• 検索結果がありません。

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

著者 角尾 美奈

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 7

ページ 35‑42

発行年 2007

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010039/

(2)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

角 尾 美 奈

The Relation between Anthropophobic Tendency and Ego Identity in Adolescence

Mina TSUNOO

要 約

 本研究は、谷(1997)で示された対人恐怖的心性と自我同一性との関連性が、時代的推移を経ても認められるか否か の検討、ならびに、対人恐怖的心性および自我同一性について性別による差異があるか否かの検討を行ったものである。

対人恐怖的心性尺度(永井,1991)と多次元自我同一性尺度(谷,2001)を用い、20代男女167名(男性91名、女性 76名)を対象に質問紙調査を行ったところ、対人恐怖的心性尺度と多次元自我同一性尺度との間に有意な負の相関関係 が示された。この結果から、谷(1997)から10年が経過した現在においても両者に関連性が認められることが明らか となった。また、対人恐怖的心性尺度と多次元自我同一性尺度のそれぞれについて性別による差異を検討するため男女 間でt検定を行ったところ、いずれも有意差は認められず、性差は示されなかった。

キーワード:対人恐怖的心性、自我同一性、青年期、性差

問題と目的

 我々の生活は、家族や友人、学校や職場、アル バイトに隣近所など、様々な他者との関わりの中

にある。しかし、こういった対人関係や人前での 場面において強い不安や緊張を感じる人もいる。

対人恐怖症は、 他人と同席する場面で、不当に 強い不安と精神的緊張が生じ、そのため他人に軽 蔑されるのではないか、他人に不快な感じを与え るのではないか、嫌がられるのではないかと案じ、

対人関係からできるだけ身を退こうとする神経 症の一型 (笠原,1993)と定義される。笠原

(1977)は対人恐怖症を症状の程度により4っに 分類しているが、その第1段階に 平均的な青年 期という発達段階において一時的に見られるも という段階を設定しているように、青年期に は病態に至らなくとも対人恐怖的な傾向を持つ ことが多く、両者は深く関係するものであること

がいえる。

心理教育学科資料室

 青年期においては、自我同一性の確立が重要な 発達課題として指摘されている(Erikson,1959)。

谷(1997)は、青年期における自我同一性と対人 恐怖的心性との関連について検討している。具体 的には、「個」としての自己と「関係」の中での

自己の問の葛藤を伴うアイデンティティ危機は 対人恐怖的心性に影響を与え、両者に対して Eriksonの発達理論の第II段階における自律性の 感覚が影響を及ぼしていると考え、大学生を対象 に、「個」一「関係」葛藤i尺度(谷,1994)、自我 同一性尺度(Rasmussen,1964;宮下,1987)、対 人恐怖的心性尺度(永井,1991)の3つの尺度を 用い、アイデンティティ危機と対人恐怖的心性の 関係についてモデル作成を試みた。その結果、自 律性はアイデンティティ危機と対人恐怖的心性 に影響を与え、アイデンティティ危機は対人恐怖 的心性に影響を与えるという構造を明らかにし

た。

 このように、対人恐怖的心性は青年期における 自我同一性と深い関わりを持つことが示されて

(3)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

いる。しかし、両者の関係は時代的推移を経ても なお認められるものなのであろうか。あるいは、

時間経過と共に変化が見られるとしたら、それは どのような変化なのであろうか。そこで本研究で は、谷(1997)から10年を経過した現在でも対 人恐怖的心性と自我同一性との間に関連が見ら れるか否かにっいて検討を行うことを第1の目 的とした。なお、先述のように谷(1997)では、

自我同一性を測定する尺度として自我同一性尺 度(Rasmussen,1964;宮下,1987)を用いてい る。しかし、内的整合性や内容的妥当性に検討の 余地があることを指摘し、それらを高めた自我同 一性尺度の作成が必要であることを今後の課題 として述べている。よって本研究では、谷(2001)

において作成された多次元自我同一性尺度を用 いることとした。Rasmussen(1964)の自我同一 性尺度が、、Eriksonの発達理論の最初の6段階

(「基本的信頼対不信」から「親密性対孤立」

まで)を測定するものであるのに対し、この多次 元自我同一性尺度(谷,2001)は、Eriksonの発 達理論の第V段階、すなわち青年期における同一 性の感覚を多次元的に測定する精度の高い尺度 であり、本研究の目的により適したものであると 思われる。また、第2の目的として、谷(1997)

