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国際裁判管轄の判断における「特段の事情」の審査

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(1)

〔論 説 〕

国際裁判管轄の判断における「 特段の事情」 の審査

廣 江 健 司

目 次 1は じめ に

2諸 見 解 お よび 判 断 の 枠 組 み

(1)国 際 裁 判 管 轄 の 解 釈 につ い て の諸 見 解 (2)国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 の 枠 組 み

(3)「 特 段 の 事 情 」 の 要 素 につ い て の 諸 見 解 3裁 判 例

(1)最 高 裁 昭 和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決 以 降 の 裁 判 例 (2)最 高 裁 平 成9年11月11日 第 三 小 法 廷 判 決 以 降 の 裁 判 例 4「 特 段 の 事 情 」 の 内 容

(1)「 特 段 の事 情 」 の 基 準 (2)当 事 者 間 の公 平 (3)裁 判 の 適 正 (4)裁 判 の 迅 速

(5)

小括

5結 び に代 えて

1は じめ に

国 際 裁 判 管 轄 の判 断 に お け る 「特 段 の事 情 」 の 審査 に つ い て 、最 高 裁 平 成9年11月11日 第 三 小 法 廷 判 決(1)が最 高 裁 と して 初 め て 、 次 の よ う に 宣 明 した こ と は周 知 の とお りで あ る。

(2)

桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

《判 旨》 「被 告 が我 が 国 に住 所 を有 しな い場 合 で あ って も、 我 が 国 と法 的 関 連 を有 す る事 件 につ い て我 が 国の 国際 裁 判 管轄 を肯 定 す べ き場 合 の あ る こ とは、 否定 し得 ない と ころで あ るが 、 どの よ うな場 合 にわが 国 の 国 際裁 判 管 轄 を肯 定 すべ きか につ い て は、 国 際 的 に承認 され た 一般 的 な準 則 が存 在 せ ず、 国 際 的慣 習法 の成 熟 も十 分 で は ない た め、 当事 者 間 の公 平 や裁 判 の適 正 ・迅 速 の 理念 に よ り条 理 に従 って 決定 す る のが 相 当 であ る(最 高 裁昭 和 ……56年10月16日 第二 小 法廷 判 決 ・民 集35巻7号1224頁 、 最 高 裁 平成 … …8年6月24日 第 二小 法 廷 判決 ・民 集50巻7号1451頁 参 照)。 そ して 、我 が 国の民 訴 法 の規定 す る裁 判籍 の いず れか が我 が 国内 に あ る ときは 、原 則 と して、我 が 国の裁 判 所 に提起 され た訴訟 事件 につ き、

被 告 を我 が 国 の裁 判権 に服 させ るの が相 当で あ るが 、我 が 国 で裁 判 を行 う こ とが当 事者 間の公 平 、 裁判 の適 正 ・迅速 を期 す る とい う理 念 に反す る特段 の事情 が あ る と認 め られ る場合 に は、我 が 国 の 国際 裁判 管 轄 を否 定 すべ きで あ る。」

す なわ ち 、 判 旨 は 、 日本 の 民 事 訴 訟 法 の 規 定 す る 裁 判 籍 の い ず れ か が 日本 国 内 に あ る と き に は 、 原 則 と して 、 被 告 を 日本 の 民 事 裁 判 権 に 服 さ せ る の が 相 当 で あ る が 、 例 外 と して 、 日本 の 裁 判 所 にお い て 裁 判 を 行 う こ とが 当 事 者 間 の 公 平 、 裁 判 の 適 正 ・迅 速 を期 す る とい う理 念 に反 す る

「特 段 の 事 情 」 が あ る と認 め ら れ る場 合 に は 、 日本 の 裁 判 所 の 国 際 裁 判 管 轄 を 否 定 す べ きで あ る、 と説 示 して い る。 こ の 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 は 、 国 内 の 土 地 管 轄 に 関 す る規 定 の 類 推 に よ っ て 法 的安 定 性 を確 保 しつ つ 、 若 干 の 比 較 衡 量 に よる 判 断 に よ っ て 具 体 的 妥 当 性 を も確 保 しよ う と す る論 理 構 成 で あ る(2)。

そ して 、 国 際 裁 判 管 轄 に つ い て の 解 釈 論 の 到 達 点 と して 「解 釈 論 で は 国 際 裁 判 管 轄 の 範 囲 は 広 く認 め れ られ て い る(3)」とい わ れ て お り、裁 判 例 が 「『特 段 の 事 情 』 説 に 立 ち な が ら、 『特 段 の 事 情 』 の 内 容 を諸 般 の 事 情 を類 型 化 しな が ら豊 富 な もの に して お り、 この よ う な下 級 審 判 例 の 動 向 を学 説 も十 分 考 慮 して と り入 れ る こ とが 必 要 で あ る(4)」と い わ れ て い た と こ ろ 、 こ の最 高 裁 平 成9年11月11日 第 三 小 法 廷 判 決 と後 述 の 最 高 裁

2

(3)

国 際裁 判 管 轄 の 判 断 に お け る 「特段 の事 情 」 の 審 査(廣 江 健 司)

昭 和56年10月16日 第 二小 法 廷 判 決(5)とを も っ て 国 際 裁 判 管 轄 に 関 して 、 次 の よ う な 「判 例 法 が 確 立 して い る 」 と され て い る 。

「① 日本 には国 際裁 判管 轄 を直接 規 定す る法 規 は ない こ と、② そ こで 、当 事者 〔間 〕 の公 平 、裁 判 の適 正 ・迅 速 を期す る とい う理 念 に よ り条理 に 従 って決 定 す るの が 相 当で あ る こ と、③ 民訴 法 の 規定 す る裁判 籍 の いず れか が 日本 国 内 にあ る ときは 、国 際裁 判 管 轄 を肯 定 す るの が右 条 理 に適 う こ と、④ た だ し、た とえ③ に よ り管 轄が 認 め られ るべ き場合 で あ って も、

具 体 的事 案 にお い て管轄 を肯 定 す る こ とが か えっ て右 条理 に反 す る よ う な結 果 とな る よ うな 『特段 の事情 』 が あ れ ば、 管轄 を否定 す る とい う例 外 的 処 理 の 余 地 が あ る こ と、 以 上 で あ る(6)」。(〔 〕 内 は 筆 者 の補 記 。)

と こ ろ で 、 管 轄 権 の存 在 が 訴 訟 要 件 の1つ で あ るか ら、 裁 判 所 は 、本 案 判 決 の前 提 要 件 と して 管 轄 権 の 存 在 を確 認 す る必 要 が あ る と こ ろ 、 訴 訟 要 件 に 関 す る 審 理 の 一 般 原 則 と して は 、 こ れ に は 職 権 調 査 が 妥 当 し、

職 権 調 査 事 項 と して 職 権 探 知 主 義 が 採 用 さ れ る(7)。そ の 客 観 的 証 明 責 任 は 原 告 に課 さ れ る。 しか し、 民 事 訴 訟 法 第14条 との 関 係 で 現 在 の 支 配 的 見 解 は 、 「土 地 管 轄 な ど任 意 管 轄 に つ い て は 、弁 論 主 義 が 妥 当 す る」 と い う もの で あ り、 「任 意 管 轄 に 関 して は 、 そ の 判 断 の た め の 資 料 の 提 出 責 任 は 、 当 事 者 に 委 ね られ(8)」る こ と に な る 。 そ して 、 国 際 裁 判 管 轄 に つ い て の 争 い は 、 「裁 判 官 に 『特 段 の事 情 』 を認 め て も ら え る か 否 か とい う点 に 移 っ て い る と も い え る」 の で あ り、 「裁 判 で 徹 底 的 に 争 っ て み な い 限 り、国 際 裁 判 管 轄 の有 無 は判 明 しな い とい う こ と に な(9)」る で あ ろ う。

そ こ で 、 原 告 は い か な る事 実 につ い て 主 張 ・立 証 し、 そ れ に 対 して被 告 は どの よ うに抗 弁 す る か 、 とい う こ とが 問 題 と な る 。 こ の 問 題 に対 して は 、判 例 ・裁 判 例 か ら 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 の 内容 を検 討 す る必 要 が あ る と思 わ れ る 。

本 稿 は 、こ の必 要 の た め に 、国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 にお け る 「特 段 の事 情 」 の 審 査 の 内 容 を検 討 す る こ と を 目的 とす る 。 こ の 検 討 の 前 提 と して 、 ま ず 、従 来 か ら論 理 構 成 さ れ て き た 国 際 裁 判 管 轄 の 解 釈 につ い て の諸 見 解 、

(4)

桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

そ の 判 断 の 枠 組 み お よび 「特 段 の 事 情 」 の 要 素 に つ い て の 諸 見 解 を整 理 し、 つ ぎ に 、 そ の 検 討 に対 して 参 考 に な る と思 わ れ る裁 判 例 が 「特 段 の 事 情 」 の 要 素 につ い て 判 示 して い る と こ ろ を検 証 し、 さ ら に、 実 務 的 に 参 考 に な る と思 わ れ る 「特 段 の 事 情 」 の 内 容 、 す なわ ち 、 「特 段 の事 情 」

