• 検索結果がありません。

Geograph. Rev. Japan A 82(4): (2009)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Geograph. Rev. Japan A 82(4): (2009)"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

I は じ め に 今日,グローバル化が進む中で,国際観光流動の 規模は拡大し,その形態は非常に多様化している. 国際観光流動に関する研究は,Pearce(1995: 49) が指摘するように,データの制約から国家間移動を 対象としたものがほとんどであった.その中で,Woo and Page(1999)は,ニュージーランドを訪れる韓 国人旅行者の観光パターンを分析し,旅行者の属性 に応じて行動空間が異なることを示した.さらに, Hwang et al.(2006)は 米国における外国人旅行者 の都市周遊旅行の行動パターンをネットワーク構造 ととらえ,出発地の違いが行動空間の差異に影響を 及ぼしていることを指摘した. 従来,国際観光に関しては,先進国を送り出し地, 発展途上国を受入地ととらえた分析が主体であった (Smith 1977).たとえば,Pearce(1995: 6)によ る Thurot のモデル1)に関する記述では,発展途上 国は国際観光旅行者の受入地であり,国外に対する 観光需要は存在していないとしている.しかし,発 展途上国とみなされてきた国々は,近年の著しい経 済成長の結果,アウトバウンド観光の重要な発生地 へと転換している.スミス(1991: 4)は,中国や 台湾,韓国などで徐々に国際観光が盛んになるであ ろうと予測しており,実際にこれらの国や地域は現 在の国際観光の舞台で注目されている. 巨大な人口規模を誇る中国では,経済成長に伴う 旅行に関するさまざまな規制緩和に基づいて,アウ ト バ ウ ン ド 観 光 が 急 激 に 成 長 し て い る . W T O (World Tourism Organization 1999)は,2020 年 に中国人のアウトバウンド観光は 1 億人規模に達し, 世界のアウトバウンド観光市場の 6. 2% を占めると 予測している.そのため,多くの国では中国人観光 客による経済的効果に注目し,中国人観光客に対す る積極的な誘致戦略を実行している.これに伴い, 中国人のアウトバウンド観光に関する研究も増加し ている2). 一方,国際観光収支で赤字が続く日本では,イン バウンド観光の振興に力を入れつつあり,外国人観 光客の受入れによる地域活性化が期待されている. インバウンド観光に対する日本の積極的な受入態勢 の整備と,中国におけるアウトバウンド観光の成長 によって,今後は日本を訪問する中国人がますます 増加すると考えられる. 中国人による訪日観光に関する研究は,これまで 政治学,経済学,社会学の分野からなされてきた

日本における中国人旅行者行動の空間的特徴

金 玉実

(筑波大学大学院生) 中国におけるアウトバウンド観光は,経済発展と規制緩和によって大きく発展しており,日本を訪れる中国 人観光客も著しく増加している.本研究の目的は,日本における中国人旅行者の観光行動にみられる空間的特 徴を明らかにすることである.中国の旅行会社が企画する訪日パッケージツアーの旅程を分析した結果,空間 的には,東京と大阪を結ぶ中心軸が明らかになり,両都市における買物と名所見物が観光行動の中心となって いる.これに,大都市近郊の温泉や火山,景勝地などを周遊する観光行動が付加されている.中国人の訪日観 光に対しては,依然としてさまざまな制約が存在し,そのため,1 回の旅行で多数の観光地訪問と観光体験が 求められている. キーワード:中国人旅行者,アウトバウンド観光,観光行動,訪日観光,大都市圏 地理学評論 82–4 332–345 2009

(2)

( 梁 1 9 9 6; 鈴 木 2 0 0 2; 劉 2 0 0 2; 須 藤 2 0 0 5; 尹 2 0 0 5; 山 本 2 0 0 5 ). 一 方 , 地 理 学 で は , 劉 ・ 杜 (2006)が東京を訪れた中国人を対象として,観光 資源の認知に関する空間的分析を行い,ツアー日数 の増加に伴って訪問する場所の数が増加することと, ショッピング施設への志向が高くなることを明らか にした.しかし,この研究は東京大都市圏を対象に したものであった. 以上の研究成果を踏まえ,本研究は,日本におけ る中国人旅行者の観光行動にみられる空間的特徴を 明らかにすることを目的とする.そのために,まず, 文献と統計資料に基づいて,中国人によるアウトバ ウンド観光の展開を検討する.第 2 に,中国の大手 旅行会社が企画した訪日団体旅行ツアーを資料とし て,その訪問地の分布と観光資源を分析する.その 上で,中国人観光客への聞取り調査結果を基に,日 本における中国人旅行者の行動特性と流動パターン を解明する.最後に,韓国人および台湾人による観 光行動空間と比較することによって,中国人の行動 における特徴を明確にする. II 中国におけるアウトバウンド観光と 訪日観光の展開 1.中国におけるアウトバウンド観光の発展 最初に,本稿で用いる中国人のアウトバウンド旅 行とアウトバウンド観光の概念を説明する.アウト バウンド旅行とは,中国大陸本土の住民が他の国や 地域へ向かう行為で,渡航先での滞在期間が 1 日以 上,1 年以内に限られる.一方,アウトバウンド旅 行のうち,個人が費用を負担し,観光目的で他の国 や地域へ向かう行為がアウトバウンド観光とみなさ れ,統計上は親族・友人への訪問者も含め観光客と して集計されている.したがって本研究では,旅行 者と観光客を異なる概念として用いる. 中国では長期にわたる閉鎖政策,複雑な国際・国 内環境の影響により,アウトバウンド観光の発展は 非常に遅れた.1949 年の中華人民共和国成立から 1978 年の改革開放政策開始までの間,アウトバウン ド観光はほとんどみられなかった.そのため,アウ トバウンド旅行では,旧ソ連や東ヨーロッパなどの 社会主義諸国を目的地とした政治友好訪問や研修な どが中心で,観光目的の出国は禁止されていた. 1978 年に改革開放政策が実施されると,観光政策 は従来の政治主導型から経済発展を軸にしたものへ と転換した.観光業に関しては,外貨獲得を目的と するインバウンド観光の振興が重視された.その結 果,1985 年のインバウンド旅行者数は約 1780 万人 で 1978 年の 9. 7 倍に達した3).一方,アウトバウ ンド旅行については,1983 年に広州市民の香港地域 への親族訪問が許可されたことを契機として,1987 年にシンガポール,マレーシア,タイへの団体観光 旅行が初めて認められた(王 2002). 1997 年 3 月には,中国国家旅遊局と公安部が共 同で「中国国民の自費国外旅行の暫定的管理方法」 を公表し,中国人の自費によるアウトバウンド旅行 が正式に認可された.その結果,アウトバウンド旅 行者数(香港・マカオを含む)は,1997 年には約 800 万であったが,その後急激に増加し,2005 年に は 3000 万を超えている.さらに,その行き先にも 変化がみられるようになってきた.ADS4)は 1999 年までは九つの国と地域(香港・マカオを含む)に 限られていたが,2006 年 3 月までには 79 の国と地 域へと拡大され5),中国人による観光空間は大幅に 拡大している. 中国人アウトバウンド旅行者の訪問先に注目する と(図 1),東南アジアと東アジアへの集中が著し い.アジア地域への旅行は,主要な出発地である中 国沿岸地域から近距離にあり,そのため費用が比較 的安価である.さらに,アジア地域は ADS として 開放された時期が比較的早いため認知度が高く,渡 航手続きが簡素化されていることも重要な要因とし て考えられる.アジアに次ぐ訪問先はヨーロッパで

