理がされているので安全です。しかし自分の家で卵を産 ませている場合などは注意が必要といえます。 また最近は、卵の殻という外側だけでなく、卵の卵黄などに菌が付着するということ が問題となっています。しかしこの点も解決は、火を十分に通すということです。 集団発生などでは、卵を用いたケーキ類のサルモネラ菌の食中毒も多発しています。 サルモネラは人名から付いたものです。サルモネラ菌の仲間は、全体で 2,500 種類以 上もあるようで、食中毒に関与しているのは約 100 種といわれています。その中でも、 特にサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis;略してSE菌ともい います。 写真参照 )は、1980 年代後半から、欧米諸国で流行し、我が国でも 1989(平 成元)年以降、急激に増加しました。 今まで単に伝染病と呼ぶ時代に流行したヒトのチフス、パラチフスの原因菌もこのサ ルモネラ菌であった訳です。これは現在の感染症法では、三類感染症に分類されます。 この伝染病といわれていたものと、食中毒を起こすものとの大きく2種に分けられま す。 食中毒を起こすものをサルモネラ属菌とも呼びますが、 ここでは菌で統一しました。 汚染された食品やペットの糞などからヒトに感染すると、8~72 時間後に下痢や発熱、 腹痛を起こします。最も顕著なのは、高熱を発する点です。症状は 4~7 日続き、激しい 下痢による脱水のために入院治療が必要となる場合もあります。食品安全委員会による と、平成 11~20 年までの 10 年間で 45 人の死亡が確認されているとのことです。 特に幼児や高齢者の方はサルモネラに対する感受性が高いことが認められているよう で、この点は充分な注意が必要です。 このことが先の岩見沢市における小学校での集団食中毒を引き起こしたともいえます。 どのくらいの菌で発症するのか? 近年、患者が増えているカンピロバクターや腸管出血性大腸菌(O-157、O-11 1)などは少量の菌でも食中毒を起こしますが、サルモネラ菌は 10 万個~100 万個以上 でないと発症しないとされておりました。 ところが最近では、少量の菌で感染し発症することが分かってきたようです。サルモ ネラ・エンテリティディスは数 10~1,000 個の菌量で発症するとの報告もあります。 4歳以下の乳幼児や胃切除者などは少量の菌数で発症するといわれております。胃内 を短時間で通過する水などの少量の菌でも発症することがあります。サルモネラに汚染 された食品や水を摂取してから、8 時間~48 時間後に発症するといわれております。し かし、発症菌数が少ない場合もあり、潜伏時間も平行して 72~120 時間と長い場合もあ ります。 潜伏期集団発生時には、6~48 時間といわれています。 感染可能期間は、通常は 7 日~3 週間で、保菌期間は長く 3~6 ヶ月に及ぶこともあり ますので注意が必要です。 年余にわたる保菌者も数%見られ、ヒトの感受性若年者ほど感受性は高く症状は重い です。新生児や乳児では、伝染病の病原菌のように少数菌で感染し、しばしば接触感染 を起こします。不顕性感染が多いです。

