核分裂の理論:現状と課題
原子力研究開発機構
岩本
昭
多重の核分裂障壁
Constraint 変数と核分裂ポテンシャル
Scission 点近傍の物理
核分裂片はいつできるのか?
質量分布の課題
微視的理論に期待したいこと
多重の核分裂障壁
核分裂を起こす原子核の形状を、いくつかのパラメターで記
述する。(Macro-Micro, Constraint HF etc.)
1次元の場合は通常のアクチノイド核の場合は double-humped barrier 構造が出現 多次元になると、多次元空間中に幾つかの鞍部点が生じる。 これらのうちでエネルギー的に低い幾つかの鞍部点が重要 な役割を示す。 どのような手法で、これらの鞍部点を求めるか?
3本の2次曲線による形状の記述
5パラメターによる形状の パラメター化、特に外側の 鞍部点近傍の形状記述に 威力 複合核から分裂片へ至る 形状変化、特にあらゆる 質量非対称分裂を自然に 記述できる鞍部点の決定法
鞍部点決定は必ず2点(entrée and exit points)を指定する必要あり その上で洪水法(水浸し法)、ダム法の手法で次々と低い順に決定
鞍部点の決定法
(2)
鞍部点のエネルギーは洪水法により決定できる では鞍部点の変形はどのようにして可能か?A
B
Constraint変数と核分裂ポテンシャル
核分裂現象は“局所的”性質を辿ることでは行き着けない。 先ず最初に、Entrée 状態とExit 状態を指定して、それを 結ぶ“軌道”を確定する必要が有る。Entrée 状態近辺の “軌道”も、Exit 状態の指定に敏感に依存する。 (日本の 分水嶺の決定は、局所的には不可) 初期値問題としての時間依存理論:量子系としての遷移 確率(崩壊常数)の決定法?中間状態の空間を十分にと れるか?初期条件をどのように決定すべきか?に困難が ある。Saddle point Ridge line Valley line Valley line Ridge line 2次元パラメター(,) からを消去した系で‐constraint HF で求まる軌道は黒の実線、本当の軌道は藤色の線
V.M.Strutinsky et al, Nucl. Phys. 46 (1963) 659
1 2 12
2 12 ( ) profile fun , 0 2 cti n ( ) o LD LD surf Coul LD E E y E y E y E V R y R y z z y y z dz V
2 1 2 1 2 1 2 surf 2 2 Coul 2 2 2 2 2 ( ) 1 ( / ) 1 ( ) ( ) ( , ( )) 2 3 ( ) ( , ) ( ) ( ) ( ) ( , ) ( , ) 4( , ) ( , ) elliptic integrals of first and se
z z z LD S z z S z E y z dy dz dz dy z E x y z z y z dz dz dy z z y y z y z z z z F a b E a b dz dz F a b E a b
cond type F.A. Ivanyuk 作成2 2 3/ 2 2 2 3/ 2 1 2 2 2 1 2
1 ( )
10
( ) (1 ( ) )
the fissility parameter,
(
/ ) /(
/ )
( )
the Coulomb potential on the surface
1 ( )
10
( ) (1 ( )
( )
( )
)
LD S LD LD crit S S S LD Syy
y
y
z
yy
y
y
z
x
z
y
x
x
Z
A
Z
z
z
x
z
y
A
z
z
-2 -1 0 0,0 0,5 z / R 0 y( z ) 0,75 1,00 S (z) 2 1 1 2 12( , , )
( ( ),
( ), ) 0
z LD zE
V
R
y y z dz
d
y z y z z
y
dz y
F.A. Ivanyuk 作成種々の障壁を正確に計算するには?
HF, Macro-Micro 法では、十分な数の適切なconstraint variable を導入する必要性アリ さらに加えて、注目する変数以外の変数についてminimize するような操作は一般に不可、 これが障壁計算を特に難しくさせている。 多次元のポテンシャル面での“軌道”をどのように計算す るか?Minimum action trajectory の計算
多次元の場合の計算法(障壁透過)
メッシュを用いた数値計算
Funny Hills 以来 Inverted potential method (虚数時間法)
Iwamoto & Kindo どちらも2次元に関しては実計算が行われたが、それ
以上の多次元での計算はされていない。
一方、熱励起による核分裂の計算では、
Langevin 方程式などの手法が実用的
HFB の場合の、多重核分裂(核融合)径路の例
Scission点近傍の物理
Scission point Fusion touching point
1体系が2体系へ、または2体系が1体系へ移行する
時に何が起きるか?
分離点近辺での特異現象
形の不安定性
Ivanyuk, PRC79, 054327(09)
Brosa, Grossmann & Müller, Phys.Rep.197, 167(90) Spurious center‐of mass subtraction
零点振動
Congruence energy, Wigner energy, A0 energy 殻補正、対相関補正
K‐H Schmidt & B. Jurado
Phys.Rev.Lett. 104, 212501 (2010)
Z (w)
C exp(w /kT)
T
A
2 / 3(17.45
0.51S 0.051S
2) S : Shell correction
Z(w)
C exp(w
1/ kT
1 w
2/ kT
2), w
w
1 w
2w
1 w, w
2 0
低励起エネルギー(E*<10MeV) で一定温度の状態密度を仮定 例えば、T. von Egidy & D. Bucurescu, Phys.Rev.C 72, 044311 (05) Scission 点近傍では、2核全体の状態密度は よって、もしT1<
T2 であれば完全な、repartition が生じる。通常のフェルミガス模型の場合
次のような関係式が成立するZ(w)
exp(2 aw),
1
T
d ln(Z(w)
dw
, ln(Z(w) : entropy
w
aT
2, a
A /10
w
1w
2
A
1A
2核分裂片はいつできるのか?
