Bu l l e t i no fFa c u l t yo fEd u c a t i o n , Na g a s a k i Un i v e r s i t y: Cu r r i c u l u ma n dTe a c h i n gNo .
48(2008)1‑10離島地域の中学校におけるビジネスゲームの導入に関する基礎的研究
福田 正弘
( 2 0 0 7
年1
0月31
日受理)I nt r oduc t i ono fBus i nes sGamest oSo c i alSt udi esCl as si nJuni o rHi ghSc hoo li n l s o l at edI s l andsAr ea
Mas ahi r oFUKUDA (Re c e i vedOc t o be r31,2007)
1.本研究の 目的
本研究では,競争的 ビジネスの環境が ない離 島の子 どもが,競争 的な ビジネスゲームを 遂行 で きるのか を実験 的 に明 らか にす る とともに,離 島の学校 の教 員 や生徒 が ビジネス ゲームの導入 に対 していかなる意向 を有 しているか を調査 によって明 らか にす る。
シ ミュ レー シ ョンゲームは, プレイヤーに新 しい事態 を仮想 的 に提供 し,そ こでの問題 解 決 を通 じて社 会理解 のモ デ ル を構 築 させ,新 しい認識 を形 成 す る優 れ た方法 で あ る。
我 々は, これ まで中学生 に企業活動 を理解す るモデル を形成 しようと, ビジネスゲームを 用 いた授業 を実施 して きた。その結果, 中学生 に対 して ビジネスゲームは充分 な効果 を持 つ ことが明 らか になった。 しか し,その時,複数の店舗 が競争す る とい う経験 を日常 的に 持 ち合 わせ ない生徒 に とって果 た して ビジネスゲームは有効か とい う疑 問が生 じた。我 々 が調査 した生徒 は都市部 に住 み, 日常 的 に企業競争 は見 てお り,ゲームで与 え られ る文脈 を違和感 な く受 け入れ られ るか らだ。そ こで,今 回, こう した環境 にない離 島の生徒 を対 象 に, ビジネスゲームの学習効果 について検証 しようと本研究 を計画 した。
また,以上 の ような環境下 にある離 島地域 では,企業競争等 身近 に体験 で きない経済体 験 をシ ミュ レー シ ョンに よって模擬体験 す ることに よって補完 で きる と思 われ る。 幸 い, 今 日
I CT
の発 達 に よ り,無料 もし くは廉価 で利用 で きる教材 ツール も提供 されてい る。われわれ は
,2 0 0 4
年 よ りYBG
(横浜 国立大学経営学部 白井研究室の開発 した ビジネスゲー ムシステム) を活用 した実験授業研 究 に着手 してお り,成果 を蓄積 して きてい る。 この実 績 を もとに,離 島地域 を含 めた県下の学校へ の普及が図れ る状態 になって きてい る。 そ こ で,今 回上記 の実験 とともに,離 島地域 の教員や生徒 の ビジネスゲームの導入 に対す る意 向調査 を実施す ることとした。2.