では検討されていなかった性差の検討をあわせ て行うこととした。

た。

 質問紙

 1.対人恐怖的心性:対人恐怖的心性尺度(永 井,1991)を用いた。「人と自然に付き合えない」、

「仲間の中にとけこめない」など42項目から成 り、「全くあてはまらない(1点)」から「非常に あてはまる(7点)」までの7件法で回答を求め た。得点が高いほど対人恐怖的心性が高いことを 意味する。

 2.自我同一性:多次元自我同一性尺度(谷,

2001)を用いた。「現実の社会の中で、自分らし い生き方ができると思う」、「自分が何をしたいの かよくわからないと感じるときがある」など20 項目から成り、「全くあてはまらない(1点)」か ら「非常にあてはまる(7点)」までの7件法で 回答を求めた。得点が高いほど自我同一性の感覚 が高いことを意味する。

 その他に、フェイスシートとして、性別、年齢、

血液型、居住形態、職業を尋ねた。

結果と考察

 欠損値は、対人恐怖心性尺度で全回答数の2%、

多次元自我同一性尺度で全回答数の5%であり、

それぞれ平均値を割り当てることにより有効回 答として用いた。

方 法

 調査対象者と手続き 20代男女167名(男性 91名、女性76名)、平均年齢20.73歳(男性20.62 歳,SD=1.59、女性20.87歳, SD=1.32)。2006 年11〜12月に、大学の講義、サークル、バイト などの時間を利用して、質問紙調査を行った。回 収は調査実施直後に行ったが、一部の者について は後日回収した。回答所要時間は5〜20分であっ

 尺度の因子構造および信頼性の検討

 まず、対人恐怖的心性尺度の42項目について 因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行っ た。その結果、固有値の減衰状況と因子の解釈可 能性から3因子が妥当であると判断した。因子負 荷量.40以上を基準に1項目(「ひとつのことに 集中できない」)を削除し、全41項目を採用した。

回転後の因子パターンをTable 1に示す。第1因

(4)

Table 1対人恐怖的心性尺度の因子分析結果

項目内容 F1

子2因F

F3

第1因子集団内における自己意識(α=.95)

 38グループの雰囲気になじめず、違和感を感じてしまう。

 24仲間の中にとけこめない。

 42人が大勢いるとうまく会話の中に入っていけない。

 25人と自然に付き合えない。

 26他人のことが良く思えて自分がみじめになる。

 32集団の中にとけこめない。

 33すぐ自分だけが取り残されたような気分になる。

 35自分が相手の人に嫌な感じを与えているように思ってしまう。

「39他人が自分をどのように思っているのかとても不安になる。

 40不安がっよい。

 30みじめな思いをすることが多い。

 19対人関係がぎこちない。

 34人と話すとき目をどこにもっていっていいかわからない。

 22グループでの付き合いが苦手である。

 27いつもなにかについてくよくよ心配する。

 29自分のことがみんなに知られているような感じがして思うように    振舞えない。

 36人がたくさんいるところでは気恥ずかしくて話せない。

 37なにをするにも自信がない。

 21気分の動揺が激しい。

 41気分が沈んでしまって、やりきれなくなるときがある。

 20職場、学校のクラス、近所の人に自分がどのように思われているのか    気になる。

 31なにをするにも集中できない。

 23人と目が合わせられない。

第2因子対人関係における自己意識(α=.89)

 16人と会うとき、自分の顔つきや目つきが、その人に悪影響を    与えるのではないかと不安になることがある。

 12人と会うとき、自分の顔つきが気になる。

  1自分のことが他の人に知られるのではないかとよく気にする。

  2相手に嫌な感じを与えるような気がして、相手の顔色をうかがって    しまう。

 15自分が人にどう見られているのかくよくよ考えてしまう。

 13他人に対して申し訳ない気持ちが強い。

  8自分の弱点や欠点を他人に知られるのが怖い。

 14人の笑い声を聞くと自分のことが笑われているように思う。

 11人と話をしていて、自分のせいで座が白けたように感ずることがある。

  3友達が自分を避けているような気がする。

第3因子対大衆における自己意識(α=.86)

