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専攻言語・第2外国語における外国語到達目標とCan-doリスト作成に向けて

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画作品が占める重要性と位置づけ(世界の美術の中でのベラスケスの重 要性、20 世紀の世界の美術の中でのピカソの重要性)、世界的に有名な 国内の美術館 / FP 時代別および芸術運動別の代表的な作者や作 品、社会生活の中での美術の存在 / FC スペインやイスパノアメリカ の美術史年表(重要な運動や傾向): ロマネスク様式の絵画から近年の芸 術傾向まで、スペインにおけるバロック絵画(スペイン史の中でのある歴 史芸術的な期間の全盛期の反映としてのバロック絵画に与えられる意 味、20 世紀スペイン絵画の分野で重要かつ代表的な人物としてのゴヤが 占める重要性と位置づけ)、イスパノアメリカにおける文化的伝統の回復 と再評価の運動としてのインディへニスモとナショナリズムの重要性、 絵画作品の中での政治的社会的な運動の反映、フェリアと展覧会]    3.5.2. 彫刻 [FA 国際的に認知されたスペイン語圏の彫刻家と彫刻作品 / FP 時代別および芸術運動別の代表的な彫刻作家や作品、都市環境の 中での彫刻 / FC 先コロンブス期の彫刻、宗教的彫刻、20 世紀の彫刻 のリアリズム]    3.5.3. 写真 [FA 国際的に認知されたスペイン語圏の写真家と写真作品 / スペインやイスパノアメリカの有名な写真家、写真の展示や写真関係の 賞 / FC スペイン語圏諸国の写真の傾向、スペイン語圏諸国の写真史 の重要な出来事、代表的な写真誌]    3.5.4. 陶芸と金銀細工 [FA なし /FP 代表的な民衆の陶芸、先コロンブ ス期の陶芸、スペインとイスパノアメリカのタイル製造 / FC 民衆 の陶芸と窯元、スペインとイスパノアメリカの芸術的な陶芸、金銀細工、 陶芸や金銀細工、タイル製造についての代表的な博物館]    

専攻言語・第

2 外国語における外国語到達目標と

Can-do リスト作成に向けて

㻌 国際関係学科 宮谷 敦美 ヨーロッパ学科スペイン語圏専攻 江澤 照美㻌 国際関係学科㻌 髙阪 香津美㻌 グローバル人材育成推進室㻌 坂本 ファーン㻌 㻌 本稿は 2013 年よりグローバル人材育成推進室内で発足した「e-portfolio ワーキンググル ープ」の活動のひとつである、外国語学習の目標設定のための外国語到達目標記述と Can-do リスト作成に関する中間的な報告である。 㻌 1. ヨーロッパ共通参照枠㻌 (CEFR)の理念と概要 CEFR は 2001 年に欧州評議会が策定した、外国語教育のシラバス、カリキュラム、教科 書・試験作成、能力評価時の共通基準である。「複言語主義」と「行動中心主義」という二つ の言語教育観のもと、CEFR は欧州域内の諸言語教育の世界の中で言語熟達度をあらわ す客観的な基準を提示するための有益な指針としての役割を果たしてきた。これにより、欧 州各言語の熟達度試験の基準の見直しが行われてきた。CEFR の導入により言語運用能力 の認定が容易になり、雇用者は従来よりも的確に言語運用能力が問われる職への応募者の 能力を判断できるようになる。それは欧州域内の労働市場の活性化を促進する。 欧州域内のすべての構成員は母語以外の言語習得が一生の課題となるが、複言語主義 に裏打ちされたCEFR にヒントを得て再構築された新しい言語教育においては、部分的な言 語能力も積極的に評価される。母語話者並みの語学能力習得が外国語学習の唯一の目標 ではなくなったこともCEFR 以降の言語教育の大きな特徴のひとつである。 言語熟達度についてはCEFR 以前から 6 つのレベルが想定され、特に現在の B1 レベル に相当する Threshold Level は外国でその国の人とコミュニケーションを図るために最低限 到達が必要とされているレベルである。CEFR の導入後、教育現場では各レベルをさらに A1.1, A1.2.などに分割した上での教育実践やその研究が進行中である。 日本語版が2002 年に翻訳出版されて以来、CEFR は日本の外国語教育にも影響を与え てきた。CEFR に準拠した英語能力到達度指標 CEFR-J や JF 日本語教育スタンダードなど のほか、英語以外の外国語教育でもCEFR に準拠した教育や到達目標の指針づくりが進め られている1) 2. 2013 年からの e-portfolio WG の取り組み e-portfolio WG の活動目標は、主として本学のグローバル人材育成推進事業の中で外国 語学部が定めた各語学検定試験の到達目標を技能別に提示することや学生用のCan-do リスト作成、学生が利用可能な自律学習ツールをe-portfolio システム manaba に整備するこ となどである。2013 年度の活動の成果としてまとめたものが愛 知 県 立 大 学 グローバル人