本研究の方法本研究で は
,
「離 島の子 どもが,競争 的な ビジネスゲーム を遂行 で きるのか を実験 的 に明 らかにす る」研 究 を研究1とし,
「離 島の学校 の教員や生徒 が ビジネスゲームの導入 に対 し2 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.48 (2008年)
ていかなる意向 を有 しているか を調査 に よって明 らか にす る」研 究 を研究2とす る。
研 究 1では,競争的 ビジネスの環境が見 られない地域 として特定 の離 島 を選択 し,その 離島の中学校 の生徒 を対象 にビジネスゲーム を実施 し, ビジネスゲームのパ フォーマ ンス を検 証す る。 さらに, これ まで実施 して きた本土側 の都市部 の 中学校 の生徒 のゲ ーム ・ パ フ ォーマ ンス と比較 す る こ とに よって,ゲー ム‑ の熟達 の仕 方 を比較 し,離 島部 での
ビジネスゲーム活用 の可能性 を検討す る。
研 究2では,長崎県下 の主 な離 島 (対馬,壱 岐,五 島,新上五 島) にある中学校 の教員 を対象 に, ビジネスゲームにこだわ らず広 くゲー ミングシ ミュ レーシ ョンの利用 について の意 向調査 を実施す る。 また, ビジネスゲームの実施校 の生徒 に もア ンケー トを実施 し, 生徒 自身の意 向調査 も行 う。 これ らによって,本土 とは異 なった学習環境 にある離 島にお いて,模擬 的体験 を提供す るゲー ミングシ ミュ レー シ ョンが どう認知 され,その活用 に対 して どの ような期待が寄せ られてい るか を見 る とともに,その中か らビジネスゲームに対 す る導入意向 を明 らか にす る。
3
.研究1
の結果3. 1
使用ゲーム今 回の実験 では, これ まで使用実績があ り,過去 の実験 デー タとの比較が可能である点 で,
YBG
のベ ー カ リーゲーム を使用 した。 このゲ ームは,ベ ー カ リー (パ ン屋)の経営 シ ミュ レーシ ョンを行 うゲームで,2‑ 3人の プ レイヤーがチーム を組み,10前後 (人数 によって異 なる)のチームが収益 を競 うゲームである。このゲームの シナ リオは,概略次の ようである (白井,2003)。まず,ベーカ リーは,パ ンの材料 として冷凍 のパ ン生地 を購入 し,それ を 1日寝 か して翌 日に焼 く作業 に入 り,翌 々 日に焼 き上が ったパ ンを販売す る。 つ ま り材料購入 ・製造指示 ・製 品販売 の過程が3日か けて進行す る訳である。 ベーカ リーの経営 は
1
日 1ラウ ン ドで展 開 してい き, プ レイヤー は,毎 日この3つの意思決定 (材料購入数,製造指示 数,製 品販売価格 の決定) を同時 に しなければな らない。費用構成 は,パ ン生地及 び製造費用 がそれぞれ1個 あた り400円,1 0 0
円であ り,パ ンの製造単価 は5 0 0
円 となってい る。 また,固定費用 としてベ ーカ リー のテナ ン ト料が1
日あた り2
万 円 とい う設定 になっている。また, このゲームは,ゲームに参加 しているチームが供給者 とな り,各チームが決定す るパ ンの価格 と供給量 が市場‑ の供給量 とい う設定 になってい る。 一方,総需要 は コン ピュー タに予 め登録 されてお り,各 チームの需要数 は,各チームが設定 したパ ンの価格 や それ まで にそのチームが出 した品切 れ数 (それ によって顧客信頼係 数が計算 され る)によっ て割 り当て られるようになってい る。
この ように,ベーカ リーゲームは単純 なゲームであ り,一見非常 に簡単 そ うに見 えるが, その実,各チームの意思決定 をリアルに反映す る力動性 を持 ってお り,容易 には勝 てない。
3.2
実験 の模様実験 は,対馬のある中学校 (生徒 数
2 7 )
に実験校 と して協力願 い,学校 の全生徒 (当 日 参加 は2 5
人)と教員 を対象 に行 った。チーム構成 は 1年生チーム3
,2
年生チーム3
,3
年生 チ ー ム 3及 び教 員 チ ー ム 3の,合 計 12チ ー ムで あ る。 当時,実験 校 の通信 環境 は福田正弘 :離島地域の中学校におけるビジネスゲームの導入に関する基礎的研究 3
I SDN
で あ ったが ,YBG
の システ ム は通信負荷 量 が小 さ く,通信 に関 して は何 の トラブル もなか った。実験 は,社 会科 の授業れ た。 ビジネスゲー ム に よる学 習 の 直 接 の対 象 学 年 は第
3
学 年 で あ る が , ゲー ム実施 に必要 な生徒 数 を確 保 す る意 味 か ら,全学年生徒 と教員 に よる混合 に よって実施す る こ ととした。 なお,教 員 に関 して は,過去 に教員研 修 で ビジネスゲ ーム を実施
した実績 が あ る。
実験 は,筆者 (福 田)が コ ン トロー ラー を務 め,授 業担 当教 員 が副 指導 に当た る体 制 で 臨 んだ。実験 の授業 時 間は2校 時分
( 1 0 0
分 ),事 前説 明 に2 0
分 , ゲ ーム に6 0
分 ,事後解説「ビジネスゲ ー ム に よる企業行 動理解
」
と して計 画 さ\
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meuElakeryで‑.つ革 ら 窒 寺封喪 汚 ち.
