九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
パターン認知における全体・部分の処理特性
二瀬, 由理
九州大学文学研究科心理学専攻
https://doi.org/10.11501/3150682
出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(文学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
3.2.4.方位依存性の検肘(実験3, 4 :二瀬・行場, 1997a)
先述した2つの実験から, 被験者に特定の漢字パターンを持続的に注 視させると, その後に提示される漢字の認知反応時間 (音読潜時) に遅 延が生じることが示された. しかもその効果は, ASとTSの形態的関係
に依存して生起したり, しなかったりすることがわかった. さらに,
ASとサイズが異なるTSを提示すると, 同一構造をもっ場合にみられた 遅延は消失することがわかった. ただし, }If貢応漢字とテスト漢字が同一 漢字であれば, サイズが異なっても持続的注視による遅延が依然として 発生することから, この効果は, 残像の影響なども含めて, 網膜像に依 存しないものであることが示唆された.
一般にパターン認知の理論においては, サイズに対する不変性ととも に傾きに対する不変性も重要な特性として位置付けられている(例え ば, Lindsay & Norman, 1977). したがって, 持続的に注視した漢 字とその後に提示される漢字の方位を変化させた場合も, サイズを変化 させた場合と同様の結果が得られる可能性があるだろう. ここで, 紹介 する2つの実験は, 持続的注視による漢字認知の遅延についての方位依 存性に関して分析を進めたものである.
実験3 -目的
ASとTSの間で, 構造や部分を操作した形態条件を設けるとともに,
両者間で方位を変化させた. 本実験では, 正立の順応漢字から左右に 300回転と900 回転させたテスト漢字を認知する際の遅延を調べた.
- 方法
[実験計画]以下の要因が設定された. 実験1 , 2と同様に, ASの注 視条件, TS の形態条件, TSの時間条件があった. この実験では, 新た
に,1'5の回転 角の要因 を設けた. 具体的には, TS がASに対して300 回転している場合と 900 回転 している場合の2種類であった. いずれ の要因も被験者内要因とした.
[被験者)成人男女1 6名. 被験者は, 矯正視力も含めて全て正常な視 力を有していた.
(装置)刺激の提示を含めて実験制御には, パーソナルコンビュータ (SHARP X68030) および21インチディスプレイ(SHARP CZ-621D) を用いた.
[刺激)ほぼ実験1 に準じる. AS, TSのいずれも縦横とも視角約5。
の大きさであり, 白地(40 cd/m】)に黒CO.2cd/m】)で ディスプレイ の中央に提示した. また , TSに関しては, 正立の状態から, 左右方向
のいずれかに300 また は 900 に回転させた漢字パターンを使用した.
[手続き〕持続的注視パラ ダイムを用いて, 実験を行なった. 一人の被 験者につき, 25秒注視条件 を20試行, 1秒注視条件 を20試行, ダミー
8試行の合わせて48試行を , TSが300 また は900 傾いている場合のそ れぞれについて, ランダ ムな順序で 96試行を 実施した.
-結果と考察
被験者16名のうちダミー試行の反応時間が大きく遅れている4人 を のぞいた 12人分のデータ を用いた .
まず , 300 および 900 回転のそれぞれについて, TSの時間条件別 に反応時間を求めた. その結果 , 300 回転の場合 は1秒注視条件にお いて1.2秒の時間条件で606 ms, 5.2秒で582 ms, 9.2秒で57 9 ms,
13.2秒で575 msであった. 25秒注視条件においては, )11員に624 , 600, 608 , 586 msであった. 一方, 900 回転の場合 は1秒注視条件に
おいて, )11員に650 , 638 , 632 , 625 msであり 25秒注視条件で)11貢に 667, 644 , 646 , 621 msであった.
52
持続的注視による効果を詳しく検討するために, テスト漢字を 300 回転させた場合と 900 回転させた場合のそれぞれの条件について, 1 秒注視条件と 25秒注視条件の反応時間の差を算出したものをFig.3.4.
とFig.3.5. に示した.
形態条件別に 2要因(ASの注視条件XTSの時間条件) の分散分析 にかけたところ, 300 回転の場合, 同構造・同部分の形態条件におい て注視条件の主効果がみられた(F(1,11) = 5.45, P<.05). さらに, 単純 主効果の検定を行ったところ, 1.2秒の時間条件において 25秒間注視し た場合の反応時間が 1 秒間注視した場合よりも有意に遅れていること が示された(F(1,44)=9.29, pく.005). しかし, 同構造・異部分, 異構 造・同部分, 異構造・異部分の 3 条件においては, 注視条件に有意な 主効果はみられなかった(それぞれ, F( 1, 11) = 1. 43, n. s. ; F( 1, 11) = 2.85, n.s.; F(1,11) = 3.48, n.s.).
これに対して, 900 回転の場合, 同構造・同部分の形態条件をはじ
め, 同構造・異部分および異構造・異部分の各条件において, 注視条 件の主効果はみられなかった(それぞれ, F(1,ll) = 1.83, n.s.;
F(1,11)=0.00, n.s.; F(1,11)= 0.20, n.s.). ただし, 異構造・同部分 の形態条件では, 注視条件に有意な主効果がみとめられ(F(1,11)ニ 29.04, pく.01), さらに単純主効果の検定を行ったところ TSの時間条 件5.2 秒において有意な差がみられた(F(1,44) = 5.24, pく.05).
以上の結果から, 同一パターンの漢字の場合, TSに 300 回転をほ どとしても, 持続的注視による認知反応時間の遅延が生じることが示 された. つまり, 漢字はある範囲内で方位にも依存しないかたちで内 的に表現されていることを示している. これに対して, 900 回転した Tちでは, 同一漢字でも遅延効果がみられなかった. したがって, 漢字
の方位が900 におよぶまで大きく変化した場合 同ーの内的表現が活 性化されない可能性が示された.
***
、‘.Fc
nu
nu
nu
鈎
4
12-M円∞ロEt〉℃ω∞ロo-oH己主℃8コ℃OM【二号。
80
。 70 60 50
30 20 10
Conditions of test Kani i configurati ons
absent * pく.05
absent present
present The same struc加r e
*** p<.005
absent
テスト漢字を順応漢字から300 回転させた 場合の持続的注視による反応時間の遅延
present absent
present The same component
Fig. 3.4
持続的注視による反応時間の遅延は, 25秒注視条件の反応時間から 1秒注視条件の差をとることで算出している.
54
(msec)
。 40 30 20 10
- 10 -20
ハuqu
∞口明注ω写℃ω∞口。-CM仏h円以℃8コ℃C包hsoQ
-40
Conditions of test Kani i configurations
absent -50
absent present
present The same struc加r e
absent
* p<.05
**** p<.OOl present
テスト漢字を順応漢字から900 回転させた 場合の持続的注視による反応時間の遅延
absent present
The same component
Fig.3.5
持続的注視による反応時間の遅延は, 25秒注視条件の反応時間から l秒注視条件の差をとることで算出している.
