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兵庫県北但馬地域における低位ブナ林とその存立条件

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(1)

兵庫県北但馬地域 にお ける低位ブナ林 とそ の存立条件

清 水 寛 厚

*・

矢 野 孝 雄

*

Low―

altitude forest of」

apanese beech Fα

tts crσ

ηα勉

)

in the northern Tttirna District,

IIyogo Prefecture,and its prerequisites

Hiroatsu Shirlalzu and Takao Yano

キー ワー ド :ブ ナ

,但

,暖

かさの指数

,最

深積雪,

裏 日本気候区

,

レリック

,遺

Key worよ

3:」

apanese beech Taiirla,warmth index,

maxilntlm snow― depth,Japan Sea climate,relic

I

は じ め に

中国山地 におけるブナ林 の下限高度はおおむね

500m付

近 にあ り

,鳥

取県三朝町の三徳 山では孤立的 に

390mま

で 低下する (清水,1991)。 鳥取県 においては

,ブ

ナの孤立 樹の場合にも

200m付

近までが限界であるにもかかわ らず, 兵庫県北部の但馬地域北部 (以下

,北

但馬地域 とよぶ

)に

は海抜高度

150mま

でに下降 して発達す るブナ林がみ られ る。裏 日本気候 区 (鈴木

,1962)に

おけるブナ林の下限 高度 の著 しい下降は

,冬

期 の多雪 に関係す るもの として広 く認め られているが

,西

日本地域 における顕著な下降現象 は特異であ り

,そ

の実態の把握 と存立条件の解明が重要な 課題 となっている。 北但馬地域では, 日本列島の大半の地域 と同様, 自然植 生に対する人為的影響が大きく

,森

林のほとんどが二次林 やスギ

,ヒ

ノキ

,ア

カマツ植林になっている。そのなかで, 1鳥取大 学教育 地域科 学部環 境科 学 講座

Departllllent of Environmental Sciences, Faculty of Education and RegiOnal Sciences, Tottori Univ, Tottori, 680-8551 」apan 鳥 取大 学教 育地 域科 学 部紀要 翻 域研 鍔,JrF9,別―汚′,フ θθ′ ユFαθβ力θ&沢駕サο″

&,α

鱈力胞′能 '切 θ,乃J′οガL/zル,Jω,′ "― ′J′,200′

″鯵

図l Jヒ但馬地域および周辺の位置図

(2)

112

清水寛厚・矢野孝雄:兵庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とその存立条件 比較的 自然性が高 く

,ブ

ナ林が低位 に分布す る兵庫県美方郡浜坂町および温泉町 (図1)イこおいて 実施 した群落調査によってその実態 を把握 し

,広

域的な気候 。地形・地質環境や主要林相の変遷史 を総合 して

,北

但馬地域 における低位ブナ林の存立条件を考察することをこの論文の 目的 とした。 気象データの収集や植生調査 においては

,当

時鳥取大学教育学部の学生であった畑 中猛君に協力 いただいた。気象データに関 しては鳥取地方気象台

,豊

岡地方気象台

,兵

庫県浜坂土木事務所

,兵

庫県八鹿土木事務所

,関

宮町

,大

屋町

,美

方町な らびに城崎消防署か ら

,ま

た文献の入手 には鳥取 大学教育地域科学部小玉芳敬助教授な らびに同農学部中村淳一助教授か ら, ご援助・ ご協力をいた だいた。鳥取大学教育地域科学部 の岡田昭明教授 には, この研究課題にかかわる基本的視点 をは じ め

,貴

重なご教示 とご議論 をいただいた。以上の諸氏な らびに諸官庁・ 自治体 に厚 く御礼 申し上げ る。

北但馬地域 のブナ林

北但馬地域では

,前

述 したように

,植

生の大半が人為影響下で

,二

次林やスギ, ヒノキ

,ア

カマ ツの植林 に改変 されている。 しか し

,

自然林の状態 を保持 しなが ら残存 して いる林分の中にブナ林 が照葉樹林 と混在す るように点在 して いる (図2)。 とくに

,兵

庫県美方郡 の浜坂町および温泉町 には特異的に低標高地 にブナ林が散在 し

,村

(1995)も

指摘するように注 目され るところであ る。 表1はブナ林帯要素およびそれ に準ず る植物 を抽出 したものであ り

,約

70種におよぶ。 山陰地方 ではブナ林帯要素の下降現象が広 く認め られるところであるが

,北

但馬地方 に向か うにしたがいさ らにその傾向は濃厚 となる。表2に北但馬地域の低標高地におけるブナーイヌブナ林 の種組成表 を示 す。 温泉町では

,鐘

尾 (190∼

240m)に

胸高直径が80cmに 達す るブナおよびイヌブナが混 じるブナ 林が発達 している。照葉樹林要素のウラジロガ シ

,ヤ

ブツバキ

,シ

ロダモ

,ヒ

サカキ

,ヤ

ブコウジ, テイカカズ ラな どが多産する中

,イ

ヌブナ

,イ

ヌシデ

,ミ

ズナ ラ

,

トチ ノキ

,ヤ

マボウシ

,ハ

クウ ンボク

,ハ

イィヌガヤ

,ス

ミレサイ シンな ど多 くのブナ林帯要素で構成 されている。 また

,地

理的 にはむ しろ後述す る久斗山地域 に近い歌長の高山

(420mlに

は胸高直径90cmに 達す るブナが林立 するきわめて良好なブナ林がある。 浜坂町では海岸か らわずかに直線距離5kmの久斗川流域沿いの数地点 にブナ林が残存す る。久斗 川流域は西方 に開 回し

,標

671mの

久斗 山を最標高地 としておおむね

400∼

500mの

分水嶺 に取 り囲まれた孤立的地理的環境 をもつ地域である。 しか し

,久

斗山流域ではたた ら製鉄の歴史があ り, 大半が二次林 と植林で覆われている。 久斗山の稜線部 にやや広面積 のブナ林が広がるほか

,低

標高地で比較的にまとま りのあるブナ林 を求 めると久斗 山集落

(180m),中

小屋 (150111J,本 谷

(300m)な

どに見 られ る。 よ り低標高 地では照葉樹林帯要素が多 く

,イ

ヌブナが混生 し半寄生植物のツクバネや タジマタム ラソウが多い のが特徴である。標高が

300mも

越えると照葉樹の混生 も少な くな り

,ブ

ナ林 らしいブナ林 となる。 全体 を通 して見 ると

,ク

ロモジやチマキザサが主要な構成種 とな り

,中

国地域 に発達す るブナーク ロモジ群集 と同定できる。 また

,単

木のブナは

,久

斗山集落の大杉神社

(140m)に

イヌブナ と共 に巨木があ り

,イ

ヌブナに至 っては久斗川の標高

60m地

点や熊谷川流域 の香椎神社

(80m)に

分 布 し

,林

分 として も矢 田川流域 の山田の熊谷神社 (80∼

100m)に

は胸 高直径が70cmに 達す るイ

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号

(2001) ブナ小規模林分が存在 している。 このように

,北

但馬地域 には驚異的な低標高地 にブナ林やイヌブナ林が残存 しているが

,ブ

ナ林 が残存す る林分の上部 に形成 されている二次林構造 に特異な現象がみ られる。一般 にブナ林帯域の 二次林はミズナ ラあるいはシデ類が優 占し

,カ

エデ類が主要な構成種 とな り

,林

床 にはチマキザサ あるいはチシマザサが密生するのが普通であるが, ここではアカマツ

,コ

ナ ラや ク リを主 とし

,ネ

ザサが混 じるブナ林帯以下の低標高地 に見 られる照棄樹林帯二次林そのものである。 ブナ林が残存する位置は多 くの場合

,民

家背後 の急傾斜地であって

,保

安林的役割 を担 っていて 伐採 されることな く守 り続 け られたものと考え られ る。 以上のような現状を考察すると, この地域のブナ林は地史的寒冷期か ら遺存 してきたブナ林が積 雪過多のこの地域の気候的条件 に助け られて残存 し得たものと解釈できないだろうか。

北 但 馬 地 域 の 気 候 環 境

北但馬地域は近畿および中国地方 の中で積雪が もっとも多 く

,典

型的な裏 日本気候 を示す地域で ある。図

4Bに

示されるように, この地域の最大積雪深は150cmに 達 している。表3はアメダスの気 象データ (1979/1981∼

2000年

)の

気温 と降水量 を示 したものである。なお

,気

象データに基づ き5℃以上の月平均気温 を積算 した暖か さの指数

(WI)お

よび5℃以下 の気温 を積算 した寒 さの指 数(CI)(吉良

,1949),CIと

CI期間の降水量 を掛 け合わせた積雪指数

(SDI:Kure alld Y伐

(4)

