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(1)

中心として

著者 川満 直樹

雑誌名 社会科学

号 85

ページ 59‑78

発行年 2009‑11‑30

権利 同志社大学人文科学研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011854

(2)

1.は じ め に

1947

年に英領インドから分離独立を果たしたパキスタンは,人的,経済的にも悪条 件のもとでの出発を余儀なくされた。なぜなら分離独立以前のインド亜大陸において,

パキスタン地域(東西パキスタン)はこれといった産業もなく,農業を中心とした地域 であり,また工業的には後進地であった1。それに加え同地域で活躍していたのはムス リムではなく,ヒンドゥー教徒やスィク教徒等であった。経済的な側面から見たならば,

同地域はインド亜大陸内の後進地であった。

分離独立後,新生パキスタン政府は,1948年に「産業政策声明」を発表する2。その 声明の主な内容は,消費財産業の優先,民間資本の主導性の確認であり,パキスタン政 府は,同国の経済分野の発展を政府主導ではなく,民間主導で行うことを目指した。パ キスタン政府は,パキスタン経済の発展を民間に委ねたのである。

このようなパキスタン政府の要請に応じたのが,インド亜大陸内で活躍していたいく 現在,パキスタンで活躍する財閥は,大小あわせ約50近く存在するといわれている。

本論で取り上げたハビーブ(Habib)財閥は,印パ分離独立当初からパキスタンで活 躍してきた財閥であり,金融を中心にパキスタン経済の発展に大きく貢献してきた財 閥である。

そのハビーブ財閥にはサブグループが存在し,各グループが共存する形で,パキス タンでビジネスを展開している。筆者は,以前にハビーブ財閥のサブグループの一つ であるモハメダリー・ハビーブ・グループ(MohammedaliHabibGroup)の事業 展開ならびに所有と経営の問題を取り上げ論じた。今回は,同じハビーブ財閥に属す るダーウッド・ハビーブ・グループ(DawoodHabibGroup)を取り上げ,同グルー プの事業形態,および一族による傘下企業の支配構造,特に所有面と経営面に焦点を あて考察を行う。

ハビーブ財閥の形成と発展に関する一考察

ダーウッド・ハビーブ・グループの所有と経営の問題を中心として

川 満 直 樹

(3)

つかの有力なムスリム商人(ムスリム一族)たちであった。彼らは独立運動へのサポー ト3,またパキスタン建国に際し早急に必要とする公共性の高い諸企業4(金融・海運・

空運)の設立および資金提供を積極的に行った。それら企業の設立にかかわったムスリ ム商人(ムスリム一族)は,その後「建国企業(Nati

onBui l di ngCompani es

)」とよ ばれ,現在でもパキスタンにおいて名門一族である。

本稿で取り上げるハビーブ一族も「建国企業」に名を連ね,分離独立当初のパキスタ ン経済に大きく貢献した一族である。特に,ハビーブ一族はハビーブ銀行の設立などパ キスタン国内で金融業を中心に活躍した。

ハビーブ一族については,以前に詳しく述べている5のでここでは簡単に触れたいと 思う。ハビーブ財閥の祖となる人物は,ハビーブ・イスマイル(Habi

bEsmai l

)であ る。彼はイスマイル・アリ(Esmai

lAl i

)の子として1878年に生まれ,ハビーブと名 付けられた。父イスマイルは,ボンベイ(現ムンバイ)に工場を持ち,当時の産業界に おいてはパイオニア的存在であった6。10代前半で父イスマイルを亡くしたハビーブは,

おじカシューム・モハメド(Cassum Mohamed)のもとで働き始める。その後,ハビー ブは彼のもつ才能を発揮し,おじのパートナーとなりカッパー・アンド・ブラス・マー チャンツ・アソシエーション(CopperandBrassMerchantsAssoci

ati on

)の経営を カシュームより任される。

ハビーブは,その後,ジュネーブとウィーンにヨーロッパ貿易の拠点となるオフィス を開設した7。1921年に設立したハビーブ&サンズ(Habi

b& SonsLtd.

)は,ハビー ブ家の貿易業務を一手に引き受け,日本や中国ともビジネス関係を築き貿易を行った8。 同社が主に扱った輸入品は洋品類,生糸,ガラス製品,刃物類であり,輸出品としては 綿が主であった。その後,ハビーブ&サンズは次第に綿花の取引に事業の中心を移し,

1930

年代までにハビーブ家は,インド亜大陸内の有数の綿花商人となっていた。

現在,ハビーブ財閥はアーメド・ハビーブ(AhmedHabi

b

)が中心となったアーメ ド・ハビーブ・グループ(AhmedHabi

bGroup

),ダーウッド・ハビーブ(Dawood

Habi b

)を中心としたダーウッド・ハビーブ・グループ(DawoodHabi

bGroup

,以 下ダーウッド・グループ),モハメダリー・ハビーブ(Mohammedal

iHabi b

)を中心 としたモハメダリー・ハビーブ・グループ(Mohammedal

iHabi bGroup

,以下モハ メダリー・グループ)の三つに分かれている(図表1を参照)。

この件に関してハビーブ関係者は,「それは決して一族内の分裂を意味するのではな く,彼らの父ハビーブ・イスマイルの企業家精神が息子に受け継がれ,各々がその能力

(4)

を発揮した結果である」9と述べている。だが,サブグループ化の原因やそのプロセス は定かではない。しかし,現在ダーウッド・グループとモハメダリー・グループの両グ ループがハビーブ・インシュアランス(Habi

bInsuranceCo.Ltd.

)の株式を持ち合 い,また役員を派遣しあい共同で経営を行っている10。ハビーブ・インシュアランスの 共同経営はハビーブ一族が分裂をしていない証拠であろう。このような財閥内でのサブ グループ化や財閥の分裂現象については,財閥の分裂化現象が顕著に進行しつつあるイ ンド財閥11との比較においても,今後の興味深い研究課題となる。ちなみにハビーブ

&サンズは,現在ダーウッド・グループの一傘下企業である12

これまで筆者は,パキスタン建国当初からパキスタン経済の発展に大きく貢献してき たハビーブ財閥の活動,特にハビーブ一族の活動を明らかにすることを目的とし,研究

図表1 ハビーブ家系図

(出典)HouseofHabibでの聞き取り調査(1998年7月)およびHabibBankAG Zurich,BriefHistory, pp.45,ダーウッド・ハビーブ・グループとモハメダリー・ハビーブ・グループ傘下企業各社の AnnualReportより作成。

(注)図中の★印は女性を示す。同家系図は2009年7月13日までに収集した資料をもとに作成した。

Farah Fatimahۻ

Munizehۻ Sarwatۻ

Abbas D.

