グラフ上のランダムウォークと
内藤 久資
名古屋大学多元数理科学研究科
2011年度数学アゴラ 夏季集中コース 2011年8月
(2011/08/12
改訂版)
Introduction はじめに
コンピュータやインターネットで使われている数学 コンピュータやプログラムの基本論理:
ラムダ計算・数理論理学 画像・動画・音声などの処理:
フーリエ変換(解析学)・符号理論(代数学)
3Dグラフィックス:
アフィン幾何学・射影幾何学・微分幾何学 コンピュータネットワーク:
グラフ理論・確率論・暗号(整数論・代数学)
この他にもいろいろ
Introduction はじめに
今回の数学アゴラでは 夏の数学アゴラ
ランダムウォークと
線形代数と3Dグラフィックス
Introduction 話の計画
想定している予備知識
おおよそ高校2年程度の数学
ある程度知っていると仮定していること
◮ 連立一次方程式・二次方程式・複素数
◮ 平面ベクトル・数列・確率 知っていると望ましいこと
◮ 空間ベクトル・行列・一次変換
◮ 三角関数・和の記号(Σ)
◮ 数列の収束
Introduction 話の計画
Plan of Talk
1日目◮ Googleページランクとは何か(Section 2)
◮ 連立一次方程式と線形代数(Section 3.1〜 3.3) 2日目
◮ 連立一次方程式と線形代数(Section 3.4〜 3.5)
◮ 行列の固有値と固有ベクトル(Section 3.6〜3.8) 3日目
◮ グラフとランダムウォーク(Section 4.1〜 4.6) 4日目
◮ Googleページランクとその計算(Section 5)
Introduction 話の計画
この話の目標
以下の中身を「数学」として理解すること
◮ Googleのページランクはどのような考え方の下に決まってい
るか?
◮ その考え方の基礎になっている数学はどのようなものか?
◮ 実際にページランクを計算する際に問題となることは何か?
Googleページランクとは?
Google ページランクとは?
Googleページランクとは?
Googleページランク
(Section 1.1)
「
◮ インターネット上に存在するウェブページのデータを収集 する
◮ ウェブページのデータから「キーワード」を抜き出し データベースに保存する
◮ キーワードに一致するウェブページの情報を データベースから検索する
◮ キーワードに一致したウェブページを
「重要なものを上位にして」表示する
「重要なものを上位に表示」=「ページランクの順位で表示」
Googleページランクとは?
Googleページランク
(Section 2)
「ページランク」とは
◮ 検索結果のウェブページの情報の重要度をきめる尺度
◮ Googleの研究者であるS.Brinと L.Pageによって定義された
(1999年)
◮ 「L.Pageによるランク付け」という言葉の意味もある
「重要度」は以下の2つの考え方による
◮ 多くのページからリンクされているページは「重要なページ」
◮ 重要なページからリンクされているページは「重要なページ」
すべてのウェブページに「重要度」という数値を計算する
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
ページランクのように数学的に曖昧な問題には
「モデル化」ということを行う必要がある
「問題のモデル化」とは
...
◮ 問題の本質的な部分を抜き出して
◮ 数学の言葉に書き直す
◮ 細かいことは後からモデルを修正することで対応する なので
,
細かいことは気にせず,
「うまく記述できる」数学的なモデルを探すことが重要
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
ウェブページの中身◮ ウェブページは「HyperText Mark up Language」と呼ばれる 仕様で記述されている
◮ HTMLの中には「Hyper Link」と呼ばれる 他のページへのリンク情報が書いてある そこで
....
◮ 各ページを「1つの点」とおきかえる
◮ ページAにページB へのリンクがあるとき
「A からB への矢印」をつける
◮ これをすべてのページに適用する
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
世界に3つのページ
v
1, v
2, v
3 のみが存在し,
v
1 からはv
2, v
3 へ, v
2 からはv
3 へ, v
3 からはv
1 へ リンクがあるときこのリンクをあらわす図は以下のようになる
. v
1v
2v
3(Example 2.1.1, P.5)
このような「頂点と向きの付いた辺の組」を
「グラフ」(「有向グラフ」)と呼ぶ
.
