論文内容要旨
論文題名 後期高齢者の白内障手術による視覚に関連した 健康関連QOL の検討
掲載雑誌名 日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 第31巻 第4号 606-611頁 2017年
専攻名 外科系眼科学 油井 千旦 内容要旨
緒言
75 歳以上の後期高齢者の割合の増加に伴い、白内障手術患者の高齢者 の割合も年々増加している。白内障手術により視力の回復だけでなく、日 常生活動作が改善するという報告も多い。そこで今回、昭和大学藤が丘リ ハビリテーション病院(以下、当院)における高齢者の白内障手術に対し 術前後の視覚に関連した健康関連QOLを測定し、比較検討を行った。
対象と方法
対象は2015 年3月から6月に当院で白内障手術(水晶体乳化吸引術及 び眼内レンズ挿入術)を受けた 75 歳以上の後期高齢者 50 名である。検 討項目は年齢、性別、手術施行眼、全身合併症の有無、術前後の矯正最高 視力、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、健康関連QOLである。
全身合併症の有無およびHDS-Rは術前に本人または家族から聴取し、健 康関連QOLは術前後にNEI VFQ-25日本語版を用いて測定し、調査票は 自己記入式とした。より精度を上げるため、25 の質問項目にオプション で14の質問項目を追加したVFQ-39 を使用し、質問項目の得点は7つの 下位尺度毎に得点化し、手術前後で比較した。また認知症疑い患者とそれ 以外の患者に分けて術前後の得点を検討した。白内障術後の日常生活動作 の改善に関するアンケート調査では細かい質問項目は設けず自由に記載 してもらい、多かった回答を集計した。
結果
患者の平均年齢は81.4±4.5歳、男性22名、女性 28名で、片眼手術症 例が10例、両眼手術症例が 40例であった。全身合併症を 38名(76%)
に有しており、HDS-Rにて9名(18%)に認知症疑いを認めた。術眼90 眼において、平均術前視力は logMAR 視力で 0.26±0.24、平均術後視力 は 0.05±0.21 と有意に改善していた。術前に白内障以外の眼底疾患を有 したのは14眼だった。
VFQ-39 の結果は、白内障手術によって「一般的健康感」「総合得点」
は有意に改善し、下位尺度7項目中 5項目において有意な改善を示した。
認知症を認めない患者と認知症疑い患者で比較すると、認知症を認めない 患者では「一般的健康感」「総合得点」は有意に改善し、下位尺度 7 項目 中5項目において有意な改善を示した。認知症疑い患者ではすべての項目 においてスコアは改善したものの、有意差は認められなかった。日常生活 動作の改善に関するアンケートでは50人中36人(72%)から回答が得ら れ、「テレビや新聞が見やすくなった」という回答が最も多く、続いて「明 るくなった」「色がはっきり見えるようになった」という回答が多かった。
考按
後期高齢者においても白内障手術は視覚に関連した健康関連QOLの向 上に有用であった。しかし後期高齢者では視覚以外の面でも生活上手助け を必要とし、行動が制限されていることが多いため、「誰かの手助けを必 要とすることが多い」「ものごとが思い通りにやりとげられないことがあ る」といった質問のスコアの改善が少なかったと推測された。
本研究により白内障手術を施行することにより、後期高齢者の ADL、 QOLの改善が期待できると考えられた。