ただし一方で, 900 回転をほどこした漢字では, 異構造・同部分条 件において注視条件による反応時間の違いがみられた. 回転角度が大 きい場合に, AS と異構造関係にあるTS の認知にあらわれる遅延に関 しては, 実験4の結果もふまえて, 実験3 ・ 4の総合考察で詳しく検 討する.
実験4 -目的
実験3の結果から, テスト漢字を順応漢字に対して30。 回転させた 場合には, 同一漢字では持続的注視による認知反応時間の遅延が生じ ることが示された. しかし, 900 回転した場合には, そのような効果
は消失してしまった. 顔パターンなどでは, 倒立状態で提示される と, 正立の場合とは異なったモードの処理がなされることが知られて いる (Yin, 1969; Farah, Tanaka & Drain, 1995) . また, 倒立文字 を使用した探索課題における漢字と仮名の処理特性を検討した研究で は, 仮名よりも漢字の方が文字の同定やその向きの判断に時間を要す ることが指摘されている(松田, 1988). そこで, ここでは, テスト漢字 を順応漢字から1800 回転させた場合に持続的注視の効果がどのよう
にあらわれるのかを検討してみる.
- 方法
(実験計画)これまでの一連の実験と同様に, ASの注視条件, TSの形 態条件, および1'Sの提示の時間条件の要因を設けた.
{被験者)成人男女18名. 被験者は, 矯正視力も含めて全て正常な視 力を有していた.
(装置)実験3と同じパソコンとディスプレイを使用した.
(刺激)ほぼ実験1に準じるが, テスト漢字に関しては, 正立の状態 56
から, 1800 に回転させた漢字パターン, つまり倒立状態の漢字パター ンを使用した.
(手続き)持続的注視パラダイムを用いた.
-結果と考察
被験者18名のうちダミー試行の反応時間が遅れている被験者4人を
除いた14名のデータを用いて結果の整理を行った. まず, 1秒注視条 件においてTSの 4つの時間条件別に平均反応時間を求めたところ,
)11員に683, 646, 645, 645 msであった. また, 25秒注視条件では,
710, 682, 658, 658 msであった.
持続的注視による効果を詳しく検討するために, 1秒注視条件と 25 秒注視条件の反応時間との差を算出したものをFig.3.6.に示した. 形 態条件別に 2要因(ASの注視条件XTSの時間条件) の分散分析にか
けた その結果, すべての形態条件において注視条件の主効果はみら れなかった(それぞれF(1,13)= 1.84, n.s.; F(1,13) = 0.70, n.s.;
F(1,13) = 0.73, n.s.; F(1,13) = 4.51, n.s.). このことから, 正立の順応 漢字を1800 回転させたテスト漢字を使用した場合には, 同構造・同 部分, 同構造・異部分の形態条件においては, テスト漢字が正立して いる場合にみられた持続的注視による遅延効果が消失してしまうこと が示された.
ただし, 異構造・同部分と異構造・異部分の形態条件に関しては,
時間条件と注視条件の交互作用がみられた(それぞれF(3,39) = 2.97,
pく.05;F(3,39) = 4.74, pく.01). 単純主効果の検定の結果, 異構造・同 部分条件ではTSの時間条件 5.2秒で, 異構造・異部分条件では 1.2 秒の時間条件で, 25 秒間ASを注視した後の反応時間が 1秒間注視し たときよりも遅れているとが示された(それぞれ, F(1,52) = 7.59,
Pく.01;F(1,52) =14.98, pく.001). ASと異構造関係にあるTSの認知反
。。口
.�
Q)
〉
'"2
0心口
。
(msec)
80
60
ち 40
H 0..
.0 〉、 20 '"0
8 ロ
ち 0
』司巳司 2〉、 ・20 凸ω
-40
• 1.2秒後
• 5.2秒後 口9.2秒後
• 13.2秒後
Conditions of test Kanj i configurations
The same struc旬r e present The same component present
present absent
absent
present
Fig. 3.6テスト漢字を順応漢字から1800 回転させた
場合の持続的注視による反応時間の遅延
absent
absent
** pく.01
**** pく.0001
持続的注視による反応時間の遅延は 25秒注視条件の反応時間から l秒注視条件の差をとることで算出している.
58
応時間の遅延に関しては, 以下に示す実験3 ・ 4の総合考察において 詳しく議論する.
実験3・ 4の総合考寮
以上の2つの実験の結果を, 漢字の方位が遅延効果におよぼす影響 を詳しく検討するために, ASとTSが同じ構造をもっ場合と, 異なった 構造をもっ場合の二つに分けて考察してみる.
まず, ASとTSが同じ構造をもっ場合(同構造・同部分と同構造・異 部分の形態条件) , 両者を正立で同じサイズに設定した二瀬・行場 (1996)の実験では, 認知反応時間に有意な遅延がみられた. 今回の実 験におけるこれらの条件では, 300 回転を施した場合に, 同一漢字パ ターンの認知においてのみ認知反応時間の遅延が生じた. ととろが,
テスト漢字の回転角度がさらに大きく変化するとその同一パターンで の遅延効果さえも消失してしまった. 同一漢字で300 回転をほどこし た場合でも遅延が生じたことは, この範囲内では, 漢字は方位にも依 存しないかたちで内的に表現されていることを示唆している. これに 対して, 900 回転や1800 回転のように大きく変化させた場合には,
同ーの表現はもはや活性化されないために遅延効果は生起しなかった のであろうと推測される. 倒立状態、で提示されると, 正立の場合と同 じ内的表現が活性化されず, 異なった処理モードが必要なことは, 倒 立顔パターンの認知に関する研究(Yin, 1969; Farah, Tanaka &
Drain, 1995) や, 倒立文字を使用した探索課題を用いて漢字と仮名の 処理特性を比較した研究 (松田, 1988)でも示されている.
一方, )11貢応漢字とテスト漢字が異なった構造をもっ場合(異構造・
同部分条件と異構造・異部分の形態条件) では 300 回転したテスト 漢字を提示したときには反応時間に遅れはみられないのに対して,
900や1800 の回転を施した場合には有意な遅延がみられた• )11員応漢 59
字とテスト漢字がともに正立していた実験では, 両者の構造が異なっ ていても遅延はなかったので, このような効果が生起した原因には,
大きく回転した漢字の認知に特有な理由を考えなければならない. 一 つの可能性として, 被験者が25秒漢字を注視し続けている聞にその漢 字を心的に回転させ, そのイメージを保持しながら待機していたケー スがあったのではないかと考えられる. そして, 特に, 保持している 漢字のイメージと構造の違うテスト漢字が提示された場合に, 漢字情 報の統合化に大きな干渉が生じた可能性が考えられる. しかし, 1秒 間しか)I[貢応漢字が提示されない場合には, 心的回転を行い, そのイメ ージを保持するといった準備を被験者が行う時間的余裕が十分にはな いために, そのような干渉効果はより小さかったのであろうと推測さ れる. 実験4では, 左右両方の回転方向を含んだ実験3と異なって,
すべてのテスト漢字が1800 回転されて提示されたために, このような 方略がより強く取られていた可能性があり, その結果として 1800 回 転では900 回転のときよりも強い干渉効果が得られたので、はないかと 推測される.
