著者
堀田 真理
雑誌名
経営論集
号
75
ページ
149-172
発行年
2010-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00004540/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaわが国における病院
PFI をめぐる現状と課題
堀 田 真 理
Ⅰ はじめに Ⅱ 病院PFI の概要 Ⅲ わが国における病院PFI の実際 Ⅳ 理論的な観点からの検討課題 Ⅴ おわりにⅠ はじめに
近年の度重なる診療報酬引き下げによる一貫した医療費抑制政策の中で、医療機関の経営状況は 厳しい状態にある。とりわけ、医師不足の問題とも相まって、自治体病院では不採算となる緊急や 高度医療などの政策医療を担っているにもかかわらず、深刻な資金不足1による閉鎖や統合など、地 域医療のあり方をめぐっても、改めて自治体病院の経営が問題となってきている。2007年末に総務 省から提示された「公立病院改革ガイドライン」に基づき、閉鎖や統合、診療所への転換など、規 模の縮小化が進む一方で、自治体病院の中には、PFI(Private Finance Initiative)による手法を用い て、病院の新棟建設や先端医療に対応した設備を整えるなど、再整備が進められている病院もある。 最先端医療の場として注目され、開発が進んでいる神戸医療産業都市においても、その中心となる 基幹緊急病院としての役割が期待されている市立新中央病院は、PFI 方式によって整備され、2011 年度の開院に向けて準備が進みつつある2。 PFI は、公共施設の建設や維持管理、運営などについて、民間の資金や経営、技術ノウハウなど を活用する手法であり、国や地方公共団体などの財政が厳しい状況において、効率的な経営と質の 高いサービス提供を可能にする仕組みとして期待されている。もともと英国で誕生し、英国のNHS(National Health Service)病院トラストのほとんどが、この方法によって整備されている。わが国 でも1999年にPFI 法(「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」)が制定 されて以来、その利用が拡大し、2009年においては、これまで実施方針が公表されたPFI 事業の案 1 2007年度は75%の病院が赤字であり、不良債権の総額は過去最悪の1180億円にまで膨らんだという。(日本 経済新聞2009年1月26日) 2 日本経済新聞2009年9月24日。
件数は累積で398件に上るが、そのうちの病院に関する PFI 事業はわずか14件にとどまっている3。 とりわけ自治体病院は高い人件費など高コスト構造にあり、経営が非効率になりやすいといわれて いる4。財政難を抱えている自治体病院にとって、 PFI の手法を導入することでコストを削減して経 営を効率化し、老朽化が進んでいる病院の増改築や医療の高度化など地域のニーズに対応していけ ることは、大きな魅力でもあり、この手法に過大な期待を寄せていたともいえる。しかしながら、 わが国初の病院PFI の導入として注目された「高知医療センター」(2005年3月開院)や「近江八幡 市立総合医療センター」(2006年10月開院)の試みは、期待されていた効果が得られないまま失敗に 終わり、さまざまな課題を明らかにすることとなった。その特殊性ゆえ、病院にPFI 方式を適用す ることの難しさが指摘される一方で、こうした初期の「第一世代」といわれる先例の課題を克服し つつ、わが国における病院PFI は、「第二世代」「第三世代」へと独自の工夫で発展しつつある。 自治体病院に限らず、民間病院もまた、経営難にあることは同様であり、病院PFI にはいまだ課 題が多いものの、今後、民間病院にも適合するような形でPFI の手法を修正しつつ取り入れていく ことも期待されている。また、これまでわが国における病院ファイナンスでは、間接金融が中心と されてきたが、PFI の評価手法として用いられている VFM(Value for Money)の算定方法は、割引 現在価値の考え方をベースにするものであり、福永(2007)は、そうしたファイナンスの評価手法 の点でもPFI に注目するとともに、今後の PFI 進展により、「キャッシュフロー計画の技術発展」も 期待できると指摘している。 本稿は、このように従来から注目されてきた病院PFI について、わが国の現状を概観し、これま での先行事例において明らかになってきた問題点を整理するとともに、理論的な観点からの分析を 試みる上での検討課題について提示している。初期の先行事例に関する詳細な検証としては、高知 医療センターについては野田(2002)、堀見(2009)において、また近江八幡市立総合医療センター については大島(2009)でなされている。しかしながら理論的な観点からPFI 導入の効果について 明らかにしている分析は少なく、大島(2001)は不完備契約下での一般的なPFI の効果について検 討しているものの、他にとりわけ病院PFI に限った分析は見られない。また佐藤(2007)は、具体 的なモデル分析としては展開していないものの、病院PFI における意思決定をリアルオプションの 視点から考察している点で興味深い。 本稿では、まずⅡ節で病院PFI の基本的な仕組みを確認するとともに、Ⅲ節においてわが国にお 3「PFI 年鑑2009年度版」の統計による。 4 私的病院と自治体病院の収益構造を比較すると、ほぼ同規模でも自治体病院のほうが収益は少なく、費用 のうち、とりわけ給与費の占める割合が私的病院では52.8%であるのに対して自治体病院では63.1%と高く、 結果として赤字幅も自治体病院のほうが大きくなっているという。(日本経済新聞2009年10月29日)
ける病院PFI の発展過程について概観する。ここでは、初期「第一世代」の病院 PFI として注目さ れながら失敗に終わった、高知医療センターと近江八幡市立総合医療センターの事例について、先 行研究をもとに、その問題点や病院PFI に共通する課題などを整理し、明らかにするとともに、「第 二世代」「第三世代」へと続くその後のわが国における病院PFI の現状について触れる。Ⅳ節では、 これらの現状と課題をもとに、今後、理論的な観点から病院PFI の分析を試みる上での検討課題に ついて提起し、Ⅴ節において本稿全体をまとめる。
Ⅱ 病院
PFI の概要
(1)基本的な仕組み 『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』によると、PFI とは、「公共施設等の設計、建設、維持管理 および運営に民間の資金やノウハウを活用することで効率的に公共サービスの提供を行なう手法」 と定義されている。深刻な財政赤字を抱えるわが国において、行政の効率化と財政健全化の観点か ら1999年にPFI 法が制定され、これが PFI を実施する際の指針となり、PFI 事業がしだいに拡大し てきた。病院は、PFI の対象施設とされているが、そのうちでも、PFI 事業が認められるためには、 公共性・民間経営資源活用・効率性・公平性・透明性・客観主義・契約主義・独立主義といった8 要件を備えることが必要とされている。PFI 事業への参加者は、国や地方公共団体などの公共部門、PFI 事業をおこなう PFI 事業者、融資 をおこなう金融機関、選定事業に関わる業務をPFI 事業者から受託する協力企業、その他コンサル タントや保険会社など多数から構成される(図1)。すなわち、PFI 事業に参加する民間企業は、複 数の企業でコンソーシアム(企業連合)を組み、各企業の出資によって、対象となっているPFI 事 業のみを行なう特定目的会社(SPC)を設立する。この SPC が PFI 事業者となり、公共部門と PFI 契約を締結して事業を行なうことになる。また必要に応じて、選定事業に必要な業務を複数の協力 企業に委託し、これらの企業と工事請負契約や管理運営委託契約を結ぶ。このときPFI 事業者は、 事業遂行に必要な資金を金融機関から調達するというのが全体の仕組みである。こうした方式を取 り入れることにより、民間の資金や経営ノウハウを活用できることから、設計や建設、維持管理か ら運営までを包括的に扱い、コストの削減と質の高いサービス提供が期待できることになる。 このうち、とりわけ病院PFI の特徴を、今井(2009)は、「民間企業は病院経営および診療業務に は関与できないため、それらを除いた病院管理業務および診療補助業務を一括して委ねられるとこ ろにある」としている。すなわち、医療法や医師法など、法律上の制約から、診療に関わる「医療 コア業務」については営利法人である民間事業者に委ねることが出来ず、民間事業者はそれ以外の 「ノンコア業務」に限定されることになる。したがって、PFI 事業者が提供できるサービスは、「①
