算
著者 大島 堅一
雑誌名 經濟學論叢
巻 65
号 3
ページ 469‑491
発行年 2014‑03‑20
権利 同志社大學經濟學會
URL http://doi.org/10.14988/00027413
会計的手法を用いた再稼働後の原発の発電単価の試算
大 島 堅 一
1 は じ め に
東京電力福島第一原子力発電所事故(以下,福島原発事故)後,日本の原子 力発電所(以下,原発)の安全規制には,シビアアクシデント対策がない等,
本質的な問題があることが明らかになった.そのため,福島原発事故後,各 地の原発は,定期点検を済ませた後も再稼働ができなくなった.2013年7月 に原子力規制委員会によって策定された新規制基準は,旧安全基準の問題点 を克服したものと考えられていた.ところが,旧安全基準に含まれていた立 地審査指針が無くなっていたり,いくつかの重大な問題点が含まれていたり する等,新規制基準も,世界最高水準のものとは言いがたい(佐藤,2013). 他方で,原発の停止と,それにともなう火力発電の燃料費の増加がかさなっ たため,電力会社の経営状態は悪化の一途をたどった.これを打開するために,
電力会社は新規制基準に適合するための対策を行い,幾つかの原発について 再稼働に向けた安全審査の申請を行った.
世界最高の水準でないとはいえ,新規制基準に対応するためには,フィル ターベント装置や重要免震棟の設置,難燃性ケーブルへの交換のために巨額 の安全投資が必要である.また,シビアアクシデント対策を行うために委託 費も増加する.こうした安全投資や委託費の増加は,当然ながら,原発の発 電コストを引き上げる方向に働く.これにより,原発の経済性が損なわれる ことになる.
それでは,一定期間の停止と安全投資が行われた場合,原発の経済性は確 保されるのだろうか.この問いに答えるために,本稿では,電力各社のもつ個々
の原発について,一定期間停止し,かつ,安全投資を行った場合,どの程度 の発電単価となるのか試算する.その上で,電力各社の発電単価と各原発の 発電単価の評価を行う.
2 発電単価の定義と計算方法
2. 1 発電単価の定義発電単価を計算する前に,本稿における発電単価の定義を行う.本稿におい ては,発電にかかる直接,間接の費用を足し合わせた費用のことを発電費用と いい,送電端のkWhあたりの発電費用のことを発電単価とよぶことにする.
次に発電費用の中身についてであるが,発電費用には,発電に直接要する 費用と,社会の負担になっている費用(社会的費用)の2つの部分があるもの とする.このうち,発電に直接要する費用は,資本費,運転維持費,燃料費,
廃炉費用からなる.このうち燃料費は,原子力には特有の費用があり,核燃 料をつくるまでに必要なフロントエンド費用と,使用済燃料の処理・処分に 必要なバックエンド費用がある.
このうち,バックエンド費用の金額は,使用済燃料の処理・処分に関する 国の方針によって大きく変わる.また,廃炉費用には,原発を解体するために 必要な解体費用と,解体廃棄物を処分するための解体廃棄物処分費からなる.
他方,社会的費用は,政策経費と事故費用からなるものとする.政策経費は,
国が毎年の予算から研究開発のために支出する研究開発費と,原発立地自治 体に対して支払う交付金からなる.事故費用は,被害者に支払う損害賠償費 用と事故を収束させるために支払う事故収束費用とする.
2. 2 発電単価計算の方法
発電単価計算の方法には,大きく分けて,2つの方法がある1).
1) 発電単価計算の方法については,木村(2012)に詳しい.また木村(2012)は,コスト等検証 委員会が想定したモデルプラントのLCOEを計算し,その値が,コスト等検証委員会(2013)よ りも高くなることを示している.
第1は,OECD / IEA / NEAが用いている方法である.これは,新しく原発 を建設するケースを想定し,運転期間のうちにどの程度の発電コストとなる のか,過去および将来に発生するコストと発電量を,現在価値に割り戻して 計算する方法である.
これは,ある時点で新規原発を建設し,運転した場合,運転期間を通じて発 電単価となるのか評価するための方法である.この方法で得られる発電単価は Levelized Cost of Generating Electricity (LCOE)と呼ばれる.国際的に,原発の 経済性を測り,新規建設の是非を判断する際に用いられるのがこの方法である.
この方法で基礎となる費用は,キャッシュフローである.キャッシュフロー をベースにとるので,キャッシュフローが発生するタイミングが問題になる.
特に,建設費については,運転開始以前にキャッシュフローが発生するので,
現在時点の価値に変換する際には利息を考慮することになる.
発電単価を計算する第2の方法は会計的手法である.これは,キャッシュ フローではなく,電力会社の会計に現れる費用を基礎にする方法である.こ れによって,電力経営に及ぼす影響を把握することができる2).
LCOE方式と会計的手法の違いは,主に資本費に現れる.LCOE方式であ れば,実際のキャッシュフローを基礎に計算するので,過去の建設にあたっ ての費用と利息を組み込んで計算することができる.これに対し,会計的手 法においては,建設費は,実際にキャッシュフローが発生する時点ではなく,
運転開始後の減価償却費になって現れる.
3 本研究の方法
本研究においては,2. 2に示した2つの方法のうち,コスト等検証委員会 が用いた会計的手法を用いて計算することにする.なぜなら,残存簿価(後述)
2) この方法で代表的なのが,室田(1991,1993)であり,これを発展させ国家による研究開発や 立地対策のコストを加えたのが大島(2010,2011)である.これらは,会計的手法を使い,発電 単価の実績値を推計した.一方,コスト等検証委員会(2011)は会計的手法を用い,モデルプラ ントの発電単価を試算している.
の経営への影響を考慮することができるからである.
