Author(s)
山下, 実; 服部, 敏雄
Citation
[鉄と鋼] vol.[95] no.[11] p.[747]-[751]
Issue Date
2009
Rights
The Iron and Steel Institute of Japan ISIJ (社団法人日本鉄鋼協
会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/40548
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
1.緒言
ローラー矯正作業は,圧延後の板に生じる反りや波形状 といった好ましくない形状を矯正するためや,残留応力の 低減のために行われる。普通,矯正条件はオペレーターの 経験に依存するところが多いため,従来から,矯正条件を 早く正確に設定したいという要求に対して,実験に基づく 予測式の提案や変形解析,各種実験的検討が行われてきて いる1–6)。また,厚板の場合,特に矯正ローラー間隔以内 の長さの端部矯正については,プレス矯正で対応している 場合がしばしばあり,こうした端部曲がりに対してもロー ラー矯正条件の正確な設定方法の確立が急がれている。 そこで,本研究では厚板の冷間矯正工程について,ロー ラー位置の設定指針の構築を目標として数値計算の適用性 を検討することとした。まず,やや極端なローラー配置・ 寸法で厚板の曲がり矯正工程を試行的に計算した。矯正可 能となる矯正条件を見つけられるか否かに注目した。つぎ に,先端部曲がりおよび終端部曲がり不良といった矯正工 程で発生する形状不良について,数値的に再現することを 試みた。なお,本研究は,上記内容に対する数値計算の適 用性を調査,検討したもので,ローラーの摩擦や弾性たわ みの影響は検討していない。ソルバーには動的陽解有限要 素法コード DYNA3D7)を使用した。2.厚板の曲がり矯正の試行計算
ここでは,曲がり不良部を真直に矯正できる条件が見つ けられるかどうかに注目し,板先端のみに一定半径の円弧 状の曲がりを持つ厚板矯正の数値計算を行った。 2 · 1 計算条件 試行的検討に限定した数値モデルを Fig. 1 に示す。やや 極端なローラー配置および寸法設定である。ローラー数は 4で実際の工程のものよりも少なく簡素化した。左の 4 つ のローラーは単に材料送りガイドの役目しかない。また, 被矯正材料は 8 節点六面体要素で表し,変形は平面ひずみ (紙面垂直方向の変形を拘束)とした。板の端面(同図中 では左端)を押してローラーに送っている。矯正用ロー ラーは剛体とし,ローラーと被矯正材料間の摩擦は無視し た。 被矯正材料の寸法は,板厚 100 mm,長さ 2000 mm の厚 板で,板厚方向は 10 層に分割した。矯正用ローラーの直 径は 200 mm として,板先端のローラーへの当たり方がや や厳しい条件で計算を行った。端部の曲がりは先端部に与 え,150 mm にわたって半径 500 mm の曲がり部があるもの厚板のローラー矯正と矯正後の端部曲がりの動的陽解
有限要素解析
山下 実 * ・服部 敏雄 *
2Dynamic Explicit Finite Element Analysis of Roller Leveling of Thick Plate and Shape Defect Caused in Leveling
Minoru YAMASHITAand Toshio HATTORI
Synopsis : Numerical simulation of roller leveling of thick plate was conducted using a dynamic explicit finite element code DYNA3D. The
straighten-ing process of a thick plate whose tip portion was initially bent was first calculated to check the applicability of the numerical simulation. The number of rolls was reduced from that used in practice. The effective intermesh setting of the rolls was found. The influence of the feed-ing speed of the plate was also checked to examine the effect of speed-scalfeed-ing technique for the improvement of computational efficiency when the dynamic explicit finite element code was used. The shape defect of undulation at the tip portion of the plate was numerically pre-dicted when the flat plate passed through the leveler. The amplitude in undulation was found smaller for the thicker plate by comparing the calculated surface profile with the circular arc of steady-state deformed shape. The thicker plate caused a local thinning phenomenon due to the severe bending deformation. The shape defect of undulation at the end potion of the plate after leveling process was also numerically pre-dicted. The end portion of the plate showed a sigmoidal or V-bent pattern in accordance with the intermesh setting. The length of defect part was shortened by decreasing the diameter and pitch of the final two rolls.
Key words : roller leveling; thick plate; numerical simulation; shape defect.