民間資金を活用した施設の整備、②当該施設整備の契約期間に亘る維持管理、③病院にかかわる様々 な診療行為以外の関連支援サービスの供与」(『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』による)に限ら れる。これらの具体的な事業範囲は以下の(表1)に示した内容である。 わが国における病院PFI の場合、投資回収手段としては、公共がサービスの対価を支払う「サー ビス購入型」が、また PFI の推進方式の分類では、「BTO 方式」が多いとされるが、英国で誕生し た本来のPFI は、ほとんどが「BOT 方式」である5(表2)6。
病院PFI 実施のプロセスは、通常の PFI 事業の場合と同様に、事業の発案→PFI 可能性調査→実 施方針の策定と公表→特定事業の選定と公表→民間事業者の募集・評価・選定・公表(入札による 落札者決定)→事業契約締結→事業の実施→新病院の開院→運営を経て事業終了、となる。
PFI 方式を導入すべきかどうかは、VFM の指標を用いて判断される。これは支払い費用に対する 価値を最大にするようなサービスを提供するという考え方に基づいている。具体的には、従来の方 式において公共側が自ら実施した場合の財政負担額 PSC(Public Sector Comparator)と、PFI を導 入して実現した場合の財政負担額 LCC(Life Cycle Cost)とを比較して、PFI 導入によりどれだけ
5 投資回収手段については、その他、「独立採算型」や「ジョイントベンチャー型」などがあるが、わが国の 場合、地方公共団体の事業302件のうち、サービス購入型が85%、独立採算型が6%、ジョイントベンチャ ー型が9%である。また推進方式については、70%がBTO 方式であり、その他 BOT 方式や BOO 方式など が30%である。(『PFI 年鑑2009年度版』の統計による) 6 この表で示した3方式以外にも、BLO 方式、BLT 方式、DBO 方式などがある。 (表1) 病院PFI の事業範囲 統 括 マ ネ ジ メ ン ト 経営方針への支援、収益向上支援、費用適正化、 将来の医療環境変化への対応 設 計 設計に係る詳細調査、基本設計、実施設計 建 設 建設工事、工事監理 初 期 投 資 医療機器等の選定と調達、什器等の選定と調達、病院情報システムの開発や調達 施 設 維 持 管 理 建物保守管理、建設設備保守、外構施設保守監理業務、 環境衛生(清掃)管理業務、什器・備品保守管理、警備業務 医 療 関 連 サ ー ビ ス (政令8業務) 検体検査業務、消毒減菌業務、食事の提供業務、医療機器保守管理、 患者等の搬送業務、医療ガス供給設備保守点検業務、 清掃業務、洗濯業務 そ の 他 関 連 医事(診療報酬請求等)業務、物品管理業務、物品調達(納入)、 看護補助業務、一般管理支援、その他 (出所)『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』
実施コストを削減できるか、その削減割合を測定するものである。LCC の算定においては、将来予 想の公的負担額を現在価値に割引く算定方法が用いられる。(図2)で示されるように、PFI 導入に より、設計から運営まで包括的な委託を行なうことで効率性が高まり、設計や建設費、維持管理運 営費、人件費などの削減が期待できる一方で、金融機関からの資金調達に伴う金利や、民間事業者 が確保する利益、その他、税金の負担など、コストが増大する要因もある。 (表2) PFI の推進方式と資産の所有形態 事業方式 内容 資産の所有権 (建設後→運営中→終了時) BOT(建設-運営-移管) (Build-Operate-Transfer) PFI 事業者が自ら資金調達をして施設を建 設し、契約期間にわたり運営・管理を行なっ て資金回収した後、公共側にその施設を移管 する方式。PFI事業として最も典型的かつ 最も適切な手法。 民間 →民間 →公共 BTO(建設-移管-運営) (Build-Transfer-Operate) PFI 事業者が施設を建設した後、施設の所有 権を公共側に移管した上で、PFI事業者が その施設の運営を行なう方式。 公共 →公共 →公共 BOO(建設-保有-運営) (Build-Own-Operate) PFI 事業者が施設を建設し、そのまま保有し 続け、事業を運営する方式。事業終了後も PFI 事業者が保有し続けるか撤去する。 民間 →民間 →民間 (出所)『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』より作成 (図1)PFI 全体の仕組み (図2)財政負担額の比較とVFM
(2)病院PFI 導入の背景 ①英国における病院PFI そもそも病院PFI は、英国において誕生し、積極的に導入が進められてきた手法である。日本と 同様に莫大な財政赤字と経済不況、肥大化した行政組織を抱えていた英国では、サッチャー首相の 頃に民営化やエージェンシー化による大胆な行財政改革が行なわれた。PFI が導入されたのは1992 年のメージャー政権下である。当初、NHS 病院トラストの民営化は断念されたものの、後の医療費 増加に伴い、しだいに病院PFI の導入が検討されることになる。原則として公共部門の新規固定資 本投資すべてにPFI の導入可能性を検討すべきとする、いわゆるユニバーサル・テスティングは廃 止されたものの、施設の老朽化が問題となっていたNHS 病院トラストの建替は、事実上、ほとんど のプロジェクトがPFI 方式で実行されているという7。2000年にはダートフォード病院が PFI 第1号 の病院として注目され、これがきっかけでわが国においても病院PFI の試みがなされるようになっ てきた8。 これに対して、わが国における日本型の病院PFI は、英国本来の PFI とは異なった方向に進んで いるとする指摘9もある。例えば、日本の病院PFI では、BTO 方式が多く見られるが、英国では BOT