Ali Raza D.

Hurtaza D.

Hamid D.

Qumail D.

Hussain D.

Habib Mohammad D.

Asghar D. Tairaۻ

Rashid D.

Niamet

Fatimaۻ Zuhair D.

Mauoor G.

Asghar G.

Aun Mohammad A.

Imran A.

Yusuf A.

Ismail A.

Ghulamali Habib Mohammedali

Habib Ahmed

Habib

Dawood Habib Sakinabai

Habibۻ

Esmail Ali Habib Esmail

Qumail R.

Muslim R.

Razia

Asad H.

Habib M.

Suliman M.

Hyder M.

Mohammad H.

Rafiq M. Jamilaۻ

Mohammadali R. Sayyedaۻ Reza S.

Ali S.

Zain H.

Ahmed H.

Murtaza H. Hasnain A. Qasim A.

(5)

を進めてきた。そのような観点から,以前に同財閥のサブグループの一つであるモハメ ダリー・グループの事業展開ならびに所有と経営の問題(特に一族員との関係で)を取 り上げ論じた13。しかし,先にも述べたようにハビーブ財閥内にはいくつかのサブグルー プが存在する。以前に論じたモハメダリー・グループは,そのハビーブ財閥の一つのサ ブグループにすぎない。よって,モハメダリー・グループのみを論じたのでは,ハビー ブ財閥を総合的に論じたとは言えないであろう。ハビーブ財閥の活動を明らかにするた めには,同財閥内に存在するサブグループの考察が必要であることは言うまでもない。

よって,本稿の主な目的は,これまで取り上げていなかったハビーブ財閥のサブグルー プの一つであるダーウッド・グループを取り上げ,同グループの事業形態およびダーウッ ド・ハビーブ一族による傘下企業の支配構造,特に所有面と経営面に焦点をあて,その 特徴などを考察し明らかにすることである。

2.ダーウッド・ハビーブ・グループの傘下企業

ダーウッド・ハビーブ・グループの中心人物は,先にも述べたとおり,ダーウッド・

ハビーブである(図表1を参照)。彼は,モハメダリー・ハビーブとともに,革新的な 企業家であった父ハビーブ・イスマイルの影響を受けた人物である。それは,弟である モハメダリーとともに1941年8月にインド亜大陸初となるイスラーム系の銀行(ハビー ブ銀行:Habi

bBank

)の設立を行った14ことからもうかがえる。

ダーウッド・グループも,モハメダリー・グループ同様に,分離独立当初よりパキス タン国内で金融業や製造業を中心に事業を展開し,同国の経済発展に大きく貢献したグ ループである。図表2はダーウッド・グループの傘下企業を示したものであり,現時点 で確認している傘下企業は約30社近くある。また,ダーウッド・グループ傘下企業と モハメダリー・グループ傘下企業との比較において特徴的な点は,近年モハメダリー・

グループがインダス・モーター(IndusMotorCo.Ltd.),タール(ThalLtd.),アグ リオート・インダストリーズ(Agri

autoIndustri esLtd.

)やパキスタン・ペーパーサッ ク(Paki

stanPapersackCorporati onLtd.

)などの製造業を中心に事業を展開(特 に自動車製造)しているのに対し,ダーウッド・グループは製造業が中心というよりは,

パキスタンで金融業を中心にビジネスを展開している点である。それに加え,パキスタ ン以外の国へも積極的に進出し,ビジネスを展開している点は,モハメダリー・グルー プに比べると特徴的な点と言えよう。

(6)

ここで,ダーウッド・グループの主要な傘下企業について簡単に述べたいと思う。は じめに銀行を含む金融業から見ていこう。

ハビーブサンズ・バンク(Habi

bsonsBankLtd.

)は,1984年にハビーブ・モハメ ド

D.

ハビーブ(Habi

bMohammandD.Habi b

,図表1の家系図を参照)が中心とな りイギリスのロンドンに設立された。よって,同行の活動の場はパキスタンではなく,

主にイギリスである。設立の中心人物であったハビーブ・モハメド

D.

は,ハビーブ銀 行の

Joi ntPresi dent

として,1954年から同行が国有化される1974年まで経営にかか わっていた。その後,1975年にスイスへ渡り,ハビーブ・バンク

AGチューリッヒの Manager

,そして

Joi ntPresi dent

をつとめた。ハビーブ・モハメド

D.

は,ハビーブ 銀行とハビーブ・バンク

AGチューリッヒの経営にかかわったのち,1984

年にイギリ スへ渡り,ハビーブサンズ・バンクの設立にかかわった。設立当初の同行の社名はハビー ブ・サンズ・トラスト・アンド・ファイナンス(Habi

bsonsTrustandFi nanceLtd.

) であったが,1988年に現在の社名に変更している。

先ほども述べたように,ハビーブサンズ・バンクの活動は主にイギリスであるが,

1989

年にはパキスタンのカラチに駐在員事務所を開設し,またその翌年の1990年には

図表2 ダーウッド・ハビーブ・グループ傘下企業一覧

(出典)日本貿易振興会(1983年),HouseofHabib本社(1998年)での聞き取り調査,およびダーウッド・

ハビーブ・グループ主要傘下企業AnnualReport・08より作成。

(注)★:HabibInsuranceCo.Ltd.はモハメダリー・グループとダーウッド・グループが共同で経営を行っ ている。表中のUAEはUnitedArabEmirate(アラブ首長国連邦),BVIBritishVirginIslands

(英領ヴァージン諸島)をさす。

Habib& SonsLtd.

BankALHabibLtd.

HabibsonsBankLtd.

HabibAfricanbankLtd.

HabibOverseasBankLtd.

HabibAssetManagementLtd.

Axiom Funds

ALHabibCapitalMarkets(Pvt.Ltd.

HabibFoodsLtd.

GreenshieldInsuranceBrokersLLC(UAE HabibBankingCorporation(Bahamas HabibInvestmentCorporation(UAE HabibCapitalAdvisorsLtd.(BVI HabibProperties(UAE

GreenshieldDevelopers(UAE HabibInsuranceCo.Ltd.

