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企業経営資源と海外市場参入形態に関する考察 ―

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(1)

1.はじめに

企業が海外市場へ参入する際の動機となる要 因や,障害となりうる要因は様々なものが考え られるが,参入する際にいかなる「形態」を選 択するかは,重要な意思決定である。何れの形 態を選択するにも多くの場合において多大なリ ソースや時間を要し,その形態は簡単には変え られないからである。従って,その際の意思決 定は企業にとって戦略的なものでなければなら ない。

これまで,企業の海外市場参入形態選択に関 する研究において,数多くの実証分析がなされ てきており,説明力の高いモデルも構築され ている。しかしながら,主流の取引費用理論(1)

ではコストの点から参入形態選択を説明するも のの,それは必ずしも戦略的意義と結びつくも のとはいえない。コストの低い参入形態を選択 することが,企業の参入目的や戦略的動機に必 ずしも一致しないからである。この点,近年に なって取り上げられてきている資源ベース理論 のアプローチからすると,それは企業の参入意 義や動機とも密接に関連しており戦略行動をよ り良く説明しうるのではないかと考える。

本稿では,資源ベース理論に依拠しながら,

参入企業が保有する経営資源やケイパビリティ が日本企業の海外市場参入形態選択にどのよう な影響を与えているかについて探ることを目的 とする。

2.先行研究

2-1 企業の海外市場参入形態選択に関する 先行研究

Werner

[2002]によると,海外市場参入形態

の研究は,国際経営の分野において,海外直接 投資,国際化に次いで多く研究が為されている 分野である。研究動向を知るうえで参考になる ものとして,

Canabal and White

[2008]がある。

これは1980年から2006年までに発表された海外 市場参入形態に関する論文をレビューしたもの である。これによると,既存研究で最も多く使 われている理論的枠組みは「取引費用理論」で 48稿 あ る。

Shimizu, Hitt, Vaidyanath, and Pisano

[2004]では,海外市場参入形態の先行研究を レビューして,その理論的背景に依らず,既存 研究における参入形態の選択要因を,①企業レ ベルの要因(国際的な経験,商品の多様性,海

*早稲田大学大学院社会科学研究科 博士後期課程3年 論 文

企業経営資源と海外市場参入形態に関する考察

― 日本製造業企業による米国市場への参入形態選択行動 ―

太 田 卓 也

(2)

外戦略など),②産業レベルの要因(技術環境,

広告環境,販売環境),③国レベルの要因(文 化的な隔たり,被買収企業国の特定の文化背 景)の3つに大きく分類している。

例えば,産業レベルの要因として,

Brouthers and Brouthers

[2000]は,成長市場では,新た なグリーンフィールドベンチャーが入り込む余 地が大きいため,「高い市場成長率の国への投 資においてはグリーンフィールド投資が選択さ れる」ことを実証している。国レベルの要因と して代表的なものでは,

Kogut and Singh

[1988]

がある。「ホスト国とホーム国の文化的距離が 大きい場合や,ホーム国のリスク受容性が低い 場合は,グリーンフィールド投資かジョイント ベンチャーの形態が取られる傾向にある」こと を実証している。本稿で着目しようとしている 企業レベルの要因でも,研究の蓄積は多くない と言われるものの,幾つかの実証が為されてい る。

Brouthers and Brouthers

[2000]では,日本 企業がヨーロッパに参入したサンプルを対象に して,参入企業の研究開発力が高い場合,国際 的な経験を有している場合はグリーンフィール ド投資を選択し,参入企業が多角的企業である ことや,被買収企業との間に製品類似性がある 場合は,買収を選択することを実証している。

2-2 資源ベース理論

資源ベース理論の前提となるのは,企業はそ れぞれ固有の経営資源を有するということであ り,資源ベース理論に基づき戦略を策定するに は,競争優位性の基礎となる資源を識別し,そ れを評価し,重要な経営資源を維持・強化する ために投資を行うことになる。

