運動器理学療法学における学習成果基盤型教育の考え方
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(2) 784. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. る場合について考えてみる。水準 1 の実践レベルとしては,症. 術の難易度,専門知識,経験,時間などの制約があるため,学. 状が安定し,改善が見こまれる腰痛に対して,マッサージやス. 生には安易に任せられない領域で,資格をもった理学療法士が. トレッチが実施できることが挙げられる。具体的には,腰部,. 行う領域とすべきであると考えられた。学習成果基盤型教育で. 骨盤帯,股関節,大腿部に対するマッサージができること,腰. は,目標と水準について学内と学外での検討を重ね,より適切. 椎,仙腸関節,股関節に関与し,短縮している筋に対してスト. で標準的な教育を構築し,公開することが求められる。. レッチができることが望まれる。さらに,症状が安定した腰痛 に対して,腰痛体操を実施し,指導できるべきであると考える。 水準 2 の監視下模倣レベルとして,腰椎,仙腸関節,股関節に 対して,後前運動や横断圧迫. 6–8). ,椎間関節自然滑走法や持続. 的椎間関節滑走法 9) などの実施が挙げられる。さらに坐骨神 経痛や大腿神経痛に対して神経モビライゼーション 9)10)が実 施できることが望まれる。水準 3 の見学に留めるレベルとして は,複数回の理学療法に対して,効果が一時的か,ほとんど効 果がない場合が考えられ,中等度以上の軟部組織損傷による癒 着が原因と考えられるものや腰部の複数部位に腰痛の原因があ り治療の優先順位を慎重に考える必要がある場合,さらには症 状に影響を及ぼす中等度以上の心理・社会的因子,具体的には Keele Star Back スクリーニングツール 11)12)で総合 4 点以上, 質問 5 ~ 9 で 4 点以上の場合に,認知行動療法など他職種との チーム医療が必要となり,実習生単独では責任が重過ぎる場合 が挙げられる。 運動器理学療法における学習成果基盤型教育における目標と 水準について考慮すべき要件として,目標は理学療法士として 具有すべき知識と技術により,理学療法効果が期待できる内容 とし,水準 1 の実践レベルとして,理学療法士養成教育の中で 十分に専門教育や技術が教授され,ほとんどリスクの問題や経 験などによる制約がなく,積極的に学生に体験させ得る領域, 水準 2 の監視下模倣レベルとして,ある程度のリスクの問題, 技術の難易度,専門知識,経験などによる制約があるものの, 学生の指導がそばにいることで学生が実施することができる領 域,水準 3 の見学に留めるべきレベルとして,リスク管理,技. 文 献 1) Spady WG: Organizing for Results: The Basis of Authentic Restructuring and Reform. Educ Leadersh. 1988; 46(2): 4–8. 2) Harden JR, Crosby MH, et al.: AMEE Guide No. 14: Outcomebased education: Part 5-From competency to meta-competency: a model for the specification of learning outcomes. Med Teach. 1999; 21: 546–552. 3) Spady WG: Outcome-Based Education: Critical Issues and Answers. American Association of School Administrators, Arlington, Va. 1994. 4) 田邊政裕,朝比奈真由美,他:千葉大学医学部における学習成果 基盤型教育(Outcome-based Education)の実質化─順次性のある カリキュラム編成の工夫─.医学教育.2011; 42: 263–269. 5) 中村明弘,長谷川洋一,他:学習成果基盤型教育に基づいて 6 年 制 薬 学 教 育 の 学 習 成 果 を 考 え る.YAKUGAKU ZASSHI.2015; 135(3): 331–332. 6) 赤坂清和,齋藤昭彦:メイトランド脊椎マニピュレーション(原 著第 7 版).エルゼビアジャパン,東京,2008. 7) 赤坂清和,齋藤昭彦:メイトランド四肢関節マニピュレーション (原著第 4 版).医学映像教育センター,東京,2010. 8) 竹井 仁,黒澤和生:系統別・治療手技の展開(改定第 3 版).協 同医書出版,東京,2014. 9) 藤縄 理,赤坂清和,他:マリガンのマニュアルセラピー(原著 第 5 版).協同医書出版,東京,2007. 10) 伊藤直栄,斉藤武利,他:バトラー・神経モビライゼーション─ 触診と治療技術.協同医書出版,東京,2000. 11) 松 平 浩, 菊 地 徳 昌, 他: 日 本 語 版 STarT(subgroup for Targeted Treatment)Back スクリーニングツールの開発─言語 性妥当性を担保した翻訳版の作成.日本運動器疼痛学会誌.2013; 5: 11–19. 12) Keele Star Back スクリーニングツール.http://www.keele.ac.uk/ media/keeleuniversity/group/startback/translations/Japanese % 20translation_STarT % 20Back % 20Tool.pdf(2014 年 10 月 20 日 引用).
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