山大学 温泉 研 究所報 告
第 32 号
目 次
火山岩の分析化学的地球化学的研究 浅間山産火 山岩の化学組成 とその解析
‑ 松 井 義 人 1貢
同 大 温研 報
岡 山 大 学 温 泉 研 究 所
昭 和 38 年 10 月
岡山大学温泉研究所報告第
3 2
号正誤表岡 山 大 学 温 泉 研 究 所 報 告
第 32 号
昭 和
38
年10
月 発 行火 山岩 の分析化学的 ・地球化学 的研究
浅間山産火 山岩 の化学組成 とその解析
岡 山 大 学 温 泉 研 究 所
松 井
内 総 論 ‑‥‑=‑‑=・‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 2 謝 辞 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 5
Ⅰ. ケイ酸塩岩石の迅速分析法
1.序 論 ‑・・‑‑・‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 5 2.アル ミニウム,秩, チタンの容量分析
‑‑・.・‑‑‑‑‥・‑‑‑‑ 8 3.マグネシウム, カル シウム,マ ンガン
の容量分析 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 13 4, ナ トリウムおよび カ リウムの炎光光度
法 による定量 ・・・‑‑‥・・・‑・・‑‑・・・16 5.ス トロンチウムの炎光光度法 による定
6.各成分の分析法 ‑‑‑‑‑‥‑‑‑=‑ 26 1.粉末岩石試料の作成 ‑‑‑‑‑= 26
2.SiO 2 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・・‑‑‑‑ ‑ 28
3."検液B"の作成 日・‑‑‑‑=‑‑ 30 4.全鉄 ‑‑‑‑ ‑‑‑‑‑‑‑‑‑ 31 5.TiO2 ‑‑‑‑‑‑‑‑・・‑‑‑‑‑‑・・32 6.Mn0 ‑‑・‑‑‑=‑‑‑‑‑・‑‑‑ 33 7.P205 ‑‑・・‑‑・‑‑‑ ・・‑‑‑‑‑・33
義 人
香
8.Ca0 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑・‑‑‑・‑‑‑34 9.FeOHM‑‑‑‑‑・‑‑‑‑=‑‑‑‑‑35
ⅠⅠ.浅間山産火山岩の地球化学的研究
1.序 論 ‑‑‑‑‑・‑‑‑‑‑‑ 36 2.試 料 ‑‑‑‑=・‑‑‑‑‑‑‑‑‑= 37 3.分析結果
4.定性的検討
1.Variationdiagrams・‑・・‑‑‑‑ 42 2.従来の報告 との比較 ・‑‑・‑ ‑‑‑‑49 5.やや定量的な検討 ‑=‑‑・・・‑‑‑‑ 52
1.最小 自乗法 による火山岩 の組成の解
2.最小 自乗法 による浅間山産火山岩 の 主成分組成の解析 ‑‑‑‑‑・‑‑57 3.TiO2,MnO,P205およびSrO含量
の解釈 ‑‑‑‑‑‑・・‑‑‑‑‑‑‑・64 6.結 語 ・・‑‑‑‑=・‑‑‑‥‑‑‑‑=‑・78 引 用 文 献 ‑・‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑= 79
松 井
総 論
火成岩 の地球 化学の研究において, もちろ ん さまざまな研究の しかたが可能であるが, それ らの うちで,かな り対照的な性格 を もっ た二つの方向を指摘す ることがで きる.一つ はGr¢nlandのSkaergaard貫入岩体の研究 の例(WagerandDeer,1939;Wagerand Mitchell,1951)にみ られ るよ うに,ほ とん
ど疑 う余地な く成因的関係の明 らかな一連の 岩石 について鉱物学的研究か ら各鉱物中の微 量 成分含量にいたる徹底的な研究を行 うもの であ り,一つは特定の化学元素に着 目して, 各地の各様の岩石中の含量 を求 めてその元素 の分布の特性 を捕 えよ うとす るものである.
この二つの方向は, ここ当分 このまま進展 す るであろ う.なぜな らば,火成岩 における 元素の行動は,成因的関係が明 らかである場 合 にのみ確実 に理解す ることがで きるわけで あ り,また一万では成因的関係が不明であっ て も地上の数多 くの "地質学的単位 (geolo‑
g
icalunits)" における元素の存在度 の知見 その ものの意味は成因的関係が不明であるだ けなお さら大 きい とい うことがで きるか らで ある (この点 については,Masuda,1963;
MasudaandMatsui,1963;松井,1962を 参照せ られたい).
しか しなが ら, このままのかたちで研究が 進展 して も,火成岩の地球化学が完成 に導か れ るか否かは疑問である.まず上 にあげた第 一の方向について考 えれば,た しかに この種 の研究によって実験室にお ける相平衡の知見 が 自然 にお ける現 象をよ く説明 し得 ることが 実証 されたために,主成分元素の行動に関 し て物理化学的説明が大 きな説得力 を持つ こと
義 人
にな り,主成分元素の地球化学のよ り精密な 理解が促進 され る結果 となった.それのみな らず,Skaergaardの列では,地球 化学の長 い間の夢の一つであった火成岩の生成時にお ける元素の分布のあ りさままでが明 らかにき れた. ところが, このよ うな研究の対 象に し 得 る一連の岩石 は きわめて数少 く,実際 には さまざまな組成の岩石が成 因関係不明のまま 圧倒的な量 を占めて存在す る.のみな らず, この種の研究は,精細 になればなるほ ど,特 定の一連の分化現 象を支配 した物理的 ・化学 的条件 の特異性が著 しくあ らわれて くる結果 になるであろ う.そのために, さらに根本的 な実験的 ・理論的基礎 な しには,一つの系 と 他の系 との間の類推は危険 な ことになる.吹 に第二の方 向について考察すれば, この種 の 研究の重要性 は上 に指摘 した通 りであるが,
"地質学的単位" は時間的・地域的に無数 とい い得 るほど多種多様であって,研究の困難が 一通 りでない上 に,それ ら各単位の特徴 は明 らか になった として も,相互の成因的関係が 明 らかにされ る確実 な保証 はな く, したが っ て元素の行動 に関す る知 見 は 容 易 に得 られ ず,かつ分析例が数 を増 し, さ らに分析精度 が高 まって くるにつれて,分析結果の整理の 困難 さが急激に増大す る結果 とな る. このよ うな状態 は,すでにた とえばCo(Carrand Turekian,1961),Zr(ChaoandFleischer, 1960)についてお きて きてい る.
以上 に論 じたよ うな事情 によって, この二 つの方向はいまだ充分 な接触 を作 りあげ得な いままに併立 している状態 にある.
上 に指摘 した第二の方向の陥 りやす い危険 について,かな り慎重 に注意 して各種の元素
火山岩の分析化学的 ・地球化学的研究 の分析 を行 う方法 もある.す なわちNockolds
等による一連の研究 (NockoldsandAllen, 1953,1954,1956)にみ られ るよ うに,岩石 学的な地域 わけを した上で,各種元素 を分析 して主成分 との相関のあ りさまを各地域 ごと に観察 しよ うとす るものである. ここで明 ら かにきれ ることは,各元素の分布や主成分 と の関連 は,各地域 ごとにかな り特徴的に異 な る らしい ことである. したが って,各地域 ・ 単位 を無差別 に扱 うために生ず る危険はある 程度防 ぐことがで き,また各地域が示す "特 徴''はそれぞれの地域の一連の岩石の成因関 係 について伺 ごとか を示唆す るかのよ うに も み える. これ らの点 において, この種の方向 はききに指摘 した二つの方向の中間 にある も の とみなす ことがで きる.