Barney

[1986]は,企業の経済的パフォーマ

ンスは,企業が市場を創造する戦略に依存する のではなく,戦略を実行するコストに依存する と考えた。戦略実行のコストを分析するために,

戦略を実行するに必要なリソースが獲得でき る「戦略的要素市場」という概念を持ち出して いる。もしこの市場が完全競争であれば,企業 は戦略の遂行において平均以上のリターンを獲 得することはできない。逆に,もしこの市場が 不完全競争であれば,その市場において戦略遂 行に必要な資源を獲得した企業は平均以上のリ ターンを獲得できる。

Barney

によると,不完全 な要素市場を外部環境に臨むことは困難である。

なぜなら,どの企業も同じ情報を享受すること が出来るからである。ところが企業の内部につ いては事情が異なる。企業は自らが支配する内 部資源分析において明らかに情報上の優位があ る。従って,不完全な要素市場を作り出す企業 内部の特異性のある資産,スキル,ケイパビリ ティが企業の競争優位の源泉となるのである。

Barney

の「戦略的要素市場」を想定するなら

ば,企業は経済的レントを生むように,自己が 有する経営資源の強化や外部に存在する経営資 源の内部化を行うことで優位性を増しながら,

レントを享受するような企業行動を取ることに なり,海外市場参入形態の選択はその一つの表 象になるものと考えられる。

Cannabal and White

[2008]によると,海外 市場参入形態選択の研究分野において,資源 ベース理論からのアプローチが為されたのは主 に2000年以降であるが,内部要因として組織の ケイパビリティに焦点を当てた研究としては,

それ以前に

Hennart and Park

[1993]や

Madhok

[1997]がある。

Hennart and Park

[1993]では,

日本から米国への投資に限定したサンプルで,

(3)

海外参入の形態を理論づける仮説の検証を行っ た。仮説の理論付けは,取引費用理論,

M&A

理論,成長理論の類型で行っている。技術力の 強みを有する企業はグリーンフィールド投資に より,それを海外へ移転することを選好し,伸 長率が高い市場への参入,異業種への参入,規 模の大きな投資を行っている企業は,買収の形 態を選択する傾向があることを検証した。彼ら が成長理論と呼んでいる枠組みは内部要因た る経営リソースに着目したものである。また,

Madhok

[1997]においても,取引費用理論と

組織のケイパビリティ理論から,参入形態選択 行動の分析が行われている。

資源ベース理論から分析を行った近年の主要 研究として,

Anand and Delios

[2002]がある。

彼らは,イギリス,ドイツ,日本企業の米国参 入を事例として,経営資源のアップストリーム とダウンストリームの特性から,企業が買収と グリーンフィールド投資のどちらの参入形態を 選択するかについて,仮説を構築し実証を行っ た。ホスト国での技術優位性が強い場合,参入 市場における広告投資の競争が激しい場合,参 入市場における販売投資の競争が激しい場合に は,それぞれ買収による参入が選択されること が実証されている。

2-3 先行研究に見られる課題

海外市場参入形態の既存研究においては,産 業レベルと国レベルでの実証は比較的強固なも のであるのに対し,未だ企業レベルでの実証は 結論が混在しており,研究の蓄積が十分ではな い。先に示した

Anand and Delios

[2002]にお いても,彼ら自身が同論文で指摘しているよう に,分析データに産業平均値を用いており,個

別企業を対象に分析していない点で課題があ る。資源ベース理論の戦略的意義でもふれたよ うに,資源ベース理論の前提は,企業はそれぞ れ個別の経営資源を所有しており,各企業は根 本的に異なるというものである。従って,本来 的には同一業種内においても,個別企業の経営 資源の異質性が戦略オプションの選択に影響を 与えるものと考えられる。本稿においては,既 存研究が抱える課題に鑑み,参入企業の経営資 源のみに着目をして個別企業レベルのデータか ら仮説を導き検証を行う。