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感染からみたサルモネラ菌食中毒 サルモネラ菌の感染をみてきましたが、これを改めて感染のしくみからみてみます。 サルモネラ菌の排出口は、肛門になります。汚染された鶏肉や卵などの食物を口から 食べますので、侵入口は口になります。同じく感染経路も、 「経口感染」といえます。 そして、 口から消化管を通る過程で唾液などに含まれる殺菌成分や食道粘膜の白血球、 胃液など、生体の持つさまざまな途中の生体防御機構による攻撃から逃れられれば、感 染部位である腸管のM細胞にまで到達します。 ここに付着して、さらに攻撃に打ち勝ち増殖していき、感染が成立します。先述の症 状が出てきて発症となり、食中毒が起こる訳です。 当然感染して菌を排出していても症状の出ない、 不顕性感染というケースもあります。 症状が出れば顕性感染です。 その後、さらに粘膜を経由し血流へ入り、全身感染するケースも当然出てきます。脳 まで達して死亡した例もあります。 今回は、夏場に最も多いといわれるサルモネラ食中毒について、解説しました。 サルモネラ菌は、2,500種類もあるといわれ、 過去にはいわゆる伝染病といわれた現在 感染症の三類の腸チフス、パラチフスも同じサルモネラ菌が原因であるということにも 触れました。 腐敗とは? 腐敗した食品を食べると食中毒になるでしょうか? 食中毒の冒頭の腐敗とは何か、あるいは、腐ったものを食べると食中毒になるかとい うことですが、必ずしも腐っているもの=食中毒とはなりません。 「腐敗した食品を食べなければ、食中毒にはならない」と考えている人も多いようで す。 しかし、 食品が腐敗するのは、 腐敗菌により食品中のたんぱく質が変性するためで、 食中毒菌の働きによるものではありません。 腐ると匂いがしたり、泡が出たり、酸っぱくなったりするのを見かけたことはあると 思います。因みに、泡は二酸化炭素など、酸っぱいものは乳酸などです。 一方、食中毒は、食中毒細菌やウイルスなどが付着した物を食べて起こる疾患という わけです。 これらの食品については味や匂い、見た目など外見的変化はありません。 これが腐敗との大きな違いにあたるかもしれません。 この食中毒菌が増殖していても、食品の味、におい、色などには変化がないため、食 品が食中毒菌に汚染されているかどうかを外見から判断することはできません。 先のように腐敗=食中毒ではありません。したがって、一般に腐敗したものを食べて も食中毒にならないことが多いです。だからといって、すべて安全であるとはいえませ ん。食品衛生上問題となる特定の病原微生物が、食品中で増殖または毒素を生産した場 合、その食品を人が食べることで食中毒が起こります。そして見かけだけでは、食品中 に増殖した微生物に病原性があるかないか、これは判断できません。 したがって、腐敗した食品は食べてはいけないのです。

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食中毒予防の原則は、「食中毒菌はあらゆるものに付着している」ことを前提にして食 品や調理器具などを扱い、 (1)食中毒菌を付けない。 (2)食中毒菌を増やさない。 (3)殺菌する。 の3つを守ることが大切です。 次回には、サルモネラに次いで夏場に多いといわれる食中毒の腸炎ビブリオについて 解説の予定です。 〔参考・引用文献等〕 感染のしくみ4 感染が成立するまでの過程 2 1.ICHG 研究会編、標準予防策実践マニュアル(これからはじめる感染予防対策)、 南江堂、p19、2005 2.氏家幸子監修、泉キヨ子編、急性期にある患者の看護1、成人看護B(第2版)、 広川書店、2001、p244 3.小林秀光・白井淳:微生物学、化学同人、2003 4.環境省監修、日本医師会・日本産業廃棄物処理振興センター、平成 20 年度 医療 関係機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会テキスト、 第1章 原田担当部分、2008 5.泉 並木編集、肝臓病診療 ゴールデンハンドブック、南江堂、2007 感染からみた食中毒について 1.東京都福祉局健康安全室健康安全課編、微生物による食中毒、特別区・保健所、 2008 2.日本医師会・厚生労働省監修・感染症の診断・治療ガイドライン編集委員会編、 感染症の診断・治療ガイドライン2004、日本医師会雑誌 Vol.132、No.12、日 本医師会、2004 3.厚生労働省、食中毒に関する情報、http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/ 4.東京都福祉保健局、食中毒を予防する-たべもの安全情報、 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/index.html 5.産経ニュース、季節に関係なく手洗い徹底を サルモネラ菌食中毒に注意、 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110307/trd11030708360002-n1.htm 6.asahi.com、北海道・岩見沢の小中学生食中毒 給食のサラダが原因、20011.2 http://www.asahi.com/health/news/TKY201102240141.html 7.食と健康の総合サイト e840.net、食中毒とは 食中毒辞典 http://foodpoisoning.e840.net/index.html 8.ウィキペディア、フリー百科事典 ウィキペディア日本語版 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%8D%E3%83%A9

参照

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