しか し, この方向を もまた楽観す ることは で きない. もしここで み られ る "特 徴''や
"グラフのなめ らか さ''が,はた してある成 因関係 に支配 きれた結果であるのか,または 単なるみか けの ものに過 ぎないのかの吟味を す ることな しに,各様の "特徴''の追究 にの み追われれば,結局は別の形 にお ける整理困 難 に至 るおそれが充分 にある.
成因関係がSkaergaardにお ける程度 に明 確 に知 られている場合が例外的である以上, 成因関係の不明な岩石の研究 はか えって大 き な意義 を もつ もの とい うことがで きる.その 場合に,以上に論 じたよ うな欠陥に注意す る な らば,われわれには必然的に,一方 では可 能 な限 り成因関係 を吟味 し,一万 ではた とえ みか けの ものである可能性が あるとして も各 元素間の類似,相違を正確 に捕 えるとい う二 つの方向を同時に追究す るこ とが 必 要 に な
る.その結果 をつ きあわせて,各元素の行動 を推定す るとい う順序 になる.
この場合に,主成分元素の組成および各相 への分布のあ りさまが,成因関係の推定,吟 味に とって有効であることは明 らかである.
す なわ ち,無数 に考 え得 られ る可能性 を,主 成分元素 に関す る観察 ・検討 によってかな り な程度 に挟めることがで きる.微量成分 に関 して も,原理的には同様であるはずである.
もちろん この種 の問題 に対 して,た とえ無 限に正確 なデータが無数 に入手で きた として ち,一意的な解答が得 られ るもの と期待す る ことはで きない. しか し,ある仮説 によって 一定のモデルを作 り, これを必要 なデー タの 解析 によって検証 してゆ くことによって,可 能性 の範囲を しぼ ってゆ く こ とは可 能 で あ る. これは,通常の =グ ラフのなめ らか き'' にたよる態度 とは全 く異 な るものであって, 現在最 もその開発が望 まれ るものである. こ の場合,そのモデルの作 り方 によって,地質 学 的知見 と化学組成上の知見 とを有効 に結合 で きるのであって,化学組成による知見 は結 局重要でない とか,逆 に地質学的知見 は無祝 して よい とかい う, しば しば くり返 され る見 解 は正 しくない.
このよ うな研究 を行 う場合 には,地域的に ひ とまず対象を限定す ることは,む しろ賢明 な策である.なぜ な らば,対 象 とす る一群の 岩石が時間的 ・空間的に限 られた範囲の もの であれば, それだけ成因的関係 も密接な もの である可能性が大 きいか らであ り, さ らに, このよ うな場合にはそ れ ぞ れ の 地 域 の "特 敬" に したが って元素間の随伴関係が明瞭に あ らわれて くることが多いか らである. この
松 井
種の地域的研究 は,わが国で も伊豆大島三原 山 (岩崎,1935),浅間山 (岩崎,1936),朝 鮮福辰 山地域 アル カ リ深成岩体 (斎藤,1950) 伊豆箱根地域第四紀 火山岩および三河設楽地 域第三紀火山岩類 (長島,1953), 桜島火 山 (Hamaguchi,Kurodaandlshikawa,1960), 伊豆天城山 (倉沢,1959)な ど,その数 は必 ず しも少 くな く, ことに近年急激に増大す る 傾向を見せ,それぞれ各地域の特性を明 らか に し,ある場合には元素の行動 を状況につ き い くつかの重要 な知見 を与 えて きた. これ ら の多 くの貴重 なデ‑ タをさ らに有 効 に生 か し,また今後の効果的な研究を期待す るため に,上 に指摘 した分析結果の と りあっかい方 に関す る各種の検討は, ます ますその重要性 を増 してゆ くもの と考 えられ る.
ところが一方では,岩石の化学組成を明 ら かにす るための分析法 自体 に,主成分元素 をこ ついて さえ数多 くの問題が戎 されている.岩 石の主成分の分析法 は,20LU'紀初頭 に確立 き れて以来,近年にいた るまで大 きな変更な し に引 きつがれ,尤大なデー タを生みだ して き た. したが って,分析法 自体 を問題 とす るこ とも,主成分組成について ここあた らしく論 議す ることも,すでに無用の ことと考 えられ るか も知れない. さ らに,多相混合物 として の岩石の組成 を, こまか く論議す ることに も はた して意味があるかについて疑 うこともで きる. これ らの点 について以下 しば らく考察 を加 えよ う.
第一 に,地球化学 は元素の歴史を追究す る 学問分野であるとい う見地か らすれば,主成 分 であると微量成分であるとを問わず,すべ ての元素 は同格の重要性を持つはずであ り,
義 人
主成分元素 についてはすでに多 くのデ‑ タが 存在す ることを考 え合わせ ると,主成分の分 析法 をと りあげることは得策ではない とす る 立場 もあるで あろ う. これに対 しては,以下 のよ うに各種の見地か ら反論す ることがで き る.1)主成分元素 は,相 を作 るために決定的 な役割 を演ず ることによって,微量元素の行 動 を左右す る影響力 を もつために,研究 しよ うとす る対象についての主成分組成の知識 は 必要不可欠である.2)岩石学 においては, こ れがcommon phase‑formingelementsの 地球化学 としての一面 を もつために, これ ら 元素の分布 と岩石 の特性 とに関 して,多 くの 経験的 ・実験的知識が蓄積 され,また研究方 法 も整備 されてい る. したが って当面 の研究 対 象に, これ らの知識方法 を利用す ることは 極めて有効な手段で ある.3)主成分元素は, 多量 に存在す るだ けに,相応の注意 をは らえ ば高精度 の分析結果が容易に期待で きる. こ のよ うに容易 に多 くの情報 を与 え得 る元素 は 各元素 に同等の価値 を認める立場か らして も 軽視す ることはで きない.
第二 に,岩石 は多相混合物で不均一である か ら,その組成の厳密な決定 その ものに意味 が少ない とす る立場 もあ り得 る. これに対 し ては,逆 に,構成す る各相のわずかな量比 の 差 を的確 に捕 えるためには,構成鉱物の分析 に要求 され るよ りも高い精度が必要であると す る立場 も成 立す る. この問題 は,主成分に 限 らない.現在望み得 る精度 は, この要求 を 満たす に充分 とい うには遠 いけれ ども,の ち に ⅠⅠ・3において行 うとりあっかい は このよ
うな立場か らな されている.
第三 に,すでに確立 きれ,多 くの有用な成
火山岩の分析化学的 ・地球化学的研究 栗を生んで きた方法 自体についてその信頼性
を論ずることは益す るところが少ない とす る 見地に対 しては,後にⅠ・1において論ずると ころがあるはずであるが, ここでは特に次の 点を指摘 してお きたい.すなわち,いかなる 方法 といえども無限に正確精密 とい うことが あ り得ない以上,その信頼性に関す る定量的 知識は,分析結果のとりあっかい,特に解析 的 とりあっかいの場合常に必要になるもので あるに もかかわ らず,従来の "古典的"分析 法においては, この知識が得に くい とい う大
きな欠点があったのである.