方式がほとんどであり、民間が施設を保有することではじめて、その後のサービス提供においても、 民間による経営や運営ノウハウが活かされ、PFI による効果が発揮されると考えられる。また後述 のように、すでにわが国において導入された病院PFI の先行事例では、本来の PFI 事業で踏むべき ステップを欠いている点や、法整備上の問題点なども指摘されている。 このような相違はあるものの、最近になって成功したかのように見られる英国においても、病院 PFI をめぐり、さまざまな問題が明らかになりつつあり、そうした問題は、病院 PFI に内在する共 通の課題であるとも見られている10。 ②「公立病院改革ガイドライン」の影響とPFI 自治体病院を中心に、わが国においてPFI 事業方式の採用が広まりつつあることの背景には、こ こ数年の著しい自治体病院の経営悪化の問題がある。現在、自治体病院の7割以上は赤字経営であ 7 岡部(2003)の指摘による。 8 ダートフォード病院のPFI に関する事例の詳細な研究は、森下・他(2001)においてなされている。 9 岡部(2003)の指摘による。 10 今井(2009)は、英国の事例をもとに、診療補助、施設管理の質の低下について指摘している。とりわけ、 運搬業務や清掃業務、給食配膳業務において質の低下が見られているという。これらには、PFI 事業の契約 不備の問題が大きいと指摘する。また河口(2003)は、英国PFI において想定されるメリットとデメリッ トについて詳細な記述をしている。
るといわれ、そうした経営危機の要因としては、これまでの診療報酬のマイナス改定、自治体の財 政難による支援能力の低下、医師不足の問題に加えて、人件費などの高コスト構造があげられる11。 こうした状況下において、民間のノウハウを活用することによるコスト構造の改善や、施設の建設 や整備などの初期投資に支出を要さないことで財政負担の平準化がはかられるPFI 方式の導入に期 待が寄せられたのは当然の流れであったとも考えられる。 さらに自治体病院の経営形態見直しに拍車をかけたのが2007年に成立した「財政健全化法」と総 務省から策定された「公立病院改革ガイドライン」の影響であった12。この「公立病院改革ガイドラ イン」では、改革のための具体的な3つの視点として、経営の効率化、再編・ネットワーク化、経 営形態の見直し等があげられている。このうち、経営の効率化については、それに関わる数値目標 として、経常収支比率のほか、病床利用率の全国平均値なども示されており、こうした目標値が実 現できない場合には、3年程度の期間内に、達成のための基本計画策定が求められる13。濱田(2008) によると、PFI との関連では、再編・ネットワーク化のモデルパターンのひとつとして、例えば高 知医療センターのように、県立病院と市立病院とをPFI 方式を用いて統合したケースについて言及 するなど、選択肢の1つとして、PFI 方式もあり得ると考えられているという。しかしながらその 一方で、ガイドラインの中でも、PFI 方式については、「契約期間が極めて長期に及ぶことが一般的 であり、同方式の採用を検討する場合には、契約期間中の事業環境の変化に対応したリスクの発生 に備え、あらかじめ公・民で適切なリスク分担のルールを定める等、相当程度慎重な準備と調整を 重ねることが求められる」として、慎重に検討するように注意を促している点が指摘されている。
Ⅲ わが国における病院
PFI の実際
(1)「第一世代」の病院PFI わが国におけるこれまでの病院PFI 事業は、実施方針の公表件数でみて14件である(表3)。 11 東洋経済(2009年7月18日号)による。野村(2009)でも、医療経済実態調査のデータ結果から、とりわ け公立病院の赤字幅が大きいことが指摘されている。 12 財政健全化法の施行により、これまでの自治体の普通会計に病院会計も連結されることになったため、公 立病院が赤字であると、自治体もまた全体として、財政健全化計画や財政再生計画の策定を迫られることに なる。 13 長(2009)によると、たとえば、病床利用率が3年連続で70%未満の病院は、病床削減や診療所への転換 が求められるなど、厳しい方向性が示されているという。(表3) わが国における病院PFI 病床数 (床) 実施方針の 公表(年月) 所有 形態 期間 (年) 契約 金額 (億円) 代表企業 進捗状況 選定時の VFM% 入札結果 VFM% 高知医療センター 632 H13.2 BTO 28 2131 オリックス H17.3 開院 5.0 4.2 近 江 八 幡 市 立 総 合 医療センター 407 H13.5 BOT 30 680 大林組 H18.10 開院 6.2 14.4 八尾市立病院 380 H14.9 BTO 15 540 ニチイ学館 H16.5 事業開始 6.3 7.2-12.7 府 中 メ デ ィ カ ル プ ラザ14 (多摩) 740 (小児) 610 H16.10 BTO 15 2490 清水建設 H22.3 開院予定 2.3 6.7 東京都がん・ 感染症医療センター 800 H17.12 BTO 15 1860 三菱商事 4.9 4.3 愛知県立中央病院 823 H18.5 BTO 20 1911 大成建設 H25.6 開院予定 5.4 神戸市立中央病院 700 H18.8 BTO 30 1024 神戸製鋼 H23 開院予定 8.0 8.0 筑波大学付属病院 800 H18.11 BOT 20 1186 日立ビル システム H24 開院予定 5.3 島 根 県 立 こ こ ろ の 医療センター 242 H16.3 BTO 15 89 中筋組 9.0 11.0 大阪府精神 医療センター 440 H18.10 BTO 10 - - 入札 不成立 10.0 - 東京都精神 医療センター 897 H18.12 BTO 15 735 日揮、 東京電力 4.6 4.5 神奈川県立 がんセンター H20.8 BTO 20 4.3 京都市立病院 H20.8 DBO 15 5.6 福岡市立 こども病院・感染症 センター H21.3 BTO 15 (出所)15 14 多摩総合医療センター及び小児総合医療センターを示している。 15 『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』の内容に加筆。 日本経済新聞2009年1月26日、2月6日、6月22日、9月24日、10月29日、11月27日、 日経産業新聞2006年2月1日、2008年9月1日、9月10日、3月19日。 表中の空欄は明らかにされていない部分である。
初期に導入されて、とりわけ注目を集めた高知医療センター、近江八幡市立総合医療センター、 八尾市立病院の3事例は、先例がない中での「第一世代」であるが、そこでの経験を踏まえて、そ の後も病院PFI は「第二世代」、「第三世代」へと発展している(図3)。最近では、筑波大学付属病 院のように、国立大学法人付属病院として初の案件も見られる。 以下では、まず、「第一世代」である高知医療センターと近江八幡市立総合医療センターの事例16 をもとに、それぞれの導入の経緯やその内容、明らかになった課題などについて整理する。 (図3)わが国における病院PFI の発展の過程 ① 高知医療センターの事例 PFI 導入の経緯と内容 わが国初の病院PFI としてとして注目されたのが、高知県立中央病院と高知市立市民病院の統合17 によって生まれた高知医療センターのPFI 事業である。両病院ともに、医療技術や設備の高度化が 望まれる中で、施設の老朽化や狭小化の問題と、多額の累積赤字を抱えていた。野田(2002)によ ると、高知県は医療計画で定められている必要病床数を上回る病床過剰地域であり、それぞれが単 独で整備を進めることは困難であったという。両病院を支える自治体の財政も悪化傾向にあったた め、2つの自治体病院を統合する形でPFI 方式により、新しい病院が建設、整備されることとなっ た。この病院PFI 事業の構図と経緯は、(図4)と(表4)のようにまとめることができる。 16 八尾市立病院のケースは、施設の建設を含まず、運営に特化し、維持管理と運営業務のみをPFI で行なう形 式である。 17 高知県立中央病院はM23年5月の開院、400床、22診療科。高知市立市民病院は M31年4月の開院、410床、 16診療科と、どちらもともにほぼ同規模の病院である。