リョウメ″ゲ

Arachniodes standishi

シドュウモシ◆/゛シタヾ P01yStiChunl tripteron

ハイイヌガヤ Cepha10taxus harrinBtOnia var.nana

清水寛厚・矢野孝雄:兵庫県北但馬地域 にお ける低位 ブナ林 とその存立条件

1

北但馬地域∼鳥取県東部地域 における低標高地 (約250m以下

)に

出現するブナ林帯要 種

鳥取市 福部村 岩美 町 耳ヒ但馬

イワガネツウ

COniOgramme,apO

Ca ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

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O

O

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○ ○ ○

O

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○ ○ ○ ○

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O

O

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O

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O

○ 〇 〇 〇 〇 ○

O

○ ○ ○ ○

O

O

O

O

○ ○ ○ ○ ○ ○ 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 〇 〇 〇 〇 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ コタニワタリ Asplenium sco10pendrium ミヤマフユイチヨ`

Rubus hakOnensis

みヾキナシ Sorbus alnifolia ミヤマカタハ`ミ OXalis griffith スミレサイシン

ViOla vaginata

寿 ボガヤ サワハコヘ゛ タムシハヾ クロモシヾ イワガラミ ツルジミ ツタウルシ ヤマウルシ アオハタ∫ キフ`シ ヤマボタシ ハナイカタヾ コシアグラ ハリギリ れ′ツシヾ ″ ン ヽヾ ミスミツタ アフアヾキ エンレイツタ ツルアリドオン MitChella undulata キハ゛すア増ドリ

Sal

a nipponica ミヤマガマスヾミ

Viburnum w

ght

シライトノウ Chiono『aphis japOnica

ショ

ウゾョ

ハヾ

カマ

Heloniopsis Ottentalis

ウ′ヾユリ Lilium cOrdatum

ミヤマナルコユリ

P01ygonatum lasianthum

チマキサヾサ Sasa palェnata

ショタシドョウスケヾ Carex blephattcarpa ミヤマカンスケヾ Carex multifolia

Tollreya nucifera var.radicans Stellatta diversinora

WIagnolia salicifolia

Lindera umbellata

Schizophragma hydrangeOides

Skimmia japon■ ca v intermedia f repens

Rhus ambiBua

Rhus trichOcarpa llex macropoda Stachyurus praecox BenthaH dia japonica

Helwingia japonica

Acanthopanax sciadOphyl10ides Kalopanax pictus

Tripetaleia paniculata

Vaccinium japonicum

Anemone hepatica var.iapOnica Meliosma myriantha

(5)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号

(2001) 素お よびそれ に準ず る植物 名 種 鳥取市 福 部村 岩美 町 北但馬 ミヤマイタチンタヾ ミスヾナラ 材 片 サルナシ マメレハ゛マンサク エツヾアン゛サイ イタヤカエテヾ コハウチワカエテヾ タンドマタムラツタ オシャグシ`テヾンタ゛ イヌフヾす ムカコヾイラクサ コミヤマミスヾ ツ″ヾネ キクサヾキイチケ゛ エツヾユスリハ ハタチワカエテヾ トチノキ ミヤマハハノ ムラサ指 ユミ イワすシ ウスギヨクラク 謗 \舛 ケ゛ ハクウパ ク タニギA‐3ゥ オオカニコタモリ カタクリ ツルマサキ オオモミシヾ イワカカヾミ オオハヾショリマ フヾナ ミヤコアオイ ナツツノヾキ 存ヾマカ`ヤ エヒドネ ナツエヒ゛ネ Dryopteris sabaei

QuerCus mOngOhca subsp.c spula 出Iagn01ia hypoleuca

Actinidia arguta

Hamamelis japonica var,obtusata Hydrangea macrophylla var.megacarpa

Acer mOno

Acer sieb01dianum Salwia Omerocalyx PolypOdiunl fauriei Fagus japonica Laportea bulbifera Pilea notata Buckleya lanceolata

AnemOne pseudO‐ altaica

Daphnlphylhm macropOdum var humde Acer japonicum Acsculus turbinata Meliosma tenuis Euonymus lanceolatus Epigaca asiatica A/1enziesia cilicalyx

RhOdOdendrOn degrOnianu■l var.hondOense

StyTax Obassia

Peracarpa carnosa var.clrcacoldes

Cacalia nikOmOntana EtthroniuBIn japonicum

Euonymus fOrtunei var.radicans

Acer pallnatum var.amoenum

SchizOcOdOn sOldanel10ides OreOpteris quelpaertensis

Fagus crenata HeterOtropa aspera

Stewartia pseudO― camellia Asperella longe― aristata Calanthe discO10r Calanthe renexa ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

O

O

O

O

O

O

O

O

O

O

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

O

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

(6)

清水寛厚・矢野孝雄 :兵庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とその存立条件 表

2

北但馬地域 (温泉町および浜坂町久斗山周辺部

)の

ブナーイヌブナ林の種組成表 Al tude(m) 190 240 210 220 150 300 230 380 420 180 150 260 280 170 380460 380 410 AspectC) E SE E E SW N E NW NW SW SW SW SW NIV SE NW SE N 0 20 0 0 40 0 0 70 70 30 50 50 50 30 30 60 40 0 Slope dogree(°) 35 35 35 30 30 35 35 35 20 30 35 35 30 35 35 35 40 25 駈ght ofおrestlm) 2020202020 15202020 15 2020 15 20 152020 15唐 ブナ芥帯/山地要素 フナ チヨ'ユ, ヒメアオキ )]タフ' イワカ'ラ ]シアフ'ラ タリカエテ. クロモン' ケムツハ' クラン'ロノキ Sorbus,apOnica ミヤマカンスダ Carex multtb■a ムラサキンキフ' CaHcttpa japonica ヤマブノホトトギス TricJ4dS Bttnis オオカメノキ Vlburnun hrcatum ショウンちウハ切マ EeloniopsLS OrtentaLs スミレサインン Ⅵola vaglnata

ナノンヽキ Stewartla pscudo cameha

ホツツン' T」petalela paniculata

ミヤマIP」ユ) Polygonatum iaslanhum クマヤナキ.

Bcalchemla ra∝mosa

ヨハ'ノトネ)コ Fra nus ianuglnosa t serrata

ナンキンナナカマト' Sorbus grac工is

マ″ヽ'ア'モ Fra nus steboldlana

キノノオンダ Plag10ttTia japonica

Fagus crenata

DIspOrum smユacinum

Allcuba japOnica var boreals

Clethra barbiner s Schizollhragpa hydrangeoldes AcanthOpanax sciadophyloldes Acer ttataOglfo■ um Hndera umbeuata ふだagmo■a salcrona m ngla Jallonica Magnoha hypoleuca ■ex leucodada Schisandra ropanda Msterね brachybotrys 2 + + 1 + + + 1 1 + ■ 1 ■ 1 1 1 3 5 3 4 4 5 5 5 3 4 1 1 5 4 5 4 17 1キ +二 十 11+122212+キ + 17 121221111+22 +2+1+17 キ + ++1+++122+十 +十 二 16 2+1211111 11 +1+1 15

マルヽ'マンサク Hanamels,alDoniCa var obtusata l l l l 十 二 十 1 2 2 1 1 + 1 1 15

+ 十 + 1 1 士 + + 1 + + + + 十 十 二5 + + 十 + 1 + 1 1 1 + 十 + 1 15 1 5 1 1 4 4 4 1 + 4 3 3 3 2 14 ミヤマカ■ズミ VIburnum wiごh髄 ヤマウルン Rhus trichocarpa チマキチサ Sasa palmata

功レンキミ Skm a∫apolllCa v htermedla r repens ユ 辛 + 1 2 二 十 1 1 + 1 1 1 + 14

ミズナラ QuercuS mongolca subsp crispula + 1 2 + 1 2 1 1 4 1 1 1 1 2 14

十 ■ 二 十 + + 1 + 1 + + 2 1 1 14 + + 1 + + + + + + 1 + 1 十 二3 ■ 1 2 1 ■ 1 2 2 1 1 + 1 ■ 13 + 1 キ 十 ■ 十 十 + + + 十 十 二2 1 1 2 3 + 3 1 2 + + 1 11 十 ■ 1 1 + 1 1 1 + 1 + 十 ■ + 1 + 10 + ■ + + 10 1+++++21210

ハイイヌカヤ Cepha10taxus haringtonia v nana 1 2 1 1 2 2 1 1 1 + 1 + 12 ハウチワカエテ・ Acer japonicllm + 1 ■ 2 + + 1 + + + + 十 二2