(3)

ある.ヨーロッパは ADS 解禁時期は遅いものの,中 国人に人気の高い訪問先であること,ヨーロッパ諸 国による積極的な受入態勢が存在することによって, その地位は上昇しつつある.その次にオセアニアや 北アメリカが重要な訪問先となっている.データか らみると全体的に先進国への志向性が強い6).一方, 日本は香港とマカオを除くと,シンガポール,ロシ ア,タイ,ベトナム,韓国に次ぐ第 6 位の渡航先で ある.日本への観光旅行は,アクセスしやすい身近 な先進国であること,後述するように中国人に人気 のある商品が豊富であることから,渡航先として重 要な地位にあることが推察される. 2.中国人による訪日観光の展開 1972 年,日本と中国の国交が正常化されて以来, 訪日中国人の数は両国間の出国・入国制度に対応し ながら増加を続けてきた.2008 年現在,中国人の訪 日旅行はビザの種類によって「観光旅行」,「商用旅 行」,「留学」,「外交交流」,「文化・学術活動」,「親 族訪問」などに区分されている.一方,日本の入国 統計では,外国人入国者は「商用客」,「観光客」, 「一時上陸客」,「その他」に区分して集計されてお り,観光客とは短期滞在入国者から商用客を除いた 旅行者数で,「親族・友人訪問」を含んでいる.さ らに,日本への観光旅行は,旅行社の企画する団体 旅行に限られていることが特徴である. 純粋な観光を目的とする観光ビザの発給開始は 2000 年 9 月であるが,当時は北京市,上海市,広東 省に戸籍を所有している中国人に限られていた.し かし,2004 年になると,それに江蘇省,遼寧省,山 東省,天津市が加わり,さらに 2005 年には中国全 土へと制限が緩和された. 日本側においても「外国人旅行者訪日促進戦略」 の一環として,2003 年にビジット・ジャパン・キャ ンペーン(VJC)が始まった.同キャンペーンでは, 訪日旅行者数の多い国や地域(表 1)を重点的な訪 日マーケットにして誘致活動を行っている.中国は, 「戦略」初期から韓国,台湾と共に重点的な顧客市 図 1 中国人アウトバウンド旅行者の目的地分布(2005 年) ((財)アジア太平洋観光交流センター編「世界観光統計資料集 2007」日本財団図書館 (http://nippon.zaidan.info/index.html)を参照).

(4)

場として重要視されている.特に中国からの訪日旅 行者数は順調に増加し(図 2),今後重要な顧客市場 になることが予測される.この増加傾向は,台湾と 韓国が,それぞれ 1970 年代後半と 1980 年代後半 に,旅行者数の急成長を示した傾向と類似している. 中国全土で訪日観光旅行が解禁されたものの,現 在,旅行者の出発地はほとんど沿岸地域である.特 に広東省,上海市,北京市で多く,この 3 地域で全 体の 77% を占める7).つまり,解禁が早い地域は 一般に経済水準も高く,訪日団体観光で先駆的な役 割を果たしている.出国審査に関して実質的に存在 する地域格差8),経済格差,交通条件の地域差異に よって,訪日観光の出発地には当面の間,このよう な地域的偏りが存在すると考えられる. 3.訪日団体旅行の形態 現在,中国人による観光目的の日本訪問は,団体 旅行に限定されている9).出国までのプロセスは次 の通りである.日本への旅行を希望する個人やグ ループは,中国政府が指定した旅行会社が企画した ツアーの中から商品を選び,当該旅行会社に応募す る.その際に,旅券,身分証明書,戸籍証明書に加 えて,5 万元10)以上の銀行残高証明書,あるいは 家屋所有権や自動車所有権証明書のコピーなど,支 払能力を証明できる書類を旅行会社に提出する.ツ アーは 5 人以上,40 人以下(2005 年現在)で構成 されており,旅行会社が在中国日本大使館または領 事館にビザ申請を代行する.さらに,訪日団体ツ アー参加者は来日前に,保証金11)として 5 万15 万元を旅行会社に預け,定められた旅程で団体旅行 に出かけることになる. 中国の旅行会社は,国内旅行のみを扱う国内旅行 社と,国外旅行も扱える国際旅行社の 2 種類に分け られている.このうち,日本への団体観光旅行業務 図 2 訪日中国人旅行者数の推移(20002006 年) 「訪日中国人旅行者」とは,国籍に基づく法務省集計による中 国正規入国者から,日本を主たる居住国とする永住者等の中国 人を除き,これに一時上陸客などを加えた入国中国人旅行者の ことである.「観光客」とは,「短期滞在入国者」から「商用 客」を除いた入国外国人で,「親族友人訪問」を含んでいる. 「その他」とは,観光・商用目的を除く入国外国人で,留学・ 研修・外交・公用目的などが含まれる. (JNTO 国際観光統計データにより作成). Fig. 2 Change in the number of Chinese visitors

