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質の保証と授業の活性化 : 本学総合教育科目における授業の在り方を模索する

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質の保証と授業の活性化

本学総合教育科目における授業の在り方を模索する

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1 .はじめに 文部科学省が平成 28年に発表した「児童生徒の問題 行動等生徒指導上の諸問題に関する調査J1)によると、 平成 27年度の全国の高校生 3,325,301人のうち、病気や 経済的な理由を含む長期欠席者は 79,207人、中途退学者 は 49,001人であった。中途退学となったきっかけと考え られる状況の事由別にみると、「学業不振Jが 7.7%、「学 校生活・学業不適応」が 34.1%、「進路変更Jが 34.5%、 「病気・けが・死亡」が 4.2%、「経済的理由Jが 2.7%、 「家庭の事情」が 4.5%、「問題行動」が 4.1%、「その他」 が 8.2%となっている。「学業不振Jについて学校種別に みてみると、国立高校では 9.1%、公立高校では 8.4%、 私立高校では 6.4%と、国・公立高校での値が明らかに 高くなっている。 本学に多くの学生が在籍している愛知、岐阜、 三重、 静岡の4県の不登校生徒数を比較(<>内の前者が 1000 人当たりの不登校生徒数、後者が不登校生徒数)すると、 それぞれ、愛知く 10.3人、 2,068人 > 、 岐 阜 <10.8人、 609人>、三重 <13.1 人、 656人>、静岡く 12.8人、 1,290 人>である。

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愛知工業大学 基礎教育センター(豊田市) また、先に示した文部科学省の調査からは、学業不振 から無気力になった不登校が約 10%と、不登校になった 高校生には、学業不振や授業に興味が湧かない等が原因 の生徒が多いことが読み取れる。 累次の中央教育審議会や大学審議会答申において、 「大学教育の公的な質保証」や「学士課程教育の質的転 換jに向けた取り組みが強く求められてきていること、 及び、本学学生の気質や不足している基礎学力の状況を 鑑みるとき、学生のニーズに応えた分かりやすい授業の 展開に留まらず、様々な手法を駆使して学生の能動的な 学習を促すアクティブ・ラーニングを追求していくこと こそ、本学総合教育科目に課せられた重要な責務と考え る。 2. 授業改善に向けた取り組みとその結果 筆者が担当する総合教育科目「科学技術と自然と人間J (選択2単位)では、自己の学修管理を促すための「評 価 票J を使用して、科目本来の授業目的に加えて、次に 示す三つの観点を授業目的として組み込み、初回の授業 で確認するとともに、授業中にも随時強調した。 ① 相手に伝わる文章表現のスキルを身に付ける

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② 自己の在り方生き方の確立を目指して、メディ ア・リテラシーを身に付ける ③ 一般教養に関して、義務教育及び後期中等教育 で受けてきた知識の学び直し 2. 1 相手に伝わる文章表現のスキル 筆者は本学教職課程で、高校教師を目指す学生を指導 している。担当している講座「理科教育法」での板書の 演習授業において、高校化学の中和反応に関する演習問 題に対して、学生の解答を例示することで、「相手に伝わ る文章表現のスキル」に関する上達の過程を示す。 (問題) 食費車中の

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・の温度を求めるために次の実験を行った。食酢の密度 を1.02o1mLとして,食院中の目撃取の質量パーセント温度(%]を,① @の中から一つ置ぴなさい. I像 作110.3781のシユウ康二水利物{ロ沼町z・ 却pをピーカ}に正確 にとり,純水を加えて溶かし,メスフラスコに移した.ピ -"11-内 を少量の純水でilってメスフラスコに移し.禄.まで純水を加えて 1依胤,とし,よく撮って. ...溶液を銅製した. I録 作2)*測量化ナトリウム水溶液をピュレフトに入tt.スタンドに図 定し. ..の目盛りを緩んだところ.2.α)mLであった. [操作3)[1像作 lJで鋼製したシュウ....溶液却.伽tLをホールピペツ トを用いてコニカルピーカーにとり,指示姦を1-2満加えたのち, 【像作2)で懲.したピュレットから水田町ヒナトリウム*-複を少しず つ涜下した.猿面の目盛りは,最初は2瓜)mLであったが.中和点』こ 途したとき滴下をやめ,浪商の目盛りを疎んだところ.14αlmLで あった. I像 作4]食E撃を10倍に簿めて,その却.0.叫,をホールピペットを用いて コニカルビーカーにとり指示療を1-2鴻加えたのち.[録作3)で使用 した水副量化ナトリウム水浴漉をピュレyトから少しずつ滴下した。 波面の目盛りは.最初は14.仙 叫4であったが,中和点に遣したとき 漬下をやめ.液面の目盛りを畿んだところ. 28.拍叫,であった。 ① 3.6 ② 3.7 ③ 4.0 @ 4.3 ⑤ 4.6 図 1 図1に示した問題について、「高校生が板書を丸写しす ることを考慮、し、後で見直して自分で復習ができるよう な板書として解答することjと条件を付けて解答させた。 相手に伝わる文章表現のスキルの違い (Level 1、Level 2、Level 3) を、学生の解答例(図 2"'4) で示す。 必 一A ,