(Definition 2.1.2, P. 5)
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
ページランクのモデル化の第1ステップ:
「インターネット上のウェブデータ全体のリンク構造を
(有向)グラフと考える」
ページランクの定義
(Definition 2.1.3, P. 6)
ページv
i のランクr(v
i)
を次の式で定義するr(v
i) = X
vj∈Bvi
r(v
j)
|v
j| (2.1)
(ただし
B
vi はv
i を始点とする辺の集合)「すべてのページに対するページランクの値の組
{r(v
i)}
を式
(2.1)
が成り立つように定義する」という意味である.
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
Example 2.1.6
のグラフから決まるページランクの式
r
1= r
3, r
2= 1
2 r
1, r
3= 1
2 r
1+ r
2(2.2)
(Example 2.1.6, P. 7)
これは
,
未知数{r
1, r
2, r
3}
に対する連立一次方程式 連立一次方程式(2.2)
の解r
1= k, r
2= k/2, r
3= k
Googleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
Example
の連立一次方程式(2.2)
は
r
1− r
3= 0,
− 1
2 r
1+ r
2= 0,
− 1
2 r
1− r
2+ r
3= 0
(2.3)
の形をしているので
(0, 0, 0)
は明らかに解となる なので(0, 0, 0)
以外の解を探す必要があるGoogleページランクとは?
問題のモデル化
ページランクのモデル化
(Section 2.1)
これでページランクを以下のようにモデル化できた
◮ インターネット上のウェブデータ全体のリンク構造を 有向グラフと考え
◮ 連立一次方程式(2.1)の解として ページランクを定義する
Googleページランクとは?
問題の確率的なモデル化
ページランクの確率的なモデル化
(Section 2.2)
ページランクのもう一つのモデル化として ユーザの滞在確率に基づくモデル化ができるある時刻
t = n
でのインターネットの滞在ユーザのうち ページv
i に滞在しているユーザの割合をp
i(n)
とおく ページv
i に滞在しているユーザは次の時刻
t = n + 1
にはリンクをたどって他のページに 移動するユーザがページ内のどのリンクをクリックするかは 等確率と仮定する
Googleページランクとは?
問題の確率的なモデル化
ページランクの確率的なモデル化
(Section 2.2)
長時間にわたって
,
このプロセスを繰り返したときの各ペー ジのユーザの滞在確率p(v
i) = p
i= lim
n→∞
p
i(n)
をページv
i のページランクと定義する.
つまり{p
i(n)}
から{p
i(n + 1)}
をきめる式はp
i(n + 1) = X
vj∈Bvi
1
|v
j| p
j(n) (2.4)
で与えられる.
Googleページランクとは?
問題の確率的なモデル化
ページランクの確率的なモデル化
(Section 2.2) Example 2.1.1
の場合
p
1(n + 1) = p
3(n), p
2(n + 1) = 1
2 p
1(n), p
3(n + 1) = 1
2 p
1(n) + p
2(n)
(2.5)
p
1(0) = 1, p
2(0) = p
3(0) = 0
の時t 1 2 3 4 5 6 7 8 9 · · ·
p1 0 1/2 1/2 1/4 1/2 3/8 3/8 7/16 3/8 → 2/5 p2 1/2 0 1/4 1/2 1/8 1/4 3/16 3/16 7/32 → 1/5 p3 1/2 1/2 1/4 1/2 3/8 3/8 7/16 3/8 13/32 → 2/5
長時間経過したときの滞在確率
(p
1, p
2, p
3) = (2/5, 1/5, 2/5)
は
Example 2.1.6
の連立一次方程式の解になるGoogleページランクとは?
問題の確率的なモデル化
ページランクの確率的なモデル化
(Section 2.2) Theorem 2.2.4 (P. 9)
数列
{p
i(n)}
を漸化式(2.4)
で定義する.
すべての
i
についてp
i(n)
のn → ∞
としたときの 極限p
i が存在すると仮定すれば,
極限{p
i}
はp
i= X
vj∈Bvi
1
|v
j| p
j(2.6)
をみたす
つまり
,
この定理の仮定の下では両方のモデルによる定義式
(2.6), (2.1)
は同じ 要するに「どっちのモデルで考えてもよい」Googleページランクとは?