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材 育 成 推 進 室(2014)である。これは本学外国語学部の学生および留学生が学ぶ言語のう ち、英語・スペイン語・中国語・日本語・ポルトガル語についての到達目標試案である。 同試案においては言語活動を ①受容(聞く) ②受容(読む) ③やりとり ④産出(話す) ⑤産出(書く) の 5 つに下位区分した。これは、従来の「受容と産出」「文字言語と音声言 語」という 2 点から分類されるのが常であった言語活動に「一方向的と双方向的」という観点 を加えたCEFR の分類に準じている。 また、同試案では到達目標を能力記述文として提示した。CEFRの尺度としての能力記述 文については「個々の異なるコンテクストで一般化された結果を配慮する必要から、コンテク ストの制約を受けないことが望ましい。」と吉島他(2004:21)は述べている。しかし、本学の外 国語学習者向けの指針づくりを目指す本WG は、客観性や透明性を保ちつつも、教師や学 生がそれを見て具体的な目標をイメージしやすい「愛知県立大学外国語学部版能力記述 文」作成を最終目標としている。 次章にて、到 達 目 標 試 案 を 作 成 す るに あ たっ て 出 て きた 議 論 について述べる。な お、グローバル人材育成推進事業に関する本学の言語到達目標は以下の通りである。 㻌 [愛 知 県 立 大 学 グローバル人 材 育 成 推 進 事 業 の言 語 到 達 目 標 ] A. 専 攻 外 国 語 B. 第 2外 国 語 3. 到達目標試案の作成過程における議論 本 章 で は 、 到 達 目 標 試 案 を 作 成 す る に あ た り 生 じ た 議 論 に つ い て 述 べ て お き た い。CEFR では、学 習 者 の言 語 熟 達 度 を A1 から C2 の 6 段 階 にレベル分 けをしてい 言 語 到 達 目 標 CEFR 対 応 レベル 英 語 TOEIC 800点 以 上 B2 – C1 フランス語 実 用 フランス語 技 能 検 定 試 験 準1級 B2 スペイン語 DELE B1㻌 ※2013年 度 に B2から変 更 B1 ドイツ語 ドイツ語 技 能 検 定 試 験2級 B2 中 国 語 中 国 語 検 定 試 験2級 - 言 語 到 達 目 標 CEFR 対 応 レベル 英 語 TOEIC 730点 以 上 B1 フランス語 実 用 フランス語 技 能 検 定 試 験3級 A1 スペイン語 DELE A1 A1 ドイツ語 ドイツ語 技 能 検 定 試 験4級 A1-A2 中 国 語 中 国 語 検 定 試 験3級 - ポルトガル語 外 国 語 としてのポルトガル語 検 定 試 験CIPLE A2 ロシア語 ロシア語 能 力 検 定 試 験4級 - 韓 国 朝 鮮 語 ハングル能 力 検 定 試 験3級 、韓 国 語 能 力 試 験3級 - 日 本 語 日 本 語 能 力 検 定 試 験N1 C1

