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次世代道路通信標準の開発

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Academic year: 2021

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次世代道路通信標準の開発

1.はじめに 

道路通信標準は、 ITS システムにおける異なるシステ ム間の情報交換を可能とする共通の通信規格として、

2002年3月に制定された。

道路通信標準により、道路管理システム間でのデータ 定義の統一が実現され、地域や業務毎に異なるシステム でのデータの相互通信・共有が可能となった。しかし、

地域・業務毎に存在するローカルなデータ項目全てには 対応しきれない事や、特定のデータの問い合わせ・検索 が難しい構造となっているなどの新たな課題が浮上して おり、現場のニーズに合致しない部分が散見されるよう になった。

国総研では、現行の道路通信標準における課題を解決 すべく、新たな通信規格である「次世代道路通信標準」

の検討を進めている。本報告では、次世代道路通信標準 の策定に向けた検討内容について説明する。

2.現行の道路通信標準 

2-1  道路通信標準の仕組み 

道路通信標準は、基本となる通信規格に DATEX - ASN を採用し、転送データをバイナリ化してデータ量を削減 することで、通信速度の遅い環境においても大量のデー タを送る事が可能となるよう設計されている。これは、

道路通信標準が策定された当時は通信回線の転送速度が 遅く、ナローバンドでの通信を想定していた事や、情報 センター同士の通信(以下、センター間通信)の転送デー

タ量が一般的に多い事から、低速度の通信回線における データ転送を実現させる必要があった為である。また、

道路通信標準ではセンター間通信でのデータの受け渡し が精緻に行えるよう、それぞれのデータの種別、取得タ イミング、取得容量などの内容を定義し、送り手側と受 け手側で共有する仕組みがある。この仕組みがデータ ディクショナリ( DD )であり、現行の道路通信標準で は全国共通の辞書を管理・運用している。道路通信標準 では、共通の通信規格と、共通のデータディクショナリ を利用することで、全国でのデータの相互通信・共有を 可能としている。道路通信標準の構造イメージを 図−1 に示す。

図−1  現行道路通信標準の概要 

次世代道路通信標準の開発

今別府 邦 昭 *

道路通信標準は、ITSシステムにおいて取り扱うデータを共通化する通信規格として、

2002年3月に作成された。しかし、新たなデータ定義の追加・変更に迅速に対応できないこ と、通信規格であるDATEX-ASNが特殊技術化していること、特定のデータを選択して転送 する際のデータ伝送の効率が悪いことなどの問題が散見されるようになった。 

国総研では、これらの課題を解決する次世代道路通信標準の検討を進めており、システム 間の転送構文をDATEX-ASNからXMLメッセージへ変更し、データディクショナリの二層 管理化、メッセージ構造を特定のデータのみを選択して構築できる仕組みを検討した。また、

次世代道路通信標準の実現性を評価するべく検証を行い、次世代道路通信標準のコンセプト を実装したシステムが正常に稼働する事を確認した。 

* 国土交通省国土技術政策総合研究所防災・メンテナンス基盤研究センターメンテナンス情報基盤研究室交流研究員 (14000000)ٛ

(2)

2-2  現行の道路通信標準の課題 

現在の道路通信標準は全国の道路管理情報収集システ ムに用いられる他、幾つかのローカルシステム間の通信 にも用いられている。しかし、データディクショナリの 更新が1年に1回であり、新たなデータ定義の追加・変 更に迅速な対応ができない。また、データディクショナ リが通信規格 DATEX - ASN に合わせた抽象定義による 辞書であり、技術が特殊化している。これらの状況は現 場で新たにセンサー類が設置される際、事務所・出張所 等にあるデータディクショナリに独自の定義を行わざる を得ないという結果を招き、道路通信標準の目標である 全国でのデータの相互通信・共有を阻害している事から、