モデル化のまとめ
ページランクのモデル化のまとめ
(Section 2.3)
インターネット上のウェブデータ全体のリンク構造を
(有向)グラフと考え
◮ 各ページのリンク情報をあらわす連立一次方程式の解を ページランクとする
◮ ユーザの滞在確率をページランクとする
のいずれかのモデルを考えればよいことがわかる
いずれのモデルであっても次のような問題を考察する必要が ある
Googleページランクとは?
モデル化のまとめ
ページランクのモデルに関する問題
(Section 2.3)
これらのモデルを考えるために適切な数学の道具は何か?
第一のモデルについて:
◮ この連立一次方程式は,必ず解を持つのか?
◮ 解を持つとしたら,その解はただ一つに限るのか?
第二のモデルについて:
◮ 長時間経過したときに,滞在確率は,必ずある一定の値に収束 するのか?
◮ それは初期条件(t
= 0
での滞在確率)の与え方に依存する のか?◮ 「長時間」とはどのくらいの時間(計算ステップ数)を意味 するのか?
これらの計算プロセスは
,
どのくらいの時間がかかるのか?数万〜数十億ページを含むデータに対して計算可能なのか?
連立一次方程式と線形代数
連立一次方程式と線形代数
連立一次方程式と線形代数 連立一次方程式
連立一次方程式
(Section 3.1)
ここでは連立一次方程式( ax + by = x
1,
cx + dy = y
1, (3.1)
の解について調べよう
本当は
,
より一般の連立一次方程式を調べたいのだけど...
a
11x
1+ a
12x
2+ · · · + a
1Nx
N= a
1, a
21x
1+ a
22x
2+ · · · + a
2Nx
N= a
2,
.. .
a
N1x
1+ a
N2x
2+ · · · + a
N Nx
N= a
N,
連立一次方程式と線形代数 連立一次方程式
連立一次方程式
(Section 3.1)
(3.1)
の解について,
高校では次のようにならう(はず)1 直線ax
+
by=
x1,cx+
dy=
y1 が相異る2直線であり,平行 でない場合には,2直線の共有点はxy-平面上の1点となり,その点が(3.1)の解となる. 特に,解は次のように書ける.
x
=
by1−dx1ad−bc , y
=
ay1−cx1 ad−bc2 直線ax
+
by=
x1,cx+
dy=
y1 が同一の直線となる場合に は,その同一の直線ax+
by=
x1 上のすべての点が(3.1)の 解となる.3 直線ax
+
by=
x1,cx+
dy=
y1 が平行な相異る2直線であ る場合には,この2直線の共有点は存在しないので, (3.1)の 解は存在しない.連立一次方程式と線形代数 連立一次方程式
連立一次方程式
(Section 3.1)
前ページの事実を次のことを使って書き換える
.
◮ 「ax
+
by=
x1, cx+
dy=
y1が平行」⇐⇒「ad−bc
= 0」
◮ 「ax
+
by=
x1, cx+
dy=
y1が同一の直線」⇐⇒「a
:
b:
x1=
c:
d:
y1」(3.1)
の解の存在は次のように分類できる1 ad−bc6= 0ならば, (3.1)はただひとつの解を持つ
2 ad−bc= 0かつby1−dx1
= 0
(またはay1−cx1= 0)なら
ば,ax+
by=
x1 をみたすすべての(x, y)
が (3.1)の解と なる.3 ad−bc= 0かつby1−dx16= 0 (または ay1−cx16= 0)なら ば, (3.1)の解は存在しない.
