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生殖研究のモデル植物としてのゼニゴケ

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はじめに

 有性生殖では,異型配偶子である卵および精子(被子植 物では精細胞)が合体して受精が成立する.このプロセス の中で,精子と卵の接近・認識・融合という段階の全てが 受精を成功させるために必要不可欠である.これらのしく みを分子レベルで明らかにするため,様々な生物種を用い て研究が行われてきたが,核心部分の解明には至っていな いのが現状である.本稿では,生殖研究への新たなツール として,従来のモデル生物にはない特性を備えたモデル生 物ゼニゴケを紹介する. 受精  受精には,大きく分けて3つの段階が必要である.第1は, 精子と卵が接近し,両者が物理的に接触する段階である. 一般に,精子は卵そのものあるいはその周辺の細胞や組織 が放出する物質の濃度勾配を検知し,鞭毛運動を制御して 卵に接近する.精子がもつこの性質を精子走化性と呼び, 精子を誘引する物質を精子誘引物質あるいは精子走化性物 質と呼ぶ.第 2 は,物理的に接触した精子と卵が互いに認 識する段階である.この時,体外受精を行う生物種では種 としての認証が特に重要であり,生物種によってはこの段 階で自己/非自己も認証されて自家不和合となる場合もあ る.最後の段階は精子と卵の融合である.両者の細胞膜が 融合することで一つの細胞となり,核も融合して受精が成 立する. 精子走化性  精子走化性の発見は,19 世紀に遡る.シダなどが精子 を形成することがすでに知られており,それらの精子がリ ンゴ酸イオンに誘引されることが見いだされた(Pfeffer 1884).その約 30 年後,動物としては初めてアスナロウニ で同様の精子走化性が観察された(Lillie 1912).その後, 主に海産無脊椎動物を用いた精子走化性研究が精力的に行 われ,まずアスナロウニで卵から放出される精子走化性物 質が同定された.この物質はアミノ酸 14 個からなるポリ ペプチドで,resact と命名された(Ward et al. 1985).精子 走化性物質は生物種によって多様であり,例えばアカネア ワビではアミノ酸であるトリプトファン(Riffell et al. 2002), エダコモンサンゴでは炭化水素である dodeca-2,4-diynol (Coll et al. 1994),カタユウレイボヤでは硫酸化ステロイド である SAAF(sperm-activating and -attracting factor)(Yoshida

et al. 2002)が精子走化性物質として同定されている.陸 上植物の精子走化性物質としては,シダのリンゴ酸イオン (Pfeffer 1884),ゼニゴケのカリウムイオン(Åkerman 1910) などが知られているが,実際に植物体がこれらを精子誘引 に用いていることは確認されていない.一方,褐藻におい ては,種によって構造が異なる炭素数 11 の炭化水素分子が 精子誘引物質として同定されている(Rui and Boland 2010). ほ乳類の精子が卵に到達するまでの過程は複雑であり,精 子走化性物質およびその受容体の候補は報告されているも のの(Lishko et al. 2011, Strunker et al. 2011)未だに決定的 ではない.  精子走化性物質受容体は,アスナロウニで最初に同定さ れた(Singh et al. 1988).この受容体は精子細胞膜に存在 する guanylate cyclase であり,精子走化性物質 resact に結 合することで GTP から cGMP を合成する.cGMP は K+チャ

生殖研究のモデル植物としてのゼニゴケ

大和勝幸

近畿大学生物理工学部(〒 649 − 6493 和歌山県紀の川市西三谷 930) 要旨:受精は有性生殖の根幹をなすプロセスである.多くの生物種で,卵は精子走化性物質によって精子を 誘引し,卵に到達した精子は卵と融合して受精が成立する.精子走化性を含む受精のしくみを理解するため に,ウニなどの水棲生物や,ほ乳類が研究に用いられてきた.しかし,これらは生化学の材料としては優れ ているものの,分子遺伝学的アプローチには不利なものが多い.そのため,受精を支える分子機構の理解も 未だに限定的である.そこで著者らが注目したのが,精子を用いて受精する,基部陸上植物ゼニゴケである. ゼニゴケと動物には一部の受精関連遺伝子が保存されており,両者に共通する受精のしくみの存在が期待さ れている.また,被子植物の重複受精は複雑であるが,元は基部陸上植物の生殖機構に近いものから進化し たと考えられる.従って,陸上植物に共通する受精のしくみを理解するためにも,ゼニゴケは有用なモデル となりうる.ゼニゴケは,制御系遺伝子に重複が少ない,形質転換系が確立されているなど,実験生物とし ても優れている.これらを受け,ゼニゴケは精子走化性や動植物に共通する受精のしくみを明らかにするた めのモデルとして期待される. キーワード:コケ植物,半数体,精子誘引,ゲノム 2014 年 3 月 6 日受理 連絡責任者:大和勝幸(kyamato@waka.kindai.ac.jp)

