• 検索結果がありません。

アリストレテスの"自然学"(Physica)に於ける場所論-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "アリストレテスの"自然学"(Physica)に於ける場所論-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

95 欝5巻第2号(1953)

アリスl、テレスの“自然学”(Physica)に於ける場所論

福 家 真 木 太

i

On“topps”in A即STOTLE’s Physics By瓜4akita FU鱒E (Lecturer、Of Philosophy) (ReceivedS甲与embe工∫30,1953) ア、リス.†テレスは或る対蓼につ㌧、・耳廟発を始めるに・当らセ,商人の諸説を考察するかさ或ほ日密約 観念の吟味を行うのが常である.彼の場合人々の問に普通行われている郎綾とり来ら し,日常人々の蓮解してい苧と畢っていることザ,如何に′靡昧不定セあるか、を示し,これらめ用語 の意味を厳密軋決定する・「 変化無限,場所,空虚,時間等.「自然学.」?冒頭に・於て,アリスけ}女咋▲或る対象を理解する とほ,その対象の構硬質寮又は原選を認識することである・そし七飯ふに与えられ七いる最も分り 易いもゐ準特殊約複合的のものであると・云つでいる(184a17∼21)…即ち研究の痘ほ我純掌って明 瞭でよく知られているものから,我々にほ遠くあ.るが本性上境療ぬして原初的なものノに進むべきで あると云う、のである・日常行われている用語の吟味から出発すろととほ・;襲々匿与ってよ〉り分り易い ものから出発すること

限らぬ.日常的観念ほ原理的なものから甚だ遠ぎかつて−いる場合か多い・、原理から遠・ぎかつている

もの, 嘩学」弟甲巻紅於ける瘍所論もとの方法によらて↓、ると云えるであろう・成程場所なる富来は日常 屡々使われ我々紅白明の感念である如く思われる.然しながらこれに・些か友省を加えれほ場所とは 何であるかその実相をとらえるに」苦しむに.到る.場所の概念は極あて多裁的である.アリスーけレ スがこ てザある・幾何学的抽象的空間も関連ほする‘が,とれほ別に空虚の問題として取扱われている・ 1.場卜所の存在 場所とは何であるかを考察すると共に,場所なるものほ果し宅存在するか香か,存在すると.すれ は如何なる仕方で存在するかを検討しなければならない(208a27−・2白)・先ず場所の存在が問題濫な る:何かゞ存在するとすれば,必ず何処かに/存在するのであるから,この「’何処か」 ければならぬが,「何処か」が存在することから直に協所の存在を推論出来ない・本ほ机の上に・ある・ 机は本の場所であるから,場所は机である,それ牧場所は存在すると云えない.机が本の場所をなし ていると考えられている迄である.、そして机の場所は部屋け 部屋の場所は家等々と云うことほ,地上 にある色々の物の名前の列挙にすぎない.アリストテレスは存在論着である.初めから物の存在を 疑ったりなどしていない.こゝでほ物とは別に場所なるものが存在するかを問うているのである.場 所が物と簸る一瘡め客観的存在であることをアリス」テレスは次の事から始諭す・る. (1)水のあった場所に,水が取除けられて空気が位置を占め,空気が又他の事物と入れ替る事実は場 所が永,空気その他と異るものであることを示す(.208bl・−・8). (勿(アリスけレスほエムぺドクレスに偉い,世界の諸物ほ地水火夙ゐ四元から成立つと考える.)