(図4)高知医療センターの場合の全体図 (表4)高知医療センターのPFI 事業をめぐる経緯 時 期 内 容 2001年 2月 7月 実施方針の公表 事業者の募集 2002年 7月 10月 12月 事業者としてオリックスグループが選定 病院企業団とオリックスが基本協定を締結 SPC「高知医療ピーエフアイ株式会社」を設立 PFI 契約締結 建設着工 2003年 5月 SPC が120億円のプロジェクトファイナンス契約締結 2005年 3月 高知医療センター開院 2009年 6月 11月 SPC から、合意による PFI 事業契約終了の申出。協議開始。 SPC と PFI 契約終了で基本合意 2010年 4月 直営方式による公立病院へ(予定) (出所)18 筆者作成 結果として、PFI 導入後の病院の経営状況は悪化し、このケースでは、SPC 側から、短期での黒 字転換は困難であるとして契約終了を提案されて契約解除19となり、失敗に終わっている。 18 日本経済新聞2002年10月26日、12月6日、2009年6月17日、7月23日(夕刊)、 日経産業新聞2009年12月4日などをもとに作成。 19 契約終了にともなうセンター側の負担は8000万円で、県と市の負担はないという。また金融機関からの借 入金の期限前返済にともなう費用10億1500万円のうち、5億2700万円を病院企業団が負担し、残りは SPC
この病院PFI の大きな特徴は、これまで導入されてきたわが国における PFI 案件の多くが施設整 備型のPFI であったのに対し、このケースでは運営重視型であったという点であり、医療行為を除 くほとんどの業務がSPC に委ねられている20。植田・他(2006)によると、こうした運営型重視の PFI を進めるにあたっては、中心になってアレンジした金融機関もまた、その特徴ゆえの工夫に取 り組んでおり、運営面での広範な業務のために委託業者数も多く複雑になることから、資金の流れ が止まって業者が撤退することのないように、「地域金融機関を交えた特殊なストラクチャー」を構 築したという。金融団へは地元経済を支える地域金融機関が多数参加しており、またSPC の事業者 や協力企業にも地元の企業を多く採用することにより、地元経済への貢献を期待した21。 経営状況の実際と問題点 このような新たなPFI 手法の導入により、患者サービスの向上や委託料のシンプル化などが実現 し、「4~5年先の高度医療をわずか1年で達成した」ことは、大きなメリットである22。また運用面 での効果として、看護補助業務についても看護師からの評価が高かったという23。しかしながら後述 のように、さまざまな問題点が明らかになるとともに、経営状況については、予想とは大きく離れ24、 厳しい結果となった。導入から4年目の2007年末には資金繰りが破綻し、県と市から7.6億円の借入 を行なったものの、2008年度決算では、純損益が21.12億円、累積赤字は79.22億円にも上った25。 堀見(2009)は、このような結果について、とりわけ材料費と経費が想定以上に高くなり、費用 面での乖離が大きかったと分析しており(表5)、「4年間の VFM は認められなかった」と結論づ けている。 が経営協力金として病院企業団に寄付することで解除が合意された。直営方式に戻ることにより、これま での支払委託料4.8億円が削減できるため、11年度の収支は黒字転換が見込まれるという。(日経産業新聞 2009年12月4日による) 20 植田・他(2006)によれば、医療法に基づく政令8業務に加えて、これまで外注でおこなわれていた医療 事務や院内における情報システムなど、医療関連サービスも、すべてSPC に委ねられたという。 21 具体的には、原材料の総調達額の50%以上を地元企業からとし、施設の建設においては25万人を高知県内か らの雇用とした。医事業務での地元雇用目標は90%、清掃業務では85%とし、施設維持管理や運営にかかわ る地元雇用目標は77%としていたという。(日本経済新聞2002年10月26日) 22 東洋経済(2006年7月29日号)の記事によると、フル稼働の救命救急センターやヘリコプターでの患者受 け入れ、地域病院との連携などが実現したという。 23 月刊労働組合(2006年2月号)の記事による。 24 堀見(2009)によると、当初の計画では、経費や材料費削減のメリットは200億円となる予定で、H23年に は経常損益が黒字化し、H43年には5.32億円の黒字となる予定であったという。 25 東洋経済(2009年7月18日号)の記事、日本経済新聞2009年7月23日(夕刊)などの記述による。
(表5) 経費と材料費に関する比較 H19年 H20年 経 費 材料費 経 費 材料費 計画値 30.25 29.65 33.13 30.49 実際値 35.73 38.20 39.14 40.11 単位:億円 (出所)堀見(2009)をもとに作成 とりわけ、高知医療センターの事例において大きな問題として取り上げられたのが、この材料費 にかかわる医業収益に対する「材料費比率」としての値である。当初SPC は、契約書において、こ の値の目標値を23.4%とすることとしていた。しかしながら、実際の値は(表6)のような推移と なり、コスト削減が計画通りに進まなかったことや、後述の診療報酬の請求漏れも影響して、契約 書に示していた目標値とは大きく異なる結果となった26。 その他、この材料費比率の問題に加えて、高知医療センターのケースにおいて問題となった特徴 的な内容は次のような点である。まず、PFI 導入にかかわるプロセスの問題である。この事例では、 PFI が病院の基本計画策定後に導入されており、本来の PFI では、民間からの発案に委ねるべきと ころ、計画の途中から導入され、通常とは逆の順で進められた。それゆえに、その後の VFM 評価 算定に要する期間も通常より長く、全体として進行が遅延している。累積赤字という問題ゆえに、 他の方法が検討されることもなく、そもそも「PFI ありき」という流れがあったと掘見(2009)は 指摘する。 次に運営方式に関わる問題である。英国などにおける一般的なPFI においては、BOT 方式の採用 がほとんどである。これは、運営期間中は資産にかかわるハードの所有権を民間に委ねるほうが公 26 実際に材料費調達業務について、病院企業団はSPC に対して「C 評価」を与え、これにともない、SPC は 業務改善勧告を受けているという。(日本経済新聞2006年7月24日) (表6)材料費比率の推移 H17年 30.9% H18年 31.2% H19年 30.1% H20年 30.6% (出所)堀見(2009)