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るが、たとえば、同 じ A1 の学 習 者 がある一 つのタスクに取 り組 む際 、学 習 者 が誰 の 助 けも借 りず、自 分 の力 だけでそのタスクが達 成 できる場 合 と、「相 手 がゆっくり話 せ ば」、あるいは、「あらかじめ準 備 をしておけば」など、周 囲 の助 けや準 備 があって初 め てそのタスクが達 成 できる場 合 とがあり、 同 じ言 語 熟 達 度 内 の学 習 者 であっ ても、そ れぞれの言 語 能 力 に は差 があ り、「 できること」 に幅 があ る ことは言 うまでもないことで ある。本 WG では、この「学 習 者 の言 語 能 力 の幅 」に加 えて、同 じ言 語 熟 達 度 内 で 課 されるタスクであっても、タスクの難 易 度 に幅 が存 在 するという「タスク難 易 度 の幅 」 と、あるタスクを達 成 する上 で、単 に達 成 することと適 切 に達 成 することとは達 成 度 に 幅 があるという「タスク達 成 度 の幅 」という二 つの「幅 」の存 在 について議 論 し、これら 3 つの「幅 」という考 え方 をどのように到 達 目 標 試 案 に反 映 すれば学 習 者 の言 語 能 力 を 正 し く 評 価 で き る か と い う 観 点 か ら 、 各 言 語 の 到 達 目 標 試 案 に「 問 題 な く で き る こ と」と「制 限 があるができること」を設 定 した。「問 題 なくできること」と「制 限 があるができ ること」の線 引 きについては今 後 も引 き続 き議 論 が必 要 であるが、この「幅 」という視 点 は、学 習 者 に目 標 言 語 で何 ができるようになってほしいかという到 達 目 標 を掲 げ、レ ベル別 によ る単 なる 輪 切 りで はな い、 学 習 者 の言 語 能 力 を 適 切 に 捉 えた、 より具 体 的 なCan-do リストの作 成 をする上 で有 意 義 に作 用 するものといえよう。 4. Can-do リスト作成と教育への応用に向けて 本WGは、2013年 度 に5言 語 の到 達 目 標 案 を作 成 した。現 在 、3章 での議 論 もふ まえ、e-portfolioに教 育 ツールとして整 備 するCan-doリストの作 成 に取 り組 んでいる。 Can-doリスト作 成 の際 に検 討 すべき点 として、以 下 の5つが挙 げられる。 4.1. 学 習 者 の個 別 性 への配 慮 グローバル人 材 育成推進事業構 想 調 書 で設 定 した外 国 語 運 用 能 力 の目 標 値 を 踏 まえ、外 国 語 を用 いて具 体 的 に「できること」として評 価 可 能 な 到達目標試案を設 定 した。この後、教 育 に活 用 できるより詳 細 な Can-do リストを作 成 することが次 の目 標 である。学 生 と教 員 が利 用 でき、かつ有 益 な Can-do リストを作 成 するためにはま ず学 生 個 人 のニーズと社 会 的 ニーズの両 方 を考 える必 要 がある。 学 生 によって外 国 語 学 習 の目 標 はそれぞれ異 なるが、学 習 言 語 を用 いてコミュ ニケーションできるようになることを第 1 の目 標 として考 えている学 生 が多 いと考 えら れる。一 方 で、就 職 活 動 に活 かすために、TOEIC 等 の外 国 語 検 定 試 験 で高 い得 点 を取 ることを目 標 にしている学 生 もいるようである。以 上 のように学 生 の外 国 語 学 習 の目 標 や動 機 は異 なると考 えられるが、本 WG の活 動 は、グローバル人 材 育 成 推 進 事 業 の一 部 であるため、学 生 の個 人 的 なニーズだけでなく、事 業 が掲 げる社 会 的 ニーズも視 野 に入 れなければならない。社 会 的 ニーズも含 めて考 えると、最 も 包 括 的 な目 標 は「コミュニケーション」になると言 えるだろう。 次 に、学 生 のさまざまな言 語 能 力 への対 応 が必 要 になるだろう。ゼロから言 語 を学 習 する学 生 の能 力 はある程 度 予 想 できるが、英 語 の場 合 はより 複 雑 である。まず、日 本 の大 学 では中 学 校 (あるいは小 学 校 )から英 語 を 学 習 している学 生 がほとんどであ る。入 学 試 験 の結 果 を通 して、学 生 の英 語 に関 する知 識 と運 用 能 力 の一 部 の 把 握

