厚生労働科学研究委託費(医療機器開発推進事業)
委託業務成果報告(業務項目)
在宅人工呼吸器の遠隔監視システム(クラウドサーバー構築)
に関する研究
業務主任者 滝沢 正臣
信州大学医学部附属病院
医療情報部総合遠隔診療室 研究員
研究要旨
在宅人工呼吸器を装着した患者の呼吸状態や機器稼働情報を複数の関係施設(医療機関、
訪問看護ステーション、医療機器管理会社等)で遠隔監視や遠隔通報を行うシステムの 開発を目的とする。本研究では、汎用人工呼吸器メーカーと共同で機器稼働や呼吸状態を リアルタイムに外部出力できるように改良を加えた機器より、インターネットを介して機器 稼働や呼吸状態のデータを保存できるクラウドサーバーシステムを開発した。
A.研究目的
人工呼吸器を必要とする重症難病患者の在 宅療養において、介護者家族や療養支援者 は常に大きな不安を抱えている。これは人 工呼吸器の取り扱いが必ずしも容易ではな い上に、患者の状態悪化時や医療機器のト ラブル、アラーム発生時には迅速な対応が 求められるものの、連絡先が医療機器管理 会社、訪問看護ステーション、医療機関な ど複数ヶ所あることで対応に混乱が生じ易 い。在宅医療における医療機器等ニーズ調 査報告書においても、在宅医療機器の通信 機能の付加の必要性が挙げられており、生 体機能制御装置である人工呼吸器を装着し て在宅療養を営む神経難病患者、重症心身 障がい者などとその家族、訪問看護師など が、患者の状態悪化時や機器のアラーム発 生時に迅速な対応が求められるため、不安 を抱えていることが挙げられていた。殊に、
交通利便性の低い山間地や豪雪地、災害時 の対応はさらに困難である。一方、現在の 汎用在宅人工呼吸器は、従来遠隔監視・通 報を行うことを前提に開発されてはいない。
そこで、ICT を利用して在宅人工呼吸器の 遠隔監視や遠隔アラーム通報が可能となれ ば、患者の安全確保と家族・療養支援者に 安心が与えられる。本研究では、在宅人工 呼吸器を装着した患者の呼吸状態や機器稼 働情報を複数の関係施設(医療機関、訪問 看護ステーション、医療機器管理会社等)
で遠隔監視や遠隔通報を行うシステムの開 発を踏まえ、インターネットを介して機器 稼働や呼吸状態のデータを保存できるクラ ウドサーバーシステム部分の開発を行う。
B.研究方法
人工呼吸器の遠隔監視のための遠隔システ ムの基盤となる「インターネットを介して 機器稼働や呼吸状態のデータを保存できる クラウドサーバーシステム」を開発・構築 する。尚、クラウドサーバーの構築のため の開発体制については、キッセイコムテッ ク株式会社(松本)と共同で行う。また、
システム開発にあたりシステム化の要求事 項については、信州大学附属病院の医師と 医療機器管理会社の中日本メディカルリン
ク株式会社(松本)よりヒアリングし、シ ステムの基本設計とする。更に、通信上の 安全性担保は、情報をSSL化しVPNネットワ ークを用いることとする。
C.研究成果
平成26年度は、遠隔監視用のクラウドサー バーを構築し、既存システム(患者毎のケ ア情報のデータベース)と連携させるシス テム開発を行った。遠隔監視用クラウドサ ーバー構築における人工呼吸器(専用ルー タ)との連携については、人工呼吸器メー カー(オリジン医科工業)から生体情報と 機器稼働情報を入手し、在宅人工呼吸器の 関係者(医師、医療機器管理担当者)に対 してヒアリングを実施した。これにより、
システムの要求事項(機能概要)とクラウ ドサーバーのデータベース項目を確定させ た(概要設計)。その後、詳細設計(画面設 計)・プログラミング・テストを行い、遠隔 監視用クラウドサーバ(試作)を構築した。
尚、各設計書はドキュメント化し、テスト はテスト用プログラムを作成し、クラウド サーバーの動作確認を行った。また、既存 システムとの連携については、既存システ ムから連動して遠隔監視用クラウドサーバ ーを起動するシステム開発を行った。
D.考察
平成27年度は、平成26年度の継続として、
クラウドサーバーからインターネットを介 して機器稼働や呼吸状態のデータをモニタ リング・参照できるシステムの開発と通信 機能の安定性試験、フィージビリスタディ ーを行う。また、平成27年度下半期から信 州大学医学部医倫理委員会の承認後に運用 テストを行い、データの収集を行う。なお、
システム開発は、PMDAとの薬事相談、助 言を受けながら実施する。
E.結論
人工呼吸器の遠隔監視のための遠隔システ ムの基盤となる「インターネットを介して 機器稼働や呼吸状態のデータを保存できる クラウドサーバーシステム」を開発・構築 することができた。
F.健康危険情報 なし
G.研究発表 1. 論文発表
1) 中村昭則、滝沢正臣、宮崎大吾.在 宅医療のための人工呼吸器の遠隔監 視の試み.日本遠隔医療学会雑誌 10:
163–165, 2014.
2) 滝沢正臣、中村昭則、宮崎大吾、日根野 晃代.在宅難病患者と医師との高度テレ コミュニケーションシステム.日本遠隔 医療学会雑誌10: 198–200, 2014.
⒉. 学会発表
1) 中村昭則、滝沢正臣、宮崎大吾.在 宅医療のための人工呼吸器の遠隔監 視の試み.第 18回日本遠隔医療学会 学術大会 平成 26年 10月25 日、長 崎
2) 滝沢正臣、中村昭則、宮崎大吾、日根 野晃代.在宅難病患者と医師との高度 テレコミュニケーションシステム.日 本遠隔医療学会学術大会 平成26年10 月25日、長崎
3) 中村昭則、滝沢正臣、日根野晃代、吉 川健太郎、渡辺美緒.在宅療養環境改 善のための総合 ICT ケアシステムの構 築.JTTA Spring Conference 2015 平成 27年2月21日、東京
H.知的所有権の出願・登録状況 1. 特許取得 なし
2. 実用新案登録 なし 3. その他 なし