to Japan, 2000–2006 表 1 訪日外国人旅行者出発国・地域構

成(2007 年)

Table 1 Origin of foreign tourists to Japan, 2007 国・地域 総数(万人) シェア(%) 韓     国 260 31. 2 台     湾 139 16. 6 中     国 94 11. 3 米     国 82 9. 8 香     港 43 5. 2 イ ギ リ ス 22 2. 7 フ ラ ン ス 14 1. 7 ド  イ  ツ 13 1. 5 オーストラリア 22 2. 7 タ     イ 17 2. 0 カ  ナ  ダ 17 2. 0 シ ン ガ ポ ー ル 15 1. 8 そ  の  他 97 11. 6 本表で取り上げたのは,VJC で訪日旅行促進の 重点市場に設定された国・地域で,順序は設定 時期による. (JNTO 国際観光統計データにより作成).

(5)

を取り扱うことのできる国際旅行社は,中国政府に よって指定された 262 社(2008 年)である12).た だし,大都市の国際旅行会社が地方の旅行会社と提 携して参加者を募集する場合もあることが聞取り調 査で明らかになった. III 中国人訪日観光客の行動空間 1.訪日ツアーの構成 中国人団体ツアー観光客による日本での観光行動 は制限されており,個々人が自由に訪問地を決める ことはできない.つまり,旅行行程のすべてについ て,コース(訪問地や滞在時間)が決められ,両国 の添乗員が付き添っている.そのため,中国人の日 本での観光行動空間を分析するにあたり,ツアーを 分析することが不可欠である.さらに,団体旅行商 品を販売する業者は,観光客のニーズを詳細に把握 していることから,これらのツアーは観光客の志向 をかなり反映したものと考えられる. 本研究では,中国国家観光局の等級付けによる上 位 100 の国際旅行社のうち,訪日ツアーを販売する 50 社の訪日ツアー商品を分析資料にした.収集した データは,2006 年 2 月から 4 月の間に 50 社のホー ムページに掲載されたものである13). 同期間に販 売された日本向けツアー商品数は,全体で 205 件で あった.その中から,費用,スケジュールおよび訪 問地情報が詳しく記載された 189 のツアーを分析対 象とした.それらの概要は次の通りである. ツアーの日程に注目すると,その期間は 2 泊 3 日 から 14 泊 15 日まで多様である.その中でも 5 泊 6 日ツアーが最も多く,83 件で全体の 44% であった (図 3).次いで,6 泊 7 日ツアーが 44 件,23% で あった.さらに 4 泊 5 日と 3 泊 4 日ツアーが続いて いる.すなわち,4 日から 7 日間のツアーが全体の 89% を占めていた.一方 10 日間以上のツアーは少 数で,それらは,日本と韓国を組み合わせたものな どであった. 費用は日程が長くなるほど高額になる傾向にある. ツアー数が最も多い 5 泊 6 日の日程では,6 千から 7 千元である.6 泊では 8 千元台へと上昇し,7 泊以 上になると 1 万元を超える.一方,3 泊 4 日や 4 泊 5 日のツアーでは 4 千元から 5 千元が一般的となる. ただし,ツアー料金は訪問地数や移動距離,コース の人気度合いによっても大きく変動する.早期に開 発された大都市周遊ツアーは比較的安価である一方 図 3 中国人による訪日ツアーの滞在日数と価格構成(2006 年) (訪日中国人ツアー商品調査(2006 年 24 月,n189)により作成). Fig. 3 Number of days and prices of Chinese package tours to Japan, 2006

(6)

で,中国人の間で認知度の低い滞在地を含んだツ アーは高額になる傾向にある.また,移動費用を抑 えるために,日本国内では基本的に貸切バスによる 移動が卓越する. 2.観光資源からみた目的地 189 のツアーで取り上げられた訪問地は 142 カ所 で,76 の市町村にわたる14).訪問地は,沖縄から 北海道まで広い範囲に分布しているが,地域的な集 中傾向がみられる(図 4).特に,大都市とその近隣 地域への集中が顕著である.一方,東北地方の日本 海側や山陰地方はツアーの空白域となっている. 次に,これらの訪問地の特徴,すなわち観光資源 に注目する.一般に,観光資源はさまざまな指標に 基づいて分類されてきた(たとえば,足羽 1997; 溝 尾 2001).本研究では,ツアーの訪問地での主要な 活動と訪問場所の特徴に基づいて,訪問地を都市型, 火山・温泉型,自然型,史跡型,その他(リゾー ト,産業観光地など)に分けた.都市型の訪問場所 には,史跡や公園なども含まれているが,商業施設 が集中する繁華街でのショッピングや現代的街並な どの見学が主体である場合は,都市型にした.また, 都市の規模を考慮し,大都市型と地方都市型とに分 けた.全体的に,大都市型がそれぞれのツアーで中 心的な観光資源として機能している.ツアーごとの 観光資源構成では,大都市型−火山・温泉型−史跡 型の組合せが一般的である. それぞれのツアーにおける観光地の出現頻度を単 純に合計すると,東京,大阪,名古屋,福岡および 札幌といった大都市型観光地で最も多い(図 5).こ れらの大都市は,日本へのゲートウェイとして,さ らに多様な観光資源を有する場として機能している. 図 4 中国人によるツアーの訪問地の分布(2006 年) 訪問地の類型は,ツアーの訪問地での主要活動と,訪問場所の特徴により分類した. (訪日中国人ツアー商品調査(2006 年 24 月,n189)により作成). Fig. 4 Distribution of tourist destinations in Chinese package tours, 2006