Ma S a h i r c . F L 血
由 帖 Hk.U,.叫 ) .㍗図 1 事前説明用 スライ ド に
2 0
分 の割 り当てで実施 した。ゲー ム シナ リオは事 前 に配布 して あ り,生徒 はそれ を読 んで きてい た。今 回の実験 で は, これ まで に実施経験 の ない 中学
1
年生 が プ レイヤ ー と して参加 してい る こ ともあ り, 図1
に示す よ うに, か な り詳 しい事前 説 明 を行 った。
写真 1 実験授業の教室 写真2 実験授業の風景
3.3
ゲーム の結 果各 チ ー ムのゲーム結 果 は表
1
及 び図2
の通 りで あ る。全体 的 に利益 が十分 に出せ てい ない結 果 とな ってい るが ,それ は各 チ ームが利益創 出の 困難 な価格付 け を行 い, デ フ レ市場 が形 成 され たためで あ る。 しか し, ゲー ム開始 か ら右 肩下が りで あ った利益 が ,第
4
ラウ ン ド当 た りか ら上昇 に転 じてお り, ゲーム に よる学習 効 果が確 認 で きる。 (い くつ か のチ ー ム に見 られ るゲ ー ム終盤 で の利 益 の急 落 は,入 力 ミ ス な どの ア クシデ ン トに よる。)また,長 崎市 内の 中学校 で3
年生 を対 象 に行 ったゲ ー ムの 結 果 (図3)と比較 す る と,剰余 金 の額 こそ違 う ものの3ラウ ン ドあ た りか ら右 肩上 が り に転 じてい く傾 向 は同 じように見 られ,ゲ ーム に対 す る同 じような熟 達傾 向が見 て取 れ る。4 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.48 (2008年)
ただ,1年生 のチームはや は り下位 に位 置 し,市場混乱 を来す要 因 となった点 は注意 しな ければな らないが,以上 の結 果か ら,競 争市場 の環境下 にない生徒 が市場競 争 を体験 す る ビジネスゲーム を充分行 い うるこ とが実証 で きた。
表1 実験結果 (ゲームの結果) Team 1 2 3 4
ラウン ド1 ‑‑6000‑13050‑10000 ‑3400 ラウン ド2 ‑14000‑13050‑30000‑18400 ラウン ド3 ‑18900‑24650‑72000‑44070 ラウン ド4 ‑39500‑64050‑78500‑47470 ラウン ド5 ‑39500‑64700‑87250‑50870 ラウン ド6 ‑38000‑62700‑94500‑50120 ラウン ド7 ‑31500‑68375‑100100‑47170 ラウン ド8 ‑26500‑60425‑98850‑43420
5 6 7 8 9 10 11 12 2000‑13050‑10000‑10000 500 ‑5000 ‑2000 ‑2000
‑4360‑25450‑20000‑18000 ‑9000‑10000‑13600 ‑4000
‑3360135380‑22500123000112448‑17000111100 ‑3600
‑2300‑32180‑27500‑29720‑11848‑33600‑17350 ‑2000 1360‑29305‑30700‑27100 ‑9648‑29600‑40110 1750 5280‑26805‑34700‑29100 ‑3648‑25600140070 7650 12230‑26005‑43700‑26860 2852‑22720‑30070 15650
‑7770‑22505‑47450‑19860 11052 ‑7520‑20070 25050 ラウン ド9 ‑19000‑106853‑84850‑38420‑77770‑15505‑47450 ‑9860 24052 14980‑32870 30700
ラウン ドご との剰余金の変化
1 0 8 6 4 2 0 0 0 0000 0 000 000 000 000 0
〆底 /‑7&‑.‑‑‑〟 // / /#
l l l
‑三㌦‑P I̲/‑ /学芸書∃ 慧==
三 二 ㌦が一㌦‑メ /{ /‑2 ‑4 ‑6 00 00 00 00 00 0 0
‑8 00 00
・ 十
二 二 ‑ ∴\
\了 、ヽ ヤ ー‑‑瀬二 二 ㌦ ‑耕 一㌦:*㌦\Lh.A..‑\ー叫一 ㌧
、、‑pJ..胤.‑叫仙′. ノ戊
図2 実験結果 (ゲームの結果 :グラフ)
福 田正弘 :離島地域の中学校 におけるビジネスゲームの導入 に関す る基礎 的研究
ラウン ドごとの剰余金の変化
102846000000000000000000000
‑‑‑‑24680000000000000000
‑100000
〆二ジグ 琶 毒. ●
・‑,.〜.,A‑ 〆〆底
\ ̲ 塩‑‑㌦ 呼 二朋
\
\
図
3
別の中学校3
年生のゲーム結果5
4.