の要 素 に つ い て 検 討 し、 そ の う え で 、 判 例 ・裁 判 例 の 立 場 を ま とめ る こ とす る。

2諸 見 解 お よび 判 断 の 枠 組 み

(1)国 際 裁 判 管 轄 の 解 釈 に つ い て の 諸 見 解

日本 に お い て 、 一 般 に 、 国 際 裁 判 管 轄 に 関 す る法 は 不 備 で あ り、 そ の 法 の 不 備 は 条 理 に従 っ て補 充 さ れ る ほ か な く、 「こ の 条 理 は 、 実 定 国 際 民 事 訴 訟 法 の基 礎 を な して い る 基 本 的 な 価 値 体 系 た る 条 理 で あ り、 国 際 民 事 訴 訟 法 の基 本 理 念 と して の 条 理 で あ る(10)」と認 識 され て い る。 この 条 理 の 内 容 に つ い て の解 釈 論 と して 、 従 来 か ら逆 推 知 説 、 管 轄 配 分 説 、 利 益 衡 量 説 な どの 諸 見 解 が 提 唱 され て きて い る 。

逆 推 知 説 は 、 次 の とお りで あ る。

「わが 法 上 、裁 判 権 の 限 界 に つ い て の直 接 の 規定 は な い ため 、土 地 管 轄 (裁判 籍)に 関 す る規定 か ら逆 に推 知す る外 ない。 即 ち 日本 国内 に裁判 籍 の認 め られ る事 件 は原 則 と して わが裁 判 権 の処 理 事項 であ るが 、 渉外 的 事件 で あ って どの 裁判 籍 も認 め られ な い もの は これ に属 しな い こ とに な る。(11)」「一 般 的管 轄権 を定 め る規 定 が な い場 合 に は、 渉外 的 法律 関係 自体 の 性 質か ら特 別 に解す べ き理 由 の ない 限 りは、特 別 的管 轄 権 に 関す る原 則 を推測 し得べ きで あ って 、特 別 的管 轄 権 に関す る訴 訟 法 の規 定 に よっ て、 わが 国の何 れ か の裁 判 所 の管 轄権 に服 すべ き事件 につ い て は原 則 と して わが 裁判 所 の一般 的 管轄 権が 認 め られ る。(12)」

す な わ ち 、逆 推 知 説 は 、 「渉 外 的 法 律 関係 自体 の 性 質 か ら特 別 に解 す べ き理 由 の な い 限 り」国 内 の土 地 管 轄 に 関 す る 規 定 か ら 「逆 に推 知 す る 」

こ とに よ っ て 国 際 裁 判 管 轄 を判 断 す る、 とい う見 解 で あ る 。

4

(5)

国際 裁 判 管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の 事 情 」 の審 査(廣 江 健 司)

こ れ に対 して 、管 轄 配 分 説 は 、 次 の とお りで あ る 。

「国 際的 な裁 判管 轄権 の 分配 は、民 事訴 訟法 の理 念 に基 づ く他 の要 請 に反 しない 限 り、 主 と して場所 的 な考 慮 を、 しか もそ れ を訴訟 当事 者 の利 害 を中心 と して、行 うこ とに よ って決 定 され るべ きで あ り、 それ は 、国 内 の各 地 方 間の 裁 判所 間の管 轄 権 の分 配 と本 質 的 に 同一 の法 則 に従 って 決 定 され るべ きで あ る。 た だ、 国 内民 事訴 訟 法 上 の人 的又 は場 所 的 な管 轄 の規 定 を類 推 す る に当 た っ ては 、 国内社 会 と国際 社 会 との社 会 的条 件 の 差 異 に対 す る配慮 、 す なわ ち国 際的 考慮 を払 う必 要 が あ る(13)。」

す な わ ち 、 管 轄 配 分 説 は 、 「民 事 訴 訟 法 の 理 念 に基 づ く他 の 要 請 に 反 しな い 限 り」 「訴 訟 当 事 者 の 利 害 を 中心 と して」 「主 と して 場 所 的 な考 慮 を」行 う こ と に よ っ て 国 際 「裁 判 管 轄 権 の 分 配 」を決 定 す る もの と し、「国 際 的 考 慮 を払 」 って 民 事 訴 訟 法 上 の 人 的 ま た は 場 所 的 な管 轄 に 関 す る 規 定 を 「類 推 す る」 こ とに よ っ て 国 際 裁 判 管 轄 を判 断 す る、 とい う見 解 で あ る。 こ の 見 解 は 、 国 内 の 土 地 管 轄 に 関 す る規 定 を類 推 す る もの の 、 国 際 的 配 慮 に よ り一 定 の修 正 を加 え た うえ で 国 際 裁 判 管 轄 に 関す る 準 則 を 形 成 す る 、 と理 解 す る修 正 類 推 説 に至 っ て い る 。

逆 推 知 説 と管 轄 配 分 説(修 正 類 推 説)と の 相 違 点 は 、 民 事 訴 訟 法 の土 地 管 轄 に 関 す る 規 定 につ い て 、 前 者 が こ の 規 定 か ら直 接 に 「推 知 す る」

の に対 して 、 後 者 が これ に 「国 際 的 考 慮 を 払 う」(修 正 を加 え る)こ と に よ っ て 「類 推 す る 」 とす る点 に あ る。 そ の 類 似 点 は 、 と も に 民 事 訴 訟 法 の 土 地 管 轄 に 関 す る規 定 を一 応 の 基 準 とす る点 にあ る 。

しか しな が ら 、 双 方 の 説 は と も に、 前 者 が 「渉 外 的 法 律 関 係 自体 の 性 質 か ら特 別 に解 す べ き理 由 の な い 限 り」 とい う留 保 ま た は 制 限 を 、 後 者 が 「民 事 訴 訟 法 の 理 念 に基 づ く他 の 要 請 に 反 しな い 限 り」 と い う留 保 ま た は 制 限 をそ れ ぞ れ付 して い る。 こ う した 留 保 ま た は制 限 は、 現 在 の 表 現 で は、 「特 段 の 事 情 が ない 限 り」 とい う制 限 に当 た る で あ ろ う。

利 益 衡 量 説 は、 次 の と お りで あ る 。

(6)

桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

「当 事 者 の 公 平 な 取 扱 い 、 裁 判 の 適 正 、 迅 速 を 、 国 際 民 事 訴 訟 管 轄 決 定 の 基 本 理 念 と し て 、 ケ ー ス ・バ イ ・ケ ー ス に よ り、 適 正 な 条 理 を 見 い だ そ う とす る こ と は 、 方 法 論 と し て 正 し い と考 え る 。」 そ して 「右 根 本 理 念 の 下 に 、 … … 種 々 の フ ァ ク タ ー の 総 合 的 な 比 較 考 量 に よ っ て 、 国 内 法 の 土 地 管 轄 の 規 定 と関 係 な く、 国 際 間 の 管 轄 の 分 配 の 見 地 か ら、 直 戴 に 結 論

を 下 す べ きで あ る 。(14)」

す な わ ち 、利 益 衡 量 説 は 、 ケ ー ス ・バ イ・ ケ ー ス に適 正 な 条 理 を探 求 して 国 際 裁 判 管 轄 を判 断 す る と い う見 解 で あ る。 さ ら に、 「利 益 衡 量 を 事 件 ご と に 、 あ る い は類 型 的 に考 え て い くべ き」 で あ り、 「あ る程 度 ま で 個 別 的 な 詳 細 さ と柔 軟 さ を もっ た ル ー ル を形 成 す る こ と」 で あ る とす る 見 解 が あ り(15)、ま た 、「内 国 牽 連 性(我 国 社 会 と当 該 事 案 と の 密 接 関 連 性) の 要 素 」 を重 視 す べ きで あ る とい う見 解 が あ る(16)。

これ らの 諸 見 解 に対 して 、 か つ て 、筆 者 は 、 判 例 ・裁 判 例 の 「現 在 の 法 状 態 を踏 ま え つ つ 、1つ の 解 釈 論 」 を 、 次 の よ う に考 えて い た 。

「まず 、前 二 者 〔逆推 知 説 お よび管轄 配 分説 〕 の解釈 論 に よって一 定 の準 則 に従 って裁 判 管 轄権 の存 否 に一応 は判 断 を示 して おい て 、つ ぎに 、当 該 の判 断 の適 否 を後二 者 〔利 益 衡量 説 お よび事 件類 型 的利 益 衡 量 説〕 の 解釈 論 によ って検 討す る、とい う2つ の過程 を経 る、い わ ば折 衷主 義 的 な、

中間 的 な解 釈 の方 法論 も成 り立 ち得 るで あ ろ う。」 「第一 の過程 で、 … … 民 事訴 訟 法 の土 地 管 轄 に関 す る規 定 の定 め る裁 判 籍 の存 在 を根 拠 に して 日本 の裁 判 所 の裁 判 管轄 権 を肯 認 し、 第二 の過 程 で 、 こ の肯認 とい う判 断 の適否 を具体 的事 実 関係 に照 ら して検 討 す る、 とい う解 釈 の方 法 で あ る。 そ して、 第二 の 過程 で は、 …… 当事 者 双 方 の訴 訟追 行 の 資力 ない し 能力 につ い て比 較衡 量 し、 日本 の裁 判所 にお ける証 拠 の収 集 の便 宜 につ い て 判 断 を 示 す と い う こ と に な る 。(17)」(〔〕 内 は 筆 者 の 補 記 。)

そ して 、 現 在 の 状 況 に つ い て は 、 次 の よ う に 理 解 さ れ て い る 。

6

(7)

国際 裁 判 管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の事 情 」 の審 査(廣 江 健 司)

「純粋 な逆 推 知説 や利 益 衡量 説 とい う両極 端 の 二説 につ い て は、現 在 ほ と ん ど支 持 者 は な く、予 測可 能 性 や法 的 安定 性 と具体 的 妥 当性 の 調和 とい う観 点 か ら、 両者 の 中間 に学 説 は分 布 して い る状況 であ り、単 純化 して い え ば、 国内 土地 管 轄 規定 を一応 の基 準 と して 承認 しつ つ も、 国際 的 観 点 を含 め た具 体 的妥 当 性 の観 点 か らの修正 調 整 を 目指 す 点 で は、 ほ ぼ共 通 して い る。」 「学 説 と して も逆推 知 説 、管轄 配 分説 、 〔類型 的 に民事 訴 訟 法 の土 地 管轄 に関す る規定 を修 正す る〕新 類 型 説 を総 合止 揚 した形 で の 新 しい 『特 段 の事 情 』 説(単 に 「特段 の事 情」 に よ る修正 を越 え た類 型 化 を 含 む)が 好 ま しい だ ろ う。(18)」(〔〕 内 は 筆 者 の 補 記 。)