(2)

96 香川県立興野六学学・術調賢 火ほ上方に・向い,地は■下方に向う自然的傾向がある小 上方とは,妨げられなけれぼ,火の本来位置 すべき場野であり,下方は地の堆敬すべき場所である・・ っているのみならず,これと共に,前後左右の六方泣か存する.もつともこの六方位は我々に.とつ てほ相対的で,我々の占める位置に・従って,左が右に・なったり,右が左になったりする.然しなが ら宇宙全体としては,この六方位は絶対的で我々とは独立に存在する.そして凡てのものほ,これ によって,宇宙内に於けるその位置を指示されるのである.所で(1)と(句との議論に於て,使われて いる場所の概念ほ,些か相適しているように思あれる.(勾の瘍所は全体に於ける部分の占める位置 の如き・ものであり,¢)の場所ほ端的に.物が占め畠場所■ アリストテレス の亨 右図 を意味する1−(アリストテレスほ,宇宙を静止せる地球 を中心に.諸天が回転している間中心的球体とト考え三てい る・それ放下方とほ地球の中心へ向う方向であり,上

方七ほ地画壇泳より離れ

鱒未だアリストテレ云にはなく,地車が中心に向う、の はそれが宇宙年中心だからであり火など軽きものが上 へ揚ものは,それが浮力をもつからであ・づて,賢愚少 き為ではない・風水は夫々浮力と下笹向う、カとを或る 程度忙.於て有する.) ゆ空虚の存在を主張する人達ほ,空虚卑は物体の欠除 トキ場所に外ならぬとして,場所の存在を推論する∴ (羊の証明は庶子論郵こほ虫喫ま苧かも知れないが,空 虚の存在を否定するアリスけレネ自身にとって㌢女, この論は成り立たない.) 2・喝所に・ついての諸問題 以上によって場所が物体と.区別される成季ものであるこ辛が,明らかになったとしても,それが実 際檻何であるか,如何なる存在の嘩式を′もつものであやか等に鱒㌧て, 出ノしがたい問題)が起って来る(209a34). (1)今物と場所とほ区別されると云ったが,、又その区別を見舞う迷路がある・ィ或る物体の場所が奉れ ば,その物体の表面界びその他岬界が占める場所もあろう・同様に物体の一点に対応しで,.場所 の一・点がある筈である.然しながら場所の点と物体の点と灘何なる区別があるのであるか∴或ネほ これを区別することが出来ない.点に於て場所と物体との区別を見失うならば,ニ点を?なぐ線に 於ても,ノ場所の線と物体の線との区朋を見出しがたく,結局嘩.二つの線の交.叉によ・りて構成せられ る平面に於ても,三次元の立体に於ても,場所と物体と?区別は消滅することになる(209a畠−・軌 (勿場所ほ物紅何りかの仕方で影響を与え,これを規定するものであろうか・場所が限界と←五考え られるならば形相,単なるひろがりとして考え.られる場合,何らかの形を得て物がそこ隼於て成立 する地盤と見徹され,質料と云うことになる.これに・対.して如何なる説明をすべきであろう.カモ・ノ即 ち場所は形相及び質料と如何なる関係にあるのか・ 廟又場所が一種の存在であるとすれば,凡てのものは何処かの場所に.あるのであるから,場所も何 処かの場所を占めなけれほなりぬ.研がこの場所の場所も又場所を必賓とすること..になる.かくて 無限に進んで極る所がないであろう・これほゼノンカ!場所並びに遊動を否定する為に,横倒し冬ア ポリアである(209a24−26)・ 隆)増大するものが占める場所ほ,そのものが増大するにつれて,増大するのであろうか.場所畔場 ■ ′−−−−−−=−−・■−=−−−.− 所を占める物体より大きくも小さくもあってはならぬ管であるから(209a28−29)・

(3)

欝5巻第2号(1953) 97 以上のよう■な種々な問題が考えられる、が,これらを解決する為、に・,先ず場所の問念を明確に定義せ ねばならぬ. 3こ 本来的場所と二次的場所 場所とほ何かとの間に対して,或る物が存在する所と答えて常識的見解は異議をはさまな.いであ