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は可 能 であるが、そこから学 生 の5 技 能 のコミュニケーション能 力 を把 握 することはでき ない。ある技 能 では B1 レベルに達 していても他 の技 能 では A2 レベルであるようなケ ースも少 なくない。それゆえ、Can-do リストを作 成 するときには、初 習 外 国 語 だけでな く、英 語 においても全 技 能 においてA1 レベルから(初 習 外 国 語 は B2 レベルまで、英 語 と日 本 語 については、C1 まで)設 定 する必 要 がある。ただし、Can-do リストの項 目 数 が多 くなりすぎると使 いにくいため、適 切 なバランスをとる必 要 があるだろう。 4.2. 言語使用場面の設定 外 国 語 学 習 の目 標 として、 学 習 言 語 を 母 語 とする者 とのコミ ュニ ケーションができ るようになることをイメージする人 が多 いだろう。しかし、「グローバル共 通 言 語 」の役 割 も有 する英 語 の場 合 、母 語 話 者 とのコミュニケーションを目 標 と考 えるだけでは不 十 分 である。英 語 学 習 者 が今 後 英 語 を使 用 する状 況 は、大 変 流 動 的 な言 語 環 境 にお いてである。学 生 が将 来 、どのような状 況 で、 誰 とコミュニケーションすることになるかは 分 からないが、その相 手 が 母 語 話 者 ではない可 能 性 は決 して 低 くないだろう。 このよ うな状 況 を想 定 した場 合 、学 生 が学 ぶべき英 語 とはどのようなものだろうか。 本 学 のグローバル人 材 育成推進事業では、言 語 のスキルのみならず、より包 括 的 な コミュニケーション能 力 の育 成 を目 指 している。欧州評議会もまた、今 日 の世 界 における 言 語 教 育 の目 標 は、単 に1つまたはそれ以 上 の外 国 語 を 習 得 することではなく、さま ざまな言 語 的 、文 化 的 な状 況 や場 面 において、だれとで も積 極 的 なコミュニケーション がとれるようになることだと言 う。 このことは、 特 に英 語 の場 合 に当 てはまる 。 例 えば、 日 本 語 のように比 較 的 狭 い地 域 で使 用 され ている言 語 の場 合 、当 該 言 語 の使 用 対 象 とする特 定 の文 化 、“target culture”を学 習 すれば、ある程 度 のコミュニケーションがと れるだろう。しかし、英 語 の場 合 、target culture を特 定 するのは困 難 である。それゆえ、 グローバル言 語 としての英 語 コミュニケーション能 力 を身 につけるならば、複 雑 かつ、よ り幅 広 い英 語 使 用 場 面 における対 応 力 を身 につけることが必 要 である。 もちろん、全 ての英 語 場 面 や必 要 な表 現 を提 示 することは不 可 能 である。したがっ て、 従 来 目 指 されてきた言 語 知 識 の修 得 よりも さまざ ま なコミュニケ ーション・ ストラテ ジーや柔 軟 性 、積 極 性 などの態 度 、問 題 解 決 能 力 、クリティカル・シンキングを身 に つ ける こと のほう が 重 要 と なっ て くる 。 到 達 目 標 そ し て Can-do リストを活 用 すること で、 従 来 の 知 識 を 測 る テストを 補 完 して、 コミュニケーション能 力 を 具 体 的 に 測 定 でき る。もちろん、Can-do リストによって測 定 可 能 なコミュニケーション能 力 が、リスト作 成 者 の設 定 する活 動 領 域 内 に限 定 されてしまう可 能 性 があることには留 意 すべきであ る。その場 合 、 学 生 が未 知 の場 面 や状 況 において、 学 習 言 語 を用 いて 適 切 に対 応 する能 力 の評 価 もまた限 定 されるだろう。 英 語 以 外 の外 国 語 として、初 習 外 国 語 のポルトガル語 を例 にとると、その言 語 使 用 場 面 は国 内 と国 外 に分 けられる。国 内 では主 に学 校 や病 院 などといった、日 本 に 暮 らすブラジル人 住 民 との接 触 場 面 において、また、国 外 ではブラジルやポルトガル といったポルトガル語 圏 における留 学 先 での生 活 でポルトガル語 が使 用 される。表 現 や 語 彙 に つ い て 、 言 語 使 用 場 面 ご と に 異 な る も の も あ る が 、 国 内 、 国 外 に か か わ ら ず、どのようなニーズを持 つ学 習 者 にも共 通 する項 目 をピックアップし、すべての学 習