(2)国 際 裁 判 管 轄 の判 断 の枠 組 み

国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 の 枠 組 み につ い て 、 財 産 法 関係 に 関 す る事 件 に対 す る 初 め て の 最 高 裁 昭 和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決(19)が、 次 の よ う

に説 示 した こ と は周 知 の とお りで あ る。

《判 旨》 「思 う に、本 来 国 の裁 判権 はそ の主 権 の一 作 用 と して され る もの で あ り、裁 判権 の及 ぶ範 囲 は原則 と して主 権 の 及ぶ 範 囲 と同一 で あ るか ら、 被告 が外 国 に本 店 を有 す る外 国法 人 であ る場 合 はそ の法 人 が進 んで 服 す る場 合 の ほか 日本 の裁 判 権 は及 ば ない のが 原則 で あ る。 しか しなが ら、 そ の例 外 と して、 わが 国 の領 土 の 一部 で あ る土 地 に 関す る事 件 そ の 他 被 告 が わが 国 となん らか の法 的 関連 を有 す る事 件 につ い て は、被 告 の 国籍 、所 在 の い か ん を問 わず 、 そ の者 をわが 国 の裁 判権 に服 させ るの を 相 当 とす る場 合 の あ る こ とを も否定 し難 い ところ で あ る。 そ して、 この 例 外 的扱 いの 範 囲 につ い て は、 こ の点 に 関す る 国際 裁 判管 轄 を直接 規 定 す る法 規 もな く、 また 、 よ るべ き条 約 も一 般 に承 認 され た 明確 な 国際 法 上 の原 則 もい まだ確 立 して いな い現 状 の も とにお い ては 、 当事 者 間の公 平 、 裁判 の適 正 ・迅 速 を期 す る とい う理念 に よ り条 理 に したが っ て決 定 す るのが 相 当で あ」 る。 「わが民 訴法 の 国 内の土 地管 轄 に 関す る規定 、 た とえば 、被告 の居 所(民 訴法2条)、 法 人 その他 の 団体 の事 務所 又 は営 業 所(同4条)、 義 務履 行 地(同5条)、 被 告 の財 産所 在地(同8条)、 不 法

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桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

行 為 地(同15条)、 そ の他 民訴 法 の 規 定す る裁 判籍 のい ず れか が わ が国 内 にあ る と きは、 こ れ らに 関す る訴 訟 事 件 につ き、被 告 をわが 国 の 裁判 権 に服 させ るのが 右条 理 に適 う もの とい うべ きであ る。」

判 旨 は 、 説 示 の 前 半 部 分 で 管 轄 配 分 説 を採 用 す る か の よ う に仮 装 しつ つ 、 そ の 後 半 部 分 で 逆 推 知 説 を採 用 して い る よ う に解 す る こ とが で き る こ とか ら 、論 理 的 に一 貫 性 が な い と批 判 され る 。 さ らに 、 判 旨 の 立 場 か らは 、 外 国 法 人 で あ る被 告 が 日本 国 内 に事 務 所 ま た は営 業 所 を有 して い る 場 合 に は 、 そ の 日本 に お け る事 務 所 また は営 業 所 の 業 務 に 関 連 す る 事 件 で な い と きで も 、 日本 の裁 判 所 の 国 際 裁 判 管 轄 は肯 定 さ れ る こ と に な り、 そ れ が 国 際 裁 判 管 轄 の過 大 な拡 張 に展 開 さ れ る と も批 判 さ れ る 。 し か し、 「そ の 業 務 に 関 連 す る訴 訟 に 限 定 し た の は 、 事 務 所 ・営 業 所 が 日 本 にあ る とい う だ け で‑他 の何 の 関 連 も な い場 合 に‑日 本 の 裁 判 管 轄 権 を肯 定 す る こ と に 反 対 した の で あ っ て 、 た と え業 務 に 関 し な い訴 訟 で あ っ て も 、他 に 日本 と実 質 的 関 連 が あ る場 合 に も、 日本 の 裁 判 管 轄 権

を否 定 す る趣 旨 と解 す べ きで は な い(20)」と い わ れ て い る 。

こ う した と こ ろ か ら、本 件 の 判 例 研 究 にお い て 、次 の よ うな 見 解 に よ っ て 「特 段 の事 情 」 論 が 提 唱 さ れ た 。

「判 旨 は しか も、 判例 の常 套 文 句 で あ る 『原 則 と して 』 とか 『特 段 の事 情 が ない 限 り』 とい う語 を用 い て い ない。 そ の た め国 内土 地 管轄 の 規 定 を その まま適 用す る と不 都 合 が 生 じる場合 に、修 正 す る余 地 が 全 くな く な っ て しまって い る。」 「本 件 で … …損 害賠 償 額 の 点が 最 も争 点 とな る こ とが予 想 さ れ る場 合 は 、損 害 賠 償 額 につ い て の証 拠 の収 集 の便 宜 か ら、

日本 にお ける営 業 所 を理 由 に 国際 裁判 管 轄 権 を認 め る場 合 は特 段 の事 情 の ない 限 り日本 にお け る営 業所 の業務 に 関す る もの に限定 され るが 、 そ の特 段 の事 情 にあ たる と して 例外 的 に本件 を処 理で きた ので は な いだ ろ うか(21)」

「外 国会社 を被告 とす る訴 は、 日本 が不 法行 為 地で あ り、証 拠 蒐集 に便 宜 で あ る とか、日本 にあ る営業 所 が 関与 した もの で あ る とか 、よ り一 般 的 に、

8

(9)

国際 裁 判 管 轄 の 判 断 に お け る 「特 段 の事 情 」 の 審査(廣 江 健 司)

日本 の裁 判 管轄 権 を認 め ない と、 当事 者 間 の公 平 、裁 判 の 適正 ・迅 速 と い う理 念 を実 現 しえ ない とい う特段 の事 情 の ない か ぎ り、 た ん に外 国会 社 の営 業所 が 日本 に設 置 され てい る とい うだ けの 理 由 か らで は、 日本 の 裁判 所 の裁判 管 轄権 を認 め るべ きで はな い と考 え られる。(22)」

民 事 訴 訟 法 の 土 地 管 轄 に 関 す る 規 定 を一 応 の 基 準 と しつ つ 、 「特 段 の 事 情 が ない 限 り」 とい う制 限 を付 す こ と に よ っ て 、 国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 に修 正 ま た は調 整 を加 え る こ と は 、従 来 か らの 諸 見 解 の 基 本 的 な処 理 方 法 と も合 致 す る と い え よ う。

最 高 裁 昭 和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決 お よ び そ の 判 例 研 究 か ら、

国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 の枠 組 み は 、 管 轄 配 分 説 に基 づ い て 条 理 に従 っ て 判 断 す る と し、 逆 推 知 説 に 基 づ い て 民 事 訴 訟 法 の 土 地 管 轄 に関 す る規 定 の 裁 判 籍 が 日本 国 内 に あ り、 「特 段 の 事 情 が な い 限 り」、 国 際 裁 判 管 轄 を 肯 定 す る と い う こ とで あ り、 逆 に 、 「特 段 の 事 情 」 が あ る と き は、 国 際 裁 判 管 轄 を 否 定 す る と い う こ と に な る(23)。

この 「特 段 の 事 情 」 論 は 、 逆 推 知 説 的発 想 に従 っ た場 合 に生 じ得 る 国 際 裁 判 管 轄 の 拡 大 に対 す る 歯 止 め と して の 機 能 を有 す る こ と に異 論 は な い で あ ろ う(24)。「特 段 の 事 情 」 に よ る修 正 ま た は 調 整 は 、 条 理 に 従 っ た 修 正 や利 益 衡 量 に よる 調 整 と同 様 の機 能 を果 た す もの と思 わ れ る。しか し、

「特 段 の 事 情 」 の 審 査 が 「大 きな 法 的 不 安 定 を 生 ぜ しめ て い る とす る な らば 、 そ れ は 原 告 の 裁 判 を受 け る権 利 と い う視 点 か ら は 、 憂 慮 す べ き事 態 で あ る 」 か ら、 「今 後 の 対 応 と して 」 の 方 向 性 に は 「一 つ は 、 管 轄 配 分 説 の原 点 に 立 ち戻 り、 適 正 な国 際裁 判 管 轄 規 則 を定 立 した 上 で 、 そ れ 以 上 の事 案 毎 の 利 益 衡 量 判 断 は 不 要 」 とす る こ と 、 「一 つ は 、 『特 段 の 事 情 』 論 の 枠 組 を 維 持 しな が ら、 そ の妥 当 範 囲 の 目 的論 的 縮 小 を図 る」 こ とで あ る 、 と い わ れ て い る(25)。そ して 、 後 者 の方 向 か ら は 、 「い か に して 例 外 的利 益 衡 量 判 断 の 明 確 性 ・安 定 性 を高 め て ゆ くか 」が 問 題 とな り、「そ の 前 提 と して は 、 『特 段 の事 情 』 判 断 の 趣 旨 ・目 的 の 明 確 化 が 求 め られ 」 る と こ ろ 、 条 理 に 従 っ て 国 際 裁 判 管 轄 を 配 分 す る と い う見 解 お よ び裁 判 所 の 立 場 を前 提 とす る と、 「『特 段 の 事 情 』 判 断 に よ る調 整 作 業 は 、 傾 向