ろう.例えば,曽方の場所ほ,貴方が今部屋の中にいるから,部屋と‥云づてよく,又部屋は家の中に

あるから,家と云って−よく,家は地上にあるから,地上と云ってよく,又地は宇宙の中に・あるから, 宇宙と云ってもよいであろう.そ・こであなたの居る場所ほ.,部屋,、家,地上,宇宙等であるに・違い なし、か,青首は万物を包括するものであり,地上にも無数のものがあり,家の中にも多数のものが存 在し,部屋の中に.・も貴方以外の若干のものが存在するであろう.それ放これらは資方のみが存在す る場所でなく,貸方と他の事物が共通に存在する場所である.貴方自身の場所,、資方のみが存在サーる 場所とほ,資方のみを含み取巻く所の′ものでなければならぬ(宰09a34−−3弥 他の例を挙げで見よう.葡萄酒の瓶に於て葡萄酒のおかれている机,部屋等は,葡萄酒が他の事物 と共通にもつ所の場所であって,葡萄酒本来の場所と.は云えない.葡萄酒本来の場所とはその瓶でな ければならぬ.否,厳密に云えほ,瓶そのものも葡萄酒本来の場所でなく,葡萄酒なる溶液を取巻く 所申,瓶の内側年表面が衝萄酒本来の場所と.云うことになる・・一一般的に云えば,本来的場所とは包括 者の内側の表面のことである. 或る物の本来的直接的場所と,二次的な,他の事物と共通の場所と云う区別ほ,アリストテレス が場所について顕した所の革質寧区別である・そしてこれから主に考察の対象になるのは,勿論前者 の本来的な場所濫ついてゞある. 4.場所の諸特徴 場所が何であるかを確定するに当って,吟味の標識となるべき本質的な四つの特徴をアリストテ レスは挙げている.①場所は物体を包括するもので,物体の部分や要素などでない・②本来的場所は それを占める物体より大きくも小さくもない.⑧物体ほそれがある場所から分離し得る・④凡ての場 所ほ上方,下方の区別をもつ(211.a1・−5)・ 本来的場所とそこ私有在する物体との区分が認められねばならない・場野≒その場所を占める物 体との間に、区∴分が認められず,連続しているならば,場所と物とほ−一・つの全体をなし,物は場所の 中に・あるのでなくて,部争として全体の中にあるこキになる・それ牧場所と物体と、の問に必ず区別 が認められ,物ほ場所から自由軋分離出来るものと考えねばならない・かくて或る物の場所とは,そ

のものを包括しているものゝ内側の表面と云うこと.に.なる.この内例の表面ほそれが包む物体と.分

離出来るのであるから,その物体の・一・部でほない・然しひろがりの点に於ては,場所と物体とほ同じ 大きさをなす払 場所の中にある物体の外側の表面と包持者の内側の表面とは,相互.に接触し・一致 する(2ユ1a25一山・34). 5.場所についての四、つの選択 以上のような観点から,場所は次の四つの、ものゝ何れであるか,明らかである.(i)物そのもノのゝ 形相.(ii)質料.(iii)包托者の内側の表面の間にあるひろがり.(王Ⅴ)包含されている物体を離れては ひろがりがないとすれば,物を包推する表面そのもの(2ユユb6−9).(iii)(iv)の 意味する所を水の入ったコップの例を以て図示すれば,(iii)に於てほ斜線の部分 が水の場所で,(iv)でほコップの内壁及び上部の空気の永に接する表面が,即ち太 線が永の場所になるn 但し(iv)の場合,コップの山部としての内壁,空気の一部と しての表面を意味しては.ならない.ノ(iv)の意味する所は,コップの内壁,空気の表 面に・沿うて構成される所の外廓である・この外廓は,包含されるもの一水−・の一・邸

(4)