エツiス・リハ DaphniphyⅡum macropodun var humde + 十 ■ + + 十 + 2 1 1 1 11 コハ,テフカエデ Acer deboldlanun 1 2 1 1 2 1 + 1 1 + 十 n ダ ンコタハ'イ 瑾ndeFa Obtusdoba キ + + + 十 + キ I 十 + 十 二l

ヤマホ・ウン 3enthanidla japonica l + 1 1 + 1 + + 二 十 1 11 ツクハ'ネ Zaも e■a integrfola

アワダキ Meとおsma myrlantha

タフミズサ'ク Prunus grayana

ユキクニミツハツツシ Rhododendron nudlpes sub rEphophdun →

Vacclnium japonicum

オオイワカカ・ミ Schizocodon soldanelloides v magnus l

ナナカマド Sorbus∞ mmixta

ムラサキマユミ Euonymus lanceolatus キンキマメサ'ク Prunus incisa var 4nttensis

Fagtl`japonica Carpinus tschonosld

Acer pdmatum var amoenum タンナサワフタギ Symploctls∞rean a ノ 'ハ 'サ Euonymus oxvPhyllus ヤフ・ムラサキ Cahcarpa mo■s ハクウンホ'ク Sちrax obassia 十 + + 1 1 + + 1 + 9 2 1 2 2 2 + 1 1 9 + 1 + 十 十 十 ■ 十 ■ 9 + 1 キ 十 + 0 9 + + 十 十 + + + キ + 9 イヌフサ イヌンテ' オオモミン ′サイカダ ホオノキ 1 2 1 2 3 2 1 1 3 1 1 2 1 1 2 1 2 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 2 + 1 +++■ 1 1 + 12+■ 十 ■ + + 1 1 + 1 1 + + 十 + 1 1 1 + 1 + + キ 1 1 1 + + 十 十 ■ 1 1 ■ 1 1 + 1 キ 1 + ンライトツク Chおnottaphie japonとa 十 + + ■ とメヽ主オ マツフサ ヤマフシ. 十 キ ユ + タン'マタムラノ Sal a onerocalyx アル ヽ夕' ■ex macropoda イタヤカエデ れor mono

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号

(2001) タスノキ カウリンドウ ホンシャクナケ・ ミヤマハハツ ヤマナ'クラ ケヤキ ツノハンハドミ ミスミノウ アズキナシ ツタ功けン トチノイ ヒ'口 'ド ンタ' コマユミ ハンショクツ'ル オンィク.ン'テ.ン タ' ミヤマフユイチコ' コカンスケ' ヒサカキ クラン'ロカ'ン イフ・コウン' アカンテ' ンロタ'そ ノヨコ` ヤフ・ツハ'キ チャホ・力・ヤ ンヤノヒケ・ テイカカス'ラ ネツ持 へ'ニンタ' アセと' キツ・タ クリ スタ'シ'イ エゴノキ コナラ ツクハ・ネタ・ アカカ'シ タフ'ノキ イロハモミン' オニカナワラど ツルウメモト■ シツカ'シ サルト)イハ.ラ ' )ドオン タ)ノツメ アツミカンアオイ イヌツケ' タチンオテ' シュンラン トキフイカリノウ ミンヽ'アケと' セ.ン マイ ヤマ】狩ンン' ノササケ. ミノ'ツ' キクハ'卜'コロ ヨウヤボ'ウキ タチツホ'ス カンスケ' キクハヤマホ・ コハ'ノカ'マス・ チチ.ミ サ・サ トホ'シ'ラ イマイタチンタ' Vacttnium hlmm Tripterosljermum japOnicwn

Rhododendrtt degronianum▼ hond∝nse

醜 Iosma tenuis Prunus jamasa■ura Zelkova serrata Corylus steboldana Anenone hepatta var japOnica Sorbus alnfoLa

nhus ambitta

Aesculus turbinata Fyrrosia lnearれlia

EuottmuS alatus i c■hato dentatus 十 十

Clenatls japoniCa ■ 1

PO15●Odum faurおi +

Rubus hakonensls +

Carex rem■ 照葉樹林帯要素

Euどya japOnica + 1 1 + + 1 2 +

QuOrCus sa■dna l l l l l l l

Ardlsia japonica + + + 十 ■ 1 +

Carphusユaxlflora + 1 1 1 2 +

Neoといca sericea l l + ユ + 十 + 1

■ex pedunculosa + +

Cametta japonica 2 1 1 2 1 1 1 1

Torreya nucfora var radlcans 2 1 + 2 ■ 1 + 1 1

0phiopogon japOnicus + 1 + 1 1 + +

Tlacllolospermum asialleum i interIIledlun l 1 2 + +

LyOnia ov』出隔■a var eLptlca 十 +

正Lyopteris erythとosora 十 + 1 1 1 1 +

Pleris,apOntOa

Hedera rlombca + 1 + 十 +

Castanea crenata l ■ Castanopsis cuspidata var siebold

SけaX japonicus

Qu。lCus serrata

Abeha spathulata QuerCus acuta MachJus thunbergli

Acex palmatum

Arachnlodes simp clor v maJor

Celashus orbicIIiatus 随 伴 種 Sttuthiopteris nlponica Sndax china Ⅲ咀tclle工a undulata Evodlopanax novans

Heterottopa kooyma v rigescens

■ex crenata

Sm』ax nipponica

Cymbidlum goerhg■l

EPinedum semper‐ens

Atebia,fohata

Oshunda japonica

nhododendron obtusun v kaempFeri

Stegnogranha pozoi suも moLssina

Dloscorea Septemloba

P似けa SCandens

Vlola grypo∝ras

Carex morrow壁 Synurus palmaぬ ∬nhattdlls Vlburnum erosum vaEI punCtatum

Oplsmenus undula鵡 us v japonicus

Festuca par gluma

ELvoDteriS varia var setosa

十 + 3 + + 3 1 1 3 3 3 + 3 1 3 3 1 3 + 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 2 1 2 2 + + 1 16 1 1 1 2 ■ 十 + キ 15 1 1 + 1 二 十 ■ 1 1 1 十 ■ + + 13 1 2 1 3 1 1 12 + 1 10 1 + 1 1 二 十 + 1 10 1 1 10 ■ 10 7 1 + 7 1 1 二 十 二 ″ 7 十 + 1 1 + 1 2 7 1 + + 5 + 1 5 + 4 1 1 1 4 1 + 4 + + 3 1 3 2 2 2 + 1 二 十 1 1 1 1 1 1 1 1 ■ 1 1 + 1 + 1 + 1 1 + 2 1 2 1 + + + + 1 ■ + 十 十 + 2 + 二 十 ■ 1 1 + 2 1 + + + + 十 + 1 1 1 + 十 ■ 十 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 + 1 + + 十 十 + 十 + キ + + + 二 十 + + 1 + ■ + 1 1 1 1 1 1 + + 十 + 1 1 ■ 2 キ 18 + 16 16 2 15 13 12 11 9 9 8 6 6 5 5 4 4 4 3 + 3 2 2 2 2 0 二 十 2 + + 2 1 鐘 尾 以外 の調査 地 はすべ て浜坂 町 出 現 頻 度1の種 は省 路

(8)

118

清水寛厚・矢野孝雄 :兵庫県北但馬地域における低位ブナ林 とその存立条件

1984)を

改変 してCI月数で除 して相対値化 して調整 した値 を計算 し

,鳥

取市 を基準 として積雪度 合いを示 した。ただ し

,大

屋および岩井では降水量データだけしか得 られていないので

,単

純 に12 月か ら2月までの降水量を比較 した。 これによると,M/1はいずれ もブナ林が形成 される暖か さの指数領域である85を 越 えてお り

,照

葉樹林帯域の中に包含 される。一方

,鳥

取市 と北但馬地方 の中間に位置す る岩井は鳥取市 と比較す ると

M,CIと

もに低 く

,北

但馬地方の中央部の海岸 に位置す る香住では寒 さの指数はやや高めでは あるが,lVIは低 い。 また

,両

者 とも積雪比は高 く

,積

雪の多 いことを読み とる ことがで きる。気 象データは存在 しないけれ ども

,ブ

ナ林が残存す る久斗 山についてあえて推測す るな ら

, M/1,CI

ともかな りな低下が予想されよ う。 ともあれ

,

この地域は積雪が多い上

,植

物生育期間の間は比較的に冷涼であることが推測でき, 現在の気候は照棄樹林帯域 に入っているとはいえ, この気候環境が遺存ブナ林 の存続 を支援できた ものと示唆されよう。 表