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ネルを開放し,一連の情報伝達が開始される.最終的には

電位依存性 Ca2+チャネルが開き,細胞外の Ca2+が細胞内

へ流入することが分かっている(Kaupp et al. 2006).Ca2+

は精子鞭毛運動の制御に重要な役割を果たすことが知られ ており,最近では精子鞭毛のダイニンに結合する Ca2+ 合タンパク質 calaxin が精子鞭毛運動の制御因子であるこ とが明らかにされた(Mizuno et al. 2012).しかし,精子 誘引に関わるシグナル経路および鞭毛運動制御機構の全体 像は明らかにされていない.  一方,被子植物の雄性配偶子である精細胞は自ら運動す ることはなく,花粉管によって卵細胞の近傍まで受動的に 運ばれる.花粉が柱頭で発芽すると,生じた花粉管は助細 胞 か ら 分 泌 さ れ る 物 質 に よ っ て 胚 珠 に 誘 引 さ れ る (Higashiyama et al. 2001).花粉管を誘引する物質の分子的 実体は長い間不明であったが,これが defensin 様ペプチド で あ る こ と を 名 古 屋 大 学 の 東 山 ら が 初 め て 解 明 し た (Okuda et al. 2009).花粉管がこのペプチドに誘引される しくみはまだ明らかにされていないものの,動物の精子誘 引と同様に Ca2+の動態が重要であることが示唆されてい る(Iwano et al. 2012). 配偶子認識  卵に精子が到達すると両者は結合し,種,場合によって は自己/非自己を識別する.多くの動物種の卵細胞は卵外 被(egg envelope)によって覆われているため,精子は卵細 胞と融合する前に複数の相互作用を経るのが一般的である. 配偶子相互認識因子として最初に同定されたのは,アメリ カムラサキウニの bindin である(Vacquier and Moy 1977). このタンパク質は精子で発現しており,卵の糖タンパク質 EBR1(egg bindin receptor-1)に種特異的に結合する.一方, ほ乳類の卵は透明帯(zona pellucida,ZP)と呼ばれる複数 の糖タンパク質層で覆われており,配偶子間の種の認証は ZP で行われる.しかし,その分子的実体は明らかにされ ていない(Avella et al. 2013).  自家不和合は被子植物ではよく知られている現象である が,一部の動物においても報告されている.カタユウレイ ボヤは雌雄同体であり,古くから自家不和合性を示すこと が知られている(Morgan 1939).このシステムでは,配偶 子の表面に存在するタンパク質,卵の v-Themis および精 子の s-Themis のペアが和合/不和合を決定している(Harada et al. 2008). v-Themis および s-Themis は,両者が同じ型, すなわち自己に由来するものであれば結合する.両者の結合 により自己と認識されると精子と卵の結合は解除され,結果 として自家不和合となる.v-Themis 遺伝子は s-Themis 遺伝子 のイントロンにコードされているため,個々の Themis ペア は厳密に維持される.このように,不和合性を決定する雌雄 の遺伝子を同じ遺伝子座に置くことで両者の連鎖を保証する しくみは,先に発見されていたアブラナ科における S 遺伝子 座と共通している点が興味深い (Takayama and Isogai 2005).