香川県立腰科大学孝術報告 98 であってはならないと同様に.,包托者−コップ及び空気−の一部であってもならない・包括者の内側 の衷面と云う言葉を使ったのは多少不正確を免れ得ない.正確に・云えば(iv)ほ包括する外廓である・ アリ.ス千テレスほ(iv)を場所の正しい定義としている・前三.者が場所たり得ない理由ほ次の如せもの である. 大体場所の考え方には二道り■あると思われる.、(a)場所を限界として看る考え方・(b)場所を内包 的ひろがり七する考え方.、(前述の(iノ)(iv)_は.(aト(ii)(iii)は(b)に.当る・)水が容器に・入れらオtろ場 合、水は.をの容器匪従って種々なる形態をとる・そ・して水の場所ほ容器に外ならぬ・従って永ほそ甲 場所によづて形を決定される・との事から場所と形相が混同されるのであるが,とに・角(i)と(iv)と ほ傷所を限界と/しで看る考え方そある/他の表現をすれば,場所ほ容器なのである・内容物を包括す 恵も′ゐセあ去∴内容物と容器との関係ほ,容器の中にないものについても当蹴めるとと.が出来る・容 器の中にないものに朋,それをとり轟いている他の事物が容器の役目をなしている・そこでアリス寸 テレスは重患は惑わば移勒し得る場所,場所は移動し得ない容器と云ってい・る(212a15).要するに 土/れほ場所を穀の如く卜者る考え方で,これぬ対するものが澱の中のひろがりを場所と看る考え方セあ る. 前速め通り,(i)と(iv)とほ共に.物体の限界をなすもので,極めて相似ている如く思われる.ぞれ 故に.こそ,場所は形相ではないかと云う考えも出て来るのである.然し形相は物そのものを限定して これに形を与えるものであるが,場所は包括者の形を決定するものである′・以上の如く,場所と形相 とを概念的にほ区別出乗るものゝ,包括者の内側の襲面と包括されるものゝ外側の表面は−小数する放 これだけでは形相と場所とを区別する根拠が薄弱である.両者の明瞭な相違ほ,形相ほ物そのものと 分離出来ないが.場所と物とほ自由にほ.なれ得ることである.立像ほそれが占めていた場所を離れて 他の場所に.移動するrとが出来る.然るに.,立像をして立像たらしめている形相を立像から剥奪すれ ぼ二,そこには立像なるもあなく,立像の質料たるL大理石あるのみである.形相は物に.とって物を物た らしめる本質的要素でお畠∴然し場所ほ物と本質的関係ほない.同じ場所に適った事物が入れ替り, 立、ら替り存在し得る. 次近(ii)と(iii)とゐ場合を考えて見よう.と.れほ場所を殻そのものでなく,殻の中の一ひろがりと解 釈する見方である.種々なものが,容器の中を出たり入ったりするこ.とほ容器の中が物とほ別なひろ がらをなしているように我々をして感ぜしめる.(iii)は容器の中の単なるひろがりを場所とこする考 え方でちる・然しアリー女けレスはこの考え方を極めて理解しにくい微妙な議論によって反論して いる(21 分り易くする為に,’再び水の入ったコップを例に.とって考え.よう.場所がひ▲ろがりであるとしたら コップの場所は透視彷の部分,.永の場所はⅦの部分である・かくてコップの場 所と水の場所とが相互に柏登って存在することになる.更に.コップの中の内容吻であ る水を幾つにも分けて考えると,無数の場所が相患って存在しているこ.と.になる.そ うすると場所が場所の中にあることに、なる∴(ゼノンのアポリアの解決については後に ふれるが,とに角場所の場所なる考えほ背理である.)コップが移動すると,コップの 中佐相星って存在する無数の場所も共に移動する.然し容器が内容物と共に.場所を移動する時,内 容物も全体の部分として場所を変えると云うのほ事実でない.内容物は同じ場所にある筈である.と 云うめ揉我々が問題把しているのは,本来的場所忙ついてゞあって,物が他の事物と共通に.もつ二次 的な場所についてゞはないゐであるから.容器が移動しても,内容物が占める本来的場所は変らない 筈である・アリストテレスの考えによれば,ひろがりとほ物体のひろがりである.物体のない所紅び ろがり・ほ.考えられない∴然るに尚且つそのひろがりを考えると以上のような背理に.関入る.これは

