(東京女医大州第28巻第11号頁二838−846昭和33年11月)
職業別脳卒中死亡に関する研究
1 緒
東京女子医科大学衛生学教室(主任 吉岡博人教授):金 銀 滋
キン ギン ジ(受付昭和33年9月17日)
言 近年における治療および予防医学の発達は急性 および慢性伝染病による死亡を激減させ,わが国 国民死因は主として老人性疾患により占められる ようになったが1)一5’中でも「中枢神経系の血管損 傷」いわゆる「脳卒中」は死因の第一位を占める ものとして注目されている。 以上の点により,著者はわが国における脳卒中 による死亡の状態を知るべく,明治,大正および 昭和の各年代にわたる脳卒中死亡率について研究 を行い,その結果はすでに発表した4・∼14)。 今回はさらに昭和30年におIJる職業男口脳卒中死 亡率について観察を行った。 従来より各国とも職業別死亡統計の作成は容易 ではなく,世界でも全国的死亡統計を有するのは 二,三の先進国のみに限られている状態である15)。 わが国でも従来局部的に行われた調査はあった が,全国的な規模をもつたものは極めて少い状態 であった。このように職業別にその死亡の状態を 究明することは極めて困難なことである16)17)。 しかし最近,中尾は全国的な職業別死亡率と死因 に関する研究を行い,職業別死因順位を発表して いる15)。この順位を表に作成すると表一1のごと くになる。表によってみると,「中枢神経系の血 表一1 職業別の死因順位(第1位∼第5位)〔男子〕昭和30年薄曇名
死因順位 :専門的技術的職業従事者管理的職業従事者
1 位 申枢神経系 の血管損傷 悪性新生物事務従事創離雛物
販 売 従 事 者 農林漁業従事者および類似職業従 事 者
採鉱採石 従 事 者 運 輸 従 事 者 .援翻匿百「生産f樫従事者お. よび他に分類されない単純 労働者サービス職業従事者
中枢神経系 の血管損傷 中枢神経系 の血管損傷 不慮の事故 不慮の事故 申枢神経系 の血管損優 申枢神経系 の血管損傷 2 位 3悪性新生物全一
位 4 位 5 位 ”’“”’”’i”i’”1”11ii”’”””1’“’1…T”1’1’li””””H’J”核i心臓の疾患
不慮の事故: 中枢神経系 の血管損傷 心臓の疾患灘鋤結核
悪性新生物 悪性新生物 全 結 核 自 殺 心臓の疾患 心臓の疾患 中枢神経系 の血管損傷 悪性新生物 不慮の事故 悪性新生物 悪性新生物 全 結 斗 酒 結 核 不慮の事故 全 結 核 老 衰 不慮の事故 心臓の疾患 不慮の事故 全 結 核 悪性新生物 自 殺 申枢神経系 の血管損傷 全 結 核 不慮の事故 全 結 核 心臓の疾患 心臓の疾患Ginji KIN (Departinent of Hygiene, Tokyo Women’s Medical Co1’lege) : Studies on the deaths of apoplexia by occupations.
管損傷」はいずれの職業においても第4位以内を 占め,しかも大部分の職業において順位は第2位 以内となっている。 著者はこの点に注目し,最近の資料によって, 職業別に脳卒中死亡の状態につき検討するアこめに 観察を行った。 H 資料および研究方法 資料:昭和30年人口動態統計 昭湘30年国勢調査報告 (1%抽出推計人口) 研究方法:前記資料により,職業分類は大分類を用 いた。すなわち,これによると職業名は表一■のごと くである。ただし,人口が1%抽出なるため,分類不 能の職業では人口より死亡者数が多くあらわれている ため,この表から削除した。まk本:交における職業名 は略名を使用した。 上記9職業別について総数,男女別に粗ならびに訂 正死亡率を算出し,また同職業別に性別年令別死亡率 を算出した。 なお訂正死亡率算出にあたっては,昭和25年度全国 人口を標準人Pとして使用した。
皿研究結果
表一皿は職業別に総数,男子および女子の粗お よび訂正死亡率をしめした。 (1)総i数における観察 二一遭によつて粗死亡率についてみると,最高 をしめす職業は「農林,漁業」で入口10万に対し 207.4をしめし,ついで「管理的」,「販売」,「専 二一∬ 職業大分類別による職業名職業名(大分類)
職 業 略 名 専門的技術的職業従事者 「専門的技術的」管理的職業従事一
事 i務 従 事 者 販 売 従 事 者 「管 理 的」 「事 i務」 「販 売」麟i幣塞繋亭号「農
林、漁 業」採鉱、採石従事者
運 輸 従 事 者 技能エ、生産工程従事者お よび他に分類されない単純 労働者サービス職業従事者
「採 鉱、採 石」 「運 輸」 「技能工、生産工程」「サービ