一部の領域で使用されるに留まっている( 図−2 ) 。

図−2  現行道路通信標準の利用状況 

このような状況となった原因として、下記のような課 題が存在している。

(1)  情報技術・通信技術の特殊化 

①  技術者の不足 

道路通信標準の通信規格である DATEX - ASN は情報 の構造定義の言語であり、バイナリ変換することを想定 している。同様に、構造定義を行う言語として XML があ り、近年の通信技術の向上とW eb ブラウザとの親和性の 高さから広く流通している。一方で、 DATEX - ASN は現 在ではプロトコルとしての採用が少なく特殊技術と化し ており、取り扱う事のできる技術者が減少している。

②  データの取捨選択が困難 

現行の道路通信標準は、転送データをビット列のデー タに変換後、一括して送受信する仕組みとなっており、

規定されたデータが格納されるビット列が決まっている。

特定のデータのみを選択して転送する際も、他のデータ 領域も含めて送受信を行うためデータ伝送の効率が悪く、

情報を取捨選択して送受信するには不向きとなっている。

(2)  データ定義管理の柔軟性の低さ 

現在の道路通信標準では、データ定義に共通辞書方式 を採用しており、全国で扱うデータ定義を一括して管理 している。新たなデータ定義を追加する場合は、全国で 一括してデータディクショナリを更新する必要がある。

(更新頻度:年1回)一方で、気象条件や地域性・業務ニー ズに合わせたローカルなデータ定義が存在しており、こ れに対応するためには、システムを構築する度に新たな データ定義の追加・更新が必要となる。しかし、共通辞 書方式による管理体制では、全国でデータディクショナ リの一括更新が必要であり、頻繁な変更が難しい事から 迅速な対応ができず、柔軟な対応を妨げている。

3.次世代道路通信標準の検討 

現行の課題を解決するため、国総研で検討を進めてい る次世代道路通信標準では、データの構造とデータ項目 の管理を柔軟に、 かつ効率的に行える仕組みを検討した。

特に地域や業務特性、また業務リクワイアメントの経年 変化へ対応できる仕組みを設ける事を念頭に検討を行っ た。 図−3 に次世代道路通信標準のコンセプトを示す。

図−3  現行の課題と次世代のコンセプト 

3-1  次世代道路通信標準のコンセプト  (1) XML の導入 

多数の技術者が実装可能な技術として、W eb サービス で用いられている XML を導入する。具体的には、システ ム間でやり取りされる転送構文を、既存の DATEX - ASN から XML メッセージに変更する。これに伴い、データ ディクショナリも XML スキーマとして作成する。

現行道路通信標準適用想定範囲と現行道路通信標準の利用状況

道路交通情報システムの道路情報の流れ(例)

情報収集 情報提供

①国総研へ

②防災情報システムへ

③地整技術へ

④TV表示へ

出張所 事務所 本局 地整道路情報管理室

CCTV

道路情報 システム

映像共有化システム

道路情報 システム

情報板 道路規制情報

システム

インターネット

情報板 ガイダンス 工事業者

地整道路情報管 理室(マルチビジョ ン,CCTVモニタ)

工事詳細情報 業務系PC

工事初期情報 災害規制情報

開始・終了情報

緊急ダイヤル・道の相談室 地域住民・

一般ドライバー トンネル防災、自専道

関東地整 VICS

C1 各種センサー等

雨量、風向・風速等

監視・制御

道路防災情報 システム 映像共有化システム

業務系 点検担当者 PC

統一河川情報 システム

地震情報 システム

気象庁配信 サーバ 福国

① ② ③ ④

業務系PC 道路管理者

イントラネット 中部地整

新道路情報 提供システム 情報共有

サーバ

VICSセンター 5.8GHz

VICS C2

道路情報 提供システム

インターネット みち情報

JARTIC ホームページ VICS

C2

5.8GHz ビーコン 2.4GHz ビーコン

ITSスポット (5.8GHzビーコン)

プローブ情報 システム 民間プローブデータ

他道路管理者

(高速道路会社等)

CCTV監視 システム

CCTV監視 システム

映像 配信 装置

静止画 生成 装置

業務系 PC

業務系 PC

統合道路情報 システム

災情報提供セ路雨量)/本省→FRICS 静止画

(映像管理情報)

(動画像/防災WAN)