3.仮説の提示

Anand and Delios

[2002]では,アップスト リームにある経営資源とダウンストリームにあ る経営資源に分類を行い,経営資源要因と参入 形態の関係について示した。そこでは,参入先 市場(ホスト国)の経営資源環境が仮説に組み 込まれている。一方,本稿においては,純粋に 参入企業が保有する経営資源のみに着目し,参 入形態決定要因についての仮説を導出してみた いと考える。

先ず,レントを発生させるような企業の経営 資源の識別のために

Barney

のフレームワーク に着目をした。

Barney

は,企業の経営資源やケ イパビリティの定義,そして経営資源の異質 性と経営資源の固着性の前提は非常に抽象度 が高いため,企業の強み・弱みの分析をする には

VRIO

フレームワークと呼ばれる分析方法 が有効であるとしている。

VRIO

とは,

Value

Rareness

Imitability

Organization

の頭文字で,

このフレームワークは,企業が従事する活動に 関して発すべき4つの問い,①経済価値に関す る問い(2),②希少性に関する問い(3),③模倣困

(4)

難性に関する問い(4),④組織に関する問い(5), によって構成される。

企業の強み・弱みとして経営資源が認識され ると,その特殊的資産を有することからレント が生じ,その強みたる企業特殊資産を最も効率 的に活用するために海外市場に参入する企業行 動へ結びつくし,また一方では,自社の経営資 源を強化するために外部経営資源の取り込みと いう企業行動へと結びつく。本稿では,この企 業の強みたる経営資源・ケイパビリティとして 研究開発力,ブランド力,海外経験度に焦点を 当て,これらの要素が参入形態選択に対し,ど のように影響するかについての仮説を導出した いと考える。

3-1 研究開発力

VRIO

フレームワークによると,企業の研究 開発力は,当然ながら経済的価値を有するもの となる。革新的な研究成果に基づく,商品や サービスの提供は市場において新たな機会を実 現するものであるし,また,希少性があるもの とも言える。特定の技術は,先の模倣困難性の 原因たる特許において,その優位性は守られ る。そして,その技術をフルに活用できる組織 があれば,研究開発力は持続可能な固有の強み となり,競争優位の源泉となりうるものであ る。従って,高い研究開発力を保有する企業 は,多くの場合において,経済的レントが生ず るものと考えられる。

近年になって,グローバルな競争環境が進展 しており,あらゆる国の企業がグローバルな優 位性構築に向けて競争している。技術は国境を 越えて汎的に活用することが可能なため,研究 開発力の高い企業は,その強みを活用して国を

越えて最大限の利益を追求するモチベーショ ンを有する。その際,

Hennart and Park

[1993]

によると,買収よりグリーンフィールド投資の 方が企業特有の強み,組織に根ざした技術を浸 透させやすいものとされる。

一方,

Anand and Delios

[2002]では,参入 形態の選択はホーム国とホスト国の技術集約度 の差に関連するものと想定し,ホスト国が相対 的に優位な場合は買収の形態を取り,ホーム国 が相対的に優位な場合はグリーンフィールド 投資を選択するものと考えている。しかしな がら,

Birkinshaw and Hood

[1998]は,企業が 自国の優位性を移転するのみならず,自国を 超えて技術獲得を追求していくことについて は,ターゲット企業の属国的なケイパビリティ を身につけることの困難さ故に,グローバル企 業でさえ,企業の能力や優位性は本国の能力を 反映したものとなる傾向にあることを指摘して いる。したがって,ホスト国の研究開発力が強 くてもそれを獲得することは容易ではなく,た とえホスト国の方が,研究開発力が高いとして も,それは必ずしも買収の参入形態とは結びつ かないものと考えられる。