GreenshieldRealEstateBrokers(UAE GulfPropertiesInternational(BVI BaluchistanConcrete& BlocksLtd.

BaluchistanParticleBoardLtd.

HabibSugarMillsLtd.

HSM Textiles HabibMotorcycle HabibEducationalTrust

(HabibPublicSchool,HabibGirlsSchool HabibMercantileCompanyLtd.

HabibMaritimeLtd.

HabibGeneralLtd.

HaydaryConstructionCompanyLtd.

HasniTextiles(Pvt.Ltd.

KarachiMercantileCo.(Pvt.Ltd.

(7)

スイスのチューリッヒに事務所を開設している。

次に,バンク

ALハビーブ(BankALHabi b

)は,ハーミド

D.

ハビーブ(Hami

d D.Habi b

)が中心となり1991年10月15日15にパキスタンで設立された16。ハーミド

D.

はバンク

ALハビーブの初代 Chai rman

である。ちなみに,ハーミド

D.

もハビーブ・

モハメド

D.

同様に,ハビーブ銀行の

Di rector

を1954年から1974年の国有化までつと めていた。

バンク

ALハビーブは,本店をパンジャーブ州南部に位置するムルタン(Mul tan

) におき,実質的な活動のためのオフィスをカラチにおいている。現在では,パキスタン 国内の主要都市を中心に160以上の支店をおき,そのネットワークはパキスタン全土を 覆っている。幅広いネットワークだけではなく,バンク

ALハビーブはパキスタンの

金融界でインターネットバンキングやイスラーム金融等の業務で常に新しい商品を提供 するなど革新的であり,またパキスタン金融界で先駆的な存在となっている。

また,上記二つの銀行以外にもバンク

ALハビーブの子会社としてパキスタンに 2005

年に設立されたアル・ハビーブ・キャピタル・マーケット17(ALHabi

bCapi tal Markets

(Pvt.)Ltd.), またハビーブ・アセット・マネジメント (Habi

bAsset ManagementLtd.

),1990年に南アフリカのヨハネスブルクに設立されたハビーブ・

オーバーシーズ・バンク(Habi

bOverseasBankLtd.

),1998年にタンザニアのダル エスサラームに設立したハビーブ・アフリカン・バンク(Habi

bAfri canBankLtd.

),

2000

年にアラブ首長国連邦に設立したグリーンシールド・インシュアランス・ブロカー ズ(Greenshi

el dInsuranceBrokersLLC

18)などがある19。ダーウッド・グループが かかわる銀行などを含む金融機関は,パキスタン国内はもとよりパキスタン以外の国や 地域にもありグローバルにビジネスを展開している。

次に,ダーウッド・グループの主な製造業をみていきたい。ハビーブ・シュガー

(Habi

bSugarMi l l sLtd.

)は,1962年にカラチに設立された。本社はカラチに,工場 はカラチから北西に約300キロメートルにあるナワーブシャー(Nawabshah)におき,

また設立から2年後の1964年にはシンド州に第二工場を建設した。それによりサトウ キビの粉砕能力は,設立当初約1,

500

トン(1日あたり)であったが,第二工場ができ たことにより飛躍的に生産能力が上昇した(同社の最近の生産量については図表3を参 照のこと)。

同社は,その社名からもわかるように製糖業を中心に事業を展開しているが,現在で は,製糖業以外に四つの部門を持っている。具体的には,産業用アルコールや食用油な

(8)

どの製造,港湾等での貨物の取扱業,高品質のタオルなどの製造を行う織物業20,およ び貿易業である。

次に,バローチスタン・パーティクルボード(Bal

uchi stanParti cl eBoardLtd.

) は2008年で設立28年目を迎える21。同社は,その社名からも分かるように木片や木材の 削りかすなどで固めたパーティクルボード,いわゆる削片板の製造を行う企業である。

次にハビーブ・フーズ(Habi

bFoodsLtd.

)は,エスニック食品やハラールフー ド22の食品加工産業の分野で活躍することを目的に2004年にパキスタンで設立された 食品加工メーカーである。「TAZA」ブランドのもと,パンやデザート,スナックなど の製造を行い,パキスタンだけではなくアメリカ,カナダ,イギリスや中東諸国で販売 を行っている。

最後に,ダーウッド・グループでは教育関係の事業「ハビーブ・スクール・トラスト

(Habi

bSchoolTrust

)」も行っている23。ハビーブ・スクール・トラストは,パキス タンの教育の発展のため,またパキスタンの若者に世界最高水準の教育を提供すること などを目的に,1959年に設立した組織である。同トラストは,目的を達成するために ハビーブ・パブリック・スクール(Habi

bPubl i cSchool

)とハビーブ・ガールズ・ス クール(Habi

bGi rl sSchool

)の二校をカラチに開校した。

ハビーブ・パブリック・スクールはモハメダリー・ハビーブ(モハメダリー・ハビー ブ・グループ,図表1の家系図を参照)の願いが24,またハビーブ・ガールズ・スクー ルはラシード

D.

ハビーブ(Rashi

dD.Habi b

,図表1の家系図を参照)の願いが実現 したものである25。現在までに,両校を卒業した者は約3,

500

名以上となり,医者や弁 護士,またビジネスマンなどとなり各方面で活躍している。また,ダーウッド・グルー プは,上記の教育関係の事業だけではなく,児童福祉や医療関係などの事業も展開し,

パキスタンの経済発展だけではなく,パキスタン社会の向上にも大きく貢献している26。 簡単ではあるが,ダーウッド・グループの傘下企業について述べてきた。以上,見て

図表3 HabibSugarMillsLtd.の主要部門の生産量

(出典)HabibSugarMillsLtd.,AnnualFinancialStatement,September30,2008,p.8.