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桐 蔭 法 学12巻1号(2005年)

と し て 、 『最 も適 切 な 法 廷 地 を 選 ぶ 』 と い う方 向 に」 あ る もの と い わ れ て い る(26)。そ して 、 一 般 に 、 手 続 的 な 視 点 か ら 、審 理 の 順 序 の 選 択 は裁 判 官 に 任 され て い る も の の 、 国 際 裁 判 管 轄 に 関 して は 、 「特 段 の 事 情 」 の 判 断 の 拡 張 に よ っ て 予 測 可 能 性 ・明 確 性 が 裁 判 実 務 の な か で か な りの程 度 で 損 な わ れ て い る 、 と分 析 さ れ て い る こ と か ら、 審 理 の 順 序 の 自由 と

い う点 で は 放 置 され 得 な い の で あ り、 「は っ き り と例 外 性 の 枠 を 堅 持 し た 透 明 ・明 確 な運 用 で(27)」あ るべ きで あ る 、 と認 識 さ れ て い る 。

こ う した 認 識 の も とで も、 問題 は 、 い か な る 要 素 を 「特 段 の 事 情 」 と して 考 慮 す る か 、 と い う こ とで あ る。

(3)「 特 段 の 事 情 」 の 要 素 につ い て の 諸 見 解

「特 段 の 事 情 」 の有 無 の 決 定 は、 具 体 的 事 案 ご と に 当 事 者 間 の 公 平 、 裁 判 の 適 正 ・迅 速 を期 す る とい う理 念 に 反 す る か ど うか を判 断 す る ア ド・

ホ ッ ク 的 な解 決 で あ る か ら、 「特 段 の 事 情 」 論 は柔 軟 な例 外 条 項 と して 機 能 す る(28)。

ま ず 、 民 事 訴 訟 法 の 土 地 管 轄 に 関 す る規 定 は 、 国 際 的 規 模 に拡 大 し て 類 推 す る こ とが 考 え られ る もの の 、 これ は 、 国 内 法 を手 掛 か り と して 国 際 裁 判 管 轄 を考 え よ う とす る もの で あ っ て も、 土 地 管 轄 の 総 和 か ら逆 に推 知 して い く見 解 と は異 な る。 そ の 要 素 は 、 次 の よ う に考 え られ て い る(29)。第1に 、 適 正 な 裁 判 の 観 点 か ら、 正 確 な事 実 認 定 お よび 当 事 者 の 訴 訟 活 動 の充 実 の た め に、 係 争 物 の所 在 地 国 、 証 拠 の 収 集 の 容 易 な 国 、 当 事 者 の 生 活 ・経 済 活 動 の拠 点 の所 属 国が 考 え られ る。 第2に 、裁 判 の公 平 の 観 点 か ら、 民 事 訴 訟 法 の 土 地 管 轄 に 関 す る 規 定 を 国 際 裁 判 管 轄 に つ い て 類 推 さ れ る に して も、 若 干 の 修 正 が 必 要 で あ る。 第3に 、 裁 判 の 能 率 の観 点 か ら、 い ず れ の 国 に お い て裁 判 が 迅 速 に な され 、 か つ 、 強 制 執 行 を な し得 る か を考 慮 す る必 要 が あ る 。

つ ぎ に 、 国 際 裁 判 管 轄 を判 断 す る要 素 と し て 、 「特 段 の 事 情 」 の 要 素 と し て で は な い が 、 「裁 判 の 理 想 で あ る 適 正 ・公 平 ・迅 速 ・廉 価 とい う 価 値 を 出発 点 と して 論 じ られ る の が 一 般 で あ る(30)」と解 され 、 各 要 素 の重 要 性 に つ い て 議 論 の 余 地 は あ る もの の 、 次 の よ う に考 え られ て い る。 第

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国際 裁 判 管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の事 情 」 の審 査(廣 江 健 司)

1に 、 当事 者 間 の公 平 の 観 点 か ら、 被 告 の 保 護 、 す な わ ち 、 被 告 の 住 所 地(法 人 で あ れ ば 主 た る事 務 所 の 所 在 地)が 考 え られ る 。 た だ し、 他 国 で 訴 訟 を 追行 す る こ とは原 告 に も不 利 で あ る か ら、 原 告 の 立 場 に も配 慮 すべ き で あ る もの の 、 不 法 行 為 の 結 果 発 生 地 とか 被 告 の 営 業 所 の 所 在 地 とい っ た他 の 要 素 と組 み 合 わ さ れ て 原 告 の 保 護 を考 慮 す べ き で あ る。 第 2に 、適 正 な 裁 判 の 観 点 か ら、事 実 認 定 の適 正 と して 証 拠 方 法 の 集 中 地 、 法 解 釈 の 適 正 と して 準 拠 法 所 属 国 、当 事 者 の 訴 訟 活 動 の 充 実 と して 生 活 ・ 経 済 活 動 の 本 拠 地 が 考 え られ る 。 第3に 、 迅 速 ・廉 価(経 済 性)の 観 点

か ら、 公 平 ・適 正 の観 点 か らの もの と重 複 す る もの の 、 訴 訟 活 動 を 迅 速 ・ 経 済 的 に な し得 る と い う点 で 生 活 ・経 済 活 動 の本 拠 地 、 証 拠 調 べ 手 続 を 迅 速 ・経 済 的 に な し得 る とい う点 で 証 拠 方 法 の 集 中地 が 考 え られ 、 こ の 観 点 に独 自の もの と して は、 判 決 の 実 効 性 を確 保 す る こ とが で き る地 が 考 え られ る。 そ の 他 に 、 国 籍 、 自国 民 保 護 、 事 業 活 動 地 な ど も考 え られ る。 ま た、 予 測 可 能 性 も要 素 と して 考 え ら れ る が 、議 論 の 余 地 が あ る。

予 測 可 能 性 を で き る 限 り客 観 的 に事 実 関 係 か ら認 定 で き る とす れ ば 、 こ の 要 素 を も組 み 込 ん で考 慮 す べ きで あ ろ う。 これ らの 要 素 を 国 際 裁 判 管 轄 の 判 断 の 要 素 と して 認 め る か 、 どの程 度 まで 認 め る か につ い て は 、 見 解 の 相 違 が あ る で あ ろ うか ら、 「全 体 と して 矛 盾 の な い バ ラ ンス の とれ た 解 釈 論 を展 開 す る た め に は 、 き ち ん と した 解 釈 の 方 法 論(判 断 の枠 組 み)を 持 つ こ とが 望 ま しい とい う こ と に な ろ う(31)」とい わ れ て い る。

さ ら に 、 国 際 裁 判 管 轄 を決 定 す る に 当 た っ て 重 要 な 政 策 考 慮 と して 、 当 事 者 の 便 宜 ・公 平 ・予 測 可 能 性 、 裁 判 の迅 速 ・能率 ・公 正 、 判 決 の 実 効 性 、 事 件 に 関 連 を有 す る 国 の 利 益 、 準 拠 法 選 定 との 関 連 が 挙 げ られ て い る(32)。これ らの う ち 、 当 事 者 間 の 便 宜 ・公 平 と して 「原 告 、被 告 間 の 経 済 力 の 差 異 、そ こ か ら生 じ る訴 訟 追 行 力 の 差 異 を考 慮 す る(33)」こ とで あ る 。 準 拠 法 選 定 との 関連 と して は 、 こ れ を 「法 選 択 的 要 素 を どの 程 度 まで 管 轄 の 決 定 に考 慮 す べ きか 」 とい う問 題 と理 解 して 「渉 外 事 件 で は ど こ の 国 の 裁 判 所 に事 件 が 係 属 す る か に よ って 適 用 され る 国 際 私 法 と実 体 法 が 異 な っ て くる 」 とい う理 由 か ら、 国 際 裁 判 管 轄 の 「決 定 が 同 時 に適 用 さ れ る 法 を決 定 す る役 割 を担 って い る とい う側 面 を 無 視 す べ きで な い(34)」と

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桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

も い わ れ て い る。

要 す る に 、 こ れ ら諸 見 解 か ら は 、 当 事 者 間 の 公 平 、 裁 判 の 適 正 ・迅 速 を期 す る とい う理 念 に反 す る 「特 段 の 事 情 」 と して 、 当事 者 間 の 公 平 の 観 点 か らは 、 被 告 の 保 護 の 要 請 を考 慮 しつ つ 、原 告 の立 場 に も配 慮 す る こ と、 裁 判 の 適 正 ・迅 速 の 観 点 か ら は 、 証 拠 方 法 の 集 中 地 を 中 心 に考 慮 しつ つ 、 当 事 者 の 訴 訟 活 動 の た め の 当事 者 の 生 活 ・経 済 活 動 の 本 拠 地 に も配 慮 し、 判 決 の 実 効 性 を確 保 す る こ とが で き る地 とい っ た 要 素 を も検 討 す べ き こ と に な ろ う。 そ して 、「特 段 の 事 情 」の 「類 型 化 の方 法 に は様 々 な もの が 考 え られ る の で あ り、 そ の 作 業 と並 行 して 、 考 慮 さ れ る べ き要 素 や そ の 軽 重 を分 析 し、 予 見 可 能 性 を高 め て ゆ く必 要(35)」が あ る 。 そ の必 要 の た め に 、 そ して 、 原 告 はい か な る事 実 につ い て 主 張 ・立 証 し、 被 告 は そ れ に対 して どの よ うに 抗 弁 す る か 、 とい う問 題 の た め に は 、 具 体 的 に 「特 段 の 事 情 」 の 内 容 、 す な わ ち 、 「特 段 の 事 情 」 の 要 素 に つ い て 裁 判 例 を検 討 す る 必 要 が あ ろ う。