研 究2
の結果4.1
教師へのアンケ‑ 卜研 究2で教 師 に実施 した ア ンケー トの内容 は以下 の通 りであ る。
1.先生 は,ゲームを授業で利用す ることにどの程度関心がおあ りで しょうか。適当な+に○ を して下 さい。
ある ‑+‑ +‑ +‑ +‑ +‑ ない 2.ゲームの魅力 は何で しょうo以下のそれぞれの項 目で,適当な +に○ をして下 さい。
1 授業 を活性化 させ る はい ‑+‑ +‑ +‑ +‑ +‑ いいえ 2 生徒 同士が協力 して活動す る はい 一十‑ 十‑ 十‑ 十‑ +‑ いいえ 3 普段経験で きない ことを模擬体験で きる はい ‑+‑ +‑ +‑ +‑ +‑ いいえ 4 知識 を定着で きる はい ‑+‑ +‑ +‑ +‑ +‑ いいえ 5 思考や判断力 を育成で きる はい 一十‑ +‑ +‑ +‑ +‑ いいえ
□ その他 ( )
3.先生 は, これまでに授業でゲームを使われたことがあ りますか。何れかの口 にレを入れて下 さい。
口 ある □ ない
4. 3で "ある" とお答 えにな られた方にお尋ね します。
(それは どのようなゲームで したか。 よろ しければ詳 しくお教 え下 さい。) (また,その時の生徒の様子や学習上の効果な どはいかがで したか。)
5.今後,ゲームが授業で もっと活用 されるようになるには, どんな点 を改善すればいいで しょうか。以下の各項 目 について,必要 と思われる項 目に○ を付 けていただ き,その中か ら特 に必要な ものを3つ選び,下の記入欄 に番号 を ご記入下 さい。
1 授業 目的にあったゲームの開発 2 ゲームや情報の入手の し易 さ 3 ゲームをする設備や施設 4 ゲームを買 う予算
5 クラスの規模 6 教師 自身のゲームの指導技術
7 ゲーム実施の支援体制 8 授業時間数 (ゲームに使える授業時間の確保)
6 9111315
長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.48(2008年)
ゲーム学習のカリキュラムへの組み込み 10 周囲 (学校や保護者)の理解
生徒の意欲 12生徒 の自制 (ゲームで生徒が遊んで しまわない) ゲームで習得す る知識の明確化 14教師の意欲 ・理解
その他 (
アンケー トは,平成
1 9
年3
月に長崎県下の主 な離島 (対馬,壱岐,五 島,新上五島)に あ る中学校 の社会科教室宛 に郵送 して実施 した。返着数1 9
件 の結果 は次の通 りである。ただ し,尺度 回答す る項 目については
,
「ない (いいえ)」か ら 「ある (はい)」への各段階 に 1‑ 5点 を与 え,平均点表示す る。・質問 1について
平均 4.1で関心がある とい う回答であった。教員 はゲームに対す る高い関心 を持 ってい る といえる。
・質問
2
について1
授業 を活性化 させ る (平均4. 3 )
2 生徒 同士が協力 して活動す る (平均 3.8)
3 普段経験で きないことを模擬体験 で きる (平均 4.4)
4
知識 を定着で きる (平均3. 3 )
5 思考や判断力 を育成で きる (平均 3.8)
これ らか ら,ゲームの活用 は,知識の定着 よ りも,授業の活性化や模擬体験,生徒 の協 力,思考判断力の育成 に効果があるとみなされているといえる。
・質問3 ・4について
8
名が経験 あ りと回答 し,その使用ゲームは次の ような ものであった。都道府県名 を入 れた ビンゴゲーム,貿易ゲーム,国ゲーム都道府県ゲーム,神経衰 弱ゲーム (県 と県庁,人物 とで きごとのカー ドを合 わせてい く),株式ゲーム,商品の 売買,選挙 など,都道府県かるた,歴史双六,金融 ・株式,戦時中の百人一首,火起 こ し対抗 レース
単純 な ドリル型のゲームが多 く利用 され,シ ミュ レーシ ョン的なゲームは少 ない。
また,ゲームによる学習効果等 については,以下の ようなコメ ン トが寄せ られた。