(7)

そのため,ほとんどのツアーにおいて,大都市が主 要訪問地となっている.次に頻度が高いのは,これ らの大都市の周辺に位置する観光地である.箱根, 横浜,京都,小樽がこれに該当し,大都市での滞在 の際に,補足的に組み合わされているのが一般的で ある.大都市周辺の観光地は,単独でツアーの目的 地とされることはなく,必ず大都市とセットでツアー に含まれている.箱根・横浜と東京,京都と大阪, 小樽と札幌との関係にこの傾向が確認できる. 3.ツアールートの訪問地構成 ツアーのルートについて,それぞれに組み込まれ る観光地を検討すると,かなりの類似性が認められ, それらは次の四つのルートにまとめられる.すなわ ち,東京−大阪ルート,北海道ルート,九州ルート, 沖縄ルートである. ゴールデンルートと呼ばれる東京−大阪(T–O) ルートは,189 のツアーのうち 125 件が該当し,全 体の 3 分の 2 を占めている.その際,東京と大阪が ツアーの 2 大ノードとなり,両都市での観光行動が 主体となっている(表 2).これに加えて,横浜,箱 根,京都などが,ノードと結びついた訪問地になっ ている.また,2 大都市の中間に位置する名古屋は 副次的ノードと位置づけられ,立寄地となる場合も ある.T–O ルートは,典型的なコースであり,中国 訪日旅行関係者らの話によると,ほとんどの団体ツ アー参加希望者にとって訪日旅行は初訪日となるた め,東京と大阪がルートに含まれることが重要な選 択肢になっていた.訪日観光が解禁されたばかりの 図 5 ツアーにおける観光地の出現頻度(2006 年) (訪日中国人ツアー商品の調査(2006 年 24 月,n189)により作成). Fig. 5 Frequency of tourist sites in Chinese package tours, 2006

表 2 典型的な東京−大阪(T–O)ルートの内 容(2006 年)

Table 2 Typical routes between Tokyo and Osaka, 2006 出発地 北京 目的地 東京,横浜,箱根(富士山),名古屋,京都,大阪 参加費 6, 480 元(約 88, 000 円) スケジュール 1 日目 北京発−成田空港着,成田空港泊 2 日目 東京市内観光. 皇居−浅草−都庁−新宿−秋葉 原−銀座−お台場,またはディズニーランド(後 者は自費) 東京泊 3 日目 東京−横浜(中華街−山下公園−平和公園)−箱根 (芦ノ湖,大涌谷,富士山) 箱根泊 4 日目 箱根−名古屋(熱田神宮)−京都(金閣寺,祇園) 京都泊 5 日目 京都(西陣織,嵐山)(自費新幹線体験)−大阪 (大阪城公園,心斎橋,道頓堀) 関西空港泊 6 日目 関西空港発−北京着 (訪日中国人ツアー商品調査により作成).

(8)

中国マーケットにおいて,T–O ルートが,しばらく の間は最も選好されると考えられる. 北海道ルートは T–O ルートの行動地域が北海道 へと拡大した形態で 26 件のツアーでみられる.東京 と大阪での観光行動に加え,北海道の札幌,小樽, 洞爺湖の火山景観と温泉が中心的な観光対象になっ ている(表 3).九州ルート(19 件)は T–O ルート に九州が付加されたものである.福岡,ハウステン ボス,別府温泉など,九州で知名度の高い観光地が 含まれている(表 4). 上記三つのルートは,東京と大阪といった大都市 での観光行動を主体にしている.一方,沖縄ルート は上記 3 ルートとは性格がかなり異なっている.こ のルートのツアーは 5 件で,その数が少ないものの, 風光明媚な亜熱帯海岸の景観がイメージされたもの であり,中には,嘉手納米軍基地が観光対象の一つ になっている場合もある. 4.観光行動の特徴 上記の分析の結果,訪日中国人観光客の一般的な 空間行動パターンを指摘することができる.すなわ ち,1 回の旅行で複数の都市に滞在し,そこでの観 光行動を中心にしながら,これに加えて周辺の自 然・文化景観や温泉といった日本特有の観光地を周 遊する形態である.つまり,大都市を中心として盛 り沢山の内容を含んだツアーが一般的なのである. この傾向は,中国の旅行会社がインターネットや新 聞に掲載した東南アジア,ヨーロッパ,オーストラ リアへのツアー商品にも表れている.たとえば,現 在,中国人の間で人気が高いヨーロッパ 9 カ国ツ アーは,ブダペスト,ウィーン,ミュンヘン,フラ ンクフルト,ブリュッセル,パリ,リヨン,マルセ イユ,ジェノヴァ,ローマ,ヴェネツィアなどの大 都市を,1315 日間の日程で周遊するコースが一般 的である. 現在の中国人にとって,アウトバウンド観光は発 表 3 北海道ルートの例(2006 年)