本稿における仮説は,ホスト国の研究集約度 の高さが買収選択を促すものとは考えず,ホー ム国の企業における研究開発費の構成比が相対 的に高い企業においては,自国の技術を移転さ せようとする動機が働き,その際には,自国の 技術力を最も効果的に活用できる形態としてグ リーンフィールド投資が選択される傾向にある ものと考える。

仮説1:研究開発力の高い企業が海外市場へ参 入する場合はグリーンフィールド投資による参

(5)

入形態を選択する。

3-2 ブランド力

ブランドは極めて重要な企業特有のリソース である。また,市場において成功するに極めて 重要な要素であるとも考えられている。

Aaker

によると,ブランド資産は消費者のブランド連 想によって構成されており,ブランドを構築す るプロセスにおいては,消費者の認知とポジ ティブなブランド連想をもたらすための累積的 な宣伝広告,マーケティング投資を必要とす る。したがって,ブランドは模倣するのが困難 で代替ができず,構築するのに長い期間を要す るリソースであるものと考えられる。

VRIO

フレームワークにおいて,企業が保有 するブランド資産は,外部環境の機会や脅威に 対応する経済的価値を有するものといえ,ま た,希少性があり,模倣困難なものであるとい える。更に効果的なブランド管理は,組織によ る適切な運営が必要であるものと考えられるた め,ブランド資産も研究開発力同様に,持続可 能な固有の強みとなり,競争優位の源泉となる ものである。従って,経済的レントが生じ,自 国における強みを活用する動機が生じるものと も考えられるが,

Wernerfelt

[1985]は,ブラ ンド資産の移転可能性について,ブランドの構 築は非常に時間を要するため,自国のブランド を新たに海外マーケットへ移転することは困難 であることを指摘している。ブランド海外移転 の困難さをふまえると,自国で宣伝広告費を費 やしブランド力を強みとしながら優位性を構築 するビジネスモデルを有する企業が,海外市場 に参入する際には,自国でのブランドを海外へ 移転させるのではなく,新しい市場でのブラン

ド獲得の動機,即ち買収へと企業を導くもの と考えられる。また,

Smith and Barclay

[1997]

によると,参入企業が現地での流通経路や販売 力を構築するのは非常に困難であり,ごく少な い企業のみが,これらを構築することに成功し ている。ブランド力が強みとして機能している 産業や企業において,海外でのビジネス展開を 進めるには,現地で確立されているブランドを 販売力も含め組織ごと買収することが最も手っ 取り早く効果的な方法論であると考えられるの である。上述の点を踏まえて,本稿では以下の 仮説を提示する。

仮説2:ブランド力の高い経営資源を有する企 業が海外市場へ参入する場合は,買収による参 入形態を選択する。

3-3 海外経験度

企業の海外経験度は,外部環境における脅威 や機会に適応することを可能にするケイパビリ ティであるため,

VRIO

フレームワークに沿っ て強みであるとは考えられるが,そのケイパビ リティを有するのは必ずしもごく少数の企業に 限定されず,また,他企業の模倣困難性に関し ても先述の研究開発力,ブランド力に比べて大 きくないため,強みではあるが,持続可能な固 有のコンピタンスであるとまでは考えられな い。また,本稿で分析対象とする製造業企業に おいては,それ自体の特殊資産性により海外で レントを享受するといったものではなく,他の 強みである研究開発力やブランド力といった経 営資源を活用するためのケイパビリティである とも考えられる。

Buckley and Casson

[1976]は,内部化をす

(6)

ることで,外部市場における不完全性を回避 し,国境を越えた取引が取引費用の削減になる とする一方,潜在的な利益を相殺するような内 部化のためのコストも存在することを示した。