本稿とほぼ同じ問題意識をもつ研究としては,金子(2013)がある.金子(2013)
は,コスト等検証委員会が作成した発電コスト計算シートを用い,基本的条 件をコスト等検証委員会と同じにした上で,各原発の発電単価を計算してい る.ただし,金子(2013)は,停止時期の維持費についてどのように扱ってい るか不明であるし,維持費,燃料費(フロントエンド)についての電力各社の差異,
福島原発事故後の委託費の増大,福島原発事故の実際の費用等が考慮されて いない.これらを考慮することは,個々の原発の発電単価を精密に知る上で は必要であると考え,本稿では以下に示すような検討を加えた.
3. 1 試算にあたっての諸条件 3. 1. 1 再稼働年と停止時期の扱い
福島原発事故後,全国の原発は定期点検を終わった後も再稼働できない状 態が続いた.2013年7月の新規制基準の公表後,電力各社が再稼働の申請を 行っているが,少なくとも数カ月の審査期間を要するとされている.
そこで,本稿では,再稼働年が2014年,2015年,2016年になったケース の発電単価の計算を行う.これによって,再稼働時期がずれ込む効果を知る ことができる.
加えて,再稼働までの停止時期も維持費は必要であるから,その分の費用 を考慮するために,停止期間の費用も発電費用に含めることにする.
3. 1. 2 運転期間
本稿は,個別の原発について発電単価を計算するものであるが,原発によっ て運転開始時期が異なっている.本稿では,まず2012年に改正された原子炉 等基本法の趣旨に沿って,運転後40年を経た原発は廃炉にすることとし,再 稼働年に残された残存期間をもって運転期間とした.
3. 1. 3 その他の条件
発電単価試算にあたっての基本的条件のうち,固定資産税率(1.4%),廃炉
までの期間(7年)はコスト等検証委員会と同じ値を用いた.
他方で,法定耐用年数(減価償却期間)は15年(コスト等検証委員会では16年), 所内率,設備利用率は電力各社の過去10年の実績値(日本原子力発電について は過去4年間)の平均値とする.また割引率は3%とする.
3. 2 資本費
資本費は,建設費と固定資産税,設備の廃棄費用,安全対策費からなる.
3. 2. 1 建設費
電力各社には,原子力発電施設関連の残存簿価がある.本稿は,個別の原 発について発電単価を計算するものであるので,まず,各原発の残存簿価を 推計する.次に,この推計値を15年(残存運転年数が15年に満たない場合は残 存運転年数)に減価償却するものと仮定する.そして,年々の減価償却費を現 在価値に割り戻し,合計したものを建設費とする.
個々の原発の残存簿価は,これまでのところ公表されたことがない.だが,
有価証券報告書に記載されている電力各社の全ての原発を合計した残存簿価 合計は公表されている.そこで,各原発の設備容量と2013年3月末時点での 残存運転年数とで全原発の残存簿価合計を加重平均した値を,各原発の残存 簿価とした.ここで推計された残存簿価は実際の残存簿価とは異なっている と考えられる.今後,残存簿価の詳細が公開されることを期待したい.
3. 2. 2 設備の廃棄費用
設備の廃棄費用は,原発については特殊な扱いがなされている.すなわち,
原発は,放射能汚染されている部分が含まれているため,設備を解体するだ けでなく,放射性物質を取り除かなければならない.そこで,廃炉費用総額 に相当する額の引当金が,廃炉時点で満額計上されていることになっている.
この解体引当金の引当方法は,数式1にみるように,これまでは当該年 度の発電量に応じて当該年度の引当額を決めるという生産高比例法によって 行われてきた.ところが,ここで想定総発電量を決める際に,設備利用率を
76%としていたために,運転実態に合わず,多額の引当金不足が生じている.
各原発の引当不足額は2013年6月に資源エネルギー庁によって公表された(資 源エネルギー庁,2013, p. 17).
数式1 解体引当金の算定方法
引当額=総見積額×想定総発電電力量 累積発電電力量
−前年度残高
想定総発電電力量
=設備容量×40年×365日×24時間 × 設備利用率(76%)
今後,この不足が解消しない場合,現行の電気事業会計規則に基づけば,
廃炉時点に特別損失となり,この特別損失は電気料金の原価とはならない.
だが,本稿では,引当不足額もいずれ電力会社が何らかの負担をしなければ ならないものと考え,運転終了7年後に廃炉するものとし,この時点での廃 炉費用を現在価値に割り戻すことにする.
3. 2. 3 安全対策費
電力各社は,2013年7月に発表された新しい規制基準を満たすため,原子 力発電所について安全投資を行った.この額は,各種の報道によれば,全社 合わせて1兆円を超える規模とされてきた.
具体的にどの原発に対してどの程度の投資がされるかは発表されていない が,2012〜2013年に,電気料金の値上げ申請を行った電力会社(北海道電力,
東北電力,東京電力,関西電力,中国電力,四国電力,九州電力)については,値上 げ申請書類の中で福島原発事故を受けた安全投資額が示されている.
そこで,ここでは値上げ申請書類,各種報道記事を参考に,各原発の安全 投資額を推計し,それを基礎にkWh当たりの単価を試算する.各原発の推計 額は,第 1 表の通りである.ここでは,事故を起こした福島第一原発1〜4
第 1 表 各原発の安全対策投資推計額 会社名 発電所名 安全投資額
北海道電力 泊1 305 泊2 305 泊3 305 東北電力 女川1 342 女川2 428 女川3 428 東通1 428 東京電力 福島第一5 717 福島第一6 867 福島第二1 416 福島第二2 416 福島第二3 416 福島第二4 416 柏崎刈羽1 350 柏崎刈羽2 300 柏崎刈羽3 300 柏崎刈羽4 300 柏崎刈羽5 300 柏崎刈羽6 350 柏崎刈羽7 350 中部電力 浜岡3 667 浜岡4 667 浜岡5 667
会社名 発電所名 安全投資額 北陸電力 志賀1 225
志賀2 325 関西電力 美浜3 304 高浜2 304 高浜3 357 高浜4 357 大飯1 354 大飯2 354 大飯3 357 大飯4 357 中国電力 島根1 300 島根2 300 四国電力 伊方1 212 伊方2 212 伊方3 217 九州電力 川内2 470 玄海1 409 玄海2 409 玄海3 470 玄海4 470 日本原子力発電 東海第二 704 敦賀2 704
(出所) 電力各社値上げ申請資料,ロイター,『電気新聞』等の報道記事より推計.