連立一次方程式と線形代数 連立一次方程式
連立一次方程式
(Section 3.1)
重要なこと「解がただひとつに決まる」
⇐⇒
「ad − bc 6= 0
」 連立一次方程式を「写像」と考えるx y
7→
ax + by cx + dy
xy-
平面上の点(x, y)
を(ax + by, cx + dy)
へ「移動」した とき(ax + by, cx + dy ) = (x
1, y
1)
となる点(x, y)
が見つかる⇐⇒ (x, y)
は(3.1)
の解このとき
ad − bc 6= 0
という条件は何を意味するのか?連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル
(Section 3.2)
「ベクトル」とは
N
個の実数{x
i}
Ni=1 を縦に並べたものx =
x
1.. . x
N
x = (x
i)
と簡単に書いてしまうこともある(Definition 3.2.1, P. 13)
各
x
i をx
の第i
成分と呼ぶ連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
数ベクトル空間
(Section 3.2)
N
成分の列ベクトル全体の集合R
N=
x =
x
1.. . x
N
: x
i∈ R
を
N
次元数ベクトル空間と呼ぶ(Definition 3.2.2, P. 13)
R
N の元で,
すべての成分が0
であるベクトルを零ベクトル0
と書く(Definition 3.2.4, P. 13)
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
数ベクトル空間
(Section 3.2)
2次元数ベクトル空間
R
2 の元とxy-
平面上の点とは1対1対応がある◮ xy-平面上の座標
(x, y)
を持つ点と ベクトルx=
x y
は1対1に対応する 3次元数ベクトル空間
R
3 の元とxyz-
空間内の点は1対1に対応するN
次元数ベクトル空間R
N は座標平面・座標空間を一般化した概念
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトルの和とスカラー倍
(Section 3.2)
R
N の2つのベクトルx, y ∈ R
N に対して和x + y
x =
x
1.. . x
N
, y =
y
1.. . y
N
= ⇒ x + y =
x
1+ y
1.. . x
N+ y
N
a ∈ R , x ∈ R
N に対してx
のa
倍(スカラー倍)x =
x
1.. . x
N
= ⇒ ax =
ax
1.. . ax
N
(Definition 3.2.6, P. 14)
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間とは
(Section 3.2)
ベクトル空間とは◮ 和とスカラー倍が定義できて
◮ 零ベクトルと呼ばれる特別な元が存在する集合のこと 数ベクトル空間と
座標平面・座標空間を同一視することによって 座標平面・座標空間に演算が定義できるようになった
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間の部分空間
(Section 3.2)
R
N の部分集合W
が部分空間であるとはW
が以下の3つの条件をみたすこと1 零ベクトルはW に含まれる. すなわち,0∈W である.
2 W の任意の2つの元x,y∈W に対してx
+
w∈W をみ たす.3 W の任意の元x∈W と任意のa∈Rに対してax∈W を みたす.
R
2 の部分空間とはxy-
平面上の原点を通る直線のことR
3 の部分空間とはxyz-
空間内の原点を通る直線または原点を通る平面のこと連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間の部分空間の例
(Section 3.2, Example 3.2.9) x ∈ R
2 に対してW = {ax : a ∈ R }
はxy-
平面上で,
原点を通り,
方向ベクトルがx
となる直線◮ x
= 1
2
ならばW
=
a2a
(直線y
= 2x
上の点全体)x, y ∈ R
3 (x
はy
のスカラー倍でない)に対してW = {ax + by : a, b ∈ R }
は
xyz-
座標空間内で,
原点を通り, x, y
を含む平面◮ x
=
1 1 0
, y
=
0 1 1
ならばW
=
a a
+
bb
(平面x−y
+
z= 0
上の点全体)連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の次元
(Section 3.2)
我々が普通に思っている次元◮ 「1点」=「0次元」
◮ 「直線」=「1次元」
◮ 「平面」=「2次元」
◮ 「空間」=「3次元」
「次元」=「自由に動き回れる方向」
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の次元
(Section 3.2)
R
N の中のk
本のベクトルの組{x
1, . . . x
k}
が一次独立a
1x
1+ · · · + a
kx
k= 0 = ⇒ a
1= · · · = a
k= 0
が成り立つこと◮ 一次独立でないとき一次従属という
(Definition 3.2.11, P. 15)
2つのベクトル
{x, y}
が平行でない⇐⇒ {x, y}
は一次独立連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の次元
(Section 3.2, Example 3.2.13)
