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銅版画によるイメージ表現の制作研究
教科・領域教育専攻 芸術系(美術)コース 林 ま り 絵 I.研究の目的 これまで筆者は現実ではありえない空想の 世界を作品にして表してきた。学部時代銅版 画に触れ、画面の反発感の無さや、腐蝕によ る偶然性の暖昧さ、素朴な色合い、線の細密 さなど、銅版画は空想する世界を鑑賞者の心 情に溶け込みやすくすると感じた。それらの 特徴は、筆者が描くイメージの世界に鑑賞者 を引き込むために活かせる要素になるのでは ないかと考えた。そのため、銅版画における 線と面の表現を効果的に用い、筆者が経験し たことからイメージして作られる空想の世界 を表すことを前提とし、そのための版表現の 開拓を研究の目的とした。I
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研究の経緯と結果 l.イメージ表現について イメージして作る空想の世界の表現方法と して、筆者の実体験が元となる。その体験は、 普段の生活の中の出来事や、旅行など様々で ある。そのため面白いとJ思ったことや締麗と 思ったことなど、そのときの気持ちゃ印象を 意識的に記憶に留めるようにしている。また それと同時に写真を撮ることも多い。それら を元に箱庭を構成していくように、平面の画 面の中にモチーフなどを描きながら構成して いき、イメージ世界を作り表現する。2
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技法・制作について 筆者が銅版画の制作において用いる主な技 法は、エッヂング、アクアチント、 ドライポ 指 導 教 員 小 川 勝 イントである。それらの技法を用いて、鑑賞 者に絵の中を探検するようにして鑑賞して欲 しいと考えている。言い換えると、鑑賞者を 作品に引き込みたいと考えている。そのため、 これまでの制作にいたっては、雲やリボンな どを用い、画面全体にモチーフ同士を繋ぎ合 わすことで、鑑賞者の視点の流れを作るよう な絵作りをしてきた。しかし、イメージの世 界に引き込む一番重要なものは、描かれた世 界の雰囲気であると気づいた。これまでの作 品は線の調子が強いため、平面的なイラスト レーションの要素が強くなり画面に反発感を 与えてしまい、それらがイメージの世界に入 る妨げになっているという問題を感じるよう になった。しかし、それには線と面の両方の 腐食の効果を利用した銅版画では、奥行きを 出すことは困難、かっ弱みでもあるという理 由があった。なぜなら、アクアチントの際に はエッチングの線を頼りに腐食止めを行って いくのだが、細く薄い線では銅版の腐食をす る工程で、線が全く見えなくなってしまうか らである。そこで筆者は、松脂を付けたあと 細く薄いエッチングの線を鉛筆でなぞり、そ の鉛筆の線を頼りにアクアチントの腐蝕止め を行った。鉛筆のグラファイトは松脂には付 くが銅版には届かず、また鉛筆が柔らかいた め、松脂の粒子を壊さないで線を引くことが できるので、鉛筆の線が腐蝕に影響すること はない。そうすることで、輪郭線の目立たな い表現ができるようになった。また線が単調- 374 - - 373 - にならないように、グランドを引っかいて線 を出す基本のハードグランドを利用する方法 と、版の上に紙を置き、その上からボールペ ンで加圧しながら描き、グランドを紙に付着 させて線を出す方法を併用することで、線に 変化が生まれ表現にも面白味を出すことがで きた。(図1) (図1)トレース部分のグランドが剥がれる また作品に奥行きを出そうと考えた。その 方法として、画面の奥にあたるところはエッ チングをせず鉛筆で線を描き、アクアチント の色調の段階だけで表現した。また、コント ラストの差を少なくすることで、ぼやけたよ うな空間が表現できた。明暗の滑らかなグラ デーションについては、パニッシャーとスク レーパーを用いることで、モチーフに立体感 や重量感を持たせることができた。(図2) (図