• 検索結果がありません。

国産木材による必需品のこれまで・これから

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "国産木材による必需品のこれまで・これから"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)82. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 杉下哲 Sugishita Tetsu 東京工芸大学. Tokyo Polytechnic University. 第三部:提案. 国産木材による必需品の これまで・これから Necessities of Domestic Wood So Far and From Now On. はじめに 「国産木材」は、持続可能な私たちの暮らしをつくってきた。しかしなが ら現在は、輸入材などによる利用の減少や手入れをされない森林の荒廃など と言われて久しい。人口減少社会でそれらは、更に進行する。デザインなど 諸分野からの貢献が求められている。 一方、私たちの暮らしには、家族や地域を支え、生活やその仕方としての 文化をも担う、様々なモノやコトによる「必需品」がある。国産木材との関 係では、適材適所で使われる、木の必需品による生活や文化である。 「国産木材」を「必需品」から考えることは、人口減少時代の環境デザイ ンを考えることにつながるのではないか。「これまで」の木材の知識と技術 をもとに、「これから」の国産木材とデザインの手掛かりを見出す。. 1.前提 1.1. 人口減少社会. 我が国の将来推計人口は、現在は人口減少社会への道を緩やかに歩み出し. たところで、今後は加速的な人口減少と世界に類を見ない高齢化という事態 に直面して行くとある。これは、確定した運命を示したものではなく、社会 がこれまでと同様の方向に進み続けたときに帰結される姿で、真に実現した い社会と現状との距離を測るための測距儀にあたるともあり、いずれに進む かはわれわれに託されているとある。 具体的な総人口の推移・推計は、人口推計の出発点とする2015年の総人口 は1億2,709万人であった。出生中位推計の結果に基づけば、これからの推. 計では、以後長期の人口減少過程に入る。2040年の1億1,092万人を経て、 2053年には1億人を割り、2065年には8,808万人、2115年には5,000万人にな. 図1 日本の人口の推移・将来推計    「第69回日本統計年鑑 令和2年    第2章 人口・世帯」データをグラフ化. るとされている。現在までの推移では、1億2,000万人を超えたのは1984年 で、1億人は1967年、9,000万人は1955年、5,000万人を超えたのは1912年で. あった。(図1). 1.2. 国産木材. 我が国では、古代から、日用品の隅々に到るまで木材が使われ、必要な用. 材を確保するために林業が行われていたと考えられている。需要と供給がと もなった国産木材があった。中世以降は、神社仏閣や橋梁、城下町の建造な ど、用途を拡げ、近世では江戸幕府による木材の伐採や流通の規制、森林の.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 再生促進や保護政策などが行われた。幕府や藩による御林は、明治維新後の 新政府に引き継がれ、現在の国有林の原型となった。明治以降は、鉄道業や 電信事業、炭鉱業、製紙業など、基盤となった諸産業の資材や原料として、 木材利用が拡大した。明治政府は、1897年の「森林法」制定などで、国土保 全とともに、増大する木材需要へ対応した。大正、昭和と変わるなか、世界 大戦の戦時中は軍需要資材に大量の木材や木炭が必要となり(図2)、造船・ 図2 用途別用材消費量 1880∼1945年    出展「森林資源の環境経済史」. 建築・杭木・薪炭用材として多くの木が伐られた。1945年の終戦後は、復興 用資材の供給とともに森林荒廃が進み、国家再建の重要課題として荒廃林地 への植林が進められた。以降、国産木材は、不足期から1964年の輸入自由化 などを経て、工業化などとともに姿を消していき、1980年をピークとした価 格の低下、森林・林業に携わる関係者の減少などが続いている。(図3) 国土の2/ 3と言われる森林は、人工林と天然林に分けられ、針葉樹や広. 葉樹など多様な樹種構成となっている。国産木材の量は、50年生以上(高齢 級)の人工林は、資源として本格的な利用が可能となる段階を迎えている が、年々多くなり、森林蓄積量は毎年8千万㎥(東京ドーム64杯分)が増加 図3 木材需給表 1955∼2015年    「木材需給(供給)量累年統計(2015年) 農林水産省」データをグラフ化. するとある。また、齢級構成をみると、近年における林業生産活動の低迷に より、若齢林が非常に少ない状態にある。(図4)森林も少子高齢化と表現 され、活用されなければ、手入れがされずに山が荒廃し、災害などの発生に も関わると言われている。 現在、国産木材は、収穫期に入ったなか、活用しなければ、関わる人が更 に少なくなり、生産や加工に関わる知識や技術なども消滅していく。特には 戦後に植林した杉や檜などが需要期に入るなか、大きな転換期に入ってお り、デザインなど諸分野からの貢献が求められている。それは、例えば生産 地の声などを聞くと、地域資源としての商品開発などから産直住宅、街づく りなど様々で、デザインの幅広い専門性とそれらの総合性にある。人やモ. 図4 人工林の齢級別面積    「 林 野 庁「 森 林 資 源 の 現 況 」(2017年 )」 データをグラフ化. ノ、場、時、コトなどを関係付ける環境デザインの方法論や計画論に通じる と考える。. 1.3. 必需品. 私たちの暮らしには、欠かすことのできない衣食住に関わる物品から衛生. や保障など、多種多様な生活必需品がある。それらは、家族や地域を支え、 生活やその仕方としての文化をも担う「必需品」と言える。何を表すかは 様々で、時代や世代、国や地域など他、前提や位置づけで変わる。逆に捉え れば「必需品」とは、特に限定しない、その時々で、家族や地域の暮らしを 支え、生活の仕方や文化の基盤を構成する、様々なモノやコトと解釈でき、 身の周り全てとも言える。それらからは、実現するに際しての価値観や判 断、方法などによる、私たちの見方や考え方、行い方などが見出せる。 以上より本稿では、「これまで」の木材の知識と技術をもとに「国産木材」 を「必需品」から考えることで、人口減少時代の環境デザインを考え、「こ れから」の国産木材とデザインの手掛かりを見出す。 具体的には、人口減少社会を、これから100年程後の、1912年頃と同様の 人口5,000万人程度による社会像として想定し、同じ1912年に発行された「木. 材ノ工藝的利用」を基に、いかに進むかの見方や考え方、行い方などの手掛 かりを見出すこととする。. 83.