冷たい核融合反応に関する解析
核分裂反応で、親核から分裂片への遷移がどの時点で生じ るかを議論するために、重イオンによる超重核合成で用いら れた複合核272Ds (Z=110) を選ぶ。 この複合核はいわゆる冷たい核融合反応” 208Pb + 64Niに より合成され、標的核 Pbの殻補正が重要な役割を果たすこ とが予想される。272
Ds (Z=110) に対するより最近の計算
A
64
Ni に対する folded-Yukawa 1粒子準位
点 B の変形に於いて中性子の波動関数はどの程度
重分裂片、軽分裂片に偏在しているか?
点 B の変形に於いて陽子の波動関数はどの程度重
分裂片、軽分裂片に偏在しているか?
点 A の変形に於いて中性子の波動関数はどの程度
重分裂片、軽分裂片に偏在しているか?
Nh/Nl=135.24/26.76 (208Pb/64Ni: 126/36) Number Degree of localization点 A の変形に於いて陽子の波動関数はどの程度重
分裂片、軽分裂片に偏在しているか?
Ph/Pl=89.06/20.94 (208Pb/64Ni: 82/28) Number Degree of localization 融合反応 64Ni+208Pb 272Ds において接触点直 前での標的核、入射核 の変形度(静的模型) バルブ・ソケット型の形の マッチングが、接触点付 近で起こっているのでは ないか?
核融合タイプの核分裂径路のまとめ
(1)
超重核領域ではかなり一般的に、2つの良く発達した核分裂 の谷がポテンシャルエネルギー表面に現れる。一方はほぼ 質量対象の核分裂の谷であり、他方は Pb+(something) の谷であり、そこでは球形のPbと強度に変形した入射核に 良く似た質量領域の核が存在する。 注目すべきは、原子核全体の形は非常に発達したクラス ター的な形を示すが、1粒子波動関数は2つのクラスターに 十分広がっており、特に軽い分裂片クラスターに局在してい る1粒子は導関数はほとんどない。核融合タイプの核分裂径路のまとめ
(2)
これからの教訓は、たとえ原子核の形が良く発達したクラス ターを示していたとしても、必ずしもクラスターが出来ている とは限らない? 核分裂の谷が出来る理由は: 全体系の殻補正エネルギー が、個々の分裂片の殻補正エネルギーの単純な和となって いるからであり、そのための条件は:2つの分裂片のフェルミ エネルギーおよび、2つの分裂片の平均化後のフェル未エ ネルギーがほぼ一致することであり、一般に冷たい核融合 領域の反応ではそれが実現している 似通ったフェルミエネルギーを持つ閉殻構造の2つの原子核 は、たとえ波動関数は局在していなくても核分裂補填シャル の谷を形成する。核分裂での質量、荷電分布
1. Statistical Theory ( P. Fong, B.D. Wilkins et al)
核分裂の分離点(scission point)での熱平衡を仮定
2. Transition state model (R. Nix, R.W.Hasse)
鞍部点での質量比に対応する巨視的変数の温度傾向より
3. Fragmentation Theory (W.Greiner group)
Scission point の内側
で、質量比に対応する
巨視的変数の
Schroedinger 方程式
を解く
4. Random‐Neck‐Rupture Model (U. Brosa)
Scission 点でのネック部分がランダムに切断
自由なパラメターは
r
1/r
2& l の2つ
分裂片質量計算法の問題点
どの模型も、質量分布の半値幅が実験に比
べて狭すぎる
Transition state model 以外のすべての模型
は、
scission 点の選び方にかなりの任意性が
あり、その面で完全な理解とはほど遠い
Transition state model は鞍部点で計算する
ため任意性は無いが、実験との合い悪い
質量分布の最近の計算例
H. Goutte,JF.Barger,P.Casoli & D.GognyPhys.Rev. C71, 024316 (2005)
ポテンシャル: constrained HFB with D1S finite range force
Time‐dependent generator coordinate method with two collective coordinate Q20 & Q30
質量分布計算の今後の課題
Langevin 方程式を用いた核分裂の数値計算 Vanin, Kosenko & Adeev, Phys.Rev.C 59 (1999) 2114 Karpov, Nadtochy, Vanin & Adeev, Phys.Rev.C 63 (2001) 054610 Nadtochy, Adeev & Karpov, Phys.Rev.C65(2002)064615 解析結果(3次元パラメター計算) 質量分布は摩擦係数をWindow formula の1/2〜1/4 の値にする とほぼ再現できる。 量子力学の計算で摩擦係数の値を再現できるか? 質量分布と、運動エネルギー分布とを同時に合わせることが出来な いRusanov, Itkis & Okolovich Physics of Atomic Nuclei, 60 (1997) 683 実験の質量分布の幅を、 温度効果などに影響されない 角運動量ゼロのポテンシャル の2階微分に焼き直したもの (a), (b) は鞍点での計算、 (c) はscission 点での計算 軽い核から重い核へ、全体の 傾向をうまく合わせることが困難
最近の計算の例
, Y. Aritomo
exp. Data, K. Nishio
K. Nishio et al., 34S+238U