Table 3 Typical routes in Hokkaido, 2006 出発地 広州 目的地 東京,大阪,北海道 参加費 12, 980 元(約 176, 500 円) スケジュール 1 日目 広州発−大阪着,関西泊 2 日目 大阪(大阪城公園,心斎橋,道頓堀)−札幌(大通 公園,ススキノ,ラーメン横丁) 札幌泊 3 日目 札幌(道庁,時計台)−小樽(小樽港,運河,北一 硝子,オリゴン堂)−洞爺湖 洞爺湖泊 4 日目 洞爺湖(昭和新山,有珠火山)−登別(地獄谷)− 東京(銀座,電気店,都庁展望台,新宿歌舞伎町) 東京泊 5 日目 東京−箱根( 芦ノ湖, 大涌谷, 富士山, 平和公 園)−新幹線体験−横浜(中華街,山下公園) 東京泊 6 日目 東京(皇居,浅草,ディズニーランド) 東京泊 7 日目 東京発−広州着 (訪日中国人ツアー商品調査により作成). 表 4 九州ルートの例(2006 年) Table 4 Typical routes in Kyushu, 2006 出発地 北京 目的地 福岡,長崎,別府,大阪,京都,箱根(富士山), 東京 参加費 11, 280 元(約 164, 900 円) スケジュール 1 日目 北京発−福岡着−福岡(天神,中洲) 福岡泊 2 日目 福岡−長崎(平和公園)−ハウステンボス ハウステンボス泊 3 日目 ハウステンボス−別府(地獄谷)−乗船 船泊 4 日目 大阪(大阪城公園,心斎橋,道頓堀)−京都(平安 神宮,金閣寺,西陣織) 京都泊 5 日目 京都−箱根(富士山,平和公園,大涌谷,芦ノ湖) 箱根泊 6 日目 箱根−東京(お台場,ディズニーランド) 東京泊 7 日目 東京(ショッピング)−成田発−北京着 (訪日中国人ツアー商品調査により作成).

(9)

展途上にあり,大多数の人々にとって外国旅行は容 易に行うことができない.特に,訪日観光は厳しい 入国審査と多額の保証金が必要であるため,時間と 費用が多くかかる15).そのため日本を訪問する中国 人観光客は,1 回の旅行で多くの観光地・観光対象 を求めていることがわかる.また,鈴木(2002)が 指摘したように,現在の中国人にとって,アウトバ ウンド旅行はある種のステイタスシンボルであり, 具体的な観光体験よりも旅行経歴自体が価値を持つ. これを裏付けるものとして,中国人旅行者のショッ ピング行動が挙げられる. 外国人旅行者が日本国内で物品購入に費やす 1 日 当たりの平均消費額をみると,中国は 7, 099 円で, 最多である台湾の 7, 789 円に次いで第 2 位の地位に ある(日本政府観光局 JNTO による 2005 年の数 値).また,ACNielsen と TFWA の調査によると, 一般に中国人がアウトバウンド旅行でショッピング に費やす平均金額は 987 米ドル(2004 年)で,世界 で最も高い数値を示している16).オーストラリアや ヨーロッパにおける外国人観光消費に関する調査で も,中国人のショッピング消費額が非常に多いこと が指摘されている.この要因としては,まず,アウ トバウンド観光に対する経済的制約の存在によって, 観光客自体が経済的に富裕であることが挙げられる. さらに,ヴェブレン(1983)が指摘したような顕示 的消費行為に関連して,アウトバウンド観光経験の シンボルとして,あるいは社会的地位の象徴として, 有名ブランドの贅沢品を多く購入する行動がみられ るのであろう. 表 5 は東京都内に滞在した中国人観光客の買物行 動について,筆者の聞取り調査結果を示したもので ある.彼らの買物品目としては,化粧品,衣類(ブ ランド品を含む),デジタルカメラ,携帯音楽再生機 などが中心であった.このような傾向は JNTO の調 査でも示されている.また,中国人観光客は商品の 製造地に関心を持ち,中国製ではないことを必ず確 認していた.消費額は個人によってさまざまである が,先に示した 1 日当たりの平均よりも多くなって いる.その中には,20 万円以上を購入する者もみら れた. IV 中国人訪日観光客の流動パターン III では中国人観光客による日本での観光行動空間 にみられる諸特徴を明らかにしてきた.ここでは, それらの結果を,訪日観光客の最大送出地である韓 国と台湾の訪日観光客の諸特徴と比較検討し,中国 表 5 訪日中国人旅行者のショッピング行動(20062008 年)

Table 5 Shopping activity of Chinese tourists in Tokyo, 2006–2008

年齢 性別 ビザ種類 居住地 職 主な購入品種 購入場所 消費額(円) 1 50 代 F T 江蘇省 退 職 化粧品 新宿,お台場 50, 000 2 50 代 M T 天 津 自営業 ブランド帽子 お台場 11, 000 3 40 代 M T 上 海 自営業 ブランド衣類 お台場 250, 000 4 30 代 F T 西 安 不 明 ブランド衣類 お台場 68, 000 5 20 代 F T 瀋 陽 会社員 衣類,化粧品 お台場,銀座 15, 000 6 20 代 F T 青 島 会社員 ジーンズ お台場 25, 000 7 40 代 M B 広 州 会社員 化粧品 銀座 20, 000 8 30 代 M B 広 州 会社員 化粧品,携帯音楽再生機 銀座,秋葉原 45, 000 9 30 代 M B 広 州 会社員 デジタルカメラ 秋葉原 40, 000 10 20 代 F B 広 州 会社員 衣 類 銀座 10, 000 F:女性  M:男性  T:団体観光  B:商用  消費額は聞取り調査日のみの数値である. (2006 年 7 月から 2008 年 4 月の間に実施した聞取り調査により作成).