膜融合  配偶子間の認証に成功すると,精子と卵は融合して 1 個 の細胞となる.通常,複数の細胞が物理的に接触していて も互いに融合しないことから,受精時には細胞膜を融合さ せるための特異なしくみが働くと考えられる.ただし,生 体膜の融合そのものは細胞内小胞輸送として観察される一 般的な現象であり,膜融合因子として SNARE と呼ばれる 膜タンパク質ファミリーが詳細に研究されている(Hong and Lev 2014).これに対し,配偶子を融合させる因子に関 する知見は限られている.ほ乳類では,卵の CD9(Miyado et al. 2000)および精子の IZUMO(Inoue et al. 2005)といっ た膜タンパク質が配偶子融合因子として有力視されてい る.  被子植物においては,精細胞側の必須因子として膜タン パク質 GCS1(generative-cell specific 1)が報告されている (Mori et al. 2006). GCS1 オーソログは陸上植物のみなら ず,クラミドモナスなどの藻類(Liu et al. 2008)ならびに マラリア原虫などの原生生物(Hirai et al. 2008)にも見られ, 接合や受精時の膜融合に必須であることが実験的に示され ている.被子植物の GCS1 は,精細胞が花粉管内にある時 には細胞内部に存在するが,精子が花粉管から卵細胞近く に放出されると,卵細胞が分泌するポリペプチド EC1(EGG CELL 1)に応答して精細胞表面に移行する(Sprunck et al. 2012).本稿執筆段階では,GCS1 と相互作用する雌配偶 子側の因子は同定されていない.  ほ乳類精子においても,配偶子融合因子である IZUMO は最初から精子表面に局在しているわけではない.精子が 卵と相互作用する際に先体反応が起こると,IZUMO は精子 表面に出現して卵との融合を促進する(Inoue et al. 2005). 分子としての実体は GCS1 と IZUMO で全く異なるものの, 雄性配偶子側の膜融合促進因子である点,卵近傍で初めて 雄性配偶子の表面に移行する点で両者は共通している.   受精研究のモデル生物  受精のしくみには,動植物を通じて不明な部分が数多く 残されている.しかし,これまで受精研究に用いられてき た海産無脊椎動物,ほ乳類,藻類,被子植物などのモデル 生物にはそれぞれ制約があり,新たな知見を得ることが難 しくなっている.例えば,順遺伝学的アプローチは新しい 遺伝子を見つけるために極めて有効であるが,二倍体生物 で変異表現型を観察するには交配を繰り返す必要がある. 特に,雌雄異体の場合,例えば精子走化性に異常が見られ る変異体を作出するのは現実的ではない.ゲノムの視点か ら見ると,遺伝子重複により単一遺伝子の変異では表現型 が見られない場合もある.さらに,受精過程に異常を示す 変異体は子孫を残すことができないため,原因遺伝子をヘ テロ接合体として維持する必要がある.ゲノム/トランス クリプトーム/プロテオーム情報や,遺伝子ターゲティン グを含む形質転換系といったリソースもモデル生物として 欠かすことができない.

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 ゼニゴケは,精子を用いて受精する生物種の中でも,こ れらの条件を全てクリアしている唯一といってもよい「モ デル生物」である. ゼニゴケMarchantia polymorpha L.  ゼニゴケ,スギゴケ,ツノゴケ,コンテリクラマゴケ, リトマスゴケなど,「コケ」と称される生物種は多い.こ れらのうち,ゼニゴケ,スギゴケおよびツノゴケはいずれ もコケ植物に属する.しかし,コンテリクラマゴケはシダ 植物であり,リトマスゴケは地衣類であり,菌類と藻類の 共生体である.さらに,同じコケ植物でも,ゼニゴケはタ イ類,スギゴケはセン類,そしてツノゴケはツノゴケ類に 分類され,4 億年前にはそれぞれから分岐している(第 1 図).コケ植物は,陸上植物の中で最も初期に分岐したため, 「基部陸上植物」とされる.なお,コケ植物は単系統群で