以上に論 じたよ うに,火山岩の研究には, その目的が単なる地域的記載,あるいは特定 の元素の行動の追究,あるいは特定の岩石種 の成因などいかなる種類の ものであって も, そのために必要な手段 その ものにいまだ不充 分な点があることを認 めることがで きる.本 研究の主要な目的は, このよ うな手段 その も のの検討 と開発に置かれている. したが って 上に列挙 したよ うな特定の問題を直 ちに解決 す るとい う性格の ものではない.
Ⅰにおいては岩石の迅速分析法に対す る検 討 と改良 を,主 として主成分について行 った 結果を述べ,ⅠⅠにおいては,Ⅰに記述 され た 分析法にしたが って,上述のよ うな観点か ら 実際の岩石 を扱 う例 として浅間山産の火 山岩 が とりあげ られ,その解析が試み られている.
Ⅰにおいて 提出 されている分析方法は, 大 多 数の火成岩一般 についてのみな らず鉱物に対 して も利用可能な ものであって,今後ひろ く 応用が期待で きるものである.またⅠⅠにおい ては,成因関係 も不明瞭で,かつ造山帯に最 も普通に産出す る型の岩石群をとりあげてい
るために, ここで用い られている最小 白乗法 による解析法を含むとりあっかい法は,他の 地域において も適用可能 な一般的意義を有す
るものである.
謝 辞
本研究にあた り,終始御指導,御激励を賜 わった東京大学名誉教授南英一博士,東戻大 学教授藤原鋲男博士に, ここに心か らの御礼 を申しあげたい.
東京工業大学の小坂丈予博士は,東京大学 地震研究所御在職中に,化学分析全般 にわた って御助言 と御協力を惜 しまれなか った.東 京大学理学部地質学教室の荒牧重雄博士は, 多数の貴重な試料を恵与せ られ,かつ研究成 果を原稿の段階で見せて下 さるなどさまざま な御配慮を下 さった.同じく地質学教室の都 城秋碍助教授は,G‑1およびW‑1をわけて下 さった.同じく化学教室の飯島孝夫博士,棉 田好正氏は,東京大学計算センターのパ ラメ トロン計算機PC‑2による計算を快よ く引受 け られた.同じく化学教室の藤本昌利博士, 水町邦彦博士 (現在立教大学理学部), 岩本 振武博士は,化学分析法の検討 と開発 にあた ってあるいは助言を与 えられ,あるいは共同 で研究にあた られた. これ ら多 くの方々の御 尽力な くしては, この研究の遂行は到底不可 能であった といわな くてはな らない. ここに 深い感謝をささげたい.
Ⅰ
.
ケ イ酸 塩 岩 石 の迅 速 分 析 法 1.序 論ケイ酸塩岩石の分析法は,1900年にHille‑
brandによってまとめあげ られて以来,ほと ん ど変更なしに引 きつがれ,まった く確立 き れた もののよ うな観を里 しつつ近釆に至 った
松 井
(Hillebrand, 1900;Washington,1930;
HillebrandandLundel1,1953).しか しこ の状況 も,大 きく変 わろ うとしつつある.
多数のデータの迅速な供給を必要 とす る分 野 (ガ ラス,セメン ト,陶磁器原料な ど窯業 関係 の分野)では,何 よ りもこの従来の方法 (以後 これを古典法 と呼ぶ)が非常な手間 と時 間 とを要す ることが難点 ときれた. しか しな が ら,古典法が要求す る手間 と時間は,すべ て化学的な根拠 を有 しているものであって, 便宜上手を抜 くとい った方法での迅速化は, 必然的に正確 さの劣化を招 くものであった.
一方分析化学の進歩 によって,系統的分離 操作 と重量法 による定量を骨子 とす る古典法 とは全 く異 った原理 による分析が可能 となる に至 り,その観点か らはケイ酸塩 は魅力的な 対象であったので,戦後い くつ もの分析体系 が提案 され ることになった. それ らはすべて 古典的方法 に比 して時間的に経済であ り,提 案者はすべて この迅速性を強調す ることによ って有用性を示 そ うとした. このよ うな事情 のために,非古典的方法 は一括 して迅速法 と 呼ばれ る.
しか しい うまで もな く,地球化学の立場か らすれば第一の重要性はデー タの正確 さにあ るべ きである.いかに迅速に多数のデー タが 供給 きれて も,それが一歩立 ち入 った と りあ っかいに耐 えない ものであっては,それは無 意味に近い. したが って実際に有用 な分析結 果 を与 える分析法 において,それが "迅速'' で あるか否かは,二次的な問題 に過 ぎない.
事実,以下に論ず る "迅速''法 は,た しかに 古典法 に比 して迅速ではあるが,その ことよ りも,正確 さ(accuracy)と再現性 (preci‑
義 人
sion)においてす ぐれた特性 を有す る故に論 ず るに値す るのである.その意味か ら,迅速 法 とい う名称 は,非古典的分析法の一面のみ を とらえた ものに過 ぎず,便宜的な通称 に過 ぎない ことを強調 しておか な くて は な らな
い.
古典法に対 して, よ りす ぐれた結果 を生む ためには,次のよ うな条件 を満たす ことが望 まれ る.第一 に,各成分の定量 は可能 な限 り 直接,独立になされ るべ きであ り,第二 に各 操作 は可能 な限 り簡明であるべ きである.
質‑の条件 は,誤差の累積 を防 ぐために有効 であ って,第二の条件 は結果の再現性をよ く す るために有効である.ただ し, この二つの 条件が容易 に両立 しない場合 には, どちらか の原則 に固執す ることは賢明ではない. また 何か一つの技術のみによってで きるだけ多数 の成分 を定量 しよ うとす る試 みは,分析化学 的にその技術の可能性が明 らか にな る意義は 存在す るが,実際に有用なデー タを必要 とす る立場か らは必ず しも有利ではない.す なわ ち以上 の条件 を考慮 に入れた上で各種可能な 方法の うち最 も有効 と判断 され る方法 を各成 分 ごとに採用す るべ きものである.
一万 ,迅速性 は,それ 自体 として長所であ ることは もちろんであるが,利点 は撃 にその ことのみに終 る ものではない.すなわ ち,多 数 の試料を同時に処理で きることを利用 して 標準的試料を も同時に分析す ることがで き, さらに分析の くり返 しが容易であるために, 分析結果の信頼性 を正確 さ,再現性の両面 に わたって知 ることがで きる. この際 に方法 白 身が古典法 に比 して原理的に劣 るとい うわけ ではないために, ここで得 られ る信頼性に関
Tabel1. Some rapid methoods for silicate analysis.