(10)

人旅行者が有する観光行動の特徴をより明確にする. 1.韓国人・台湾人訪日観光客の観光行動空間 韓国人による海外旅行は,1989 年に海外渡航が完 全自由化されたことを契機として急激に発展してき た.韓国は日本における外国人観光客の中で 31% (260 万人)を占める最大の顧客市場となっている (表 1).一方,台湾人の海外旅行の展開をみると, 若干の制限付きで 1979 年に自由化された.1987 年 に制限が撤廃されると,海外旅行は急速に増加した. 2007 年,日本への旅行者数は 139 万人に達する(表 1). 韓国人と台湾人の訪日観光行動空間に関しては, 2006 年 11 月から 12 月の間に韓国と台湾の大手旅 行会社のホームページに掲載された訪日ツアー商品 を収集し,全体的特徴をみることにした. まず,日程からみると韓国における訪日ツアーは, ほとんどすべてが 4 泊以下の短期コースであった. それに対して,台湾訪日ツアーは,8 割が 4 泊 5 日 であった. 次に,訪問地の地域分布と観光資源に注目する. 韓国人ツアーの場合,北陸から東北地方にかけて訪 問地が多く分布している.訪問地の観光資源に着目 すると,史跡がやや少ないものの,他の要素は比較 的均等である(図 6–a).台湾人ツアーについては, 訪問地がより広範な地域に拡がり,ほぼ日本全国に 分布している.特に,北海道への志向性が強く,多 くのツアーに組み入れられている.観光資源の特性 からみると,自然型が最も多い一方で,史跡に対す る志向が韓国人と同じくやや低い(図 6–b). 訪日観光旅行の経験が長い韓国や台湾においては, 中国に比べ訪日観光がより自由であり,個人旅行も 可能になっている.そのため,日本での観光行動に は多様化傾向が現れ,従来主体であった広域な地域 を周遊するものから,特定地域の少数の観光要素を 「観る」ことを主目的とした観光や,特定テーマを中 (a) (b) 図 6 韓国人・台湾人によるツアーの訪問地(2006 年) a. 韓国  b. 台湾 訪問地の類型は中国人ツアーによる分類方法で統一した. (韓国:訪日韓国人ツアー商品調査(2006 年 1112 月,n206),台湾:訪日台湾人ツアー商品 調査(2006 年 1112 月,n342)により作成).

(11)

心に「体験する」観光へと変化している17). 2.中国人観光客の流動パターン 以上の韓国人・台湾人の分析結果と比較すると, 日本における中国人観光客の特徴は次のようにまと められる.第 1 に,訪日目的では,韓国人と台湾人 のほとんどが観光目的であることに対し,観光目的 の中国人訪日旅行者は 3 割でしかない18).第 2 に, 中国人の訪日観光はパッケージツアーで行われるの に対し,韓国人・台湾人の訪日観光はパッケージツ アー以外に個人旅行も可能であり,より自由な選択 可能性が存在する.第 3 に,ツアーの日程について, 韓国人では 3 泊 4 日,台湾人では 4 泊 5 日が卓越す るが,中国人では一般に期間が長く,5 泊 6 日が最 も多かった.第 4 に,ツアーの訪問地は,韓国人と 台湾人ツアーでは多様であり,さらに広範な地域に 分布している.これに対し,中国人ツアーによる訪 問地は大都市への集中が顕著である. 第 5 に,訪問地の観光資源に着目すると,台湾 人・韓国人ツアーによる訪問地は特定の類型に偏る ことなく,比較的均等である.これは,近年の台湾 人や韓国人によるニーズの多様化傾向を反映したも のである.一方,中国人ツアーの場合,大都市への 集中が特徴であり,都市志向性が非常に強い.最後 に,訪日観光ツアー商品の内容をみると,台湾人・ 韓国人ツアーでは,ある地域やテーマを中心とする ものが一般的である.一方,中国人については,1 週間程度の日程内に,複数の観光地訪問と大量の観 光内容が含まれることが観光行動の特徴となってい る. 中国人の訪日観光行動の空間的特徴は次のように まとめられる.まず,東京−大阪を結ぶルートを中 心軸とし,大都市の繁華街での行動が観光の中心に 位置している.これに加えて,大都市近くの温泉や 火山といった日本独自の景観,リゾート,名所を周 遊する.北海道や九州へのツアーは,東京−大阪の 中心ルートが北または南へと拡大された形態として とらえることができる. 韓国人と台湾人による訪日観光については,規制 緩和がなされ,個人旅行が可能となっている.さら に,一度来訪した観光客が,再び訪日する場合も増 えつつある.そのため,近年では,ある特定の地域 やテーマを中心にした観光行動パターンが多くみら れる.したがって,中国人による訪日観光が今後拡 大するにつれて,現在の韓国人や台湾人にみられる 特徴が,今後の中国人観光客にも現れると考えられ る. V お わ り に 本稿では,日本における中国人旅行者行動の空間 的特徴に関して分析した.その結果は次のようにま とめられる. まず,中国人によるアウトバウンド観光は,経済 発展や旅行に対する制約の緩和によって急成長して きた.これに伴い,中国人の訪日観光旅行は,日本 の積極的な受入政策も影響し,団体旅行に限られる という制限がありながら,大きく発展している.中 国人の旅行者行動の中心は,東京と大阪をはじめと する大都市圏での買物や名所見物であった.さらに 大都市圏内の温泉や,火山,景勝地などの観光対象 を周遊する形態が組み合わされている.これは,中 国人の訪日観光旅行には依然として厳しい制限が存 在し,そのため 1 回の旅行で知名度の高い観光地を 多く訪問することと,多様な観光体験が求められて いるのである. 現在,中国人による日本での旅行者行動は都市周 遊型として特徴づけられる.しかし,韓国人と台湾 人の訪問地の拡がりと多様化にみられるように,中 国人の旅行者行動は変化することが予測される.今 後の変化は,中国人訪日観光に存在する種々の規制 の緩和,日本への訪問回数の増加などに依存すると 考えられる.