共側からの要求に応じて柔軟な対応が可能になると考えられているためである。しかしながら、高 知医療センターの場合には、職員宿舎やその他の施設にはBOT 方式が用いられたものの、病院本館 にはBTO 方式が採用されていた。この点については、医療コア業務は公共側に主導権があることか ら、医療施設そのものも公共側の所有に委ねるほうが柔軟に対応できると考えたためであったとさ れている27。しかしながら、このようなとりわけ運営重視型のPFI について、この方式が効果的であ ったのかどうかは疑問であり、本来のPFI とも異なるものである。 さらに、電子カルテ導入にともなって発生した、想定外の医事業務請求漏れの問題があった。診 療報酬の請求は、医業収入に直結する重要なものであるにもかかわらず、医事業務担当者と医師や 看護師などとの連携が不十分であったため、記入不備などにより、この問題が発生した28。堀見(2009) は、この点を、「SPC から請け負う各委託業務の質の低さの問題」として指摘している。 また当初、目標としていた地元企業の採用も、実際にはその多くが県外などからの企業であった。 効率化を目指したことによる安い価格設定では、地元企業側も採算がとれず、またSPC 側にとって も地元優先が効率化の足かせになっていたという29。とりわけ、高知医療センターの事例に特有の問 題としては、これらの問題があった30。 明らかになった課題 堀見(2009)は、この事例の検証を通じて、4年間を経過してみての課題として、以下のような 点を指摘している。 第1に、委託業務の達成水準の低さやSPC のマネジメント能力不足の問題である。契約時の提案 水準の達成度について、モニタリング検証の結果、当初の提案業務1349件のうち、381件は未達成で あったという。また委託業務間での包括的な調整がなされず、個々の業務間に隙間が生じ、全体と して不効率となったことは他の事例でも問題とされている点である。第2に、PFI 契約のもつ不完 備性や記述のあいまいさの問題である。この点は、高知医療センターの事例では、先述の材料費比 率をめぐって、とりわけ大きく問題視された。PFI 契約において掲げられた「材料費比率23.4%」と いう数値を、単なる目標値とみるか、約束とみるかで、両者の考え方が異なっていた。目標が未達 成である場合のペナルティについても明記されておらず、SPC 側としては、この数値は約束ではな 27 野田(2002)、佐藤(2007)などの指摘による。 28 東洋経済(2006年7月29日号)の記事によると、この問題について、病院企業団は、SPC に対して3回の 改善勧告を行い、さらに改善命令、1ヶ月分の委託料の減額というペナルティまで課していたという。 29 月刊労働組合(2006年2月号)の記事による。 30 その他、初代院長の贈収賄の問題も生じていた。
く単なる目標であり、「高度医療が増えれば、材料費比率は必然的に上昇する」と主張したという31。 このような解釈の相違から生じる問題とともに、PFI 契約は、長期にコミットした契約であり、制 度変更など新たな環境変化に対して柔軟な対応が難しい、契約の不完備性下では、契約に明記され ていないことに対しては契約の見直しをその都度行なわないと対応できないことになり、経営に対 する意思決定の迅速性と柔軟性を欠く結果につながってしまう。第3に、SPC と病院側との考え方 の相違の問題である。VFM についても、SPC は30年という長期の契約期間内において期待されてい るVFM が生じればよいと考えていた点で、病院側の予想とは異なっており、SPC に対して過大な 期待を寄せすぎていたとも見られる。しかしながら、堀見(2009)は、SPC にとっての目的は、あ くまでも出資者の利益を優先した自社の利益の最大化であって、利益追求が出来ない医療法の制約 の下で、患者や市民のための医療、という病院の目的とは異なっていると指摘する。SPC に対する 包括委託ゆえに、SPC が、業務を委託している協力企業に対して、どれだけの対価を支払っている のか、病院側が把握できず、病院側とSPC との間には、利益相反の構図がつくられてしまう。堀見 (2009)も実際に、この点について、医療は期待通りのものが実現し、医業収益も増加傾向である にもかかわらず、病院企業団は想定以上の赤字に陥っている一方で、SPC は黒字という状況になり、 これが「不可解な現象」として、不信感を抱かせたと指摘している。こうした両者の相違は、病院 内という1つの組織において、医療コア業務を担う公共側と、ノンコア業務に限定されるSPC とい う、業務の2分化が生じていることに起因しており、病院PFI の性質上、必然的に起こりうる問題 でもある。 これらの問題の他、PFI では、契約によって決められた一定額の委託料を長期的に固定して支払 わなければならないこと、また民間による資金調達が結果として高金利となり、これらが経営を圧 迫する要因になりうる点などが指摘できる。また、モニタリングについても、高知医療センターの 場合には3段階のモニタリング構造を設定していた32にもかかわらず、 SPC に対するインセンティ ブやペナルティについて定めた「モニタリング基本計画書」に、曖昧な点が多かったことも問題で あった33。こうした課題については、近江八幡市立総合医療センターの事例においても、同様にあて はまる点が多く存在している。 31 東洋経済(2006年7月29日号)の記事による。 32 植田・他(2006)によると、個別の委託業者がおこなう「セルフモニタリング」、SPC が行なう「チェック モニタリング」、モニタリング実施計画書に基づき、要求水準を満たしているかどうかチェックする「ペナ ルティのためのモニタリング」の3段階であったという。 33 東洋経済(2006年7月29日号)の記事による。
② 近江八幡市立総合医療センターの事例 PFI 導入の経緯と内容 近江八幡市立総合医療センターは、近江八幡市の旧市立病院を移転、整備することによってつく られた病院で、高知医療センターのケースとは異なり、基本設計の段階からPFI の手法を用いた本 格的な病院PFI としてはわが国で初めての事例である。高知医療センターの場合や、他の多くの自 治体病院とは異なり、近江八幡市の旧市民病院は、2003年まで連続して経常黒字を達成しており、 経営状況はきわめて良かった。この病院の整備、移転が計画された背景には、高知医療センターの 事例と同様に、建物の老朽化や高度な医療提供への要望などがあったが、それとともに、PFI 方式 によれば、初期投資に多額の資金が必要とされず、財政負担の平準化が期待できることから、サー ビスの向上やコスト削減といった通常の PFI によるメリットと合わせて、PFI を強く進めようとす る当時の市長の政治的な判断があった、と指摘されている34。 35
当初、PFI の導入により、68億円のコスト削減が見込まれており、運営方式は PFI 本来の BOT 方 式が採用されていた。この点は英国でみられるPFI 事業とも同様であり、SPC が施設建設後の契約 期間中にハードの所有権を有することによって、モチベーション向上へつながることに期待してい たためとみられる。このPFI においても、病院経営は市が担い、SPC の業務は、病院施設の設計や 34 大島(2009)による。PFI 方式の採用については、議会からの反対も強かったという。また、岡地(2008) のように、こうしてPFI を推進する前市長と PFI に否定的な現市長との政治的な確執がその後の巨額な赤 字を生じさせた原因であるとする指摘もある。 35 大島(2009)、日本経済新聞2008年1月22日、12月25日(夕刊)、日経産業新聞2008年12月29日などをもと に作成。 (表7)近江八幡市立総合医療センターのPFI 事業をめぐる経緯 時 期 内 容 2001年3月 5月 PFI 方式導入の決定 実施方針の公表 2002年8月 大林組が選定 SPC「PFI 近江八幡株式会社(PFI 近江)」が設立 2003年11月 PFI 事業契約の締結 2006年10月 近江八幡市立総合医療センター開院 2007年12月 「近江八幡市立総合医療センターのあり方検討委員会」が設立 2008年1月 12月 委員会による経営改善策の提言 PFI 契約解除を市議会で可決し、SPC と合意 2009年3月末 4月 契約終了 直営方式によるスタート (出所)35 筆者作成