(注)単位は,製糖部門と蒸留部門が「トン」,織物部門が「キログラム」である。

2008 2007 2006 2005 2004 2003

製糖部門 123,064 66,875 80,530 63,969 84,806 65,839 蒸留部門 181,259 153,648 147,257 167,350 139,987 70,425 織物部門 916,937 685,287 856,749 876,388 604,981 428,582

(9)

きたように同グループの中心的な事業は銀行をはじめとする金融業である。もともと,

ハビーブ家は印パ分離独立以前のインド亜大陸で,綿花などをあつかう商人であった。

その後,それらで得た資金を元手に,ハビーブ銀行をボンベイ(現ムンバイ)に設立し た。ハビーブ家は,ムハージル27としてパキスタンへの移住後は,ハビーブ銀行を中 心に金融業からパキスタン経済の発展を支えてきた。

このようにハビーブ財閥は,パキスタンにおいて金融業を中心に事業を展開してきた 一族であり,同財閥の中核となる金融業を引き継いでいるのがダーウッド・ハビーブ・

グループである。ダーウッド・グループは金融業を中心に,現在その活動はパキスタン 国内だけにとどまるのではなく,イギリスや南アフリカ,また

UAEなどへも進出し,

グローバルに事業を展開している。

3.ダーウッド・ハビーブ・グループの経営支配について 役員兼任を中心に

ダーウッド・グループの傘下企業を経営支配(特に役員兼任)という観点から見たな らばどのようになるのだろうか。結論からいうと,モハメダリー・グループ同様に,ダー ウッド・ハビーブ一族が中心となった経営を行っているということである。

図表4は,ダーウッド・ハビーブ一族による傘下企業への役員兼任を表したものであ る。図表4からも明らかなように,ダーウッド・ハビーブ一族が同グループの主要な傘 下企業の

Chai rman

,Managi

ngDi rector

Chi efExecuti ve

および

Di rector

等の 要職にあり,主要傘下企業の経営権を握っている。

図表4からも確認できるように,現在,主要な傘下企業の役員はダーウッド・ハビー ブ(第2世代(ハビーブ・イスマイルを1世代目とすると))の息子たち(第3世代),

ハビーブ・ムハンマド

D.

ハビーブ(Habi

bMohammadD.Habi b

)やアリ・ラザ

D.

ハビーブ(Al

iRazaD.Habi b

),アシュガル

D.

ハビーブ(AsgharD.Habi

b

),アッ バス

D.

ハビーブ(AbbasD.Habi

b

)が就いており,同グループの企業活動等に関す る意思決定は彼らによりなされていると思われる。なかでもハビーブ・ムハンマド

D.

とアリ・ラザは,同グループの中核的な企業数社の

Chai rman

Di rector

を兼任して いる。具体的には,ハビーブ・ムハンマド

D.

は三つの銀行の

Chai rman

の職にあり,

アリ・ラザはバンク

ALハビーブの Chai rman

,ハビーブ・シュガーの

Di rector

,そ れに加えダーウッド・グループとモハメダリー・グループの両グループが共同で経営に

(10)

か か わ っ て い る ハ ビ ー ブ ・ イ ン シ ュ ア ラ ン ス の

Managi ng Di rector & Chi ef Executi ve

など,合計5社の役員を兼任し,また2社の監査委員会の委員も務めている。

現在,ダーウッド・ハビーブ一族の中でも年齢面および役員の兼任数などからみて,ハ ビーブ・ムハンマド

D.

とアリ・ラザが中心的な役割を果たしていると思われる。

先の図表4で確認したように,ダーウッド・ハビーブ一族員は,一人でいくつかの傘

図表4 ダーウッド・ハビーブ一族による役員兼任状況(2008

(出典)BankALHabib,HabibInsuranceCoLtd.,HabibSugarMillsLtd.,BaluchistanParticleBoard Ltd.の各社AnnualReport・08,CompanyInformationおよびHabibsonsBankLtd.Website, Board of Directorshttp://www.habibsons.co.uk/directors.html・09.7.13採 録 ),Habib OverseasBank Ltd.Website,Board ofDirectors(http://www.habiboverseas.co.za/?id=5

・09.7.13採録),HabibAssetManagementLtd.Website,BoardofDirectors

(http://www.habibfunds.com/boardofdirectors.aspx,・09.7.13採録)より作成。

(注)★3:HabibEsmailから数えて3世代目,★4:4世代目。

業(役職)

HabibMohammadD.Habib★3 HabibsonsBankLtd.(Chairman HabibOverseasBankLtd.(Chairman HabibAfricanBank(Chairman AsgharD.Habib★3

HabibsonsBankLtd.(ViceChairman HabibOverseasBankLtd.(ViceChairman HabibAfricanBank(ViceChairman HabibSugarMillsLtd.(Chairman

AliRazaD.Habib★3

BankALHabibLtd.(Chairman

BankALHabibLtd.(Member,AuditCommittee HabibAssetManagementLtd.(Chairman

FirstHabibIncomeFund(Chairman,InvestmentCommittee HabibSugarMillsLtd.(Director

HabibSugarMillsLtd.(Chairman,AuditCommittee HabibInsuranceCo.Ltd.(ManagingDirector& ChiefExecutive AbbasD.Habib★3 BankALHabibLtd.(ChiefExecutive& ManagingDirector

HabibInsuranceCo.Ltd.Director

MurtazaH.Habib★4

BankALHabibLtd.(Director

BankALHabibLtd.(Member,AuditCommittee BaluchistanParticleBoardLtd.(Director

BaluchistanParticleBoardLtd.(Chairman,AuditCommittee HabibSugarMillsLtd.(Director

AhmedH.Habib★4 HabibsonsBankLtd.(Director ZainH.Habib★4 HabibsonsBankLtd.(Director

HabibOverseasBankLtd.(Director HabibAfricanBank(Director HasnainA.Habib★4 BankALHabibLtd.(Director

Muslim R.Habib★4 BaluchistanParticleBoardLtd.(Chairman& ChiefExecutive QumailR.Habib★4 BankALHabibLtd.(ChiefDirector

ImranA.Habib★3

BaluchistanParticleBoardLtd.(Director

BaluchistanParticleBoardLtd.(Member,AuditCommittee HabibSugarMillsLtd.(Director

HabibSugarMillsLtd.(Chairman,AuditCommittee

(11)

図表5 ダーウッド・ハビーブ・グループ主要傘下企業の役員の変遷

(出典)HabibInsuranceCo.Ltd.,AnnualReport・06,p.1,・07,p.1,・08,p.1,BankALHabib,Annual Report・04,p.1,・05,p.1,・06,p.1,・07,p.1,・08,p.1,HabibSugarMillsLtd.,AnnualReport・04,

・CompanyInformation・,・05,・CompanyInformation・,・06,p.2,・07,p.2,・08,p.2,Baluchistan ParticleBoardLtd.,AnnualReport・04,・CompanyInformation・,・05,・CompanyInformation・,

