センスだけでなく,粘り強い子
1.入試のねらい
算数や数学という勉強は,1つの正解を導く過程で様々な力が要求されます.たかが計算 といっても,単なる技術的な問題だけではなく,物事の優先順位や慎重に対処することが問 われます.また,文章題や応用問題を解くには,物事の本質を捉える力が最も重要で,その ためには題意を正確に読み取ること,条件を整理すること,推理することなどが必要となり ます.その上で論理的な思考をつなげて結論に至ります.むしろ,こうした力を養うために 算数や数学を学んでいるというべきでしょう.その上で,おもしろい発想がどんどんわいて きたり,数への執着や図形の特徴を見抜く数学的なセンスもあればなおさらよいのです.
しかし,皆が皆,将来数学のプロになるわけではないのですから,数学を学ぶことによっ て,ものの見方や考え方に磨きがかかればよいのです.そのためには,安直で飽きっぽい子 ではいけません.自分の頭で考え,手を動かし,物事を整理しながら「ああでもない,こう でもない」と粘り強く立ち向かうことが大切です.
実際,小学校時代は算数のセンスがあって算数はよくできただろうと思われる子が,数学 で振るわなくなることがあります.この最大の原因は,自分のセンスだけに溺れて労力を惜 しんでしまうことです.センスもあれば言うことはないのですが,センスをカバーするだけ の粘り強さを有する方が多方面への将来性があると言えます.その意味で,粘り強く頑張れ る小学生が「勉強してよかった」と思うような入試にしたいと考えています.
2.問題の出題傾向と対策
入学試験は選抜試験ですから,あまり易しすぎても難しすぎても意味がありません.受験 生の算数の力がはっきり表れるような問題の作成を心がけています.本校の算数の入試問題 が極端に難しくなく,また基本的な問題をあまり出題しないのもそのためです.入試問題を ご覧になっていただければ,逆に本校の受験生のレベルもわかると思います.
2008年2月に実施された入学試験において,合格者の算数の平均点(150点満点)は,第 1回入試が83.9点(得点率:55.9%),第2回入試が119.4点(得点率:79.6%)でした.
構成は,「数の性質」「場合の数」「比」「速さ」「平面図形」「立体図形」などから5題とな っています.なお,「計算問題」については,2007年度実施の入試より出題しておりません.
算数
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解答方法は,過去には全問記述式にした時代がありましたが,今は一部だけ記述式にして います.小学生の記述は必ずしも論理的ではなく,計算式の羅列やメモ書きのような答案に なりがちですので,何か書いてあればよしとする形式的な記述は避け,答えや理由を言葉で 表現させたり,イメージを作図させたりするような問題を出すようにしています.その際,
言葉の表現が適切でなかったり,あまりに描画がいい加減だったりすると減点の対象として います.また,大問の中では,途中の思考過程を問うような設問を設けることによって部分 的な評価をするようにしています.
つづいて,入試問題の対策ですが,本校では割と典型的なタイプの問題が出題されている ことに気がつくと思います.ただ,典型的なタイプの問題でも多少のひねりが入っています.
やはり算数の力を身につけるには,基礎レベルから標準レベルの問題を繰り返し練習するこ とが第一ですが,入試問題では応用力が必要になってきます.それは,問題集の問題をその まま出題するわけではないからです.応用力はすぐには身につかないかもしれませんが,頭 を使ってじっくり考えることによって,少しずつ身についていきます.したがって,問題集 でいろいろなタイプのものをじっくりと時間をかけて,繰り返し勉強しておくのが合格への 近道です.
◇今年度の入試問題より
今年度の「第1回入試問題(2月2日実施)」は,どの問題も比較的難易度が高く,合格者 と不合格者の得点差が大変大きくなりました.特に「比」の問題である第1問はその差が大 きく,他に「平面図形」の第3問,「立体図形」の第4問もその差が目立ちました.
「第2回入試問題(2月4日実施)」は,全体として難易度は普通でしたが,第1問のよう にほとんどの受験生が解けるような問題や,「立体図形」の第5問のように得点差の大きい問 題も出題されました.
また,今年度に限らず入試問題の得点率などを分析すると,「合格する受験生は,比,速 さ,立体図形に関する問題に強い」と傾向があります.
今年度の入試問題の中から,合否を左右した問題として,「第1回入試第1問」,「第1回入 試第3問」,「第2回入試第5問」を紹介します.
