著者 根来 尚
雑誌名 富山市科学博物館研究報告
号 35
ページ 29‑48
発行年 2012‑03‑10
URL http://repo.tsm.toyama.toyama.jp/?action=repos
itory̲uri&item̲id=970
富山市科学博物館研究報告第35号,pp29−48;(2012)
は じ め に
富山県内4カ所での訪花昆虫追加調査結果*
根 来 尚 富山市科学博物館 939‑8084富山市西中野町1‑8‑3:
AdditionalSurveysofFlower‑visitingInsectsatfourSites inToyamaPrefecture,Hokuriku,Japan
HisashiNegoro ToyamaScienceMuseum
l‑8‑31,Nishinakano‑machi,Toyama,939‑8084JAPAN
富山県内4か所(立山弥陀ケ原,山田村赤目谷,小矢部市綾子,高岡市古城公園)で,再 度訪花昆虫調査を行った.いずこの調査地においても,前回と今回とで,総個体数や目レ ベルでの年間訪花昆虫個体数.各月の訪花昆虫個体数に特に違いはなく,この数年間では,
訪花昆虫群集に特別の変化は無いものと思われる.植物と訪花昆虫グループの関係につき 若干の考察を行った.
Additionalsurveysofflower‑visitinglnsectswereconductedatfoul‐sltesinToyama Prefecture,MidagaharainMt、Tateyama,AkamedaniinYamada‑mura,Ayagoln Oyabe‑shiandKojo‑parkinTakaoka‑shi、
Therewasnogreatdifferencebetweenlasttlmeandthistimeatfoursltesinthetotal numberofindividualsofflower‑visitinglnsectsmayear,inthenumberofindividuals ofeachinsectordersmayearandmthetotalnumberofindividualsofinsectslneach month,itwasconsideredthattherewasnogreatchangeofflower‑visitinglnsect communitvforthepastfewyeal‑s,
Someconsideratlontotherelationshipbetweenflowel‑sandflower‑visitingmsectswere
glven.
Keywords:insects,flower‑visiting,comparison,ToyamaPrefectul‑e キーワード:昆虫,訪花,比較,富山県.
筆者は,富山県内の訪花昆虫の概要を知る目的で,1997 年以降平地から高山まで11カ所で訪花昆虫の調査を行っ
てきた.それらの報告のまとめは,根来(2009)でなさ れている.
今回の調査は,上記の調査地の内4カ所で,前回調査 結果との比較を行なう目的で再度同様の調査を行なった ものである.ただ,以下に示すように,シーズン中にg 度のみの調査である.全て目筆によるものであって昆虫
の同定も科,もしくは,目どまりの個体も多いのも前回 の調査同様である.
今回調査の4カ所は,県内の亜高山と山地各1カ所,平 地2カ所であり,これらの場所で各々3年〜9年以前に行 なわれた結果との比較を行う.
調査場所・調査方法・調査時期 1 立 山 弥 陀 ヶ 原
立山弥陀ケ原については,根来(2004)を参照いただ きたい.前回同様約3kmを調査ルートとし,その両側約 2mずつの幅をとって調査帯とした.シーズン中3回,ほ ぼ一定の速度で4時間かけ遊歩道上を歩行し,その間目 撃した開花植物への訪花昆虫個体数をカウントした.
*富山市科学博物館研究業績第422号
ワ Q
ご 巳 ノ
10時に調査を開始し途中約30分の休息をとり14時30分 に終了した.
調査日と調査時の天候および主要な開花植物を記す.
2009年8月12日晴れ後曇
ウラジロタデ,イワショウブ,ミヤマアキノキリンソ ウ,ミヤマワレモコウなど開花.
2009年9月5日曇り時々晴れ
アザミ類,イワショウブ,ゴマナ,ミヤマアキノキリ ンソウ開花.
2010年7月20日晴れ時々曇り
イワイチョウ,クモマニガナ,ナナカマド,ハクサン ボウフウなど開花.
2010年10月12日晴れ
アキノノゲシ,セイタカアワダチソウ,セイヨウタン ポポ,ノコンギクなど開花.