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i:4¥) 図4 Level 3 高校に限らず、 一般的に生徒は、先生が板書した通り にノートに書き取る。そして、授業では理解できており、 先生の説明に領く生徒も散見される。しかし、試験をし てみると、教師を落胆させるような結果になることは、 現場の教師がよく経験しているところである。これは、 生徒が、授業中にはくわかった積もり>になっている状 況であることに起因していると考えられる。 従って、その生徒が、後日、例えば定期試験に備えて 自分のノートを見直したときに、受けていたときの授業 での説明を再現できるような板書をすることが、相手に 伝わる文章表現のスキルにつながると言える。 2. 2 メディア・リテラシー 総務省 (2013)の「平成 24年通信利用動向調査J2)に よれば、 6歳以上のインターネット利用者におけるソー シヤルメディアの利用率は 36.2%であり、その中でも 13 ---19歳の 46.6%がソーシャルメディアを利用している と回答している。本学の学生の利用率も、それ以上の値 を示すものと推測される。 後藤 (2004)3)が指摘しているように、メディア・リ テラシー研究では、高度情報通信社会において、「批判的 思考力Jと「コミュニケーション能力Jの育成がさらに 重要になってくるであろうと思われる。 メディア・リテラシーに関しては、例えば中橋 (2014a) 4)は、「メディア・リテラシーとは、 (1)メディアの特性 を理解したうえで、 (2)受け手として情報を読み解き、 (3)送り手として情報を表現・発信するとともに、 (4) メディアのあり方を考え、行動していくことができる能 力Jと定義しているが、本学の学生に関しては、特に、 「批判的思考力Jに通じる (2)の「受け手として情報を 読み解くj能力を酒養すべきと考えている。 筆者が担当する総合教育科目「科学技術と自然と人間J では 500---800字程度の課題レポートを課している。学生 が主張してくる結論の論拠としては、書籍からの引用で はなく、マスメディアやインターネットからの引用が圧 倒的に多い。しかも、自分なりに考察を加えることもな く、無批判に引用している。 従来、マスメディアが取り上げる教育界に関する話題 は、負のイメージが強いニュースが極めて多い。例えば、 最近のく行き過ぎた頭髪指導>とし、う記事を提示して討 論させると、学生の反応は、ほぼ全員が記事の趣旨に沿 って学校の指導を批判してくる。さらに、その結論に至 る過程で、「どのような理由から、その高校が頭髪指導し ているのか」等といった、自分なりに情報を受けとめて 読み解こうとした痕跡が認められないことが残念でなら ない。 例えば、筆者が担当する総合教育科目「科学技術と自 然と人間jでは、く医学・生物学の進歩と人間>という テーマを取り上げて、「臓器移植J~こついて考えさせてい る。心臓移植では、人の身体から心臓を取り出すのであ るから、脳死状態の臓器提供者が生きているのか否かで、 提供者側と移植を受ける患者側との間で議論が対立する 場合がある。ここでは、「人の命J即ち「個体の命jをど う捉えるのかが重要であり、双方がこの観点をしっかり と認識していなかったり、仮に、しっかりと認識が出来 ていても、互いの感情が複雑に入り込んだりして議論が 噛み合わず、どこまでも平行線を辿ることになり得るこ とに気付かせようと試みている。 また、総合教育科目「科学技術と自然と人間」の受講 生 109名を対象に、「コケ子の命」を例に取り上げ、図5 のように7種類のコケ子の状態を示し、「個体の命jをど う捉えているのかをアンケート調査した。結果を図 6に 示す。 学生が「生命は一度死ぬと二度と生き返ることは無いJ というしっかりとした認、識を持っているか否かの観点で、 回答を、認識を持っているカテゴリー A と、認、識を持つ