Shapiro and Brannock (1956) Riley (1958)
Component Sample solution
5i02 A
Al203 A
Total Fe B
Ti0 2 B
MnO B
P 20S B
MgO
}
BCaO
B Separate
sample
II II
Sample solution A
B
Method Mo-blue, colorimetric
(l-amino-2-nap hthol-4-sulfonic) acid as reducing agent
AI-Ca-Alizarin S lake, colorimetric Fe-l,10-phenanthroline, colorimetric Ti-Tiron, colorimetric
Mn04 -, colorimetric (KI04 as oxidizing agent)
Molybdivanadophosphoric acid, colorimetric Automatic photometric titration after removal of Fe, AI, Ti as hydroxides
MgO : EDTA, Erio T as indicator, Ca being removed as CaW04
CaO : EDTA, Murexide as indicator Flame photometry with Li as internal standard
Revised Penfield's method Gas analysis
Titration with K2Cr207
An acid solution with HCl prepared by fusion of sample with NaOH in Ni crucible
Prepared by digestion of sample with HF-H2S04-HN03
Sample solution A
B B B B
B
B
B Separate
sample
II II
Method Mo-blue, colorimetric (Metol as reducing agent)
Colorimetry after extraction by oxine-CHCl3 Fe-dipyridyl, colorimetric
Colorimetry with H 20 2 Mn04-, colorimetric
((NH4) 25208 as oxidizing agent) in the presence of Ag+ ion Mo-blue, colorimetric
(Ascorbic acid as reducing agent) Titration after removal of Fe, AI, Ti by solvent extraction with oxine-CHCl3
MgO+CaO+MnO : EDTA, Erio T as indicator
CaO : EDTA, Calcein as indicator Flame Photometry after ion-exchange separation from other metals
Gravimetric Gravimetric
An acid solution with H2S04 prepared by fusion of sample with NaOH in Ag crucible Prepared by digestion of sample with HF-HCI04
松 井
す る情熱 ま,古典法 によっては到底期待で き ない性質の もの となる. このよ うにして,岩 石の分析デー タもはじめて解析的 と りあっか いに耐 える測定値 としての資格 をそなえ得 る のであって, この点 に迅速法の最大の長所の 一つを認めることがで きる.
上述のよ うに,迅速法 には,古典法 とこと な り各種 の方法の選択 と組みあわせ によって 無数の休系が存在可能である.すでに1947年 には,Hedinによって比色法 による極度 に迅 速性 を重んじた方法が 提 案 され,つ づ い て ShapiroとBrannock (1952,1956), Riley (1958b)によって各種の技術を併用 したかな
りよい精度を示す ものが提案 された.わが国 で も, イオン交換樹脂 を用い る吉村 ・脇(19 57),大木 ら (1962)の方法や,EDTA滴定法 をた くみに使用 した土屋 (1962)の方法が報 告 されている. これ らの う ち,Shapiroと Brannock(1956)の方法 と, この方式 の 修 正版 ともみ られ るRiley(1958b)の方法 は 特 に注 目に値す るもの と考 え られ る.その理 由は, これ らが上に指摘 した非古典的方法の そなえるべ き条件 をかな り満足にみた してい る上に,実際す ぐれた結 果を与 えることが充 分期待で きるか らである.註1 これ らの体系の 概略をTablelにまとめ,報告 された精度 に 関す るデー タをTable2に示す.註2
Table2にみ られ るよ うに, これ らの方法 によれば,良好 な結果 を得 られ るもののよ う であるが,細部 にわた って検討すれば,い く つ も不備な点が見 出 され る. しか し以上に論
義 人
じたよ うに,迅速法の長所 は,古典法 を もっ て しては到底得 られない性質の ものであるの で,本研究 においては問題点 をそれぞれ検討 し,修正を加 え,ない しは別法 を創案す るこ とによって全体 を改良す ることに努めた.
Tablelに示 されてい る方法の うち,著者 が全 く異な る方法 によってお きか える必要 を 認 めたのはアル ミニウムおよびマグネ シウム に関す る部分であって,それ らはト2お よび
Ⅰ・3にそれぞれ記述 した. さ らに実際の分析 にあた って,炎光光度法 に関 してはやや詳細 にわた って注意 を述べてお く必要が あると考 えられたので,Ⅰ・5にカ リウムおよびナ トリ ウムの分析法 を実例 について記述 した.また ス トロンチウムは,通例 は分析 きれない成分 ではあるが,炎 光 光 度法 に よって 定 量が で き,かつ結果の意味す るところが 大 きい の で,Ⅰ・4に検討の結果 と共 にその分析法 を示 した.
上記以列の成分の分析法 について は,Ⅰ‑6 にまとめて記載 した. これ らはすでに提案 さ れた方法 に, ある場合は多少の修正を加 えた 程度の ものである. したが って方法のみに着 目すれば特記す るまで もない ものである. し か しそれぞれの成分 ごとに著者の意見 と採用 の理由を記 して今後の研究にそなえるととも に,Ⅰ全体 として標準的な迅速分析法 の 手引 きともなるべ き意図を もって, あえてかな り 詳細 にわた って記述 した.
2.
ア ル ミニ ウ ム,秩 ,チ タ ンの 容 量分析註1 ShapiroとBrannock(1952)の方法 については,Mercy(1956)の検討 が あ る.
註2 ShapiroとBrannock(1962)は,1956年の方 法 に更 に修正 を加 えて公表 した.大 筋 において変 った点 は,Caお よびMgの定量 の際Fe,Alの分離 を省 いた ことであ る.(ト2‑3参照)
火山岩の分析化学的 ・地球化学的研究 9
アル ミニウムの分析 は,迅速法 において最 非常 に困難 だか らで ある.
も困難 な問題 とい って差 しつか えない.その SapiroとBrannock(1956)は,Feを ター 理 由は,比色分析 に際 して鉄の妨害 の除去が ンブル青 の形 に して マス クした上で, ア リザ
Table2.Comparisonofprecisionandaccuracyofconventionalandrapidmethods. Mothod ConventionalI(1'ConventionallI(2'RapidA(BJRapid B(4) RapidA′(51
日日318616一1b.20410T00.0.0.0
Sample W‑1 W‑1 W‑1 W‑1
X X Ol
52.7 52.7 0.09 1.0 1.05 0.03 15,1 15̲1 0.16 1.3 1.56 0.14 8.8 8.65 0.14
44876b3044100000
lズComponent x J
311709492141851
250613154400000
SiO2 52.7 TiO2 1.10 A1203 14.7 Fe203 1.50
FeO 8.71
00489188901000013000000000nU
142431131000000011000000000
761373051682616310602000011011
94641672615090602000001011
30935354.0.4.0.1.0.0.0一.400000000715085511592614030602000011011
.03.28.19.19.15.04.18=0000000
73603366169061581060200091191 2一
Mn。Mg。器脚
P205 H20+
Sum
TotalFe (asFe208) No.ofanalyses No.ofanalysts
G‑1 M‑149T†
319433040000000
023821010000000473621892040071
46642589乃01400
337762011000000566621802040171 o1l穴U21264000010140000000000
l16520000100000309680433400135
210343400135
149110nUO2200000344330434400135 128600000000840038900919
840388009129
289.0.0一.1000014130000020日リ
.35.04.32.34.13.01.10.ll.17.37.03.08=000000000000
5393915297392999034240390203000ハU1350092719
a‑0m認Fe。慧認印
P205 H20+
Sum
TotalFe(asFe208) No.ofanalyses No.ofanalysts
千 Diorite TT GraniteofG‑1type x‑arithmeticmean cT‑Standarddeviation (1)Fairbairn(1953) (2)U・S・GeologicalSurveyBulletin,980,37(1951) (3)Shapiro&Brannock(1956) (4)Riley(1958)
(5)Mercy(1956),usingsimilarmethodstothoseofShapiro‑Brannock・
10 松 井
リンSを用いて比色 を試 みた. この方法 は巧 みではあるが, タ‑ンプル育 白身が 可現領域 全域 にわた って無視で きない吸光度 を もつ上 この系は全体 として不安定で,時間 と共 にマ スキングが破れ る方向に反応が進行す る. さ らにTiがAlとともに発色す るが, この反応 が加水分解反応 と競合す るため再現性 を保つ
ことが困難である.
Riley(1958b)は,FeをFe(ⅠⅠト ビピ リジ ル錯体 として水相 に保 ちつつAlをオキ シン 錯体 としてCHCl。に抽 出 して 比色す る方法 を採用 した. この方法には頃理的な難点 はな いが しば しばFe(ⅠⅠト ビピ リジル錯 体 まで も有機相 に移 ることが あ り,全休の操作 は容 易で はない.