3.2.4.生起要因の分析(実験5 :二瀬・行場, 1996b) 一全体形態と部分形態との関連からー
-目的
これまでに紹介した一連の実験結果から 持続的注視による遅延効果 は, 網膜像などの末梢的要因に起因するのではなく, 部分を統合し, 全 体的形態を把握するパターン認知の高次過程において生じる可能性が示 唆された. そして, ASとTSが同一パターンである場合には, 方位やサ イズを多少変化させても, 持続的注視による遅延が生起することから,
完結した漢字パターンは全体形態として高次の脳内過程でサイズや方位 60
にある程度, 依存することなく表現されていると考えられた.
本研究においては, これらの実験から得られた知見をもとに, 持続的 注視による漢字認知の遅延効果を以下に述べる三つの形態要因に焦点を あててより詳しく分析することを目的とする.
まず, グローバル的な形態(漢字の概形)が類似した二つの漢字(例え ば, "木"とH本Hなど)を順応漢字およびテスト漢字として使用し, そ の場合の持続的注視の効果の有無を調べることである. もし, 漢字の内 的表現がグローバル的形態だけをとらえたものであるなら, グローバル 的な形態が類似している二つの漢字を順応漢字とテスト漢字に使用した 場合には, 持続的注視による遅延効果は生じるであろう. これに対し て, もし, 細かな部分形態まで正確に内的表現されているのであれば,
グローバル的形態の類似した順応漢字とテスト漢字においては, 持続的 注視による遅延効果は生じないと予想される.
つぎに, 複雑な漢字パターンを認知する際に, その構成要素となる部 分パターンを先に把握してその組み合わせとして認知するのか, それと も漢字パターンを単一の全体形態として認知するのかについて, 持続的 注視のパラダイムを用いて検討する. 具体的には, 一つの完結した漢字 パターン(例えば, H木")を順応漢字として持続的に注視した後, テス
ト漢字としてその漢字パターンを部分形態としてもつ漢字パターン(例 えば, H村H, H条Hなど)を提示した場合に 持続的注視による遅延効 果が生じるかどうかを調べる. あるいはその逆に, 他の漢字の全体形態
を部分形態として含んでいるパターン(例えば, H村。', H条Hなど)を順 応漢字として持続的に注視した後, テスト漢字としてその全体形態の漢 字パターン(例えば, H木" )を提示した場合に遅延が生じるかどうかを 調べる.
最後に, 二瀬・行場(1996a)は, 漢字の部分形態、の処理は持続的注視 に頑健であることを示したが 漢字パターン の中でも比較的単純で他
61
のパターンの部分形態となること が多いような パターン (例えば, "木") を順応漢字として持続的注視を行った後, 同ーの漢字パターンをテスト 漢字として提示した場合に も遅延効果が生じるの かどう かを検討する.
-方法
[実験計画) 以下の要因 が設定された. 第1 の要因は, )11貢応漢字 (以下 ASと略す)の 注視時間に関するものであり, ASを 1秒 注視する条件と 25秒間注視する条件の2種類であった. 第2 の要因は, テスト漢字
(以下TS と略す)の形態条件であり, これは 1 個の ASに対して, 三つ の形態条件に基づいて 4個のTS が選定された (これらに関しては, 後の 項で詳しく説明する). 第3 の要因は, AS の形態条件であり, TSの形 態条件と 同様に三つの形態条件の漢字がAS として使用された. 最後 に, 第4の要因は, TSの時間条件であり, AS のオフセット から 1.2 ,
5.2, 9.2, 13.2秒後の四つの時間条件でTSを提示した.
(被験者)成人男女1 2名. 被験者は, 矯正視力も含めて全て正常な視 力を有していた.
〔装置)刺激の提示を含めて実験制御には パーソナルコンビュータ (SHARP X68030)および21インチディスプレイ(SHARP CZ-621D) を用いた.
(刺激)使用頻度 が同程度の常用漢字(国立国語研究所, 196 3)の中か
ら, 以下に述べる三つの形態条件にあう漢字パターン計4個を 選定した
(Table 3.2). ( 1 )基本漢字(Basic)条件:他の形態条件の基本とな
る単純な漢字からなる条件. ( 2 )付加漢字(Ad d)条件:基本漢字条 件の漢字パターンに概形が変化しない程度に線分や点を付加した漢字か
らなる条件. (3 )部分漢字(Part)条件:基本漢字条件の全体形態を 62
Table 3.2 実験5で刺激として用いた漢字パターン
1 '"'-' 10までの漢字セットは, 実験試行で使用した. Dl
とD2は夕、ミー試行で使用した. 実験5では, すべての漢 字パターンが順応漢字にもテスト漢字にも使用された.
Conditions of Ka吋i configuration
Basic Add Partl Part2
1. 木 本 ホナ
方ぷ乙丈2. 十 千 針 辛
3. 日 白 明 香
4. 止 正 祉 �ミ
5. 糸
ノマlフ、ぞ紀 素
6. 石 右 研
左ιi子j7. 大 犬 因 奇
8. 田 由 細 異
9. 王 玉 現
亡三方E10. 九 丸 仇
プ勾hし-・・・・・・・・・ 司・・・・・・・ ・・・圃・・・・司 - -圃・・・・ ・・・・圃・・・・・ ・・・・・圃・・・・ ・・圃・・・・・・・ ・・・・田・・・・・ ・圃・・・・・・・・ ・・圃・・回・・... - - - -闘田町- 司固司園周囲圃
D1 目 旦 本目 盾
D2 貝 負 敗 貧
部分形態としてもつ, より複雑な漢字から なる 条件. 漢字には, 縦割 れ・横割れなどの構造がある. したがって, こ の 条件に関しては, 縦割 れ・横割れの構造が 異なった漢字パターン を2種使用した. 今回の実験 では, 選定された4種の漢字パターン すべてがAS にも TS にもなっ たただし, 部分漢字条件の2種の漢字パターンは, 半数の被験者につ き, どちら か一方がASとして使用された. つまり, 被験者l人につ き, ASとなる漢字の種類は, それぞれの形態条件につき, 1つずつで 計3種類であり, TSとなる漢字の種類は, 選定された4種すべてで あった. したがって, ASが部分漢字条件である場合, TS の漢字パター ンはASと同一パターンであるものと異なった パターンとなるもの の2 種類があった . これらは, それぞれ一致(Congruence) , 不一致 (Incongruence) 条件として区別する. 以上の形態条件のもとに選定し
た刺激セットを10セット用意した(Table3.2参照). AS, TS のいずれ も縦横とも視角約5。 の大き さであり, 白地(40 cd/m2) に黒(0.2 cd/m2)で, ディスプレイの中央に提示した.