4 高 岡 市 古 城 公 園
高岡市古城公園については,根来(2009)を参照いた だきたい.前回同様約2kmを調査ルートとし,その両側 約2mずつの幅をとって調査帯とした.シーズン中3回,
ほぼ一定の速度で4時間かけ遊歩道上を歩行し,その間 目撃した開花植物への訪花昆虫をカウントした.調査開 始を9時30分,30分休息の後14時に終了した.
調査日と調査時の天候,および主要な開花植物を記す.
2010年5月21日晴れ
オオジシバリ,セイヨウタンポポ,ツツジ類,ハルシ オンなど開花.
2010年7月8日晴れ
ギボウシ,シロツメクサ,ヒメジョオン,ベゴニアな ど開花.
2010年9月11日晴れ
キツネノマゴ,ノコンギク,ヘクソカズラ,ヤブラン など開花.
2 富 山 市 山 田 村 赤 目 谷
山田村赤目谷については,根来(2005)を参照いただ きたい.シーズン中3回,前回同様往復約4kmを調査ルー トとし,その両側約2mずつの幅をとって調査帯とした.
ほぼ一定の速度で4時間かけ遊歩道上を歩行し,その間 目撃した開花植物への訪花昆虫をカウントした.9時30 分に調査を開始し途中30分の休憩を入れ14時に終了とし た .
調査日と調査時の天候および主要な開花植物を記す.
2010年6月10日晴れ
コウゾリナ,タニウツギ,ニガナ,ハルジオンなど開 花 .
2010年8月17日曇り時々晴れ
オトコエシ,クズ,ノブドウ,ヒメジョオンなど開花.
2010年9月19日晴後曇り
アキノノゲシ,オトコエシ,ヒメジソ,ツリフネソウ など開花.
調 査 結 果
表1‑1〜4‑2に調査日ごとに訪花植物ごとの訪花昆虫 個体数,および,各科各植物ごとに調査日ごとの訪花昆 虫個体数を示した.目撃昆虫は全て種まで同定し得たわ けではないので種数については不明である.
1 結 果 概 要 1 − 1 弥 陀 ケ 原
3日間の調査の結果,膜趣目・双迩目・鱗迩目・甲虫 目・直遡目・長遡目の6目にわたる1700個体の昆虫の訪 花が確認された.最も多かったのは膜迩目で全個体数の 46%786個体,次いで双迩目の29%489個体,この2目で 全体の75%の個体数となる.鱗迩目17%281個体,甲虫 目8%138個体と続き,直通目(4個体),長遡目(2個体)
の2目はたいへん少なかった.
膜迩目,双遡目の各目中では各々,ハナバチ類(マル ハナバチ・ミツバチ以外)[以下では単にハナバチ類と 記す](膜迩目中の66%518個体),ハナアブ類(双遡目中 の62%302個体)が多く,ハナバチ類,ハナアブ類は全 体の31%,18%と訪花昆虫の大きな部分を占める.なお,
チョウ類は訪花昆虫個体全体の15%であり鱗迩目のほと んどを占めている.膜迩目中では,アリ類も多く膜迩類 中17%133個体,マルハナバチ類は9%69個体であった.
昆虫の訪花が確認された植物は23科51種である.
3 小 矢 部 市 綾 子
小矢部市綾子については,根来(2008)を参照いただ きたい.前回同様約2.5kmを調査ルートとし,その両側 約2mずつの幅をとって調査帯とした.シーズン中3回,
ほぼ一定の速度で4時間かけ道上を歩行し,その間目撃 した開花植物への訪花昆虫個体数をカウントした.調査 開始を9時30分途中約30分の休息をとり14時に終了とし た .
調査日と調査時の天候,および主要な開花植物を記す.
2010年5月18日晴れ
アカツメクサ,ウマノアシガタ,ハルジオン,ハルノ ノゲシなど開花.
2010年7月10日晴後曇り
ヒメジョオン,アカツメクサ,シロツメクサ,カタノミ ミなど開花.
○○
富 山 県 内 4 カ 所 で の 訪 花 昆 虫 追 加 調 査 結 果
全訪花昆虫中,キク科を訪れた昆虫は37%4目630個体 で最も多く,次いでユリ科16%5目280個体,次いでバラ 科13%6目218個体,セリ科11%3目178個体と続く.