平成 21 年 4 月 3 日受付 平成 21 年 4 月 24 日受理 (Received on Apr. 3, 2009; Accepted on Apr. 24, 2009)
* 岐阜大学金型創成技術研究センター (Center for Advanced Die Engineering and Technology, Gifu University, 1–1 Yanagido Gifu 501–1193) * 2 岐阜大学工学部機械システム工学科 (Department of Mechanical and Systems Engineering, Gifu University)
とした。ローラーの配置は 400 mm ピッチとした。被矯正 材料の送り速度は 10 m/s とした。 矯正条件としては,5 種類のローラー位置設定を試した。 第 14ローラーのインターメッシュ量dを Table 1 に示す。 Fig. 1中の距離 L1L4を用いればdi0.5 tLi(i14,t: 板 厚)となる。Case 1 の矯正条件が,被矯正材料に与える変 形は最も大きく,Case 25の順で与える変形は次第に小 さいものとなる。被矯正材料は密度 7.82 g/cm3 の鉄鋼材料 を仮定し,ヤング率 210 GPa,ポアソン比 0.3,ひずみ硬化 塑性特性をs400e0.1MPa とし,等方硬化則に従うものと した。 2 · 2 計算結果および考察 試行した各種矯正条件における変形形状を Fig. 2 に示 す。先端角部の接触によるつぶれ部を除いて評価した矯正 後の曲がり半径を図に併記した。まず,矯正条件として被 矯正材料に与える変形が終端ロールまで大きい Case 1 の矯 正条件では,全体に曲がりが残るようになった。しかし, 端部については,初期曲がり形状は目立たなくなったもの の,ほとんど変化していない。 Case 14の矯正条件による変形形状は,出口側の上下 ローラー間隔が広くなるにつれて,全体的な曲がりは緩和 される傾向がある。Case 4 では,出口側上下ローラーの間 隔は Case 3 のものと同じであるが,入側の上下ローラーの 間隔は Case 3 のものより広い設定としているものの,か えって全体の曲がりが大きくなっている。しかし,Case 4 で矯正された板の先端部に注目すれば,あらかじめ付与し てあった先端部曲がり半径は,約 2800 mm になっておりほ ぼ除去できていると言える。 また,Case 13のように,最初のローラーのインター メッシュ量が大きめで被矯正材料のローラーへの当たりが 比較的強い時,板先端の角部に圧痕が形成されている。一 方,Case 5 のようにインターメッシュ量が小さければ,圧 痕は目立たなくなった。しかし,Case 5 では全体の曲がり は他の条件に比較して小さかったものの,あらかじめ付け ておいた先端部の曲がり形状はほとんど残ったままであ る。 最初のローラーに対して接触状態があまり厳しくない Case5の条件下で,計算効率を高めるためスピードスケー リングの適用性に関する検討を行った。被矯正材料の送り 速度を 10100 m/sとして,計算した時の変形形状を Fig. 3 に示す。送り速度が 10 と 20 m/s のものでは,変形形状に 差はほとんど見られないことから,この場合,送り速度 20 m/s程度までであれば計算結果に及ぼす送り速度の影響 は小さいと言える。また,送り速度を 100 m/s とした場合, 図で上下方向の慣性力が塑性変形に顕著に影響したため, ローラーを通過できないという結果を見た。
3.先端部曲がりの数値計算
板の初期形状は平坦と仮定して,非定常変形下で生じる 先端部の曲がりという実現象を数値的にシミュレートする ことを試みた。Fig. 2. Deformation patterns under various leveling condi-tions.
Fig. 1. Schematic of numerical model for trial.
Table 1. Leveling conditions of working rolls.