(3) 84. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 2.国産木材による必需品 「木材ノ工藝的利用」は、農商務省山林局編纂による1912年(明治45年) 初版の、木材に関わる生産や製品、材料としての樹種や仕様、加工技術など を集大成した、木材産業の総合的な手引書である。本文は総論の三つの章 「木材の性質」「経済的関係」「習慣」と各論の「第1建築用材」から「第86 鋸屑(おがくず)」で構成され、巻末には「木材の工芸的利用一覧表」、附録 には「特種木材及竹材」が付き、この時代の木材の利用が網羅されている。 「これから」いかに進むかの見方や考え方、行い方などの手掛かりを見出す 手引書と位置付けた。「国産木材」による「必需品」から考える観点を、以 下の「利用の性質」「盛衰」「習慣」とした。. 2.1. 「利用の性質」からの手掛かり. 本論と各論をまとめてもいる「木材ノ工藝的利用一覧表」は、「木材(樹. 種156)と竹材及び椰子類(樹種14)の、樹種と用途の関係が要約されてい る。用途には、その樹種を利用する性質と製品例が列記されている。利用す 図5 「木材ノ工藝的利用」表紙    農商務省山林局 編    国立国会図書館デジタルコレクションより. る性質は、多岐に渡り、様々な項目が挙げられている。 一方、付加価値の高い商品が私たちにもたらす満足感や快適さなどには大 きく情緒的価値と機能的価値があると言われている。それら価値に関わる言 葉を「利用の性質」から抽出した。(表1) ⑴ 情緒的価値に関わる性質の言葉 情緒的価値はその製品などを使うことで得られる心理的な価値で、利用す る性質からは、多様な樹種の特性や違いなどに対する、細やかな見方や感受 性などを持つことの重要性を見出すことができる。 「色」「色沢」など、色に関わる言葉が多くある。具体的な「色」は白色 で、黄色や赤色、桃色又茶色、紫檀色、色黒色、色淡黄白、淡紅、淡黒雅な どがある。 「色沢」は、色艶で、その美しさや華やかさ、香しさなどで表し ている。「木理」「紋理」も多く、一言では木目だが、繊維方向の変化によっ て現れる模様を指し、その複雑な変化を指す。色や艶などとともに、様々な 言葉で表されている。「雅」「雅致」からは、伝統的な美意識や文化などと密 着した、上品で優雅な情趣美を見出しているのがわかる。「奇」「奇雅」は、 普通でなく、珍しく、不思議などであることを肯定し尊重している。木材の バラつきや非生産性などを肯定していると言える。「精緻」「清潔」などは、 私たちが受け継ぎ海外からも評価されている、日本を印象づける言葉でもあ る。 ⑵ 機能的価値に関わる性質の言葉. 図6 「木材ノ工藝的利用一覧表」    農商務省山林局 編    国立国会図書館デジタルコレクションより. 機能的価値は製品そのものが提供する価値で、「利用の性質」からは、機 能を実現するために木材を変質させるなどではない、木材だからこそ実現で きる機能を引き出そうとする、知識や技術、それに取り組む姿勢などを見出 すことができる。 「堅」「軽」は、金属など他の材料とは異なる堅さや軽さと言え、多様な樹 種の中からそれらを引き出す木材の活かし方がわかる。「圧・強」 「抗折」 「曲・軟」も同様だ。