最も訪花個体の多かった植物は,イワショウブ(16%5 目273個体),次いでゴマナで(16%4目269個体),ハク サンボウフウ(8%3目129個体),ミヤマアキノキリンソ ウ(7%4目114個体),イワイチヨウ(6%5目104個体)
である.
ウ類は訪花昆虫個体全体の11%であり鱗迩目の97%を占 めている.膜遡目中では,ミツバチも多く膜迩類中23%125 個体であった.
昆虫の訪花が確認された植物は15科33種である.
全訪花昆虫中,キク科を訪れた昆虫は72%6目1450個 体で最も多く,次いでマメ科15%5目306個体,次いでブ ドウ科4%3目78個体,カタバミ科3%3目61個体と続く.
最も訪花個体の多かった植物は,セイタカアワダチソ ウ(23%5目467個体),次いでヒメジヨオンで(20%5目 403個体),ハルジオン(13%6目257個体),アカツメク サ(10%5目208個体),セイヨウタンポポ(6%5目113 個体)である.
1 − 2 山 田 村 赤 目 谷
3日間の調査の結果,膜遡目・双迩目・鱗迩目・甲虫 目・直通目・半迩目の6目にわたる1448個体の昆虫の訪 花が確認された.最も多かったのは膜迩目で全個体数の 60%869個体,次いで双迩目の24%348個体,この2目で 全体の84%の個体数となる.
鱗迩目7%101個体,甲虫目6%81個体と続き,直通目
(27個体),半迩目(22個体)の2目は少なかった.
膜遡目,双趨目の各目中では各々,ハナバチ類(膜迩 目中の77%671個体),ハナアブ類(双迩目中の68%23農 個体)が多く,ハナバチ類,ハナアブ類は全体の46%,
16%と訪花昆虫の大きな部分を占める.なお,チョウ類 は訪花昆虫個体全体の5%であり鱗趨目の約80%を占め ている.膜迩目中では,アリ類も多く膜迩類中14%122 個体,マルハナバチ類は4%34個体であった.
昆虫の訪花が確認された植物は20科34種である.
全訪花昆虫中,キク科を訪れた昆虫は50%6目729個体 で最も多く,次いでシソ科6%3目94個体,次いでマメ科 6%目92個体,フウロソウ科6%6目82個体と続く.
最も訪花個体の多かった植物は,オトコエシ(15%E 目210個体),次いでコウゾリナで(11%4目154個体),
ヒメジソ(6%3目93個体),ニガナ(6%3目89個体),ゲ ンノシヨウコ(6%6目82個体)である.
1−4高岡市古城公園
3日間の調査の結果,膜迩目・双迩目・鱗趨目・甲虫 目・直通目・半迩目の6目にわたる1304個体の昆虫の訪 花が確認された.最も多かったのは膜遡目で全個体数の 61%793個体,次いで双迩目の23%304個体,この2目で 全体の84%の個体数となる.
鱗趣目8%98個体,甲虫目6%79個体と続き,直遡目(27 個体),半迦目(3個体)の2目は少なかった.
膜趣目,双迩目の各目中では,各々ハナバチ類(膜迩 目中の67%529個体),アリ類(膜迦目中25%195個体),
小型のハエ類(双迩目中の62%189個体)が多く,ハナ バチ類,アリ類,小型のハエ類は全体の41%,15%,14%
と訪花昆虫の大きな部分を占める.
また,チョウ類は訪花昆虫個体全体の7%であり鱗趣 目の91%を占めている.
昆虫の訪花が確認された植物は28科43種である.
全訪花昆虫中,キク科を訪れた昆虫は36%6目467個体 で最も多く,次いでユリ科12%4目151個体,次いでマメ 科9%4目112個体,シュウカイドウ科6%4目81個体と続
く .
最も訪花個体の多かった植物は,ハルジオン(15%5 目195個体),次いでヤブランで(8%4目99個体),セイ ヨウタンポポ(7%4目90個体),ヒメジョオン(6%4目 80個体)である.