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ていないカテゴリーBの 2つに分類できる。カテゴリー

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のように何回もコケ子が生 き返ると回答する学生が57.3%にも達しており、正しく 認識できている(回答パターンA1) のは 23.4%に過ぎ ない。カテゴリーBの学生が、メディア・リテラシーの 点で問題を抱えているであろうことは、容易に想像でき る。 『生命~IilJ ・・・あなたIil、しっかり在した考えを持っているか? @護軍)rコケ子の命J~ついて、コケコが生きているか死んでいるのかを事備し、 Ox を 記入せよ. ① コケ子 I @省銀しコケ子 │ 。走っている首舞しコケ子 I I @創れて動かな〈なった首娠しコケ子 │ @倒れて動かなくなったが、心慮が跡、ている3院しコケ子 │ @創れて鋤かな〈なり、心.も止まってしまヲた首舞しコケ子 I I @倒れて動かなくなり、心慮も止まってしまったが、心騒の・ I I 胞を"微舗で‘'すると、細・ーしている@が見るれた首娠し '----' % 25.0 20.0 ~ 15.0喝 10.0 -5.0

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① φ ③ ③ ⑤ @ φ コケ子 A1 カテゴリーA 2. 3 学び直し 図5 カテゴリーB 図6 本学学生が、マスメディアやインターネットからの情 報を、自分なりに考察を加えることもなく無批判に引用 してしまう大きな原因が、一般教養に関して、義務教育 及び後期中等教育で受けてきた知識が身についていない、 あるいは、それを忘れて使えないでいることにあると考 えている。 筆者が担当している講座「理科教育法」では、前期と 後期にそれぞれ3回ずつ、計6回に亘って近隣の県立高 校に引率し、化学の授業でA T体験実習を毎年させてき ている(長谷川、 2012)5)。 受講生からは、 「高校生からの質問に、毎回、その場ですぐに答えら れた訳では無く、幾つかの質問については、忘れてい たり、準備不足で自分自身もしっかりと理解できてい なかったりと、答えることが出来なかった。j 「担当する高校生を授業中に学習支援するのだが、後 から振り返ってみると、説明が足りていなかったり、 暖昧な表現の仕方をしていたりと、生徒が後で理解で きるものだ、ったかと考えると、猛反省しなければなら ない。それで、自分の理解がかなり不十分なところを 突き詰めていかなければならないと思い、高校時代の 教科書や参考書を引っ張り出して復習を始めている。J といった反省を数多く聞いている。 ところで、 「高校生に説明するときに、どうしても専門用語や日 常では使わない単語を使ってしまう。高校生が「その 言葉の意味、分からんj と言ってくるので、意識的に 専門用語は使わないように心掛けたが、理想は生徒同 士で理解し合い、問題解決をするようになることだと 思う。自分の当たり前が、生徒にとっては当たり前で はない点に気を付けなければならない。J と、相手に伝わるようにとの配慮が欠けているといった 趣旨の反省を認めてくる受講生も見られる。 西川 (2015)6)は、ある教材については「一斉指導よ りも『学び合し寸のほうがはるかに効果的jであり、

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学 び合い』は、現在注目を浴びている「アクティブ・ラー ニング」の一種jであると指摘している。 高等学校学習指導要領 7) には次のように記載されて いる。 第 1章総則 第5款 教育課程の編成・実施に当たって配慮すべ き事項 5 教育課程の実施に当たって配慮すべき事項 (7) 学習の遅れがちな生徒などについては、各 教科・科目等の選択、その内容の取扱いな どについて必要な配慮を行い、生徒の実態 に応じ、例えば義務教育段階の学習内容の 確 実 な 定 着 を 図 る た め の 指 導 を 適 宜 取 り 入れるなど、指導内容や指導方法を工夫す ること。 本学には、この援助の手が行き届かなかったり、この 援助の機会に恵まれなかったりしたと思われる学生が相 当数在籍していると想像される。これまで、筆者は、授 業中に「高校で学習したはずだから、必ず復習しておく ようにJと注意することで済ませてきたが、理科教育法 の受講生の感想から、何よりも、筆者自身が猛省し、担 当する総合教育科目「科学技術と自然と人間」の授業内 において学び直しの機会を設定し、『学び合し、』の手法を 取り入れた展開を始めるべきであると考えた。総合教育