1【2008年度 第1回入試 第1問】
学院中学年生の 聖たかし君と 光ひかる君が,それぞれ計画を立てて夏休みの数学の宿
題をすることにしました.聖君は夏休みの初日から日に題ずつ解くことに し,光君は初めの日間は宿題に手をつけず,日目から解き終わる日まで
日に 題ずつ解くことにしました.
光君が解き始めてから何日か後に,人の解いた問題数が同じであることがわ かりました.聖君は,その翌日から解き終わる日まで日に題ずつ解きました が,すべての問題を解き終わったのは,光君が解き終わった日後でした.
聖君が日に題ずつ解いた日数と日に題ずつ解いた日数が同じであっ たとき,次の問いに答えなさい.
(1) 光君が問題を解き始めてからすべて解き終わるまでに,何日間かかり ましたか.
(2) 聖君が問題を解き始めてからすべて解き終わるまでに,何日間かかり ましたか.
(3) にあてはまる数を答えなさい.
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コメント
この問題は「比」を的確に運用できたかどうかを見る問題で,配点は 20 点でした.合否 別の平均点は,合格者平均は18.3点,不合格者平均は8.8点で,9.5点もの差がついていま す.
この問題を解く鍵は,(1)にあり,これが解ければ(2),(3)の問題は容易に解けます.
問題文の最後に記述されている「聖君が1日に3題ずつ解いた日数と1日に5題ずつ解いた 日数が同じであった」ことに注意し,図を使って問題文の内容をしっかりと把握することが 必要です.
解 説
(1) 聖君が1日に3題ずつ解いた日数と1日に5題ずつ解いた日数とが等しくなるので,
これを前半と後半として考えます.光君のことも考え図に表すと,下の図のようにな ります.
前半が終了した時点で解き終わった問題数は,全体の
になります.
光君が全体の問題数の
だけ解くのに要した日数を③とすると,
(前半の日数)= ③+6(日) (後半の日数)= ⑤+2(日)
となります.ここで,② = 6-2 = 4(日)ですから,光君が問題を解き始めてからす べて解き終わるまでに要した日数は,
6+③+⑤+2 = 8+2×4 = 16(日)
となります.
(2) 聖君は光君よりも日間余分にかかっているので,問題を解き始めてからすべて解き 終わるまでに,= 24(日間)かかったことが分かります.
(3) また,光君は1日につき,(3+5)×12÷16 = 6(題)ずつ解いたことになります.
1日につき,3題 1日につき,5題
1日につき, 題 1日につき, 題
2【2008年度 第1回入試 第3問】
下の図のように,三角形の内部に点があり,頂点,,と点を 通る直線が辺,,と交わる点をそれぞれ,,とします.また,点
を通りに平行な直線ととの交点をとします.
,,,,とするとき,次の問 いに答えなさい.ただし,辺の比が::の三角形は,直角三角形であるこ とが分かっているものとします.
(1) 三角形,三角形,三角形の面積比を最も簡単な整数比 で答えなさい.
(2) :を最も簡単な整数比で答えなさい.
(3) の長さを求めなさい.
(4) 三角形の面積を求めなさい.
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この「平面図形」の問題の配点は20点です.合否別の平均点は,合格者平均は11.2点,
不合格者平均は4.3点で,6.9点の差がついており,不合格者の中には,全く解けない人も数 多くいました.
この問題は,(4)がメインの問題で,(1)~(3)は(4)を解くための誘導問題です.
(1)~(3)の問題は,比較的容易な問題なので,受験生には解いてほしかった問題です.
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(4)は,ヒントの「3辺の比が3:4:5の三角形は,直角三角形である」とどの三角形に 用いるか見極めることが解くためのポイントになります.
解 説
(1) △ABPと△ABCは辺ABが共通ですから,
△ABP:△ABC = FP:FC = 2:4 = 1:2 また,△PBCと△ABCは辺BCが共通ですから,
△PBC:△ABC = DP:DA = 1:4
よって, △ABC:△ABP:△PBC = 4:2:1 となります.
(2) △ABC = ④とすると, △ABP = ②, △PBC = ① よって, △PAC = △ABC-△ABP-△PBC = ①
これにより, △PBC = △PAC
よって,△PBCと△PACの面積が等しいことと辺PCが共通であることから,
AF:BF = 1:1
となります.