1 − 3 小 矢 部 市 綾 子
3日間の調査の結果,双迩目・膜迩目・鱗遡目・甲虫 目・半迦目・直通目の6目にわたる2001個体の昆虫の訪 花が確認された.最も多かったのは双迩目で全個体数の 51%1018個体,次いで膜迩目の28%551個体,この2目で 全体の79%の個体数となる.
鱗迩目11%219個体,甲虫目6%131個体と続き,半迩 目(76個体),直趣目(6個体)の2目は少なかった.
双遡目,膜迩目の各目中では,小型のハエ類(双趨目中 の50%507個体)・ハナアブ類(双趨目中の34%341個体)
およびハナバチ類(膜遡目中の57%312個体),が多く,
小型のハエ類,ハナアブ類,ハナバチ類は全体の25%,
17%,16%と訪花昆虫の大きな部分を占める.なおチヨ
2.前回調査結果との比較
今回の調査結果を,各々の場所での前回の調査結果と 比較してみる(表5‑1〜9).今回はシーズン中3回のみ の調査で各4時間であり,前回とは回数・時間とも異な るところがあるので,前回の結果から最も近い日を選び また4時間あたりの個体数に換算したものと比較するこ
とにする.
イーL
QJ2 − 1 弥 陀 ケ 原
弥陀ケ原では,前回2003年の調査結果と比べ,今回の 結果は総個体数で11倍と大きな差はない.膜遡目の個 体数が最も多く双遡目が二番目,鱗迦目,甲虫目と続く
ことも同一である.各目の占める割合も,膜遡目で約50%,
双遡目で約30%,鱗迩目,甲虫目では各々約15%約10%
と特段の差が無いと言ってもよいだろう.また,ハナバ チ類でも約30%,ハナアブ類で約15%で特に差は無いと いえるであろう.訪花個体数の多いその他の昆虫グルー プ で も 特 に 大 き な 差 が み ら れ る も の は 無 い
7月,8月,9月の各月の調査日の合計個体数では,前 回に比べ各々ほぼ当倍,1.2倍,1.1倍と7月に少々多い 他はほぼ同じである.
しかし,各月ごとに,昆虫グループの訪花個体数や各 植物への訪花個体数をみると,調査年間で違いがみられ
る .
7月では,2010年ではミネカエデやミヤマゼンコヘの 訪花が無く,タニウツギやアカモノヘの訪花が認められ るというように同月の同時期の調査であっても訪花され る植物は一部異なり,同一植物への訪花個体数も,チン グルマやナナカマドでは減少しイワイチョウやハクサン ボウフウでは増加しているというように異なっている.
どちらかの年でのみ訪花の認められている植物ではそ の訪花個体数は,9月のイタドリ(2003年54個体,2009 年では0個体)以外ではさほど大きな数ではないが,7月 のチングルマのように両年ともに訪花が認められるが年 によって大きな差があるものがある.以下開花量が多い
(量的な調査は行っていないので,あくまで調査時の印 象であるが)植物につき比較する.
チングルマでは2003年では調査日はちょうど花の最も 盛りの時期であったが2010年ではすでに盛りを過ぎ開花 量が少なくなっていた.2003年では160個体が訪花しそ の約半数の88個体がハナバチ類約15%26個体がハナアブ 類で,2010年では36個体中の約40%16個体がハナバチ類 約35%の12個体がハナアブ類というように比率は変化す るが,2003年に多く訪花する昆虫グループは2010年でも 訪花が認められており,チングルマは常に様々なグルー プの訪花対象となっていると考えられる.また,チング ルマでは2003年と2010年ではハナバチ類で72個体の差が あるが,それが2003年と2010年の7月のハナバチ類の訪 花個体数の差(2003年186個体,2010年126個体)に大き く影響しており,ハナバチ類のチングルマヘの依存は大 きいものと考えられる.