3

北但馬地域および鳥取市のアメダス気象データ (1979/1981-2000)

観狽J地点 Jun Feb Mar. Ⅲl May 」u■ 肌 荊5 Seμ od Nott Dea FFH繁 M S引 殆 数Ply比

(3m)降水量 香住 気温 (6m)降水量 村岡 気温 (220m)降水量 和 田山 気温 (80■)降水量 大屋 降水量 (150m) 温泉 降水量 (58m) 岩井 気温 (19m)降水量 30 65 198_5 1352 42 7 1731 1304 13 4.4 2144 1543 22 59 1107 1135 1276 1248 2043 1455 8418 35 1138 -1 4 3001 12 123 172 214 253 265 219 158 106 56 141 1131 -39 101 1355 1583 1754 1188 2381 1595 1573 1723 19834 2 弘   n m   止 9   は   08 丘 ︲6   ︲3 6︲ ■ 研   2 0 ︲6 27   ︲5 24 259 121 4 245 144 257 1286 ︲ 20   152 9 90 97 2︲2 169 211 247 126 1 1727 181 7 1358 1705 1936 1445 1343 1645 2022 141 1 212 151 2066 1171 228.6 1211 261 1864 争 雖   ■ 飢   8   64 . 124 97.1 20735 134 1071 15104 16644 23132 -92 1869_9 78 -56 5495 23 3325 06 7524 14 -32 3825 16 -20 2403 1 0 35 33 64 117 163 204 242 253 212 156 109 62 138 1082 2ユ1 3 1473 142 1169 1489 1716 2047 137 2662 1754 2054 2158 21145 鳥取 気温 40 40 73 128 175 216 255 268 223 165 ■5 68 147 1186 (7■)降水 量 2005 1199 1323 ■38 1404 1574 2061 1179 222 1522 1581 1777 19382 WI(暖かさの指数):5℃以上の月平均気 温を5℃ を引き積 算 CI(寒 さの指数 ):5℃ 以下の月平均気 温を5℃ を引き積 算 SD1/月数:CIに CIを示す月の気温を乗 じた値 をCl月数 で除した相対値 積 雪比:,儲取を基準としたSD1/月数値の比率

中国地方∼近畿地方北西部 における主要林相 の変遷史 と現植生

次節で北但馬地域における低位ブナ林の存立条件 を考察するのに先だって

,本

節では

,中

国地方 ∼近畿地方北西部 に視野をひろげて主要林相の変遷史 と現植生を記述す る。

1.山

陰東部 ∼近 畿北 西部 にお ける主 要林相 の変遷 史 最終氷期以降の大規模な気候変動 と人為的改変の結果

,

日本列島の植生は

,

この2万 年 の間に劇 的な変貌 をとげた (亀井・ ウルム氷期以降の生物地理総研 グループ,1981)。 北但馬地域 に近接す る福井県三方五湖 (図

4A)│こ

おける花粉分析 を中心 とした安田

(1982,1984,1985,な

)の

一 連の研究 をはじめ

,古

植生に関する多 くの研究 にもとづ くと

,中

国地方∼近畿地方北西部 における 主要林相の変遷史は次の5つの段階に区分 され る (図3)。

(9)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号

(2001) 119

1)ツ

ガ属―五葉マツ亜属林 (21,000∼ 12,000年 前 :後 期 旧石器時代) 最終氷期後半の亜氷期 には

,ツ

ガや五葉マツを主 とす る寒冷―乾燥気候 を指標す る林相が広 くひ ろがっていた。 この期の気候が寒冷であつたのみな らず

,乾

燥化 していたのは

,海

水準低下 によっ て 日本海への対馬暖流の流入が33,000年 前以降は途絶 し (小泉

,1981),気

温 と表面海水温 の較 差が小さくなったために

,海

面か らの蒸散が抑制 された結果である。 こうして

,と

くに冬季の積雪 量が減少 し

,寒

冷な大陸性乾燥気候が支配的 となった (安田,1985)。 詳細 にみると

,次

の2つの 期間で林相 にい くぶんの変化があつた。

a.最

終氷期最寒冷期 (21,000∼ 18,000年 前

)

最終氷期 のなかで もっ とも寒冷 な期間であ り (安田

,1982),年

平均気温は現在よ りも7∼ 8℃ほど低 く

,海

水準は

-100m付

近にあった (図

3:

安田・成 田,1981)。 ツガ属・五葉マツ亜属花粉 の優 占的産出に加えて

,モ

ミ属・カバ ノキ属な ど が産出す る。 中国脊梁山地の山頂部 には

,亜

寒帯針葉樹林が成立 した (安田,1985)。

b.温

暖化のは じま り (18,000∼ 12,000年 前

)

ツガ属・五棄マツ亜属花粉の産出率が減少す る とともに (図

3),ニ

レ属 十ケヤキ属およびカエデ属が増加す る。 この変化 は最寒冷期後 の温暖化 のは じま りを示すが

,12,000年

前の年平均気温は現在 よ りも5℃程度低 く

,海

水準は

-50m付

近 に あった (図

3:安

田・成田,1981)。 この期 の温暖化 の開始 と同時にブナ属がわずかなが らも出現 することは

,ブ

ナが先の最寒冷期 にも海岸低地な どにわず かな林分 を維持 していた可能性 を示唆す る (安田,1985)。

2)ブ

ナ林 (12,000∼6,500年 前 :縄 文時代草創期∼早期) 晩氷期 の12,000年 前頃 を境 に

,

日本海側 の多雪地帯 (新潟・北陸・ 山陰東部

)を

中心 にブナ属 が急増 し

,鈴

鹿山地・紀伊山地・四国山地の北西斜面な どに孤立分布する準裏 日本側気候区 (鈴木,

1962)で

もブナ属花粉が増加す る (安田,1985)。 この事実は

,海

水準上昇によって11,500年 前 (大場ほか

,1980)に

は対馬暖流が断続的なが らも日本海へ流入 しは じめた結果

,①

日本海側 にお ける冬季の降雪量が急増 したため, 日本列島に湿潤な海洋性気候が成立 し

,②

出現 した多雪地帯 に ブナ林が急激 に拡大 した ことを示す (図

3:安

田,1982)。

a.海

洋性気候の出現 (12,000∼ 8,500年前

) 12,000年

前頃に急激 に増大 しはじめるブナ属は, 大型遺体 にもとづいて母樹がブナであることが明 らかにされている (森川・橋本,1994)。 ブナ属 にやや遅れて

,コ

ナラ亜属・オニグル ミ属・ トチ ノキ属 も増加 し

,8,500年

前頃にはブナ属 とヨナ ラ亜属の出現率が ともに

30%前

後 にも達 した (安田,1982)。

b.海

洋性気候の確立 (8,500∼ 6,500年前

)

こうして8,500年前までにはかな り温暖化 したが, それで も年平均気温は現在よ りも2∼ 3℃ほど低 く

,海

水準は

-20m前

後 にあった (図

3:安

田 。成 田,1981)。 約8,000年 前に対馬暖流が 日本海へ本格的に流入 しは じめた ことが

,海

底堆積物か ら 明 らかにされている (大場ほか

,1980;新

井ほか,1981)。 いっそ うの温暖化がすすむにつれて, ブナ林は西 日本の低地か らは減少 し

,中

心が東 日本へ移動す る (安田,1985)。 相補的にナ ラ類・ ク リな どを中心 とす る暖温帯林が拡大す るとともに (森川・橋本

,1994),ス

ギ属花粉 が増加 し (図3), ツバキ属 。シキ ミ属な ど暖帯要素が現れ

,

日本列島の海洋性気候が この時期 に確立 した (安田,1982)。

3)照

葉樹林 (6,500∼5,700年 前 :縄文時代前期前半) 最終氷期以降の最高温期 をむか え

,年

平均気温 は現在 よ りも1∼2℃ 高 くな り (安田・成 田,

1981),海

水準上昇 によって 「縄文海進」がお こつた (図3)。 気候の温暖化 と冬季の積雪量の減少 がブナ林 を後退 させ

,西

日本ではブナ林が山地頂部 に孤立分布す るようにな り

,東

北 日本の低地で

(10)

120

清水寛厚・矢野孝雄 :兵庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とその存立条件 もブナ属 の出現 率 が減 少 した (安田,1985)。 コナ ラ類・ ク リな どか らな る暖温帯要素 も減少 し, かわ って アカガ シ亜 属・ シイ ノキ属・ ツバキ属 。モチ ノキ属 な どが増す るとともに