「狂い」「割」「分割」は、それらを生じさせない材料の 探求がわかる。「水」「乾」「燃焼」では、木材が本来持っている弱点である が、「水を吸収しやすく」 「燃焼容易」など、肯定もしている。「音響」「工 作」などからも、木材をいかに使うかの材質的特性の留意点や工夫の仕方な どを見出すことができる。.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. 表1 情緒的な性質の言葉 語句. 語句. 出現頻度. 色. 語句. 出現頻度. 木理. 語句. 出現頻度. 雅・雅致. 語句. 出現頻度. 奇. 色の美. 5. 色木理. 6. 肥松の雅致 . 2. 根元の奇. 2. 色合. 6. 色木理美. 1. 風蝕材の雅致. 2. 奇異なる斑状. 1. 色木理の華美. 1. 柾物の雅致. 1. 根部の奇形. 1. 清潔. 白色. 36. 木理材色. 8. 皮を剥ぎ磨きて雅致. 1. 肌に奇痕. 1. 清潔の感. 色白. 10. 木理材色華美. 2. 皮を剥ぎ磨きて表面に縦皺あり雅. 1. 皮付きのまゝ幹の屈曲奇形 . 1. 清潔の感をなさしめ. 木理色沢. 7. 皮付きのまゝ磨きて雅致 . 1. 辺材白色. 2. 出現頻度. 精緻 其肌理精緻. 1. 11 1. 帯黄白色. 1. 木理材色の雅. 1. 皮付のまゝ磨き表面に網状の皺あり雅致. 1. 奇雅. 色淡黄白. 1. 木理材色壮美. 1. 節の優雅. 1. 肌の奇雅. 2. 香気. 7. 色(黄色)(赤色)(桃色又茶色)(紫檀色). 1. 木理色沢の美. 1. 皮面の雅致 . 1. 肌にシボあり奇雅. 1. 芳香. 4. 色黒色. 2. 理材色雅致. 1. 皮目の光沢の雅. 1. 皮を剥ぎ磨きて表面の奇雅. 1. 淡紅. 1. 表面にシボあり雅. 1. 根元及根の形状奇雅. 1. 森巌の感. 1. 淡黒雅. 1. 木理美. 3. 腐朽し蜂巣状をなし雅致. 1. 根元の奇雅. 1. 神聖又清浄の感. 1. 木理通直. 3. 腐朽せるものは蜂ナラと称し雅. 1. 雲頭杢を天井板として尚(とうと)ぶ. 1. 木理の雅. 1. 蟲蝕材の雅致. 1. 瘤起あり曲げ. 1. 偽髄線太く. 1. 木理クリに似て雅致. 1. 樹皮の色沢の雅致. 1. 髄線太く. 2. 極めて軽軟粗鬆. 1. 樹皮の付きたるまゝ雅致. 1. 偽髄線太く. 1. 枝紙形状及緑色. 1. 樹皮を除き磨きて雅致. 1. 枝又幹根の屈曲部. 1. 色沢. 香. 色沢の美. 5. 色沢の華美. 1. 色沢の典雅. 1. 紋理. 色沢の濃艶華美. 1. 紋理色沢. 3. 樹皮を剥ぎ磨きて表面雅致. 1. 枝葉の形状及緑色. 1. 色沢香気. 2. 色紋理. 1. 心材柾目取の雅美. 1. 森巌の感. 1. 色沢淡泊優雅. 1. 肌理密. 2. 磨て光沢を生じ雅致. 1. 神聖又清浄の感. 1. 色沢サクラ材に酷似. 1. 紋里美. 1. 神代材の色沢雅. 1. 髄線太く. 2. 肌理の美. 1. 神代木 材緑色 雅致. 1. 旋工彫刻等を施して敷色沢の美 . 1. 神代木 風蝕材の雅致. 1. 肌の色沢. 3. 紋理雅致. 1. 大きく. 3. 肌理キメ材色の美. 1. 肌理滑か. 1. 泥虫に浸して水色に変色せる. 