建設、資金調達や医療周辺業務の維持管理などに限られている。高知医療センターの事例と比較し ても、近江八幡市立総合医療センターのケースでは、運営方式やPFI 導入のプロセスなど、本来の PFI に近いものとなっていることが分かる。しかしながら、この事例においても、開院後の経営状 態は大きく悪化して、従来の黒字経営から赤字へと転落している36。この PFI 事業の経緯は(表7) の通りであるが、結果としてPFI 契約は解除され37、市が病院施設を一括してSPC から買い取り、 従来の直営方式へと戻ることになった38。 指摘された問題点 契約解除に至るまでに、経営の悪化を受けて、2007年12月には「近江八幡市立総合医療センター のあり方検討委員会」が設置され、そこで問題点や改善策が提言書としてまとめられ、市長に提出 されている。この提言書の中で指摘された問題点は次のような点にあった39。 第1に、資金不足により、病院と市の財政が破綻するおそれが出ていることである。2007年度の 実績で約28億円の赤字(当期純損益)となっており、収入よりも支出が多く、毎年約10億円以上の 資金流出が進むと見られていた。その要因は、診療報酬引き下げや外来患者の減少によって収入が 伸びないことに対し、民間融資による金利負担が非常に重いということにあった40。この状態が継続 すると、近江八幡市が財政健全化法上の財政再建団体に転落するおそれもあると見られた。 第2に、 2つの異質な組織の存在と医療現場の非効率性の問題である。すなわち、本来は病院側とSPC は協 働して医療サービスの質向上を目指すべきであるにもかかわらず、1つの病院という組織内に、非 営利性のもとで医療コア業務をおこなう公共側と、営利性のもとで医療のノンコア業務に限定して おこなうSPC とが存在している。両者間でのコミュニケーション不足が医療現場の非効率性をまね いているのであり、こうした問題点を市や病院が理解しておくべきであった、と提言書では指摘す る41。業務の2分化にともなうこの問題は、高知医療センターの事例でもすでに指摘されていたこと 36 財務内容の詳細は、大島(2009)において分析がなされている。2005年まで毎年2億円程度の黒字であっ た医業収益が、2006年には2.32億円の赤字となった。 37 市が20億円の違約金を支払うことで契約解除が合意され、日本初の発注者からの契約解除となった。病院 施設の一括買取のために、118億円の病院事業債の発行が決定された。(日本経済新聞2008年1月22日)PFI 事業者の大林組は、これに対し、あくまでも近江八幡市の事情で解約したものであり、PFI 事業への取組み は今後も推進していくと主張している。(日経産業新聞2008年12月29) 38 直営方式に戻すことで、これまでの運営費や金利など、およそ113億円が軽減されるという。 (日経産業新聞2008年12月29) 39 厚生福祉(2009年7月7日号)において、提言書に関する詳細な内容が解説されている。以下はこの内容 に基づく。 40 5.3%の高金利であり、施設整備費の244億円のうち、99億円が金利分であったという。 41 具体的には、医療従事者が直接、民間事業者に業務を依頼するときに、一度SPC を通さなければならず、
でもあり、病院PFI の内在的な問題でもあるといえる。第3に、経営判断における意思決定の非効 率性の問題である。この点も高知医療センターのケースではすでに指摘されていた。すなわち、医 療分野は、とりわけその時々の制度や政策の変更などによって、経営環境の変化が激しい業界であ るが、病院からSPC への委託費の支払いは契約によってほぼ長期的に固定化されており、契約内容 や金額の変更に対する柔軟性に欠け、意思決定が非効率になるという点である。第4に、PFI 導入 時の検討が不十分なまま「PFI ありき」で議論が進んでしまったことであり、PFI そのものに対する 理解が不十分であったこと、また経営当事者としての自覚と責任感が欠けていた点を指摘している42。 こうして提言書では、PFI の制度そのものにも問題があり、今後の自治体病院において、PFI を用 いた経営計画を検討するにあたっては、慎重にすべきであるとまとめている43。このような提言書で 指摘されている課題に加えて、大島(2009)では、さらに次のような点を指摘している。これらの中 には、高知医療センターのケースにおいて同様にすでに問題とされていた内容もある。 第1に、市や病院とSPC との目的の相違である。VFM についての両者の認識は異なっており、 市が最初から最高のサービス提供を期待しても、SPC は契約書に明記されたことのみを実行して、 固定化された委託料を受け取ればよく、「利潤追求をするSPC に、市の支払対価を削減するという コスト低下のインセンティブは生じない」。PFI の分野の中でも、とりわけ複雑で継続性が求められ る医療という分野において、「医療法の制約により何ら経験のない民間業者」に対して、そうした目 的の相違を理解せずに、過度の期待を寄せすぎていたともいえる。またそもそも、SPC には「財務 状態まで考慮した病院経営のノウハウや経営改善努力の意思」はなく、この点からは大林組に限ら ず、他の業者が落札していたとしても同様であったと指摘する。第2に、契約の曖昧さや不完備性 の問題である。契約の不備が多く、さらに契約によって長期的にさまざまなことが固定化されてし まい、こうした柔軟性を欠いた病院PFI の導入は大きな誤算であった、とも指摘している。第3に、 モニタリングに関わる問題点である。このケースにおいても実質的なモニタリングは実施されてお らず、PFI がプロジェクトファイナンスのひとつとして位置づけられているとしても、SPC と金融 機関が一体化され、金融機関によるモニタリングが機能していなかった。英国のような第三者の監 査機能も存在していなかった。第4に、VFM という評価指標そのものに関わる問題点である。すな そうした中間業者の存在は、迅速かつ正確な業務の遂行を妨げていたという。 42 大島(2009)でも、そもそも導入時において、PFI 以外の方法をほとんど考慮していなかったことを問題点 として指摘している。 43 実際に、福岡市の市立こども病院・感染症センターのケースでは、こうした先行事例が失敗したことなど から、当初の計画よりもPFI を縮小し、PFI 事業者への委託業務を減らしたり、民間資金によらず起債によ る資金調達方法へ転換する動きが見られている。(日本経済新聞2009年6月22日、9月2日)
わち、単にVFM だけを見て、PFI 導入の可否を判断するのは適切ではない、と指摘する。VFM は あくまでも一定の条件下における「事前的な理論値」にすぎず、現実の値ではなく、診療報酬の改 定や政策変更などの環境変化が激しい状況下では、必ずしもその値が達成できるとは限らない。こ の点は、とりわけ環境の変化が著しい医療分野における病院PFI では重要な点であるが、高知医療 センターの事例においては指摘されていなかった視点でもある。さらにこの事例においては、コス ト削減効果の点においても不十分であって、実質的なPFI ではない、とも指摘している。建設や維 持管理費については削減可能であったものの、人件費や材料費などの管理は病院側が担っており、 従来と何ら変わりはなく、コスト削減のための民間ノウハウは活かされていなかったという44。 こうした問題点をまとめて、大島(2009)は、「総合的には病院PFI を導入した長所よりも短所、 リスクの方がはるかに大きく」、これまで長年にわたって黒字を計上してきたことを考えると、今後 も継続して直営方式にすべきであり、PFI 方式を採用すべきではなかったといえるかもしれない、 とする。PFI 分野の中でも、とりわけ医療という複雑な分野に過度の期待を寄せすぎており、近江 八幡市立総合医療センターの事例をふまえると、「自治体病院に対する病院PFI の適用は長所よりも 短所が目立つ」と結論づけている。 