3 · 1 計算条件 数値モデルを Fig. 4 に示す。矯正ローラー数は 8 個とし たが,最初の 2 つのローラーは板の上下面にちょうど接し た位置とした。つまり,変形は板が第 3 ローラーに接触し た時点から始まることになる。また,ローラーは剛体とし, 被矯正材料の変形は平面ひずみとした。板端面を押して ローラー側へ送る設定とし,ローラーと被矯正材料間の摩 擦は無視した。材料は密度 7.82 g/cm3 の鉄鋼材料を仮定し, ヤング率 210 GPa,ポアソン比 0.3 とした。ひずみ硬化塑性 特性は,初期降伏点が分かりやすいようにsy400200ep MPaで与えた。負荷反転時の降伏応力は,(降伏応力初 期降伏応力)0.9初期降伏応力とした。板の変形が定常 状態になるまで計算した。 被矯正材料は 8 節点六面体要素で表し,板厚は 40 mm ま たは 20 mm とした。長さは定常変形状態までは計算する必 要があるため 2000 mm とした。板厚方向の分割は 6 層であ る。矯正用ローラーの直径は 300 mm,配置は 360 mm ピッ チとした。この条件に対する被矯正材料の送り速度の影響 は検討していないが,2 章で検討したように速度 10 m/s で あれば速度の影響はほとんどないものと考え,この送り速 度で計算した。矯正ローラーのインターメッシュは,板厚 40 mmについては 3 種類とし,板厚 20 mm については 1 種 類とした。 3 · 2 計算結果および考察 板厚 40 mm の板がローラーを通過する時の変形パターン を先端部の詳細とともに Fig. 5 に示す。インターメッシュ 量dの定義は前章と同様で,Case 13の順で与える変形は 小さくなる。第 3 および第 4 ローラーの接触で受けた曲が り変形と板先端の潰れがあるが,これは最初のローラーへ の当たりを弱くすることで小さくなっていることが分か る。Case 3 について,板先端部の上下面プロフィールの拡 大図を Fig. 6 に示す。板全体の曲がり形状が円弧状になっ た場合,最終ローラーの位置を調整することによって,板 は真直にすることができるため,比較用の円弧を一点鎖線 で示した。板先端の角部のつぶれ形状が図の右端で顕著に 現れている。ローラーピッチ間隔 360 mm 以上の長さにわ たってうねりが見られる。また,上と下のローラー間隔で ある 180 mm 先端から入ったところで板厚減少を生じてい ることが分かる。この原因は,板先端の導入部は変形に対 する自由度が大であるため上下方向の振れ量が大きく,や や厳しい曲げ変形を生じたからであるが,この種の寸法不 整予測に対しても数値計算は有効であると言える。 板厚 20 mm の板の矯正工程について,変形形状を Fig. 7 に示す。なお,インターメッシュ条件は,第 17 ロー ラーについては Case 3 と同様とし,第 8 ローラーでなるべ く真直になるよう調整した。全体および先端部の拡大を Fig. 3. Deformation patterns for various feeding speeds.
Fig. 4. Numerical model for reproducing shape defect at tip portion of plate.
Fig. 5. Deformation patterns of 40 mm thick plate.
Fig. 8に示す。先端部形状については一点鎖線で表した円 弧と比べて,ローラーピッチ 360 mm 付近までの振幅は Fig. 5,6 に示した板厚 40 mm の場合と比べると大きく,板 厚の影響が現れた。また,Fig. 6 で見られたような局所的 な板厚減少は見られなかった。これは,板厚が薄いと曲げ 変形がそれほど厳しくないためと考える。
4.終端部曲がりの数値計算
板の終端部に生じる曲がり不良現象を数値的にシミュ レートすることを試みた。板の初期形状は平坦と仮定し, ローラー通過後の板の変形を調べた。 4 · 1 計算条件 真直な板から終端部の変形を計算するため,初期状態で はローラーと板と接触させていない。つぎに,ローラーを 板面垂直方向に移動させて所望のインターメッシュ設定に した後,板の右端部に速度を与えて材料終端部の矯正工程 をシミュレートした。この時の変形形状と通過中のものを Fig. 9に示す。定常状態となる長さは約 500 mm である。終 端部曲がり不良現象の再現に注目するため,被矯正材料の 変形は平面ひずみとし,ローラーと被矯正材料間の摩擦は 無視した。なお,材料は密度 7.82 g/cm3 の鉄鋼材料を仮定 し,ヤング率 210 GPa,ポアソン比 0.3,ひずみ硬化塑性特 性をsy400200epMPaで与え等方硬化を仮定した。ロー ラー数は 8 個であるが,始めの 2 つは板の上下面にちょう ど接した位置としている。 被矯正材料の板厚は 40 mm とした。終端部の変形を検討 するため,板の一部が定常変形状態になるように長さは 3000 mmとした。板厚方向は 6 層または 10 層に分割し,分 割 数 の 影 響 を 見 た 。 矯 正 用 ロ ー ラ ー の 直 径 は 300 mm, ピッチは 360 mm とし,2 種類のインターメッシュについ て計算した。また,終端の曲がり部長さを短くする狙いで, ローラーのピッチと直径を小さくした計算も行った。被矯 正材料の送り速度は 10 m/s と設定した。 4 · 2 計算結果および考察 板厚方向 6 層分割の場合について,Fig.10 に矯正途中で ローラーによる変形拘束を取り除いた時と最終の板形状を 示す。終端から約 500 mm 付近で生じた曲がり部が最後ま で残っていることがわかる。また,Fig.11 に 2 種類のイン ターメッシュ設定について終端部形状を示す。前述のとお Fig. 7. Deformation patterns of 20 mm thick plate.Fig. 8. Surface profile of 20 mm thick plate.