1. 皮肌の色沢. 2. 肌に「しぼ」. 1. 塗上特に美. 1. 皮面の色沢及材の香気 . 1. 材色の濃艶雅美. 1. 光沢. 心辺材の色著しく異る. 1. 光沢に富む. 2. 心辺材の著しく色を異にする. 1. 光沢強く. 1. 木の香及色. 1. 光沢甚強く. 1. 辺材白色 杢を有する. 2. 仕上光沢. 1. 軟く. 2. 柾又杢. 1. 梨材質. 1. 表2 機能的な性質の言葉 語句. 語句. 出現頻度. 堅. 語句. 出現頻度. 抗折. 語句. 出現頻度. 水. 語句. 出現頻度. 音響. 出現頻度. 塩分の浸透性小なる. 1. 堅重. 35. 抗折. 8. 水湿に堪ゆる. 5. 音響を発する. 1. 金属に錆を生せしめず. 1. 堅緻. 15. 抗折及抗圧強. 2. 水湿に堪え. 1. 音響伝導. 6. 色素を含むこと少く. 1. 堅靱. 6. 抗折強. 6. 水湿に強き. 3. 音響伝導悪しき. 1. 樹液及脂を含むこと少く. 1. 堅硬. 3. 抗張強. 2. 水湿に耐ゆる. 1. 溶解性科学的成分(但麦酒は負担力のみ). 1. 水質に強き. 1. 工作. 運搬衝動に堪え. 1. 水を吸うこと少き. 1. 工作容易. 7. 亀裂を生せず加工ようい . 1. 鼠害に罹ること少き. 1. 白蟻に冒されさる. 1. 繊維長き. 2. 枝は繊細. 1. 軽. 曲・軟. 材軽. 25. 曲従性. 8. 吸水性の小なる. 1. 軽く. 2. 屈曲部. 2. 水を吸収しやすく. 1. 軽軟. 37. 弾力性. 5. 水火に逢うて割れ難き. 1. 軟抗. 1. 軟木. 1. 乾. 柔靱. 1. 乾湿. 5. 膠着可. 3. きり材に似る. 1. 乾湿変化に堪ゆる. 2. 膠漆の附着可. 1. 木心に細孔. 1. 漆膠の附着可. 1. 杢と鬆(す). 1. 軽軟脂少く. 2. 狂ひ 狂ひ少き. 19. 釘の利き可. 2. 釘の利き善き. 1. 狂ひ又割れ少き. 1. 割. 狂ひ及瘠少き. 1. 割れ難き. 9. 燃焼. 狂ひ又は割れ少き. 1. 割れ又そげの立たざる . 1. 燃焼し難き. 1. 脂少く. 狂ひ又割れの少き. 1. 割れ又は狂ひ少き. 1. 燃焼に強き. 4. 割れ又殺げ難き. 1. 燃焼に対する抵抗. 2. 圧・強. 切味軽快. 1. 5. 素直. 1. 脂分に富む. 1. 痩. 1. 割れ又折れ難き. 1. 燃焼容易. 1. 摩擦衝動に堪ゆる. 3. 大且刺の立たざる. 1. 圧強. 16. 割れ及剥げを生せざる . 1. 燃焼し易き . 1. 摩擦に耐え. 1. 刀痕判明せさる. 1. 抗圧強. 15. 薄くなして割れ難き. 1. 焦げ難き. 1. 抗圧性. 1. 臭少き. 3. 薄板. 2. 高圧強. 1. 分割. 炭質火薬に適するを利用す. 1. 臭気少き. 2. 反張割裂なき. 1. 負担力強き. 1. 分割. 炭質点火の容易なるを利用す. 1. 比重の恰適. 1. 負担力並抗圧強. 1. 分割性. 3. 焚く時爆発声. 1. 薄片となし條を付して折曲ぐるに適する . 1. 引き強き. 1. 分割容易. 1. 材を焦し又は塗り. 1. 強力性. 1. 強靱. 4. 衝動に堪ゆる. 4. 11. 彩色. 5. 粘靱. 3. 85.