(注) ここでは,福島第一原発1〜4号機及び2014年時点で運転開始後40年を経た原発について は廃炉とし,安全投資は行わないものと仮定した.
単位:億円
号機と,2014年の段階で運転開始後40年を経た原発については廃炉するも のと考え,安全投資額はないものと考える.こうして得られた推計値は正確 な数値とは言えないが,おおよその傾向を得るには十分であろう.電力各社が,
今後これらの安全投資額についての詳細を公表することに期待したい.
また,値上げ申請を電力会社が行ったのは規制基準公表前のものであり,
申請書類にはあくまで福島原発事故後の対応に必要な額であると書かれてい る.規制基準を満たすためにこの額で十分かどうかははっきりしない.
3. 2. 4 減価償却の方法
減価償却について,コスト等検証委員会は,「減価償却資産の耐用年数等に 関する省令」(平成22年3月31日財務省令第20号)の別表第8に記載された定 率法の償却率を使い,定率法で減価償却処理(償却率0.167,改訂償却率0.200,
保証率0.03217)を行っている.本稿でもこの方法をとる.
3. 3 運転維持費
本稿では,運転維持費を維持費,燃料費,業務分担費に分けて考える.
3. 3. 1 維持費
(1)維持費全般について
まず,維持費は,人件費(原発の運転に必要な人件費,給与手当,厚生費,退職 給与金),修繕費(原発の維持に必要な点検費用,修理費用など),諸費(廃棄物処理 費(放射性廃棄物を野即),消耗品費,賃貸料,委託費,損害保険料,雑給,雑税など)
からなる.コスト等検証委員会(2011)では,モデルプラントの実績値の平均 値が用いられている.個々の原発の維持費は公表されたことがない.
そこで,本稿においては,電力各社の有価証券報告書の営業費用に記載され た維持費に相当する費目のkW当たりの平均値(2001〜2010年の10カ年,ただ し日本原子力発電については公開されている年次が限られているため2007―2010年の4 カ年)を求め,この値に各原発の設備容量を掛けて,各原発の1年当たりの維 持費とする.計算に用いた維持費のkW当たりの平均値は第 2 表の通りである.
(2)追加的委託費
シビアアクシデント対策やバックフィットのために,電力各社において委 託費が増加していることが,電気料金値上げ申請関連資料で報告されている.
これは,あくまで規制基準の発表前のものであるので,実際の追加的委託費 はより大きくなる可能性がある.反面,現時点では委託費がどの程度増加す るかは予想しにくい.
そこで,本稿では値上げ申請資料で報告されている委託費の増加額のみを発 電単価の試算に含めることにする.具体的には,電力各社の値上げ申請資料に 記載されている委託費の増加額を,2014年に残存する発電設備容量で按分する.
3. 3. 2 燃料費のうちのフロントエンド費用
コスト等検証委員会では,原子力委員会原子力発電・核燃料サイクル技術 等検討小委員会が試算した数値を採用している.ところが,有価証券報告書 をみるとkWh当たりの核燃料減損額は電力会社によって大きな差がある.
そこで,本稿では,電力会社毎のkWh当たりの各電力会社の核燃料減損額 の過去10年間(2001―2010年,ただし日本原子力発電については2007―2010年の4カ年)
の平均値をフロントエンド費用とした.
3. 3. 3 燃料費のうちのバックエンド費用
バックエンド費用は,コスト等検証委員会での発電単価の再検討が行われ 北海道電力 20,135円
東北電力 13,959円
東京電力 12,946円
中部電力 13,467円
北陸電力 17,282円
関西電力 14,215円
中国電力 20,863円
四国電力 19,114円
九州電力 17,178円
日本原子力発電 24,633円
(出所) 各社の有価証券報告書より作成.
(注) 日本原子力発電については2007〜2010年の平均値.
第 2 表 維持費のkW当たり単価(2001―10年平均)
る際,原子力委員会に対して試算が依頼された.原子力委員会では,内部に つくられた原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会において具体的 な検討が行われた.
そこでは,コスト等検証委員会が提示した方法と基本的には同じ考え方,
すなわち「燃料の取得,原子炉への装荷から派生する将来コストと発生エネ ルギーを現在価値換算し,均等発電単価(円/kWh)を算出」するという方法 がとられている.また,1)発電を終えて4年間で再処理・MOX燃料製造を 行い,MOX燃料を軽水炉で使い,次々とリサイクルするという「再処理モデ ル」,2)このような核燃料リサイクルを行わず中間貯蔵をへて直接処分する
「直接処分モデル」,3)使用済燃料の一部を再処理してリサイクルし,残りは 中間貯蔵の後に再処理するという現状に即した「現状モデル」の3つのケー スが考慮された.福島原発事故後も,日本の核燃料サイクル政策に根本的な 変更がもとらされていないので,本稿では,バックエンド部分については「現 状モデル」をそのまま利用することにする.
3. 3. 4 業務分担費
次に,業務分担費については,事業の全般的な管理業務に要する費用(本社 などの人件費,修繕費,諸費)(コスト等検証委員会, 2011, p.12)であり,有価証券 報告書ではこの部分を電源別に分割して整理されていない.これについては 原発毎に分離することが困難であるので,コスト等検証委員会の数値を踏襲 する.