以上のよ うに,Alの比色法 はFe,Tiの比 色法のよ うな簡易性 と特異性 をそなえている とはいい難 い. したが って本研究においては
FeとAlの含量を容量分析 によって求 める方 法 を開発 し採用す ることに した.ただ しこの 方法では必然的にAl≪Feのよ うな試料で は
Alの精度が不良 となる. この場合 に は 特 例 的に比色法 によるべ きであって, このために はClaassen等(1952)によって記載 き れ た 方法すなわちFeをヘキサ ンアノ錯体 とし て 水相 に躍らつつAlをオキシン錯体 として 抽 出比色す る方法が推せんに価す る.
EDTAを滴定剤 とす るAlとFeの合量滴定 法 は,従来 よ く検討 され,かつ指示薬 として PAN*を用 いて精度 よ く定量で きることが知 られている (た とえば上野,1962,p.208;
義 人
p.262).しか し一般の岩 石試料には常にTi
が無視で きない量 に存在 し, このため従来の
Al+Fe合量滴定法をその まま適用す る こ と は許 されない.
Wilkins(1959)は,TiのEDTA滴定法 と して,H202を共存 させてTiの加水分解 を防 ぎつつ,PANを指示薬 としてpH4‑5でCuに よって逆滴定す る方法 を提案 した. これ とと もに彼は酒石酸がTiを完全にマ スクす る こ とも見 出 した. 著者等 は この知見 をAl,Fe Ti共存系について適用 し,Al+Fe+Tiの含 量およびTi共存下のAl+Feの含量のEDTA
滴定法 を確 立 した (岩本,松井,南;1961).こ の二つの方法 によって さらにTiを差 と して 求め ることがで き, これはFe‑Ti酸化物鉱 物の分析 に応用で きる(Iwamoto,1963)の みな らず,後述 のよ うにTi標準溶液 の標 定 に極 めて便利 な方法 を提供す るものである.
本研究の この部分は,岩本振武氏 との共同 研究 として行われた もので あ り,氏 の学位論 文 (Iwamoto,1963)に詳細が 述 べ られてい る.滴定法の一般的検討 についてはこの論文 を参照 されたい.
2‑1 Al+Feの定量
2・1・1検液の作成註1
試 薬
NaOH,粒状,特級
HC104,700/a (約9N),特級 水,すべて脱 イオン水
操 作
Agるつぼ(25‑30mi )註2に岩 石 粉 末 試 料
*
1‑(2‑ピ リジ ル ア ゾ)‑2‑ナ フ トー ル註1この滴定はFによって著しく妨害されるために "槍液B"を用いることはできない.(ト6‑3参照) 註2 Niるつぼはとけ出るNiが以後の滴定にかかるので使用できない.
火 山岩の分析化学的 ・地球化学的研究
(Ⅰ・6・1参照)100mgをはか りと り,NaOH 1.5gを加 え,直 ちにあ らか じめ750‑800oCに 熟 しておいた筒型電気炉中でふたを したまま 10分間加熱す る. るつぼを放冷後,水約10rnl
を加 え一夜放置す る.100mlコニカル ビー カ ーにHCIO。5mlを入れ ここにるつぼの 内容 をポ リスマンを用いつつ完全 に移す.洗液が 多 くな りす ぎないよ う注意せ よ. るつぼの底 のcakeが と りされない時はHCIO40.5mlを るつぼに入れて洗い出す. ビーカー中の液は 透明である.酸性が充分であるのに不透明な 場合は加熱 して とかす.放冷後100mlメス コ ルベ ンに移 し定容 に希釈す る. この溶液 を検 液Cと呼ぶ.
2‑1‑2滴 定 試 薬
酢酸 アンモニウム酢酸緩衝溶液 :
酢酸 アンモニウム (特級)100gお よび酢酸 (特級)40mlに水を加 えて500mlとした溶液 酒石酸 カ ')ウムナ トリウム溶液 :
100/o水溶液
EDTA溶液,約0.02M:Dotite2NA約3.7g を水に潜解 し500mlとした溶液
Cu標準溶液,0.02000〃:
高純度鋼 (>99.99%)635・4mgを少量の硝 酸 (特級)に搭解 し,水で500mlとした溶液
(IwamotoandKanamori,1962)註1
PAN指示薬潜液,0.1%:DotitePANをエ タ ノール (特級)に潜解 した潜液註2
水,すべて脱 イオン水
ll
操 作
100mlコニカル ビ‑カ‑に検液C20mlを と り,酒石酸 カ リウムナ トリウム浴液1mlを加 え,EDTA溶液5mlを加 え,緩衝溶液10ml を加 え,水 を加 えて液 量 を約50mlとし,沸 点 まで加熱す る. 指示薬数滴 を加 え熱時Cu 標準溶液で滴定す る. (指示薬 を加 えた 時 液
は黄樺色である.Cu溶液1滴で赤色 を呈 す る時はEDTA不足である.)滴定の進行 と共 に液 は緑 色を帯 びる.液に赤味が さした点 を 終点 とす る.
検液Cを加 えずに同様な滴定 を行い,前 者 とのCu標準溶液所要量の差 とEDTA溶液の 力価か ら検液中のAl+Feの 量 を算 出す る.
注意 検液Cに対す る滴定の終点 は,必 ず しも見やす くない.一旦赤味が さしてま もな く色が あせ るときは,一応pHが4‑5 の範巨鋸こあるか否かを確かめ よ.pHが 正 しく,かつ退色が甚だ しい時は,恐 らく共 存す るFの妨害で ある. この場合最初 に赤 味が さした点 を終点 と認めて差支 えない.
2‑1‑3分析結果の検討
この方法 を標準岩石試 料G‑1お よ び W‑1 (Fairbairnetal.,1951)について適用 した 結果をTable3に示す. ここで は比 較のため 従来の報告を もかかげた.明 らかに この方法 は充分な正確 さを もってい る.
同一試柳 こついて2回以上分析 した結果 か ら推定 された相対確率誤差 はIIl3(Table20) に示 したよ うに平均1%である. この値 はほ 註1一次 標準物質 としてZnを用 い, この標 準溶 液 でEDTA溶 液 の力 価 を決定 し,EDTA溶液 に よってCu溶
液 の標 定 を行 って も差 支 えない.
註2いわゆ るCu‑PAN (PANとCu‑EDTAの混合 物,DotiteCu‑PANとして市販) を ジオキ サ ンー水 混合 物 (1:1)中に1%潜解 し丁こもの を用 いて よい. この方 が以下 に記 述 す るEDTA不 足 の場 合直 ちに発色 す るためむ しろ便利 で あ る.
12 松 井 義 人
Table 3. ComparisonofdataforG‑1andW‑1on theirAlandFecontents(inmg‑ion/g).
G‑1 W‑1
Fe AI Sum Fe AI Sum
Conventionalmethod
Fairbairnetal.(1951)* 0.225 Fairbairn (1953) 0.252 Rapidmethod
ShapiroampBrannock (1956) Riley (1958)
Thiswork
2.77 2.98 1.42 2.73 2.96 1.41
267332444
665998222
**602344111
915009332
471877222
**86533222000
* bysixanalystsofU.S.GeologicalSurvey
★* aftertheproceduredescribedinSectionI・6‑4 ぼ終点確認に伴 う滴定誤差 と同程度の大 きさ
である.