○あ ま り知 られていない国名や都市名,都道府県名が出た とき,周 囲の子が教 えた りし て協力 していた。楽 しく意欲的に取 り組 んでい ま した。
○ゲームをす ると関心が高 まる し,その後の授業展 開が しやす くなる。
○単純 に覚 えるよ り集 中 して行 った。小 テス トを行 った ときの定着度 は高かった。
○楽 しく活動 していた し,知識の定着 に もつなが っていた と思い ます。
○熱心 に取 り組み ます。家庭で もで きる ものや一人で もで きるような内容の ものが,継 続的に取 り組みやすい ようです。
学習の活性化 だけでな く,その結果 として知識の定着度の高 さも指摘 されていた。
・質問
5
について3位 までに挙 げ られた点数 を項 目ごとに合計 し,その合計点が多い順 に 6件並べてみる と,次の ようになる。
1
授業 目的にあったゲームの開発( 1 5
点)8 授業時間数 (ゲームに使 える授業時間の確保) (11点)
福田正弘 :離島地域の中学校におけるビジネスゲームの導入に関する基礎的研究 7
1 3
ゲームで習得す る知識の明確化(9
点) 2 ゲームや情報の入手の し易 さ (7点) 6 教 師 自身のゲームの指導技術 (5点) 14 教 師の意欲 ・理解 (4点)授業実施 においてゲームの効果 を考 えた要望 (
1,1 3)
が多 く, またゲーム活用 のため の環境面での要望 (8,2,6)も多かった。独 りよが りでお仕着せでない授業 目的にあっ たゲームの開発が急がれ る し,学校側 で も,授業時間数の確保が大 きな課題 となっている。裏 を返せ ば,これ らは,学校教育 においてゲームの活用が浸透 しない阻害要 因 とも言 える。
ただ,意外 とゲームに対す る無理解 か ら,学校 でのゲーム活用が忌避 され るのではないか とい う従来か らもたれていた懸念 は,本 ア ンケー トで は見 られ なか った。それだけ,ゲー ムに対す る理解が進 んでい る と考 え られ る。
4.2
生徒へのアンケー ト次 に,実験授業でゲーム を実施 した生徒25人 に対 して,次の ようなア ンケー トを実施 し た。
ベーカ リーゲーム をやってみていかがで したか。次のa〜mのそれぞれで該 当す る ものの +に○ を付 けて下 さい。
a.ゲームの印象 は ? b.ゲームに興味は ? C.ゲームへ の取 り組 みは ? d.ゲームへ の取 り組みは ? e.チームの様子 は ? i.ゲームの難易 は ? g.ゲームでパ ン屋 の しくみが h.ゲームで利益の しくみが
つ まらなか った 持 てなかった 消極 的 不真面 目 非協力的 易 しい 分か らなかった 分か らなか った i.ゲームで会計情報の見方が 分か らなかった j.ゲームで経済や会社 の知識が 増 えなか った k.ゲームは経済の理解 に 役立 たなかった 1.ゲームで経済に興味 を 持 てなかった m.ゲームを授業 に もっ と 入れな くて よい
+ + + + + + + + + + + + + + +
十 十 十 十 十
十 十 十 十 + + + + + + + + + + + + + + + + + 十 十 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +
面 白か った 持 った 積極 的 真面 目 協力的 難 しい
分かる ようになった 分かるようになった 分かるようになった 増 えた
役立った 持 てた 入れてほ しい
各設問 に対す る回答 の平均点は次の通 りである。
a
(4.5), b (4.5),C (4.4), d (4.3),e
(4.5),f (4.3),g (3.8),h
(3.8), i(3.9), j (3.8),k
(4.0),1
(4.2),m (4.7)この結果,生徒 は非常 に熱心 にゲームに参加 し,経済 についての理解 を深 める とともに, 経済 についての興味 を深 めた ようである。 そ して,ゲームの授業‑ の活用 をなん と4.7と い う高い平均点で もって切望 してい る。
5.