3. 4 社会的費用
本稿では,社会的費用を政策経費と事故費用に分けて考える.
3. 4. 1 政策経費
政策経費について,コスト等検証委員会は,2011年度の当初予算から「立地」
「防災」「広報」「人材育成」「評価・調査」「発電技術開発」「将来発電技術開発」
にかかわる予算額を電源毎に対し合わせ,これを2010年度の発電量で除すと
いう方法を用いている.これによって,国の予算の各電源の政策経費を求め ている.
しかしながら,コスト等検証委員会(2011)の方法は,対象となっている予 算と発電量が単年度のものにすぎないという問題がある.予算額については,
過去の年平均額を用いるべきであるし,また,発電量については将来予想さ れる発電量で除すという方法も考えられる.とはいえ,ここで得られた政策 経費額は,政府として初めて電源別の予算を詳細に調査した結果えられたも のである.また,将来の予算額や発電量がどの程度の規模になるかは事前に 予測できない.そこで,本稿では,コスト等検証委員会(2011)が示した金額
(1.1円/kWh)を採用する.
3. 4. 2 事故費用
2011年にコスト等検証委員会が検討するまでは,発電単価の計算にあたっ て事故費用3)(コスト等検証委員会(2011)では,「事故リスク対応費用」)が考慮さ れたことは日本においてはなかった.コスト等検証委員会(2011)では,福 島原発事故の事故費用総額が推計されている.これに含まれているのは,損 害賠償額と事故収束のための費用,原発の減損,核燃料の損失,行政費用で,
合計5兆8,318億円である.
次に,コスト等検証委員会は,この額をモデルプラントにあわせて補正し た額をもって原発事故費用とし,福島第一原発1〜4号機以外の原発の合計 した出力が今後40年間維持されるものと仮定し,その出力で今後40年間得 られる発電量で事故費用を割って,事故費用単価としている(数式2参照). つまり,「事業者間での相互扶助の考え方に基づき,損害額を事業者同士で一 定期間で支払う場合のコスト」(コスト等検証委員会,2011,p.42)を事故費用単 価としている.
3) コスト等検証委員会(2011)では,事故に関連する費用に安全対策費が含まれている.また,
名称を「事故リスク対応費用」としているが,本稿では,事故費用としている.
数式2
事故費用単価(円/kWh)=
今後40年間の発電量 事故費用総額
だが,これにはいくつかの問題がある.1つには,福島原発事故が考えら れうる最大の事故ではないという問題である.福島原発事故は,事故直後,
より深刻な事態に陥る可能性があったと考えられている.それゆえ,本来的 にこの金額でよいのかどうかは議論の余地がある.
また,2011年時点での数値であるため,それ以降増大する可能性がある.
それゆえ,コスト等検証委員会(2011)でも,事故費用は今後増大しうると書 かれている.
そこで,本稿では,第 3 表で示すように,2013年9月時点で判明している
事故費用(7兆4,280億円,一部,コスト等検証委員会の場合と同じ推計値)をもっ
て福島原発事故の費用とする.
また,数式2の分母部分についても検討の余地がある.なぜなら,これに は福島第一原発1〜4号機以外の原発50基分の出力が今後40年にわたって 維持されるという仮定が含まれているからである.現実には,原子炉等規制 法のもとで運転期間は40年とされているし,新増設も非常に困難である.そ れゆえ,日本の原子力発電設備容量は急速に減っていくと考えられる.その ような状況の下で相互扶助にもとづき原発事故費用を賄うとすれば,分母の 発電量を現実に即した数値に修正する必要がある.
そこで本稿では,2011年3月末時点で運転していた全ての原発4)につい て,運転期間40年で廃炉となると想定する.例えば,2014年に再稼働する 場合の事故費用を計算する際には,2014年以降,全ての原発が運転期間40 年で廃炉となった場合の発電量を計算し,これを分母とする.2015年再稼働,
2016年再稼働も,同様な考え方をとる.
4) 建設中の原発(島根3号機,大間)については考慮しないことにする.
4 計算結果と分析
電力各社の原発の発電単価及び各原発の発電単価をそれぞれ第 4 表に示し,
これからえられる特徴を以下に簡単に述べる.
まず,電力各社の原発の発電単価をみて分かることは以下の2点である.
第1に,審査が順調に進み,2014年に再稼働ができたとしても,全ての 電力会社で2012年にコスト等検証委員会が示した原発の発電単価9.0円/
kWh5)を上回る.ただし,これらの電力会社の原発には新規制基準への適合 申請がされていない老朽原発も含まれている.老朽原発を含めれば,このよ うに原発全体の経済性が大きく失われることから,電力各社は,内部で事実 上の経済性の判断を行い,パフォーマンスのよいところから申請しているの ではないかと考えられる.
5) コスト等検証委員会(2011)は,原発の発電単価が8.9円/kWhであるとしているが,2012年
には,当時現実に即して一部の前提条件を変え,9.0円/kWhという数値を公表している.
損害賠償額(要賠償額) 3兆9,093億円
事故収束・
廃炉費用
福島第一原発
1〜4号機 2011年3月末日までに
計上された費用 1,478億円 2011年4月以降
(2011年10月推計) 1兆1,510億円 福島第一原発5〜6号機,福島第二原発 3,851億円 福島第一7,8号機増設計画中止に伴う損失 394億円 行政費用 国(2011,12,13年度予算合計) 1兆7,953億円
地方自治体 不明
合計 7兆4,280億円
(出所) 東京電力に関する経営・財務調査委員会「委員会報告」2011年10月3日、東京電力「平 成23年3月期 決算短信」,東京電力・原子力損害賠償支援機構「総合特別事業計画(抄)」
2013年6月6日,東京電力有価証券報告書,財務省資料等により筆者作成.