2‑2 Ti標準溶液の作成と標定 Tiの比色分析のための標準浴 液 は,通 常 TiO 2または修酸 チタンカ リウムを出発 物 質 として作成 される. しか しこの種の方法では 甚だ時間がかか る上,完全な溶解が しば しば 困難である.一万YoeとArmstrong(1947) はtironによるTiの比色法の開発に際 して, 標準溶液をTIC13溶液か らH202による酸化を 経て作成 し, これを重 量 法 によって標 定 し た. この方法は,Ti(ⅠⅤ)溶液 を終始溶液 の まま作成で きる点非常に便利である. ところ が市販のTiC13溶液にはしば しば大童のAlが 含 まれているために,重量法による標定が無 意味である危険がある.著者等によるFe,Al, Ti共存系のEDTA清 定法 (岩本,松井,南, 1961)は, この難点を容易かつ確実に解決 す
るものである.
試 薬
TiC13塩酸酸性浴液 (>18yoTiC13),特 級 H2SO。(>98%),特級
H202溶液,30/o'.H20230% (特級)を水で10 倍に希釈 した もの
酒石酸 カ リウムナ トリウム浴液,lo錫
EDTA浴液,0.02M
Cu標準溶液,0.02000〟 (2‑1参照) 酢酸 アンモニウム酢酸緩衝溶液(2‑1参照) Cu‑PAN指示薬溶液(2‑1参照)
HCIO4,70%(約9Ⅳ)特級 水,すべて脱 イオン水 2‑2‑1Ti(ⅠⅤ)溶液の作成
TiCl。溶液10mlに H2SO47mlを加 え,水で 約100mlに希釈す る. ここに30/oH202溶液を 滴下す る.Ti(ⅠⅠⅠ)の紫色が次第 に うすれ,蘇 色 になった点で滴下 をやめる. (これは一種 の酸化還元滴定である."終点"をす ぎると, Ti‑H202錯体の樟黄色 があ らわれ る.) もし 液が白濁 している時は,波過す る (東洋波紙 No.5BまたはN0.7が適当である). 水 を加 え200mlに希釈す る. この液を "Ti Stock Solution''と称す る.無色ガ ラスぴんに貯 え
る.註l
Ti Stock Solution2ml,HCIO。20mlを 註1 TiStockSolutionは,極 めて徐 々に加水分解 して 白色沈澱 を生ず る.
火 山岩の分析化学的 ・地球化学的研究
500mlメスコルベンに入れ,水で定牢に希 釈 す る. この潜液 は "TiStandardSolution''
と呼び,ト6‑5にお ける比色分析 の際 に使 用す る.無色 ガ ラスぴんに貯 える.
2・2・2 Ti(ⅠⅤ)溶液の標定
100mlメス コルベ ンにTiStock Solution 20mlを入れ, 水で定容 に希釈す る. この溶 液2mlを100mlコニカル ビー カ‑ に と り, H202溶液2mlを加 え,EDTA溶液5mlを加 え 緩衝溶液5mlを加 え,水で約50mlに希釈 し, 沸点 まで加熱す る.指示薬溶液数滴 を加 え, 熱時Cu標準溶液で逆滴定す る. 検液 を加 え ずに同様 な滴定 を行 い,EDTA溶 液 の力 価 を決定 し,検液中のAl+Tiを計算す る.
100mlコニカルビーカーに検液2mlを と り 酒石酸塩溶液1mlを加 え,EDTA溶液5mlを 加 え,緩衝溶液5mlを加 え,水 で約50mlに希 釈 し, 上 と同様 に滴定す る. この結果はAl
の量を与 える.
上の2系列の滴定結果の差 か らTiの 量 を 求 める.
2・2・3 棲 定 例
日本理化学薬品製特級TiCl。溶液を用 い, 2・2・1に従って作成 したTiStockSolution 香,2・2・2に述べた方法 によって適足 した
13 例 をTable4に示す.
Table4の例では,重量法で求めた全 酸 化 物 は2.30g(inStock Solution)で あった.
驚 くべ き大量のAlの存在,およびTiC13とし て計算 したTi含量 と名 目上の含量 との大 き な相違 は注 目に値す る.(TiCl3原潜液 (d‑
1.22)中のTiがすべてTiC13として存在 した とすれば,TiC13含量 は25.5%とな る.)
3.マ グ ネ シ ウ ム.カ ル シ ウ ム, マ ン ガ ンの 容 量 分 析
CaおよびMgの合量 定 量 は,ErioT*と い うす ぐれた金属指示薬が はや くか ら知 られ ていたので,EDTA滴定 の最 も成功 した例の 一つ として,その最初期か らお こなわれて き た. しか しここには2つの大 きな問題が存在 す る.第一 は,Fe,Alな どの共 存 下 で の滴 定が極度 に困難 であることであ り,第二 は, Mgの単独定量がで きない ことである.
この第一の困難 のために,ほ とん どの場合 Fe,Alな どの分離操作が必要 とされ た, す なわちShapiroとBrannock(1956)は通常の 水酸化物沈澱法 によ り,PatrovskyとHuka
(1957)は目的成分の 共 沈 を避 け るた めにウ ロ トロピンを用 いる均質溶液沈澱法 によ り, さ らにRiley(1958b)は共沈を根 本 的に解決 Table4. Anexampleofthestandardizationof
"Titanium StockSolution〃
m molein HStockSolutionけ
532440312
wt.(g)in
̀̀StockSolutionリ asoxide
*3.llasTiCl3
す るため オキシン ーCHCl3よに る 抽 出法 によ り,それぞれFe,Al, Tiの分 離 を行 った上,Ca
+
Mg の定量 を行 っている.しか しCaは高 いpH領 域 にお いてTEA**をマスキング剤 とし てFe,Alな どの分離 を行 うこと
* EriochromeBlackT
柵 ト1)ユ タ ノ‑ル ア ミン
14 松 井 な く定量す ることが可能である (上野,1962, p・228参照)・Ca+Mgの定量には分離が必要 で,Caの定量には不必要 とい う状況 は,均衡 を失 した もの といわな くてはな らない.
ErioTを指示薬 として,かつ分離操作 を行 わずにシアン化物,TEAな どのマス キ ング 剤 を大量に用いて強引に滴定す る方法が試 み られた こともあ り,成功 した例 も報告 されて い る (南,佐藤,綿抜,1957).註lLか しこの種 の方法 によれば,終点の変 色は不明瞭である のみな らず,滴定が 行われ るpH領域 (約10) では大量のHCNが発生 し,保健上危険であ
ち. これ らの点か らみて, ErioTの使用 は 望 ましい もの とは考 え難 い.
KdrblとPribilによって発見開発 された指 示薬 チモール フタ レイ ン コ ン プ レ ク ソ ン (thymolphtllalein complexone;TPCと略 称)(K6rblandPribil,1958)は, この第一 の問題点 についてほぼ完全な解決を与 えるも の と予想 された.なぜな らば, この指示薬 は Fe,Al,Mn(ⅠⅠⅠ)に対 して,ErioTよ りは るかに鈍感であって, このためTEAの みで これ ら妨害成分のマスキングが可能 と考 え ら れたか らである.