,ス

ギ 属 の産 出 は高率 で

,微

増 傾 向 を維持 した (図3)。 日本海側 の照葉 樹林 は

,若

狭 湾 沿岸 までは平野 部 を広 く 覆 い

,北

限は富 山湾付近 にあった (安田,19841。 よ り北方 ではナ ラ・ ク リ林 が沿岸部 まで生育 し ていた。 年代尺度 時 代 区 分 海水準変動 気候指標 主要 林 相 指標花粉 ダイアグラム yF´ 〃摩 │ 図

3

山陰東部∼近畿北西部 におけるブナ林の成立過程

海水準変動 (8Ka以前:Saito,1991;安 田

,1985,8Ka以

後 :豊 島

,1978,対

馬暖流 :安 田

,1985,海

水準尺度の±

10m区

間は2倍 に強調

),古

気候指標 (安田

,1982),主

要林相 (森川・橋本

,1994に

加筆

),指

標花粉ダイアグ ラム (安田

,1984を

簡略化。14∼

10 Ka

は堆積物が欠如 しているが

,隣

接す る鳥浜貝塚では11,180±180年前の望C年代層準 におけ るブナ属花粉 出現率は

20%前

後である :安 田

,1982)

4)ス

ギ林 (5,700∼2,000年 前 :縄 文時代前期後半∼弥生時代中頃

)

最高温期 をす ぎると , 照葉樹林 を構成す るアカガ シ亜属・ シイノキ属が減少 しは じめる (図3)。 スギ属は旺盛 に繁茂 し つづけ

,山

地ではブナ林が拡大傾向にあった。

a.気

温の漸減 (5,700∼2,500年 前

)

スギ林 にコナ ラ類・ニ レ・ケヤキ・ ク リなどが混生 し , 気温 の漸減 に ともなって

,沿

岸部 を占める照葉樹林要 素は しだいに矮 性化 。内陸型化 (安 , 198つ することによって

,積

雪の断熱効果 を利用 して冬の寒 さか ら保護 されて生き残った (大 , 1985)。

b.冷

涼―湿潤化 (2,500∼2,000年 前

) 2,500∼

1,500年前 (海津

,1994:縄

文時代晩期∼弥生 大 睦 性 乾 爆 気 候 海 洋 性 湿 潤 気 候 ツガ ・ ゴ ヨ ウマ ツ林 │ プ ナ林 ナラ・クリ林 目葉智44 スギ林 睦盤 判人華渉林

(11)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号

(2001) 爾 囚   園 国 □ 囲 圏 園ヨナラークリ41 ブナ林 ,

獅蜘 ゆ ∞ 図

4

中国地方∼近畿地方北西部の植生分布・最深積雪分布および大地形

A:植

生図 (森林立地懇話会

,1972を

簡略化

), B:最

深積雪分布 図 (森林 立地懇話会

,1972), C:接

峰面図[等高線間隔

200m](岡

,1969)

腕獅 ゆ 。

(12)

清水寛厚・矢野孝雄 :兵庫県北但馬地域 における低位ブナ林 とそ の存立条件 時代 中期

)に

は年平均気温が現在よ りもい くぶん低 くな り,「弥生の小海退」 が現 出 した。 この期 の冷涼化 にともなって冬季の積雪量が増加 し

,ブ

ナが

,繁

茂をつづけるスギ属 と競合 しなが ら

,ス

ギが拡大できなかった ところへ拡大 した (安田,1985)。

5)人

為的干渉林 (2,000年前∼ :弥 生時代中頃以降) 二菓マツ亜属が著 しく増加す るとともに (図

3),わ

ずかなが らもソバ属やイネ型花粉が出現 し, 人為的干渉が顕在化 した ことを示す。 完新世 には

,広

域植生に本質的な影響をあたえるほど大規模な気候変動がなか ったにもかかわ ら ず

,原

植生の大半が

,現

在 までのわずか数千年のあいだに人為的干渉 によって代償群落 になって し まった (宮脇,1977)。 すなわち

,低

地での稲作農耕が本格化 した弥生中期以降 (化学肥料 の利用 以前

)に

,農

地の拡大にともな う自給肥料用の採草地

,屋

根葺用のススキ草原

,柴

刈・薪炭用 の 雑木林 (クヌギーコナ ラ林

)な

どとして

,農

耕地面積 の2∼ 6倍もの森林がそれ らの用途 に供 された。 こうして1900年代は じめまでには

,農

業活動 を考 えただけでも日本の国土 の

80%以

上が代償植生 におきかえ られた, という。 ブナ林 に注 目すると

,江

戸期∼昭和初期 には木地屋が北海道 を除 く全国に展開 して

,お

もにブナ 帯に生えるブナ

,

トチノキ

,ク

リな どの樹木 を利用 した。近畿以西のブナ林はひろく蚕食され

,ほ

ぼ全域 にわたって二次林化 したものの

,木

地屋 による林相の改変は緩慢であった。それは

,皆

伐す ることな く

,伐

るべき木 を1本

,1本

選 んで択伐 をお こない

,木

地屋たちが保護・再生 に努めなが ら森林 を賢明に利用 してきたか らである (中川,1985)。 近代化 にともなって生産が拡大す るにつれて

,木

材需要 も増大 した。明治・大正期 にはブナ材の 工芸的・工業的利用がすすみ

,第

2次 世界大戦中の軍需 によってブナ伐採量が急増 した。 また

,大

正期∼戦後復興期 には

,家

庭用・工業用薪炭の需要が拡大 した。ブナ材は

,ナ

ラ・カシ材 を使 った 樫炭 に比べると火力が弱 く

,火

持ちがわるいものの

,薪

炭用 にも利用 され るようになった (斎藤, 1985)。 戦後

,ブ

ナ伐採量が急増す る。それは

,高

度経済成長 にともなって

,建

築用材 (とくにフロー リ ング肋日工床材

]),鉄

道用枕木

,家

,積

層材

,半

端材

,パ

ルプ

,チ

ップ

,ナ

メコ栽培原木

,な

ど の多様な用途 にわたって需要が拡大 したか らである (斎藤,1985)。 この過程でブナ林の著 しい皆 伐型破壊がすすみ

,伐

採地 には

,当

時 としては経済効率が高いと判断されたスギや ヒノキが植林 さ れた (安田,1985)。 こうしてブナ資源が枯渇 し

,ブ

ナが高級材化す ると

,他

の樹種 と同様

1970

年頃を境に伐採量が急減 し

,そ

の後は木材需要の大半を輸入材 に依存することになった。

2.中

国地 方 ∼近畿地 方北西部 にお ける現在 の植 生 日本列島の植生は

,気

候 を生育要因 として トウヒーコケモモクラス

,ブ

ナ クラス

,ヤ

ブツバキク ラスの3植 生クラスに区分 され

,そ

れぞれ亜寒帯常緑針葉樹林帯

,冷

温帯夏緑広葉樹林帯

,照

葉樹 林帯 として水平・垂直的に林帯 を形成 している。 中国地方∼近畿地方北西部では

,二

次林化・植林 化がすすみ, 自然植生 として残存す るのは山地帯のブナクラス

,お

よび沿岸∼丘陵部のヤブツバキ クラスに属する自然林が ごく限 られた地域 に残 されているにすぎない (図 4 AJ。 ブナ林は深山にあることもあってか

,原

生林的 自然林 と呼称 されることが多 いがが

,か

な り人為 的影響 を受けているものがほとんどであ り, 自然植生 とはいって も

,次

の理 由か ら

,そ

れはかな り 二次林化 した ものであると考 え られている。 ブナ林 にはササ属のササが付随 し

,ブ

ナーチマキザサ 群団

,ブ

ナーチマキザサ群団

,ブ

ナースズタケ群団な どとブナクラスの上位単位名 にササが冠 されて

(13)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号 (2001) 123

いるが

,サ

サの付随が 自然度 の高さを示す ものではない。む しろその逆であ り

,た

とえば

,ブ

ナ林 に孔状地 (ギャップ

)が

できた場合

,経

年的に急速 に繁茂す るササ群落がブナの稚首 を圧迫 し

,ブ

ナ林の更新 を阻害す る存在 となっている。ブナの原生林 に近 い自然林では林床 にササ属が少な く, ブナの若齢木∼老齢木が混生す る年齢構成が成立 していることか らみると

,多

くのブナ林 の林床 に 繁茂す るササ属の多 くは人為的干渉 によってブナの森が疎林化 した結果 にほかな らない (西口, 1996)。 ササ属 のササ類は積雪 との対応が顕著 (鈴木