第 3 表 福島原発事故のコスト(2013年10月時点での判明分)
電力会社 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド 北海道電力 9.41 1.35 0.78 0.34 0.13 0.10 3.67 1.14 0.59 東北電力 9.71 1.57 0.79 0.47 0.19 0.12 3.73 1.15 0.60 東京電力 9.61 1.66 0.63 0.66 0.27 0.10 3.66 1.05 0.50 中部電力 9.85 1.66 0.61 0.70 0.23 0.12 3.87 1.06 0.51
北陸電力 10.07 1.43 0.87 0.28 0.18 0.11 4.37 1.02 0.47
関西電力 9.49 1.82 0.66 0.86 0.22 0.09 3.20 1.23 0.68
中国電力 11.71 2.24 0.91 0.94 0.27 0.12 4.92 1.29 0.74
四国電力 9.81 1.32 0.63 0.45 0.16 0.08 4.07 1.20 0.65 九州電力 9.42 1.46 0.50 0.72 0.15 0.08 3.58 1.15 0.60 日本原子力発電 16.73 5.32 2.27 2.47 0.32 0.27 6.92 1.08 0.53
発電所名 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド 泊1 9.62 1.52 0.67 0.56 0.17 0.11 3.82 1.14 0.59 泊2 9.52 1.45 0.68 0.50 0.17 0.11 3.78 1.14 0.59 泊3 9.12 1.25 0.85 0.19 0.10 0.10 3.58 1.14 0.59
女川1 10.44 2.45 0.66 1.24 0.40 0.15 3.69 1.15 0.60
女川2 9.52 1.61 0.74 0.53 0.23 0.12 3.62 1.15 0.60 女川3 9.59 1.55 0.81 0.43 0.19 0.12 3.75 1.15 0.60 東通1 9.47 1.39 0.84 0.30 0.14 0.11 3.79 1.15 0.60
福島第一5 15.37 6.60 0.61 5.21 0.54 0.25 4.58 1.05 0.50
福島第一6 13.31 4.80 0.60 3.54 0.46 0.21 4.31 1.05 0.50
福島第二1 10.15 2.04 0.59 1.04 0.30 0.11 3.90 1.05 0.50
福島第二2 9.80 1.83 0.59 0.84 0.30 0.11 3.77 1.05 0.50 福島第二3 9.73 1.81 0.60 0.77 0.34 0.11 3.72 1.05 0.50 福島第二4 9.50 1.66 0.61 0.66 0.28 0.11 3.64 1.05 0.50 柏崎刈羽1 9.63 1.71 0.60 0.65 0.37 0.10 3.72 1.05 0.50 柏崎刈羽2 9.37 1.39 0.62 0.39 0.29 0.09 3.78 1.05 0.50
第 4―1 表 2014年に再稼働した場合の発電単価
単位:円/kWh
(注) 発電コストには,この表に記載された費用の他に社会的費用(事故費用2.05円/kWh,政 策経費1.10円/kWh)が共通して含まれる.また,燃料費のうちバックエンド費用は0.55円
/kWhで全てに共通である.
柏崎刈羽3 9.22 1.32 0.64 0.35 0.25 0.09 3.70 1.05 0.50 柏崎刈羽4 9.20 1.32 0.65 0.33 0.25 0.09 3.68 1.05 0.50 柏崎刈羽5 9.13 1.36 0.62 0.39 0.26 0.09 3.57 1.05 0.50 柏崎刈羽6 8.75 1.24 0.67 0.29 0.19 0.09 3.31 1.05 0.50 柏崎刈羽7 8.91 1.24 0.68 0.28 0.19 0.09 3.47 1.05 0.50
浜岡3 10.58 2.11 0.54 1.13 0.31 0.14 4.25 1.06 0.51
浜岡4 9.76 1.72 0.57 0.79 0.24 0.12 3.84 1.06 0.51 浜岡5 9.36 1.43 0.66 0.46 0.19 0.11 3.72 1.06 0.51
志賀1 10.35 1.70 0.76 0.52 0.31 0.12 4.48 1.02 0.47
志賀2 9.86 1.35 0.90 0.21 0.14 0.10 4.34 1.02 0.47
美浜3 13.98 4.50 0.68 3.14 0.59 0.09 5.10 1.23 0.68
高浜2 20.27 8.32 0.70 6.50 1.03 0.09 7.58 1.23 0.68
高浜3 8.69 1.46 0.64 0.59 0.14 0.10 2.85 1.23 0.68 高浜4 8.93 1.47 0.64 0.59 0.14 0.10 3.08 1.23 0.68
大飯1 10.44 1.99 0.64 0.97 0.31 0.08 4.07 1.23 0.68
大飯2 9.91 1.92 0.64 0.97 0.24 0.08 3.62 1.23 0.68 大飯3 8.19 1.17 0.67 0.30 0.12 0.09 2.64 1.23 0.68 大飯4 8.21 1.15 0.68 0.27 0.10 0.09 2.69 1.23 0.68
島根2 10.56 1.68 0.91 0.45 0.20 0.12 4.44 1.29 0.74
伊方1 12.87 2.94 0.61 1.95 0.28 0.09 5.59 1.20 0.65
伊方2 9.98 1.52 0.58 0.69 0.16 0.09 4.12 1.20 0.65 伊方3 9.27 1.06 0.64 0.20 0.14 0.08 3.86 1.20 0.65 川内2 9.14 1.42 0.46 0.71 0.15 0.09 3.42 1.15 0.60
玄海1 26.23 13.42 0.51 12.04 0.72 0.15 8.51 1.15 0.60
玄海2 10.30 2.29 0.46 1.54 0.17 0.13 3.71 1.15 0.60
玄海3 8.79 1.01 0.51 0.32 0.10 0.08 3.48 1.15 0.60 玄海4 8.65 1.00 0.53 0.29 0.10 0.08 3.36 1.15 0.60
東海第二 18.67 6.46 2.27 3.47 0.47 0.24 7.98 1.08 0.53