(5)

欝5巻男2号(1953) 99 又後に述べる空虚の問題とも関係する. アリストテ■レス時「凡てのものゝ初めにカオスが,その次に胸喀き木地」、、、と云うへ・レカートスの草葉 を引用して,凡ゆるものゝ存在の前に場所がなければならぬことを云っている(20年b31)・カオスは 凡ての存在がそこに於て可能となる場所である・それは又凡てのも′?、が,奉れから形革せら叫ろ質料 でもある(それ故場所に・は又質料と解される契械が存する・質料は鼎:て∴のも甲が?やれから形鱒ざれ る材料である・場所ほそざに於て,凡ての存在が可能虹なる所である・∴質料鱒勲こ準った′り,、空軍笹 なつ狩りする秀のものである・双方共可能性である点に於てこ相似ていろ・降し界明輝な琴別も存すみ tl 水の質料ほ水と分離し得ないが,水の場所は水と当然はなれ得皐・.異質料は物を魯玲し、ないのに?場 所は内容を包托する∴従って質潮堰場所であり得ない・質料と場所卑の混野㌢え喝帯を、内包的びろが りに・解することから起る・然るに・プラトンは場所を内包的ひろがり軋解する・から と同じものだとしている・と云うの棟内包的ひろが一りノも質料も共に、限定を牢く 包的ひろがりは形式軋よって,限定されて一定の物の形をとる・それとノ同樽準肇料ほ形相の参与を得 て現実のものとなる・こゝに質料と内包的ひろがりの相似串点がある・ 以上のような理由からして,場所とほ(iv)の場合であることが明らかとなった・又かくの如く声義 す卑ことによって,前述の種々のアポリアは解決される・ (1)場所と物体との区別は明渡であって,もほやその区・別を見失うようなこと・はない・場所は点でも 線でもなく又ひろがりでもない. (2トゼノンのアポリアの解決 アリストテレスは第三/章(210a14−−・b33)Lに.於■て場所論から多少岐 路に.入って en(の中に)の意味の詳細な吟味を行っている・結論は夢すろに,凡でのも甲鱒他の 物の中に.はあり得るが,如何なる意味に於ても自己白身の中に・はあり得みいと云うのであろ・日常 の用語ほ曖昧である,自己が自己自身の中紅あると云われろ場合は,多く.喀この琴降さにこもとづい ている・例えば①来堆を修繕する,⑧薬錐を火にかける,⑧栄妊ほ準っている,と云う揚合,①ほ 空の薬鰭,⑧は寒路とその中に・ある水,◎ほ薬堆の中甲水を意味する・従?て辱の意味隼於ける薬 擢が①の意味に於ける薬堆の中にあると云い得る・然しその場合でも,水の資格紅於ける薬錐が, 魔の資格に於ける薬鑑の中に・あるのである・同一資格或ほ意味に於け早来錐が巽鱒の中にあると・は 争えない・同様匿場所が阻一潜終に於け 容器としての場所?中に・あり得る・然し物を容れる容器たる場所が,同じく容器たる場所の中に, 如何にしてあり得ようか・それ牧場所が場所の中にあることほ出来ぬ・勿論本葬的場所は二如勺転 他の場所の中にあり得る・然しこれほ偲限に・進むものでなく,宇宙に・迄達すれほ終りである・そし て宇宙外に・鱒何ものもないから,宇宙はそれ自身の場所をもたない・ ゆ上場所はその包括する物体と共に・,鱒大し或は縮小すると考え・る必要は、ない・増大した物体ほ新な 場所を占めるものと考えれほよい・(但しこの点アリスけ■レスが如何に・考えたかほつきりし 6.空虚の否定 アーリスfテレスがtoposなる言葉を使う時,それほ日常的観念に於ける場所を意味しているので あって,幾何学的空間の・意味に用いていない・カントは空間概念が先天的なることこの証明として,物 が何もない空間は表象し得るが,空間の中にない物は表象することが出来ぬことを挙げた・か・ゝる、単 なる延長としての空間はアリストテレスの云う所のkenon空虚に相当すると思われる.空虚ほ物を 容れ得る場所,従って物の欠除した場所と考えられる・デモクリトスなどが,・空邸Pら非存在ほ存在 と同様に存在すると云ったのは,空虚なくしては物体の運動の説明がつかないと一息ったからであつ た・物を容れ得る空虚がなく到る処物質によって充滞しているとすれば,物の動き得る余地はないと 考えたのであった・アリス・トテレスは然しこれと反対に,空虚がなくても,物は十分遊動し得るほか