(5) 86. 特集:人口減少時代の環境デザインを考える. 2.2.「盛衰」からの手掛かり. 「経済的関係」の中に「木製品の盛衰」の記述がある。記述では、以下の. 観点で木材や木製品の衰微と隆盛を概観している。それらからは特に、当然 だが、当時の人たちが私たちの今をつくっていることを確認できる。多様な 価値観の中から何を選択するか、日々の暮らし方をどの様につくるかなど、 デザインすることと直結している。 ⑴ 「昔の勢いが衰えて現状維持するだけで将来増加の見込みない木材及び 木製品」の観点では、以下などを衰微の要因としている。 ・近代化(水道樋など)、技術変化(版木など)、時代性(槍など) ・嗜好変化(羅宇など)、流行(明清楽器など) ・材料代替(玩具など)、機械化(シンシなど) ・法律規制(木造船など) ⑵ 「近代化などで将来ますます需要が増加する木材及び木製品」の観点で は、以下などを隆盛の要因としている。 ・日常生活に関わる(製紙や鉛筆、など) 図7 「木製品の盛衰」    農商務省山林局 編    国立国会図書館デジタルコレクションより. ・産業や商業などに関わる(造船や車両、量器、包装など) ⑶ 「昔勢いがあってなお将来ますます需要が増加する木材及び木製品」の 観点では、以下などを隆盛の要因としている。 ・伝統や文化に関わる(團扇など) ・豊富な資源に関わる(竹材など). 2.3.「習慣」からの手掛かり. 「習慣」には、木材利用上の習慣を、国や地方で異なるなか、「需要者の嗜. 好」「伝説」「道具使用上」に分けて記述している。共通して習慣は、道理で なく印象や偏見などと関わりながら、流通の発達や知識の普及、流行などで 変化するとある。実際、現在から見れば、伝統などとして残るものもある が、時代や生活様式などとともに変わり、忘れ、消えた習慣も多い。私たち 自らが習慣をつくってきたことがわかる。地域性などをふまえ、嗜好や愛着 などによる、より良い習慣をつくる仕組みが求められる。 ⑴ 需要者嗜好による習慣 一般の嗜好は、和風建築などでヒノキ材を用いるのを最上とし、床板や門 扉板などに幅広い一枚板を賞用し、指物などでは無垢材板製を賞用するとあ る。地方の嗜好は、関西と関東で異なり、室内装飾用材は、関西ではスギ 図8 「習慣」    農商務省山林局 編    国立国会図書館デジタルコレクションより. 材、ヒノキ材及びその磨き丸太、またはツガ材を常用し、関東では唐木類を 珍しいとある。関西では名栗材を実用し、関東では余り用いない。山中漆器 や紀州物などは材の用い方があると記述されている。洋風模倣によってもた らされる習慣洋風建築の指物にナラ材を常用し、鉛筆にビャクシン材などを 用いたのは、外国輸入品に類似の木材を用いたので、提供する側が求めたの ではないとある。 また、経済上の変動によりなじんだ習慣が記述されている。経済上の変動 とは、特用樹種の減少や木材の欠乏、材価の騰貴、外国木材の輸入、金属製 品の競争などとある。例えば、ケヤキの欠乏によりセンが建築および指物に 用いられ、アメリカ材は造船および大建築に賞用されたなどとある。激動の 明治期に生じた、用途の衰微または廃滅した習慣とも言えるだろう。.