敦賀2 14.28 3.76 2.27 1.01 0.21 0.27 6.29 1.08 0.53
電力会社 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド 北海道電力 9.79 1.39 0.80 0.35 0.14 0.11 3.86 1.14 0.59
東北電力 10.06 1.63 0.82 0.48 0.21 0.12 3.87 1.15 0.60
東京電力 10.18 1.79 0.68 0.71 0.29 0.11 3.94 1.05 0.50
中部電力 10.28 1.73 0.63 0.72 0.25 0.12 4.08 1.06 0.51
北陸電力 10.46 1.47 0.89 0.28 0.19 0.11 4.57 1.02 0.47
関西電力 10.27 2.03 0.74 0.95 0.25 0.09 3.62 1.23 0.68
中国電力 12.52 2.38 0.96 1.00 0.29 0.12 5.44 1.29 0.74
四国電力 10.42 1.44 0.69 0.50 0.17 0.08 4.40 1.20 0.65
九州電力 9.94 1.54 0.54 0.75 0.17 0.09 3.87 1.15 0.60 日本原子力発電 18.64 6.02 2.57 2.80 0.37 0.28 7.96 1.08 0.53
発電所名 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド
泊1 10.14 1.61 0.71 0.59 0.19 0.11 4.09 1.14 0.59
泊2 9.98 1.52 0.71 0.52 0.18 0.11 4.02 1.14 0.59 泊3 9.42 1.27 0.87 0.20 0.10 0.10 3.72 1.14 0.59
女川1 11.24 2.72 0.73 1.38 0.45 0.15 4.07 1.15 0.60
女川2 9.87 1.67 0.77 0.54 0.24 0.12 3.76 1.15 0.60 女川3 9.90 1.59 0.83 0.44 0.20 0.12 3.87 1.15 0.60 東通1 9.77 1.42 0.86 0.31 0.14 0.11 3.90 1.15 0.60
福島第一5 19.21 8.90 0.83 7.09 0.72 0.26 5.97 1.05 0.50
福島第一6 15.69 6.05 0.76 4.49 0.59 0.22 5.29 1.05 0.50
福島第二1 11.11 2.34 0.67 1.19 0.35 0.12 4.43 1.05 0.50
福島第二2 10.54 2.03 0.65 0.93 0.33 0.12 4.17 1.05 0.50
福島第二3 10.40 1.98 0.65 0.84 0.38 0.11 4.08 1.05 0.50
福島第二4 10.08 1.78 0.65 0.71 0.31 0.11 3.95 1.05 0.50
柏崎刈羽1 10.30 1.87 0.65 0.70 0.42 0.10 4.08 1.05 0.50
柏崎刈羽2 9.87 1.49 0.67 0.42 0.31 0.09 4.04 1.05 0.50 第 4―2 表 2015年に再稼働した場合の発電単価
単位:円/kWh
(注) 発電コストには,この表に記載された費用の他に社会的費用(事故費用2.20円/kWh,政 策経費1.10円/kWh)が共通して含まれる.また,燃料費のうちバックエンド費用は0.55円
/kWhで全てに共通である.
柏崎刈羽3 9.65 1.39 0.67 0.36 0.26 0.09 3.92 1.05 0.50 柏崎刈羽4 9.61 1.38 0.68 0.35 0.26 0.09 3.89 1.05 0.50 柏崎刈羽5 9.62 1.47 0.67 0.42 0.28 0.09 3.81 1.05 0.50 柏崎刈羽6 9.12 1.29 0.69 0.30 0.20 0.09 3.49 1.05 0.50 柏崎刈羽7 9.27 1.28 0.70 0.29 0.20 0.09 3.64 1.05 0.50
浜岡3 11.23 2.27 0.58 1.21 0.34 0.15 4.61 1.06 0.51
浜岡4 10.22 1.79 0.59 0.82 0.25 0.13 4.07 1.06 0.51
浜岡5 9.70 1.46 0.68 0.47 0.20 0.11 3.88 1.06 0.51
志賀1 10.85 1.78 0.79 0.54 0.33 0.12 4.75 1.02 0.47
志賀2 10.21 1.38 0.92 0.21 0.15 0.11 4.52 1.02 0.47
美浜3 23.45 9.20 1.41 6.50 1.20 0.09 9.73 1.23 0.68
高浜3 9.24 1.60 0.69 0.65 0.15 0.10 3.12 1.23 0.68 高浜4 9.49 1.60 0.69 0.65 0.16 0.10 3.37 1.23 0.68
大飯1 12.02 2.51 0.81 1.22 0.39 0.09 4.99 1.23 0.68
大飯2 11.37 2.42 0.81 1.22 0.30 0.09 4.43 1.23 0.68
大飯3 8.53 1.23 0.70 0.31 0.13 0.09 2.77 1.23 0.68 大飯4 8.54 1.20 0.71 0.28 0.11 0.09 2.82 1.23 0.68
島根2 11.14 1.78 0.96 0.47 0.22 0.12 4.77 1.29 0.74
伊方1 17.13 4.48 0.95 3.01 0.43 0.09 8.15 1.20 0.65
伊方2 10.90 1.74 0.67 0.80 0.18 0.09 4.67 1.20 0.65
伊方3 9.61 1.11 0.67 0.21 0.15 0.08 4.01 1.20 0.65 川内2 9.74 1.55 0.51 0.78 0.17 0.10 3.74 1.15 0.60
玄海2 11.40 2.68 0.54 1.80 0.20 0.13 4.27 1.15 0.60
玄海3 9.14 1.05 0.53 0.34 0.11 0.08 3.64 1.15 0.60 玄海4 8.97 1.03 0.54 0.30 0.11 0.08 3.49 1.15 0.60
東海第二 23.59 8.71 3.08 4.73 0.64 0.26 10.50 1.08 0.53