(6)

香川県立腐科大学学術報告 100 りでなく,空虚の中に於てほ.却って遊動は不可能になると考えた.アナクサゴラスも同じく室虚を否 定するが,その理由と.する所は全く的をほずれた一ものであるとアリス‡テレスは云う.アナクサゴラ スは空気は空虚でないと.アリスナチレスも諸種の実例から当然これを認めるが,空気が空虚セない こと.が決して世界に何らあ空虚な間隙の存在しないことの証明に.なら、ないと云う(2ユ.3a22−b釘. 之.に反し七重虚の存在を主張する人達の議論の方が適に・要点を得ているとしている・彼等は云う,′肘 物が動き得る場所として,空虚がなければ,場所師運動なるもあは存在しなくなるであろう,(句物の 収縮ほそめ中に垂隙があるから可能なのである,励物の増大成長も垂虚なくしては考え得られないと (213も2⊥22).ア㌢ス寸テレ云ほ一尺これを反論する. 空虚ゐ存在を否定する論旨ほ,ニ通りに分けることが出来る.(1)直顔的証明とでも云うべきもの. 即ち物のない単なるひ′ち とによ1らてなされ右.これは前述の場所についての第三の選択の場合に・関して述べた通りであるか ら,こゝでは繰り返さない.(2)間接的証明とでも云うべきもの.空虚確遊動を説明する為に想定せら れるものであるに.も拘らず,遊動ほ.空虚なくしても起り得るし,又空虚を想定することほ却って運動 の説明を不可能紅するものであることを示すことによってなされる・ 先ず第一に凡ゆる種類の運動が空虚を必要とするのではないことは明らかである.例えば性質的 変化alloiosis(顔の白い人が黒くなる如し,アリスfテレスは遊動め意味を非常匿広義に解する・) は物がその傑変化するのであるから,空虚を必要としない.又廻転や渦動の如き場所的運動庭あって も,物が進むペき場所を相互た.同時に空けるのであ としない.更にヌ.節減ほ空隙庭物が入り込むことによって起るのでなく,締滅する物体は何かを放出 している場合があり,反対に膨脹は空隙の増大に.よってゞなく,何かの吸収によって起る場合があり