第二の問題点,すなわちMgの単独定量 に ついては,現在の ところ良法 として一般的に 採用で きるものがない.ShapiroとBrannock (1956)が試みたCaWO。としてのCaの分離
と,その上澄液 についてのEDTA滴定法 は全 く正確 さを欠 き,特 に直視法(viualmethod) としては全 く適用不能である.註2Mgの 比 色
義 人
法 はい くつか提案 されているが,目下の とこ ろ満足な ものはない. しか しお そ らく第二の 問題点 の解決は将 来比色法 においてな され る で あ ろ う. 現 にMg≪Caの よ うな 試 料 (plagioclase,calciteな ど)では不満足 とは い え比色法 を用い る必要がある.註3
このよ うな事情のため, きしあた って第一 の問題点の解決,す なわちFe,Al共 存 下 に お ける容易かつ安全なCa+Mg含量滴定法の 確立は,意義あることと考 え られたので,普 通のケイ酸塩岩石 にみ られ る各成分の量比 に おける定量の可能性 を検討 した.その結果満 足すべ き結論 に到達す ることがで き, したが ってCa同様Ca+MgもFe,Al非分離 のまま 直 ちに定量 で きることになった.以下検討の 結果 と定量操作を記載す る (松井,1961).
3・1 実 験
以下の実験 に用い る合成検液 は,岩石1gを HE‑HCIO。で分解 して250mlの0.36N HCIO 。
酸性浴液 とした ものを想定 している.(これは ト6‑3に述べ る =倹液B"に対応す る.)合成 検液は下記の物質をHCIO。に潜 解 して 作成
した.
Mg:MgCO 3(E.Merck,分析用) Ca:CaCO 3(Cica,特級)
Mn:Mn (E.Merck,電解金属Mn) Al:Al(>99.99%, 横沢)
Fe:Fe (E.Merck,Eisendraht,分析 用)
3‑1・1 系Ca+Mg (+Mn) 滴 定 条 件
註 1ShapiroとBrannock(1962)は, この種 の方 法 を採 用 した.
註 1ShapiroとBrannock(1962)は, この方 法 を放棄 した.
註 2ShapiroとBrannock(1952)は"low levelMg"に対 してthiazoleyellow法 (Shapiro,1959b)杏 用 いてい る.
火 山岩の分析化学的 ・地球化学的研究 検液 :CaO 5.8
0 / 0
, MgO 2.80 / 0 ,
MnOO.25%を含む岩 石 に対応す る もの10ml. EDTA溶液 :0.01〟 (Dotite2NA) TEA溶液 :約250/ov/V,2ml (和光一級) NH20H・HCl溶液 :約10%,0又は1ml(秤
光特級)
TPC:DotiteTPCをKCl(和光特級) で 100倍 に希釈 した粉末,約30mg
滴定時の容積 :約50ml,pHはNH4CトNH3
‑KOHで調整 (いずれ も和光特級) pH 9‑9.7で は終点 のは るか手前か らTPC の変色が始 ま り,終点 の 判 定 が で きな い・
pH〜10で変色はみやす くな り,pH〜10・5で は極 めて鋭い.MnはTEA共存 下でNH20H が存在すれば定量 的に滴 定 され,NH20Hが 存 在 しなければ滴定 にか か らな い.pH>11 で はMgに起因す るzigzag(一旦 みか けの終 点 に達 した後 ,次第 に色が もどること)がお きる.pH13で は変 色 がお きな くな る
・
〔メタル フタレイ ンの 性 質 (Schwarzenbach, 1956)参照.〕
3・112 系Ca+Mg+班n‑Al (+Fe) 滴 定 条 件
検液 :CaO 5・8%
,
MgO 2・8%,
MnO o.25%,A120。12.8%を含 む岩石 に対応 す る もの10ml・pH :10‑11・ あ とは3・1‑1に同 じ
3lH で きめ られたpH領域 (10‑ll)でAlが 共存す ると滴定 は困離 にな る・す なわ ち著 し いZigzagがお きて兵 の終点が認 め難 くな る・
この事態 はTEAを増量 して も改善 されない・
ことにAlの沈澱の†こめ液が に ご った 時 は,
* ジオキ シエチル グ リシ ン
15 ほ とん ど滴定不能 であ る.Feが共存す ると,
これ も液 をに ご らせて終点 をみに くくす る.
この解決 には,緩衝 液,マスキ ング剤.一定 量 の水をあ らか じめ ビー カーに入れてお き, これ を振 りなが ら検液 を加 え て ゆ く と よ い (Feによ るに ご りに対 して は,DHEG*が有効 であ る).
all‑3 系 Mg(+Ca)‑Al(+Fe) Al共存下のzigzagの解決 のため,検液 中 のMgお よびAl含虞 をいろいろに変 えて 滴 定 を試 みた.
滴定条件
検液 :MgO2‑8%,A12030‑40%を含 む 岩石 に対応す る もの5ml
TEA浴液4mlと緩衝液 を含 む水 溶 液50ml 中 に検液 を加 えて滴定 (pH:10・1‑10・3) この結果 はFigs.1aお よび1bに図示 して あ る. ここでみ られ るよ うにAlが少 ない場 合 以外 は,終点 のみに くさはMgの濃度 に決 定 的 に支配 されてい ることが明 らか にな った・
3・2 結 論
3・1・3にお ける結果か ら,Al共存下 で明確 な終点 を得 るためには,清定時のMg濃度 は 1mg/100ml以下 であ るべ き ことが わ か る・
そ こで3‑日 ,3‑1・2の結果 を も参照 しつつ Mg+Ca+Mn合 量 の滴定法 を次 の よ うに ま
とめ ることがで きる.
分析操 作
検液 :岩石粉末試料1gをHF‑HC104で 処 理 して0.36Ⅳ HCIO。酸性溶液250mlとし
た もの.
試 薬
16 松 井
Flg.la
\1只†cuTtd ll只eXPeCtぐt
lr爪
O ql
n 即
一 触1 1
「蘇 ,II:AAl.22芸‑̲15.a;70℃的03‑200/I
o lき 37 55 73
MgO%
Fig.1.EffectofMgandAlon tllè̀apparentendpoint"forMg.
浴液A:KOHIOg,TEAIOOml,NH。水(15N) 125mlを水で500mlとした もの. ポ リエチ
レンぴんに貯 える.
浴液B:NH20HIHClloo/o水溶液
指示 薬 :TPCをKClで100倍 に希 釈 した も の.
EDTA:0.01M HC104:1Ⅳ
100mlコニカル ビー カ‑に溶液A5ml, 浴 液Blmlを と り,註1水 で50mlに うす め る.
これ を振 りなが ら検 液5mlを 加 え,指 示 薬 30‑50mgを加 え,直 ちにEDTAで滴定す る.
滴定速度 は約1滴/1秒.終点付近 で は さ らに ゆ っくり滴定す る.青味の消 え切 った点が終 良.一度青色が消 えて後,再 び青色 を帯 び る 時 は更 に滴定 を続 けるが,全所要時間が5分 を こえると,液 は過剰のEDTAに よ って も 変化 しない赤紫色 を帯 びて終点 の判定がで き な くな る.その時 は200mlコニカル ビ‑カ‑
義 人
を用 い,検液 を加 える前の液量 を水 で100ml に増 して滴定 をや り直す.
合成検液 についての滴定例 をTable5に示 す.表 中 Oをつ けた値 は,上 の操作中溶 液B をHC104(1Ⅳ)にお きか えて,Mnをマス ク
した もので ある.
標 準岩石試料G‑1お よびW‑1についての分 析結果 を,今 までに報告 された代表 的な分析 例 と共 にTable6に示す.
Tables5お よび6か ら,この方法 は実用 上 充 分 な 精 度 を もって い る こ とが わ か る.