  7すぐ気持ちがくじける。

 18人との交際が苦手である。

 10気持ちが安定していない。

  4ものごとに熱中できない。

  9大勢の人の中で向かい合って話すのが苦手である。

 17根気がなく何事も長続きしない。

  5人前に出るとオドオドしてしまう。

  6多人数の雰囲気になかなかとけこめない。

.816    −.071     .045

.793    −.053    −.032

.787    −.079     .035

.770    −.001     .077

.763     .008    −.058

.754    −.128     .101

.745     .203    −.068

.729     .235    −.258

.727     .218    −.187

。719   −.067    .103

.705     .129    −.133

.689    −.043     .149

.675     .070    −.208

.672    −.105     .162

.663    −.026     .073

.617     .106    −.179

.612    −.110     .160

.599     .003     .172

.574    −.212     .220

.568    −.082     .100

.551     .302    −.250

.547   −,128    .224

.540    −.089    −.079

.006

−.016

−.083

.054

−.072

.079

−.101

−.102

.034

−.083

.018

.122

−.060

−.163

.087

−.006

.130

.127

.774   −.134

.754     .046

.702    −.012

.664

.642

.642

.596

.516

.478

.476

.102

.058

.160

.015

.130

−.025

.135

.166

.005

.267

.008

.182

.315

.241

.174

.689

.635

.630

.614

.581

.572

.560

.478

(5)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

子は「グループの雰囲気になじめず、違和感を感 じてしまう」、「仲間の中にとけこめない」など の項目が高い負荷量を示したことから、「集団内 における自己意識」因子と命名した。第2因子は

「人と会うとき、自分の顔つきや目つきが、その 人に悪影響を与えるのではないかと不安になる ことがある」、「人と会うとき、自分の顔つきが気 になる」などの項目が高い負荷量を示したことか ら、「対人関係における自己意識」因子と命名し た。第3因子は「すぐ気持ちがくじける」、「人と の交際が苦手である」などの項目が高い負荷量を 示し、また「大勢の人」、「人前」、「多人数」など 多数の人々を前にした場面が特徴的に見られた ことから、「対大衆における自己意識」因子と命

名した。

 3因子を対人恐怖的心性尺度の下位尺度とし、

信頼性を検討するためにα係数を算出したとこ ろ、集団内における自己意識でα=.95、対人関 係における自己意識でα=.89、対大衆における 自己意識でα=.86であり、いずれも高い信頼 性を有することが確認された。

 次に、多次元自我同一性尺度の20項目につい て因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行 った。その結果、固有値の減衰状況と因子の解釈 可能性から4因子が妥当であると判断した。因子 負荷量.40以上を基準に2項目(「『自分がない』

と感じることがある」、「自分の本当の能力を生 かせる場所が社会にはないような気がする」)を 削除し、全18項目を採用した。回転後の因子パ ターンをTable 2に示す。削除された2項目以外 谷(2001)と同様の因子構造であったため、因子 名をそのまま用い、第1因子は「自己斉一性・連 続性」因子、第2因子は「対自的同一性」因子、

第3因子は「心理社会的同一性」因子、第4因 子は「対他的同一性」因子とした。

 4因子を多次元自我同一性尺度の下位尺度とし、

信頼性を検討するためにα係数を算出したとこ ろ、自己斉一性・連続性でαニ.83、対自的同一 性でα=.85、心理社会的同一性でα=.84、対 他的同一性でα=.79であり、いずれも高い信 頼性を有することが確認された。

 対人恐怖的心性と自我同一性との関連

 対人恐怖的心性と自我同一性との関連を検討 するために、各下位尺度間の相関係数を求めた。

結果をTable 3に示す。全ての下位尺度間に有意 な負の相関が得られ、自我同一性の感覚が低いほ ど対人恐怖的心性が高いことが示された。これは 谷(1997)と同様の結果であり、時代的推移を経 ても両者の関連性が認められることが明らかと なった。詳しく見ていくと、自己斉一性・連続性 が対人恐怖的傾向ともっとも強い負の相関関係 にあることがわかる。自己斉一性・連続性の項目 内容からは、自我同一性を構成する他の3因子