得る.更に膚要なことほ,タヅ幻

際に大きい容積に膨脹したり,小さい容横に縮減したりすることが出来ることである.この実例ほ水 か空知庭.なる場合,或は反対に空気が水に.なる場・台に簡単に目撃出来る(214も3−4).(水は蒸発する 故永と空気とは相互に転換すると考えたらしい.)それ故膨脹収縮は全く空隙の如何に.かゝわらない. 空虚ほ一堺上のような運動由条件でないことほ明らかである・然らば如何なる遊動の条件であろう か.遊動は強制された運動であるか,、自然的遊動であるか,その何れかである.然し邑然的運動が梶 原約な遊動であって,これなくしてほ強制された遊動ほあり得ない(2ユ5a2−4)・火は上方人,地は 下方へ動く自然的傾向をもつ.空虚ほこれらの遊動の条件であろうか.決してそうでない.空虚の中 に於ては,上下前後左右を区別すべき何ものもない.従って物はその動くべき方向をもたない きものは届きものゝ上に揚り,重きものほ軽きものゝ■下へ降るのが,物の自然的運動である.それ故 空気ほ火の中に存在すれば,下へ向い,地又ほ.水の中疫あれば,上へ昇るであろう.然るに空虚の中 正於てほ.,何れへも動くペき理由がない(214b12−17).かぐて空虚は又かゝる運動の条件たり得な い. 更に投射物について因姓がある.投射物は空虚の中に於ては,これを推進する力も,これを抑制す る力も受けない.授射物は空虚の中で動く場合,抑制するカが伐かないのであるから同じ速度で無限 に・進行し,停止することがないであろう・或は空虚の中では推進するカは何も仇かないから,招射物 は静止する外ない(215ai4−22). 又更に速度に.ついての周疲がある.物体の運動の速度は,次の二つの条件によって決定せられる. (1)運動する物体が通過するト環境の性質・(勿遊動する物体の重力又ほ浮力の程度.同じ物体が水の中 で遊動するのと,空気の中で遊動するのとでは,速度の割合は如何になるか・永は/空気よりも運動す る物体に二倍の抵抗を与えるとすれば,空中に於ける速度と水中に.於ける速度との比は2:王である. ヾ

(7)

廃去沓好色号(土953㌢ l 所か垂虚ぼ物体忙対じ宅面らの抵抗もな1さなぃ(も た軽〕こも、めセあれ′、充満したものゝ中に於け 体が適適する紅,・全麿時間を要しないことに、なろう(215a24−b、22)・戎ほ女響虚中を物体が通過す 華ぁた張る時間を要するとすれば,何らかめ程度浸於て充満したも、のゝ中を通過する場合と:比例が成 立サ畠。、充満tたもめゝ中を通過する療尚を・r土壁虚申を通過する時尚を寸去とすれほ,・も:T2ゐ比は 慮過ぎ叫る

須崎顆偶㊥坤よつ乍

\) 発滴’したもゐゝ中に廉て二、も,空虚の串牡於も紬\を通過する ゝ一志\ことばあり得ない(21′5云22−2 以上ほ通過せらるぺき中間物の性質如何が,運動するものゝ速度に影響する点から論じたが,′今度 は遊動す卑働休そのものがもつ速度の差違に関して考えよノう・同じような二つの物体の中二より大き (魔九或はより矢ぎい浮力をもづ方がよ、ら辛い速度七遊動す・る.それでは垂虚の中に於ても向様で あろうか・、空虚の中に於てほかゝるこ阜ほ云ネない・と云うのほ通過せらるぺき物質をよ’り大きなカ でおしのける物体の方が,より小さなカで推しぁけ志吻体より,より速い連隊で遊動する.然しこれ ほ推しのけるべき物質がある場合のこ・とである′空虚の中でほ推しのけるべき何ものもないから,よ り早く又はより遅くおしのけると云う比較は成立しない.それ故空虚の中でほ,如何なる畳力浮力を も一、?物体竃も戎同じ速度で遊動する・然しか 以よ環甚こ.う・な結論に、導かれるのは,そもそ・も帝初の空風の想定が背理であるからである・ひろ を牒或冬物のひるがり熊り,物に.よつてそのひろがりはほかられる・然るに物とは独立のひろや去ら を想定するこネ咋,物のない物甲ひろがりを亭う′皐うなものである・ 空虚を実在するものとして考え卑ことほ不可能であろとしても,塞限な管ろやミりを衆象する 可能である.我々の表象軋於ては,或るものを取り除いて考えると,後にそれが占めでいたと同じ垣 間が残る.召そればかりでない.物が或る場所を占有していると云う日常の書架の使い方そのもの が,最初に空虚な空間があって,そこへ物が入り来って,その空間を占有したと云う考え方を潜在的 に酷掟している.それ故抽象的幾何学的空間の表象は,我々に先天的に与えられていると云ってよい・ 番ってアリスけレスの如く,空虚の存在を否定することは正しいが,それを似て空虚の表象をも否 定し得ない.そうすると結局カンl・の如く空間を先天的表象として解釈する外道がないように見え る.抽象的空間に.ついては左様考えるとしても,より具体的な問題である場所に・ついて−ほどうであろ うか.アリストテレスほ.場所ほ実在する或るものと考え.た・彼ほ.場所と空間とを区別しているが,こ の両者は衣裳をなす概念である・・一方を先天的とすれば,当然他方も先天的なものとなさざるを得 ない.然らば場所に包括される事物も,カンナ流に我々の衷象となるべきものであろうか.実在論者 であるアリストテレスほ勿論かゝることを許容しない・又問題はカン†的に解釈しても,解決される ものでもない.アリストテレス的存在論的考察の仕方もこれと同等の権利をもつ・と.も角も空虚の問 題ほ観念論的権威と存在論的考察が衝突する場であると思われる. 結 アリスf・テレスの哲学ほイデアを先取りすることなく,我々の身近かのものから質実に.出発する. 然しそれほ卑近のものに終始とゞまるが為でなく,遂にほ却って神の高みに.昇らんが為である.自然 学に於て取扱われている主要題目ほ.遊動である・けだし遊動ほ自然に於ける最も普通の現象である から..運動及び運動と関連する幾多の概念についてアリスI・テレスは精細な分析を行っている.彼 の思想径路を辿って行くことは.極めて困難であるが,丹念に彼の考えについて行けば,その思索の