ベクトルの組{x, y, z}
が一次従属であると仮定するax + by + cz = 0
かつa, b, c
のうち少なくとも一つは0
でない◮ a6= 0と仮定すると,x
=
−bay−caz◮ よって,ベクトルxはyと z を含む平面上の点をあらわす
y z
x
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の次元
(Section 3.2, Example 3.2.14) x =
1 2
, y = 1
−1
:一次独立
x = 1
2
, y = −2
−4
:一次従属
(y + 2x = 0 )
x =
1 1 0
, y =
0 1 1
:一次独立x =
1 1 0
, y =
0 1 1
, z =
1
−1 1
:一次独立x =
1 1 0
, y =
0 1 1
, z =
2 3 1
:一次従属(2x + y − z = 0 )
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の次元
(Section 3.2)
数ベクトル空間またはその部分空間
V
の次元がk (dim V = k)
◮ V の中から一次独立なk 個のベクトルの組を選べる
◮ V の任意のk
+ 1
個のベクトルは一次従属(Definition 3.2.15, P. 17)
これで我々がおもっている「自由に動ける方向の自由度」
と一致した次元になる
dim R
N= N
なので, R
N の中からN
個のベクトルの組{x
1, . . . , x
N}
で一次独立なものを選ぶことができる連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の基底
(Section 3.2) dim V = k
のとき一次独立な
V
のベクトルk
個からなる組を基底と呼ぶ(Definition 3.2.19, 18)
数ベクトル空間
R
N においてe
1=
1 0 .. . 0
, · · · , e
N=
0 .. . 0 1
∈ R
Nは基底になる:
R
N の標準基底連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の基底
(Section 3.2)
dim V = k
であって, {x
1, . . . , x
k}
が基底であるとき◮ すべてのx∈V は x
=
a1x1+
· · ·+
akxkと書くことができる
◮ 一次独立なベクトルの組の上のような和で書くことを 一次結合であらわすという
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトル空間・部分空間の基底
(Section 3.2) R
2 の基底の例:(Example 3.2.21, P. 18)
◮ e1
= 1
0
,e2
= 0
1
:標準基底
◮ x1
= 1
1
,x2
= 1
−1
◮ y1
= 1
0
,y2
= 1
1
このほかにも無数の基底の取り方がある
x =
2 3
を上のそれぞれの基底の一次結合で書いてみる
x = 2e
1+ 3e
2= 5 2 x
1− 1
2 x
2= −y
1+ 3y
2(Example 3.2.24, P. 18)
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトルのノルム
(Section 3.2)
R
N のベクトルx
のノルムkxk
とは1 x∈RN に対して,kxk は非負実数をきめる
2 x∈RN,k∈Rに対して,kkxk
=
|k| kxkが成り立つ3 x,y∈RN に対して,kx
+
yk ≤ kxk+
kykが成り立つ4 kxk
= 0
⇐⇒x=
0が成り立つ(Definition 3.2.25, P. 19)
通常我々が使う「ベクトルの長さ」
,
「ベクトルの間の角度」
,
「2点間の距離」をきめているp x
2+ y
2 のなかから「ベクトルの長さ」がもつ性質だけを抜き出したもの
連立一次方程式と線形代数 数ベクトル空間
ベクトルのノルム
(Section 3.2)
よく利用されるノルムの例
(Example 3.2.26, P. 19) kxk
1= |x
1| + · · · + |x
N|,
kxk
2= p
|x
1|
2+ · · · + |x
N|
2, kxk
∞= max
i=1,...,N
|x
i|
1
−1 1
−1
1
−1 1
−1
1
−1 1
−1
kxk1= 1 kxk2= 1 kxk∞= 1
連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列
(Section 3.3, Definition 3.3.1) N × N
行列(N
次正方行列)A =
a
11a
12· · · a
1Na
21a
22· · · a
2N.. . .. . . .. .. . a
N1a
n2· · · a
N N
= a
1. . . a
N=
a
1.. . a
N
a
ij :A
の(i, j)
成分前から
k
列目の列ベクトルa
k=
a
1k.. . a
N k
を第k
列 前からℓ
行目の行ベクトルa
ℓ= a
1ℓ· · · a
N ℓを第
ℓ
行 簡単にA = (a
ij)
と書いちゃうこともある連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列
(Section 3.3, Definition 3.3.3) A = (a
ij)
のa
ii の部分:対角成分E =
1 · · · 0 .. . . .. ...
0 · · · 1
単位行列O =
0 · · · 0 .. . . .. ...