Fig. 9. Deformation patterns in reproduction of shape de-fect at end portion.
り板先端部では局所的な板厚減少が見られたが,終端部に ついては見られなかった。ここでは,曲がり形状を円弧と 板の下面プロファイルの差を取って評価した。板厚方向の 分割数が 6 と 10 のものについて Fig.12 に示す。矯正条件に よって,屈曲箇所の数が 1 または 2 となり異なる終端形状 が現れた。終端部形状に及ぼす板厚方向の要素分割数の影 響に関しては,本計算条件の場合,屈曲箇所の数は同じで 振幅にも差はほとんど見られなかった。 さらに,曲がり発生部の長さを短くすることを狙って, 最終ローラーピッチを 260 mm に取り,ローラー直径も 200 mmに小さくして計算した結果を Fig.13 に示す。なお, 板厚方向の分割は 6 層である。ピッチを小さくすると終端 部の変形が拘束されない長さが短くなるため,曲がり部は Fig.12と比較して短くなっており,この方法の有効性を確 認した。
5.結言
厚板の端部曲がりに対する矯正や端部形状不良現象を検 討対象とし,動的陽解有限要素解析の適用性に注目して簡 素化したモデルで試行的な計算を行った。いくつかの矯正 条件について,先端や終端部の変形,全体形状に対する矯 正条件の影響を見た。得られた主な結論は以下のとおりで ある。 ( 1 ) 送り速度を過大に設定して計算の高効率化を狙う 場合,板の先端部は変形に対する拘束条件が弱いため,特 にローラー噛込み時に慣性力の影響が現れやすく注意を要 することが分かった。 ( 2 ) 初期曲がり形状の矯正には,被矯正材料にある程 度以上の塑性変形を付与すれば可能となることを示すこと ができた。 ( 3 ) 変形自由度が大きい先端部について,板厚が厚い と曲げ変形が厳しくなり局所的な板厚減少が現れることを 計算で予測した。 ( 4 ) 非定常変形部である終端部の曲がり変形は,矯正 条件によって屈曲箇所の数が 1 または 2 となることを計算 で予測した。 ( 5 ) 終端部の曲がり部の長さを短くするには,ロー ラーピッチを狭くすることが有効であることを計算でも確 認した。 文 献1 ) F.Hibino: J. Jpn. Soc. Technol. Plast., 349 (1990), 208.
2 ) T.Matoba, M.Ataka and T.Jimma: J. Jpn. Soc. Technol. Plast., 418 (1995), 1306.
3 ) 伊丹美昭:平成 8 年度塑性加工春季講演会講演論文集,(1996),
522.
4 ) M.Urabe, F.Yoshida, K.Tanita and T.Kajihara: J. Jpn. Soc. Technol.
Plast., 444 (1998), 82.
5 ) T.Higo, H.Matsumoto and S.Ogawa: J. Jpn. Soc. Technol. Plast., 496 (2002), 439.
6 ) T.Higo, H.Matsumoto and S.Ogawa: J. Jpn. Soc. Technol. Plast., 520 (2004), 331.
7 ) Hallquist, J.O.: DYNA3D, User’s manual Rev. 5, (1989).
Fig. 11. Deformation pattern of end portion of plate.
Fig. 12. Warping of end portion of plate.
Fig. 13. Warping for the case with shorter pitch between final two rolls.