考察以上か ら,次の ことが明 らかになった。
まず,研究1の結果か ら,競争市場 の環境下 にない生徒が市場競争 を体験す るビジネス ゲーム を充分行 い うることが明 らか になった。実験 を行 った学校 の近隣には商業施設 はな く,消費生活 において競争 的な環境 にあ る とは とて もい えない状況である。 こう した環境
8 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.48 (2008年)
下 にあって,生徒 はおそ らく自由競争市場 における取引 を体験す ることな く,市場経済 に 対す る理解 を形成 している と思われる。 本研究は, こうした離 島地域 における生徒 の経済 認識上の不利 な環境 を, ビジネスゲームによる模擬的な体験学習 によって補完で きるので ないか と考 え, ビジネスゲームの導入可能性 を実験 によって検証す る ものであった。実験 結果か ら,生徒 はビジネスゲームを遂行す る十分 な能力 を有 してお り,離島地域 の学校 に おいて ビジネスゲームの導入の可能性が確証 された。
しか しなが ら, 自由競争市場の体験 的経験が ない中で,生徒が ビジネスゲームを遂行で きるのはなぜか とい う疑問 もまた生 じることになる。 競争的なビジネスゲームを遂行する のに,競争的な市場体験 は必須条件ではない とい うことなのだろうか。あるいは,壁徒 は, われわれが想定 しない どこかで競争的市場の体験 を しているのだろ うか。
これ までゲー ミングシ ミュ レーシ ョン研究は, プ レイヤーが事前 に持 っている既有 のモ デルをあ ま り問題 に してこなかった きらいがある。 ゲー ミングシ ミュ レーシ ョンによって プ レイヤーの認識モデルが発展す る とされるが,ゲームが成立す ること自体,あるモデル がすでに共有 されていることになる。 その共有 されたモデルがゲームの成立根拠 となって いる。 本研究の結果 は, こうしたゲーム成立のための根本モデルの有無 に光 を当て,ゲー
ミングシ ミュ レーシ ョンの学習有効性 を根源的に問 うことにもなっている。
残念 なが ら,本研 究では この問いに直接 的に答 える手がか りを見 出す ことはで きない。
この間題 は,人 々の経済的行動の根源 にあって,人々の経済的な意思決定や振 る舞いを根 本的に支配 している基本的な経済哲学が どこで形成 されるのか とい う問題 に関連 して くる だけに,今後 さらに追求 してい く必要があろう。
次に,研究
2
か ら,離島地域の中学校 の社会科教 師は授業 におけるゲームの導入 に高い 関心 を示 し, また実験 に参加 した生徒 も授業 にゲームを取 り入れることを極 めて高い率で 要望 していることが明 らかになった。 これ らの ことか ら,離島地域 において教 師 ・生徒 と もにビジネスゲームに対 し高い関心 を示 し,授業への導入 を熱望 しているとい うことがで きる。 こうしたゲームの授業‑の導入 に対す る教 師の高い関心,生徒 の高い要望の状況は, 都市部の学校 における調査 で も見 られ (福 Ea 2005b),今 日の中学校 の教師 ・生徒 の一般 的な傾向 と言 うことが出来 よう。しか し,そ うであ りなが ら,実際 に中学校 の社会科授業へのゲームの導入 は,あ ま り芳 しくはない。今 回のア ンケー トで も,社会科授業 にゲームを取 り入れた経験 のある中学校 教 師は
,1 9
件 中8
件 の低率であった。 しか も,使用 したことのあるゲームが,知識再生的 な ドリル型のゲームが多 く, シミュ レーシ ョンゲームや ビジネスゲーム といった ものは少 数であった。その原因は,ゲームの導入 についての改善点 として教 師が挙 げる諸点が未整 備であることと思われる。 ゲームを提供 し,その普及 を図ってい く立場か らは,授業 目的 にあったゲームの開発,ゲームで実現で きる教育 目標 の明確化 な ど,使用者サイ ドに立 っ た施策が必要であることを示唆 している。 そのため に,教 師が行 っている授業 を観察 し, そ こで 目指 している教育 目標 を丹念 に洗い出 し,ゲーム開発 に取 り組 む必要があろう。 ま た,ゲームや情報の提供の仕方,教師の指導技術 の養成 な ど,ゲームを提供 してい く上で, その受 け入れ態勢の整備 を図る必要 もある。 こうした条件が整 え られて,学校, とりわけ 教育条件の恵 まれない離島地域の学校 において, ビジネスゲームの導入 ・活用が進展 してい くと思 われる。