このように、それぞれの事例の内容や課題はさまざまであるが、「第一世代」がすでに導入して 経験してきたPFI を通じて、課題として共通に認識されるべき点として、『病院PFI 推進ガイドライ ン改訂版』では、「病院事業の特性への対応が不十分であったこと、PFI 導入前の基本計画策定や PFI 導入可能性調査など、初期計画が重要であるにもかかわらず基本手順が遵守されていなかった こと、業務委託を包括化するメリットを考えたときに、広範な個別業務を総合的にマネジメントす る統括マネジメント能力が欠けていたこと」などを挙げている。 (2)その後の病院PFI 次の「第二世代」では、こうした課題を見直して改善しつつ、新たな病院PFI をつくり上げてい る。古澤(2006)では、「第二世代」の代表事例として、「都立病院改革実行プログラム」に基づき、 東京都で初の病院PFI 事業となった、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターのケース45 (多摩病院PFI)をとりあげて紹介している。 この事例における病院PFI の特徴は、「サービスプロバイダー」としての役割を、民間事業者であ 44 当初の計画において、建設費や維持管理費については、従来方式のままでは750億円、PFI 方式にすれば682 億円と削減効果が期待されていた。しかしながら、人件費の1500億円と、材料費の750億円については、当 初の計画時からそのままであった。 45 多摩総合医療センターは都立府中病院を全面移転したものであり、当初は多摩広域基幹病院となっていた。 小児総合医療センターは、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅が丘小児病院を統合したものである。
るSPC に求めたところにある。ここで、サービスプロバイダーとは、「マネジメント・アウトソー シング」と「パートナーシップ」をコンセプトに、委託業務の統括機能と経営支援機能の両方の総 合的なマネジメント能力をそなえた存在であるとされる。「マネジメント・アウトソーシング」は、 従来のような単なる個別業務の包括委託とは異なり、個々の業務を再編・再構築して業務間の隙間 をうめてサービスを提供することであり、これによってはじめて業務全体が効率化され、包括委託 のメリットが期待できるようになる。また「パートナーシップ」については、本来、民間には医療 コア業務は委託できないものの、民間との協働により、医療コア業務についても改善のための提案 などを通じて経営支援効果が期待できるとするものである。つまりこれは、業務の2分化の問題に 対する対応策であると考えられる。この経営支援効果をより期待するためには、委託業務にかかわ る委託料のみならず、これとは別に経営支援への対価として病院の収支全体と連動させるようなイ ンセンティブ付与の仕組みが取り入れられることが望ましい。しかしながら多摩病院PFI のケース ではそこまで至らず、「マネジメント・アウトソーシング」についてはその成果が評価できるものの、 「パートナーシップ」については課題が残ったことを古澤(2006)では指摘している。ただし、こ うした「第二世代」における取組みは、東京という大都市に立地している環境であるからこそ実現 できた部分も多いという指摘もある46。 その後の病院PFI の取組みとして、「第三世代」に位置づけられるものとしては、東京都立松沢病 院の「東京都精神医療センター」再整備事業がある47。松崎・小柳他(2009)では、この事業に携わ った発注者、コンサルタント、事業者それぞれの立場から、取組みに対する考え方の詳細が紹介さ れている。ここでは「第二世代」の取組みにおいて取り入れられて目指していた、パートナーとし て病院経営に関わる経営支援や、SPC による統括マネジメント機能、モニタリングの仕組みの強化 などが明確にされている。医療ニーズや医療制度などの変化にも柔軟に対応できる仕組みの構築48 や、文書に限らず応募者へのさまざまな情報提供の場をもうけることにより、応募者の過大な負担 をなるべく軽減するような募集スキームも工夫している。こうした点は、「第二世代」を通じても、 46 『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』では、この点を指摘している。 47 この案件では、日揮が東京電力、尾瀬林業などとの共同で受注したが、国内エンジニアリング会社による 病院PFI は初めてであったという。日揮はプラント施設の管理ノウハウを活かし、東京電力は施設へのエ ネルギー供給や省エネ技術の導入を担当し、尾瀬林業は敷地内の植物保全サービスなどを担当するという。 (日経産業新聞2008年3月19日) 48 たとえば、松崎・小柳他(2009)によれば「エンジニアリング企業が持つプロジェクトマネジメント技術 の1つである業務階層構造化の考え方」を導入しているという。
なお課題として残された問題に対する解決策でもある49。
Ⅳ 理論的な観点からの検討課題
(1)不完備契約理論による検討 PFI に関する理論的な観点からの分析として、PFI 契約を、技術革新や制度変更など、「事前に予 期されないイノベーションが生じる不完備契約」ととらえて契約理論を用いたものに大島(2001) がある。ここでは、PFI のメリットを、包括委託によるサービス水準の向上と民間ノウハウによる コスト削減効果に集約して、BOT 方式によるサービス購入型の PFI を前提に、Hart 他(2007)のモデルに基づき分析をおこなった結果、民間事業者に品質向上のインセンティブが適切に与えられて、
品質低下が少ない場合には、従来の公共部門による供給よりもPFI のほうが望ましくなることを示 している。つまり、PFI によるメリットが得られるためには、民間事業者に品質向上への適切なイ ンセンティブを与える仕組みが必要であり、品質向上に結びつくのであれば、PFI 導入は効果的な 手段となりうる。このモデルでは、BOT 方式が前提となっており、本来の PFI では、BOT 方式によ り民間に所有権を与えることでインセンティブ付与が期待されている。しかしながら、これまでの わが国における病院PFI の事例の多くは BTO 方式であり、また公共側と SPC の間での業務の2分 化など、実際にはサービスの品質向上につながっていかなかった可能性もある。 大島(2001)では、本来、医療の分野に民営化の考え方を適用することについては、政策の変更 や診療報酬改定などにともなう環境変化が激しく、必要なサービスすべてを事前に契約の中に明記 できないことから、そうした変化に応じて、民間との契約を変更するには大きなコストがかかり、 この分野では契約の不完備性の問題が大きすぎる、と指摘する。こうした問題に加えて、わが国の 現状において散見される、採用方式の相違や病院PFI に共通して見られる業務の2分化といった問 題は、PFI の効果に疑問を呈する部分でもある。とりわけ組織内における業務2分化の問題は、病 院PFI においては避けられない問題でもあり、理論的な観点から病院 PFI の効果を明らかにしてい く上で、大島(2001)のモデルを今後拡張していく際の検討課題としたいところである。 (2)PFI におけるファイナンス的な側面からの検討とモニタリング 小田(2008)は、PFI 契約の大きな特徴の1つに、民間資金の活用があるものの、その理論的根拠 が必ずしも明確ではないことを指摘し、金融機関が担うモニタリングの役割について強調している。 PFI は、公共側から民間事業者への業務委託であり、両者の間にはプリンシパル・エージェンシー 49 『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』では、さらに「第二世代」の取組みを通じて病院 PFI をより良くして いくための未解決の課題として、「委託費負担の増大、医療環境変化への対応、応募者の過大負担、公共側 のコンサルタントの過大負担」といった点を提示している。