(対自的同一性、心理社会的同一性、対他的同一 性)が、社会の中での暮らし方、日常生活での対 人関係における自己の存在、自分の望みやすべき ことといった、いわば現実の生活の中での自己の 在り方を表しているのに対して、もっと漠然とし た、自己の喪失感や自分という感覚の希薄さを表 していることが特徴的である。このことから、対 人恐怖的心性の根底には、自己という存在の不確 かさの感覚が潜んでいるのではないかと考えら

れる。

対人恐怖的心性および自我同一性の性差  対人恐怖的心性および自我同一性の性別によ る差異を検討するために、下位尺度ごとにt検定 を行った。対人恐怖的心性尺度の下位尺度におけ る男女別平均点およびt値をTable 4に、男女別

(6)

Table 2多次元自我同一性尺度の因子分析結果

項目内容 F1

F2

因子

F3

F4

第1因子

−⊥﹁D341⊥  

11

 自己斉一性・連続性(α=.83)

*過去において自分をなくしてしまったように感じる。

*過去に自分自身を置き去りにしてきたような気がする。

*いつのまにか自分が自分でなくなってしまったような気がする。

*今のままでは次第に自分を失っていってしまうような気がする。

1.47

.08

 70  89

.048   −.161  −.172

.012  −.083   .076

−.088    .468   −.140

−.053    .441  −.015

第2因子対自的同一性(α=.85)

3ρ04007−    1  自分がどうなりたいのかはっきりしている。

 自分が望んでいることがはっきりしている。

 自分のするべきことがはっきりしている。

*自分が何を望んでいるのか分からなくなることがある。

*自分が何をしたいのかよくわからないと感じるときがある。

第3因子心理社会的同一性(α=.84)

 9  現実の社会の中で、自分らしい生き方ができると思う。

12  現実の社会の中で、自分らしい生活が送れる自信がある。

19  現実の社会の中で、自分の可能性を十分に実現できると思う。

15 *自分らしく生きてゆくことは、現実の社会の中では難しいだろうと思う。

第4因子対他的同一性

¶⊥09自870り4 1⊥

        (α=.79)

*自分のまわりの人々は、本当の私をわかっていないと思う。

 自分は周囲の人々によく理解されていると感じる。

*本当の自分は人には理解されないだろう。

*人に見られている自分と本当の自分は一致しないと感じる。

*人前での自分は、本当の自分ではない気がする。

.110   .994  −.147  −.008

−.103   .787   .162  −.100

−.047   .721   .228  −.079

.322    .441  −.146    .257

.046   .401   .191   .192

一.015   .077

.019   .018

−.228   .219

.303  −.024

.34

.06

.57

.18

一.096

.068

.083

.017

一.039    .006  −.229    .948

−.235   .061   .178   .611

−.022   −.091   .111   .587

.269  −.044    .057    .532

.283  −.173   .210   .431

注)*がついている項目は逆転項目を示す。

Table 3対人恐怖的心性と多次元自我同一性の下位尺度間における相関関係 対人恐怖的心性尺度

集団内における 対人関係における 対大衆における  自己意識     自己意識     自己意識        自己斉一性・連続性

       対自的同一性多次元的 自我同一性

 尺度    心理社会的同一性        対他的同一性

一.260**

一.189*

一.272**

一.244**

一.500**

一.318**

一.481**

一.561**

一.541**

一.471**

一.589**

一.434**

**1フ〈.01 *p<.05

Table 4対人恐怖的心性の下位尺度における男女別平均点(SD)およびt値 男性

(N=91)

女性

(N=76)

t値

集団内における自己意識 対人関係における自己意識 対大衆における自己意識

74.90 (27.06)

35.90 (12.18)

27.78 (10.22)

76.34(29.07)

36.59 (11.69)

29.39 (9.92)

一.33 n.s.

一.37 n.s.

一.03 n.s.