・06,p.2,・07,p.2,・08,p.2,HabibOverseasBankLtd.,AnnualReport・08,p.3,HabibsonsBank Ltd.Website,BoardofDirectors(http://www.habibsons.co.uk/directors.html,・09.7.13採録),

HabibOverseasBankLtd.Website,BoardofDirectors(http://www.habiboverseas.co.za/?id=5

・09.7.13採録),HabibAssetManagementLtd.Website,BoardofDirectors

(http://www.habibfunds.com/boardofdirectors.aspx,・09.7.13採録)より作成。

(注)表中の名前Habibはすべて省略した。VC:ViceChairman,CE:ChiefExecutive

CD:ChiefDirector,MD:ManagingDirectorの略。★:HabibInsuranceCo.Ltd.はダーウッド・

ハビーブ一族とモハメダリー・ハビーブ一族による共同経営。

(20042008,ダーウッド・ハビーブ一族員のみ)

2004 2005 2006 2007 2008

HabibInsuranceCo.Ltd.★

Boardof Directors

Chairman RafiqM. RafiqM. RafiqM.

Director

AbbasD.

MansoorG.

MohamedaliR.

AunMohmmadA.

AbbasD.

MansoorG.

MohamedaliR.

AunMohmmadA.

AbbasD.

MansoorG.

MohamedaliR.

AunMohmmadA.

MD& CE AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD.

BankALHabib

Boardof Directors

Chairman AliRazaD.AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD.

MD& CE AbbasD. AbbasD. AbbasD. AbbasD. AbbasD.

CD QumailR. QumailR. QumailR. QumailR.

Director HasnainA.

MurtazaH.

QumailR.

HasnainA.

MurtazaH. HasnainA.

MurtazaH. HasnainA.

MurtazaH. HasnainA.

MurtazaH.

Audit Committee

Chairman

Member AliRazaD.AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD.

MurtazaH. AliRazaD.

MurtazaH.

HabibsonsBankLtd.

Boardof Directors

Chairman Habib

MohammadD.

VC AsgharD.

Director AhmedH.

ZainH.

HabibAfricanBank

Boardof Directors

Chairman Habib

MohammadD.

VC AsgharD.

Director ZainH.

HabibOverseasBankLtd.

Boardof Directors

Chairman Habib

MohammadD.

VC AsgharD.

Director ZainH.

AhmedH.

HabibSugarMillsLtd.

Boardof Directors

Chairman AsgharD. AsgharD. AsgharD. AsgharD. AsgharD.

Director AliRazaD.

MurtazaH.

ImranA.

AliRazaD.

MurtazaH.

ImranA.

AliRazaD.

MurtazaH.

ImranA.

AliRazaD.

MurtazaH.

ImranA.

AliRazaD.

MurtazaH.

ImranA.

Audit Committee

Chairman AliRazaD.AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD. AliRazaD.

Member ImranA. ImranA. ImranA. ImranA. ImranA.

BaluchistanParticleBoardLtd.

Boardof Directors

Chairman& CE Muslim R. Muslim R. Muslim R. Muslim R. Muslim R.

Director MurtazaH.ImranA.MurtazaH.

ImranA. MurtazaH.

ImranA. MurtazaH.

ImranA. MurtazaH.

ImranA.

Audit Committee

Chairman MurtazaH.MurtazaH. MurtazaH. MurtazaH. MurtazaH.

Member ImranA. ImranA. ImranA. ImranA. ImranA.

(12)

下企業の役員を兼任している。近年のダーウッド・ハビーブ一族員による役員兼任の変 遷(2004年~2008年)を示したのが図表5である。資料上の制約により空欄になって いる個所もあるが,しかし役員兼任の一つの傾向を確認することができる。特徴的な点 は,一族員はいくつかの傘下企業の役員を兼任しているが,例外はあるが

Chai rman

を数社兼任している者は少なく,多くの場合,一人がある傘下企業一社の

Chai rman

を長年担当していることである。例えば,バンク

AL

ハビーブの

Chai rman

にはアリ・

ラザが,ハビーブ・シュガーのそれにはアシュガル

D.

が,またバローチスタン・パー ティクルボードのそれにはムスリム

R.

が就いている。また,第3世代でもっとも年長 者であるハビーブ・ムハンマド

D.

が,例外的にハビーブサンズ・バンク,ハビーブ・

オーバーシーズ・バンク,ハビーブ・アフリカン・バンクの3行の

Chai rman

の職に 就いている。

もちろん,ダーウッド・グループ傘下企業の経営を担っているのはハビーブ・ムハン マド

D.

とアリ・ラザなどの第3世代だけではない。ハビーブ・モハメド

D.

の息子

(第4世代) のアフメド

H.

ハビーブ (AhmedH.Habi

b

) とザイン

H.

ハビーブ

(Zai

nH.Habi b

)はハビーブサンズ・バンクとハビーブ・オーバーシーズ・バンクな どの

Di rector

を兼任し,アッボス

D.

の息子のハスナイン

A.

ハビーブ(Hasnai

nA.

Habi b

)はバンク

ALハビーブの Di rector

の要職に就き,またラシード

D.

の息子の ムスリム

R.

ハビーブ (Musl

i m R.Habi b

), クマイル

R.

ハビーブ (Qumai

lR.

Habi b

)なども主要企業の要職に就き,ダーウッド・グループの経営に対し重責を負っ ている。

以上,見てきたようにダーウッド・グループでも傘下企業の経営(特に役員兼任)に 関し,ダーウッド・ハビーブ一族員が主要な傘下企業に役員として派遣され,一族員が 中心となった経営がなされていることは明らかである。

4.ダーウッド・ハビーブ一族による傘下企業の所有について

では,次にダーウッド・グループの傘下企業の所有構造およびダーウッド一族による 所有支配を見ていきたいと思う。

はじめに,図表6から見ていきたい。図表6は傘下企業間における株式の所有関係を 示したものである。傘下企業の株式所有に関し,中心的な役割を果たしているのは,言 うまでもなくダーウッド・ハビーブ一族である。図表6からも明らかなように,すべて

(13)

の傘下企業の株式を,個々人ばらばらにではあるがダーウッド・ハビーブ一族が所有す る構図となっている。次に重要となる傘下企業は,金融業の中心的な企業であるバンク

ALハビーブと,製造業の中心的企業であるハビーブ・シュガーであろう。同図表が示

すように,バンク

ALハビーブは,金融系企業を含むいくつかの企業の株式を所有し,

またハビーブ・シュガーも同様に傘下企業の株式を所有している。このような関係から ダーウッド・グループもモハメダリー・グループ同様に,傘下企業内で株式を所有して いることが確認できる。傘下企業内で株式を所有することにより傘下企業間で密接な関 係を構築し,そしてダーウッド・グループとしての結束を保っていると思われる。

また,図表6の中には,いくつかのプライベート・カンパニー(Pri

vateCompany

Pvt.Co.