[手続き)持続 的注視パラダイムを使用して, 実験を行 なった. ASの 各形態条件に関して, ランダムな順序で 25秒注視条件を20試行, 1 秒注視条件を20試行, ダミー 8試行 のあわせて48試行 を行った. AS の形態条件が先述したように3 条件ある ので 1人の被験者につき全試 行数は 144試行であり, 試行順はランダムで全体の実験を3回にわけ で行った.
-結果と考察
被験者ごとのデータでは, はずれ値の影響を さける ために, それぞれ の条件につい て中央値を算出し それを代表値とした.
持続的注視の影響を具体的に検討する ために, まず すべて のASの形 64
態条件 とτちの形態条件の組み合わせ(部分漢字条件における, 一致条 件と不一致条件の組み合わせも含む) で 25 秒注視条件と 1秒注視条件
の反応時間の差をとって, それぞれの条件での遅延の大きさを図示した (Fig. 3.7参照). Fig.3.7に示されている数値は, 結果の要点を示すた
めに四つのTSの時間条件での遅延効果を加算して平均をとったもので ある. このような集計を行なったのは, 持続的注視の影響;むえS提示終 了後も比較的長く続くことがわかっており, また, できるだけ多くのデ ータを用いて遅延効果を算出するためであった.
さらに, 持続的注視の効果を詳しく検討するために, Fig.3.7に示し た各セルごとに(ASの形態条件とTSの形態条件のすべての組み合わせ について), 2 要因の分散分析(ASの注視条件XTSの時間条件) にか けた.
その結果, ASが基本漢字条件であった場合には, すべてのTSの形態 条件(基本漢字条件, 付加漢字条件, 部分漢字条件 1 , 部分漢字条件 2
rt3 )について注視条件の主効果は, みられなかった(それぞれ,
F(1,11)=0.02, n.s. ; F(1,11)=0.11, n.s. ; F(1,11)=1.76, n.s. ;
F(1,11)=0.20, n.s.) . さらに, TSの時間条件とASの注視条件の交互作 用に関しては, すべてのTSの形態条件において 統計的に有意ではな かった( F(3, 33)=1.35, n.s ; F(3,33)=1.33, n.s ; F(3,33)=0.11, n.s ; Fて3,33) =0.29, n.s).
つぎに, ASが付加漢字条件であった場合には, TSが付加漢字条件の ものである場合のみ つまりASとTSが同じ漢字パターンである時のみ 注視条件の主効果が有意で、あり 25秒注視条件の反応時間が 1秒注視 条件の反応時間よりも遅れていることが示された(尺1,11)=8.15,
pく.05) . しかし その他のTSの形態条件においては 持続的注視によ
本実験では, 1つのASについて4つのTSが選択されているが, そのうち2つは部分漢字条件の漢字パタ
:ノであり,
ASが基本漢字条件である場合と付加漢字条件である場合には, 一方の漢字パターンを部分漢 子条件1, もう一方を部分漢字条件2として区別し, 分析を進めた.Conditions of Kanji
AS
c on fi gu r a ti on s
Basic (木) Add(本) Part (村or条)
561 578 566
Basic (木) +
十
564 594 587
610 550
*
593T Add(本)
S 60 3 580
十
595592 573 569
Part 1 (村)
十 十
(Conguruence) 60 7 593 60 6
596 596 586
Part 2 (条)
(In c on gu r u e n ce ) 600 十 600 + 619
: -10�Oms + 0�10ms
十
: 10�25ms十
25ms�ー 一一一一一一
Congruence: AS and TS are the same patterns Incon gurue nce: AS and TS are the different patterns
Fig.3.7 認知反応時間の遅延効果(実験5)
十
十
+*
*: +
pく.05各セルの左上の数字は 1秒注視条件の平均反応時間であり,
左下の数字は25秒注視条件の平均反応時間である.
66
る効果はみられなかった(基本漢字条件, 部分漢字条件 1 , 部分漢字条 件2のそれぞれについて, F(1,11)=1.61, n.s. ; F(1,11)=2.48, n.s. ; F(l, 11)=0.13, n.s.) . また, TSの時間条件とASの注視条件の交互作用 は, すべてのTSの形態条件において, 統計的に有意ではなかった(それ ぞれ,Fて3,33)=0.87,n.s ; F(3,33)=0.82, n.s ; F(3,33)=1.96, n.s.;
Fて3,33)=2.39,n.s) . したがって, 付加漢字条件のASを持続的に注視 しでも, 基本漢字条件のTSに対する 反応時間は変化しなかった. この ことから, ASとTSのグローバル形態が似ていても遅延効果は生起しな いことが示された. さらに, 25秒注視条件と 1秒注視条件の反応時間に 有意な差がみられた寸ちが付加漢字条件であった場合について, 注視条 件の単純主効果の検定を行った. その結果, 最初の時間条件, つまり 1.2秒後にTSが提示された時にだけ, 25秒注視条件が1秒注視条件の反 応時間よりも有意に遅れている ことが示された(F(1,44)=6.89, p<.05).
最後に, ASが部分漢字条件であった場合では, 注視条件の主効果に 関しては, TSの形態条件が部分漢字条件で, かつASとTSの漢字パター
ンが一致している(Congruence条件) ときにおいてのみ持続的注視に よる効果がみられた(F(1,11)=7.21, pく.05) . しかし, この他のTSの 形態条件においては, 持続的注視による認知反応時間の遅れはみられな かった(それぞれ, F(1, 11)=2.03, n.s. : F(1, 11)= 0.05, n.s. :
F(1,11)=3.81, n.s.) . TSの時間条件とASの注視条件の交互作用は, す べてのTSの形態条件において, 統計的に有意ではなかった
(尺3,33)=2.12, n.s : F(3,33)=0.59, n.s : F(3,33)=0.92, n.s :
F(3,33)=0.12, n.s) . したがって, 部分漢字条件の漢字を持続的注視し でもその漢字の一部分が全体形態となっている ような漢字には, 認知反 応時間に遅延が生じないことがわかった. さらに 持続的注視の効果が 得られたTSが部分漢字条件で順応漢字と同一パターンである 場合につ いて, 注視条件について単純主効果の検定を行ったところ, 1.2 秒の時
間条件において25秒間注視した後の反応時間が1秒間しか注視しなかっ た場合よりも認知反応時間が有意に遅れることが示された
(F(1,44)=7.35, pく.01).
以上の結果から, 以下の3点が指摘された. まず, 実験1で指摘され たゲ、シュタルト崩壊に影響を与える全体形態という要因は, グローパル な形態が類似しているということではなく, 部分形態、のわずかな変化に 対しても影響を受けることが示された. 次に, この効果は, 共通パター
ンが全体形態に存在するのか部分形態に存在するのかには影響されず,
比較的固定されたものであることが示された. 最後に, 基本漢字条件に 関しては, 同一パターンでも認知反応時間に遅延が生じなかったことか ら, 漢字パターンがあまりにも単純で他の漢字のへんやっくりになるな ど部分形態的特性が強い場合には, 持続的注視による認知遅延効果が生 じない傾向があることも見い出された.