(7)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

集団内における自己意識得点

1:1「一

115

92 t

69 46!

 i

 L−−23 一一一L −一一

    男性      女性         性別

Figure 1集団内における自己意識の     男女別平均点

対大衆における自己意識得点

56

48

40

321

一]

24 u

     男性       女性          性別

Figure 3対大衆における自己意識の     男女別平均点

対人関係における自己意識得点

70 u 60[

50

40

30

20  [一一

10 一_一一 1

    男性       女性         性別

Figure 2対人関係における自己意識     の男女別平均点

ー﹂

点を図示したものをFigure 4〜7に示す。 t検定 の結果、対人恐怖的心性尺度と多次元自我同一性 尺度のいずれの下位尺度においても、男女による 有意差は得られなかった。木村(1983)では、従 来対人恐怖が男性に多いと言われてきたが、女性 の対人恐怖が増加し男女差が接近してきている

という先行研究の指摘を受け、対人恐怖的心性に ついて男女での比較を行ったが、性差は認められ なかった注)。内田(1995)も性差について取り上 げ、対人恐怖が男子に多いという見解は諸家の認 めるところであるが、その理由についての解釈は

Table 5多次元的自我同一性の下位尺度における男女別平均点(SD)およびt値 男性

(N=91)

女性

(N=76)

t値

自己斉一一性・連続性

対自的同一性 心理社会的同一性 対他的同一性

19.67(5.81)

21。21(7.16)

17.42(5.56)

21.50(6.09)

20.83(5.26)

20.40(7.00)

17.53(4.68)

21.20(5.63)

一1.34 n.s.

.74n.s.

一.14 n.s.

.33n.s.

平均点を図示したものをFigure 1〜3に示す。ま た、多次元自我同一性尺度の下位尺度における男 女別平均点およびt値をTable 5に、男女別平均

注)木村(1983)では対人恐怖的心性の得点において性差  は認められなかったが、対人恐怖的心性の高群と低群  とを比較し、高群では性別によって現在の自分のイメ  ージおよび友人から見られている自分のイメージに  違いがあることを示している。

(8)

自己斉一性・連続性得点 28

24

20

16

12

P

8!

4[一

    男性       女性         性別

Figure 4自己斉一性・連続性の     男女別平均点

対他的同一性得点

35

30

25

20

15

m

5 L

男性

性別

女性

Figure 7対他的同一性の     男女別平均点

一」

対自的同一性得点

35

P

25

P

P

15

10

r

5       一

    男性       女性         性別

Figure 5対自的同一性得点の      男女別平均点

﹁1ー 十分になされていないということを指摘してい る。内田(1995)でも、本研究で用いた永井(1991)

の対人恐怖的心性尺度の一部を使用し、男女によ る得点の差異を検討しているが、性差は認められ なかった。これらの結果から、少なくとも、対人 恐怖的心性の性別による量的な違いはないよう である。しかし、近年の対人恐怖的心性について の実証的研究を概観すると、性差の問題を取り上 げる頻度は低下する傾向にあるようであり、性差 について検討するには更なる資料が必要である と思われる。

心理社会的同一性得点

28 u

24

20

 [

16

2

8

4

    男性       女性         性別

Figure 6心理社会的同一性得点の     男女別平均点

今後の課題

 最後に、今後の課題について述べる。本研究に おいて、対人恐怖的心性尺度(永井,1991)の因 子分析の結果、集団内における自己意識、対人関 係における自己意識、対大衆における自己意識の

3つの因子を抽出した。しかし、各因子を構成す る項目内容を見ると、例えば、集団内における自 己意識の「不安がつよい(項目40)」、「気分の動 揺が激しい(項目21)」や、対大衆における自己 意識の「すぐ気持ちがくじける(項目7)」「気持 ちが安定していない(項目10)」などの項目は、

他の因子に含まれても解釈が可能である。これら

(9)

青年期の対人恐怖的心性と自我同一性との関連

の項目は不安や恐怖に伴う気分を表すものと考 え、因子の命名において比重を置かなかったが、

対人恐怖的心性の構造をより明確にするには、特 定された場面での気分や行動を表す項目と、場面 を特定しない全般的な気分を表す項目とを分け て測定する必要があると考えられる。また、本研 究は20代男女を調査対象者としているが、大半 が学生であったものの、社会人やフリーターも含 まれている(男性91名中、学生73名、社会人 13名、フリーター5名。女性76名中、学生70名、

社会人4名、フリーター2名)。社会人歴がまだ 短いこと、またフリーターという形態での職業従 事であることから、本研究では学生とあわせて 20代男女として分析対象としたが、自我同一性 は自己の社会での位置付けが大きく関わるもの であり、その意味で学生や社会人といった属性は 重要な要因となる可能性が考えられる。よって、