Table6中Shapiro等 (1956)の値のみが離れ てい るのは,用 い られた方法が不適 当で あ っ たため と考 え られ る.
なお上述 の検討 において,Ti共 存下 にお け る終点 の状態,Caお よびFeが終点 の不明瞭 さにお よぼす影響 につ いては, これを省 いた が,Tables5お よび6の例か らみて,事実上 こ れ らの影響 は無視で きる もの と考 え られ る.
Mnを含量 として求 め るか,またはNH20H を加 えることな くTEAによってマ ス ク して
しま うか は,Mnが極 めて正確 に比色法 に よ って定量で きるために,分 析 者 の 好 み に要 せ ることがで きる.著者 は,Mnが 多い 時, TEA‑Mn(III)錯 体が強 く着色 して い る た めに終点が みに くくな ることに注意 して, こ のよ うなおそれのない合量滴 定法 を一般法 と
して採用 した.
4.
ナ ト リウ ムお よ び カ リウ ム の 炎 光 光 度 法 に よ る定 量一般 にアル カ t)金属元素 は炎光光度法 によ って便利 に定量 され るが,主成分元素 として 註1これ らは ピペ ッ トで はか りとるのが望 ま しい.溶液Aは強 アル カ リ性 で あ るか ら, 使用 の たびに直 ちに
洗 浄 す る こと.
火山岩の分析化学的 ・地球化学 的研究
Table 5. ExamplesofthepresentTPCtitrationonthesyntheticsamplesolutions.
17
Solution Compositionofsamples,a/o* EDTA (0.01M)needed,ml No. A1203 Fe203 MnO MgO CaO Expected Found
123456 050000124 888882222222 222244 88888665555544 677488 555553303039969444447787871「⊥31333332222225555 343253303049952444447787871132
333332222225555
*asthecorrespondingcontentintheimaglnary"Orlginalrocksamples''. oWithouttheuseofNH20H.Mnisnottitrated.
Table6. ComparisonofdataforG‑1andW‑1ontheirMg,CaandMn contents(meq/g).
G‑1 W‑1
Ca Mg Mn Sum Ca Mg Mn Sum
Conventionalmethod
Fairbairn (1953) 0.503 0.194 0.008 0.705 3.91 3.29 0.05 7.25 RaapniddBm,eatnhno.dckSh(alP9ir60) o・499 0・154 0・006 0・659 3・82 3127 0105 7・14 Riley (1958) 0.496 0.198 0.008 0.702 3.85 3.31 0.05 7.21 Thiswork 0.485* 0.212 0.008** 0.705 3.92* 3.25 0.05** 7.22
*determinedaftertheproceduredescribedinSectionI‑6‑8.
**determinedcolorimetrically (seeSectionL6‑6).
の ナ トリウム,カ リウムの場合において さえ ち,前処理,測定の手順 な どに多 くの問題が 存在す る.
ShapiroとBrannock(1956)は,複 光 路 系 を もつ Perkin‑Elmer52C型炎光分光光度 計 を用いることによ り,内部標準 としてLiを 添加 して機器的変動ない しは共存成分 による 妨害の一部 を消去 しつつ,特別な分離操作な しにNaおよびKを定量 している.一方Riley (1958b)は湯イオン交換樹脂法 によ りアルカ
リ金属のみを分離 し,共存 イオンの妨害 を避 けつつ,よ り安価 な装置で定量 を行 っている.
炎光光度法 には,比色法 におけるよ うな一 般的な測定手順が な く, さ らに共存成分が 目 的元素の発す る光 の強度 に与 える影響 につ い ては,多 くの報告が相互 に矛盾 に満 ちてい る 有様 である(Burriel‑Marti,Ram'lreZ‑Mu‑
noz,1957;Dean,1960参照). これ らの事情 を反 映 して,Pinson (HurleygfαJ・,1958) はK‑Ar法 による年代決定のための検討に際
18 松 井 して,炎光光度法 は単に目安を与 えるに過 ぎ ない ときえ考 えている. このよ うな状態 にあ りなが ら,一方で炎光光度法が きわめて安易 に日常分析 に応用 されている現状 はまことに 奇異 な ことといわなければな らない.
以上の点 を考慮すれば,現在最 も普通 に用 い られてい る単光格式の装置のための測定の 手順 を明 らかにして, 日常分析のための標準 的な方法 を示 してお くことは,意義のあるこ
とと考 え られ る.
現在炎 光 分 光 光 度 計 と して 多 く用 い ら れて い る装置 は,BeckmanBおよ び DU, ShimadzuQR,HitachiEPUな ど単 光 路 方式 による分光光度計の光源部 を,バーナー でお きか えた ものに過 ぎない. したが って一 見比色分析 にお けると同様な手順,す なわ ち
(1)=ゼ ロ合わぜ';(2)"100合わせ";(3)未知 試料の測定 ;(4)"(2)''の再確認;(5)"(1)"
の再確認のよ うな手順で測定 し得 るよ うな印 象を与 えやすい.
しか しなが ら,炎光法 では測定 され る光量 が一般 に比色法の場合に比 して格段 に微弱で ある.共存成分の妨害が 目的成分の濃度 と共 存成分の濃度 との積の画数 として現 われ ると 予想すれば,検液は希薄で あ る ほ ど望 ま し く, したが って測定すべ き光 はます ます弱 く なる.後に示す実例では,機器の全利得は, 比色計 として用 いる場合 の20倍 に達 して い る. このよ うな場合,増幅器部分の安定性が 著 しく不良 になるのは当然である.それに加 えて,炎光光度法の場合 にはバ‑ナ一部の各 部分の寸法の微小な変化 (沈積物の蓄積 ・温
義 人
度変化な どによる徐々にお こる変化,ごみに よる突然の変化), 燃料 ガスおよび燃焼 支持 ガスの圧力の変化な ど,比色分析の場合 とは 比較にな らない雑 多な要因が介入 し, これ ら の変動が増幅器の高利得のために結果 に大 き く影響す るに もかかわ らず, これ ら各要因の 完全 な制御 は事実上不可能である.
著者は このよ うな場合においては,各種 の パ ラメー タは測定の最初 にセ ッ トしたままあ とはな りゆ きに要せ,測定の途中に適宜標準 となるべ き試料について測定 を行い,一連の 測定後にデー タを整理す る方法 を採用すべ き もの と考 える. このよ うな手法 は,高感度の 自記装置つ きの機器では普通に用い られてい るものであるが,炎光光度分析 においては当 然用い られ るべ くしてほ とん ど用い られ るこ
とが なか った ものである.以下実例 について これを説明す る.註1
4・1 a‑1,W‑1中の Ji20の定量 機器
日立 EPU 2A型分光光電光度計およびH‑2 炎光用付属装置.
機器 セ ッテ ィング
ス リット:0.05mm;マイクロアンメー タ シャン ト抵抗 :最大 ;AgCs光電管 ;負荷抵 抗"F'';測定波長768m〟;H2:0.2kg/cm2;02:
0.8kg/cm2.
標準溶液
それぞれ以下 に示 した組成の岩 石 1gを処 理 して250mlの溶液 とした場 合 に相 当 す る だ けのKおよびNaを含む溶 液.標準 物 質 はKClおよびNaCl.
註1.本文 に述べ た方式 は 日常分析 のために簡略 を旨 とした もので ある,統計学的 によ り厳密 な方式 は 松 田浩男 (未発表) によって考察 されてい る.