0 · · · 0
零行列連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列の和とスカラー倍
(Section 3.3, Definition 3.3.4)
N × N
行列A = (a
ij), B = (b
ij)
に対して,
和A + B
をA + B = (a
ij+ b
ij)
k ∈ R , N × N
行列A = (a
ij)
に対して,
スカラー倍kA
をkA = (ka
ij)
A = 1 2
3 4
, B = 3 1
2 5
のとき
A + B = 4 3
4 9
, 3A =
3 6 9 12
連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列とベクトルの積
(Section 3.3)
(縦ベクトル)
x = (x
i) ∈ R
N とN × N
行列A = (a
ij)
の積Ax
をAx =
N
X
k=1
a
ikx
k!
結果は
R
N の縦ベクトル(Definition 3.3.5, P. 21) A =
1 2 3 4
, x =
2 3
のとき
Ax = 8
18
A = a b
c d
, x = x
y
のとき
Ax =
ax + by
cx + dy
連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列と行列の積
(Section 3.3)
N × N
行列A = (a
ij), B = (b
ij)
の積AB
をAB =
N
X
k=1
a
ikb
kj!
結果は
N × N
行列(Definition 3.3.6, P. 21) A =
a b c d
, B =
x y w z
のとき
AB =
ax + bw ay + bz cx + dw cy + dz
, BA =
ax + cy bx + dy aw + cz bw + dz
A = 1 2
3 4
, B = 2 3
4 5
のとき
AB =
10 13 22 29
BA =
11 16
19 28
連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
行列
(Section 3.3)
N × N
行列A = (a
ij), B = (b
ij)
の積AB
はB = b
1· · · b
Nと縦ベクトルで書いたとき
AB = Ab
1· · · Ab
Nとして
N
個の「行列×ベクトル」の計算をしていること(Remark 3.3.12, P. 22)
N × N
行列A = (a
ij)
に対してその転置行列
A
T をA
T= (a
ji)
と定義する(行と列を入れ替えた行列のこと)
(Definition 3.3.7, P. 21) A =
a b c d
のとき
A
T= a c
b d
連立一次方程式と線形代数 行列と連立一次方程式
連立一次方程式を行列で書く
(Section 3.3, Example 3.3.13)
連立一次方程式( ax + by = x
1,
cx + dy = y
1, (3.1)
は
A = a b
c d
, x = x
y
, b = x
1y
1とおくと
Ax = b
と単純な形で書くことができる連立一次方程式と線形代数 線形写像
線形写像
(Section 3.4)
N × N
行列A = (a
ij)
が定める線形写像(一次変換)R
N∋ x 7→ Ax ∈ R
N のこと(Definition 3.4.1, P. 23)
線形写像は次の性質を持つ
.
1 A0
=
0.2 任意のx,y∈RN,λ,µ∈Rに対して, A(λx
+
µy) =λAx+
µAy が成り立つ.(Proposition 3.4.2, P. 23)
連立一次方程式と線形代数 線形写像
線形写像の例
(Section 3.4, Example 3.4.4) A =
1 2 3 4
のとき
Ae
1= 1 2
3 4 1 0
= 1
3
, Ae
2= 1 2
3 4 0 1
= 2
4
よって
, Ax = 1 2
3 4 2 3
= 8
18
基底
{x
i}
を取ったとき,
行列
A
から定まる線形写像の行き先は,
基底の行き先{Ax
i}
で完全に記述できる(Remark 3.4.5, P. 25)
単位行列
E
はEx = x
となる線形写像をきめる 零行列O
はOx = 0
となる線形写像をきめる連立一次方程式と線形代数 線形写像
線形写像の例
(Section 3.4, Example 3.4.7)
行列A =
−1 0 0 1
が定める線形写像は
, x 7→ −x, y 7→ y
であるので, y
軸に関 する折り返しA =
1 0 0 −1
が定める線形写像は