関係が存在している。しかしながら、公共側には民間事業者の行動が直接コントロールできないた め、モラルハザードが生じる可能性があり、モニタリングの仕組みとして、サービスの向上による アウトプット達成度に応じた適切な報酬設計と、それによるインセンティブ付与が必要であるとさ れる。この点について、実際には公共側による適切なモニタリングは難しく、PFI による民間資金 の活用は、銀行等による債権者の存在がモニタリングのインセンティブを与える点で、メリットが あると結論づけている。PFI の効果を理論的に明らかにしていく上では、こうしたモニタリングの 問題を組み入れていくことが必要となる。 (3)リアルオプションの観点からの検討 とりわけ医療の分野においては、需要の側面での変化に加えて、政策の変更や診療報酬改定など の不確実性が大きいことから、不確実性下における意思決定という視点で、リアルオプションを用 いた病院PFI 分析の可能性について検討しているのが佐藤(2007)である。ここでは、PFI 契約が 長期契約であることから、リアルオプションは公立病院のように事業の継続性が求められる事業に は適合的であり、その点において、中止オプションを検討することは意味がなく、「延期オプション で病院整備計画実施のタイミングを検討するといったことには一定の意味があると思われる」と結 論づけている。 リアルオプションの適用には、不確実性下においてその時の経営状況に応じた柔軟な対応が前提 となる。この点において、わが国における病院PFI の現状を概観するかぎり、病院 PFI は柔軟性を 欠いた手法であると言わざるをえず、今の状況下においては、リアルオプションの適用にかなうも のではないとも思われる。実際に大島(2009)は、近江八幡市立総合医療センターのケースについ て、「契約により長期的にさまざまなことが規定され、柔軟性を欠いた病院PFI 方式を導入したのは 大きな誤算であったかもしれない」と指摘している。また、医療・介護経営研究会(2009)でも、 同様の事例について、検討委員会の提言において、SPC への委託料などの「固定化された費用は、 その時々の経営状況において、経営者による柔軟な意思決定を反映しにくいというデメリットがあ る」として、現在のPFI 方式のままでは、柔軟な対応が難しいことを指摘している。 医療分野へのPFI の適用は、環境変化による不確実性に加えて、その複雑さや非営利性の問題、 組織内における業務2分化など、さまざまな難しさを含んでいる。しかしながら、こうした特殊性 のもとで、病院PFI を効果的なものにするためには、柔軟な対応という観点から、契約や法整備の 見直しが必要になる。そのもとでは、リアルオプションの適用を前提とした理論的な側面からの検 討が求められる。また、事業の継続性は重要ではあるが、さまざまなPFI の問題点がしだいに明ら かになりつつあり、わが国における2つの先行事例のように、契約解除の必要性もあり得るのであ れば、中止オプションとしての検討も必要となるように思われる。こうしたリアルオプションによ
る具体的なモデルの展開は、今後の検討課題である。
Ⅴ おわりに
本稿においては、従来から注目されてきた病院PFI について、わが国の先行事例を振り返りつつ、 その現状を概観し、課題を整理するとともに、今後、理論的な観点から病院PFI の分析を試みる上 での検討課題について明らかにした。 わが国で初の試みとして期待されていた「第一世代」ともいうべき高知医療センターや近江八幡 市立総合医療センターは、ともに経営の悪化をまねき、PFI 契約解除が決まり、従来の直営方式に 戻るなど、失敗に終わっている。こうした先例から、病院PFI に対しては否定的な見解も見受けら れる50。たとえば、近江八幡市立総合医療センターのケースについて詳細な分析を試みた大島(2009) は、病院PFI の限界として、そもそも発注者である公共と、民間事業者である SPC とでは目的が異 なっており、SPC には最初から病院経営の手法もノウハウもないこと、病院という特殊性ゆえに、 法的にもさまざまな制約が多く、「民間事業者の自由な裁量となる部分は、ごく一部に限られる」こ となどを指摘している。また、近江八幡市立総合医療センターのあり方に関する提言においても、 病院PFI の導入検討に対しては、緊張感をもって対応すべきことを求め、慎重にするよう提起して いるのみならず、「公立病院改革ガイドライン」においても、PFI 方式については、選択肢の1つと して今後もあり得るとしつつも、慎重な準備と調整が必要であるとして注意を促している。こうし た指摘の背景には、とりわけ「第一世代」の先行事例の場合では、英国本来のPFI のあり方とは異 なった方向で法整備なども不十分なままに導入されてきたことに起因する問題もあるが、病院 PFI に内在する共通の課題の存在も大きい。病院という1つの組織内で生じる医療コア業務とノンコア 業務の2分化、長期契約によるコミット、契約の不完備性と、診療報酬の改定や政策変更など医療 環境の変化に対応できるような柔軟性の欠如、といった問題は、病院PFI において必然的に生じう る問題でもある。こうした問題に対し、「第二世代」、「第三世代」と続くその後の病院PFI の事例で は、わが国独自の工夫が加えられ、解決策が模索されつつある。そうした中で、さまざまな課題を 解決しつつ、より良い方向を目指して独自の病院PFI が創り上げられていくであろう。 しかしながら、単に病院PFI の是非を問うだけではなく、『病院PFI 推進ガイドライン改訂版』で 言及されているように、「PFI が病院経営のすべての問題を解決するわけではない。例えば収益の向 上に直接的に効果のある手法ではないし、PFI を導入したからといって、それだけで大幅な赤字が 50 病院においてはPFI の手法はなじまない、PFI の導入が公立病院を救うことにはならない、といった指摘は、 坂本(2009)や長(2009)などでもなされている。黒字転換するわけでもない」というPFI の本質は理解するべきである。「PFI ではコストは削減でき るが収益増には貢献できず、病院事業の経営改革には医業本体での抜本的な増収対策が必要」51なの である。PFI の導入が経営危機に陥っている病院にとって、効果的なものになり得るためには、や はりわが国の医療政策そのもののあり方が問われてくる。 また、PFI 導入の効果については、理論的な根拠が必ずしも明確ではなく、理論的な観点からも 今後、明らかにしていく必要があると思われる。河口(2003)は、PFI の評価指標である VFM の算 定方式の適切性についても、割引率や適正な将来キャッシュフローの予測などの点で、問題が多い と指摘する。大島(2001)では、不完備契約の下で、民間事業者に品質向上のインセンティブが適 切に与えられるのであれば、PFI の導入が望ましいことを示していたが、とりわけ組織内における 業務の2分化といった病院の特殊性を考慮して、今後、病院PFI への適用可能性を検討してみるこ とも必要である。さらにリアルオプションとの関係では、不完備契約のもとでの最適スキームを考 えるよりも、今後の病院PFI においては、より柔軟な対応ができるような法整備や仕組みのもとで、 リアルオプションによる検討が求められているとも考えられる。その場合においても、適切な意思 決定のために、金融機関に求められるモニタリングの重要性は、一層、増してくると思われる。こ うした検討課題を踏まえ、理論的な観点からの具体的な分析については、今後の課題としていきた い。 参考文献
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