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科目「科学技術と自然と人間」のシラパスを図7に示す。 学び直しには、情報学部の 4年生に製作を依頼したア プリケーション「進捗管理システムJ を使用し、確認テ スト形式で制限時間20分とした。 鶴議のスケジ=ー見, 1箇授業オリエンテーション、 科学妓術の進展と地球環境の変化を3つの危緩から考える 文章表現、メディアリテラシー、竿び直しについて・・・9/27 2図科学設術の発遣と人間・環境安全保障 (1- 1)・・・・・・・・・・ 10.14 課題レポート1 3図科学妓術の発達と人間・環境安全保障(1-2)・・・・・・・・・・ 10m 学び直し① 4図 科学妓術の発達と人間・食鑓安全保障(2-1)・・・・・・・・・・・ 10/18 学びJlし② 課題レポート2 5回 科学妓術の発速と人間・食糧安全保障(2-2)・・・・・・・・・・・・ 10/25 課題レポート3 6固 科学後術の発途と人間・エネルギー安全保障(3- 1)・・・・・・・・ 1111 学び直し③ 課題レポート4 7国科学妓術の発達と人間・エネルギー安全保陣(3-2)・・・・ ・・・ 1111o 学び直し③ 8回 医学・生物学の進歩と人間・生物共通の仕組み・遺伝(1-1)・・・ llf22 課題レポート5 9回 匡学・生物学の進歩と人間・生物共通の仕組み・遺伝子 (1-2)・・ 11f29 課題レポート6 10図 医学・生物学の進歩と人間・命の始まりは穫が決めるのか・・・ ・・12:'6 謀題レポート7 1 1図 医学・生物学の進歩と人間・命を選んでもいいのですか・・・・・・・ 12/13 学び直し⑤ 1 2図 医学・生物学の進歩と人間・命をつくり変えてもいいのですか・・・・12120 学び直し⑤ 課題レポート8 13図 医学・生物学の進歩と人間・命の終わりは穫が決めるのか・・・・・・ lf10 14国 医学・生物学の進歩と人間・命は援のものか (1)・・.. . . 1f1 i 学びJlし⑦ 15図 医学・生物学の進歩と人間・命は緩のものか(2)・・・・・・・・・・1124 学び直し③ 16固 A臼程 定期テヌト (11"文テヌト)・・・・・・・・・・・・・・・・1f31 図7 学び直しのテーマとしては、四則計算、単位の変換や 桁数の大きな計算と有効数字など、受講生の大多数に間 違いが多く見られてきた分野を選んだ。確認、テストは、 制学按舗と人間と白銀 1隈 座 席 表

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図8 レベル1とレベル 2の 2つの問題で、構成され、その評 価については、「レベル1に正解すれば評価B、レベル2 に正解すれば評価A とする。ただし、全員正解を条件と するj と評価基準を事前に確認しておいた。 図8に示すように、レベル 1を解いた学生は、正解し ていればP Cの画面上の座席表にある自分の名前をクリ ックすると座席表の表示が赤に、レベル2に正解してク リックすれば緑に表示が変わるように、進捗管理アプリ が作られている。即ち、スクリーンとモニターT Vの画 面を通して、各自の評価が全員に可視化されるシステム になっている。 これまでの授業では「解答できた者から退出可」とし てきたので、解答できたらさっさと退出するという自己 中心的な雰囲気が強く感じられていたが、この学び直し では、「制限時間内は退出不可jとした。そのため、図7 に見られるように、理解度の高い学生が低い学生を積極 的に構まったり、理解度の低い学生が高い学生に教えて もらったりする光景が教室のあちらこちらで見られる。 ただし、理解度の低い学生は、理解不十分なままで答だ けを先に教えてもらう傾向を、義務教育及び中等教育段 階から強く引きずって持ってきているので、「正解者の中 から無作為に抽出して、私の前で説明をさせるJという 注意を喚起しておくことで、理解もせずに評価レベルだ けを上げようと行動する学生を牽制しておいた。 学生の反応を授業後の感想文でみると、概ね次のよう である。 「初めての授業形式で、解答できた人からチェックを すると言われ、その結果がスクリーンに表示されて評 価が皆に可視化されるので、普段の授業よりも身が引 き締まりました。全員正解という条件が付けられてい るので、自分が解けないと他の人に迷惑がかかるので、 隣席の人に教えてもらうことが多くなり、しっかりと 理解しようと心掛けるようになりました。」 このような結果は、学び直しの授業が学生同士の積極 的・能動的な学び合いの場を形成し、更には、同じ教室 で授業は受けているものの、全く話もしない学生間での コミュニケーション促進につながっていくことを強く示 唆している。 3. 取り組む上での留意点と今後に向けての展望 授業に関する受講生の最大の関心事は、どのように「評 価」するのか、即ち、評価基準にあると言っても過言で はない。しかも、学生の抱く不満の中で最も強いものは、 「そんなことなら、なんで、最初から言わなかったのか!J である。評価に関する重要事項は、最初の授業の中で、