敦賀2 15.24 4.03 2.43 1.09 0.23 0.29 6.83 1.08 0.53
電力会社 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド 北海道電力 10.22 1.45 0.83 0.36 0.15 0.11 4.06 1.14 0.59
東北電力 10.44 1.69 0.85 0.50 0.22 0.12 4.02 1.15 0.60
東京電力 10.83 1.93 0.73 0.77 0.32 0.11 4.27 1.05 0.50
中部電力 10.76 1.80 0.66 0.75 0.26 0.13 4.31 1.06 0.51
北陸電力 10.88 1.51 0.91 0.29 0.20 0.11 4.78 1.02 0.47
関西電力 11.20 2.27 0.83 1.05 0.29 0.10 4.14 1.23 0.68
中国電力 13.45 2.53 1.02 1.06 0.32 0.13 6.03 1.29 0.74
四国電力 11.15 1.60 0.76 0.56 0.20 0.09 4.81 1.20 0.65
九州電力 10.52 1.63 0.57 0.80 0.18 0.09 4.18 1.15 0.60
日本原子力発電 21.11 6.95 2.97 3.25 0.43 0.30 9.32 1.08 0.53
発電所名 発電
コスト 資本費 運転
維持費 燃料費 残存簿価に関する
資本費
安全対策に関する 資本費
廃炉積立金不足 固定資産 税
うちフロント エンド
泊1 10.73 1.72 0.76 0.63 0.21 0.12 4.41 1.14 0.59
泊2 10.53 1.64 0.76 0.56 0.20 0.11 4.29 1.14 0.59
泊3 9.75 1.29 0.88 0.20 0.11 0.10 3.86 1.14 0.59
女川1 12.21 3.05 0.82 1.55 0.52 0.16 4.55 1.15 0.60
女川2 10.26 1.74 0.79 0.57 0.26 0.13 3.91 1.15 0.60
女川3 10.24 1.63 0.85 0.45 0.21 0.12 3.99 1.15 0.60
東通1 10.09 1.46 0.88 0.32 0.15 0.11 4.02 1.15 0.60
福島第一5 26.80 13.58 1.28 10.92 1.10 0.28 8.71 1.05 0.50
福島第一6 19.59 8.17 1.04 6.11 0.79 0.24 6.91 1.05 0.50
福島第二1 12.35 2.73 0.79 1.40 0.42 0.13 5.11 1.05 0.50
福島第二2 11.45 2.28 0.74 1.04 0.38 0.12 4.66 1.05 0.50
福島第二3 11.22 2.19 0.72 0.93 0.43 0.12 4.51 1.05 0.50
福島第二4 10.74 1.93 0.70 0.77 0.34 0.12 4.29 1.05 0.50
柏崎刈羽1 11.10 2.08 0.72 0.78 0.47 0.11 4.51 1.05 0.50
柏崎刈羽2 10.42 1.59 0.70 0.45 0.34 0.10 4.32 1.05 0.50
第 4―3 表 2016年に再稼働した場合の発電単価
単位:円/kWh
(注) 発電コストには,この表に記載された費用の他に社会的費用(事故費用2.36円/kWh,政 策経費1.10円/kWh)が共通して含まれる.また,燃料費のうちバックエンド費用は0.55円
/kWhで全てに共通である.
柏崎刈羽3 10.12 1.46 0.70 0.38 0.28 0.10 4.15 1.05 0.50
柏崎刈羽4 10.07 1.44 0.70 0.36 0.28 0.10 4.11 1.05 0.50
柏崎刈羽5 10.16 1.56 0.70 0.45 0.31 0.10 4.09 1.05 0.50
柏崎刈羽6 9.53 1.34 0.72 0.31 0.21 0.10 3.68 1.05 0.50 柏崎刈羽7 9.68 1.33 0.72 0.30 0.21 0.10 3.83 1.05 0.50
浜岡3 11.99 2.46 0.62 1.30 0.38 0.15 5.01 1.06 0.51
浜岡4 10.72 1.88 0.62 0.86 0.27 0.13 4.32 1.06 0.51
浜岡5 10.06 1.50 0.69 0.48 0.22 0.11 4.04 1.06 0.51
志賀1 11.40 1.87 0.83 0.56 0.35 0.13 5.05 1.02 0.47
志賀2 10.60 1.42 0.93 0.22 0.16 0.11 4.71 1.02 0.47
高浜3 9.90 1.76 0.77 0.72 0.17 0.11 3.45 1.23 0.68
高浜4 10.18 1.78 0.77 0.72 0.18 0.11 3.71 1.23 0.68
大飯1 14.57 3.39 1.10 1.67 0.53 0.09 6.49 1.23 0.68
大飯2 13.71 3.27 1.10 1.67 0.41 0.09 5.75 1.23 0.68
大飯3 8.97 1.33 0.75 0.34 0.14 0.09 2.96 1.23 0.68 大飯4 8.90 1.26 0.75 0.30 0.12 0.09 2.96 1.23 0.68
島根2 11.79 1.90 1.02 0.50 0.24 0.13 5.14 1.29 0.74
伊方1 29.59 9.17 1.96 6.24 0.88 0.10 15.76 1.20 0.65
伊方2 12.08 2.03 0.78 0.93 0.22 0.10 5.39 1.20 0.65
伊方3 9.98 1.16 0.70 0.22 0.16 0.08 4.17 1.20 0.65
川内2 10.46 1.71 0.56 0.86 0.19 0.10 4.13 1.15 0.60
玄海2 12.89 3.22 0.65 2.18 0.24 0.14 5.05 1.15 0.60
玄海3 9.52 1.10 0.55 0.35 0.12 0.08 3.81 1.15 0.60 玄海4 9.32 1.07 0.56 0.31 0.11 0.08 3.64 1.15 0.60
東海第二 33.32 13.30 4.75 7.29 0.98 0.28 15.48 1.08 0.53
敦賀2 16.36 4.35 2.62 1.17 0.25 0.30 7.47 1.08 0.53
第2に,再稼働が2015年にずれ込むと,全ての原発で発電単位が上昇する.