第4章
グローバル・ ローカル
処理の時間特性
4.1.複合文字パターンの認知における注視の影響
弟l章で紹介したように, Navon (1997)は, 階層文字パターンを刺 激として用い, グローパル形態がローカル形態よりも時間的に優先して 処理されること, さらに, グローバル形態はローカル形態の処理に影響 を与えるがローカル形態はグローバル形態の処理に影響を与えないこと を示した. そして, このことをグローバル優先仮説として提唱した.
前章では, 全体・部分処理の時間特性の問題について検討し, ある漢 字パターンを持続的に注視した後に, その漢字と同一漢字や同じ構造を
もっ漢字パターンの認知反応時間が遅延することを示した. そして, こ のような遅延効果は持続的に注視する漢字とその後に認知する漢字のグ ローバル形態が同じという要因では生起しないことが示された.
本章では, 階層文字パターンを刺激として 持続的注視がパターン認 知に及ぼす影響を検討し, 刺激が提示されてから数ミリ秒間のあいだで はなく, 数秒間の範囲内でグローバル・ローカル処理の時間特性の問題 を分析する.
4.1 .1 .持続的注視法による検討
(実験6:二瀬・行場, 1997d)
-目的
Navon (1977)は 階層文字パターン (たとえば, 小さなHで構成 された大きなS ; Fig. 1.1参照)を用いて実験し, パターンのグローバ ル情報がローカル情報より先に処理されること示した. しかし, この効 果は刺激の提示時間が短い場合にのみあらわれる(PaQuet & Merikle.
1984)ことから , グローバル優先処理は視覚処理の立ち上がり段階に おいてあてはまると考えられる. 一方, 二瀬・行場(1996a)は被験者
に特定の漢字パターンを持続的に注視させると, その後に提示される漢 70
字の認知反応時間に遅延が生じることを見い出した. このことは, 持続 的な処理課題ではパターン全体の認知過程は, その機能がしだいに減衰 することを示唆している.
そこで, 本研究では持続的注視が複合文字パターンの認知におよぼす 影響を検討することで, グローバル・ ローカル処理の時間特性につい て, より広い時間範囲にわたる分析をおこなう.
-方法
(実験計画)以下の要因が設定された. 第 1 の要因は )11貢応刺激(AS) の注視条件で, これまでの持続的注視実験と同様に, 1 秒注視条件と 25秒注視条件, さらに全くASを提示しない注視なし条件の 3 条件を設 けた第2の要因は, テスト刺激(TS)の形態条件であり, これは 1 個 のASに対して, 4個のTSが選定された(これらに関しては, 後の項で 詳しく説明する). 第3 の要因は, TSの時間条件であり, AS のオフ セットから 1.2, 5.2, 9.2, 13.2秒後の四つの時間条件でTSを提示 した. 最後に, 第4の要因は被験者に課した課題であり, 階層文字パタ ーンの大きい方の文字(グローバルあるいはグローバル文字)を呼称す るグローバル文字呼称課題と, 小さい方の文字(ローカル文字あるいは
ローカル文字)を呼称するローカル文字呼称課題の 2つを設けた. これ ら, すべてを被験者内要因とした.
[被験者)成人男女10名. 被験者は, 矯正視力も含めて全て正常な視 力を有していた.
[装置)刺激の提示を含めて実験制御には, パーソナルコンビュータ (SHARP X68030)および21インチディスプレイ(SHARP CZ-621D) を用いた.
71
(刺激)}II貢応刺激(被験者が注視する刺激:以下, ASと称する)は, ア ルファベット6文字(C, E, H, S , P, F)からなる階層文字パタ ーンであった. AS 1個に対してテスト刺激(被験者がグローバル文字あ るいはローカル文字が何であるかを音読する刺激:以下, TSと称する) は, 以下に述べる4つの形態条件に基づいて準備した(Fig. 4.1参照).
(1) ASとTSがグローバル文字もローカル文字も一致している場合.
(2) ASとTSのグローバル文字は一致しているが, ローカル文字はASに 全く含まれていないOという文字である場合.
(3 ) TSのグローバル文字はASに含まれていないOという文字で, ロー カル文字比生Sと一致している場合.
(4) TSはASのグローバル文字とローカル文字が入れ替わったパターン である場合.
これらをlセットとして, 実験試行用に6セット, ダミー試行用に2 セット用意した.
〔手続き)まず\注視なし条件(ASを提示しない場合)の被験者のTSの 認知反応時間(被験者が提示された階層文字パターンのグローバル文字 あるいはローカル文字を呼称する際の音読潜時)を計測した. この試行 では, 被験者がマウスのボタンを押すと, ビープ音がなり, その1. 2秒 後にTSが画面中央に提示された. 被験者はTSのグローバル文字(あるい はローカル文字)をできるだけ速く呼称するように教示された. TSが提 示されてから, 被験者の音声反応があるまでの時間をそのパターンの認 知反応時間として計測した. ここで 提示される刺激は 後の持続的注 視実験で使用するTS(8セットX4 パターン, 計32パターン)である.
次に, 階層文字パターンを刺激として持続的注視パラダイムを用い
72
AS TS
(1 ) (2) (3) (4)
HHHHH HHHHH 00000 HHHHH S S
H H 。 H H S S
H H 。 H H S S
HHHHH HHHHH 00000 H H sssss
H H 。 H H S
日 H 。 H H S
HHHHH HHHHH 00000 HHHHH S
Fig 4.1 実験6に用いた階層文字パターンの刺激
ASは順応刺激 TSはテスト刺激を意味する. これは実験に 使用した刺激の一例である.
S S S
て, 実験を行った. 具体的な実験手続き は, これまでに紹介した持続的 注視パラダイムを同じである.
各被験者につき, グローパル文字呼称課題とローカル文字呼称課題の 各々について, 1秒注視条件を1 2試行, 25秒注視条件を1 2試行, ダ ミー8試行の あわせて32試行を行なった. そのため, 被験者 1人の全 試行数 は 64試行であった. 被験者10名のうち半数の被験者 はグロー バル文字呼称課題を先に, 残りの半数の被験者 はローカル文字呼称課題 を先に行なった.
-結果と考察
各被験者のデータは, 代表値として正答反応の平均反応時間を用い た まず, ASが提示されない場合(注視なし条件)と提示される場合の
2条件( 1秒注視条件と 25秒注視条件), あわせて 3条件の注視要因と 課題要因(グローバル文字呼称課題とローカル文字呼称課題)で 2 要因 の分散分析にかけた. その結果, 注視要因, 課題要因とも主効果 はみら れなかった(尺 2,18)=0.68, n.s. ;尺1,9)=0.06, n.s.) . しかし, これら
2要因の交互作用 は有意であった(F( 2,18)=13. 26, P<.001) . 単純主効
果の検定の結果, 注視なし条件では, グローバル文字 はローカル文字よ りも有意に速く認知されているが(F(1, 27)=16.32, p<.OOOl), 1秒間 ASを注視した後では, 逆にローカル文字の方がグローバル文字よりも 有意に反応時間が速くなった(F(1, 27)=7.96, pく.001). 課題ごとにそ れぞれの注視条件に分けて, Fig 4. 2 に反応時間を示した.
次に, 注視の効果を詳しく分析するために, ASと寸ち聞の形態条件ご とに, 2つの注視 あり条件それぞれ( 1秒注視条件と 25秒注視条件)か ら注視なし条件の反応時間を差し引いた値をFig 4.3 に示した.
注視要因×課題要因XAS · TS聞の形態条件で3要因の分散分析にか けたところ, 3要因全てに関して主効果 はみられなかった(それぞれ,
74
思 叶
(msec) 580
、 560
�
、 、、
540 、
520 500
480
ASなし (注視なし)
、
、 , ,
、�
1秒注視
, ,
, ,
大域呼称課目 局所呼称課目
25秒注視
Fig. 4.2 プライム要因ごとの反応時間の推移
(msec) 100 1
I
(a)
nu nu
注視による反応時間の遅延
50
。
-50
1秒注視一注視なし
1
25秒注視一注視なし 大域呼称課題| ・・ | 鼠§
局所呼称課題| 醸醐 | 仁コ
- 1 50
Fig.4.3 TSの形態条件ごとの注視の効果
注視の効果は注視あり条件( 1秒注視条件と25秒注視条件それぞ れ)の反応時間と注視なし(AS なし)条件の反応時間との差をと ることで算出した. (a)は, TSが大域・局所文字ともASと一致し
ている場合. (b)は, 大域文字は一致しているが局所文字はコン トロール文字である場合. (c)は, 局所文字一致で大域文字がコ ントロール文字である場合. (d)は大域・局所文字ともASと不 一致の場合.
F(2,18)=0.68, n.s. ;尺1,9 )=0.31, n.s. ;尺3,27)=0.64, n.s.) . これに対 して, 注視要因と課題要因, 課題要因と形態条件, 注視要因と形態条件
の交互作用はそれぞれ有意であった (それぞれ, Fて2,18)=26.36, pく.001
; F(3,27)=3.00, p<.05 ; FC6,54 )=2.49, p<.05 ) . さらに, 注視要因に関 して単純単純主効果の検定を行なったところ, ローカル文字呼称課題で は, TSがグローバル・ ローカル文字ともにASと一致している場合(Fig 4.3(a))と, グローバル文字だけが一致している場合(b)に, ASを注視 すると反応時間が有意に速くなることが示された. これに対して, グロ ーバル文字呼称課題では, TSがASとローカル文字が一致し, グローバ ル文字がコントロール文字である場合(c)に注視による有意な認知反応 時間の遅延が生じることが示された.
以上のような結果から, Navonの示したグローバル処理の優先性の 効果は刺激の立ち上がりから短時間の問しか見られないものであり, 1 秒間ASを提示することは, その効果を阻害してしまう可能性が示され た グローバル文字呼称課題では, 注視を行なうことで反応時間が遅く なること, 特にASとTSのローカル文字が同じ場合にその傾向が強いこ
とが示された. これに対して, ローカル文字呼称課題では, 注視をする と逆に反応時間が短くなり, 特にASとTSのグローバル文字が同じ場合 にはより強い促進効果が生起することが示された.
4.1.2.プライミング効果による分析 (実験7 :ニ瀬・行場, 1998}
・目的
実験6において, 階層文字パターンの認知に持続的注視が与える影響 を分析した結果, 階層文字パターンが刺激として使われた場合, つまり グローバル・ ローカル特性を刺激が有している場合は, 持続的注視によ る遅延効果は生じず, むしろ注視する刺激がある場合とない場合とで差 が生じることが示された. この結果は, 持続的注視することによって遅 延が生じる漢字パターンを用いた実験の結果とは明らかに異なってい る. では, 一体なぜこのような実験結果が生じたのであろうか?これ
は, グローバル処理の優先性が刺激が提示されてから短い時間間隔でし か生じず, 1秒間JII員応刺激を提示することでこの優先性が消失したため だと考えられる.
そこで, 本実験では, )I[員応刺激の注視条件を注視なしと1秒注視条件 との間でより細かく設定し, グローバル処理の優先性はどのくらいの時 間間隔持続するのか, グローバル処理の優先性が消失した後に, 注視に よる遅延効果が生起するのかどうかをより具体的に分析した.
-方法
[実験計画)以下の要因を設定した. )11員応刺激の注視条件であり, 全く 順応刺激を提示しない条件 ( 0 msec条件)とそれぞれ順応刺激の提示さ れる時間間隔が異なった, 50 msec条件, 100 msec条件, 500 msec 条件, 1000 msec条件, 計5条件である. 第2の要因は, テスト刺激 (被験者がグローパル文字あるいはローカル文字が何であるかを判断す る刺激, 以下τ'S)の形態条件であり, これはl個の順応刺激に対して,
4個のTSが選定された(これらに関しては, 後の項で詳しく説明する)• 第3の要因は, 課題要因であり, 被験者が階層文字パターンの大きい方
78
の文字(大域文字あるいはグローバル文字) がHであるかS であるかを 判断するグローパル文字判断課題と, 小さい文字がHであるかS である かを判断するローカル文字判断課題の 2種類があった.
{被験者)成人男女12名. 被験者は, 矯正視力も含めて全て正常な視 力を有していた.
[装置)実験制御および刺激提示には実験6と同じパソコンを使用して 行なった.
[刺激 )順応刺激(以下 AS) は, アルファベット2 文字(H, S) から なる階層文字パターンであった . AS 1個に対して, TSを以下に述べる
4つの形態条件に基づいて準備した(Fig. 4.4). それぞれの課題別に4 つの形態条件を紹介する .
グローバル(ローカル)文字判断課題では,
(1) ASとTSがグローバル文字もローカル文字も一致している場合.
(2) ASとTSのグローバル(ローカル)文字は一致しているがローカル
(グローバル)文字はASにまったく含まれず、 被験者の判断に影響を与 えないと考えられるOという文字である場合.
(3) TSがグローパル(ローカル)文字はASと異なった文字であり(ASの グローバル文字がHであった時には, TSのグローバル文字はS) , ロー カル(グローバル)文字は無関連文字のOである場合.
(4) TS凶えSのグローバル文字とローカル文字が入れ替わっている場
ム口.
AS TS
(1 ) (2) (3) (4)
HHHHH HHHHH 00000 。 。 S S
H H 。 。 。 S S
H H 。 。 。 S S
HHHHH HHHHH 00000 00000 sssss
H H 。 。 。 S S
H H 。 。 。 S S
HHHHH HHHHH 00000 。 。 S S
Fig. 4.4 実験7で用いた階層文字パターン刺激
ASは)11貢応刺激, TSはテスト刺激を意味する. これらは刺激 の一例であり 大域文字呼称課題に用いられたものである.
TS (1) ( 4)は不一致パターン TS (2) (3)は無関連文字(0) を含んだコントロールパターンである.
80
[手続き)実験は, 3セッションにわけで行なわれた. 第1セッション と第3セッションでは, ASは提示されず, TSのみが提示された. 具体 的には, 被験者がマウスのボタンを押すと, ビープ音がなり, その1.2 秒後にTSが提示された. 被験者は, グローバル(ローカル)文字判断課 題では, 大きな(小さな)文字がHであるかS であるかを判断するよう に求められた.
この第1, 3セッションのデータが注視なし条件のデータとして, 結 果の整理に用いられた.
第2セッションでは, 被験者がスペースキーを押すと, 最初にASが 4つの異なった提示時間(50, 100, 500, 1000 msec)で提示された. そ の後, 1.2秒の ISI をおいて, TSが提示された. 第1, 3セッションと
同様に, 被験者は, グローバル(ローカル)文字判断課題では, TSの大 きな(小さな)文字がHであるかS であるかをできるだけ速く正確に判 断するように求められた. 第1, 2, 3セッションとも, TSが提示さ れてから被験者の反応があるまでの時間を反応時間として計測した.
-結果と考察
それぞれの被験者ごとのデータとしては, 各々の条件の正答反応の中 央値を用いた. グローパル文字とローカル文字が異なった文字である場 合の影響を詳しく検討するために, グローバル文字とローカル文字が異 なっている条件の反応時間からコントロール条件(判断しない方の文字 がOという被験者の判断に影響を与えない無関連な文字である場合)の 反応時間を差し引くことで干渉効果を算出した. 課題要因(グローバル 文字判断課題とローカル文字判断課題)と, 注視要因(ASが提示されな い場合(0 msec)と提示される場合の4 条件(50, 100, 500, 1000 msec) のあわせて 5 条件)ごと に 各々の干渉効果を図示したものがFig.4.5 である.
81
(msec) 40
。 10 30 20
- 1 0
ちω出ωωυロω旬。百四
1000
干渉効果は, 大域文字と局所文字が不一致である条件 の反応時間からコントロール条件(判断しない方の文字 がOという被験者の判断に影響を与えない無関連な文 字である場合)の反応時間を差し引くことで算出した.
82
500
順応刺激の提示時間別の干渉効果
duration (msec)
100 50
。
Fig. 4.5 -20
被験者12名の反応時間を 3 要因(課題要因×注視要因×形態要因nl) の分散分析にかけたところ, グローバル文字とローカル文字を判断する 場合では反応時間に差がないことが示された(F(1,11)=1.73, n.s.) . 注 視要因に関しては, 主効果がみられ(F(4,44)=16 .38, pく.001), Ryan 法により下位検定(P<.05)を実施した結果, 注視なし条件の反応時間が 他の条件よりも有意に速いことが示された.
また, グローバル文字とローカル文字が異なった文字で形成されてい る場合は, 判断しない方の文字がコントロール文字である場合よりも有 意に判断が遅れることが示された(F(1,11)=9.46, pく.05). 課題要因,
注視要因, 干渉の有無の 3つの要因において交互作用が有意であった (F(4,44)=2.59, pく.05). 単純交互作用の検定を行なったところ, 注視
時間が 100, 1000 msecの時に課題要因と干渉の有無で単純交互作用が みられた(それぞれ, F(1,55)=7.07, p<.05 : F(1,55)=4.29, pく.05).
以上のような統計的な結果から, 短時間でも順応刺激を提示すること がその後の階層文字パターンの認知反応時間を遅延させること, さら に, グローバル文字判断課題では, 注視時間が長くなるにつれて, 干渉 効果が強く生じるのに対して, ローカル文字判断課題においては, AS の注視時間が長くなると干渉効果が生起しなくなることが示された.
4.2.グローパル・ ローカル処理の時間特性のまとめ
先行研究(Paquet & Merikle, 1984)や本章であげた 2つの階層文字 パターンを用いた実験から明らかなように, Navon (1977)の示したグ ローバル処理の知覚的優先性は, 刺激が提示されてからかなり短い時間
本実験における被験者の課題は 階層文字パターンのどちらか一方のレベル(グローバルかローカルか)
九
であるかSであるかを判別するというものである 形態要因とは, TSの判断されないレベルがOとい3コントロール文字である場合とそうでない場合(言い換えれば, 被験者が判断する際に干渉が生起しない
uと生起しうる場合)とで分別した.
間隔でしか生起しない.
第1章で述べたように, Navonは, 階層文字パターンの認知実験の 結果から, グローバル処理はローカル処理よりも時間的に優先してなさ れると主張し, グローバル・ローカルの処理の時間特性をFig.4.6 の ような図で説明をしようとした. この図はグローバル処理がローカル処 理よりも時間的に速く処理がはじまることを示している, しかし, 実験 6, 7 で示されたことを考慮すれば, グローバル処理は確かにローカル 処理よりも速く処理がはじまるが, その処理が持続すると急速にその優 先効果は消失し, 機能低下が生じる可能性が示されたことになる. つま り, Fig.4.6はFig.4.7に修正されなければならないと考えられる. さ らに, 重要な点は, 第3章において, 持続的処理が全体処理を選択的に 低下させる可能性を示したが, グローバル処理の場合は 短時間でもそ の階層レベルに注意が向けられたことで, 認知反応時間の遅れがあらわ れはじめることが示されたことである. このことは, 全体・部分処理と グローバル・ ローカル処理の重要な差異である. そして このように認 知反応時間の遅延が生起するのに要する時間が異なっていることについ て, 持続的に処理がなされると反応時間が遅れるといった同じ現象でも その原因が異なっているからではないかと推測される. つまり, 認知反 応時間を生起するのに必要な時間の差異は, 異なった階層構造を有する パターンの処理が一様には行なわれていないことを示唆している.
84
トロトHDOJ〈DHU凶同出凶仏
TIME t2
&EE. ハU tl
Navon示したグローバル・ ローカル処理の時間特性
グローバル処理は刺激が提示されてから, より早い時聞から処理 が優勢的に行われるが, ローカル処理はその処理が軌道にのるま での時間を要する. toは刺激が提示された時間でありれまではグ ローバル処理がローカル処理よりも優先的に処理される,
Fig.4.6
LOCAL
'HD円四'HDOJ〈DHυ凶'h出凶円四
TIME t2
to
グローバル・ ローカル処理の修正した時間特性
グローバル処理はローカル処理よりも速く処理がはじまるが,
その処理が持続すると急速にその優先効果は消失し, 機能低下 が生じる可能性がある. このことを踏まえて, Fig.4.6を修正
した.
Fig. 4.7
第5
グローバル・ ローカル
処理の脳内基盤の考察
グローバル優先仮説では, これまでに述べてきたとおり, パターンの 外側輪郭や, パターンをぼかしたときにえられるような像(低空間周波 数を含む像)をグローバル特徴とよび\これが視覚処理では迅速に検出 されると主張している. 最近, このNavon(1977)の見い出した現象 を裏付ける神経生理学的知見も提出されている(これらの研究について は, 二瀬・行場(1997c)を参照). そこで, 本章では, 最新の知見と問 題を整理しながら, Navon の見い出した現象の諸相とその脳内基盤に ついて考察を行なう.
5.1.
2つの視覚チャンネルと
グローパル・ ローカル処理との関連
Enroth-Cugell and Robson (1966)は, ネコの網膜に刺激のオン
セットとオフセットのみに応答する一過型細胞(y細胞ともいう)と,
刺激が提示されている問, 応答を続ける持続型細胞(X細胞ともいう) の二つのタイプの神経節細胞があることを見い出した. これら一過型細 胞と持続型細胞の特性は, 外側膝状体を経て, 大脳皮質視覚野にいたる
までそのまま引き継がれ それぞれ一過型チャンネル(transient channel)と持続型チャンネル(sustained channel)とよばれている.
一過型チャンネルのニューロンは広い受容野をもち, 応答が速く, 周辺 視領域の刺激にもよく反応する. 一方, 持続型チャンネルのニューロン は受容野が小さく 空間解像度は高いが, 応答は遅く, 中心視領域の刺 激に対して応答する. 最近, Breitmeyer and Williams (1990)は, 一 過型チャンネルと持続型チャンネルの神経生理学的基礎は, 霊長類の視 覚系の下位経路として解明の進んだ大細胞系と小細胞系にあるとみなし ている. このような一過型チャンネルと持続型チャンネルの特性に関す る神経生理学的知見と合致する心理実験データをみてみよう.
88
Tolhurst (1975)は, 空間周波数が1 cpd以下の粗い縞模様をかろう じて見えるくらいの低いコントラストで提示し, その縞が見えたら被験 者にキーを押してもらうという実験を行なった. この場合, 反応は迅速 であるが, 被験者が縞を検出できるのは, 刺激のオンセットとオフセッ トの時点に限られ, そのため提示時間を長くしても, 検出頻度に変化は なかった. ところが, 空間周波数を3 cpd以上の細かい縞にすると,
反応時間は遅くなるが, 刺激の提示中にも検出可能になり, 検出頻度は 提示時間が長くなればなるほど増加した.
Shulmanら(1986)は, 低い空間周波数の縞刺激を被験者に持続的 に注視させ, その空間周波数に順応させた後, Navonの使用した階層 文字パターンを提示すると, グローバル文字に対する反応が遅くなり,
反対に, 高い空間周波数の縞刺激を見続けた後では, ローカル文字に対 する反応が遅くなることを見い出した.
さらに, Shulman and Willson (1987)は, 階層文字パターンを用い て次のような実験を行なった. まず, 被験者にグローバル指向か, ロー
カル指向かを明示し 階層文字パターンを提示してグローバル文字ある いはローカル文字の同定課題を2回行なわせた. そして, その直後に,
異なった空間周波数の縞を提示し, はじめに行なった文字同定課題がそ の縞の検出にどのように影響を与えるのかを実験的に検討した. その結 果, 低い空間周波数の縞刺激の検出はグローバル処理がなされている間 は促進されるのに対して 高い空間周波数の縞刺激の検出はローカル処 理がなされているときに促進されることが示された.
これら二つの研究はどちらも, グローバル文字の知覚には低い空間周 波数の処理を担う一過型チャンネルが, ローカル文字の知覚には高い空 間周波数の処理を担う持続型チャンネルが関与していることを示唆して
89
いる. つまり, Navon現象fI::;は, 二つの視覚チャンネルの特性を反映 していることになる.
5.2.注意によるNavon現象の説明
これに対してMiller (1981)は, Navon現象は知覚処理の段階で生 起するのではなく, 反応決定段階でのグローバル水準の情報の顕著性に 起因するものであると主張した.
彼は, 階層文字パターンを使用して, 被験者にグローバル文字かロー カル文字にターゲット文字がある場合にはYes反応を, ターゲット文 字が存在しない場合にはNo反応をする課題を課して そのときの反応 時間を測定した. その結果, Navonの実験と同様に, ローカル水準に ターゲットが存在するときの反応時間よりもグローパル水準にターゲッ
ト文字があるときの反応時間のほうが短かった. この点では, やはりグ ローバjレ水準の優先性が示されたのである. しかし 彼がここで着目し たのは, グローパル水準とローカル水準の文字が同じである場合の反応 時間である. もし Navonの主張しているように, グローバル水準の 処理が知覚的に優先であれば, ローカル水準の形態がどうであれ, 反応 時間に影響はないはずである. しかし, 彼の実験結果では, グローバル 文字とローカル文字が一致している場合の反応時間は, 両者が一致して いない場合の反応時間よりも速かった. このことから, 彼は, ローカル 情報はグローバル情報よりも時間的に遅く知覚されるわけではなく, 両
第l章で示じ吉元三 ここでいうNavon現象とは以下に述べる2つの効果を総称している.まず,被験者 吹きな文字を答えるように求められている条件( グローバル指向条件)の反応時間の方が小さな文字が何 百るか答えるように求められている条件(ローカル指向条件)の反応時間よりも一般的に速いということ 初次に,グローバル指向条件の場合は,大きな文字を構成している小さな文字が何であるかに関わら
し~質して反応時間が短いのに対して ローカル指向条件の場合は,小さな文字が大きな文字と異なって
?る場合l乙 小さな文字の認知に対して大きな文字による干渉が生起し,他の場合(小さな文字が大きな文
1同 じである場合と,両者が無関係な文字である場合)に比べて反応時間が長くなることである. 90
者は同時に処理されるが, 反応決定段階においてグローバル情報の顕著 性が高く, 注意を引きやすいことを主張した. このような考え方はHグ
ローバル優位(globaldominance)説Hとよばれている.
5.3.知覚的優先性か注意的優位性か
先述したように, 階層文字パターンを用いた実験結果を説明する二 つの考え方が提出されている. それはNavonの示した知覚的優先仮説 とMillerの示した注意的優位性の仮説である. 前者は, グローバル・
ローカル処理はそれぞれに独立になされ グローバル情報の処理がロー カル情報の処理よりも迅速になされることにより Navon現象が生じ
ると主張している. これに対して, 後者は, それぞれの情報を知覚する 速さはグローパル処理もローカル処理も同じであるが, グローバル情報 の方がローカル情報よりも顕著であり, より注意をひきやすいために,
結果として, グローバル処理の方がより速く処理されることになると主 張している. それぞれの見解を支持する最近の研究をここで紹介しょ
Mつ
5.3.1.知覚的優先性をめぐって
まず\知覚的優先性を支持する研究をあげる. 二つの視覚チャンネル との関連から, もし, グローバル情報が一過型チャンネルで処理される ことでグローパル処理の時間的優先性が決定されるのであれば, 階層構 造をもっ刺激から低空間周波数成分を取り除いた場合にはグローバル情 報の優先性は消失するはずであるという予想が成り立つ.
L:コvegroveら(1991)は, 視野全体をフリッカーすると低空間周波数 成分の検出が低下することを利用して, 視野全体にフリッカーを加えた