3裁 判 例

先 の 最 高 裁 昭 和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決 を契 機 と して 「特 段 の事 情 」 論 が 提 唱 され 、下 級 審 裁 判 例 が 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 を採 用 し、

先 の 最 高 裁 平 成9年11月11日 第 三 小 法 廷 判 決 が こ れ を 宣 明 した こ とか ら、 こ れ ら判 決 の 前 後 に区 分 して 、 ② 判 決 お よび⑪ 判 決 を除 き、 裁 判 例 の 「特 段 の 事 情 」 の要 素 につ い て 判 示 して い る 部 分 の み を検 証 す る 。 す で に 、 裁 判 例 か ら、 国 際 裁 判 管 轄 に 関 す る 「特 段 の 事 情 」 論 に つ い て は(36)、さ らに 、典 型 的 な逆 推 知 説 の 立 場 、逆 推 知 説 に加 え て 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 を採 用 す る立 場 、 管 轄 配 分 説 に 近 い 立 場 に つ い て は(37)、そ れ ぞ れ 解 説 また は検 討 が 加 え ら れ て い る。 な お 、 「『特 段 の事 情 』 論 は、 東 京 地 裁 を 中 心 とす る 下 級 審 判 決 の 主 流 とい うべ きか も知 れ な い(38)」と観 測 さ れ て い る に も か わ ら ず 、 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 を採 用 して い な い裁 判 例 も散 見 され る(39)。

国 際 裁 判 管 轄 に 関 す る判 断 の 枠 組 み に つ い て 典 型 的 な 裁 判 例 と し て 、 東 京 高 裁 平 成12年12月20日 判 決(40)は、 次 の よ う に説 示 して い る 。

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国 際 裁 判管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の事 情 」 の審 査(廣 江健 司)

《判 旨》 「国 際裁 判 管轄 の有 無 につ い て は国 際 的 に承 認 され た一 般 的 な準 則 が存 在 せ ず 、国 際 的慣 習法 の成 熟 も十 分 で ない た め、 当事 者 間の公 平 や裁 判 の適 正 ・迅速 の 理念 に よ り条理 に従 って決 定す る のが相 当 であ り、

我 が国 の 民事 訴 訟法 の規定 す る裁判 籍 の いず れ か が我 が 国 内 にあ る とき は、 原則 と して 、我 が 国 の裁 判所 に提 起 された 訴訟 事 件 につ き被 告 を我 が 国の裁 判 権 に服 させ る のが 相 当 であ るが 、我 が国 で 裁判 を行 うこ とが 当 事 者 間 の公 平、 裁判 の適 正 ・迅 速 を期 す る とい う理念 に反 す る特 段 の 事 情 が あ る と認 め られ る場 合 に は、我 が 国 の 国際 裁判 管 轄 を否 定 すべ き で あ る(最 高 裁 昭和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決 ・民 集35巻7号 1224頁 、最 高裁 判 所 平成9年11月11日 第 三小 法 廷 判 決 ・民 集51巻10 号4055頁 参 照)。」

判 旨 は、 先 の 最 高 裁 平 成9年11月11日 第 三 小 法 廷 判 決 に 従 っ て 「国 際 裁 判 管 轄 を 直 接 規 定 す る法 規 もな く(41)」とい う理 解 は して い ない 。 しか し、 こ の 判 断 の枠 組 み につ い て 、 判 例 法 が 一 応 は確 立 して い る、 とい え る で あ ろ う。 以 下 で は 、 本 稿 の 目的 の た め に 、 判 決 文 の こ の判 断 の枠 組 み の 後 に 続 く部 分 、 す な わ ち 、 具 体 的事 案 へ の 当 て は め の 部 分 を検 証 す る 。

(1)最 高 裁 昭和56年10月16日 第 二 小 法 廷 判 決 以 降 の 裁 判 例

① 東 京 地 裁 昭 和57年9月27日 中 間 判 決(判 時1075号137頁 、 判 タ 487号167頁)

《判 旨》 「民 事 訴訟 法4条3項 〔現 行 の第4条 第5項 に対応 。〕 に よる裁判 籍 が 日本 国 内 に存 す る」。 「被 告 が 世 界 的規模 で営 業活 動 を行 っ てい る 国 際 航空 運 送 会社 であ る」 とい う 「被 告 の企 業組 織 を もって す れ ば、 日本 に営 業 所 が存 し、 しか も… … 〔関係 者 〕 と被 告 の 間 の運 送契 約 上 到達 地 が 日本 国 内 の空 港 と され て い る… …以 上 、必 要 な 防禦 活 動が 不 可 能 ない しは著 し く困難 で あ る とは考 え られず 、 若干 の不 都 合 は、被 告 が世 界 的 活 動 に よっ て利益 を得 て い る こ との反 面 にお い て生 ず る負 担 と して、 こ

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桐 蔭 法 学 玉2巻1号(2005年)

れ を 受 忍 す べ き で あ る。」 「原 告 が 大 規 模 な 損 害 保 険 会 社 で あ る」 とい う

「事 実 を も っ て 、 日本 の 裁 判 所 の 管 轄 権 を認 め る こ とが 原 被 告 間 の公 平 を 著 し く害 す る と は い え な い 。」 「証 拠 調 べ に つ い て も 、 前 記 の 如 き 原 ・被 告 の 能 力 に 鑑 み れ ば 、 裁 判 の 適 正 ・迅 速 を著 し く害 す る ほ ど 困 難 で あ る

と は 思 わ れ な い 。」

本 件 は 、 「特 段 の 事 情 」 の 審 査 を初 め て採 用 した 裁 判 例 で あ り、 被 告 の 企 業 組 織 や 原 告 の大 規 模 な損 害 保 険 会 社 で あ る とい う 当事 者 双 方 の 資 力 を比 較 衡 量 し、 また 、 証 拠 調 べ の 点 で 当 事 者 双 方 の 能 力 か ら裁 判 の 適 正 ・迅 速 を害 す る ほ ど 困 難 で は な い 、 とい う事 情 か ら、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 した 。

東 京 地 裁 昭 和59年2月15日 判 決(判 時1135号70頁 、 判 タ525号 132頁)

《判 旨 》 「国 際 的 観 点 か ら配 慮 し」 「条 理 に反 す る 結 果 を 来 す と認 め ら れ な い 限 り、 こ れ に よ り裁 判 籍 が 国 内 に 認 め ら れ る 場 合 に は 、 わ が 国 に裁 判 管 轄 権 を 認 め る の が 相 当 で あ る 。」 「被 告 の み な ら ず 、 原 告 に あ っ て も証 拠 蒐 集 、 訴 訟 活 動 に つ い て カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 裁 判 所 が 便 宜 で あ る こ と は 明 ら か で あ る う え 、 わ が 国 に お い て も管 轄 を認 め る と き に は 、 判 決 が 矛 盾 、 抵 触 す る お そ れ も あ り、 ま た 被 告 に 二 重 に 訴 訟 追 行 の 負 担 を 強 い る こ と に な る か ら、 … … 条 理 に 従 え ば 、 わ が 国 に 被 告 の 『事 務 所 』 が 存 在 す る こ と を も っ て 裁 判 管 轄 権 を認 め る こ とが で き な い 。」

本 件 は 、 国 際 的 訴 訟 競 合 の 事 案 で あ り、 「国 際 的観 点 か ら配 慮 し」 て 、 そ の うえ で 、 証 拠 蒐 集 お よ び訴 訟 活 動 に つ い て カ リフ ォル ニ ア 州 の裁 判 所 が 便 宜 で あ る 、 と い う事 情 か ら 、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め ら れ る と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を否 定 した 。 本 件 は 、 比 較 衡 量 説 に 「特 段 の事 情 」 の 審 査

を加 え た もの と解 さ れ る。

③ 東 京 地 裁 昭 和59年3月27日 中 間判 決(下 民 集35巻1〜4号110頁)

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国 際裁 判 管 轄 の 判 断 にお け る 「特段 の事 情 」 の 審査(廣 江 健 司)

《判 旨》 「民 事訴 訟 法 第15条 第1項 〔現行 の第5条 第9号 に対応 。〕 に よ る裁 判 籍 が 日本 国 内 に存 す る」。「被 告 は全 世 界 を自 由 に航 行 しうる航 空 機 の製造 等 を業 とす る大 資本 の会社 で あ り、また、同 じく航 空機等 の製造 ・ 販 売 を業 とす る被 告 の 全 額 出資小 〔子 〕会 社 … …が 支店 を 日本 に設 置 し て い る こ と、 原告 らは不 法 行為 地 で あ る 日本 国 内 に住所 を有 してい るこ と、本 件 事 故発 生 後航 空 自衛 隊 の事 故調 査 委員 会 に よ り墜 落原 因の調 査 が 行 わ れて い る こ と」 の 「事実 に照 らせ ば 、 わが 国裁 判 所 で本 件 を審 理 す るこ とが 、必 要 な 防禦 の機 会 を奪 わ れ る程 の不利 益 を被 告 に課 す もの とは認 め 難 く、 また証 拠 調 につ い て裁 判 の適 正 、迅 速 を害 す る程 の不 都 合 を生 じさせ る もの と も言 いが た い。」

本 件 は、 被 告 が 大 資 本 の 会社 で あ る こ と 、被 告 の全 額 出資 子 会 社 が 支 店 を 日本 に設 置 して い る こ と、 原 告 らが 不 法 行 為 地 で あ る 日本 国 内 に住 所 を有 して い る こ と、本 件 事 故 発 生 後 航 空 自衛 隊 の 事 故 調 査 委 員 会 に よ