福 田正弘 :離 島地域 の中学校 におけるビジネスゲームの導入 に関す る基礎 的研究 9
6. おわりに
本研 究 に よって,離 島地域 にお け る ビジネスゲ ー ムの導入 の内 的外 的 な条件 が 明確 に なった。す で に教 師の意欲 と生徒 の能力 とい った受 け入 れ側 の内面 において は,受 け入 れ 態勢が十分 出来上が ってい る。 後 は, その導入 をス ムーズ に行 うための外 的 な実施環境 の 整備 とい うこ とになる。
本稿 で指摘 した とお り,外 的な実施環境 に もい くつかあ るが, ア ンケー トで教 師が強調 した ように,現実 的 には授業 時数の確 保が最大 のネ ック となってい よう。 特 に,ベ ー カ リー ゲームの ようなシ ミュ レー シ ョン型 の ビジネスゲームは
5 0
分 の授業 で は十分行 い きれず,どう して も
1 0 0
分 の時 間 を要す るこ とになる。 しか も,ゲームがパ ソコン室 での実施 とな るので,学校 内での時 間割調整 な ど極 めて煩雑 な手続 きが要 るこ とになる。 つ ま り,実験 授業 で はで きて も, 日常 的 な授業 で はで きない とい う,隠れた障害が そ こにはあ るのであ る。 しか も,本研究 の実験校 の ように少 人数の学校 で は, まさに全校 を巻 き込 んだ一大 イ ベ ン トとなって しまう。 これでは,普段 の授業 に ビジネスゲーム を導入 しようとい うこと にはな らない。今後 , こう した現実 的 な側面 に配慮 しつつ,実際 の学校 の授業場 面 でゲームの導入可能 性 を考 えてい く必要 が あ る。 た とえば,少 人数 の ク ラス な らば,教 室 にあ るパ ソ コ ンを イ ンターネ ッ トに接 続 し, 同 じように少 人数の クラス とゲーム を遠 隔でや ってみて は どう だろ うか。 同時刻 に授業 のあ るクラス を探 し
,5 0
分 な ら5 0
分 でゲ ーム を行 い,続 きは次 週 に行 うとい う形で進 めれ ば よい。他校 生 と交流 す る こ とで, コ ミュニケー シ ョンが深 ま る と同時 にネ ッ トを介 した競争市場 を体感 で きるはず だ。 こう した システム作 りを も念頭 に,離 島の教 育条件 を踏 まえた導入研 究 を進 めてい く必要が あ る。(付記) 本研究 は,財 団法人科学技術融合振興財 団平成
1 7
年度調査研 究助成,研 究課題「離 島の学校 にお ける ビジネスゲームの有効性 とその導入 に対 す る意 向の調査 」 (研 究期 間 平成
1 8
年〜 1 9
年) を受 けて実施 した ものであ る。 なお,本研 究 の遂行 にあたっては,研 究協力者 と して鬼塚嘉 隆教 諭 (対 馬市 立佐護 中学校 ) と宗教論 (長崎市 立丸尾 中学校 )の 協 力 を得 た。 ここに感謝 の意 を表 します。 また,実験授業で協 力頂 いた中学校 の皆 さんにも感謝 申 し上 げ ます。
文献
福 田正 弘
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福 田正弘
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福 田正 弘
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シ ンポジ ウム 経営学
e
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:ビジネスゲーム に よる数理 的社会認識 の育成(2),長崎大学教 育学部紀要 教科教 育学4 6,1 7 ‑ 2 5 .
白井宏 明
( 2 0 0 3)
:ベ ー カ リーゲーム (コー ド番号 :B G 2 0 0 3 0 5 )
(マニ ュアル),横 浜 国立大学 .