,1978)で ,積

雪 を重要な環境要素 として 発達す るブナ林 に呼応 している。近畿北部∼中国地方ではチシマザサ とチマキザサが主要なササ属 であ り

,前

者は北東部

,チ

マキザサは南西部 に偏在す る傾向が認め られ る。 ヤブツバキクラスの自然林は

,山

陰中∼東部の岩石海岸∼沿岸 山地 (島根半島

,北

但馬海岸

,舞

鶴湾周辺山地

,お

よび, 日本海側での北限である富山湾沿岸

)に

,断

続的なが らも帯状 に分布す る。 近畿地方の中央部では

,箕

面丘陵∼比良山地南端

,生

駒 山地な どにもみ られる。 これ らの照葉樹林 は

,降

水量

,冬

期降水量

,気

,潮

風な どの気候 因子 に対応 して細分 され る (中西 ほか

,1979:

図4-A)。 人為干渉林 として

,中

国脊梁 山地や丹波・比良山地 な どのコナ ラーク リ林 に加えて

,中

∼低 山域 にはアカマツ林が広がっている (図4A)。 コナ ラーク リ林 には

,ブ

ナ林起源 の二次林 と考 え られ る ものも多い。前述のとお り江戸期∼昭和初期には木地屋 による二次林化がブナ林のほぼ全域 にわたつ て起 きて いた ものの

,木

地屋集落の分布記録 にもとづ くと

,現

コナ ラーク リ林の分布範 囲にブナ林 が保護・再生されなが ら依然 として成立 していた (中川,1985)。 ところが,‖たた ら製鉄‖にとも なう伐採や

,明

治以降 (とくに戦後

)の

皆伐型伐採林業がすすめ られた ところでは

,そ

のほとん ど がコナ ラークリ林やスギ植林 に改変された (図4A)。 アカマツ林 のうち

,ア

カマツーヤマツツジ林は山陰中―西部 の中∼低山域

,丹

後半島∼舞鶴湾周辺, 福井県敦賀∼三方地 区に

,ア

カマツーモチツツジ林は山 口県 ∼中国山地 の山陽側 (吉備高原∼播磨 高原

),瀬

戸 内海の島嶼部

,近

畿地方 の丘陵地な どを占めている。 これ らのアカマツを主要素 とす る人為干渉林は

,林

床の落葉層が失われて林地が露出す るにいたるまで に人為的あるいは山火な ど によ り破壊 された後 に成林 した ものであ り (西日

,1993),"マ

サ土Wからなる土壌層が露出 しやす い山陽∼瀬戸内の花南岩地帯では とくに広 く分布す る。一部 には沿岸部のクロマツや内陸部 に残 る アカマツの自然林 もあろうが

,今

日では植林 と区別ができな くなっているものも少な くない (森林 立地懇話会,1972)。 そのほか

,人

為植生 としてはスギ・ ヒノキ植林

,田

畑・果樹園等 に広大な面 積が改変 され利用 されている (図4A)。 以上のように

,中

国地方∼近畿地方北西部の現在 の植生は

,主

要林相の歴史的変遷の現時間的断 面 にほかな らず

,古

環境の変遷や人為的改変な どの影響下で

,歴

史的に形成されてきた重層的な構 造 をもっている。海抜

150m付

近 にまで降下 して残存 している北但馬地域の低位ブナ林 も

,小

規模 なが ら

,重

要な構成要素の1つである。次節では

,上

述 した ことが らを総合 して

,低

位ブナ林 の存 立条件 を考察す る。

V

北 但 馬 地 域 に お け る 低 位 ブ ナ 林 の 存 立 要 因 晩氷期∼後氷期初頭 (縄文草創期一早期

)の

著 しい温暖化 と海水準上昇によって対馬暖流が 日本 海に流入するようになった結果

,中

国地方∼近畿地方北西部のほぼ全域がブナを中心 とする冷温帯 落葉広棄樹林によっておおわれた。 ところが

,小

寒冷期を挟むものの照葉樹林にそれ らの位置を奪

(14)

124

清水寛厚・矢野孝雄 :兵 庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とその存立条件 われ

,現

存す るブナ林は中国脊梁 山地や大山火山な どを中心 とする山地部 に追われていき

,さ

らに は人為干渉の影響拡大 に飲み込 まれて今や山地の山頂部や稜線部付近に孤立的な分布状況に追いや られている (図空A)。 しか し

,前

述 してきたよ うに北但馬地域 の数地点 にお いては驚異的な低標 高地 にブナ林が遺存的に残存 しているのである。

1.レ

リック (遺存

)化

の過 程 と現 生ブ ナの下限 高度 兵庫県北部 の北但馬地域では標高

150mに

までブナ林が現存 し

,か

つて中国地方∼近畿地方北西 部の低 い高度 にまでブナ林が広 く分布 していた頃のお もかげを今 日に伝 えている。 この低位ブナ林 が レリックとして今 日まで存続す るには

,①

縄文時代前期前半 (「縄文海進」期

)の

温暖化 に抗 し て地形的高所への後退 をできるだけ小さくくいとめ

,縄

文晩期∼弥生時代 中頃 (「弥生の小海退」 期

)の

寒冷―湿潤期 には分布 を低所へ向かうて拡大 し

,②

そ の後 の温暖化 の過程で も地形的低所 に とどま り

,さ

らに

,③

著 しい人為的改変 を免れる, といった3段 階の歴史的プ ロセスをた どったは ずであ り

,い

ずれ を欠いて も低位ブナ林は存立 しえない。 紀伊半島か ら能全半島の 日本列島横断地帯 において現生ブナの分布調査 をお こなったKure al■

d

Yoda(1984)に

よると

,大

平洋側では下限海抜高度が

700mか

500mへ

しだいに低下す るのに 対 して

,裏

日本気候 区に入 ると急激 に

150mま

で低下す ることを実証 した。同様 の著 しい下降現象 は鳥取県∼山形県 の各地にも認め られ

,多

雪地域 における一般的特徴 と考え られている (服部ほか, 1979)。 この下 降現 象 を暖か さの指数

(WI)で

み る と

,90∼

92か ら100∼ 110への急 増 とな り

(Kure al■

d Yoda,1984),ブ

ナの生育域が高ⅢⅢ唖側へ不連続的に拡大 しているわけである。北但馬

地域の低位ブナ林 の下限標高は

150m,WI値

は100∼ 110であ り, ともに裏 日本気候 区における一 般的な指数値 に相 当する。

太平洋側の気候 区と比較 した場合

,裏

日本気候区が もつ顕著な特徴は冬期の積雪であ り

,脊

梁 山 地 を境 に積雪量が比較的急激 に変化する (鈴木

, 1962:図

空B)。

Kure alad Yoda(1984)は

,

ブナの下限高度 とさまざまな気候 因子58個 について重回帰分析をお こない

,冬

期の降水量 (Pw) と寒 さの指数

(CI)の

積 の絶対値

(IPw・

CI I)がブナの下限高度分布 をもっ ともよ く説明す る ことをみいだ した。そ して, この絶対値が積雪 日数 と高 い相関を示す ことか ら, この値 を積雪 日数 指数 (snOwdrifts duration index:SDI)と呼んだ。