り墜 落 原 因 の調 査 が 行 わ れ て い る こ と とい う事 実 か ら、被 告 に必 要 な 防 禦 の 機 会 を奪 うほ ど の不 利 益 を 課 す もの で は な く、 ま た 、 証 拠 調 べ に不 都 合 が 生 じ な い の で 、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 した。

東 京 地 裁 昭 和61年6月20日 判 決(判 時1196号87頁 、 判 タ604号 138頁)

《判 旨 》 「特 段 の 事 情 と は 、 わ が 国 の 裁 判 所 に 管 轄 権 を認 め る こ とが 、 当 該 訴 訟 に お け る 具 体 的 事 実 関 係 に 照 ら して 、当 事 者 間 の 公 平 、裁 判 の 適 正 ・ 迅 速 を 期 す る と い う理 念 に 反 す る結 果 と な る よ う な 事 情 を 意 味 す る 。」 被 告Aに は 「普 通 裁 判 籍 が 認 め ら れ る」。 被 告Bに 対 す る 請 求 に係 る 訴 え は被 告Aに 対 す る 「請 求 に係 る訴 に 併 合 し て 提 起 さ れ た も の で あ り、か つ 、 両 請 求 は 本 件 事 故 とい う 同 一 の 原 因 に基 づ く損 害 賠 償 の 請 求 で あ る か ら、

そ の 訴 に つ い て は … … 併 合 請 求 の 裁 判 籍 が 生 じ る 余 地 が な い で は な い 。」

「原 告 らが 日本 に住 所 を有 す る こ と は … … 認 め ら れ る の で 、 わ が 民 法484 条 に よ れ ば 、 本 件 の 被 告 ら に対 す る 訴 は … … 義 務 履 行 地 の 裁 判 籍 が 認 め

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られ る余 地 も全 くない とはいい切 れ ない」。 裁判 の適正 ・迅 速 の観 点 か ら

「本件 事故 の原 因 を審 理 す るた め に重要 な証 拠 な い し証 拠方 法 は 、い ずれ も台 湾 に存 在 す る もの と推 認 され る とこ ろ、 わが 国 と台 湾 の 間 には現 在 正常 な国 交が な く、 これ らの証 拠 な い し証拠 方 法 をわが 国 の裁 判所 が司 法 共助 に よ り利 用 す る こ とがで きな い こ とは 当裁 判所 に顕 著 で あ る。 し か し、 これ らの証 拠 を わが 国 の裁 判所 が使 用 で きない とす れ ば 、… … わ が 国 の裁 判所 が証 拠 に基 づ く適 正 な裁判 を行 うこ と は著 し く困難 で あ る とい わ ざ る をえ ない 。」 「本 件訴 訟 をわ が 国の 裁判 所 にお いて 審 理、 判 断 す る場 合 に は、裁 判 の適 正 を期 す る とい う理念 に反 す る結 果 とな るお そ れが あ る」。 当事 者 間の公 平 の観 点 か ら、原 告 らはす で にア メ リカ合 衆 国 カ リフ ォルニ ア州 の連 邦 地 方裁 判 所 に被告 らお よび訴 外C航 空 を被 告 と して本 件事 故 に基づ く損害 賠 償 を請 求 す る訴 え を提 起 し、 同裁 判所 は昭 和57年4月27日 に台 湾が 適切 な法 廷 地で あ る と して フ ォー ラ ム ・ノ ン ・

コ ンヴ ィニ エ ンス(不 便 宜 な法 廷 地)を 理 由 に訴 え を却 下 し、台 湾 の裁 判所 が 右訴 えにつ い て管轄 を有す る旨 を示 して い る。 同裁 判 所 の 「『意見 及 び命 令 』 で は、 台 湾 にお い て は、支 払 う資力 の ない者 につ い て は 『提 訴料 』の支 払が 免 除 され る… …可 能性 が あ る ことが指 摘 され て いる」。 「台 湾 の裁 判 所 が時 効 期 間 の経 過 を理 由 に原 告 らの請 求 を棄 却 す る可 能 性 に つ い て は、被 告 らが 本訴 にお い て、 本訴 の取 下又 は却 下判 決 確定 後6か

月以 内 に原 告 らが 台 湾 で本 件 事故 に関 す る損 害賠 償 請 求 の訴 を提 起 した 場 合 には、 台湾 にお け る 同請 求 につ い て の時 効 の利 益 を一 切 放棄 す る 旨 を述べ てい る」。 原告 らが台 湾 の裁判 所 におい て勝 訴 した場 合 のそ の判 決 の執 行 の可 能 性 につ いて 「被 告 らは、 前 訴 にお い て 『被 告 らは、原 告 ら が 台湾 の裁 判 所 に提 起 す る訴 訟 につ き台 湾 の裁 判所 が 下 す か もしれ ない 被 告 ら敗 訴 の判 決 を履行 す るこ とに 同意す る。』 旨の保 証 書 を提 出 した」。

「以 上 の事実 を考慮 す る な らば、原 告 らが 台湾 におい て本件 事 故 に関す る 損 害賠 償 請 求 の訴 を提 起 す べ きで あ る とす る こ と は、格 別原 告 ら に とっ て不 公 平 、不 当で あ る とい うこ とに は な らない」。

本 件 は 、 事 故 原 因 を 審 理 す る た め に 重 要 な証 拠 な い し証 拠 方 法 は い ず

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国際 裁 判 管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の 事 情」 の審 査(廣 江健 司)

れ も台 湾 に存 在 す る もの と推 認 さ れ る と こ ろ 、 日本 国 と台 湾 の 間 に は 正 常 な 国 交 が な く、 こ れ ら の証 拠 な い し証 拠 方 法 を 日本 の 裁 判 所 が 司 法 共 助 に よ り利 用 す る こ とが で きな い の で 、 証 拠 に基 づ く適 正 な 裁 判 を行 う こ と は著 し く困 難 で あ る 、 とい う事 情 か ら、 また 、 原 告 らが 台 湾 に お い て 損 害 賠 償 請 求 の 訴 え を提 起 せ ざ る を え な い場 合 で も、 台 湾 で は資 力 の 乏 しい者 に は提 訴 料 の 支 払 が 免 除 さ れ る こ と、 被 告 らが 台 湾 で の 時 効 の 利 益 を放 棄 す る こ と 、原 告 らが 台 湾 の 裁 判 所 に お い て勝 訴 した 場 合 に お い て 被 告 らが 同判 決 を履 行 す る こ とか ら、 原 告 らが 台 湾 にお い て 損 害 賠 償 請 求 の 訴 え を提 起 す べ きで あ る とす る こ と は 原 告 ら に と っ て不 公 平 に は な ら な い 、 と い う事 情 か ら、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ る と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を否 定 した。

東 京 地 裁 昭 和62年5月8日 中 間 判 決(判 時1232号40頁 、 判 タ 637号87頁)

《判 旨》A航 空 に は 「民 事 訴 訟 法4条 〔現 行 の 第4条 第4項 に対 応 。〕 の 普 通 裁 判籍 が 日本 国 内 に存在 」 し、 ワル ソー条約 「28条に よる裁判 権 が 日本 に存 在 す る」。 「被 告 に対 す る訴 につい て わが民 事訴 訟 法21条 〔現 行 の 第7条 に対応 。〕 の併 合 請求 の 裁判 籍 が 日本 国内 に あ る」。 当事 者 間 の 公 平 の観 点 か らA航 空 「に対 す る請 求 と被 告 に対 す る請 求 とは、本 件 事 故 とい う同一 の事 実 を原 因 とす る もので あ る。 …… 同一事 故 を原 因 とす る訴 訟 につ い て別 々 に訴 を提 起 しな けれ ば な らな い とす る の は、原 告 ら に と って負 担 が著 し く大 きい」 の に対 し、被告 が我 が 国 にお い て応 訴 を 余 儀 な くされ る こ と に よ り相応 の不 利益 を受 け る こ とは否 定 で きない と して も、原 告 らの右 負担 に比 して、 なお 受 忍 すべ き程 度 の不利 益 とい う べ きで あ る」。裁 判 の適 正 の観 点 か らA航 空 「に対 す る請 求 と被 告 に対 す る請 求 とを別 々の裁 判所 で審理 ・判 断 した場 合 に は、 ……裁 判 の矛 盾 ・ 抵 触 が起 き るお それ が あ」 る。 スペ イ ンにお い て発 生 した本 件 事 故 の発 生 状 況 、被 告 の責 任 の有 無 等 につ い て判 断 す る ため に必 要 な証 拠 の うち ス ペ イ ンにおい て のみ 取調 べ が 可能 で あ り 「原 告 ら、被 告及 び… … 〔A〕

航 空 が 当裁 判所 に提 出 で き ない証 拠 が存 在 す る とは 考 え難 い とこ ろで あ

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桐 蔭法 学12巻1号(2005年)