(12)

国際観光が多様化かつ大規模化している中,国際 観光の一方的な受入地であった多くの発展途上国は 著しい経済成長とともに,観光客の多量送出地とし て登場している.このような動きは,今後の国際観 光の構造に大きな影響を及ぼすのであろう. 聞取り調査に御協力いただいた中国人観光客の方々に 感謝します.また,本稿の作成にあたっては,呉羽正昭 先生をはじめとする筑波大学生命環境科学研究科の諸先 生方,院生の方々から終始御指導いただきました.記し て感謝申し上げます.本稿は 2007 年 1 月に筑波大学に 提出した修士論文を加筆・修正したものであり,その骨 子は 2007 年日本地理学会秋季学術大会で発表した. (投稿 2008 年 8 月 26 日) (受理 2009 年 2 月 7 日) 1) Thurot のモデルは国内・国際観光の国家および国際レ ベルでの需給構造を扱っている.発展途上国である C 国 は国内観光が発生し,先進国(A と B)からの旅行者を 受け入れているものの,国外観光に対する需要は発生し ていないことが指摘されている. 2) たとえば Arlt(2006)などがある. 3) 中国インバウンド旅行者に関するデータは中国統計局 発行の「中国統計年鑑」および,中国旅遊局発行の「年 度統計公報」を参照した.

4) ADS(Approval Destination Status)は,中国と他の 国や地域政府との協議を通して許可された中国人が,観 光目的で滞在可能な国や地域のことを指す.ADS につい ては Arlt(2006: 40–50)に詳しい. 5) 統計上,香港とマカオへの旅行がアウトバウンド観光 に集計されるため,これを含めると 81 である. 6) ただし,本データは受入国の統計に基づくもので,観 光客だけではなく旅行者全体が集計されているため,先 進国への業務目的での旅行の影響があると考えられる. しかしながら,業務を伴った観光も重要な観光形態であ るため,本データから全体的傾向をみることが可能であ る. 7) データは,中華人民共和国訪日団体観光客受入旅行会 社連絡協議会の統計資料による. 8) 東部沿海地域の住民は,訪日観光ビザの獲得が容易で あるのに対して,内陸地域の住民に対しては審査が厳し く,却下される割合が高い.たとえば,広東省の旅行会 社が手配した団体観光旅行応募者のビザ取得率はほぼ 100% であるが,内陸地域に関しては 30% しかないこと が報告されている(「北京晩報」2005 年 8 月 29 日). 9) 団体観光ビザ以外で来日した中国人,すなわち商用や 親族訪問,あるいは文化・学術交流で来日した中国人へ の聞取り調査によると,彼らは空き時間に銀座や秋葉原 などを訪問していた.聞取り調査の結果,彼らの行動パ ターンを網羅的に分析することは困難であることがわかっ たため,本研究では,団体ツアーのみについて分析を行 うこととする. 10) 2006 年 3 月 31 日における人民元に対する日本円の レートは 14. 62 である. 11) 国土交通省の追跡調査によれば,2000 年から 2005 年 4 月までの間,観光目的で入国した中国人 151, 827 人の うち 473 人の失踪者が発生し,中には犯罪に至ったもの もあった.この失踪者防止策として保証金制度が設けら れた.中国での聞取り調査によると,ツアー参加費の 5 倍の金額相当の保証金が必要で,ツアー規定の期限内に 帰国しない場合,返金されない. 12) 中華人民共和国訪日団体観光客受入旅行会社連絡協 議会.http://www.churenkyo.com/index.html(最終閲 覧日: 2008 年 10 月 23 日)の掲載資料による. 13) 中国人ツアーの活動中心は大都市であり,季節によっ てテーマが変わるだけで訪問場所などにはあまり変化が ないことから,ツアーによる訪問地の季節差はほとんど ないと考えられる. 14) 東京 23 区は一つの訪問地とした.また,東京ディズ ニーリゾートは東京 23 区に含めた. 15)訪日ツアー商品は,中国から近距離にあるにもかかわ らず,価格的には,ヨーロッパやオーストラリアへのツ アーとあまり差がない.

16) The Nielsen Company 2005. AC Nielsen-TFWA 最新 調査報告:中国人 旅游 物慷慨解 .http://cn.nielsen. com/news/20050519.shtml(最終閲覧日: 2008 年 10 月 23 日)

17) こ の 点 に つ い て は , Woo and Page( 1999) が , ニュージーランドにおける韓国人旅行者の観光パターン から明らかにしている. 18) 訪日外国人旅行者の訪問目的をみると, 韓国人の 76. 3%,台湾人の 90. 5% が観光客であるが,中国人の場 合にはその数値は 36. 6% にすぎない(JNTO による 2006 年の数値). 文 献 足羽洋保 1997.『観光資源論』中央経済社. 王 文亮 2002.『中国観光業詳説』日本僑報社. 鈴木 勝 2002.中国における海外パッケージ・ツアーの現 況と日中ツアー比較試論. 総合観光研究 1: 163–169. 須藤 廣 2005.中国におけるアウトバウンドツーリズムと しての日本観光.関門地域研究 14: 19–34. スミス,V. L. 編,三村浩史監訳 1991.『観光・リゾート

(13)

開発の人類学―ホスト & ゲスト論でみる地域文化の対 応 』 勁 草 書 房 . Smith, V. L. ed. 1989. Hosts and

guests: The anthropology of tourism, 2nd ed.