2.北

但 馬 地域 にお ける低位 ブ ナ林 の存 立条件 現生ブナ林の下限高度 を支配す る気候因子SDIを 考慮 して

,北

但馬地域の低位 ブナ林存立 にかか わる3段 階の歴史的プ ロセスを整理 しなおす と

,結

局の ところ

,3つ

の要素―①多雪域 におけるブナ 生育域の高

WI側

への拡大

,②

北但馬地域の多雪性

,な

らび に

,③

人為的改変 の軽微性 が

,低

位 ブ ナ林が現存す るための必要条件であることがわか る。以下では, これ ら3つの要素を中心 に

,北

但 馬地域の低位ブナ林の存立条件 について考察 をすすめる。

1)ブ

ナ生育域の高WI側への拡大 ブナは

,北

海道渡島半島の黒松内低地帯西縁か ら鹿児島県大隈半島の高隈山まで分布 し

,

日本 の 冷温帯林のもっとも代表的な構成種であ り

,極

相林 を形成す ることか らブナ帯 ともよばれ る。裏 日 本∼準裏 日本気候 区 (鈴木

,1962),

とくに裏 日本気候 区の多雪 (衰雪

)地

帯 に適応 した樹種であ る。尾根筋な どの乾燥劣悪地 を除 くと

,高

木層を圧倒的に優 占して

,

しば しば純林 を形成す る。 同 じブナ帯で も

,大

平洋側 (準裏 日本気候区

)の

高木層では

,ウ

ラジロモ ミやツガな どの針葉樹や多

(15)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号 (2001) 125

種の広葉樹の勢力もつよ く

,ブ

ナだけが優 占す ることはない (西日,1996)。 このように

,ブ

ナが冷温帯 のうちで も, とくに多雪地帯へ著 しい適応 を遂げている事実はひろく 知 られていて

,そ

の理 由について も多 くの議論がお こなわれてきた。多雪域 においてブナが高4/1 側へ生育域を拡大す るメカニズム には

,お

そ らく多 くの因子が複雑 にかかわっているもの と予測さ れるが

,そ

れ らの中で とくに重要な役割 をはた している因子 として

,少

な くとも次の3つの要 因が 含まれるものと筆者 らは考えている。

a.積

雪移動への耐性

積雪 ク リープや雪崩な ど

,斜

面方向への積雪移動 に起因す る植生破壊 作用への抵抗能力は

,樹

木の耐雪性 を決定す る主要な因子である (四手井,1985)。 すなわち

,高

木樹 といえども

,幼

木の期間を積雪の移動圧 に耐えて御旬形をとり得るか否かが

,樹

木の耐雪性 を 決定す る1つの要件 になっている。冷温帯ではツガ・ ヒノキ・ ウラジロモ ミな どの針葉樹は雪害に 弱 く

,逆

,落

葉広棄樹は一般 に雪害 に強い。 とくにブナの場合は

,旬

旬形か ら直立形 に移行する 屈曲部の幹断面が三角形 にな り

,積

雪の移動圧 によ く耐えることができる。 しか も, このような根 元曲が りは成木 に成長す るまでの間に外見的にはほとんど分か らな くなる (西日,1996)。 積雪移動に対す る耐性は

,積

雪 日数指数 (SDI三 十Pw・ CI I)力ゞ大 きいほ ど

,相

対的 にそ の効 果が大 きくなる。

Kure and Yoda(1984)は

,近

畿∼北陸地域 におけるブナの下限高度がSDIに 規制されているとしたが

,ブ

ナのもつ耐移動圧性は この推論 と調和的である。他の樹種が成長 しに くい多雪域では, この耐性がブナの生育域 を高

WI側

へ拡大する因子 として機能 したのであろう。

b.大

型動物 による食害

ブナの稚苗・幼木 のほとんどは, ノウサギやニホンジカな ど大型動 物 による食害は じめさまざまな原 因によって

,樹

齢20年 (樹高

2颯 )に

達す るまでの幼年期 に死 滅する (西日,1996)。 裏 日本気候 区の多雪は

,大

型動物の食圧 を軽減 させ, さらに

,春

先 におけ る萌芽後の低温 に弱い (阪口

, 1982)幼

木 を保温す ることによって

,幼

年期 における高い死滅率 を低減 させる。冬期 の積雪は

,大

型動物 とのかかわ りの点で も

,ブ

ナの生育域 をよ り高

WI側

へ拡 大する方向に作用 しているのであろう。

c.極

相林の形成・維持力

陽樹が樹林 を形成 して林内が暗 くなると

,暗

い林 内で も発芽・生 育できる陰樹 (冷温帯ではブナ

,

トチ ノキな どの落葉広葉樹

)が

優勢にな り

,や

がて

,冷

温帯域で は同樹種の世代交代 を持続 しうるブナ を優 占種 とす る極相林が成立す る。上記 の2因子 によって生 活圏が高ヽヽ唖側へ拡大 した場合

,ブ

ナの極相林形成能力は

,拡

大 した生育域 を安定的 に維持す る機 能 として働いているのであろう。 ちなみに

,ブ

ナが もっ とも活発 に成長す るのは樹齢100∼200年の期 間であ り

,寿

命は

400年

に 達す る (西日,1993)。 極相林 をなす青森県森吉山では

,樹

冠木 の平均樹齢が207年と算 出された (Nakattlizuka 19841。 ブナは このように

,他

の高木・亜高木広棄樹 に比べて長寿命であ り

,

こ の長寿性 も極相林の形成・維持 に貢献 している。

2)北

但馬地域の多雪性 裏 日本気候区は 「西高東低 の気圧配置のときに降水のある地域」(鈴木

,1962)と

定義 され

,そ

の南西縁は若狭湾か ら丹後半島南縁 に上陸 し

,中

国脊梁山地の東部 を斜断 しなが ら西進 したあ と, 北へ屈曲 し

,毛

無山 。大山 (図

4C)を

経て 日本海へ入る。北陸の衰雪地帯よ りも西では (図

4B),

鳥取/兵庫県境の氷 ノ山 (標高

1,510m)を

中心 に最大規模の多雪地帯があ り, 100cmの最深積雪等 値線が北但馬海岸近 くにまで広がっている。 裏 日本気候区の西端部付近の中で, この地域が最大の多雪地帯 になっている主な原 因は

,氷

ノ山 を中心 とする山塊が大 きい面積 (東西

45km×

南北

70km)と

起伏量 (∼

1,500m)を

もっているた

(16)

126

清水寛厚 。矢野孝雄 :兵庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とそ の存立条件 め

,冬

期 の北西 の季 節廠 瀾 囲にわたっ て よ り高 く強制上昇 させ られ るか らで あ る (図5)。 氷 ノ 山 を中心 とし

,中

国脊 梁 山地 か ら日本海沿 岸 に いた る南北方 向 の地形的隆起部 (図

4C)(以

下 「氷 ノ 山山塊」 と呼ぶ

)の

中 ∼ 南 部 に は 標 高

1,000m以

上 の8峰 が 集 中 し (図1), ∼ 持 神 鋼 火 山群 易 ノ 山火 山 岩 類 鮮 新 ―更 新 統 火 山岩 類 照 木 層 群 600れ 接峰面等高線 (m) 0 10 20 30 km i : I I 図

6

氷ノ山山塊における後期中新世∼第四紀火山岩類の分布 (接峰面図[等高線間隔200m]:岡 山

,1969,火

山岩類分布 : 地質調査所

,1992に

もとづ く)

粋 栞山

%

。 メn 図

5

氷 ノ山 山塊 の地形 鳥lFA図 (国土地理院

,1997か

ら編 図) この隆起塊は小畑 (1991)イ こよつて 「三室山塊」 と名づけ られたが

,本

論文で いう 「氷 ノ山山塊」 が北但馬海岸 までを含む地形要素である点で相違す る。 中国地方の接峰面図をみると

,そ

の中軸部 を東西に縦走する比較的明瞭な高度不連続がみ られ, 北へ凸に緩やかな弧 を描 く (図4C)。 この高度不連続 を境 に

,中

国地方 の大地形は南半部の吉備 高原 と北半部の中国脊梁 山地 に二分 される。吉備高原は海抜300∼

600mの

広大 な隆起準平原で, 広 島湾 の西側では

,秋

吉台周辺 の周防高原 (小沢

, 1925)に

つづ く。 中国脊梁 山地 (山頂高度 1,000∼

1,200m)は

,そ

の背面が 日本海側へ北傾斜す る傾動地塊である(図5)。 傾動地塊 の南縁 は 高度不連続 に沿って断続す る縦走断層群[美作衝上断層 (河合

,1957)な

ど]に境 され

,北

縁は島根 半 島 南 縁 の 断 層 群[大社 衝 上 断 層 (多井

, 1973)な

ど]とそ れ らの 海底 延長 に限 られ る。 吉備 高原 の 隆起 な らび に中国脊 梁 山地 の傾 動 隆起 は ともに

,鮮

新 世 のあ る時期 には じま り

,第

四紀 を通 じて進行 した (矢野 ・ 吉谷,1998)。 中国脊 梁 山地 の他 の部分 に比 べ て氷 ノ山山塊 が よ り大 きな起伏量 を もつ のは

,鮮

新 世 には じまる 中 国脊 梁 山地 の傾 動 隆起運 動 に加 え て

,中

新 世 末期 以 降 く りか え し火 山活 動 の舞 台 にな ったか らで あ る (図6)。 す な わ ち

,中

新 世 末 期 ∼ 鮮新 世 には

,マ

グマ性 隆起運 動 に つづ いて陥没・火 山活動が発生 し, 隆起 頂部 に照木 層群堆積 盆地 が形 成 され た (吉 谷 , 1982)。 鮮 新 ―

β オ ″

(17)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

3巻

1号 (2001) 127

更新世 には

,玄

武岩質安 山岩∼玄武岩が氷 ノ山か ら日本海沿岸 にいたる40km以上の範囲に流 出 し, さ らに更新世 中期 まで の間 に火 山体地形 を一部 に残す扇 ノ山火 山岩類が噴 出 した (岡田ほか,