る し、場 合 に よっ て司 法 共助 に よ りス ペ イ ンにお け る証拠 調 を嘱託 す る こ とも可 能 であ る 。 また 、原 告 か ら証 拠 と してス ペ イ ン政 府 の運 輸 ・観 光通 信 省 民 間航 空 局事 故 調査 委 員 会作 成 にかか る技術 報 告 書が 提 出 され て お り、 これ に よっ て本 件事 故 が 生 じた状 況 、そ の原 因及 び そ の結 果等 は 明 らか にな る もの と考 え られ る。 そ うす る と、 本件 事 故 につ いて の証 拠 が スペ イ ンに存 在す る こ とは、 わ が 国の 裁判 所 が 本件 訴 につ い ての事 実 認 定 をす る うえで そ れ程 重 大 な支 障 を来 す もの で はな い。」 「わが 国 の 裁 判所 にお い て本 件 訴 を審 理 した場 合 に不 法行 為 につ い て の準 拠法 と し てス ペ イ ン法 を適 用 す る とい う事 態 も予想 され るが 、 わ が 国の 裁判 所 が スペ イ ン法 を適正 に適用 す る こ とは必ず しも困難 な こ とで は ない」。裁 判 の迅 速 の観 点 か ら 「原 告 らは多 数 で あ り、 その 損害 額 につ い て は、原 告 らが 住 所 を有 す る わが 国 で証 拠 調 を行 った ほ うが は るか に迅速 な裁判 を 行 う こ とが で きる。」

本 件 は 、 被 告 の 応 訴 の 不 利 益 と原 告 ら の 訴 え 提 起 の 負 担 と を比 較 衡 量 して 、被 告 の不 利 益 が 受 忍 す べ き程 度 の もの で あ る と し、 ま た 、A航 空 に対 す る請 求 と被 告 に対 す る 請 求 と を別 々 の 裁 判 所 で 審 理 し た場 合 に

は 、 裁 判 の 矛 盾 ・抵 触 が 生 ず る お そ れ が あ り、 さ ら に、 本 件 事 故 の 原 因 等 に 関 す る証 拠 が 専 らス ペ イ ン国 内 に 存 在 す る もの の 、 裁 判 所 に提 出 で き な い 証 拠 が 存 在 す る と は考 え 難 い し、 司 法 共 助 に よ りス ペ イ ンに お け る証 拠 調 を嘱 託 す る こ と も可 能 で あ る な ど と い う事 情 を考 慮 し、 ま た 、 日本 の 裁 判 所 が 本 件 訴 え を 審 理 す る 場 合 に 、 不 法 行 為 の準 拠 法 と して ス ペ イ ン法 を適 用 す る こ と も予 想 さ れ る もの の 、 裁 判 所 が ス ペ イ ン法 を適 正 に適 用 す る こ とは 困 難 で は な い と し、そ の う え 、原 告 らが 多 数 で あ り、

損 害 賠 償 額 に つ い て 日本 に お い て証 拠 調 べ を行 う こ とに よ り迅 速 な裁 判 が 可 能 で あ る 、 とい う事 情 か ら、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 した 。

東 京 地 裁 昭 和62年6月1日 中 間 判 決(判 時1261号105頁 、 判 タ 641号269頁 、 金 判790号32頁)

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国 際裁 判 管 轄 の 判 断 に お け る 「特 段 の事 情 」 の審 査(廣 江 健 司)

《判 旨 》 共 同不 法 行 為 を事 由 とす る共 同被 告 間 にお い て 「一 方 が 他 方 の 100パ ーセ ン ト出資 の 子 会社 で あ り、子 会 社 の役 員 の 全 員 を親 会 社 の従 業 員 が兼 務 して い る場合 には 、事 実 上子 会社 は親 会社 の指 示 に よ って動 くこ とに な り、実 質 的 に は親 会社 と子会 社 の 関係 は、本 店 ・支 店 の 関係 に近 づ く」。 「共 同被 告 間 に右 の よ うな 関係 が あ る場合 、 親 会社 所 在 地 の 裁 判所 に訴 え が提 起 され た と して も、海 外 の子 会 社 は 、親 会社 と連絡 を 取 る こ とに よ り、代 理人 を選任 す るこ とが で きる し、本 件 不法 行 為 に お ける 審理 にお い て最 も重 要 な証 人 と して証 拠調 べ が予 想 され る… …及 び

… は現 在 日本 に居 住 して い るの で あ るか ら、証拠の収集その他裁判活 動 に それ ほ どの支 障 は生 じない」。

本 件 は 、 海 外 の 子 会 社 が 日本 に お け る代 理 人 の 選 任 、 重 要 な 証 人 の 居 住 、証 拠 の 収 集 そ の他 裁 判 活 動 に支 障 は生 じな い 、 とい う事 情 か ら、「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 した。

東 京 地 裁 平 成 元 年3月27日 中 間 判 決(判 時1318号82頁 、 判 タ 703号264頁)

《判 旨》 「民 事訴 訟 法15条 〔現行 の第5条 第9号 に対応 。〕 の裁 判籍 が 日 本 国 内 にあ る」。 「被 告 が ア メ リカ合 衆 国 デ ラ ウ ェア州 法 に基 づ い て設 立 され、 同 国 ニ ュー ヨー ク州 に営 業 の本 拠 を置 く会社 で あ」 り 「世界 各 国 に雑 誌 『… …』 の各 国版 の発 行 等 を業 とす る子 会社 を有 す る世 界 的規 模 の 会社 で あ」 り日本 に 「そ の100パ ーセ ン ト出資 …… 子 会社 で あ る訴 外 会社 が存 在 」し「そ の子 会社 は現 在清 算 中で あ る」。 「本 件の 最大 の争 点 は、

訴外 会 社 の 閉鎖 が専 ら組合 つ ぶ しを 目的 と した偽 装 の もので あ る か否 か で あ る と解 され る とこ ろ、 この 争点 に関 す る主 要 な証 拠 方法 も、原 告 ら の損 害 につ いて の証 拠 方 法 も、 争点 の性 質上 原告 らの 住所 及 び訴 外 会 社 の本 店 の所 在 地 で あ る 日本 国内 にあ る と推認 で き、 また 、前 認定 の被 告 が世 界 的 な規 模 の企 業 で あ っ て、 日本 に も清 算 中 とはい え子 会社 を有 し て い る こ とか らす る と、被 告 が 日本 にお い て代理 人 を選任 し適切 な訴 訟 活動 を行 う ことは十 分 に可 能で あ る」。

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桐 蔭 法 学12巻1号(2005年)

本 件 は 、 争 点 に 関 す る 主 要 な 証 拠 方 法 お よ び 損 害 に つ い て の 証 拠 方 法 が 原 告 らの 住 所 地 お よび 訴 外 会 社 の本 店 の所 在 地 で あ る 日本 国 内 に あ り、 ま た 、被 告 の 企 業 規 模 か ら被 告 が 日本 に お い て 訴 訟 活 動 を行 う こ と は 十 分 に可 能 で あ る 、 と い う事 情 か ら、 「特 段 の事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を 肯 定 した 。

⑧ 東 京 地 裁 平 成2年10月23日 判 決(判 時1398号87頁 、 判 タ756号 261頁)

《判 旨》 被告 に は 「併 合 請 求 の裁 判籍 が 日本 国内 にあ る」。 訴 訟 追行 に対 す る各 当事 者 の負 担 の 観点 か ら 「原 告 が被 告 に対 して 新 た に訴 訟 を提 起 す る場 合」 に 「英 国 は原 告 の 住所 地 で もあ るか ら、英 国 の裁 判所 に提 訴 す る こ とは、 原 告 に とっ て格 別 負担 であ る とは言 え ない 。 また、香 港 の 裁判 所 に提 訴 す る と して も、 原 告 の本 店所 在 地 が英 国で あ る点 に鑑 みれ ば、 日本 の裁 判所 に おい て訴 訟 を追 行 した場 合 と比較 して 、訴 えの併 合 に よる同 時 審理 を受 け られ な い こ とに よ る負 担 が 増加 す る以上 に、原 告 が格 別 の不 利 益 を受 け」 ない か ら 「日本 の裁 判 所 に裁 判 権 を認 め ない こ とに よって 訴訟 追行 上原 告 が受 け るで あ ろ う不 利 益 は、 大 きい とは言 え ない。」 「被 告 は香港 に住 所 を有 す る個 人 で あ るか ら、 日本 にお いて応 訴 を余儀 な くされ た場 合、 同人 の蒙 る負担 が 大 きい」。 「原 告 の訴 え提起 の 便 宜 と被 告 の応 訴 にお け る不利 益 と を比 較 す る と、被 告 の 不利 益 が不 相 当 に大 きい」。裁 判 の適正 ・迅 速 の観 点 か ら 「原 告 の本件 訴 え と、 …… に 対 す る訴 え とは 、… … 同一 の原 因 に基づ く損 害賠 償 請 求 で あ る」 が 「双 方 の 訴訟 の争 点 は別 個 の もの で、 両 請 求 を併 合す る こ とに よ り統 一 的 な 認 定 ・判 断 を行 う必 要性 が 高い とは言 え ない」。 証拠 の所 在 につ い て、被 告 は ロ ン ドン 「市 内の ホ テ ル にお いて 盗 難 に遭 っ た もの で あ るか ら、 被 告 の過 失 の有 無 に 関す る証拠 は、被 告 本 人 を別 とすれ ば、 その ほ とん ど が英 国 内 に存 在 す る」。 防御 活動 につ いて 「本件 訴 え と… … に対 す る訴 え とは… … それ ぞ れ訴 訟 物 及 び争 点 を異 に して い るか ら、被 告 は 自己 の防 御 をほ とん ど… … の主 張 ・立 証 活動 に委 ね る こ とが で きな い」 か ら 「日

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国際 裁 判 管 轄 の判 断 にお け る 「特 段 の 事 情」 の 審査(廣 江 健 司)

本 の 裁 判所 に裁 判権 を認 め る こ とは、被 告 に は…… 不利 益 だけ を与 える 結 果 となる」。裁 判 の迅速 の観 点 か ら 「本 件 訴 え と…… に対 す る訴 え とが 争 点 を異 に して い る以上 、 両 請 求 を併合 審 理 す る こ とは、 か え って 審理 を遅 らせ る結果 を招 く」。 「日本 の裁 判所 に裁判 権 を認 め る こ とは、原 告 の受 ける便益 に比 較 して 、被告 に過度 の応 訴 の負 担 を負 わせ る」。