x
軸に関する折り返し 原点を通る直線に関する折り返しは線形写像x Ax
x Ax
連立一次方程式と線形代数 線形写像
線形写像の例
(Section 3.4, Example 3.4.8)
原点を中心とする角度θ
の回転は 行列A =
cos θ − sin θ sin θ cos θ
できまる線形写像
x Ax
θ
連立一次方程式と線形代数 線形写像
逆行列
(Section 3.4)
N × N
行列A
に対して,
AA
−1= A
−1A = E
をみたすN × N
行列A
−1 が存在すればA
−1 をA
の逆行列と呼ぶ(Definition 3.4.9, P. 26)
A
に逆行列が存在するとき, A
は正則とよばれる連立一次方程式と線形代数 線形写像
逆行列
(Section 3.4) A =
a b c d
, A
−1=
x y z w
とおいて計算してみる
AA
−1=
ax + bz ay + bw cx + dz cy + dw
= 1 0
0 1
◮ ad−bc6= 0ならば A−1
=
x y z w
= 1
ad−bc
a −b
−c d
◮ ad−bc
= 0
の時には逆行列が存在しない(Example 3.4.10, P. 26)
連立一次方程式と線形代数 線形写像
連立一次方程式の解の存在と逆行列
(Section 3.4)
「連立一次方程式がただひとつの解を持つための条件」
⇐⇒
「
A
が逆行列を持つための条件」となっていることがわかった
N × N
行列A
が逆行列を持てば連立一次方程式
Ax = b
にはただひとつの解x = A
−1b
が存在する
(Theorem 3.4.14, P. 27)
連立一次方程式と線形代数 線形写像
連立一次方程式の解の存在と逆行列
(Section 3.4, Example 3.4.15) ( x + 2y = 3,
3x + 4y = 4 1 2
3 4 x y
= 3
4
この行列
1 2
3 4
には逆行列が存在する
x y
=
−2 1
3 2
−
121 2 3 4
x y
=
−2 1
3 2
−
123 4
= −2
5 2
連立一次方程式と線形代数 線形写像
ページランクをきめる連立一次方程式
(Section 3.4)
ページランクを計算する際の連立一次方程式r(v
i) = X
vj∈Bvi
r(v
j)
|v
j| (2.1)
は
Ax = x
の形をしているこの連立一次方程式は
,
両辺に逆行列を左からかけても解を得ることはできない ページランクに関係する連立一次方程式を解くためには
,
線形写像に関するより詳しい情報が必要連立一次方程式と線形代数 行列式
逆行列を持つための条件と行列式
(Section 3.5) 2 × 2
行列A =
a b c d
について以下の4条件は同値
1 Aが正則である. (Aには逆行列A−1が存在する.)
2 ad−bc6= 0
3 Aを2つの列ベクトルa1
=
ac
,a2
=
bd
を使って A
= (a
1a2)
と書いたとき,{a1,a2}が一次独立である.4 Aを2つの行ベクトルa1
=
a b,a2
=
c dを使って A=
a1
a2
と書いたとき,{a1,a2}が一次独立である.
(Theorem 3.5.1, P. 28)
連立一次方程式と線形代数 行列式
行列式
(Section 3.5) 2 × 2
行列A =
a b c d
に対して
,
その行列式det A
をdet A = ad − bc
で定義する(Definition 3.5.2, P. 28) N × N
行列の場合の行列式◮
3
×3
行列の場合det
A=
a11a22a33+
a12a23a31+
a13a21a32−a13a22a31−a12a21a33−a11a23a32
(3次式になっている)
◮ N×N 行列の場合には,aij に関するN 次式のN
!
項の和(Remark 3.5.3, P. 28)
連立一次方程式と線形代数 行列式
逆行列を持つための条件と行列式
(Section 3.5)
N × N
行列A = (a
ij)
に対して,
以下の4条件は同値1 Aが正則である. (Aには逆行列A−1が存在する.)
2
det
A6= 03 AをN 本の列ベクトルai
=
a1i
... aN i
を使って
A
= (a
1. . .aN)
と書いたとき,{a1, . . . ,aN}が一次独立4 AをN 本の行ベクトルaj
=
aj1 · · · ajNを使って A=
a1
... aN
と書いたとき,{a1, . . . ,aN}が一次独立
(Theorem 3.5.4, P. 29)
連立一次方程式と線形代数 行列式
行列式の性質
(Section 3.5)
行列式は以下の性質をみたす
.