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者 に知 っておいてほしい事 柄 として学 習 した後 、学 習 者 の個 別 のニーズに対 しては、 各 自 がポルトガル語 を学 習 する目 的 と照 らし合 わせ、Can-do リストを効 果 的 に活 用 することで、 現 在 の到 達 点 と将 来 に向 けて今 後 すべき項 目 を 常 に確 認 しながら 、必 要 な語 彙 や表 現 を主 体 的 に身 につけることが求 められよう。 4.3. 大学生として必要な外国語運用時の知識・能力 CEFR では、言 語 使 用 の領 域 を「私 的 領 域 、公 的 領 域 、職 業 領 域 、教 育 領 域 」の 4 つに分 けて提 示 している。Can-do リスト作 成 時 には、それぞれの領 域 において、学 生 が日 常 生 活 で外 国 語 話 者 と接 する機 会 や留 学 中 に遭 遇 すると考 えられる使 用 場 面 をリストアップし、使 用 頻 度 と学 生 のニーズを考 慮 した上 で代 表 的 なものを抽 出 す る、という手 順 をとる。 4.2 では、それぞれの外 国 語 で想 定 されるコミュニケーション場 面 (ポルトガル語 や スペイン語 のような外 国 籍 住 民 と接 する際 に用 いる機 会 が多 い言 語 と、留 学 時 や旅 行 な ど 国 外 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 想 定 さ れ る 言 語 ) と 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 相 手 (母 語 話 者 か、あるいは第 2 言 語 話 者 か)に関 して配 慮 すべき点 を指 摘 した。これに 加 えて、大 学 生 として必 要 となるスキルについても Can-do リスト作 成 時 に考 慮 する必 要 がある。CEFR には、言 語 使 用 の領 域 として「教 育 領 域 =ある教 育 制 度 の中 で組 織 だった教 育 を受 ける場 合 」が挙 げられており、これ には「教 師 に質 問 をする」 だけでな く、「辞 書 を引 く」「レポートを書 く」などといったいわゆる「アカデミック・タスク」が含 まれ る。本 WG が作 成 する Can-do リストには、大 学 生 として必 要 なアカデミック・タスクも 含 まれる。ここでは、留 学 時 と卒 業 後 のキャリアとの関 連 について言 及 する。 学 生 は、 留 学 時 に目 標 言 語 が話 される社 会 の制 度 や文 化 等 の知 識 だけでなく、 日 本 の文 化 や社 会 について説 明 する場 面 に遭 遇 することが多 い 。そ のため目 標 言 語 に関 連 した内 容 だけ でなく、 自 分 が属 する社 会 や文 化 について 説 明 できることが 必 要 である。さらに、「日 本 と目 標 言 語 が話 されている地 域 」の二 項 対 立 ステレオタイ プ的 な知 識 とそれに基 づいた言 語 運 用 ではなく、コミュニ ケーションの相 手 が属 して いる文 化 に関 わるできごとや問 題 に柔 軟 に対 応 し、コミュニケーション活 動 を通 してそ れぞれの場 面 で適 切 なルールを探 し出 す能 力 が必 要 である。 このような能 力 を意 識 的 化 できる項 目 を Can-do リストに加 えるべきであろう。 さらに、入 学 から卒 業 までの継 続 的 な外 国 語 学 習 を促 すためにも、職 業 場 面 で必 要 となるタスクのうち、卒 業 までに身 につけておくべきこと(例 えば、履 歴 書 やビジネス メールの書 き方 )を吟 味 し、Can-do リストに加 えるべきか検 討 する必 要 がある。 以 上 のような、アカデミックな場 面 での言 語 運 用 だけに留 まらない知 識 や能 力 に 関 する項 目 を、Can-do リストに取 り入 れるかどうか、今 後 検 討 を重 ねる必 要 がある。 4.4. コミュニケーション・ストラテジーに関 する項 目 コミュニケーション・ストラテジーとは、外 国 語 学 習 者 がコミュニケーション能 力 の不 足 を 補 う た めに 用 い る ものであ り、 コミ ュニ ケ ー ションが うま くいか なくな っ た際 に自 分 や 相 手 の 発 話 等 を コ ント ロ ー ル し た り、 修 復 す る 能 力 であ る。 こ れに は 、 言 い 換 え や 直 訳 だ け で な く 、 「 相 手 の 援 助 を 求 め る ( 例 : も う 少 し ゆ っ く り 話 し て く だ さ い ) 」 こ と や