(8)

香川県立贋科大学学術報告 102 周密なることに驚嘆取外ない・然しそれと同時にり彼の煩演難渋の議論ク)何処紅意義があるのか見失

われ勝である・勿論個々の議論それ自身でも,哲学的概念の開明の上に,それ相応の意義があるので

あるが,自然学の議論全体を綜乾する時,樗共にわ在る如く見える議論が全体として或る目標を目指

している深甚な意味が,汲みとれるのである・遊動の凡ゆ、る様相を吟醸し尽して,遂に解釈し得ざる

一つのをとに到達する・それは如何阻して運動が始ったかと云うことである・かくて運動の欝一題動 因と .

咋,軍代の科学的観念と相容れないようなものが,少やゝらずある・然し対象を出来るだけ多面的に考

察し,些かの粍点をも残さぬその徹底的な思葉ほ,彼の研究方法と相侯って,現代に放ても顧みるべ

き多くのものを帝している・ (使用プキス† TheLoebClas?icalLib工ary・ThePhysicsvol・1with an Eng・Trans・byP・WICKSTEED and万一.M.CORNFORD.

Acht鋸cherPhysik.G工iechischu・Deut$ChvonPr・Ca‡1PRANTL)

Res山me

hAR】STOTLE,sPhysicstheword‘topos,g・enera騨meansplace,nOtSpaCeinabstract

sense Hemakesanimportantdistinctionbetweena thing,sp工Operplaceandaplacecommon

toita適other・things・Place・pIOperis defined‘ta eskhata〉wh;ch may mean\either the

extreme outer surface of the contained or thらextIemeinner slユrkce of a containing vessel・

ARISTOTLEseemstoapproveofthelatter・Placeisneitherformnoェmatte工nOrdimensionality・

Nomovementispossibleinvoidatall,壷hoseIealityis debiea・

参照

関連したドキュメント

ポートフォリオ最適化問題の改良代理制約法による対話型解法 仲川 勇二 関西大学 * 伊佐田 百合子 関西学院大学 井垣 伸子

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

[r]

年間約5万人の子ども達が訪れる埋立処分場 見学会を、温暖化問題などについて総合的に

哲学(philosophy の原意は「愛知」)は知が到 達するすべてに関心を持つ総合学であり、総合政

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

「大学の自治l意義(略)2歴史的発展過程戦前,大学受難