1982;岡

田,1987)。 さ らに

,後

期更新世には

,氷

ノ山山塊北部 の東側山腹 に神鍋火 山群 (古山,

1973)が

活動 した。 こうして

,マ

グマ性隆起運動や火 山体形成が くりかえされた結果

,氷

ノ山山 塊の起伏量が増大 した。 北但馬地域の多雪性は

,以

上のように氷 ノ山山塊 の大きな起伏 によって もた らされ

,そ

れは 中国 脊梁山地の鮮新世以降の傾動隆起運動 と中新世末期以降の累積的火山活動に由来す るものと推論 さ れる。

3)人

為的改変の軽微性 北但馬地域では

,大

きな起伏 をもつ氷 ノ山山塊が 日本海に迫 り

,連

続的な岩石海岸 をつ くるため, 平地が少な く

,お

のず と人 口密度 も小さい。前述 したように

,弥

生中期以降に本格化す る稲作農耕 にともな う採草・柴刈`薪炭な どによる人為干渉の程度 も

,北

但馬地域においては相対的に軽微で あった と推論 される。 山地 に展開した木地屋集団 も

,他

地域 と同様

,30年

(∼100年

)の

期間 をお いて回帰 し

,ブ

ナ林 を保護・再生 しなが ら利用 した ことが

,記

録 に残されている (渡辺,1977)。 中国地方中∼西部の脊梁 山地 を中心 にした地域では

,江

戸∼大正期の300年あま りにわたって, ‖ たた ら製鉄‖が行われた (岩永

,1978;貞

方, 1996)。 その結果

,砂

鉄 の採掘や燃料用 の木材資 源生産 によって著 しい二次林化が進んだ。 山陰東部では ‖たた ら製鉄‖の影響が相対的には軽微で あり

,北

但馬地域 における低位ブナ林の存統 に1つの好条件 となった と考 え られる。 戦後 におけるブナ林の皆伐型伐採 とスギ, ヒノキ

,ア

カマツ植林は

,前

述のようにブナ林 の改変 を決定的なものにした。 このようななかで

,北

但馬地域 のブナ林が伐採 に有利な低高度 にあ りなが らも存続 しえたのは

,お

そ らくは

,そ

れ以前の人為的改変 によってすでに小規模な散在林 になって いたため

,皆

伐型伐採の対象にな らなかったか らであろう。また

,山

地斜面における家屋の防災な どのために

,集

落近傍では

,微

小規模 のブナ林が朱安林 として維持 された (図2)。 村 田 (1995)イ ま

,山

陰沿岸部の照葉樹林帯 に生育す る冷温帯樹種が

,過

去 の気候・地形・生物 間競争な どによって遺存生育 している可能性 を指摘 した。 日本海側の多雪地帯では

,鳥

取∼山形県 の広範 囲にわたって低位ブナ林が現生する (服部 ほか,1979)。 それ らの下限高度が

150mで

,暖

かさの指数

(M)が

100∼ 110であることか ら判断す ると

,多

雪地帯のブナは

,現

在 の気候環境下 でも低位 に繁茂 しうるポテンシャルをもっていると考え られる。もしそ うだとすると

,今

後の保護・ 育成事業のあ りかたによっては

,北

但馬地域 においてブナ林 を広 く再生 しうる可能性 も残 されてい ることになる。 Ⅵ ま と め この論文では

,兵

庫県 北部の北但馬地域 において海抜

150mま

で下降分布す るブナ林 の実態 を把 握 し

,広

域的な気候 。地形・地質環境や主要林相の変遷 を総合 して

,そ

の存立条件 を考察 した。お もな要点は

,次

のようにまとめ られる。

1.ブ

ナ林の生育地降下現象は

,裏

日本気候影響下の 日本海側地域の一般的傾向であるが

,北

但 馬地域では特 に顕著であ り

,温

泉町鐘尾および浜坂町久斗 山には150∼

200mの

低標高地 にまで降 下 して発達 している。表1の鳥取市

,鳥

取県岩美郡

,北

但馬地域 の標高

250m以

下 の低標高地 にお けるブナ林帯要素および表3の北但馬地域 の低位 ブナ林 の種組成表か らブナ帯要素/山地性要素の

(18)

128

清水寛厚・矢野孝雄:兵庫県北但馬地域 における低位 ブナ林 とその存立条件 顕著な降下現象 を知 ることができよう。 多雪地域であるとは言 え

,WI指

数は照葉樹林が成立す る環境であることか ら

,

レリック現象で あることが示唆される。

2.鳥

取市か ら北但馬地域 の気象データ (表

2)は ,鳥

取県岩美郡および北但馬地域が冷涼で積 雪の多 いことを示 している。 図4に おける最深積雪分布および鳥取市に比較 して積雪の多さの指標 SDIに もとづ く積雪比は北但馬地域が典型的裏 日本型気候であることを示 している。 この気候条件 は北但馬地域や山陰東部地域のブナ林帯の降下およびその維持をよ り容易にしてきたことを示唆 し ている。

3.最

終氷期以降の大規模な気候変動 と人為的改変の結果

,中

国地方∼近畿地方北西部 における 主要林相 は

,

この2万年の間に次 の5つの段階 をへて劇的な変貌をとげた。①ッガ属―五葉マツ亜属 林 (21,000∼ 12,000年 前

):最

終氷期の海水準低下 によって対馬暖流の 日本海流入が途絶 し

,寒

な大陸性乾燥気候下 にッガ属や五葉マツ亜属を主 とする林相が広 くひろがっていた。②ブナ林 (1 2,000∼6,500年 前

):晩

氷期∼後氷期 の温暖化 によって 日本海へ対馬暖流が流入 した結果

,裏

日本 型気候 とな り

,そ

こにブナ林が急激 に拡大 した。③照葉樹林 (6,500∼5,700年 前

):最

高温期 にあ たる 「縄文海進

J期

には

,温

暖化 と積雪量の減少のためにブナ林が山地側へ後退 し

,か

わって照葉 樹林が沿岸部 に現れ

,富

山湾 まで北上 した。④スギ林 (5,700∼2,000年 前

):い

くぶん寒冷化 した 「弥生の小海退」期 には積雪量が増 し

,ブ

ナ林が再拡大す るとともに

,照

葉樹林要素は積雪の保温 効果 を利用できるように矮性化す ることによって

,ブ

ナ林 の低木層 として生き残った。⑤人為的千 渉林 (2,000年前∼

):稲

作農耕 が本格化 した弥生中期以降の人為的干渉

,

とくに戦後 の皆伐型破 壊によって

,森

林の大半が代償群落化 した。

4.中

国地方∼近畿北西部 における現植生は

,上

述 した主要林相の歴史的変遷の現時間断面にほ かな らず

,歴

史的に形成 された重層的な構造 をもち

,後

氷期 における短周期・小振幅の気候変動の 結果

,ブ

ナ高木層 と矮性化照葉樹 の低木層か らなる特異な林相が生みだされ

,裏

日本型気候下での ブナ林帯要素の高

M側

への急激な拡大・残存が支え られた。

5.北

但馬地域の低位ブナ林 も

,以

上のような主要林相 の歴史的変遷の結果にほかな らず

,そ

存立 には

,①

多雪域 にお けるブナ生育域の高ヽ1町側への拡大

,②

北但馬地域 の多雪性

,な

らび に③ 人為的改変 の軽微性の3つが必要条件 となっている。① には

,積

雪移動 に対す るブナの耐性

,大

動物 による食害の軽減

,極

相林の形成・維持力

,な

どが関与 している。②は

,氷

ノ山山塊の大 きな 起伏 によって もた らされ

,そ

れは中国脊梁山地の傾動隆起運動な らびに氷 ノ山山塊における累積的 火山活動 に由来す る。 さ らに

,氷

ノ山山塊が海に迫っているために平地が少な く

,人

口密度が小さ いことが

,③

の基本的要因になっている。

6.日

本海側 の多雪地帯では下限高度

150m,暖

か さの指数

(WI)100∼

110に までブナが下降 分布する ことは

,多

雪地帯のブナが

,現

在の気候環境下で も低位 に繁茂 しうるポテンシャル をもっ ていることを示唆する。 とすると

,今

後 の保護・育成のあ りかたによっては

,ブ

ナ林 を広 く再生 し うる可能性 も残 されていることが示唆される。 新井房夫・大場忠道・北里 洋・堀部純男・町田 洋

,1981.後

期第四紀 における日本海の古環境 ― テフロクロノロジー

,有

孔虫群集解析

,酸

素同位体比法 による―.第四紀研究

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図 2  北但馬地域 におけるブナ林の分布

参照

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