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「自 分 の理 解 度 を確 認 する(例 :A は、~ということですか)」ことなど、相 手 へ働 きかけ るものも含 まれる。実 際 のコミュニケーションでは、言 語 能 力 が低 い段 階 ほど、コミュニ ケーション・ストラテジーの使 用 が効 果 的 であり、言 語 能 力 が上 がるほど、コミュニケ ー ション・ストラテジーの使 用 を減 らし ていくことが望 ましい。このことから、コミュニケーシ ョン・ストラテジーに関 する項 目 については、難 易 度 順 の Can-do リストとは別 に学 生 に提 示 することで、ストラテジーの使 用 を 学 生 に意 識 化 させることができるのではない かと考 えられる。 4.5. 自律学習能力育成のためのチェックリスト e-portfolio と Can-do リスト導入の最大の目的は、学習記録をつけ、自身の学習をふりかえ り、再度計画を立てそれを実行する「自律学習能力」の養成にある。そのため、Can-do リストは 作成時に、その使用により学生が自ら学びとる能力を高めるのに効果的であるように考慮され なければならない。この「自ら学びとること」の意識化を検討する際のポイントとして、「学習スト ラテジー」と「メタ知識運用能力」を挙げる。 e-portfolioで自 律 学 習 能 力 を養 成 するためには、学 生 が自 身 の学 習 に意 識 を向 けることが必 須 である。この能 力 養 成 には、「学 習 ストラテジー」の 意 識 化 が効 果 的 で はないかと考 える。すでに、2013年 度 と2014年 度 入 学 生 に対 して、入 学 時 ガイダンス で学 習 ストラテジーの解 説 とSILL(Strategy Inventory of Language Learning)を 実 施 し2)e-portfolioに記 録 しているが、今 後 、Can-doリストとあわせて、学 生 が用 い ている学 習 ストラテジーについて記 録 できる欄 を設 けることを検 討 したい。 「メタ知 識 」とは、「知 識 に関 する知 識 」であり、大 学 での学 修 、とりわけ外 国 語 学 習 には必 須 の知 識 である 。メタ知 識 運 用 能 力 を有 する外 国 語 学 習 者 は、 外 国 語 で書 かれた資 料 などから当 該 のトピックに関 する知 識 を得 るだけでなく、どのような論 理 構 造 で書 けばよいか理 解 し、自 身 の外 国 語 運 用 に活 かすことができる。また、必 要 な知 識 や能 力 を得 るためのリソース をうまく探 すことができる。 この能 力 は、言 語 コミュニケ ー シ ョ ン 能 力 と 並 べ て 提 示 す る こ とが で き る も の で は な い が、 大 学 生 にと っ て 重 要 な 能 力 であるため、e-portfolioと合 わせて提 示 する方 法 も検 討 課 題 である。 㻌 5. まとめ 本 稿 は、2013年 度 にe-portfolio WGが実 施 したCEFRに基 づく英 語 ・スペイン語 ・ 中 国 語 ・日 本 語 ・ポルトガル語 の外 国 語 到 達 目 標 試 案 の記 述 からうかびあがったCa n-doリスト作 成 に向 けての課 題 を示 したものである。本 WGの最 終 的 な目 標 は、「愛知 県立大学外 国 語 学 部 版 能 力 記 述 文 」の 作 成 にあ るが 、このたびの到 達 目 標 試 案 の 記 述 から、Can-doリストを作 成 する上 で、学 習 者 の個 別 ニーズへの対 応 、言 語 使 用 場 面 の設 定 、大 学 生 として必 要 な外 国 語 運 用 時 の知 識 ・能 力 、コミュ ニケーション・ ストラテジー に関 する項 目 、自 律 学 習 能 力 育 成 という5項 目 について検 討 すべきこと が明 らかになった。これを踏 まえ、今 後 は学 生 が主 体 的 に外 国 語 を学 ぶ道 具 としてリ ストを 活 用 するた め に 、 「 読 む」 、 「 書 く」 、 「 話 す」 、 「 聴 く」 、 「 やりとりする」 の5技 能 以 外 の知 識 や能 力 の記 述 を含 め、Can-doリストに一 体 「何 を」、そして、「どこまで」載 せ