あるとする説(Nishiyama et al. 2004)と,側系統群(Qiu et al. 2007)であるとする説があるが,後者が有力であり, しかもタイ類が最も基部に位置すると考えられている.基 部陸上植物は,陸上植物が必要とするしくみを,被子植物 より単純なかたちで保持していると期待されており,この ことはゼニゴケのゲノム解析で明らかにされつつある(後 述).  まず,ゼニゴケの形態および生活環について概要を示す. ゼニゴケの体制は比較的単純であり,被子植物に見られる 根・茎・葉の区別はない(第 2 図).葉のように見える葉 状体の先端には分裂組織があり,二叉分岐しながら成長す る.葉状体の裏には,根に類似した仮根が密生している. 葉状体の表面には杯状体と呼ばれる無性生殖器官が形成さ れ,その内部で多数の無性芽が形成される.コケ植物の約 半数は雌雄異株であり(Wyatt 1982),ゼニゴケも該当する. コケ植物における生殖生長相への移行要因は種によって異 なるが,ゼニゴケでは長日条件および遠赤色光照射によっ て促進される(Chiyoda et al. 2008,Voth and Hamner 1940, Wann 1925).生殖生長相に移行すると,ゼニゴケの雄株は 造精器をもつ雄器托を,雌株は造卵器をもつ雌器托を形成 する.被子植物とは異なり,ゼニゴケは運動能をもつ精子 を形成する.雄器托に雨などの水がかかると造精器より精 子が放出される.精子は 2 本の鞭毛を用いて水中を泳ぎ, 第 1 図  「陸上植物の系統」. この図ではタイ類が最も基部で分岐しているが,コケ植物を構成する 3 系統 群の分岐順序は確定されていない.((Bowman et al. 2007)より改変)

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雌器托下面に形成された造卵器に到達する.精子は造卵器 の開口部から内部に入り,造卵器基部にある卵と融合する. 受精卵は体細胞分裂を繰り返して胞子体(2n)を形成する が,被子植物のような複雑な形態形成は行わない.その後 減数分裂により,胞子体から多数の胞子(n)が生じる. 胞子は成熟すると弾糸のはたらきにより周囲に飛散し,適 切な環境で発芽して葉状体へと成長する.  ゼニゴケなど,コケ植物には性染色体をもつことが知ら れているものが多い(Ming et al. 2011).ゼニゴケの染色体 構成は,常染色体が 8 本,性染色体が 1 本である(n=8+ X/Y).半数体であるため,性染色体として雌株は X 染色 体のみ,雄株は Y 染色体のみをもつ.性決定遺伝子は同定 されていないが,少なくとも Y 染色体には精子鞭毛の構成 タンパク質遺伝子がコードされていることが明らかになっ ている(Yamato et al. 2007).モデル生物としての強み  ゼニゴケが「モデル植物」のみならず,生殖研究の「モ デル生物」として優れている点を以下に挙げる. 【栽培が容易】  ゼニゴケを標的とする除草剤が市販されているほど,こ の植物の繁殖力は旺盛である.栽培条件は, 十分な水分を 与える以外はモデル植物シロイヌナズナと同じでよく,専 用の培養室あるいは人工気象器用意する必要はない.実験 室内での世代時間は最短で 3 ヶ月程度である.雌雄異株で あるため,交配も容易である. 【半数体】  コケ植物の生活環は,配偶体世代,すなわち半数体(n) 世代が優勢である.そのため,変異処理後,当代で表現型 を観察することができ,ホモ接合体を得るために交配を繰 り返す必要がない. 【無性生殖】  ゼニゴケは無性芽により,有性生殖に依存せずに増殖す ることができる.そのため,有性生殖過程に異常がある不 稔の変異体であってもそのまま維持することができる.し かも,無性芽は 1 細胞から発生するため(Barnes and Land 第 2 図  「タイ類ゼニゴケの生活環」.

葉状体(n)上には杯状体が形成され,内部に無性芽が生じる.無性 芽は成長して葉状体となる.雄株から放出された精子は,雨水などを 介して造卵器に入り,受精する.受精卵は体細胞分裂を続けて胞子体 (2n)を形成する.その後,減数分裂により胞子(n)が形成される.

