相手の社会的な行動を誘発する身体的行動の分析
著者 吉岡 源太
発行年 2018‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00026683
(課程博士・様式7) (Doctoral qualification by coursework,Form 7)
学 位 論 文 要
Abstract of Doctoral Thesis
ヒ 2
日
専 攻 : 情報科学専攻 氏 名 : 吉 岡 源 太 Course: Information Science and Technology Name: Yoshioka Genta
論文題目: 相手の社会的な行動を誘発する身体的行動の分析
Title of Thesis: Analysis of Physical Behaviors Inducing Social Behavior of Others
論文要旨:
Abstract:
ロボットは研究や産業だけでなく,人の社会の中でも活躍が期待されている.ロボット が居員としてホテルや飲食居で、活動していることも報告されている.また,会話ができる ロボットやベッ トロボットなどの家庭に向けたものも開発されている.しかし,これらの ロボットは設計に従った動きしかしないためやりとりをしているうちに飽きられてしまう.
このようなロボットの社会的に活躍するような存在するように活動するのであれば,人同 士にみられるような関係のように継続的なかかわりが保たれる必要がある.
人同士における関係は利益が与えられるだけでなく,与えるような互恵性が維持や継続 に対して重要となる.しかし,将来的に互恵的な関係性の構築ができる相手であるならば,
現時点で自身が利益を得られなかったとしても関係が維持される可能性がある.さらに,
人とベット動物との関係ではベットの飼い主は餌や寝床を与えるのに対して家畜動物のよ うな利潤を生むという行為はしない.このような関係にもかかわらず,人はベットを飼し、
その関係を維持する.この関係はベットと関わることで他者とかかわりたいという欲求を 満たされるため,維持に繋がっていると考えられる.つまり,関係を構築する他者に対し
て社会性を感じられることが重要となってくる.
ロボットなどのエージェントと人の関わり合いについて研究している HAI分野では,人 と人の社会的なやりとりを基礎としてエージェントとの関係構築について検証が行われて いる.これらの研究ではロボットの外形を人や動物に似せ,それらを真似た表現をさせる ことで、内部状態を持っているように振舞わせる.人はロボットとのやり取りの中でロボッ
トの振舞から内部状態を推定し,社会性を認知する.
しかし,人は相手の振舞だけで相手の内部状態を推定しているわけで、はない.人は相手 の内部状態を推定する場合,自分の内部状態を参照し推定している.相手に関する情報が 少なかったり,附嵯に判断したりする状況では自身の内的状態が推定に強く影響する.そ
のため,ロボットが人・動物を模し,明示的に伝達する能力を持っていたとしても正しく 推定されるとは限らず,逆に単純な行動でも内部状態を推定される可能性もある.つまり,
ロボットが明示的な内部状態を表出するような行動でなくても,ロボットの行動に対して 内部状態を推定する可能性がある.そこで本研究では自身の内的状態を基とした相手の内 的状態の推定より,ロボットが社会性のある存在として認知するか検証する.
この検証ではロボットの外見にとらわれず内部状態を明示的に示さない表現として移動 としづ原初的な行動のみで相手に社会性を表現することを目指す.この研究により互恵的 な関係を望める相手としての印象を与えられる行動が明らかになることで,人とのインタ ラクション開始前にロボットがただの機械としてではなく社会的な存在(届員や案内役) として認知され,より円滑にコミュニケーションが開始され,人とロボットとの長期的な 関係構築に貢献すると考えられる.
本研究は5つ章で構成される.1章では本研究おける研究目的及び人と人工物のインタラ クションに関する先行研究からロボットに対する社会性の認知について概観し,本研究の 位置づけを述べた.2章では単に移動が可能でシンプルな形状のロボットによって社会的な 行動の誘発が可能かどうかを検証した.この実験では実験参加者に対して運試しゲーム課 題を行いロボットがその結果に対して反応をすることで相手に共感しているように振舞わ せた.本研究ではいい結果に対して接近,悪い結果に対して離脱するように反応を見せる ことで相手に対して援助行動を誘発させることができた.つまり,単純な形状のロボット が移動による接近性と結果の良し悪しを対応付けることにより実験参加者がロボットに社 会件を見出していることが示唆された.第 3章ではインタラクションを開始する前に,ど のように行動することで円滑に会話が始めようとしているかについて検証した.この検証 は人が自身の変化や伝えた内容についてしっかりと伝えているという錯覚が行動に現れる かを検証した.この実験では,相手の状態を想定し相手に話しかけるときにどのように配 慮として非言語行動をとるか観察した.実験参加者はマネキンに対して状況を想定した上 で話しかけを開始した.この実験で相手が受け入れてくれる状況であるかどうかを想定す ることによって配慮を示すような動きが観察されるか検証した.結果は話しかけるまでの アプローチにおいて非言語による配慮と取れる行動が見られた.つまり,明示的かっ社会 的な行動ができる人同士の会話でも開始前の非言語行動による配慮により社会的な行動を とり相手にその意図を伝えようとした.第 4章では第2章と第3章から得られた知見をま とめ,そこから本研究におけるロボットとの長期的な関係構築における貢献について述べ た.また,先行研究との対比や本研究内容に対する応用について述べた.第 5章では本研 究を振り返りながら,社会性の認知に対する自身の社会的な相手の互恵的な関係構築にお ける行動の必要性を述べ,論を閉じた.