Philadelphia: Univ. of Pennsylvania Press.

溝尾良隆 2001.観光地と観光資源.岡本伸之編『観光学 入門』119–147.有斐閣. 尹 明憲 2005.中国人訪日旅行の動向と関門地域インバ ウンド観光誘致.関門地域研究 14: 1–14. 山本興治 2005.中国人訪日観光旅行分析―中国現地で の旅行会社ヒアリング調査を中心に.関門地域研究 14: 37–49. 梁 春香 1996.中国・日本間の国際観光交流過程に関す る考察.前田 勇編『現代観光学の展開―観光行動・ 文化観光・国際観光交流』151–168.学文社. 劉 慧・杜 国慶 2006.大都市における観光資源認知に 関する空間的分析―東京を訪れる中国人観光者を事例 として.日本地理学会発表要旨集 69: 161. 劉 明 2002.中国人の訪日旅行増加のための提言.総合 観光研究 1: 53–61. ヴ ェ ブ レ ン , T. 著 , 蔡   受 百 1 9 8 3 .『 有 ― 于制度的 研究』北京:商 印 (中国語).

Veblen, T. 1899. The theor y of leisure class. New York: Macmillan.

Arlt, W. G. 2006. China’s outbound tourism. London: Routledge.

Hwang, Y. H., Gretzel, U. and Fesenmaier, D. R. 2006. Muliticity trip patter ns tourists to the United States.

Annals of Tourism Research 4: 1057–1078.

Pearce, D. G. 1995. Tourism today: A geographical

analysis, 2nd ed. Harlow: Longman. ピアス,D. 著,内

藤嘉昭訳 2001.『現代観光地理学』明石書店. Smith, V. L. ed. 1977. Hosts and guests: The

anthropol-ogy of tourism. Philadelphia: Univ. of Pennsylvania

Press.

World Tourism Organization 1999. Tourism: 2020

vision–executive summar y. Madrid: World Tourism

Organization.

Woo, K.-S. and Page, S. J. 1999. Tourism demand in East Asia: The case of the South Korean outbound market and activity patter ns in New Zealand. In The

geogra-phy of tourism and recreation, ed. C. M. Hall and S. J.

(14)

Geographical Review of Japan Series A 82–4 332–345 2009

Spatial Characteristics of Chinese Tourist Activities in Japan

JIN Yushi (Graduate student, University of Tsukuba)

The emergence and development of Chinese outbound tourism have been the result of an open policy and economic reform in China since the end of the 1980s. The rapid development of outbound tourism has been promoted by increases in income and leisure time, easing of international and domestic limitations, and improved infrastructure.

In Japan, the balance of payments deficit in outbound tourism has continued for a long time. Currently, Japan’s government is trying to improve this disadvantageous situation. China, as a potential source of inbound visitors for Japan, has a vital position in the Visit Japan Campaign, which aims at significantly increasing the number of foreign tourists to Japan. However, there is little research on the spatial characteristics of Chinese tourists. The purpose of this study was to examine the spatial characteristics of Chinese tourists in Japan by analyzing package tours offered in China.

Most package tours of Japan have similar destinations. There is a distinctive regional inequality in tourist destinations among Chinese visitors compared with Korean and Taiwanese tourists. The main destinations of Chinese tourists are large cities such as Tokyo and Osaka. Chinese tourists are mainly attracted to shopping and exploring lively streets in cities. In addition to these activities, package tours include side trips to volcanoes and Japanese-style hot springs near these cities. Therefore Chinese tourist spaces in Japan are focused on metropolitan areas like Tokyo and Osaka. Presently, Chinese tours to Japan are limited only to group tours; certain limitations and restrictions are still in place. Therefore Chinese tourists generally must see many attractions and products when they travel to Japan.

Key words: Chinese visitors, outbound tourism, tourist activities, Chinese tourists in Japan, metropolitan areas

Fig. 1 Distribution of destinations of Chinese outbound travelers, 2005
Table 1 Origin of foreign tourists to Japan, 2007 国・地域 総数(万人) シェア(%) 韓     国 260 31. 2 台     湾 139 16
表 2 典型的な東京−大阪( T–O )ルートの内 容(2006 年)
Table 3 Typical routes in Hokkaido, 2006
+3

参照

関連したドキュメント

東京都北区勤務時間外の災害等に対応する非常配備態勢に関する要綱 19北危防第1539号 平成19年9月6日 区長決裁 (目 的) 第 1

地域 東京都 東京都 埼玉県 茨城県 茨城県 宮城県 東京都 大阪府 北海道 新潟県 愛知県 奈良県 その他の地域. 特別区 町田市 さいたま市 牛久市 水戸市 仙台市

○特定緊急輸送道路については、普及啓発活動を継続的に行うとともに補助事業を活用するこ とにより、令和 7 年度末までに耐震化率

2  事業継続体制の確保  担当  区各部 .

原子炉圧力は、 RCIC、 HPCI が停止するまでの間は、 SRV 作動圧力近傍で高圧状態に維持 される。 HPCI 停止後の

(1)東北地方太平洋沖地震発生直後の物揚場の状況 【撮影年月日(集約日):H23.3.11】 撮影者:当社社員 5/600枚.

第1条

都立赤羽商業高等学校 避難所施設利用に関する協定 都立王子特別支援学校 避難所施設利用に関する協定 都立桐ケ丘高等学校