)が存在する。例えば,ハスニ・テキスタイル(HasniTexti

l e

(Pvt.))とハ ビーブ・マーカンタイル(Habi

bMercanti l eCo.

(Pvt.))は,ハビーブ・シュガーの 株式を所有している。また,カラチ・マーカンタイル(KarachiMercanti

l eCo.

(Pvt.))

はハビーブ・インシュアランスの株式を所有している。

プライベート・カンパニーはその性格上,役員の構成,事業内容および財務内容等を 公表する義務はなく,その活動の詳細を把握することは現時点ではできない。プライベー

図表6 ダーウッド・ハビーブ・グループの株式所有関係図(20072008

(出典)傘下企業各社のAnnualReport・07,・08より作成。

(注)矢印は株式の所有先を示す。図中の★印はモハメダリー・グループの傘下企業をさす。また,Habib InsuranceCo.Ltd.はダーウード・ハビーブ一族とモハメダリー・ハビーブ一族の共同経営。

Bank AL Habib Habib Sugar

Mills

Habib Insurance Dawood Habib Family

Dyneaۻ Habib Metropolitan Bankۻ

Indus Motorۻ

Agriautoۻ

Shabbirۻ

Thalۻ First Habib Modarabaۻ

Karachi Mercantile Co. (Pvt.) Habib & Sons

(Pvt.) Ltd.

AL Habib Capital Markets (Pvt.) Ltd.

First Habib Income Fund

Habib Asset Management Baluchistan

Particle Board Ltd.

Hasni Textile (Pvt.)

Habib Mercantile Co. (Pvt.)

(14)

ト・カンパニーが傘下企業の株式を所有することは,一体,何を意味しているのだろう か。財閥内におけるプライベート・カンパニーの存在は,ダーウッド・グループだけに 見られるものではない。それはモハメダリー・グループや他の財閥にも同じように存在 するものである。この場でプライベート・カンパニーについて断定的なことを言うこと はできない。しかし,プライベート・カンパニーの非公開性という特性を利用し,傘下 企業の株式所有の面で影響を与えていることは間違いないであろう。プライベート・カ ンパニーの役割等についての検討は,今後の課題としたい。

では,次に図表7を見たいと思う。図表7は現時点で確認している主要傘下企業別に みる一族および傘下企業の株式所有状況である。同図表からも明らかなように,バンク

ALハビーブは,一族が約10

%,傘下企業が約1.

8

%の株式を所有し,またハビーブ・

シュガーは一族が約2.

4

%,傘下企業が約16%の株式を所有している。ちなみに,一族 による4社の株式所有比率の平均は約4.

7

%であり,傘下企業のそれは約7.

4

%となって いる。パキスタンに存在する他の財閥と比べると,それほど一族および傘下企業の株式 の所有比率は大きくない。しかし,4社中3社の株式を先の両者が10%以上を所有し ている。

図表8は,図表7で示したダーウッド・ハビーブ一族員の個人別の株式所有状況を表 にしたものである。18名ものハビーブ一族の成員(内訳:ダーウッド・ハビーブ一族

11

28,モハメダリー・ハビーブ一族4名,両一族以外:3名)が主要傘下企業の株式 を所有していることが確認できる。中でも多くの企業の株式を所有しているのは,アリ・

図表7 ダーウッド・グループ主要傘下企業別:

ダーウッド・ハビーブ主要一族および傘下企業の株式所有状況(2007

(出典)HabibInsuranceCo.Ltd.AnnualReport・07,p.49,BankALHabibLtd.,AnnualReport・07, p.85,Habib SugarMillsLtd.,AnnualReport・07,p.49,Baluchistan ParticleBoard Ltd., AnnualReport・07,p.26より作成。

(注)「企業名」欄のカッコ内の数字は株式の総発行数である。小数点4位以下切捨て。

企業名 一族所有分 傘下企業所有分 一族+傘下企業所有 BankALHabibLtd.

(368,106,741株)

10.056 1.868 11.925 37,020,384 6,878,437 43,898,821 HabibInsuranceCo.Ltd.

(59,319,000株)

3.497 9.236 12.733 2,074,860 5,478,795 7,553,655 HabibSugarMillsLtd.

(57,600,000株)

2.452 16.263 18.715 1,412,508 9,367,696 10,780,204 BaluchistanParticleBoardLtd.

(6,000,000株)

3.103 2.463 5.566 186,197 147,797 333,994

(15)

図表8 ダーウッド・グループ主要一族員別:主な傘下企業の株式所有状況(2007

(出典)HabibInsuranceCo.Ltd.AnnualReport・07,p.49,BankALHabibLtd.,AnnualReport・07, p.85,Habib SugarMillsLtd.,AnnualReport・07,p.49,Baluchistan ParticleBoard Ltd., AnnualReport・07,p.26より作成。

(注)所有株式数の後にあるカッコ内の数字は,その企業の株式の総発行数を示す。また割合(%)は個人の 所有比率(小数点4位以下切捨て)を示す。所有比率は小数点4位以下切捨てのため図表7の「一族所 有分」の所有比率とは一致しないものもある。★1:モハメダリー・ハビーブ一族をさす。★2:ダー ウッド・ハビーブ一族とモハメダリー・ハビーブ一族以外の者をさす。

AshgarD.Habib

・HabibSugarMillsLtd.……… 401,032株を所有(57,600,000株:0.696%)

AliRazaD.Habib

・HabibSugarMillsLtd. 8,916(0.015%)

・BankALHabibLtd. 3,446,690(368,106,741株:0.936%)

・HabibInsuranceCo.Ltd. 29,362(59,319,000株:0.049%)

………

………

………

AbbasD.Habib

・BankALHabibLtd. 13,752,886(3.736%)

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 360,733(0.608%)

………

QumailR.Habib

・BankALHabibLtd.……… 5,292,171(1.437%)

MurtazaH.Habib

・HabibSugarMillsLtd. 453,414(0.787%)