門的技術的」,「技能工,生産工程」,「採鉱,採 石」,「サービス」,「事務」の順に低率となり,:最 低をしめすのは「運輸」の36。4で,最高の「農 林,漁業」との差は171.0となり,著しく大とな っているQ つぎに人口構成を老慮に入れた訂正死亡率につ いてみるべく,図一1に高率順に各職業別死亡率 表一皿: 職業別脳卒中死亡率(入ロ10万対)昭和30年
死
亡
職 業 別 \ 率
専門的技術的職業従事者
管理的職業従事者
事 務 従 事 者 販 売 従 事 者農林漁業従事者および
類似職業従事者
採 鉱 採 石 従 事 者
運 輸 従 事 者技能エ、生産工程従事者
および他に分類されない単純労働者サービス職業従事者
総 数 男 子藩論
訂正
死亡率 80. 6 105. 2 38. 4 94. 1 207. 4 63. 7 36. 4 64. 1 40.4 13L 6 78. 1 73. 6 96. 5 179. 8 170. 3 81. 6 95. 1 87. 6粗死
亡率
101. 1 106. 1 56. 3 131. 8 269. 5 66. 0 37. 8 81. 9 79.8訂正
死亡率 165. 8 88. 9 127. 7 153. 3 198. 8 294. 1 177. 5 164. 2 141. 3 女 子粗死
亡率
34. 6 71. 7 35. 6 36. 0 145. 4 31. 1e
14. 3 15. 0訂正
死亡率 一839一 103. 2 7L 2 27. 2 48. 4 163. 9 73. 70
37. 1 41. 3を捧図表にしめした。図によってみると,最:高を しめすのは粗.死亡率と同じく,「農林,漁業」で人 口10万対179.8をしめし,ついで「採鉱,採石」, 「専門的技術的」,「販売」,「技能工,生産工程」, 「サービス」,「運輸」,「管理的」の順に低率とな り,最:低をしめすのは「事務」の73.6で,最:高と の差は106,2で極めて大となっている。 かくのごとく,人口構成を考慮した訂正死亡率 により比較すると,「農林,漁業」に従事している 人の死亡率が高く,「管理的」,「喜務」は最低で ある。これより推察するに,主として肉体的重労 働を行い,かつまた生活水準の低い程死亡率は高 く,これら一働,食習慣18)∼20)等が死亡率に影響 するものと考えられる。しかし,この揚合「農林, 漁業」の職業において注意すべきは,農林と漁業 を別々に死亡率を比較すると,「農林,漁業」では 人口10万対207.4をしめすが,農林では203.2, 漁業では4.2となって,農林が漁業より死亡率は
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o 脳卒中による職業別訂正死亡率 昭和30年(男女総数) 1002SO
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’が ’ 箔 図一ll職業別脳卒中による死亡率 昭和30年(男女総数) この「農林,漁業」が最高率であ擁羅雛繕Y・
図一1 圧倒的に高く, ることは,このうち農林の死亡率が大きく影響し ていることである。したがって,この際とくに農 村における死亡率に注目し,観察すべきものと思 われる。かくして先に発表せる秋田県等の農村に おいて脳卒中の死亡率が高率をしめすことを4)∼7) 裏付けることができる。これに反し,「管理的」, 「事務」のごとき,比較的高い教育程度と頭脳的負 担を主とする職業において,死亡率が低いことは 注目される。このような結果により,今後とくに 農村における生活環境の諸条件の改善が,死亡率 を低くめるのに重大であると考えられる。 さらに各職業について,粗および訂正死亡率を 比較すべく,俸図表で図一Hにしめした。図にしめ すごとく,訂正死亡率が粗死亡率より低率をしめす職業は,「管理的」,「農1林,漁業」の比較的 老人層においても多く就業者を有する2職業のみ で,これに反し,主として若年者の多く従事する 他の職業においては訂正死亡率が粗死亡率より高 率となっており,明らかに死亡率が入口構成によ って影響されていることをしめしている。 〔2〕男女別による観察 1)男子について 表一皿によって粗死亡率についてみると,最高 をしめす職業は.「農林,漁業」で269.5,最低を しめす職業は「運輸」で37.8となり,かくのごと く最高,最低をしめす職業は総数と同様で,かつ その差は231.7と大きく開いている。なお高率順 にみると,「農林,漁業」を最高とし,「販売」,