学生や社会人といった社会的な立場による比較 を行うことが今後の課題として挙げられる。

付 記

 本研究の調査は、東京家政大学文学部心理教育 学科健康心理研究室の三浦正江准教授の2006年 度社会心理学演習(ゼミ)の一環として行われた

ものである。調査において、ゼミ履修生である心 理教育学科4年の市川恵さん、小暮有紀さん、森 下華枝さんに多大なご協力を頂きました。記して

感謝申し上げます。

引用文献

Erikson, E. H. 19591dentity and the 1ffe cycle. New

  York:W. W. Norton&Campany.(小此木啓   吾(訳編) 1973 自我同一性 誠信書房)

笠原嘉1977青年期一精神病理学から一

  中央公論社

笠原嘉1993対人恐怖加藤i正明ら(編)

  新版精神医学事典 弘文堂 p.515.

木村法子 1983 青年期における対人恐怖的心   性について一自己像との関連から一 心理   臨床学研究,1,7−17.

永井 撤 1991 対人恐怖的心性の構…造にっい   て一対人恐怖的心性の質問紙の作成一 聖   セシリア女子短期大学紀要,16,50−55.

宮下一博 1987Rasmussenの自我同一性尺度の   日本語版の検討 教育心理学研究,35,253   −258.

谷 冬彦 1997 青年期における自我同一性と   対人恐怖的心性 教育心理学研究,45,254   −262.

谷 冬彦 2001 青年期における同一性の感覚   の構…造一 多次元的自我同一性尺度(MEIS)

  の作成一 教育心理学研究,49,265−273.

内田裕之 1995 大学生の世間意識と対人恐怖   的心性との関連 心理臨床学研究,13,75−84.

Abstract

 The purpose of this study was to reexamine the Anthropophobic Tendency related to Ego Identity in Adolescence after 10 years which were first proved, and to examine the sex differences in Anthropophobic Tendency and Ego Identity. The subjects were 167 adolescents(age 18−27)of which 91 were males and 76 females, completed a questionnaire of Anthropophobic Tendency Scale(Nagai,1997)and Multidimensional Ego Identity Scale(Tani,1991).The results showed that Anthropophobic Tendency had a significant negative correlation with Ego Identity, and no significant differences between males and females in either Anthropophobic Tendency or Ego Identity.

Key words:Anthropophobic Tendency, Ego Identity, Adolescence, Sex Differences

Table 1対人恐怖的心性尺度の因子分析結果 項目内容 F1 子2因F F3 第1因子集団内における自己意識(α=.95)  38グループの雰囲気になじめず、違和感を感じてしまう。  24仲間の中にとけこめない。  42人が大勢いるとうまく会話の中に入っていけない。  25人と自然に付き合えない。  26他人のことが良く思えて自分がみじめになる。  32集団の中にとけこめない。  33すぐ自分だけが取り残されたような気分になる。  35自分が相手の人に嫌な感じを与えているように思ってしまう。 「39他人が
Table 2多次元自我同一性尺度の因子分析結果 項目内容 F1 F2 因子 F3 F4 第1因子 −⊥﹁D341⊥   11  自己斉一性・連続性(α=.83) *過去において自分をなくしてしまったように感じる。 *過去に自分自身を置き去りにしてきたような気がする。 *いつのまにか自分が自分でなくなってしまったような気がする。 *今のままでは次第に自分を失っていってしまうような気がする。 1.47 .08 70  89 .048   −.161  −.172.012  −.083   .076 −.088

参照

関連したドキュメント

A number of qualitative studies have revealed that Japanese railroad enthusiasts have low self-esteem, are emotionally distant from others, and possess

名の下に、アプリオリとアポステリオリの対を分析性と綜合性の対に解消しようとする論理実証主義の  

以上のことから,心情の発現の機能を「創造的感性」による宗獅勺感情の表現であると

目的 今日,青年期における疲労の訴えが問題視されている。特に慢性疲労は,慢性疲労症候群

ところで、モノ、ヒト、カネの境界を越え た自由な往来は、地球上の各地域の関係性に

一階算術(自然数論)に議論を限定する。ひとたび一階算術に身を置くと、そこに算術的 階層の存在とその厳密性

 複雑性・多様性を有する健康問題の解決を図り、保健師の使命を全うするに は、地域の人々や関係者・関係機関との

本来的自己の議論のところをみれば、自己が自己に集中するような、何か孤独な自己の姿