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1908),変異処理や形質転換の後,無性芽を経由することで キメラ個体を除去することができる.なお,ゼニゴケ葉状 体は再生力が強く,切断しても速やかに再生するので,無 性芽を生じない変異体であっても維持することができる. 【系統保存】  ゼニゴケの胞子は乾燥および低温に強く,冷蔵あるいは 冷凍保存により年単位で保存することができる.寒天培地 上の葉状体も,数ヶ月は冷蔵保存が可能である.さらに, 信頼性の向上が課題ではあるが,無性芽も時間をかけて乾 燥させると,年単位の保存が可能である. 【標準系統】  ゼニゴケの標準系統として,国立京都国際会館周辺(京 都市左京区)で採取された雄株(Takaragaike-1;Tak-1)お よび雌株(Takaragaike-2;Tak-2)が用いられている(Chiyoda et al. 2008).ゼニゴケは半数体であるため,各系統は「純系」 と言える.しかし,Tak-1 および Tak-2 間には多型が観察 されるため,最近では Tak-2 に Tak-1 を 3 回戻し交配して 得られた BC3 雌株が用いられている.遺伝学的解析用の 標準系統として,京都大学理学部附属植物園(京都市左京 区)で採取された雄株(Kitashirakawa-1;Kit-1)および雌株 (Kitashirakawa-2;Kit-2)も用いられている.なお,Tak-1 と Kit-2 の交配により得られた F1 株の解析から,ゼニゴケ の常染色体の数と一致する 8 個の連鎖群からなる遺伝地図 が作製されている(友金ら 未発表データ). 【形質転換系】  ゼニゴケの形質転換法として,パーティクルガン法(Chiyoda et al. 2008,Takenaka et al. 2000)およびアグロバクテリウ ム法(Ishizaki et al. 2008,Kubota et al. 2013,Tsuboyama and Kodama 2014)を利用できる.その際,CaMV35Sプロモー ター,ハイグロマイシン耐性遺伝子,アグロバクテリウム GV2260 株といった,被子植物で一般的に用いられている材 料をそのまま流用できることが多いのが強みである.相同組 換え(Ishizaki et al. 2013)およびバクテリアの CRISPR/Cas システム(Sugano et al. 2014) を利用した遺伝子破壊系も 利用でき,逆遺伝学的アプローチのためのツールも整備さ れている.また,プラスチドの形質転換系も確立されてい るなど(Chiyoda et al. 2007),自由度の高い実験系である. 【低い遺伝子冗長性】  遺伝子重複は生物のもつ遺伝子レパートリーを拡大し, より複雑で多様なしくみを生物に与えてきた.しかし,配 列および機能が類似した複数の遺伝子が存在すると,それ らの機能解析が難しくなる場合がある.例えば,シロイヌ ナズナには光受容体フィトクロムが 5 分子種存在する(第 3 図).単一変異体では分子種間で重複する機能について は変異表現型が現れにくく,それを知るためには多重変異 体を作成しなくてはならない(Strasser et al. 2010).しかも, フィトクロムと相互作用するタンパク質の遺伝子の多くが遺 伝子ファミリーを形成しているため(Leivar and Quail 2011), フィトクロムを介したシグナル伝達系は複雑に並列化して おり,その解析が困難となっている.このような遺伝子重 複は,被子植物の他の制御系遺伝子についても一般的に見 られる.  これに対し,ゼニゴケに存在するフィトクロムは,被子 植物フィトクロム・ファミリーが分岐する以前に分岐した と見られる 1 分子種のみである(第 3 図).被子植物では, シグナル伝達や形態形成に関わる遺伝子の多くが遺伝子 ファミリーを形成しているが,ゼニゴケゲノムではその多 くが単一遺伝子であることが明らかにされつつある(大和 勝幸 and 河内孝之 2012).従って,ゼニゴケをモデルとす ることで,被子植物に見られる制御系の機能的重複による 複雑さを回避しつつ,陸上植物に共通する基本的なしくみ を解明できる可能性がある.相同組換えによる遺伝子破壊 が可能になった現在(Ishizaki et al. 2013),遺伝的冗長性の 低さはゼニゴケのモデル植物としての大きな強みである. 【ゲノム・リソース】  ゼニゴケのオルガネラゲノムは他の植物に先んじて前世 紀に決定されていたが(Oda et al. 1992,Ohyama et al. 1986), 約 280 Mb と見積もられている核ゲノム(Okada et al. 2000) については調べられていたのは Y 染色体のみであった (Yamato et al. 2007).その後,進化系統樹におけるゼニゴケ の特異な位置に興味をもった豪Monash大学のJohn L. Bowman が,京都大学の河内孝之らと共に米エネルギー省 Joint Genome Institute(JGI)の Community Sequencing Program の支援に よるゲノム・プロジェクトを立ち上げた.Y 染色体は解析 済であったため,JGI での解析には Tak-2 に Tak-1 を 4 回 戻し交配して得られた BC4 雌株が用いられた.本稿執筆 段階ではまだ一般公開されていないが,ドラフト配列はゼ ニゴケ研究コミュニティでは利用できるようになってい る.さらに,雄株 Tak-1,雌株 Kit-2,Tak-1 および Kit-2 の F1 株 100 個体についても解析が進行中であり,より精度 の高いアセンブリを構築中である.なお,国立遺伝学研究 所および基礎生物学研究所においても変異株などのドラフ ト・シーケンシングによるデータが蓄積している.  転写産物についてもデータが集積しており,サンガー法 による EST データに加え,次世代シーケンサによる RNA-seq も得られている.葉状体に加え,雌器托・雄器托,胞 子体などの異なる組織や器官,異なる発生段階について データの収集が進められている.こちらもゲノム情報同様, 現時点ではゼニゴケ研究コミュニティ内部のみで利用でき る状態であるが,検索リクエストには個別に対応している.   ゼニゴケにおける受精  コケ植物の受精では,精子は造卵器から放出される精子 走化性物質の濃度勾配を検知して造卵器に到達すると考え られる.ゼニゴケでは雌雄が個体として分離しているため, 精子が造卵器に到達するには cm オーダーの移動が必要で ある.一般には,降水時に雄器托上の水に精子が放出され, 精子を含む水が雨滴により周囲に飛散し,落下地点にある 雌株を受精させると考えられている.セン類チョウチンゴ ケ Mnium ciliare を用いた実験では,雄器托上 50cm から水