(3) FGとBPは平行であることに注目すると,
FG:BP = AF:AB = 1:2
BP = 5より, FG = 2.5(cm) となります.
(4) 同じように考えると, AF:BF = AG:GP = 1:1
AP = 3より, GP = 1.5(cm)
よって,GP:PF:FG = 3:4:5となるので,△FPGは角FPG = 90°の直角三角形 になります.このことから,
△FPG = FP×GP÷2 = 1.5(cm2)
AG=GP=1.5より, △AFP = 2△FPG = 3(cm2) AF=BFより, △ABP = 2△AFP = 6(cm2)
(1)より, △ABC = 2△ABP = 12(cm2) となります.
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3【2008年度 第2回入試 第5問】
真っ暗な場所に,図1のように,1辺60cmの透とう明めいな立方体ABCD-EFGHを 面EFGHが下になるように地面に置きます.辺 AD 上の AM=AD となる点 M にライトを設置したとき,面BFGC上にかかれた図形が地面上にどのような影かげを 作るか考えてみることにしました.
このとき,次の問いに答えなさい.ただし,ライトの大きさは考えないものとし ます.また,図2,3,4の点線は各辺に平行であるものとします.
図
(1) 図2の(ア),(イ)の位置にかかれた長さ20cmの線が地面に作る影の線 の長さをそれぞれ求めなさい.
(ア) 図2 (イ)
(2) 図3の位置にかかれた1辺20cmの正方形が地面に作る影を真上から見 たときの図形を解答欄らんにかき,その面積を求めなさい.
図
(3) 図4の ① ~ ⑥ の位置にかかれた1辺10cm の正方形が地面に作る影の 図形の面積について,最も大きいものと,最も小さいものの番号をそれぞ れすべて答えなさい.
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図
コメント
この「立体図形」に関する問題の配点は20点で,合格者の平均は15.6点,不合格者の 平均点は7.2点でした.「立体図形」の問題を苦手とする受験生は多いのですが,それは頭の 中で立体をイメージすることが難しいからです.立体をイメージできるようになるには,体 験や訓練が必要です.問題を解いていて,立体のイメージがつかみにくいときには,実際に 立体を作り,手で触りながら考えてみるとよいでしょう.一度はっきり理解すると,立体が なくてもイメージすることが出来るようになります.そして,実際に問題を解くときには,
問題としている面(切断面,投影された面など)を図に表し,平面の問題として考えること が大変有効な手段となります.
解 説
(1)(ア) 点Mのライトと面BFGC上にかかれた縦の線を含む切断面を図に表すと,下 の図ようになります.
影は点線の部分 P1Q1になるので,求める長さは,P1R からQ1Rを引いた長さになり ます.そこで,まず,P1Rの長さを求めます.
P1N:P1R = MN:PR = 60:40 = 3:2ですから,
P1R:RN = 2:1
よって, P1R=60×2=120(cm)
同じようにして,Q1R:RN = 1:2より, Q1R= 30(cm)
したがって,(ア)の影の長さは, P1Q1 = 120-30 = 90(cm) となります.
R M
N Q1 P1
Q P
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(イ) (ア)の結果から,(イ)の20cmの線の下端の影は,辺FGより30cmの場所 に作られることがわかります.このことから,真上から見た図は下のようになり ます.
影は点線の部分T1U1になるので,T1U1の長さを求めればよいことになります.
T1U1:TU= 90:60 = 3:2となるので,求める影の長さは,
T1U1 = 20×3÷2 = 30(cm) となります.
(2) (1)のことを参考にして,真上から見た図を表すと下のようになります.
影の形は等脚台形となります(答え).
その面積を求める準備として,V1W1の長さを求めます.
(1)と同じように考えて,
V1W1 = 180×20÷60 = 60(cm)
よって,台形の面積は, (30+60)×90÷2 = 4050(cm2) となります.
M
U
T1
T
U1
M
U1
T1
V1
W1
(3) (1),(2)のことから,面BFGC上にかかれた横方向の線上にある線の長さとそ の影の長さとの比は,線が直線上のどこにあっても変わらないことが分かります.ま た,その線が上方向へ行くほど,その影との長さの比が大きくなることも分かります.
これらのことをふまえて,真上から見た図を表すと下のようになります.
①
③ ②
④
⑤
⑥
したがって,「影の面積が最大のものは,①,②」,「影の面積が最小のものは,⑤,⑥」
になります.
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