・BaluchistanParticleBoardLtd. 94,164(6,000,000株:1.569%)

・BankALHabibLtd. 4,537,042(1.232%)

………

………

………

HasnainA.Habib

・BankALHabibLtd.……… 6,555,278(1.780%)

Muslim R.Habib

・BaluchistanParticleBoardLtd.……… 1,000(0.016%)

Mrs.Razia(AliRazaD.Habibの妻)

・BankALHabibLtd.……… 1,533,772(0.416%)

Mrs.Tahira(AshgarD.Habibの妻)

・HabibSugarMillsLtd.……… 148,118(0.257%)

Mrs.NiametFatima(AbbasD.Habibの妻)

・BankALHabibLtd. 1,595,801(0.433%)

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 9,999(0.016%)

………

Qasim AbbasHabib(AbbasD.Habibの子)

・BankALHabibLtd.……… 306,744(0.083%)

RafiqM.Habib★1

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 79,902(0.134%)

MohammedaliR.Habib★1

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 930,860(1.569%)

Mrs.Jamila★1

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 462,965(0.780%)

Mrs.Sayyeda★1

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 62,284(0.104%)

MansoorG.Habib★2

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 2,700(0.004%)

AunMohammadA.Habib★2

・HabibInsuranceCo.Ltd.……… 136,055(0.229%)

ImranA.Habib★2

・HabibSugarMillsLtd. 401,028(0.696%)

・BaluchistanParticleBoardLtd.……… 91,033(1.517%)

………

(16)

ラザ

D.

とムルタザ

H.

(MurtazaH.Habi

b

)の二人であり,ともに3社の株式を所有 している。彼ら以外のダーウッド・ハビーブ一族員が株式を所有する企業数を見ると1 社から2社が平均となっている。

また,一族員の一社当たりの株式の所有状況を見ると,一族員で他の者よりも特に多 くの株式を所有している者は見受けられない。図表8からも明らかなように,一人当た り平均し1%程度の株式を所有していることが確認できる。このようなことからダーウッ ド・グループでは,特定の一族員が集中的に株式を所有するような形態ではなく,多く の一族員が企業の所有に参加し,一人一社当たり平均し約1%程度の株式を所有してい る。

以上,見てきたように傘下企業の「所有と経営」に関しては,ダーウッド・グループ でもモハメダリー・グループ同様29に一族により支配がなされていることが確認でき た。経営面に関しては,一族が中心となっていることは,図表4および図表5からも明 らかなことであり,今後もこのような一族が中心となった経営形態は変わることはない であろう。また,所有面でも一族が中心となった所有形態となっていることは明らかで ある。しかし,ある特定の一族員が多くの株式を所有するということは確認することが できなかった。逆に多くの一族員が企業の所有に関わり,ダーウッド・ハビーブ一族が 一族として企業の所有にかかわっていることが明らかになった。

5.結びにかえて

以上,本稿ではダーウッド・ハビーブ・グループの傘下企業の事業,および同グルー プの所有面と経営面での支配等について論じてきた。特に,この場で個々について要約 する必要はないであろう。最後に,現時点で確認しているダーウッド・ハビーブ一族員 の一族内における人材育成(後継者の育成)について述べ,結びにかえたい。

近年,パキスタンでも財閥一族員の高学歴化が進んでいる。特に,高学歴の傾向は,

二世および三世以降の財閥一族員に顕著にみられ,彼らの多くはアメリカやイギリス,

またヨーロッパ諸国の大学あるいは大学院等で学んでいる30。G.

F.

パパネックの調査

(1958年)によれば,パキスタンのムスリムの産業企業家の学歴は,まったく教育を受 けていない者が6.

5

%,初・中等レベルの教育しか受けていない者が46.

5

%,また大学 入学許可レベルの教育を受けた者が19%,大学レベル以上の教育を受けた者が27.

5

%と なっている31。大学レベル以上の教育を受けた者が27.

5

%もいるが,しかし初・中等レ

(17)

ベルの教育を受けていない者とまったく教育を受けていない者をあわせると,全体の半 数以上の者が初・中等教育程度の教育しか受けていないということになる。

当時の多くの企業家は,慣習的に各個人を取り巻く一族およびコミュニティ内で丁稚 的な修業を通じ,ビジネスに必要となるノウハウを習得してきた。いわゆるたたき上げ の企業家が多く存在していたのである。そのような慣習は,地縁・血縁・宗派などの関 係を重視する彼らにとってはごく自然なことであったであろう。

1950

年代から約半世紀が経った現在では,財閥一族あるいは企業家の教育に対する 考え方はどのように変化してきたのだろうか。結論から述べると,現在,彼らの教育に 対する考え方は大きく変化し,高学歴を望むようになってきている。既述したように,

パキスタンに存在する多くの財閥の一族員が,アメリカやイギリスなどの大学等で高等 教育を受けるようになっている。今回取り上げたダーウッド・ハビーブ一族も例外では ない。

図表9は,現時点で確認しているダーウッド・ハビーブ一族員の学歴を示したもので ある。現時点で確認しているダーウッド・ハビーブ一族員の学歴はアフメド

H.

ハビー ブ,ザイン

H.

ハビーブ,ムスリム

R.

ハビーブの3名のみである。第4世代の彼ら3 名は,他の財閥一族と同様にパキスタン以外の地,アフメド

H.

とザイン

H.

の2人は アメリカで,ムスリム

R.

はスイスで高等教育を受けている。彼ら3名とも卒業後は,

ダーウッド・ハビーブ・グループ傘下企業で,アフメド

H.

とザイン

H.

は銀行業を中 心に,具体的にはアフメド

H.

は大学卒業後にスイス・ユニオン銀行(Uni

onbankof Swi tzerl and

,現

UBS

)に1985年から1989年まで勤め,ザイン

H.

も大学卒業後に同じ く,スイス・ユニオン銀行に1990年から1993年まで勤め,そこで銀行業を学び,その 後両者ともダーウッド・ハビーブ傘下のハビーブサンズ・バンクなどの役員に就任して いる32。また,ムスリム

R.