ナナカマドにおいても,2003年では調査日は花の盛り の時期であったが2010年ではすでに盛りを過ぎ開花量が 少なくなっていた.2003年では123個体が訪花し2010年
。フ
ノ 白
では62個体と半減した.2003年に多く訪花する昆虫グルー プは2010年でも訪花が認められており,ナナカマドにお いても常に様々なグループの訪花対象となっていると考 えられる.2003年と2010年では甲虫目のうちカミキリム シ類で17個体の差があり,それが2003年と2010年の7月 のカミキリムシ類の訪花個体数の差(2003年20個体,2010 年3個体)の全てであり,カミキリムシ類のナナカマド への依存は大きいものと考えられる.
クロウスゴでは,2003年の36個体訪花中の31個体がマ ルハナバチ類であり,2010年では6個体訪花中マルハナ バチ類が3個体であり,それが2003年と2010年の7月のマ ルハナバチ類の訪花個体数の差(2003年47個体,2010年 8個体)に大きく影響しており,この時期マルハナバチ 類のクロウスゴヘの依存は大きいものと考えられる.あ わせてクロウスゴもまた大きくマルハナバチに依存して いることが見て取れる.
イワイチョウでは,2003年52個体,2010年101個体と なっているがその差49個体の内32個体が甲虫目のハムシ 類(キヌツヤミズクサハムシ)に因っている.ハムシ類 のほとんどがイワイチョウに訪花しており,ハムシ類の イワイチョウヘの依存は大きいものと考えられる.
7月のハクサンボウフウ,ウラジロタデともに2010年 では訪花個体数が多く,多くの昆虫グループが訪花した が,共に膜迩目のアリ類が主要な増加要因であり,アリ 類の訪花個体数が2010年に増加した大きな要因である.
8月では,ウラジロタデでは,2003年では90個体が訪 花し2009年では30個体と三分の一となった.しかし,2003 年に多く訪花する昆虫グループは2009年でも訪花が認め
られており,ウラジロタデも常に様々なグループの訪花 対象となるものと考えられる.イタドリでは,2003年で は100個体が訪花し2009年では18個体と大幅に減少した が,2003年に多く訪花する昆虫グループは2009年でも訪 花が認められている.
8月のイワショウブでは,2003年に比べ2009年には開 花が早く,ハナバチ類・チョウ類・ハナアブ類を主に多 くの昆虫グループが訪花した.9月のイワショウブでは,
2003年に比べ2009年に特に開花量の増加があったように は見えなかったが,訪花個体数は2003年84個体,2009年 165個体と2009年はほぼ2倍となっており,共にハナバチ 類・チョウ類の訪花が主であるのに変わりは無かった.
9月のゴマナでは,2003年170個体,2009年251個体と 50%程度の増加が有ったがハナバチ類・チョウ類・ハナ アブ類等の訪花が主体であることには変わりは無かった.
2003年に比べ2009年9月のハナバチ類・チョウ類の訪
花個体数の増加は,イワショウブとゴマナでの増加に因
るところが大きいと,思われる.
富 山 県 内 4 カ 所 で の 訪 花 昆 虫 追 加 調 査 結 果
クモマニガナ,アザミ類,ミヤマアキノキリンソウミ また8月のミヤマワレモコウのように,年によって訪花 個体数の差が見られなかったものでは,訪花昆虫グルー プ間でも特段の差は見られない.
2 − 2 山 田 村 赤 目 谷
山田村赤目谷では,前回2001年の調査結果とは,総個 体数で0.9倍と減少しているがさほど変わらない.膜遡 目の個体数が最も多く双遡目が二番目であることは同じ であるが,鱗迩目と甲虫目の順位が入れ替わり大した差 ではないが鱗趨目が多くなっている.各目の占める割合 では,膜遡目で約50%から約60%と多少増え,双迩目で は約30%から約25%と多少減少した.鱗迩目,甲虫目で は各々6〜7%程度と特段の差が無いと言ってもよいだろ う.また,ハナバチ類では約45%,マルハナバチ類は2%
強とこれらも特に差は無いといえるであろう.ハナアブ 類では前回の約25%から約15%へと減少している.
6月,8月,9月の各月の調査日の合計個体数では,今 回は前回に比べ各々0.8倍,1.1倍,09倍と6月に少々少 ない他はほとんど同じである.
各月ごとに,昆虫グループの訪花個体数や各植物への 訪花個体数をみると,調査年間で違いがみられる.