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るべきかを見 極 めていく必 要 があろう。 [注 ]㻌 1)財 団 法 人 国 際 文 化 フォーラム(2013)。 2)Oxford, R. L.(1990)所 収 。 㻌 ※㻌 本 稿 の執 筆 分 担 は以 下 の通 りである。㻌 第 1 章 、第 2 章 㻌 江澤 第 3 章 㻌 髙 阪 第 4 章 1 節 㻌 坂 本 第 4 章 2 節 㻌 坂 本 、髙 阪 第 4 章 3 節 ・4 節 ・5 節 㻌 宮 谷 5 章 㻌 髙 阪 㻌 㻌 㻌 [参 考 文 献 ]

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http://www.jlpt.jp/about/candolist.html (2014年 1月 11日 付 ) 日 本 語 能 力 試 験Can-do自 己 評 価 リスト(JLPT Can-do) 聞 く http://www.jlpt.jp/about/candolist_listening.html㻌 (2014年 1月 11日 付 ) 日 本 語 能 力 試 験Can-do自 己 評 価 リスト(JLPT Can-do) 話 す http://www.jlpt.jp/about/candolist_speaking.html㻌 (2014年 1月 11日 付 ) 日 本 語 能 力 試 験Can-do自 己 評 価 リスト(JLPT Can-do) 読 む http://www.jlpt.jp/about/candolist_reading.html㻌 (2014年 1月 11日 付 ) 日 本 語 能 力 試 験Can-do自 己 評 価 リスト(JLPT Can-do) 書 く http://www.jlpt.jp/about/candolist_writing.html㻌 (2014年 1月 11日 付 ) 日 本 語 能 力 試 験 認 定 の目 安 http://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html㻌 (2014年 1月 11日 付 )

参照

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