本 件 は 、訴 訟 追 行 に対 す る 各 当 事 者 の負 担 を比 較 衡 量 し、 被 告 が 日本 に お け る応 訴 を余 儀 な く され る場 合 に蒙 る負 担 は大 きい と し、双方 の訴 訟 の争 点 は別 個 の もの で あ り、 両 請 求 を併 合 す る必 要 性 は な く、 証 拠 が ほ と ん ど が イ ギ リス に存 在 す るか ら、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 す る こ と は 、 被 告 に は利 益 が な く、 また 、両 請 求 を併 合 審 理 す る こ とが 審 理 を遅 延 さ せ る、 と い う事 情 か ら、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国際裁 判 管 轄 を否 定 した 。

東 京 地 裁 平 成3年1月29日 判 決(判 時1390号98頁 、 判 タ764号 256頁)

《判 旨 》 「不 法 行 為 地 の 裁 判 籍 が 認 め ら れ る 」。 「ア メ リ カ 第 一 訴 訟 の 結 果 如 何 で 停 止 条 件 の 成 就 、 不 成 就 が 決 ま る よ う な 場 合 に は む し ろ ア メ リ カ で 審 理 を行 う の が 適 切 で あ る 。」 「ア メ リ カ の 訴 訟 が 先 行 し て 提 起 さ れ 、 準 備 書 面 の 交 換 、 証 拠 の 収 集 が 相 当 程 度 進 ん で お り、 した が っ て ア メ リ カ で 審 理 を行 う の が 便 宜 で あ っ た 。」 「審 理 の 重 複 、 判 決 の 抵 触 を避 け る と い う 見 地 か ら 、 訴 訟 追 行 に ど の 国 の 裁 判 所 が 最 も適 切 か 、 と い う観 点 か らの 検 討 が 必 要 で あ り、 本 件 で も、 国 際 裁 判 管 轄 を 決 定 す る 要 素 の1 つ と して 、 先 行 し て提 起 さ れ た ア メ リ カ 訴 訟 の 進 行 状 況 を も 考 慮 に 入 れ

る べ き で あ る 。」 「証 拠 は 、 ほ と ん ど ア メ リ カ 国 内 に あ り、 こ の 点 か ら も 審 理 は ア メ リ カ で 行 う の が 便 宜 で あ る。」 「原 告 は ア メ リ カ に 、 被 告 は 日 本 に 、 そ れ ぞ れ 財 産 、 営 業 所 や 事 務 所 、 関 連 会 社 等 を 有 し て い な い 」 か

ら 「相 手 国 で の 訴 訟 追 行 は 、 お 互 い に 負 担 に な る が 、 原 告 は 、 自社 の 製 品 を ア メ リ カ に 輸 出 して 利 益 を 上 げ た の で あ る か ら、 将 来 ア メ リ カ で 製 造 物 責 任 訴 訟 を提 起 さ れ る こ と も予 想 しえ た は ず で あ る 。」 「被 告 は 、 本

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桐 蔭 法 学12巻1号(2005年)

件 … … 訴 訟 を 日本 国 内 で 提 起 され る こ と な ど全 く の予 期 し え な か っ た で あ ろ う」 か ら 「被 告 に 日 本 国 内 で 応 訴 さ せ る の は 、 不 公 平 で あ る 」。

本 件 は 、不 法 行 為 地 の裁 判 籍 が 認 め られ る もの の 、 本 件 請 求 権 の よ う に 、 ア メ リ カ第 一 訴 訟 の結 果 如 何 で 停 止 条 件 の 成 就 、不 成 就 が 決 ま る よ う な場 合 に は、 合 衆 国 の 裁 判 所 で 審 理 を行 うの が 適 切 で あ り、 審 理 の 重 複 や 判 決 の 抵 触 の 回避 か ら 、訴 訟 追 行 にい ず れ の 国 の 裁 判 所 が 最 も適 切 か 、 とい う観 点 か らの検 討 が 必 要 で あ り、 そ れ ゆ え に、 先 行 して提 起 さ れ た ア メ リ カ訴 訟 の 進 行 状 況 を も考 慮 に 入 れ 、 原 告 が 合 衆 国 に 、 被 告 が 日本 に そ れ ぞ れ 財 産 、営 業 所 や 事 務 所 、関 連 会 社 等 を有 して い な い の で 、 相 手 国 で の 訴 訟 追 行 は お互 い に負 担 に な る が 、原 告 の 予 測 可 能 性 が あ り、

被 告 に 日本 国 内 で 応 訴 させ る の は 不 公 平 で あ り、 ま た 、 証 拠 が 合 衆 国 内 にあ り、審 理 を合 衆 国 の 裁 判 所 で 行 う の が 便 宜 で あ る 、とい う事 情 か ら、

「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ る と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を否 定 した 。

⑩ 東 京 地 裁(八 王 子 支 部)平 成3年5月22日 中 間判 決(判 タ755号 213頁)

《判 旨》 「民 訴 法8条 〔現行 の第5条 第4号 に対応 。〕 に規 定 す る裁判 籍 が あ る」。裁 判 の適 正 の観 点か ら 「① 本 件土 地 がハ ワイ州 に あ り、② その所 有 者 が ハ ワ イ州 法人 で 、③ 同社 の代 表 者 が 同地 に居 住 す る こ とは 、手 数 料 又 は手数 料 相 当損 害 金 の支 払 い を求 め る本 件 訴 え にお い て は、 背景 事 情 に しか 過 ぎない。」 「④ 被 告 は同州 に居住 す る アメ リカ人 で あ るが 、 日 本 国 との法 的 関連 が 強 く認 め られ る」。 「⑤ … …本件 に 関連 す る英 文 の書 証 は原 告 側 か ら も既 に 日本 語 の翻 訳 文付 きで 多数 提 出 済 であ るか ら、 こ の点 は 重要 視 すべ きで は ない 。」 「⑥ … …準 拠 法如 何 に よ り直 ち に 国際 裁 判 管 轄 に影 響 が あ る もので な い こ とは 自明 の 理 で あ る」。裁 判 の公 平 の 観 点 か ら 「③ 及 び④ で 主張 され る被 告 の 不利 益 は、… …本 件 の両 当事 者 及 び訴 訟代 理 人 らの力 量 と努 力 に よって 十分 対 処 す る こ とが可 能 で あ ろ う」。裁 判 の能率 の観 点 か ら「① 及 び② …… につい て は、本 中 間判決 に よ り、

当裁 判所 は本案 審 理 に直 ち に入 る予 定 で あ り、… …迅 速 な裁判 が 可 能 で

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国際 裁 判 管 轄 の 判 断 に おけ る 「特 段 の事 情 」 の 審査(廣 江 健 司)

あ ろ う。」 「③ … … 代 表 者 … … が ハ ワ イ 州 に 居 住 して い る と し て も 、 当 裁 判 所 に お い て 同 人 を証 人 と し て 直 接 尋 問 す る こ と が 必 要 で あ る か 否 か は 現 在 の と こ ろ 不 明 で あ る 」。 「被 告 と 日本 国 と の 法 的 関連 が 強 く認 め ら れ 」 る 。

本 件 は、 ① か ら⑥ まで の 要 素 の 重 要 性 を考 慮 しつ つ 、 「特 段 の 事 情 」 が 認 め られ な い と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を肯 定 した 。

⑪ 東 京 地 裁 平 成5年4月23日 判 決(判 時1489号134頁)

《判 旨》民 事 訴 訟 法 の 規 定 す る裁 判 籍 が 日本 国内 にあ る と きは 「民事 訴 訟 法 が 当該 裁 判籍 を認 め た趣 旨が 今 日の国 際社 会 の状 況 の 中 で 国際 裁判 管 轄 の決 定 につ いて は妥 当 しな い と考 え られ る場 合 や裁 判 管轄 権 を肯 定 す る こ とに よ りか えっ て条 理 に反 す る結 果 を生ず る こ とにな る場 合等 の 特 段 の事 情 が あ る場 合 を除 き、 日本 の裁 判所 に国 際裁 判 管 轄 を認 め る こ とが」 条理 に適 う。 「民事 訴訟 法 の土 地管 轄 の定 め に準 拠 した裁判 籍 を認 め る こ とはで きない」。 「仮 に本 件 にお いて何 らか の民 事 訴訟 法 上 の土 地 管 轄 が認 め られ る と して も、本 件 にお いて は 、準 拠法 が … …米 国 法 で あ る こ と、 本件 に関 す る証 拠 は ほ とん ど英 文 で作 成 され てお りか つ 米 国内 に存 在 す るこ と、被 告 が 日本 国内 に資 産 や営 業 所 を有 して い る証拠 は な い こ と、 本件 は… …米 国 会社 が発 行 す る株 券 を米 国内 で売 却 しよ う とし た とい う米 国内 にお け る経済 活 動 に関 す る紛 争 で あ り、米 国の 裁判 で は

…… 既 に決 着済 み であ る こ と等 の特 段 の事 情が 認 め られ」 る。

本 件 は、 「仮 に」 土 地 管 轄 が 認 め ら れ る と し て も、 準 拠 法 の 所 属 国 、 証 拠 の 所 在 地 国 お よび 経 済 活 動 の 本 拠 地 国が 外 国 で あ る こ とお よ び外 国 判 決 の存 在 等 の 「特 段 の 事 情 」 が 認 め ら れ る と して 、 国 際 裁 判 管 轄 を 否 定 した 。

東 京 地 裁 平 成7年4月25日 判 決(判 時1561号84頁 、 判 タ898号 245頁)

参照

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