6月ではハナアブ類が2001年152個体,2010年70個体,
また9月には同じくハナアブ類が2001年249個体,2010年 132個体と少なくなっているのが目に付く.
また,2001年6月ではクリへの訪花が66個体有ったが 2010年では無く,ヤマウルシに34個体の訪花が有り,曾 月では2001年にはウドに54個体の訪花があったが2010年 には見られなかった等の違いがある.
2010年6月では2001年に比べ季節の進行が遅れ,クリ やブタナの開花はまだでエゴノキやタニウツギは最盛期 であった.ハルジオンとニガナでは2001年と2010年の開 花量に大きな差は無かったように思われるが訪花個体数 には差が見られた.
6月のハルジオンでは,2001年167個体2010年74個体と 2010年では訪花個体数は半数で,ハナアブ類が40個体,
甲虫類が30個体ばかり少なくなっている.ニガナでも2001 年166個体,2010年88個体と2010年では訪花個体数は半 数で,ハナアブ類が40個体少なくなっている.エゴノキ とタニウツギは,2001年に比べ2010年の6月にさまざま な昆虫グループに多く訪花されたがハナアブ類の訪花か ほとんど無い6月のハナアブ類の訪花個体数は2001年 152個体2010年70個体と2010年では少なく,ハルジオン とニガナヘの訪花個体数の減少がその要因となっている.
9月では,ヤマハギとアキノノゲシヘの訪花個体数が 2001年に比べ2010年では少なく,ヤマハギでは2001年100
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個体2010年17個で特にハナバチ類が60個体少なくなって おり,アキノノゲシでは2001年169個体2010年58個で特 にハナアブ類58個体ハナバチ類42個体が少なくなってい る.オトコエシやゲンノショウコでは2010年に増加して いるが,オトコエシでは2001年83個体2010年126個で特 にハナバチ類が39個体多くなっており,ゲンノショウコ では2001年25個体2010年82個で特にハナバチ類が28個体 多くなっている.9月のハナアブ類の訪花個体数は2001 年249個体2010年132個となっているが,アキノノゲシで の減少が大きな要因となっている.ハナバチ類では,ヤ マハギやアキノノゲシでの減少をオトコエシやゲンノショ
ウコでの増加で補って,2001年317個体2010年294個体と 9月の訪花個体数にほぼ変わりがない
2001年と2010年とで個体数に差が特に無いコウゾリナ,
ヒメジョオン,またヒメジソも訪花昆虫類にも特段の差 が無いものと思われる.
2−3小矢部市綾子
小矢部市綾子では,前回2006年の調査結果とは,総個 体数でほぼ当倍とほとんど変わらない.双迩目の個体数 が最も多く膜遡目が二番目であることは同じで,鱗遡目,
甲虫目と続くことも変わりは無い.各目の占める割合で は,双迩目で約45%から約50%と多少増え,膜迩目では 約35%から約30%と多少減少した.鱗遡目では約10%,
甲虫目では7%と特段の差が無いと言ってもよいだろう.
小型のハエ類は約15%から約25%へと増え,ハナアブ 類は約25%から約20%へと減少している.また,ハナバ チ類では約20%から約15%へと減少している.ミツバチ 類は7%前後と特段差は無いと言ってもよいだろう.
5月,7月,10月の各月の調査日の合計個体数では,今 回は前回に比べ各々09倍,ほぼ当倍,1.1倍とほとんど 同じである.
この調査地では草刈りや除草剤の散布が年に何回か行 われ,調査日と草刈り日等との関係で,場所により植物 の開花量が大幅に変動する.ただそれらが,調査地全域 で一斉に行われるのでなく多少の日のずれが有りそれに よって全体としての変動が緩和されている.
各月ごとに,昆虫グループの訪花個体数や各植物への 訪花個体数をみると,調査年間で違いがみられる.
5月のウマノアシガタでは,訪花個体数は2006年89個 体2010年27個体であるが,ハナバチ類が各々63個体,17 個体とその差の大きな部分を占めている.
