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杉 本 信 夫 南島研特別研究員

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Academic year: 2021

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(1)

屋久島。湯泊の「笠踊りうた」について

杉 本 信 夫

南島研特別研究員

81

鹿児島のズィングアカデミー(女声合唱団。指揮小笠原克美)が,昭和55年度の県文化行事 の巡回公演で屋久島を訪れ,10月18日に屋久町総合センターにて,わたしが採譜。作曲した 屋久島のわらべうたによる合唱組曲を演奏した。超満員の熱気につつまれた音楽会のあと,屋 久町教育長の脇田典年氏と懇談する機会があり,そこで屋久島のうたによる合唱曲の話から,

屋久島の古いうた,琉球音階による「まつばんだ」をわたしが追っていることなどが話題にの ぼり,脇田氏より屋久町の湯泊に,安南から来たとも,琉球から来たともいわれる,意味のよ くわからない「笠踊りうた」が伝えられていることをきいた。このあと早速,脇田氏の案内で 湯泊へ車をとばし,伝承者の岩川年松さん宅を訪れ,ここでうたをぎぎ,また近所の人を混じ えて実際に踊っていただいたのである。

ぬ ぷ く ど

なんと「笠踊りうた」の旋律は,採譜に承るように,ほとんど完全な型の沖縄の「上い口

うち

説」である。しかし歌詞は「上い口説」とは全く関係はないが,沖縄方言のなまったものによ っている。そして新たに地元の歌詞もつけ加えられているのである。

踊りは,青年たちが白い着物に五色の樺をかけ,脚半ばつけず,裸足で菅笠をもって,二人 組になる。そして力づよい「ホイサホーイササーサ」などのかけ声とともに,動きの大き いダイナミックな踊りが展開されるのである。これは沖縄の古典舞踊の「上い口説」とは全く

異なっている。

この「笠踊り」は,毎年11月23日の湯泊大山祇神社の大祭で奉納されてきたものである。

昔は祭が近づくと,青年たちが焚火をかこんで毎晩踊りの稽古をしたが,先輩方の指導はきび しく,笠の持ち方や踊り方がわるいと,火のついた棒でなく・られたという。これは湯泊の青年

たちのつとめでもあったのである。

祭の当日には,屋久島の南西のはずれの栗生から,馬を引いて神官を招いた。そして他の部 落からもたくさんの見物客がやってきた。それはこの笠踊りがほかのところにはなく,きびき びしておもしろいので,何度ゑてもあきないとの評判であったからである。

うたは交互に二人でうたわれるが,楽器は入らない。菅笠のなかにしつらえた鈴が鳴る程度 である。全体を通して旋律はほぼ同様であるが,歌詞は四通りある。昔は「く・わんやいなか の」をうたい,そのあと「あちややごがち」をうたって終ったが,これではあまりにも短かい ので,今では組象方を変え「あちゃやごがち」をはじめに「く・わんやいなかの」を真中には さみ,そしてもう一度「あちゃやごがち」をくりかえしている。踊りは二種である。

菅笠をもって踊られているので「笠踊り」といわれているが,「ぐわんやいなかの」の沖縄

かさ

方言の歌詞から承ると,「笠」は庖瘡の「瘡」ではないかと思わわれる。庖瘡踊りの一種でも

(2)

82 屋久島の。湯泊の「笠踊りうた」について あろう。

旋律が「上い口説」であること,歌詞に沖縄方言をとどめていることなどによって,これは 明らかに沖縄方面から直接この地に伝えられたものといえよう。湯泊沖に,大きな船がはまり 込んで動けなくなる〃安南ふち〃というところがあり,「笠踊りうた」の歌詞の意もわからな い,旋律も他のうたとは変っていることから,安南説がでたのであろう。しかし,沖縄からい つごろ,どういう経路をたどって伝えられ,行事に用いられるようになったのかは,現地では 言柵、伝え寄人はいない。このうたを50年間うたいつづけてきた,79歳の岩川和松さんもわか らないというo岩川さんは若いときに,母方のおじからこのうたを教えられたとのことである。

上屋久町の教育長をしておられる石田尾文雄氏の,昭和37年のノートによれば,湯泊の「笠 踊り」は,明治の初めに与論島の漁師が湯泊沖で難破し,助けられたお礼に教えていったとあ る。しかしこれは石田尾氏自身が湯泊の人から直接きいた話ではなく,昭和36年6月25日付 の南日本新聞の「ふるさとシリーズ」からメモをしたということである。

いずれにしても,この湯泊の「笠踊りうた」はう琉球音陶こよる「主つばんだ」のように,

各地に散らばらて定着したものとは異なり,特定の場所と,特売の事情で伝えられてきたもの である。また「上い口説」の旋律自体が琉球音階ではなく,本土の古旧、うたとも共通する律音 階であり,歌嗣ももともと大和の影響をうけた7,5調的なので,同化しやすい要素をもって