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図一IH 脳闘乱による職業別訂正死亡率 昭和30年(男子) 「管理的」,「専門的技術的」,「技能工,生産工程」, 「サービス」,「採鉱,採石」,「事務」,「運輸」の 順で,総数の場合とほとんど同じ順位となってい る。 つぎに訂正死亡率について各職業を高率順に捧 図表にしめすと図一皿のごとくである。最高をし めすのは「採鉱,採石」で294.1をしめし,つづ いて.「農林,漁業」,「運輸」,「専門的技術的」, 「技能工,生産工程」,「販売」,「サービス」,「事 務」の順に低率となり,最:低をしめすのは「管理 的」の88.9で,最高との差は205.2と極めて大 となっている。 かく男子の工合においても総数と同様に,肉体 的労働を主とする「採鉱,採石」,「農林,漁業」 の死亡率が高く,頭脳的労働を主とする「事務」, 「管理的」等の死亡率が低くなっている15)。 つぎに図一IVによって粗および訂正死亡率を比 一841一 脳 ・卒 史 2と て 率 父 呈9
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孝季 図一IV 職業別脳卒中による死亡率 昭和30年(男子)較すると,訂正死亡率が粗死亡率より低率をしめ すのは「管理的」,「農林,漁業」の2職業のみと なっており,その他の職業においては訂正死亡率 が粗死亡率より高率となる。これも総数と全く同 じ現象をしめしている。 2)女子について 前掲せる表一皿によって粗死亡率についてみる と,最高をしめすのは総数,男子の揚合と同じ く,「農林,漁業」で145.4をしめしており,最:低 をしめすのは「技能工,生産工程」で14。3となっ ている。最高との差は131。1である。(女子にお いて,とくに「運輸」の従事者は0のため,死亡 率は0となるゆえ,ここでは除外する)。なお順 位は「農林,漁i業」,「管理的」,「販売」,「事務」, 「専門的技術的」,「採鉱,採石」,「サービス」,「技 能工,生産工程」の順となっている。 訂正死亡率について,高率順位をみると図一V のごとくである。最高をしめすのは「農林,漁業」 2タ0
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o 図一V 脳卒中による職業別訂正死亡率 日召禾0 30年 (女子) で163.9をしめし,ついで「専門的技術的」,「採 鉱,採石」,「管理的」,「販売」,「サービス」,「技能 工,生産工程」の順に低率となり,最低をしめす のは「事務」の27.2で,最:高との差は136.7とな っている。この順位は総数,男子の目合と若干異 り,女子特有の職業従事年令,ならびに絶対的に 職業に従事する人口の少いことによって影響をう けるため,かくのごとき順位となっているもので はないかと考えられる。それゆえ,この順位をそ のまま男子の順位と比較するのは問題があろう。 つぎに図一VIによって粗および訂正死亡率を比 較すると,訂正死亡率が粗死亡率より低率をしめ すのは「管理的」,「事務」の2職業のみで,他は いずれも訂正死亡率は粗死亡率より高率となって いる。300
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図一W 職業別脳卒申における死亡率 圓召禾030年 (女子)3)男女比較 表一皿によって粗死亡率について比較すると,全 職業において男子が女子より高率となっている。
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専一田 職業別 脳卒中死亡率 昭和30年(訂正死亡率) つぎに訂正死亡率について比較すべく,図一顎 に捧図表でしめした。図にしめすごとく,訂正死亡 率においても,粗死亡率と同様に全職業において 男子が女子より高率となっている。また男女死亡 率の差をみると,「採鉱,採石」は男子が女子の約 4倍となり,全職業の中もつとも:大である。:最小 をしめすのは「農林,漁業」,「管理的」となって いる。これにより考察すると,:男女死亡率の差の 最大をしめした「採鉱,採石」は,男子の場合は 直接現揚で重労働に従事し,これに反し,女子の 揚合は同じ職業でも比較的軽労働に従事するた め,また最小をしめした「農林,漁業」,「管理的」 においては,肉体的,精神的労働において男女聞 にあまり相違がないため,このような結果が生じ たものではないかと考えられる。 なお男女それぞれをみると,男子においては 「採鉱,採石」が最高死亡率をしめし,女子では 「農林,漁業」が最:高である。男女いずれも肉体的 労働が激しく,生活程度の低い職業に死亡率が高 率をしめしていることは,共通なる現i象として注 目される点である。 (3)職業別性別年令別死亡率について 表一IVに職業別年令別死亡率をしめした。表に しめすごとく,脳卒中が老人特有の疾患としての 特徴を明らかにしめし,死亡率は老人層において 急激に高率となっている。 男子についてみると,65才未満の年令階級にお いて,職業別に死亡率順位を決定することは,死 亡率が一定せぬため困難であるが,65才以上の高 令の年令階級においては職業別死亡率順位は明ら かとなり,「採鉱,揉石」が最高をしめし,ついで 「農林,漁業」が高く,いずれも肉体的労働によ る職業が高率で,これは前記せることを裏付けて いる。ついで「専門的技術的」,「技能工,生産工 程」,「運輸J,「販売」,「サービス」の順に低率と なり,r事務」,「管理的」は低くなっており,こ れも前述と同様な現象である。この中でも「管理 的」は「採鉱,採石」,「農林,漁業」,「専門的技 術的」,「運輸」より各年令階級で最も低い死亡率 をしめしている。 女子についてみると,男子の強風とは相違をし めしている。すなわち,「農林,漁業」が各年令 階級で比較的高く,65才以上では最高位をしめし ている。しかし男子に比して従事者数がはるかに 少数なるためか,各年令階級につき,一定せる死 亡率順位をしめすことは困難となっているが,「販 売」,「サービス」,「技能工,生産工程」,「事務」 の各年令階級とも低い死亡率をしめしてい’6。こ れに反し,30∼34才および60∼64才では「採鉱, 操石」が高く,またとくに「管理的」において55 ∼59才でのみ最高位をしめしているのが目立って いる。 図一㎜は年令別死亡率の推移をみるべく,総数 にわける最高死亡率をしめした「農林,漁業」,最 低をしめした「事務」をそれぞれの職業の代表と してしめした。図にしめすごとく,各職業とも死 亡率は老人層になるにつれ,高率となり,死亡曲 線は上昇している。最:高をしめした「農林,漁業」 と最低をしめす「事務」の年令別死亡率をくらべ表一IV 職業別脳卒中性別年令別死亡率(人口10万対)昭和30年
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年 令 図一皿 職業別脳卒中による年令別死亡:率(昭和30年) ると,男予においては30∼54才の聞では「事務」 が「農林,漁業」より死亡率が高く,その他の年 令階級では「農林,漁業」が「事務」より死亡率 が高い。女子においては全年令階級にわいて「農 林,漁業」の方が「事務」より高率となってい る。また老人層における死亡率は明らかに大なる 差をしめし,とくに女子においてその差が大とな る。 また各職業別の男女死亡曲線を比較すると,全 年令階級において男子め方が女子より高率をしめ している。 IV 総 括 以上国勢調査の行われた昭和30年における本邦 脳卒中死亡率について,職業別に観察を行つ紅, これを総括すると,つぎのごとくである。 (1)総i数における観察 粗死亡率についてみると,最高は「農林,漁業」 で,ついで「管理的」,「販売」,「専門的技術的」 「技能工,生産工程」,「採鉱,採石」,「サービス」, 「事務」の順に低率で,最低は「運輸」である。 訂正死亡率では最:高をしめすのは粗死亡率と同 じく,「農林,漁業」で,ついで「採鉱,採石」, 「専門的技術的」,「販売」,「技能工,生産工程」, 「サーービス」,「運輸」,「管理的」の順で,最低は 「事務」となっている。 訂正死亡率が粗死亡率より低率をしめす職業は 「管理的」,「農林,漁i業」の2職業のみで,他の 職業においては訂正死亡率が粗死亡率より高率と なっている。 〔2)男女別による観察 1)男子について 粗死亡率についてみると,最:高は「農林,漁業」 で,最低は「運輸」である。高率順位は総数の場 合とほとんど同様である。 訂正死亡率では,最:高は「採鉱,採石」で,最: 低をしめすのは「管理的」である。 粗および訂正死亡率を比較すると,訂正死亡率 が粗死亡率より低率をしめすのは,「管理的」,「農 林,漁業」の2職業のみとなっている。 2)女子について 粗死亡率についてみると,最高は「農林,漁業」 で,最低は「技能工,生産工程」となっている。訂正死亡率では,最高をしめすのは「農林,漁 業」で,最低は「事務」となっている。 訂正死亡率が粗死亡率より低率をしめすのは 「管理的」,「事務」の2職業のみで,他はいずれも 訂正死亡率は粗死亡率より高率となっている。 3) :男女の比較 粗死亡率で比較すると,全職業において男子が 女子より高率で,訂正死亡率においても粗死亡率 と同様に全職業において,男子が女子より高率と なっている。また男女死亡率の差は,「高冷,採 石」が最:大で,「農林,漁業」,「管理的」が最:小 である。 