Hennart and Park

[1994]によると,グリーン フィールド投資では,買収に比較して,内部化 のコストは高くなる傾向がある。企業の海外輸 出に裏付けられる海外経験度のケイパビリティ は,これらのコストを低減させるものといえ る。何故なら,既に海外輸出を行っており,海 外市場での習熟度がある企業においては,習熟 度の低い企業に比べて現地での模索と情報の費 用や,交渉と意思決定の費用が,相対的に低減 されているものと考えられるからである。した がって,海外輸出を通して現地や海外での習熟 度が既にある企業はグリーンフィールド投資を 選択する傾向にあり,一方で,全く習熟度のな い企業においては,内部化のコストを低減させ るため,買収により,現地の企業が既に保有す る知識や技術,人的資源といった経営資源の獲 得と,現地の市場,主要な取引先との関係性構 築を行うものと考えられる。以上より,本稿に おいて,次の仮説を提示する。

仮説3:海外経験度の高い企業が海外市場へ参 入する場合はグリーンフィールド投資を選択す る。

4.サンプルの収集と分析方法

本稿では日本製造業企業が1980年~2007年に 米国に新規参入した事例を分析対象とした。参 入事例のサンプルは「海外進出企業総覧2008年

(東洋経済新報社)」から初めて当該国へ参入し

ている事例のみの抽出を行った。なお,個別企 業の財務データを用いた分析を行うため,非上 場企業のサンプルと,また,上場企業でも今回 必要とする財務データが得られないサンプルは 取り除いた。結果,分析に用いることが出来る サンプル数は165となった。

また,80年代後半の好況や円高による影響を 受けて,日本企業によるクロスボーダー

M&A

が一時的に拡大を見せていることを受けて,分 析対象期間を1991年までの参入と,1992年以降 の参入に分類した分析も行った。

従属変数は,海外市場への参入形態は「海外 進出企業総覧2008年(東洋経済新報社)」に記 載されている参入形態を抽出,新規設立による グリーンフィールド投資を0,買収を1のダ ミー変数に設定した。

独立変数は,業種の違いをコントロールする ため,個別企業の数値と業種別中央値との差を 算出した。研究開発力については参入企業の研 究開発費対売上高比率を使用。これは,既存研 究においても研究開発力の高さを示す指標とし て多く使用されてきているものである。ブラン ド力については参入企業の宣伝広告費対売上高 比率を使用,これも同様に既存研究においても ブランド力を示す指標として使用されているも のである。

Anand and Delios

[2002]では,参 入市場における広告投資の競争が激しい場合,

買収の参入形態が選択されるという仮説の検証 のため,ホスト国における宣伝広告費用の対売 上高比率を使用し,産業平均値を分析の対象と しているが,本稿では,参入企業が保有する経 営資源の分析から仮説を裏付けているため,参 入企業個別の宣伝広告費対売上高比率を使用し ている。海外輸出については輸出売上高比率を

(7)

使用。

Brouthers and Brouthers

[2000]でも,参 入企業が高いレベルで国際経験を有するかどう かの指標として,同様に輸出売上高比率を使用 している。また,何れの値も参入形態の選択決 定時の経営資源状況を反映させるため参入年の 1年前の年の決算数値を有価証券報告書(単独 決算)から取得し,企業規模による違いをコン トロールするため売上金額を対数化して独立変 数に加えた。

分析はこれらの変数を組み込み,ロジス ティック回帰分析による検定を行った。ロジス ティック回帰分析は,目的変数を二値変数とし た回帰分析を行うことが可能で,

Cannabal and

White

[2008]によると,ロジスティック回帰

分析は参入形態選択の実証研究において,最も 頻繁に使用されている統計分析手法である。こ の手法においては,選択している参入形態と,

それに影響を及ぼしている変数との関係性につ いて容易に説明できるからである。

5.分析結果の報告と解釈

表1では,基本統計量と相関マトリクスにつ いてまとめた。独立変数として組み込んでいる 売上規模,研究開発,宣伝広告,海外輸出は何 れも0

.