ハルジオンでは全訪花個体数では2006年と2010年で各々
254個体,257個体と変わりは無いがハナバチ類と甲虫目
のコガネムシ類が減少しハナアブ類と半迦目のカメムシ
類が増加している.
5月のハナバチ類の訪花個体数は2006年264個体2010年 157個体とほぼ100個体の差があるが,その要因の大きな 部分がウマノアシガタとハルジオンでの減少である.ウ マノアシガタは開花量の減少があり全訪花個体数も減少 しているが,ハルジオンでのハナバチ類の減少理由は,
2006年では観察されなかったハルノノゲシヘの訪花が要 因の一つと」思われるが,詳しくは不明である.カラスノ エンドウでの減少分23個体は同じマメ科のアカツメクサ での26個体の増加分が対応するのではないかと思われる.
7月のヒメジョオンでは,全訪花個体数では2006年と 2010年で各々509個体,403個体と100個体ほどの差があ るがハナアブ類が減少し小型のハエ類が増加している.
ハナアブ類2006年229個体2010年57個体と172個体の差で,
これは7月のハナアブ類の全訪花個体数の差159のほとん どである.また,小型のハエ類2006年116個体2010年204 個体と88個体の差となっており,これが2010年7月に小 型ハエ類が全体的に増加する要因となっている.
10月では,セイタカアワダチソウが全訪花個体数では 2006年と2010年で各々342個体,467個体と2010年では100 個体あまり多く,ほとんどの昆虫グループで増加してい るがミツバチ類が2006年87個体2010年62個体と少々少な くなっている.アキノノゲシでもミツバチ類の訪花が無 かった.2006年の10月ではミツバチ類の全訪花個体数は 109個体で,2010年では62個体であった.その中でセイ ヨウミツバチは73個体から11個体と減り,ニホンミツバ チは36個体から51個体へと増えている.
7月のアカツメクサや同月のカタバミ,また10月のセ イヨウタンポポのように2006年と2010年とで訪花個体数 に差の見られないものでは,訪花昆虫グループ間でも特 段の差が無いようである.
2 − 4 高 岡 市 古 城 公 園
高岡市古城公園では,前回2007年の調査結果とは,総 個体数で0.9倍とほとんど変わらない.膜遡目の個体数 が最も多く双遡目が二番目であることは同じで,鱗迩目,
甲虫目と続くことも変わりは無い.各目の占める割合で は,膜迩目で約50%から約6()%と多少増え,双迩目では 約35%から約25%と多少減少した.鱗迩目では7%前後,
甲虫目では約5%と特段の差が無いと言ってもよいだろ う .
アリ類では15%と差が無いが,ハナバチ類では前回の 約30%から40%へと多少増加している.
5月,7月,9月の各月の調査日の合計個体数では,今 回は前回に比べ各々1.1倍,08倍,0.9倍と大きな差は 無い.
各月ごとに,昆虫グループの訪花個体数や各植物への
34
訪花個体数をみると,調査年間で違いがみられる.
5月では,ハルジオンが2007年169個体2010年195個体 とほぼ差は無いが,2010年ではハナバチ類約40個体が増 えハナアブ類が少なくなっている.ハルジオンでのハナ バチ類の増加は2010年の5月でのハナバチ類の全体的訪 花個体数の増加(2007年163個体2010年223個体)の大き な部分を占めている.2010年の5月でのハナアブ類の訪 花個体数は2007年に比べたいへん少なく(2007年81個体 2010年18個体),ハルジオンでの減少もその一環である.
7月での全体的訪花個体数の差,2007年545個体2010年 464個体の大きな部分をセイヨウタンポポ(2007年110個 体2010年9個体)が負っている.これは調査日が一部の 場所の草刈り直後であってセイヨウタンポポの開花量が たいへん少なかったためである.それにより小形のハエ 類の訪花個体数が少なくなっている(2007年163個体2010 年69個体)が,セイヨウタンポポの他ヒメジョオンでも 少なく,小形のハエ類の訪花はキク科に偏っているもの
と,思われる.
シロツメクサの開花量はさほど変わらなかったが,2010 年の訪花個体数は全体的に多くなっており特にハナバチ 類で多かった.