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滴を滴下すると,雄器托から最大で 50cm の範囲に水が飛 散したが,自然環境下にある受精した雌株と雄株間の最大 距離は 5.3cm であった(Reynolds 1980).同様の結果がゼ ニゴケについても報告されている(Kitagawa 1985).  一方,種子植物は花粉を動物や風に運ばせることにより, 離れた場所にある個体を受精させている.これに対し,コ ケ植物では精子が自ら泳ぐことによって受精し,動物や風に は依存しないと考えられてきた.しかし,コケ植物がこれ らの「他力」を利用して精子を拡散する事例が近年報告さ れている.例えば,セン類ギンゴケ Bryum argenteum の精 子は,トビムシやダニによっても雌株に運ばれる (Cronberg et al. 2006).これに関連して,セン類ヤノウエノアカゴケ Ceratodon purpureus の雌株が,揮発性物質を放出して積極 的にトビムシなどを引き寄せていることも明らかにされて いる(Rosenstiel et al. 2012).タイ類ジャゴケでは,精子が 造精器から空中に射出されるため,精子は風によっても拡 散されている可能性が高い(Shimamura et al. 2008).ゼニ ゴケの精子は直接雌器床に入ると考えられていたが,広島 大学の嶋村らは雌器托の柄の内部を毛管現象によって移動 する可能性を示唆している(日本植物学会第 77 回大会). 第 3 図  「フィトクロムのアミノ酸配列に基づく分子系統樹」. 被子植物ではフィトクロム遺伝子が重複し,機能的冗長性が見られる. 一方,ゼニゴケでは 1 分子種のみ存在する.ヒメツリガネゴケやヤノ ウエノアカゴケなどでは独自に重複が起こっている.