男女それぞれをみると,男子は「採鉱,採石」 が最:高死亡率で,女子では「農林,漁業」が最高 である。 ③ 職業別性別年令別死亡率について 各職業ともほとんど同様な状態で,死亡率は老 人層において急激に高率となっている。男子につ いてみると,65才未満の年令階級においては死亡 率順位をきめることは困難であるが,65才以上の 高論の年令階級において職業別死亡順位は明らか となり,「出鉱,採石」が最高で,ついで「農林, 漁業」が高く,「事務」,「管理的」は低くなって いる。女子についてみると,「農林,漁業」が各 年令階級を通じて比較的高く,65才以上では最高 位をしめしている。男子に比して従事者数が少数 なるためか,各年令階級につき,一定せる死亡順 位をしめすことは困難であるが,「販売」,「サー ビス」,「技能工,生産工程」,「事務」の各年令階 級とも低い死亡率をしめしている。これに反し, 30∼34才,60∼64才の「採鉱,採石」,また55∼ 59才の「管理的」で最高位をしめしている。 最高率をしめした「農林,漁業」と最:低をしめ した「事務」の年令別死亡率をくらべると,男子 は30∼54才の間で.「事務」が「農林,漁業」よ り死亡率が高く,その他の年令階級では「農林, 漁業」が「事務」より死亡率が高い。女子は全年 令階級において「農林,漁業」の方が「事務」よ り高率である。 また各職業別の男女死亡曲線を比較すると,全 年令階級において男子の方が女予より高率であ る。 稿を終るに臨み終始御懇切なる御指導御校閲を賜 わった吉岡博人教授,並びに諸岡妙子助教授に謹しん で謝意を表す。 献 1)吉岡博人・平岡妙子:本邦都留別老年疾患死亡 率について,貝本人P学会記要,2,50(昭29) 2)渡辺 定:老人病について,公衆衛生,17,〔3) 28 (闇雲30) 3)操 担道:老人病について,臨床と研究,32, 530(昭30) 4)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率の研究第1報, 一昭和(戦後)における死亡率について一東京女 医大誌,27,144(昭32) 5)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率の研究第II報, 一一昭和(戦前)における死亡率について一東京女 医大誌,27,232(昭32) 6)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率の研究 第叢説, 一大正における死亡:率について一直京女医大 誌, 27, 358 (日召 32) 7)金銀滋:本郭脳卒中死亡率の研究第IV報, 一明治における死亡率について一戸京女医大 誌, 27, 676 (日召 32) 8)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率の研究 第V報, 一全国総数における死亡率の年代的推移につい て一東京女医大誌,28,215(昭33) 9)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率の研究 第V正報, 一全国男女別死亡率の年代的推移について一半 京女医大誌,28,296(昭33) 10)金 早早:本邦脳卒申死亡率の研究 第皿報, 一府県別死亡率の年代的華甲について一撃京女 医大誌,28,365(昭33) 11)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率に関する一考察, 一昭和25年度地方別死亡率について一東京女医 大回,28,466(昭33) 12)金 銀滋:戦前におけ死因分類別脳卒中死亡に 関する研究,東京女医大誌,28,570(昭33) 13)金 銀滋;本邦脳卒中死亡率に関する一考察, 一昭和30年度地方別死亡率について一,東京女 蹴誌, 28, 594 (日召 33) 14)金 銀滋:本邦脳卒中死亡率に関する一老察, 一中年期死亡率について一東京女医大誌,28, 705(昭33) 15)中尾仁一:最:近のわが国の職業,産業別各種死 亡率と死因に関する研究,目本公衆衛生雑誌, 4, 514 (圓召 32) 16)吉岡博人:衛生統計学,南山堂,37(昭31) 17)石田保広:職業別死亡の現状,医学のあゆみ, 20, (1), 55 (日置 30) 18)福田篤郎:生活と高血圧,文光堂,55(昭31) 19)中沢房吉:高血圧病と環境条件,医学シンポジ ウム第5輯”高血圧グ診断と治療社,82(昭30) 20)佐々木直亮:わが国における脳卒中乃至高血圧 症の公衆衛生学的問題点,日木公衆衛生雑誌, 4, 557 (目召 32)