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.28-2 No.104. ⑵ 伝説による習慣 忌み嫌う「厭忌」から守る役目とする「守護神」まで、木材と木製品の使 い方における伝説が列記されている。使用を忌み嫌うのは、根拠までは記述 されていないが、承継されてきた意味があっただろう。火や毒、病、虫害な どは、継承されるべきだろう。この時代までは確かに、木が暮らしに密着し ていた所以である。 ⑶ 道具使用上の習慣 針葉樹を使う工人は広葉樹を嫌う、針葉樹の中でも樹種で嫌うことがある など、道具使用上での嫌忌や排斥などが列記されている。木材や木製品を提 供する側の約束事や思いなどがわかる。. 3.おわりに 人口減少社会に向け、「これから」いかに進むかの見方や考え方、行い方 などの手掛かりを、「国産木材」による「必需品」から考えるとして、「木材 ノ工藝的利用」における「利用の性質」「盛衰」「習慣」から見出した。それ らからわかるのは、木材や木製品が生活や社会と密接な関係にあった事実 と、それをつくった長い年月や人の姿などである。私たちが本来持っていた 気候や風土、それらから培った知恵や工夫なども再確認できる。 一方、私たちは、人口5,000万人程度であった明治まで以降、一言では「成. 長」を求めてきたと言える。特に経済はそれを優先してきた。その所産とし. て今日の生活や社会があり、人口は1億2,000万人を超えている。しかしな がら、そのなか、モノからコトへ、均一から多様へ、グローバルからローカ ルへ、交換価値から使用価値へなどと言い、地球環境や循環、SDGs、自然. 資本、エシカル消費などを目指し始めてもいる。. デザインするに際しては、言えば「成熟」や「足るを知る」などで、無い ことを示して得ることを訴求するだけでなく、有ることにも目を向けて活か していく「これから」の進み方の実践が求められる。「国産木材」において はその「必需品」の実現が求められる。 図・表の出典 「第69回日本統計年鑑(2020年)」総務省統計局 「森林資源の環境経済史」山口明日香(著) 「木材需給(供給)量累年統計(2015年)」農林水産省 「森林資源の現況(2017年)」林野庁 「木材ノ工藝的利用」農商務省山林局 編. 87.

(7)

参照

関連したドキュメント

存在が軽視されてきたことについては、さまざまな理由が考えられる。何よりも『君主論』に彼の名は全く登場しない。もう一つ

仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必

テキストマイニング は,大量の構 造化されていないテキスト情報を様々な観点から

一次製品に関連する第1節において、39.01 項から 39.11 項までの物品は化学合成によって得 られ、また 39.12 項又は

2 E-LOCA を仮定した場合でも,ECCS 系による注水流量では足りないほどの原子炉冷却材の流出が考

されていない「裏マンガ」なるものがやり玉にあげられました。それ以来、同人誌などへ

であり、最終的にどのような被害に繋がるか(どのようなウイルスに追加で感染させられる

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP