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知覚的優先性をめぐって

第5

5.3. 知覚的優先性か注意的優位性か

5.3.1. 知覚的優先性をめぐって

まず\知覚的優先性を支持する研究をあげる. 二つの視覚チャンネル との関連から, もし, グローバル情報が一過型チャンネルで処理される ことでグローパル処理の時間的優先性が決定されるのであれば, 階層構 造をもっ刺激から低空間周波数成分を取り除いた場合にはグローバル情 報の優先性は消失するはずであるという予想が成り立つ.

L:コvegroveら(1991)は, 視野全体をフリッカーすると低空間周波数 成分の検出が低下することを利用して, 視野全体にフリッカーを加えた

条件下でNavonと同様の実験を行なった. その結果 やはりグローバ ル文字の反応時間がローカル文字の反応時間よりも速いという効果が消 失し, ローカル文字を同定する際に, グローバル文字とローカル文字が 不一致の場合, 一致しているときよりも時間がかかるという効果も消失 してしまった. このことは, 低空間周波数成分がNavon現象に強く関

与していることを示している.

また, Peressottiら(1991)は, NavonやMillerがコントロール条 件(グローバル情報とローカル情報が一致しているわけでも不一致であ るわけでもない条件)の刺激として, 見方によっては, 0という文字や Oという数字に見えるようなあいまいなパターンを使用したことが混乱 を招いていると主張した. 彼らは, 明確なベースラインをコントロール 条件で獲得するために, Fig. 5.1 に示した疑似アルファベットを使用し た 具体的には, 被験者の課題はローカル文字を同定することであり,

その反応時間をグローバル形態が疑似アルファベットの場合(コントロ ール条件), ローカル文字と同じパターンである場合(一致条件), 異な るパターンである場合(不一致条件)で比較した. 彼らの考え方によれ ば, もしコントロール条件の反応時間が一致条件の反応時間と同じであ れば, Navonらが主張しているように知覚的にグローバル情報が先に

処理されていることになる. これに対して, コントロール条件の反応時 間が一致条件の反応時間よりも遅ければ, Millerらが主張しているよう

にグローバル情報の優位性は注意がローカル情報に向きやすいために生 じることになる. そして, その結果, 疑似アルファベットを使用して得 られたコントロール条件の反応時間は一致条件と同じであるととが示さ れた.

さらに, Saarinen (1994)は階層構造をもっ刺激を用いて視覚探索課 題を行ない, グローバル特徴の探索時間はローカル特徴の探索時間より

も短く, どちらの処理においても並列的に探索が行なわれていることを 92

(a) FFFFFFF F F

F F F

F F F

F F F

FFFFFF FFFFFFF

F F F

F F F

F F F

F F F

F F F FFFFFFFFF F卜F FFFFFFFFF

hu F F F

F

F F

F

FFFFFFFFF

F

F

ct F

Fig.5.1 階層疑似アルファベットパターン(Peressottiら, 1991) a)従来の研究と同様の階層文字パターンであり, 左側が一致条件に

使用されたもの, 右側が不一致条件で使用されたものである.

b)グローバル形態が疑似アルファベットになっているパターンであ り, コントロール条件の刺激として使用された. 左側のパターン は, グローバル形態が疑似"H" 右側のパターンは疑似"F"で ある.

示した.

このような実験結果から考えると, グローバル処理とローカル処理は それぞれ異なった二つの視覚チャンネルで独立に処理が行なわれ, それ らの視覚チャンネルの時間特性がグローバル情報の優先処理に反映され るとみなすことができる.

5.3.2.注意的優位性をめぐって

これに対して, Paquet and Merikle (1988)は, Fig. 5.2に示したよ うな刺激を用いて, 注意を向けられていないターゲットのグローパル水 準やローカル水準がターゲットの同定にどのような影響を与えるのかを 分析した. 被験者は, 円か正方形に入った文字がターゲットとして限定 され, そのターゲットのグローバル文字あるいはローカル文字が"E"

という文字であった場合には右ボタンを, "Hffであった場合には左ボ タンを押すように教示された. その結果, ターゲットのグローバル文字 を答える場合には, となりの注意を向けていない刺激のグローバル形態 のみから干渉を受け, ターゲットのローカル文字を答える場合には, 注 意を向けていない文字のローカル形態だけから干渉を受けることが示唆 された. もし, Navonが主張した知覚的優先仮説が正しければ, 注意 を向けられていない対象のグローバル形態はどんな場合においても干渉 をおよぼす, つまりグローバル文字・ ローカル文字のどちらがターゲッ トである場合でも注意を向けていない刺激のグローバル形態が干渉をお よぼすはずであるのに, 結果はそうではなかったのである. つまり, こ の研究は, 注意がNavon効果に関与していることを示唆している.

CONSISTENT

LOCAL-DIRECTED

CONFLICTING

H H H HHHHH

H H

H H

HHHHH HHHH H H HHHHH

GLOBAL -DIRE CTED

仁」F」EF」仁」戸」E F」EEEEE

Fig. 5.2 注意とターゲットの同定(PaQuet & Merikle, 1988) この刺激は, 被験者がそれぞれ正方形の中の文字の同定を求められ た時に用いられたものである.

5.3.3.両側面の関与を寝付ける研究

しかし, 最近, 二者択一的な見解ではなく, 知覚的優先性と注意的優 位性の両方がNavon現象に寄与しているのではないかという見解を示 す実験データも出てきている.

例えば, Mayら(1995 )は, グローバル情報の処理がローカル情報の 処理よりも時間的に速いという効果(グローバル優先, global

precesdence)と, ローカル情報の処理は異なったグローバル情報によ り処理時間が長くなるという効果(グローバル干渉, global

interference)が同じ原因で起こっているものではなく, それぞれ別の プロセスに起因しているのではないかと推測した. そこで彼らはローカ ル情報よりもグローバル情報を何段階かの時間をおいて遅らせて提示 し, グローバル情報よりもローカル情報がどの程度はやく提示された場 合に, グローバル優先効果やグローバル干渉効果が消失するのかを検討 した. その結果 グローバル優先効果は ローカル情報がグローバル情 報よりも48msecはやく提示された場合まではみられたが, それ以上 はやく提示された場合にはその効果が消失してしまうことが見い出され た これに対して グローバル干渉効果は ローカル刺激がグローバル 刺激よりも80msecはやく提示された場合においてもその効果が示さ れた. つまり, この研究では, グローバル優先がグローバル干渉よりも 先に消失することが示されたわけである. このことから, 彼らは, グロ ーバル優先は, 二つの視覚チャンネルの特性の違いに起因するものであ り, グローパル干渉はより後の反応決定段階でのグローバル優位性に起 因するものだと主張している.

また, Lamb and Yund (1993)は, Fig. 5.3に示す灰色の背景に白 色のローカル文字を描いて作成した明度差刺激( bright stimuli)と, そ れぞれのローカル文字が黒い外側の線で取り囲まれているコントラスト 均衡刺激( contrast-balanced stimuli)を使用して実験を行なった. 明

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