258 (113) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
イ トウ タダ ピコ伊藤忠彦(昭和37
博士(医学) 乙第1459号平成6年3月18日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
出生前後の肺動脈形態の変化一ラット全身急速凍結法による研究一 (主査)教授 門間 和夫 (副査)教授 武田 佳彦,澤口 彰子論 文 内 容 の 要 旨
目的 胎生期から新生児期の肺動脈の形態的特徴や成長に ついては,生体での観察が困難なため不明な点が多い. 本研究の目的は,全身急速凍結法を用いin situで胎仔 および新生仔ラットの肺動脈の形態を観察し,周生期 の急激な血行動態上の変化に対する肺動脈の適応を解 明することである. 対象および方法 Wistar種ラットを用いた.胎仔は妊娠満期に親ごと 液体窒素により凍結し,新生仔は生後0分と一定時間 後(生後30,60分,3,6,24,48時間)にドライア イスアセトンに投入し凍結した.凍結ラットの胸部を 凍結ミクロトームで前額面で切り,断面を写真に記録 し,主肺動脈,左右肺動脈,動脈管の内径を計測した. 25匹の親ラットを用い,12匹の胎仔と105匹の新生仔 ラットについて計測した. 結果 主肺動脈の内径は出生後6時間で約10%細くなった 後,徐々に太くなり,生後48時間で生後0分の115%の 太さになった.胎仔の左右肺動脈径は主肺動脈の 40~50%の太さであり,胎仔型の肺動脈形態を示した. また左右肺動脈の近位部(分岐直後)と遠位部(肺門 部)はほほ伺じ太さであった.出生後左右肺動脈はS 字状曲線を描いて太くなった.すなわち,左右肺動脈 は出生後0分から60分まで急速に太くなり,その後生 後6時間まで定常状態を示した後,再びゆっくりと太 くなった.これらの変化は近位部より遠位部で著しく, その結果,遠位部が近位部より20~30%太くなり,左 右肺動脈はラッパ状となった.生後48時間で右肺動脈 内径は近位部で主肺動脈の76%,遠位部で100%,左肺 動脈内径は近位部で主肺動脈の65%,遠位部で90%ま で太くなり,生後48時間で成人型の肺動脈形態になっ た. 考察 主肺動脈は生後一旦細くなるが,これは肺動脈圧の 低下と胎盤循環途絶による右室拍出量減少によると思 われる.生後1日以降主肺動脈が太くなるのは,心拍 出量増加に対する適応と考えられる.出生後,左右肺 動脈はラッパ状となる.これは近位部が大動脈,動脈 管,心房に密接に囲まれているため充分に拡大できな いためと推定される.また生後3,6時間では左肺動 脈でより近位部と遠位部の差が著しく,この時期は動 脈管の収縮が進行する時期であり,動脈管収縮が左肺 動脈近位部の成長を一時的に抑制すると推定される. 出生後ラットの左右肺動脈が胎生期の8~10倍増加す る肺血流量に対し適応し,成人型の形態になるまで48 時間を必要とする、48時間という時間差をもって血管 が太くなる機序は不明であるが,血流速増加による血 管内皮に対するshear stressがある種の血管作働性物 質を介し血管の成長を促すことが考えられる. 結論胎仔ラットの左右肺動脈の内径は主肺動脈の
40~50%と細く,主肺動脈との間に差がある.出生後 左右肺動脈はS字カーブを描きながら太さを増し生 後48時間で主肺動脈との差がなくなり成入型になる. このようにラットでは出生後の肺動脈の形態は48時間 一864一259 で生後の循環動態に適応した形になる.