3未満で相互に高い相関関係を示してお らず,多重共線性の問題については特に考慮す る必要がないものと考える。

表2では,分析結果についてまとめた。モデ

表1 基本統計量と相関マトリクス

    平均値 標準

偏差 最小値 最大値 1参入 形態 2売上 規模 3研究 開発 4宣伝 広告

1 参入形態      

2 売上規模 10.88 1.27 7.23 14.46 - 0.03   3 研究開発 - 0.01 0.03 - 0.08 0.09 - 0.08 0.05   4 宣伝広告 0.00 0.01 - 0.04 0.06 0.23 - 0.02 0.29   5 海外輸出 - 0.13 0.17 - 0.59 0.28 - 0.03 0.33 0.17 0.02

表2 分析結果

  仮説

符号 モデル1 モデル 2 モデル 3

研究開発 + 係数 23.88   係数 10.73   係数 107.38       p値 0.09 * p値 0.53   p値 0.04 **

宣伝広告 - 係数 - 48.39   係数 - 35.60   係数 - 109.65  

    p値 0.00 *** p値 0.04 ** p値 0.08 *

海外輸出 + 係数 0.40   係数 1.48   係数 3.26       p値 0.84   p値 0.60   p値 0.42   売上規模   係数 2.95   係数 - 0.15   係数 - 0.37       p値 0.94   p値 0.67   p値 0.62   モデルの検定 p値 0.04 ** p値 0.34   p値 0.03 **

R2乗 0.12   0.08   0.42  

サンプル数   165     85     80  

 (注)***は1%水準で有意,**は5%水準で有意,*は10%水準で有意になることを示す。

(8)

ル1は今回のサンプルの全期間である1980年~

2007年,モデル2は1980年~1991年,モデル3 は1992年~2007年,それぞれの期間の参入事例 を分析の対象とした結果を示している。

先ず,モデル1では,仮説2が1%水準,仮 説1が10

%

水準で有意となり,仮説3に関して は支持されない結果となった。10

%

水準での優 位性は統計的説明力が弱いものの,

Anand and

Delios

[2002]等の先行研究でも有意として扱っ

ており,本稿においても,あくまでも他の1

%

%

水準と識別出来る形式で10

%

有意水準を設 定した。

次に,年代別に区切ったモデル2とモデル3 の結果を見てみると,モデル2では,仮説2の みが5

%

水準で支持され,モデル3では,仮説 1が5

%

水準,仮説2が10

%

水準で支持される 結果となった。

ここで,モデル2では,モデル1に比較す ると

R

2乗値が0

.

08とモデル1の

R

2乗値であ る0

.

12を下回り,また,仮説2の係数も小さく なっている。一方で,モデル3では,

R

2乗値 が0

.

42とモデル1の0

.

12と比較して高くなって おり,更に,仮説1と2のいずれの係数値につ いてもモデル3の方が高い値となっている。

一つの解釈として,これは,80年代後半の企 業の好況や円高による影響を取り除くと,より 純粋に企業の戦略行動が導かれるようになり,

その結果,1992年以降の事例を分析対象とした モデルの説明力,各仮説の結果への影響度が高 まることが示されているものと考えられる。

6.結論と今後の課題

以上の考察を踏まえ,本論文の分析結果に関

して以下のように結論づける。参入企業の経営 資源に着目したうえで,日本企業の米国市場参 入事例において,ブランド力の高い経営資源を 有する企業が参入する場合は,買収による参入 形態を選択する。参入企業の特性として,宣伝 広告投資を行って,ブランド資産を形成するよ うなビジネスモデルを持っている場合,ブラン ドの経営資源特性を考えると,海外市場参入の 方法は自国のブランド移転による優位性構築で はなく,むしろ現地に存在するブランドの取得 が選択される傾向にあるということである。