DB

情報板 主制御機

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次世代道路通信標準の開発

XML は国際標準や他システムにおいて汎用的に利用 されている。また、データ定義の細部を定める事で、必 要な情報のみを取捨選択して送受信できる( 図−4 ) 。

図−4  必要なデータのみを取捨選択 

(2)  データ定義の二層管理化 

データディクショナリを、現在の一元管理から二層管 理化する。具体的には、情報交換に関わるような、全国 が共通で使用するデータディクショナリ(以下「グロー バル DD )と、同一の地整配下間または特定事務所間な どのローカルなデータ定義で用いるデータディクショナ リ(以下「ローカル DD )とに分ける。グローバル DD は、 全国的に管理責任を持つ管理者のみが更新可能とし、

ローカル DD については、利用者である地整や事務所が、

地域性や業務ニーズに合わせて独自にデータ定義を作成、

追加する事を許容する。これによって、全国で共通で利 用する部分と、特定の地域のみで利用する部分とに分割 し、データ定義の柔軟な対応を実現する。

図−5 に二層管理化したデータディクショナリの活用 イメージを示す。共通のエリア内のシステム間でデータ を交換する場合は、グローバル DD と、当該エリアのロー カル DD を利用してデータを交換する。一方、異なるエ リア間の場合、共通で利用できるグローバル DD のみを 利用する。また、異なるエリア間でローカル DD を共用 できる場合、グローバル DD とローカル DD の双方を利用 する。尚、これらのデータディクショナリは防災 LAN を通してオンライン公開し、定期的に辞書を同期させる 通信を行う事で、システム間でのデータ解釈の齟齬を防 止する。

図−5  データディクショナリの二層管理化 

また、ローカル DD のデータ項目のうち、多数のエリ アで共通して利用されている項目がある場合は、グロー バル DD の見直し時に該当の項目をグローバル DD へ昇 格させることも想定している。

以上のコンセプトを反映した次世代道路通信標準の概 要を 図−6 に示す。

図−6  次世代道路通信標準の概要 

XML XML

A B C D ・・・ X

現行

次世代

データを一括して送受信

対象外のデータ領域も含めて 送受信を行う必要あり

A

対象のデータのみ送受信

C D

データの取捨選択が可能

DATEX-ASN

(4)

3-2  次世代道路通信標準のメッセージ構造 

図−7 に、道路通信標準のメッセージ構造を示す。各 システムで交換されるメッセージセット( MS )は、メッ セージの種類を示す共通メッセージヘッダと、交換され る情報の集合であるデータセット( DS )で構成される。

DS はデータの表す最小単位であるデータエレメント

( DE )の集合であり、データディクショナリではこの DE の内容を規定している。

  図−7  データディクショナリ 

現行の道路通信標準はメッセージに DATEX - ASN 用いており、データを一括して送る仕組みのため、定義 されている DS 全てを一括して MS に含める必要があった が、次世代道路通信標準ではメッセージに XML を採用し ているため、特定のデータのみを選択して MS を構築でき ることから、必要なデータのみを取捨選択して送受信す る仕組みを実現できる。

4.次世代道路通信標準の検証 

次世代道路通信標準の実現性を評価するため、試験シ ステムとして検証用の通信プログラムを試作し、検証を 行った。検証では現行の道路管理システムをモデルに、

道路管理業務の体系的な整理を行い、次世代道路通信標 準を用いた情報処理システムの新たな利用方法を想定し た上で実証環境を構築して通信実験を行った。

4-1  通信機能の検証 

次世代道路通信標準通信サーバとクライアント機器に 導入したクライアントアプリケーション間における通信 機能について検証した。実施事項は 表−1 の通り。

表−1  通信機能の検証内容 

No. 実施事項

1 クライアントアプリケーションが、次世代道路通信標準通 信サーバから、データ拠点リストを取得できること。

2 クライアントアプリケーションが、次世代道路通信標準通 信サーバから、特定のデータ拠点が有するデータディク ショナリの内容(データ一覧やインタフェース一覧)を取 得できること。