9月では,草刈りの影響によって,2010年においてセ イヨウタンポポ,カタバミで少なく,イヌガラシヘの訪 花が認められない一方,開花時期の関係でノコンギクで 多く,ヘクソカヅラ,ヌルデで訪花が認められた.
セイヨウタンポポでは小形のハエ類の訪花個体数が少 なくなっている(2007年47個体2010年12個体)が,ノコ ンギクでは多く(2007年2個体2010年30個体)なってい る .
カタバミではチョウ類(主にヤマトシジミ)は変わら ず,ハナバチ類が少なくなっている.その一方で,ヤブ ラン,ヘクソカヅラ,ヌルデでハナバチ類の訪花個体数 が多くなっており,小形のハエ類はやはりキク科を訪花 対象としているらしいこと,ハナバチ類はその時々の開 花量の多い多様な花へ訪花するらしいことが見て取れる.
5月のツツジ,セイヨウタンポポ,7月のギボウシ,9 月ヒナタノイノコヅチのように2007年と2010年とで訪花 個体数に大きな差の見られないものでは,訪花昆虫グルー
プ間でも特段の差が無いようである.
3 比 較 の ま と め と 論 議
亜高山から平地までの富山県内4カ所で訪花昆虫相の
再調査を行った.弥陀ケ原で7.8年,山田村で9年,小
矢部で4年,高岡で3年の間隔がある.今回のシーズン中
3回の調査結果との比較によれば,前回調査と今回調査
とは,いずれの場所でも年間総個体数,各目の年間個体
富山県内4カ所での訪花昆虫追加調査結果
数,各月の個体数等多少の違いはあるとはいえ,総体的 には大きな差は無いと言えるであろう.
しかし,各調査日ごとに比較を行うと,近似した日を 選んだとはいえ調査年によって季節の進行には差があり,
開花の様子にも違いがみられ,個々の植物への訪花個体 数は,当然のことであるが,最盛時の開花量の多い植物 ほど大きな差がみられる傾向がある.
植物によっては訪花個体数の多寡によって各昆虫グルー プの個体数の割合に違いがみられるものもあるが,特に 差のないものもあり,植物によって違いがある.これは,
各植物と各昆虫グループとの関係を反映しているものと 考えられる.
より訪花個体数が多い時期に訪花個体数の比率が多い 昆虫グループはその花の「最盛期」を狙って訪れるもし くはその時期にあわせて現れるものもあると考えられ,
例えば,イワイチョウヘのハムシ類の訪花などがそのよ うなものではないかとおもわれる.また,植物によって は最盛期に特定のグループを集めることもあるだろう.
各植物の総訪花個体数が多くなると,ハナアブ類に対 するハナバチ類の訪花個体数の比率が大きくなる傾向か みられることは,ハナバチ類は花の最盛期に多く訪れ,
そうでない場合には相対的に少なくなりハナアブ類では そのようなことはなく定常的に訪れている,と考えられ るのではないだろうか.
3鼻
個々の調査日の個々の植物の状態によって集める昆虫 グループに差がみられ,その訪花個体数の差は各昆虫グ ループの訪花個体数の差に反映され,各昆虫グループの 訪花個体数は,各調査日ごとの年比較では10%以上の差 となることもある.しかし,冒頭に記したように,訪花 昆虫総体としての差はさほど大きなものとは言えず,こ こ10年の間においては訪花昆虫群集全体として大きな変 化はみられなかったものと言えるだろう.
根 来
根来
根来
根来
文 献
尚,2004.立山亜高山弥陀ケ原高原における訪花 虫調査.富山市科学文化センター研究報告,27:31‑
4 4 .
尚,2005.富山県里山地域(富山市三熊・山田村 赤目谷)における訪花昆虫調査.里山(富山県中央 部)の自然環境調査報告I(富山市科学文化セン
ター):75‑106.
尚,2008.小矢部市内の農耕地での訪花昆虫調査.
富山市科学博物館研究報告,31:59‑71.
尚,2009.高岡市古城公園での訪花昆虫調査,お
よび富山県内11カ所での調査結果比較.富山市科学
博物館研究報告,32:39‑60
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富山県内4カ所での訪花昆虫追加調査結果
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