はスイスから帰国後は,製造業を中心にそれら企業の役員 等(バローチスタン・パーティクルボードの

Chai rman&Chi efExecuti ve

。図表5 を参照)に就き,同グループの発展の一役を担っている。

図表9 主なダーウッド・ハビーブ一族員の学歴

(出典)HabibsonsBankLtd.Website,BoardofDirectors

(http://www.habibsons.co.uk/directors.html,・09.7.13採録)。

AhmedH.Habib DegreeinManagementandQuantitativeMethodsfrom BostonCollege,USA ZainH.Habib Businessdegreefrom BentleyCollege,USA

Muslim R.Habib BSc(BachelorofScienceinIndustrialTechnology,Switzerland

(18)

学歴に関するデータが3名しかないため,断定的なことは言えないが,しかしダーウッ ド・ハビーブ一族における一族員の人材育成(後継者の育成)についての傾向の一端を,

以上述べてきたことから伺えるのではないだろうか。すなわち,一族員を外国の大学あ るいは大学院等で学ばせ,その後,アフメド

H.

らのようにダーウッド・グループとは まったく異なる企業で経験を積む,あるいは傘下企業内でのトレーニングによりマネー ジメントに必要な知識を学ばせる。どちらにしても,人材育成,特に後継者の育成方法 は以前とはまったく違う方法をとってきているということである。

以上,ダーウッド・ハビーブ・グループについて論じてきた。しかし,本稿で論じる ことのできなかった点も多くある。例えば,傘下企業の詳細な企業活動,一族内におけ る役員兼任についての役割分担,株式所有に関する一族内における取り決め等々,多く の事柄について明らかにしたとは言いがたい。残された問題点は多くあるが,それらす べてを今後の課題とし継続し研究を行っていきたい。

〔付記〕本稿は平成21年度科学研究費補助金(若手研究(B),課題番号19730245)「イ スラーム諸国における財閥の形成・発展過程に関する一考察」の助成にもとづく 研究成果の一部である。

1)山中一郎編著(1992)297頁。

2)山中一郎(1966)を参照。

3)Kochanek,StanleyA.(1983,p.21.

4)代 表 的 な 企 業 は , ハ ビ ー ブ 銀 行 (Habib Bank), ム ス リ ム 商 業 銀 行 (Muslim CommercialBank), オ リ エ ン ト 航 空 (Orient Airways), ム ハ マ デ ィ 汽 船

(MuhammadiSteamshipCo.Ltd.)などである。

5)川満直樹(1998)および同(2003)。

6)HabibBankAGZurich,A BriefHistory,p.4.

7)Shahid-ur-Rehman(1998,p.139.

8)HabibBankAGZurich,A BriefHistory,p.5.

9)ハビーブ財閥本部(HouseofHabib)での聞き取り調査による(1998年7月)。

10)アーメド・グループのハビーブ・インシュアランスへの関わりについては,それを示す資 料が現時点(2009年7月現在)ではないため確認できない。

11)インド財閥については,さしあたり,三上敦史(1993)を参照のこと。

(19)

12

)BankALHabi

b

本店での聞き取り調査による(1998年7月)。

13

)ハビーブ財閥のモハメダリー・ハビーブ・グループについては,川満直樹(1998)および 同(2003)1

11

頁を参照のこと。

14

)Habi

bBankAGZuri ch,

A BriefHistory,

p.6.

15

)バンク

ALハビーブの本格的な事業開始は1992

年1月である。

16

)BankALHabi

b,

AnnualReport2007,

p.17.

17

)バンク

ALハビーブがアル・ハビーブ・キャピタル・マーケットの株式を66. 67

%所有し ている(BankALHabi

b,

AnnualReport2007,

p.94

)。

18

)LLCとは「有限責任会社(LLC:Li

mi tedLi abi l i tyCompany

)」のことである。

19

)ダーウッド・ハビーブ・グループは,UAE国内においてグリーンシールド・インシュア ランス・ブロカーズ以外にも保険業や不動産関係の企業,Habi

bInvestmentCorpora- ti on

,Habi

bProperti es

,Greenshi

el dDevel opers

,Greenshi

el dRealEstateBrokers

などがある(Greenshi

el dInsuranceBrokersLLCWebsi te,

・History・,

http: //www. greenshi el d. ae/greenshi el d-hi story. php

より。・

09. 7. 13

採録)。

20

)ハビーブ・シュガーの織物業は,HSM Texti

l esLtd.

(1979年設立)により行われている。

21

)Bal

uchi stanParti cl eBoardLtd. ,

AnnualReport・08,

p.3.

22

)ハラールフードとは,イスラームの教えにより許された食べ物のことである。

23

)ハビーブ・スクール・トラストの詳細な活動については,同トラストのウェブサイト

(http:

//habi bschool s. edu. pk/Habi bSchool /defaul t. asp

)を参照のこと。

24

)Habi

bPubl i cSchoolWebsi te,

History(http:

//habi bschool s. edu. pk/Habi bSchool / mai n/hi story. asp?ID=3&Log=1&menui d=1

,09.

3. 25

採録)。

25

)Habi

bGi rl sSchoolWebsi te,

History(http:

//habi bschool s. edu. pk/Habi bSchool / mai n/hi story. asp?ID=4&Log=1&menui d=1

,09.

3. 25

採録)。

26

)ダーウッド・グループの社会貢献については,

DawoodHabi bGroupWebsi te,

CommunityDevelopment

(http:

//www. habi b. com/html /communi tydevel opment. html

)を参照のこと。

27

)「ムハージル」とは,1947年の印パ分離独立にともないパキスタン国内にインド,あるい はその他の国から移住してきたイスラーム教徒の(宗教的)避難民をさす。

28

)資料の制約により,ダーウッド・ハビーブ・グループの主要人物であるハビーブ・ムハン マド

D.

の株式所有分を現時点では確認することができない。

29

)川満直樹(2003)6

11

頁を参照。

30

)川満直樹「パキスタン新市場で活躍する財閥 ラークサン財閥の形成と発展を中心とし 」『市場史研究』第25号(2005年)158頁,同「パキスタン財閥の形成と発展 ンダーラ財閥とアトラス財閥を中心として 」『阪南論集 社会科学編』第38巻第1号

(2002年)30頁などを参照のこと。

31

)Papanek,G.

F.

(1971

,p.240,Tabl e8 1Educati onandsuccessofMusl i m Industri al -

i stsasof1958.

(20)

32

)Habi

bsonsBankLtd.Websi te,

BoardofDirectors

http: //www. habi bsons. co. uk/di rectors_ahmed. html ,

http: //www. habi bsons. co. uk/di rectors_zai n. html

より(・

09. 7. 13

採録)。

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参照

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