いたといえ承。

演唱者岩川年松(明治34年2月20日生,昭和55年10月18日録音)

ぐ.わん櫓いなかの

(1)

1 ・ ぐ わ ん や い な か の

2

に せ や せ や

3

ち よ ら が ざ い で が ざ め が や め て

4

ベんのおたけにぐわんたちよ̲る

2.あまからちよ一でふれま一ぶれあ

5

わ が ち や め て や ま と ぶ れ

(6)

と ん ど の み さ き に つ な か き よ る

あちややごがち

1 j あ ち や や ご が ち よ か の ひ お お い お も い の ふ な し だ し わ か き に さ い し ゅ は な が れ ふ れ 2 . か ね や つ づ ゑ の お と よ り も

ひ え の ね だ か く そ ら ひ び く

我んや田舎の

わ た し は ち よ ら が さ い で か さ

美 瘡 出 瘡

に せ

二 才 や せ や

青 年 だ け れ ど

目が病めて 弁 の 御 嶽 に 願 立 ち よ る

ち よ 、 ま 一

あまから来で船何処船あ

あ つ ち か . ら く る 船 ど こ の 船 か

我 が 究 や め て 大 和 船

わたしがしらべてみると と ん ど

通 堂 の 岬 に 綱 掛 き よ る

あ ち や

明日や五月

ゆ か

四 日 の 日

思 い 思 い の 船 仕 出 し

若 き 二 才 衆 は 流 れ 船 鐘 や 鼓 の 音 よ り も

ひ え ね だ か

笛 の 音 高 く 空 響 く

(3)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

屋久島の,・暢泊の,「笠踊りうた」について

よ も

よ も に ぎ ぎ ょ れ し さ る の お と 四 方 に 聞 き よ れ し 猿 の 音

8 3

注(1)「ぐわん」と発音しながら,うたでは「わん」と聴きとれる。「願立ちよる」と混合したので はないかと思われる。本来は「わん」。

(2)にせやせや=二才やしが,のなまり。

(3)ちよらがさ=美笠,のなまりであるが,抱瘡の「瘡」を美化した表現であろう。これと「笠」

が さ

をかけている。「瘡」だと意味が通じる。

(4)ベんのおたけ,弁の御嶽は,湯泊の背後にそびえる,七五岳(1942メートル)の別名である。

うたき

沖縄の御嶽が,この土地の御嶽の名に変ったのであろう。

(5)ちやめて=究わゑてい,のなまり。

(6)とんど=通堂,那覇の港にある地名。

曲 名

ま つ ば ん だ

「ちらし」

ま つ ば ん だ

"

"

"

笠 踊 り う た

演 唱 者

酒 匂 シ ゲ

"

若 松 シ マ

泊 伝 市

宮 永 マ ス ギ ク

うじ 新 熊 うこ 常 助 キ ヤ

岩 川 年 松

"

まつばんだ・笠踊りうたテープ目録

生 年 月 日 伝 承 地

M1.4.13屋 久 島 安

"

M21.4.1 屋 久 島 尾 之 間 M20.3.23 屋 久 島 安

M26.11.1 屋 久 島 安

M15.12.7 悪 石 島

M18.4.16

M21.2.22 宝 島

M29.7.23 黒 島 大 里

M34;2.20 屋 久 島 湯 泊

"

、 録 音 時

S40

S42.7.20

S42.7.20 S55.8.18

S31

S40.8.1

S40.7.25 S55.8

S55.10.18

"

提 供 録 音 者

南日本放送局

南日本文化研究所 原 田 宏 司

杉本現地録音

東 京 に て ポ リ ド ー ル 録音永綱一丸提供

南日本放送局

日高重行

杉本現地録音

"

備 考

もう一人の声は妹 さ ん の 泊 サ ト さ ん と思われる。

まつばんだのあと に う た わ れ る 。 都 ぷし音階である。

ハ ヤ シ 有 川 ト モ 坂 元 セ イ ハ ヤ シ が 下 降 ポ ル タ メ ン ト

日高キヤ指導

笠踊りの実況,か け声が入る。

う た の み

上記目録のように編集したテープは,南島文化研究所に保管されている。

(4)

屋久島の。湯泊の「笠踊りうた」について 84

湯泊笠踊りうた

く ぐ ヮ ん や い な か の > 屋 久 屋 湯 泊 う た 岩 川 年 松 採 譜 杉 本 信 夫

J=108

ニ ー ‐ ‐ 可 ロ ▲

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=圭琴ョ

2

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く あ ち や や ご が ち >

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拳室

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参照

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