3 クライアントアプリケーションが、次世代道路通信標準通 信サーバから、特定のデータ拠点が有する特定のデータ項 目に関するデータリスト(データ項目別の、データ保有期 間、データ保有地域・路線)を取得できること。

4 クライアントアプリケーションが、次世代道路通信標準通 信サーバから、特定のデータ拠点が有する特定のデータ項 目について、検索条件を指定してデータを問い合わせ、次 世代道路通信標準通信サーバが応答を返信すること。

検証の結果、 表−1 で示した内容が全て正常に動作す ることが確認できた。

4-2  データ通信システムの基本性能の評価 

試験システムを用いて、次世代道路通信標準の基本性 能を評価した。評価では、クライアント PC から次世代道 路通信標準通信サーバに対してデータの問い合わせ処理 をインタフェース毎に20回行い、① 送信時間(秒) 、② ミドルウェア( PHP 等)処理時間(秒)、③ DB 処理時 間(秒) 、④ 受信時間(秒)の4つの処理時間を計測し た( 表−2 ) 。評価では、道路通信システムのうち、降水 量、路面温度、積雪量等のインタフェースをモデルに検 証システムとして構築し評価を行った。

表−2  計測項目 

計測項目 計測項目の説明

① 送信時間(秒) クライアントからサーバへ XML を送信する時間

② ミドルウェア( PHP 等)

処理時間(秒)

XML を S Q L へ変換し DB へ問い 合わせ、 DB の応答を XML へ変 換する時間

③ DB 処理時間(秒) S L に応じてデータを検索す る時間

④ 受信時間(秒) サーバからクライアントへ XML を送信する時間

図−8 、 表−3 に評価結果を示す。その結果、全ての インタフェースでほぼ同等の処理時間が計測された。ま た、処理時間の内、③の DB 処理時間( S L に応じてデー タを検索する時間)が大半を占める事から、 XML による データ通信が処理速度に影響が少ない事を確認できた。

・・・

・・・

メッセージセット(MS)

共通メッセージ ヘッダ

データセット

(DS)

データエレメント

(DE)

データエレメント

(DE)

データエレメント

(DE)

データディクショナリ

(DD)

メッセージ内の個々のデータ定義を データディクショナリにて規定 データセット

(DS)

データセット

(DS)

データセット

(DS)

(5)

次世代道路通信標準の開発

以上の実験の結果、次世代道路通信標準のコンセプト を実装したシステムが、 正常に動作する事が確認された。

図−8  インタフェース別の処理時間 

表−3  インタフェース別の処理時間 

インタフェース名 ①送信時間

(秒)

② ミ ド ル ウ ェ ア ( PHP 等 ) 処理時間

(秒)

③ DB 処理 時間(秒)

④受信時間

(秒)

getRainFall 0.00400 0.00260 0.01432 0.00300

getroadTemperature 0.00400 0.00308 0.01437 0.00200

getsnowfall 0.00400 0.00145 0.01460 0.00300

getsnowAmount 0.00400 0.00420 0.01436 0.00100 getTemperature 0.00500 0.00117 0.01463 0.00300

gettraffic 0.00500 0.00239 0.01436 0.00200

getvisibility 0.00400 0.00432 0.01455 0.00100 getwaveHeight 0.00400 0.00220 0.01441 0.00300

getwind 0.00400 0.00643 0.01437 0.00200

5.まとめ 

本稿では、次世代道路通信標準の検討方針及び、通信 規格としての実現性の検証について報告した。検証の結 果、次世代道路通信標準で想定する仕組みが、実際にシ ステムを構築した上で正常に動作する事が確認できた。

今後は、 現場環境での実装を想定した試験環境を構築し、

さらなる改良・試行を繰り返していく事で、道路通信標 準の完成度を高めていく予定である。

また、現場環境における次世代道路通信標準の導入を 推進するため、システム導入のための技術指導や、シス テム構築のマニュアル化を進め、普及に向けた対策を提 案・試行していく。

0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03

④受信時間(秒)

③DB処理時間(秒)

②ミドルウェア(PHP等)

処理時間(秒)

①送信時間(秒)

参照

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