1
det
E= 1
2
(det
A)(detB) = (detAB)3
det
AT= det
A(Theorem 3.5.6, P. 29)
連立一次方程式と線形代数 行列式
行列のランク
(Section 3.5)
N × N
行列A
をN
本の列ベクトル{a
k}
Nk=1 を使ってA = a
1· · · a
Nと書いたとき
, {a
k}
Nk=1 の中の一次独立なベクトルの本数の最大の値を
A
のランクと呼ぶ(Definition 3.5.7, P. 29)
N × N
行列A
に対して,
以下の条件は同値1 Aが正則である. (Aには逆行列A−1が存在する.)
2
rank
A=
N である.(Theorem 3.5.8, P. 29)
連立一次方程式と線形代数 行列式
行列のランクと線形写像
(Section 3.5) N × N
行列A
がきめる線形写像をf
A: R
N−→ R
N, x 7→ Ax
と書くことにしようこのとき次が成り立つ
◮
rank
A=
N ならば(detA6= 0ならば) fA(
RN) =
RN が成り立つ◮
rank
A< N ならば(detA= 0
ならば) fA(
RN)
⊂RN (真に部分空間)が成り立つつまり
det A = 0
のときAx = b
が解を持つか否かはb ∈ f
A( R
N) or b 6∈ f
A( R
N)
で状況が異なる
連立一次方程式と線形代数 行列式
次元定理
(Section 3.5)
「像」と「核」の定義
◮ N×N 行列Aが定める線形写像fA に対して
fA
(
RN)
をfA の像と呼びIm
fA またはIm
Aであらわす◮ {x∈RN
:
fA(x) =
0}=
{x∈RN:
A(x) =0} をfA の核と呼び,ker
fAまたはker
Aであらわす(Definition 3.5.9, P. 30)
N × N
行列A
に対して,
次が成り立つ.
1
dim Im
A= rank
A,2 N−
dim ker
A= dim Im
A. (「次元定理」)3
det
A6= 0 ならばdim Im
A=
N,dim ker
A= 0.
(Theorem 3.5.11, P. 30)
連立一次方程式と線形代数 行列式
連立一次方程式の可解性
(Section 3.5)
連立一次方程式
Ax = b
の可解性は以下のように分類できる1 Aが正則ならば,任意のb∈RN に対して, ただひとつの解x
=
A−1bが存在する.2 Aが正則でないとき.
2.1 b6∈ImAならば,解は存在しない. 2.2 b∈ImAならば,解が存在する.
一つの解をx0 とおいたとき,任意のy∈kerAに対して, x=x0+yも解となり,任意の2解の差はkerAに入る.
(Theorem 3.5.13, P. 31)
連立一次方程式と線形代数 行列式
連立一次方程式の可解性(
2 × 2
行列の場合)(Section 3.5)
連立一次方程式a bc d xy=xy11
の可解性
1 ad−bc6= 0ならば,任意の b∈R2 に対して, ただひとつの解x
=
A−1bが存在する.2 ad−bc
= 0
ならば 2.1„a c
« と
„x1 y1
«
が平行でないならば解は存在しない. 2.2
„a c
« と
„x1
y1
«
が平行でならば解が存在する. 解x0 が一つでも見つかれば,その他の解xは x=x0+k
„ b
−a
«
と書ける.
(Corollary 3.5.14, P. 31) a
c
∈ Im A, b
−a
∈ ker A
であることに注意しよう連立一次方程式と線形代数 行列式
連立一次方程式の可解性(
2 × 2
行列の場合)(Section 3.5)
ImA kerA (x1, y1)
ImA kerA
(x1, y1)
このような時には解は存在しない このような時には解は存在する
ImA kerA
ImA kerA
a+d6= 1の時 a+d= 1の時
(cf. Example 3.5.15) (cf. Example 3.5.16)
連立一次方程式と線形代数 行列式
2 × 2
行列の場合(Section 3.5, Example 3.5.15) 2 1
−2 −1 x y
= a
b
の解を調べてみる
◮
det
A= 0
◮
ker
A= span
−12
,
Im
A= span
1
−1
◮ b
=
ab
∈
Im
Aの時(a=
−bの時)にのみ解が存在する◮ x
=
a−a
+
t −12
と書ける
これは
ker
Aを表している直線2x +
y= 0
に平行で,(a,
−a)を通る直線a = b = 0
と取ったときAx = 0
に0
でない解が存在する その解は1
次元(= dim ker A
)分存在している行列の固有値