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全員に徹底させておく必要がある。 筆者は、総合教育科目における授業の在り方を模索す る上で、(1)

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評価基準を明確にする」こと、及び、(2 ) 「評価を可視化する」ことに留意した。 ( 1 )評価基準 筆者が担当する総合教育科目「科学技術と自然と 人間」の授業では、第1及び第 2回の授業において 図9の画面を提示して、全受講生に次に示す2つの ことを徹底させている。 ① 小論文など記述形式の設問や課題では、話し言 葉、漢字を使わない、「である調jの文体を使って いない等の場合には、評価を下げる ② 学び直しの授業だけは全員正解を条件とし、一 人でも理解できていない者がいる場合は、その者 のレベルの評価に統一する この前‘の目標と注意事項 主1:科学設備の発達・進歩が 人間や人間祉会に与える影響に関して Intelligenceを養う 副 1: Media literacyを養う 副2:伝わる表現スキルを身に付ける (エントリーシート対策として) 何評価基穆に注意) 割3:学 び 直 し(* 評 価 基 準 に 混) 図9 (2 )評価の可視化 筆者が担当する総合教育科目「科学技術と自然と 人間Jの授業では、

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1枚ポートフォリオJ(堀 2004) 8)を参考にして作成し平成22年度から使用(長谷川 2012)5)している「評価票J(図 10)を配布し、毎回、 将司直敏衡と..と人間 一一一一一

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はじめて零ぶ生・・・

図10 感想、を認めさせて提出させている。 シラパスには、「講義において毎回テーマを与え、 そ の 講 義 の ま と め と 感 想 も 含 め て ミ ニ レ ポ ー ト を 提 出させ、これをもとに出席確認と成績評価を行うJ

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平 常点とテストの成績を総合して評価するJ

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出席が 11 回に満たない場合は失格とするJと明記しており、最 初の授業で、「自己評価票Jと名付けて配布し、これ をもとに説明して徹底させている。 この自己評価票は、毎回、授業後にミニレポートと ともに回収し、評価を付して次の授業時に配布し、確 認させている。 取り組みから浮かび上がってきた課題として、(1 )② の学び直しの授業に関する次の2点を挙げなければなら ない。 一つは、「学び直しの授業だけは全員正解を条件とし、 一人でも理解できていない者がいる場合は、その者のレ ベルの評価に統一するJ としづ評価基準を、受講生に周 知させる必要性である。このような評価方法を導入した 目的は、早く理解できた学生が理解の遅い学生を支援す るように促し、コミュニケーションを取らせようと意図 したものである。その効果は、図8からも強く示唆され る。しかしながら、理解の遅い学生の中には、あくまで も自分自身で考えたいとの思いが強い者もいるに違いな い。そうした受講生には、事前にこの評価方法の趣旨を 十分説明し、常にこの評価方法を適用するのでは無いこ とを納得させておく必要がある。 二つ目は、図8から想像できるように、授業担当者が 学生の解答をチェックする時間のロスが挙げられる。受 講生が多い授業の場合、多くの学生が列をなしてチェッ クを待っている聞に制限時間が来てしまうことがあり、 今後に向けて改善していかねばならないと考えている。 ( 2 )に関しては、全ての受講生に好意的に受け止め られている。授業フィードパック・アンケートでも、「毎 回、自分の評価が分かるので、理解が不十分なところを 確認でき、最終の評価に向けて励みになっているJとの 回答が見られることから、この自己評価票による評価の 可視化によって、受講生の目標とする成績評価と出欠に 関しての自己管理に有効に機能していることが強く示唆 される。 「相手に分かるように、相手を納得させるように書く、 ということを意識するように変わってきました。これ からは、表現力を磨き、誤字脱字にも注意します。社 会に出たときにきっと役立った、ろうから。J

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