つまり,再稼働時期が遅くなればなるほど,運転期間が短くなるので,原発 の全体としての経済性が大きく損なわれるようになる.それゆえ,電力会社は,
再稼働の時期をできるだけ早くするよう要望していると考えられる.また,逆 に言えば,再稼働がずれ込めば,他電源に比べて電力消費者の負担額は大き くなる可能性がある.つまり,規制基準にすぐには適応できないのであれば,
かえって早めに原発から撤退した方がよい場合もある.
次に,各原発の発電単価をみて分かることは以下の4点である.
第1に,2014年に再稼働したとしても,ほとんどの原発でコスト等検証委 員会が示した発電単価よりも高くなっている.9円未満なのは,高浜3,4号,
大飯3,4号,玄海3,4号の6機のみである.つまり,安全投資や停止により,
原発の経済性は悪化している.
第2に,2014年に再稼働したとしても,コスト等検証委員会が示した石炭 火力,天然ガス火力の発電単価よりも発電単価が高い発電所がある.為替レー トを1ドル100円にした場合の発電単価は,石炭火力10.6円/kWh,天然ガ ス火力12.2円/kWhである.石炭火力よりも高くなる原発は,福島第一5,6号,
美浜3号,大飯1号,伊方1号,東海第二,敦賀2号の7機である.
第3に,仮に3年再稼働が遅れ2016年になったとすると,さらに泊1号,
女川1号,福島第二1,2,3,4号,柏崎刈羽1,2号,浜岡4号,志賀1,2号,
伊方2号,玄海2号の13機が加わる.再稼働が遅れれば遅れるほど,経済的 に正当化できない原発が増える.
第4に,事故費用が今後増えると,原発の経済性はますます悪化する.東 京電力が2012年11月に発表した経営計画によれば,今後,さらに5兆円の 費用が必要となる可能性があり,これは損害賠償と事故収束対策の進捗状況 からすれば大いにありうる.この場合,2014年再稼働ケースの事故費用は3.43 円/kWh,2016年再稼働ケースは3.95円/kWhになる.そうなれば,発電単 価はさらに上がり,発電単価の観点からみて経済性があると判断できるのは
ごくわずかな原発にとどまることになる.
以上のことからすれば,多くの原発,すくなくとも老朽原発は,安全性で はなく経済的な意味でも廃炉を速やかに決定し,余分な安全投資をしないこ とが望ましい.
他方で,ここで計算した発電単価は,あくまで会計上にあらわれた費用を 発電費用としてみて発電単価を計算したものである.電力会社の経営者から みれば,残存簿価であれ安全投資額であれ,すでに支払ってしまったもので あるから電気料金にのせて回収しなければならない費用である.したがって,
安全投資をすれば発電単価は高くなるが,電力会社の経営の論理からすれば 投資額は回収する必要がある.それゆえ,いったん投資した原発は,より長 く運転しようとする.現行の総括原価方式のもとでは電気料金に発電に必要 な費用と見なされる費用は全て電気料金の原価に含めることができるから,
たとえ発電単価が高くなったとしても原発を動かす動機は電力会社にはある だろう.
原子力の規制基準は固定したものではなく,科学的知見や技術の発達によっ て強化される.これは発電単価をより引き上げる.巨額の安全投資をする前に,
廃炉を決定するほうがよりよい原発も多くある.今後の再稼働をめぐる政策 議論においては,安全面だけでなく,経済面での考慮も必要であろう.
【参考文献】
大島堅一(2010)『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社.
大島堅一(2011)『原発のコスト』岩波書店.
金子勝(2013)『原発は火力より高い』岩波書店.
木村啓二(2012)「建設中利子を考慮したキャッシュフローベースの電源別コスト試算」
『環境情報科学学術研究論文集』Vol.26, 279―282ページ.
コスト等検証委員会(2011)「コスト等検証委員会報告書」.
佐藤暁(2013)「原子力の安全規制のあり方と日本の新安全基準」『環境と公害』第43 巻1号,7―13ページ.
資源エネルギー庁(2013)「原子力発電所の廃止措置を巡る会計制度の課題と論点」(総 合資源エネルギー調査会電気料金審査専門委員会第1回廃炉に係る会計制度検証 ワーキンググループ,2013年6月25日,資料5).
室田武(1991)「日本の電力独占料金制度の歴史と現況―1970―89年度の9電力会社の 電源別発電単価の推計を含めて―」『経済学研究』(一橋大学)32号,75―159ページ.
室田武(1993)『電力自由化の経済学』宝島社.
(おおしま けんいち・立命館大学国際関係学部教授)
The Doshisha University Economic Review Vol. 65 No. 3 Abstract
Kenichi OSHIMA, Projected Electricity Generation Costs of Japanese Nuclear Power Plants, Based on an Accounting Methodology
Immediately following the Fukushima Disaster, all nuclear power plants in Japan were shut down. For a nuclear plant there to resume operations, its electricity-generation utilities need to meet new nuclear regulations: it needs to invest in the promotion of safety and conduct measures that will help preclude a severe accident. This paper calculates each Japanese nuclear power plant’s costs associated with electricity generation, when its operations are resumed in 2014, 2015, or 2016. These calculations indicate that the generation costs of some nuclear power plants will be higher than those of fossil-fuel power plants.