Anand and Delios

[2002]では,同様に資源 ベース理論の立場からホスト国における産業別 の広告集約度が高いケースにおいては買収が選 択される傾向にあることを示した。それは,ブ ランドのダウンストリームとしての経営資源特 性に着目して,属国性や新規構築困難性を理由 として広告環境の厳しい産業に対しては買収に よる参入が選択されることを示したものであ る。この点,必ずしも参入企業の内部要因たる 経営資源に着目した論理的帰結ではないし,彼 らがリサーチの限界として指摘する通り,個別 企業の経営資源の違いから導かれた結論でもな い。その意味で,本稿では,参入企業の個別経 営資源のみに着目して企業レベルのデータから 仮説を導き,同じ産業内においても,企業個別 の経営資源の差が参入形態選択行動に影響を与 えることが実証された。

一方,研究開発力の高い企業が海外市場へ参 入する場合はグリーンフィールド投資による参 入形態を選択するという仮説に関しては,全期 間においては有意水準10

%

と説明力に課題はあ るものの,全期間と1992年~2007年の期間にお いて支持される結果となった。これは,特に日

(9)

本の海外直接投資において,円高や好況の影響 が高い80年代後半を取り除いた場合には,企業 の戦略行動がより良く説明出来るということが 考えられる。

また,海外経験度の高い企業が海外市場へ参 入する場合はグリーンフィールド投資を選択す るという仮説に関しては,いずれの期間におい ても支持されなかった。理由としては,他の仮 説に示される,ブランド力,研究開発力に比較 すると,海外経験度は先述したように企業が保 有する固有資源的価値とまでは言えないため,

企業が海外市場参入する際の戦略的動機として は影響度が弱い可能性が考えられる。

今後の課題としては,モデルの説明力の弱さ がある。本稿においては,産業レベル,国レベ ルの要因に依らず,参入企業の経営資源のみか ら参入行動を説明することを目的としたが,実 際には既存研究が示してきた通り,参入形態決 定には多くの要因が関係している。従って,参 入企業の経営資源要素だけで説明力を高めるの は困難とも言える。

また,

Shimizu, Hitt, Vaidyanath and Pisano

[2004]

が示すように,企業レベルでの実証研究は結論 が混在しており,更なる研究の蓄積が必要なこ とはもちろん,資源ベース理論に基づき経営資 源やケイパビリティと参入形態の関係性を明ら かにする際には,その経営資源を独立変数とし てどのように実現するかということについても 検討が必要である。本稿では,研究開発力,ブ ランド力,海外経験度に着眼し,過去の研究に 沿う形でそれぞれ研究開発費用対売上高比率,

宣伝広告費用対売上高比率,海外輸出売上高比 率を用いたが,いかなる指標を独立変数に組み 込めば,企業が保有する経営資源をより的確に

表象出来るのかということについても,更なる 検討が必要であると考える。

〔投稿受理日2011.9.24/掲載決定日2012.1.26〕

⑴ Madhok[1997]によると,海外市場参入形態に

関する理論づけは,内部化理論から出ているが,

内部化理論も取引費用理論も,取引費用の最小化 と市場の失敗に関するもので,取引費用最小化と 統治様式で最も効率的な選択を行うために取引の 特徴を分析している点は同じであることを指摘し ている。

⑵ 「経済価値に関する問い」では,その企業の保有 する経営資源やケイパビリティは,その企業が外 部環境における脅威や機会に適応することを可能 とするかが問題となる。

⑶ 「希少性に関する問い」では,その経営資源を現 在コントロールしているのが,ごく少数の競合企 業であるかどうかが問題となる。

⑷ 「模倣困難性に関する問い」では,その経営資源 を保有していない企業は,その経営資源を獲得あ るいは開発する際にコスト上の不利に直面するか どうかが問題となる。

⑸ 「組織に関する問い」では,企業が保有する,価 値があり希少で模倣コストの大きい経営資源を活 用するために,組織的な方針や手続きが整ってい るかが問われている。企業がその経営資源やケイ パビリティの戦略的ポテンシャルをフルに活用す るためには,組織的な体制が整っていなければな らないとしている。

参考文献

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参照

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