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このように,コケ植物精子の自然環境下における移動手段 は,従来考えられていたよりも多様であることが明らかに なっている.  精子は造卵器に到達すると,開口部から内部に進入し, 基部にある卵と融合して受精する.しかし,前述の GCS1 遺伝子の存在以外は,コケ植物における配偶子認識や膜融 合のしくみは明らかにされていない.   ゼニゴケの精子走化性物質  ゼニゴケを用いた精子走化性に関する研究は,1900 年 代初頭に遡ることができる.当時,花粉管を誘引する物質 がタンパク質であると認識されていたことから,ゼニゴケ 精子についても同様の実験が行われた.その結果,ゼニゴ ケ精子がジアスターゼ,卵白アルブミン,ヘモグロビンに 対して正の走化性をもつことが明らかになった(Lidforss 1904).その後,各種イオンや酸に対する走化性も検討さ れた(Åkerman 1910).興味深いことに,ゼニゴケ精子は 0.1% KNO3溶液中で 0.01%ヘモグロビン+ 0.1% KNO3溶 液に対して正の走化性を示し,0.01%ヘモグロビン溶液中 では 0.01%ヘモグロビン+ 0.1% KNO3溶液に対して正の 走化性を示したとされている.これは,ゼニゴケ精子に K+ およびヘモグロビンそれぞれの濃度勾配を独立に検出する しくみが備わっていることを示唆しているが,関連する受 容体を含めてそのしくみは不明である.  コケ植物およびシダ植物の精子が K+やリンゴ酸に誘引 されることは明らかにされたが,これらの物質が造卵器あ るいは卵から実際に分泌され,かつ精子走化性物質として 機能しているかどうかは不明である.興味深いことに,藻 類,コケ植物およびシダ植物など,自律的に運動する雄性 配偶子をもつ植物には,アラキドン酸やエイコサペンタエ ン酸などの高度不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids ; PUFA) が存在する(Dembitsky 1993,Guschina and Harwood 2006,Jamieson and Reid 1975).しかし,サクラソウなど の限られた種(Sayanova et al. 1997,Sayanova et al. 2003) を除き,被子植物には上記の PUFA は含まれない.つまり, 植物における PUFA の有無は精子の有無と相関がある.さ らに,褐藻で同定されている精子走化性物質は,アラキド ン酸から合成される不飽和炭化水素であると考えられてい る(Rui and Boland 2010).コケ植物およびシダ植物におい ても,アラキドン酸などの PUFA の代謝産物が精子走化性 物質として機能している可能性がある.

今後の展望

 これまで見てきたように,ゼニゴケはモデル生物として 優れた特性を有している.受精に関する新たな知見を得る には,他の生殖モデル生物と同様,まず精子走化性物質を 同定し,その受容体を明らかにする必要がある.そのため, 筆者の研究室において,精子走化性物質の探索,トランス クリプトミクスおよびプロテオミクスに基づく精子特異的 膜タンパク質の探索および解析を行っている.並行して精 子可視化ツールの作成,精子運動の解析も行っており,近 く精子走化性変異体の作出にも挑戦する予定である. 謝  辞  本稿は,多くの研究者,学生,研究機関と共に進めてき た研究を元に執筆したものである.特に,ゼニゴケをモデ ル生物として使えるよう様々な側面から尽力してきた河内 孝之博士(京都大学),ゼニゴケの分子遺伝学ツールを多 数開発してきた石崎公庸博士(神戸大学),ゼニゴケのモ デル生物としての魅力をアピールして JGI によるゲノムプ ロジェクトを実現させた John L. Bowman 博士(豪 Monash 大学),澤田均博士を始めとする新学術領域研究「動植物 に共通するアロ認証」のメンバー,JGI,国立遺伝学研究 所および基礎生物学研究所の関係諸氏に感謝の意を表す る.

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The Liverwort Marchantia polymorpha L. as a novel model organism for reproduction

research

Katsuyuki T. Yamato

Faculty of Biology-Oriented Science and Technology, Kinki Univ.(Kinokawa 649−6493, Japan)

Summary: The liverwort Marchantia polymorpha L. is one of extant species of the first land plants that appeared about 450 Myr ago. The genomes of plastid, mitochondria and Y chromosome in M. polymorpha were the first to be published among all plant species, making significant contributions to plant biology. M. polymorpha has now become a fascinating model organism for plant biology, because of its crucial position in the evolution of land plants and molecular genetic tools that have been recently developed.

M. polymorpha is dioecious, and its complete haploid set of chromosomes (approximately 280 Mb) consists of eight autosomes and

a single sex chromosome: an X chromosome for a female (n=8+X) and a Y chromosome for a male (n=8+Y). For sexual reproduction, male plants of M. polymorpha produce biflagellated spermatozoa, which swim in the water toward female plants to fertilize eggs. How spermatozoa detect, approach, and unite with the eggs at the molecular level is still a major issue in biology. A number of organisms, mostly animals and some algae, have been intensively studied to address these questions. Only a few of them, however, receive the advantage of molecular genetic approaches, such as genomic resources, genetics, transformation and gene targeting. M. polymorpha is one such organism with a variety of molecular genetic tools. The potential of M. polymorpha as a model organism for reproduction research will be discussed.

Journal of Crop Research 59 : 1 − 10(2014) Correspondence : Katsuyuki T. Yamato(kyamato@waka.kindai.ac.jp)

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